(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165611
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ケーブル防護具及びケーブル防護方法
(51)【国際特許分類】
B61L 23/14 20060101AFI20241121BHJP
E01B 31/00 20060101ALI20241121BHJP
B61L 3/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B61L23/14 Z
E01B31/00
B61L3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081947
(22)【出願日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示会名 鉄道技術展・大阪2022 主催者 株式会社産業経済新聞社 展示日 令和4年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(71)【出願人】
【識別番号】000143019
【氏名又は名称】株式会社ミツテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】金田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】横田 昌武
(72)【発明者】
【氏名】覚前 冬将
【テーマコード(参考)】
2D057
5H161
【Fターム(参考)】
2D057AB22
2D057CB02
2D057CB04
5H161AA01
5H161FF01
(57)【要約】
【課題】短時間で施工でき、ケーブルを防護するケーブル防護具を提供する。
【解決手段】ケーブル防護具1は、ケーブルカバー3と、アンカーボルト4とを備える。ケーブルカバー3は、まくらぎ5の側面51との間にケーブル2を収容する収容空間Sを形成する。アンカーボルト4は、ケーブルカバー3をまくらぎ5に取り付ける。ケーブルカバー3は、まくらぎ5の上面52に取り付けられる天板31と、その天板31におけるまくらぎ幅方向の端部から下方に延びる側板32とを有する。天板31は、アンカーボルト4が挿通される貫通孔34を有する。アンカーボルト4は、まくらぎ5に穿孔された下穴53に挿入された部分の径が拡張されてまくらぎ5に固定される金属系アンカーである。天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられたとき、側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法Gは、ケーブル2の直径Dよりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト軌道を横断するケーブルを防護するためのケーブル防護具であって、
まくらぎの側面との間にケーブルを収容する収容空間を形成するケーブルカバーと、
前記ケーブルカバーをまくらぎに取り付けるアンカーボルトとを備え、
前記ケーブルカバーは、まくらぎの上面に取り付けられる天板と、その天板におけるまくらぎ幅方向の端部から下方に延びる側板とを有し、
前記天板は、前記アンカーボルトが挿通される貫通孔を有し、
前記アンカーボルトは、まくらぎに穿孔された下穴に挿入された部分の径が拡張されてまくらぎに固定される金属系アンカーであり、
前記天板がまくらぎの上面に取り付けられたとき、前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間寸法は、前記ケーブルの直径よりも小さいことを特徴とするケーブル防護具。
【請求項2】
前記天板がまくらぎの上面に取り付けられたとき、前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間寸法は、前記ケーブルの半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のケーブル防護具。
【請求項3】
前記収容空間を2つ有し、
前記各収容空間に2本の前記ケーブルを収容可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブル防護具。
【請求項4】
前記天板の下面とまくらぎの上面との間に絶縁制振層を有し、
前記絶縁制振層は、電気絶縁性及び粘弾性を有する材料から成ることを特徴とする請求項1に記載のケーブル防護具。
【請求項5】
前記天板の下面とまくらぎの上面との間に接着剤によって形成される接着層を有することを特徴とする請求項1に記載のケーブル防護具。
【請求項6】
請求項1に記載のケーブル防護具を用いるケーブル防護方法であって、
既設のまくらぎの上面に下穴を穿孔する工程と、
前記ケーブルカバーの内側にケーブルを入れて、そのケーブルカバーをまくらぎに被せる工程と、
前記アンカーボルトを前記貫通孔に挿通して前記下穴に挿入する工程と、
前記アンカーボルトをまくらぎに固定して、前記天板をまくらぎの上面に取り付ける工程とを有することを特徴とするケーブル防護方法。
【請求項7】
請求項2に記載のケーブル防護具を用いるケーブル防護方法であって、
既設のまくらぎの上面に下穴を穿孔する工程と、
