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特開2024-165610X線位相イメージング装置、及び、画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165610
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】X線位相イメージング装置、及び、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/041 20180101AFI20241121BHJP
【FI】
G01N23/041 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081946
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 翔
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA06
2G001HA07
2G001HA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】位相コントラスト法により撮影された画像に対し、コントラストを改善し視認性を向上させたX線位相イメージング装置、及び、画像処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、X線源(2)と、被写体(3)に照射されたX線を検出する検出器(4)と、画像処理部(5)とを具備する。画像処理部は、複数枚の第1の画像を用いて、各画素の第1の輝度を平均した平均画像と、各画素における第1の輝度の中央値とが算出される輝度算出部(11)と、平均輝度が、閾値よりも高い画素については、中央値よりも高い輝度を有する第1の画像のみを用い、平均輝度が、任意に設定した閾値よりも低い画素については、中央値よりも低い輝度を有する第1の画像のみを用いて加算平均されて、各画素の第2の輝度が設定される輝度設定部(13)と、第2の輝度を用いて、第2の画像が作成される画像生成部(10)と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線位相イメージング装置であって、
X線源と、
前記X線源から被写体に照射されたX線を検出する検出器と、
前記被写体の位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を具備し、
前記画像処理部は、前記検出器から出力される画像信号により生成された複数枚の第1の画像の第1の輝度を用いて、画素ごとに前記第1の輝度を平均した平均輝度と、各画素における前記第1の輝度の中央値と、が算出される輝度算出部と、
前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも高い画素については、前記中央値よりも高い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度が加算平均され、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも低い画素については、前記中央値よりも低い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度が加算平均されて、各画素における第2の輝度が設定される輝度設定部と、
前記輝度設定部にて得た各画素の第2の輝度を用いて、第2の画像が作成される画像生成部と、を有する、
ことを特徴とするX線位相イメージング装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、任意に設定した範囲内の各画素における前記平均輝度の平均値が閾値に設定される閾値設定部を、有する請求項1に記載のX線位相イメージング装置。
【請求項3】
X線源と、検出器との間に、被写体を設置して、前記X線源から被写体に照射されたX線を検出し、画像処理部にて、前記検出器から出力される画像信号により位相コントラスト画像を生成する画像処理方法であって、
前記被写体に、X線を複数回照射して、前記被写体の複数枚の第1の画像を生成するステップ、
前記複数枚の第1の画像を用いて、前記第1の画像中の画素ごとに第1の輝度を平均した平均輝度と、各画素における第1の輝度の中央値と、を算出するステップ、
前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも高い画素については、前記中央値よりも高い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度を加算平均し、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも低い画素については、前記中央値よりも低い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度を加算平均して、各画素の第2の輝度を設定するステップ、