前記ケーブルカバーをまくらぎに被せて、そのケーブルカバーをまくらぎ幅方向の一方に偏らせる工程と、
一方の前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間から前記収容空間にケーブルを入れる工程と、
前記アンカーボルトを前記貫通孔に挿通して前記下穴に挿入する工程と、
前記アンカーボルトをまくらぎに固定して、前記天板をまくらぎの上面に取り付ける工程とを有することを特徴とするケーブル防護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト軌道を横断しているケーブルを線路保守用機械、特にマルチプルタイタンパから防護するためのケーブル防護具、及びそれを用いるケーブル防護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道の保守において、マルチプルタイタンパが用いられる。マルチプルタイタンパは、そのタンピングツールで軌道の道床バラストを連続的につき固める大型機械である。軌道には、信号保安装置等のケーブルが横断している箇所がある。そのような箇所でマルチプルタイタンパを用いると、ケーブルを切断するおそれがある。マルチプルタイタンパを用いることができない箇所では、作業員がハンドタイタンパ等でつき固めを行っており、作業負担が大きい。また、マルチプルタイタンパ以外の線路保守用機械がケーブルを損傷するリスクもゼロではない。
【0003】
ケーブルを防護するものとして、カバー付きの防護専用まくらぎがあるが、既設のまくらぎを防護専用まくらぎに交換する作業は多大の労力と時間とを要する。
【0004】
ATS地上子の設置においてATS地上子に接続されるケーブルをまくらぎ側面に沿って保持するケーブルカバーが知られている(特許文献1参照)。このケーブルカバーは、まくらぎにATS地上子のケーブルを新たに取り付けるために用いられる。ケーブルカバーをまくらぎに取り付ける際、まくらぎに穿設した穴の中にインサートが接着され、そのインサートにボルトが螺合されるか、接着系アンカー(「ケミカルアンカー」(登録商標))が用いられる(特許文献1の段落[0031]参照)。接着剤や接着系アンカーの硬化時間が必要であるので、このケーブルカバーは施工に長時間を要する。信号保安装置であるATSの新設は長い間合を確保して行われるので、その長い間合の中でケーブルカバーをまくらぎに取り付けることができる。しかし、このようなケーブルカバーは、通常の短い列車間合では既設のまくらぎに取り付けることができないので、軌道を横断している既設のケーブルの防護に利用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、既設のまくらぎに短時間で施工でき、ケーブルを防護するケーブル防護具及びケーブル防護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のケーブル防護具は、バラスト軌道を横断するケーブルを防護するためのものであって、まくらぎの側面との間にケーブルを収容する収容空間を形成するケーブルカバーと、前記ケーブルカバーをまくらぎに取り付けるアンカーボルトとを備え、前記ケーブルカバーは、まくらぎの上面に取り付けられる天板と、その天板におけるまくらぎ幅方向の端部から下方に延びる側板とを有し、前記天板は、前記アンカーボルトが挿通される貫通孔を有し、前記アンカーボルトは、まくらぎに穿孔された下穴に挿入された部分の径が拡張されてまくらぎに固定される金属系アンカーであり、前記天板がまくらぎの上面に取り付けられたとき、前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間寸法は、前記ケーブルの直径よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
このケーブル防護具において、前記天板がまくらぎの上面に取り付けられたとき、前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間寸法は、前記ケーブルの半径よりも大きいことが好ましい。
【0009】
このケーブル防護具において、前記収容空間を2つ有し、前記各収容空間に2本の前記ケーブルを収容可能であることが好ましい。
【0010】
このケーブル防護具において、前記天板の下面とまくらぎの上面との間に絶縁制振層を有し、前記絶縁制振層は、電気絶縁性及び粘弾性を有する材料から成ることが好ましい。
【0011】
このケーブル防護具において、前記天板の下面とまくらぎの上面との間に接着剤によって形成される接着層を有してもよい。
【0012】
本発明のケーブル防護方法は、前記のケーブル防護具を用いるケーブル防護方法であって、既設のまくらぎの上面に下穴を穿孔する工程と、前記ケーブルカバーの内側にケーブルを入れて、そのケーブルカバーをまくらぎに被せる工程と、前記アンカーボルトを前記貫通孔に挿通して前記下穴に挿入する工程と、前記アンカーボルトをまくらぎに固定して、前記天板をまくらぎの上面に取り付ける工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のケーブル防護方法は、前記のケーブル防護具を用いるケーブル防護方法であって、既設のまくらぎの上面に下穴を穿孔する工程と、前記ケーブルカバーをまくらぎに被せて、そのケーブルカバーをまくらぎ幅方向の一方に偏らせる工程と、一方の前記側板の下端とまくらぎの側面との隙間から前記収容空間にケーブルを入れる工程と、前記アンカーボルトを前記貫通孔に挿通して前記下穴に挿入する工程と、前記アンカーボルトをまくらぎに固定して、前記天板をまくらぎの上面に取り付ける工程とを有することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のケーブル防護具及びケーブル防護方法によれば、ケーブルカバーは、まくらぎの側面との間にケーブルを収容する収容空間を形成するので、その収容空間内のケーブルを防護する。ケーブルカバーをまくらぎに取り付けるためのアンカーボルトが金属系アンカーであるので、接着剤や接着系アンカーの硬化時間が不要であり、既設のまくらぎにケーブル防護具を短時間で施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るケーブル防護具の正面図である。
【
図2】
図2は同ケーブル防護具におけるケーブルカバーの平面図である。
【
図3】
図3は同ケーブル防護具における絶縁制振層の平面図である。
【
図4】
図4は本発明の一実施形態の変形例に係るケーブル防護具の正面図である。
【
図5】
図5(a)~(e)は同ケーブル防護具を用いるケーブル防護方法を時系列順に示す説明図である。
【
図6】
図6(a)~(e)は同ケーブル防護具を用いる別のケーブル防護方法を時系列順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るケーブル防護具について
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1に示すように、ケーブル防護具1は、バラスト軌道を横断するケーブル2を防護する。バラスト軌道とは、道床バラストを用いた軌道である(日本産業規格JIS E1001参照)。軌道とは、施工基面上の道床、軌きょう及びこれらに直接付帯する施設である(同JIS参照)。軌きょうとは、レールとまくらぎとを、はしご状に組み立てたものである(同JIS参照)。
【0017】
ケーブル防護具1は、ケーブルカバー3と、アンカーボルト4とを備える。ケーブルカバー3は、まくらぎ5の側面51との間にケーブル2を収容する収容空間Sを形成する。まくらぎ5は、コンクリート製のPCまくらぎである。PCまくらぎは、鋼より線によってコンクリートに圧縮力を導入する方式のまくらぎである(JIS E1201参照)。アンカーボルト4は、ケーブルカバー3をまくらぎ5に取り付ける。ケーブル防護具1は、2本のアンカーボルト4を有する。
【0018】
ケーブルカバー3は、天板31と、側板32とを有する。天板31は、まくらぎ5の上面52に取り付けられる部分である。側板32は、天板31におけるまくらぎ幅方向の端部から下方に延びる部分である。まくらぎ幅方向は、レール長手方向と同じである。天板31と側板32が成す角度θは鋭角である。ケーブル2が収容される収容空間Sは、天板31、側板32、及びまくらぎ5の側面51とで囲まれる正面視でほぼ逆三角形の空間領域である。収容空間Sは、ケーブル2を通す通路となる。
【0019】
本実施形態では、ケーブルカバー3は、1枚の長方形の鋼板から曲げ加工によって成形される。天板31と側板32の間の曲げ部33は、曲げRが設定される。なお、ケーブルカバー3は、ステンレス製であってもよい。
【0020】
図2に示すように、天板31は、アンカーボルト4が挿通される貫通孔34を有する。
【0021】
アンカーボルト4は、まくらぎ5に穿孔された下穴53に挿入された部分の径が拡張されてまくらぎ5に固定される金属系アンカーである(
図1参照)。
図1では、アンカーボルト4は、下穴53に挿入された部分である先端部41が開いて、径か拡張された状態である。一般的に、アンカーボルトには、接着系アンカーと金属系アンカーがある。従来は、列車振動を受けるまくらぎに用いるアンカーボルトは、接着系アンカーであるべきという固定観念があった。ケーブル防護具1のアンカーボルト4は、金属系アンカーであるので、接着系アンカーと異なり、硬化時間が不要であり、即時に保持力(引張強度)を生じる。
【0022】
天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられたとき、側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法Gは、ケーブル2の直径Dよりも小さい(G<D)。したがって、ケーブルカバー3の内側(収容空間S)にあるケーブル2は、ケーブルカバー3外に脱落しない。
【0023】
本実施形態では、天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられたとき、側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法Gは、ケーブル2の半径Rよりも大きい(G>R)。このため、天板31をまくらぎ5の上面52に取り付ける際に、ケーブルカバー3をまくらぎ幅方向の一方に完全に偏らせると、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法が2Gとなり、他方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法が0となる。大きい方の隙間寸法2Gは、ケーブル2の半径Rの2倍すなわち直径Dより大きいので(2G>D)、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間からケーブル2をケーブルカバー3の内側(収容空間S)に入れることができる。