各画素の第2の輝度を用いて、第2の画像を作成するステップ、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
任意に設定した範囲内の各画素における平均輝度の平均値を閾値に設定する、請求項3に記載の画像処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線位相イメージング装置、及び、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の発明には、検出器より検出されたX線から被写体の位相コントラスト情報と、被写体の吸収コントラスト情報とを分離して取得し、位相コントラスト情報に重み付けを行い、重み付けされた情報と吸収コントラスト情報とを足し合わせて合成画像情報を生成するX線撮像装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-208189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位相コントラスト法により撮影された画像に対し、コントラストの改善が求められた。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、位相コントラスト法により撮影された画像に対し、コントラストを改善し視認性を向上させたX線位相イメージング装置、及び、画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るX線位相イメージング装置は、X線源と、前記X線源から被写体に照射されたX線を検出する検出器と、前記被写体の位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を具備し、前記画像処理部は、前記検出器から出力される画像信号により生成された複数枚の第1の画像の第1の輝度を用いて、画素ごとに前記第1の輝度を平均した平均輝度と、各画素における前記第1の輝度の中央値と、が算出される輝度算出部と、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも高い画素については、前記中央値よりも高い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度が加算平均され、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも低い画素については、前記中央値よりも低い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度が加算平均されて、各画素における第2の輝度が設定される輝度設定部と、前記輝度設定部にて得た各画素の第2の輝度を用いて、第2の画像が作成される画像生成部と、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る画像処理方法は、X線源と、検出器との間に、被写体を設置して、前記X線源から被写体に照射されたX線を検出し、画像処理部にて、前記検出器から出力される画像信号により位相コントラスト画像を生成する画像処理方法であって、前記被写体に、X線を複数回照射して、前記被写体の複数枚の第1の画像を生成するステップ、前記複数枚の第1の画像を用いて、前記第1の画像中の画素ごとに第1の輝度を平均した平均輝度と、各画素における第1の輝度の中央値と、を算出するステップ、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも高い画素については、前記中央値よりも高い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度を加算平均し、前記平均輝度が、任意に設定した閾値よりも低い画素については、前記中央値よりも低い前記第1の輝度を有する前記第1の画像のみを用いて、前記第1の輝度を加算平均して、各画素の第2の輝度を設定するステップ、各画素の第2の輝度を用いて、第2の画像を作成するステップ、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位相コントラスト法により撮影された画像のコントラストを改善し、視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るX線位相イメージング装置の模式図である。
図2】吸収コントラスト法による撮影のイメージ図である。
図3】吸収コントラスト法による撮影のイメージ図である。
図4】位相コントラスト法による撮影のイメージ図である。
図5】本実施の形態に係るX線位相イメージング装置のブロック図である。
図6】本実施の形態に係る画像処理方法ステップを説明するためのイメージ図である。
図7】本実施の形態に係る画像処理方法ステップを説明するためのイメージ図である。
図8】本実施の形態に係る画像処理方法ステップを説明するためのイメージ図である。
図9】本実施の形態に係る画像処理方法ステップを説明するためのイメージ図である。
図10】本実施の形態に係る画像処理方法ステップを説明するためのイメージ図である。