【0024】
まくらぎ5は、まくらぎ幅方向の両端に側面51があるので、ケーブル防護具1は、2つの収容空間Sを有する。本実施形態では、各収容空間Sに2本のケーブル2を収容可能である。したがって、ケーブル防護具1は、最大4本のケーブル2を防護することができる。
【0025】
本実施形態では、天板31の下面とまくらぎ5の上面52との間に絶縁制振層6を有する。すなわち、天板31は、絶縁制振層6を介して、まくらぎ5の上面52に取り付けられる。絶縁制振層6は、電気絶縁性及び粘弾性を有する材料から成る。その材料は、ゴムである。ゴムは、電気絶縁性及び粘弾性を有する。絶縁制振層6は、薄いゴム板であり、
図3に示すように、アンカーボルトが挿通される貫通孔61を有する。絶縁制振層6は、電気絶縁性及び粘弾性を有する合成樹脂の板又はシートであってもよい。
【0026】
粘弾性を有する絶縁制振層6は、ケーブルカバー3の振動を減衰するので(
図1参照)、ケーブル防護具1の耐久性を向上する。また、ケーブルカバー3が鋼製であると、レール間のまくらぎ表面の電気的な沿面距離が若干減少する。電気絶縁性を有する絶縁制振層6は、そのような沿面距離の減少を軽減し、レール間の絶縁抵抗を向上する。
【0027】
以上、本実施形態に係るケーブル防護具1によれば、ケーブルカバー3は、まくらぎ5の側面51との間にケーブル2を収容する収容空間Sを形成するので、その収容空間内のケーブル2を防護する。ケーブルカバー3をまくらぎ5に取り付けるためのアンカーボルト4が金属系アンカーであるので、接着剤や接着系アンカーの硬化時間が不要であり、既設のまくらぎにケーブル防護具1を短時間で施工ができる。
【0028】
本実施形態の変形例について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、天板31の下面とまくらぎ5の上面52との間に接着剤によって形成される接着層7を有してもよい。接着層7は、天板31とまくらぎ5とを接着する。天板31は、アンカーボルト4(金属系アンカー)でまくらぎ5に取り付けられるので、接着層7による接着力は、アンカーボルト4による保持力のバックアップである。アンカーボルト4による保持力は即時に生じるので、接着層7の硬化時間は、ケーブル防護具1の施工に要する時間に影響しない。また、まくらぎ5の下穴53の壁面の面積よりも、天板31の下面とまくらぎ5の上面52との接触面積の方が広いので、接着系アンカーを用いるよりも、天板31とまくらぎ5の上面52とを接着する方が、接着面積を広くでき、強い接着力を得ることができる。接着層7は、絶縁物であることが望ましい。
【0029】
ケーブル防護具1を用いるケーブル防護方法について、
図5(a)~(e)を参照して説明する。
【0030】
図5(a)に示すように、既設のまくらぎ5の上面52に下穴53を穿孔する。下穴とは、アンカーボルトを用いる前にあけておく穴である。穿孔した下穴53は、清掃される。
【0031】
そして、隣接する2本のまくらぎの間にある既設のケーブル2を一方のまぐらぎ5に寄せる。そして、
図5(b)に示すように、ケーブルカバー3とケーブル2を少し持ち上げて、ケーブルカバー3の内側にケーブル2を入れる。ケーブルカバー3の内側に入れるケーブル2は、1本~4本である。
図5(c)に示すように、そのケーブルカバー3をまくらぎ5に被せる。
【0032】
そして、
図5(d)に示すように、アンカーボルト4をケーブルカバー3の貫通孔34に挿通してまくらぎ5の下穴53に挿入する。
【0033】
そして、
図5(e)に示すように、アンカーボルト4をまくらぎ5に固定する。アンカーボルト4の芯棒42を打ち込むことによって、先端部41が開き、アンカーボルト4がまくらぎ5に固定される。アンカーボルト4は、金属系アンカーであるので、即時に保持力を生じる。アンカーボルト4のナット43を締め付けることによって、ケーブルカバー3の天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられる。
【0034】
取り付けられたケーブルカバー3の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法は、ケーブル2の直径よりも小さいので、ケーブルカバー3の内側(収容空間S)にあるケーブル2は、ケーブルカバー3外に脱落しない。ケーブルカバー3は、ケーブル2を力学的に防護する。
【0035】
上記とは別のケーブル防護方法について、
図6(a)~(e)を参照して説明する。前述したように、天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられたとき、側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法Gは、ケーブル2の半径Rよりも大きい(