図11】本実施の形態による画像処理方法にて生成した位相コントラスト画像(第2の画像)のイメージ図である。
図12】加算平均したのみの位相コントラスト画像(平均画像)のイメージ図である。
図13図11図12に示す各画像のA-A線上の輝度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るX線位相イメージング装置及び画像処理方法について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0011】
<X線位相イメージング装置1の全体構成図>
図1は、本実施の形態に係るX線位相イメージング装置1の模式図である。図1に示すように、X線位相イメージング装置1は、X線源2と、X線源2から被写体3に照射されたX線を検出する検出器4と、画像を生成する画像処理部5と、を具備する。
【0012】
X線源2は、X線を発生する装置であれば特に限定されるものでなく、既存のX線源(X線管)を適用できる。図1に示すように、X線源2から被写体3の方向に向けて、X線が照射される。
【0013】
検出器4は、被写体3を透過したX線を検出可能な検出器であれば、特に限定されるものでなく、既存の装置を適用できる。例えば、検出器4は、フラットパネルディテクターであり、複数の変換素子及び複数の画素電極が画素ピッチで、X方向及びY方向にアレイ状に配列されており、検出器4は、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電子信号を画像信号として読み取る。そして、画像信号を、画像処理部5に出力する。
画像処理部5は、検出器4から出力された画像信号に基づいて、位相コントラスト画像を生成する。
【0014】
本実施の形態のX線位相イメージング装置1は、複数枚の位相コントラスト画像を撮影した際、画像ごとに輝度がばらつくことを利用して、輝度が高い(明るい)箇所は、より明るく、輝度が低い(暗い)箇所は、より暗くなるように画像処理を施すことに特徴がある。
まずは、背景技術から本実施の形態のX線位相イメージング装置及び画像処理方法に至る経緯について説明する。
【0015】
<本実施の形態のX線位相イメージング装置及び画像処理方法に至る経緯>
従来から、X線が物体を透過する性質を利用して、不透明な物体の内部を、非破壊で検査する方法が実用化されている。
【0016】
図2は、吸収コントラスト法による撮影イメージを示す。図2に示すように、被写体6は、例えば、不透明な樹脂材7の内部に金属8が埋め込まれた構造である。吸収コントラスト法では、被写体6にX線を通したときに、X線の吸収量(もしくは透過量)の大小を利用して、撮影される画像にコントラストを生じさせる。このコントラストにより、金属8に亀裂などが生じているか否かを判別できる。
【0017】
吸収コントラスト法は、X線を吸収しやすい原子番号が大きい物体には有効である。よって、図2のように、金属8の欠陥などを検査することが可能である。
【0018】
一方、水素や炭素等の軽い元素からなる被写体では、吸収率が小さい。このため、図3のように、例えば、内部に空隙3aが存在する、不透明な樹脂材7からなる被写体3に対しては、X線の吸収率差が小さいため、コントラストが得られにくく、被写体3内の空隙3aを判別しづらい課題があった。
【0019】
コントラストが得られにくい物体を撮影する方法として、位相コントラスト法がある。図4に示すように、位相コントラスト法では、被写体3にX線が透過した際の位相シフト(X線の屈折)を用いて撮影する。図4に示すように、X線が空隙3aを透過する箇所と、空隙3aがない箇所とでは位相シフトが異なることで、視認性は、吸収コントラスト法より多少改善するが、依然としてコントラストが小さいことが課題であった。
【0020】
そこで本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、被写体の複数枚の画像を撮影し、各画素の輝度を加算平均する際に、明るい箇所はより明るく、暗い箇所はより暗くなるように、加算平均に用いる画像を選別することで、画像のコントラストを改善するに至った。
【0021】
<本実施の形態の画像処理部の構成、及び画像処理方法>
図5は、本実施の形態におけるX線位相イメージング装置1のブロック図である。図5に示すように、画像処理部5は、画像生成部10、輝度算出部11、閾値設定部12、及び輝度設定部13と、を有して構成される。
【0022】
画像処理部5を限定するものではないが、例えば、検出器4に接続されたパーソナルコンピュータのプロセッサの一部として構成される。したがって、図5では、画像処理部5を複数の機能部に分けて図示したが、これら機能部が、明確に分離したプログラムによって実現される必要はない。
【0023】
図5に示す画像生成部10では、検出器4より取得した画像信号に基づいて、位相コントラスト画像を作成する。
【0024】
輝度算出部11は、撮影された複数枚の位相コントラスト画像を用いて、画素ごとに輝度を平均化した平均輝度と、各画素における輝度の中央値と、を算出する。
【0025】
閾値設定部12は、明るい箇所はより明るく、暗い箇所はより暗くなるように、加算平均に使用する複数枚の画像を振り分ける基準値としての閾値を設定する。閾値は、任意に設定でき、限定するものではない。なお、具体例については後述する。
【0026】
輝度設定部13は、輝度算出部11で得た平均輝度、中央値、及び、閾値設定部12にて設定された閾値を用いて、加算平均に用いる画像を選別して、各画素の輝度を設定する。そして設定された各画素の輝度に基づいて、画像生成部10では、最初に得た複数枚の画像や、複数枚の画像を加算平均したのみの平均画像とは別の新たな画像を作成する。
【0027】
次に、本実施の形態の画像処理方法について説明する。図6図10は、画像処理方法のステップを示すイメージ図である。
【0028】
X線源2と、検出器4との間に、被写体3を設置し(図1を参照)、図6に示すように、P枚(複数枚)の位相コントラスト画像15を撮影する(ステップ1)。被写体3を限定するものではないが、本実施の形態の画像処理方法は、図3図4に示すような、内部に空隙3aが存在する被写体3の位相コントラスト画像のコントラスト改善に適している。なお、撮影枚数を限定するものでないが、適正なコントラストの改善効果を得るために、数十枚程度とすることが好ましい。このとき、X線源2の照射設定と検出器4の設定は変えない。また、被写体3も変化させず固定した状態である。なお、本実施の形態では、撮影枚数を30枚とした。複数枚の画像を短い時間間隔にて、連続して撮影することができる。
以下では、最初のステップ1で撮影する複数枚の位相コントラスト画像を、「第1の画像15」と称する。
【0029】
輝度算出部11では、各画像15の番号をp(p=1~Pまでの変数)、画像中の横位置をx、縦位置をyとして、それぞれの第1の画像15中の各画素の輝度を求める(ステップ2)。なお、このステップ2で求めた輝度を「第1の輝度」と称する。第1の画像15ごとの各画素における第1の輝度は、i(p,x,y)で表すことができる。なお、「画素」とは、画像の最小単位(ピクセル)であり、x,y座標の位置で示される。
【0030】
ここで、第1の輝度を求める画素の範囲を、第1の画像15の全域としてもよいし、画像中の任意に定めた限られた範囲としてもよい。この実施の形態では、第1の画像15の全域を測定対象とした。
【0031】
次に、輝度算出部11では、ステップ2で求めた、P枚の第1の画像15の画素ごとに第1の輝度(i(p,x,y))を加算平均して、各画素の平均輝度(iaverage(x,y))を算出する(ステップ3)。該平均輝度(iaverage(x,y))を、以下の数1で示すことができる。
【0032】
【数1】
【0033】
図7は、各画素の平均輝度(iaverage(x,y))から生成された1枚の平均画像16のイメージ図である。本実施の形態では、平均画像16を、画像生成部10にて生成できる。
【0034】
次に、輝度算出部11では、撮影したP枚の第1の画像15を用い、ステップ2で求めた、各画素における第1の輝度(i(p,x,y))の中央値(med(x,y))を算出する(ステップ4)。
【0035】
図8は、任意の画素における各画像15の第1の輝度と中央値を示している。図8の横軸は、画像番号であり、縦軸は第1の輝度を示す。「中央値」は、第1の輝度のデータを大きさの順に並び替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値を指す。この実施の形態では、第1の画像15の枚数(P)を30枚としたから、真ん中は、15番目と16番目の間になる。よって、下から数えて15番目の第1の輝度と、16番目の第1の輝度を平均して、「中央値」を求める。画像の枚数が偶数である場合は、ちょうど真ん中の順番がないため、その上下の順番の第1の輝度の平均値を「中央値」と定める。一方、第1の画像15の撮影枚数が奇数である場合は、ちょうど真ん中の順番が存在するので、その順番の第1の輝度を「中央値」に設定する。
【0036】
次に、閾値設定部12では、次のステップにて、加算平均する際の画像の選別に用いる閾値を設定する(ステップ5)。この実施の形態では、図9に示すように、ステップ2で求めた平均画像16の全画素における平均輝度(iaverage(x,y))の平均値を閾値(threshold)に設定する。すなわち、閾値を、以下の数2にて求めることができる。
【0037】
【数2】
【0038】
次に、輝度設定部13では、ステップ3で求めた平均画像16の各画素に対し、その画素の平均輝度(iaverage(x,y))と、ステップ5で求めた閾値(threshold)とを比較し、以下のように場合分けして、各画素の輝度を算出する(ステップ6)。なお、このステップ6で算出する各画素の輝度を、ステップ2で求めた第1の輝度と区別すべく「第2の輝度」と称する。
【0039】
[iaverage(x,y)>thresholdの場合]
平均輝度(iaverage(x,y))が、閾値(threshold)より高い画素については、中央値(med(x,y))よりも高い第1の輝度(i(p,x,y))を有する第1の画像15のみを用いて加算平均し、その画素(x,y)における第2の輝度に設定する。
【0040】