図1参照)。この場合、天板31をまくらぎ5の上面52に取り付ける際に、ケーブルカバー3をまくらぎ幅方向の一方に完全に偏らせると、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法が2Gとなり、他方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法が0となる。大きい方の隙間寸法2Gは、ケーブル2の半径Rの2倍すなわち直径Dより大きいので、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間からケーブル2をケーブルカバー3の内側(収容空間S)に入れることができる。このケーブル防護方法は、ケーブル防護具1のこのような特徴を利用する。なお、ケーブル2の直径Dによっては、ケーブルカバー3をまくらぎ幅方向の一方に不完全に偏らせても、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間からケーブル2をケーブルカバー3の内側に入れることができる。
【0036】
図6(a)に示すように、既設のまくらぎ5の上面52に下穴53を穿孔する。穿孔した下穴53は、清掃される。
【0037】
そして、
図6(b)に示すように、ケーブルカバー3をまくらぎ5に被せて、そのケーブルカバー3をまくらぎ幅方向の一方に偏らせる。これにより、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法が大きくなる。そして、一方の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間から収容空間S(ケーブルカバー3の内側)にケーブル2を入れる。ケーブルカバー3をまくらぎ5に被せた状態でケーブル2を入れるので施工が容易である。
【0038】
そして、
図6(c)に示すように、ケーブルカバー3の貫通孔34の位置をまくらぎ5の下穴53の位置に合わせ、
図6(d)に示すように、アンカーボルト4を貫通孔34に挿通して下穴53に挿入する。
【0039】
そして、
図6(e)に示すように、アンカーボルト4の芯棒42を打ち込むことによって、先端部41が開き、アンカーボルト4がまくらぎ5に固定される。アンカーボルト4は、金属系アンカーであるので、即時に保持力を生じる。アンカーボルト4のナット43を締め付けることによって、ケーブルカバー3の天板31がまくらぎ5の上面52に取り付けられる。
【0040】
取り付けられたケーブルカバー3の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法は、ケーブル2の直径よりも小さいので、ケーブルカバー3の内側(収容空間S)にあるケーブル2は、ケーブルカバー3外に脱落しない。ケーブルカバー3は、ケーブル2を力学的に防護する。
【実施例0041】
特許文献1に記載されたケーブルカバーにおいて接着系アンカーや接着剤で固着するインサートが用いられることから分かるように、従来は、PCまくらぎに金属系アンカーを用いる発想には至らなかった。従来の固定観念の真偽を確かめるため、金属系アンカーの引張強度試験を行った。
【0042】
アンカーボルト4として、芯棒打ち込み式の金属系アンカーであって、ねじ径12mm、定着長(径が拡張される部分の長さ)20mmのものを用いた。先ず、下穴53の位置決めをするための穴あけ治具(図示せず)をまくらぎ5に被せ、ドリルでまくらぎ5(PCまくらぎ3-5型)の上面52に下穴53を穿孔した。穿孔径は12.7mm、深さは70mmとした。下穴53を穿孔した後、掃除機で切りくずを吸い取り、下穴53内をダストポンプで清掃した。そして、アンカーボルト4を下穴53に挿入した。なお、ケーブルカバー3は、アンカーボルト4の引張強度には関係しないので、この試験では省略した。そして、アンカーボルト4の芯棒42をハンマーで打ち込んでまくらぎ5に固定した。まくらぎ5における軌間外2か所、軌間内2か所、中央部1か所の計5か所にそれぞれアンカーボルト4を固定した。そして、引抜き試験機を設置し、アンカーボルト4の最大引張強度を測定した。
【0043】
最大引張強度(引抜き強度)は、5か所の平均値19.0kN、最小値15.0kN、最大値25.0kNであった。引抜け時の状態は、スリップ抜き上がりであった。まくらぎ5のコンクリート破壊、アンカーボルト4の破断はなかった。
アンカーボルト4として、ボルトを回すことによって径が拡張する方式の金属系アンカーであって、ねじ径10mm、定着長75mmのものを用いた(株式会社泰生工業製、商品名「ヒジカタボルト」)。下穴53の穿孔径は13mm、深さは85mmとした。それ以外の試験条件は実施例1と同じにして最大引張強度を測定した。
最大引張強度(引抜き強度)は、5か所の平均値6.4kN、最小値5.0kN、最大値9.0kNであった。引抜け時の状態は、スリップ抜き上がりであった。まくらぎ5のコンクリート破壊、アンカーボルト4の破断はなかった。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、アンカーボルト4は、芯棒打ち込み式以外の金属系アンカーであってもよい。また、ケーブル防護具1は、マルチプルタイタンパ以外の機械からケーブルを防護するために用いてもよい。また、ケーブルカバー3の側板32の下端とまくらぎ5の側面51との隙間寸法Gは0であってもよい。