図10は、任意の画素における各画像15の第1の輝度と中央値を示している。図10の横軸は、画像番号であり、縦軸は第1の輝度を示す。例えば、平均輝度(iaverage(x,y))cが、図10に示す中央値(med(x,y))よりも高い場合は、図10に示す中央値(med(x,y))よりも高い第1の輝度(i(p,x,y))(範囲aに位置する第1の輝度)のみを加算平均して、第2の輝度とする。換言すれば、範囲bに位置する第1の輝度を間引いて、加算平均する。
【0041】
[iaverage(x,y)<thresholdの場合]
平均輝度(iaverage(x,y))が閾値(threshold)より低い画素については、中央値(med(x,y))よりも低い第1の輝度(i(p,x,y))を有する第1の画像15のみを用いて加算平均し、その画素(x,y)における第2の輝度に設定する。
【0042】
例えば、平均画像16の平均輝度(iaverage(x,y))が、図10に示す中央値(med(x,y))よりも低い場合は、図10に示す中央値(med(x,y))よりも低い第1の輝度(i(p,x,y))(範囲bの位置する第1の輝度)のみを加算平均して、第2の輝度とする。換言すれば、範囲aに位置する第1の輝度を間引いて、加算平均する。
上記のステップ6で得た各画素の第2の輝度を用いて、画像生成部10では、第2の画像を作成する(ステップ7)。
【0043】
本実施例では、エポキシ樹脂中に球状ボイド(直径が約0.3mm)を含む被写体3を観察した。ステップ1で被写体3を30枚撮影し、ステップ2からステップ7に基づく画像処理を施した第2の画像を得た。図11が、本実施例で得た第2の画像17であり、図12が、ステップ3で求めた全体を加算平均したのみの平均画像16である。
図11図12に示すように、本実施の形態の画像処理方法により、画像のコントラストを改善できた。
【0044】
図13は、図11図12に示す各画像のA-A線上の輝度分布を示す。図13に示す第2の画像では、最大輝度が、16625であり、最小輝度が、158733であった。よって輝度差は、751であった。一方、図13に示す平均画像では、最大輝度が、16546であり、最小輝度が、15966であった。よって輝度差は、581であった。このように、本実施例の画像処理方法によれば、従来に比べて、輝度の最大値と最小値の差を、1.5倍ほど大きくできた。
【0045】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態のX線位相イメージング装置及び画像処理方法によれば、位相コントラスト法によって撮影された画像に対し、コントラストを改善でき、視認性を向上することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、ステップ6で、加算平均に用いる第1の画像15を選別する際、第1の輝度の中央値(med(x,y))を用いる。これにより、輝度の高い画像(明るい画像)もしくは輝度の低い画像(暗い画像)のどちらを使用する場合でも、同じ画像枚数で加算平均できる。これにより、ステップ7で、各画素の第2の輝度を用いて作成した第2の画像の中で、ノイズの低減効果に差が生じることを抑制できる。例えば、輝度の中央値でなく、平均値を用いる場合について考察すると、複数枚の第1の画像の輝度のばらつきによっては、平均値が高めになり、或いは低めになることで、加算平均に用いる画像枚数に偏りが生じてしまうおそれがあり、この場合、ノイズが大きく出て、コントラストの改善効果が小さくなることがある。このため、本実施の形態では、画像の選別に、輝度の中央値を用いた。
【0047】
<別の実施の形態>
上記したステップ5では、平均画像16の全画素における平均輝度の平均値を閾値(threshold)に設定したが、別の閾値を設定してもよい。例えば、閾値を求める範囲は、全画素でなく、限定した範囲内の画素としてもよい。このとき、数2のx、yを対象範囲の各サイズに設定する。このように、平均輝度の平均値を求める画素の範囲を任意に設定することができる。例えば、被写体の真ん中付近の空隙有無などを測定したい場合は、全画素とせず、真ん中付近及びその周辺を含めた限定範囲にて閾値を求めることができる。或いは、全画素における平均輝度の平均値に任意の係数を乗じて閾値を設定したり、閾値の数値を直接設定することも可能である。
【0048】
以上、開示の実施の形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のX線位相イメージング装置及び画像処理方法によれば、位相コントラスト法により撮影した画像のコントラストを改善でき、被写体の内部に存在する空隙などの識別性を向上できる。本発明のX線位相イメージング装置を工業分野から医療分野に広く提供できる。
【符号の説明】
【0050】
1 :X線位相イメージング装置
2 :X線源
3、6 :被写体
3a :空隙
4 :検出器
5 :画像処理部
7 :樹脂材
8 :金属
10 :画像生成部
11 :輝度算出部
12 :閾値設定部
13 :輝度設定部
15 :第1の画像
16 :平均画像
17 :第2の画像


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13