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  • 特開-秘匿通信 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165612
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】秘匿通信
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/34 20060101AFI20241121BHJP
   H04L 9/18 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H04L9/34
H04L9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081948
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政行
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インターネット等のネットワークや無線通信ネットワーク等において、セキュリティを向上させる秘匿通信方式を提供する。
【解決手段】任意の人数によるローカルなグループのデジタル通信において、ビット列の並びを操作するビット列操作部の動作により、当該ローカルなグループ外に対する秘匿を実現する秘匿通信方式であって、ビット列操作部203はその操作内容が、ビット規則設定部205に設定されており、任意のビットと任意のビットを入れ替える。送信信号処理部は、ビット列操作部が変換した入力部の入力信号及びその変換の規則をビット規則設定部に格納し、送信信号に変換して送信部から送信する。受信信号処理部は、受信部の受信信号をデジタル信号に変換し、ビット列操作部215で変換し、その変換の規則をビット規則設定部217に格納し、出力信号に変換する。出力部は、信号を出力する。また、ビット規則設定部は、外部メモリ上にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の人数によるローカルなグループのデジタル通信において、ビット列の並びを操作するビット列操作部の動作により、当該ローカルなグループ外に対する秘匿を実現することを特徴とする秘匿通信方式
【請求項2】
前記ビット列操作部の操作内容は、当該ビット列操作部に接続されたビット規則設定部に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の秘匿通信方式
【請求項3】
前記ビット規則設定部に設定された操作内容は、任意のビットと任意のビットを入れ替えるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の秘匿通信方式
【請求項4】
前記ビット規則設定部によるルール化は、任意のビットの値を演算により変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の秘匿通信方式
【請求項5】
信号入力部の入力信号をビット列操作部で変換し、なおかつその変換の規則を前記ビット規則設定部に格納し、送信信号に変換する送信信号処理部を有し、送信部から信号を送信することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の秘匿通信方式
【請求項6】
信号受信部の受信信号を受信信号処理部でデジタル信号に変換し、ビット列操作部で変換し、なおかつその変換の規則を前記ビット規則設定部に格納し、出力信号に変換する出力部を有し、当該出力部からモニターやスピーカーから信号を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の秘匿通信方式
【請求項7】
前記ビット列操作部の操作内容を有する前記ビット規則設定部は当該装置に接続された外部メモリ上にあることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の秘匿通信方式
【請求項8】
前記ビット規則設定部が有する前記操作内容はキーボード等の入力デバイスからの入力によって記載されるものであり、当該記載内容に沿って前記ビット列操作部が動作することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の秘匿通信方式





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターネット等のネットワークや無線通信ネットワーク等において、セキュリティを向上させる通信システムに関するものであり、特に、グループ単位での通信に有効な手段についてのものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記されているように、各国の諜報機関や詐欺集団、また海上においては海賊行為を行う集団などが電子メールやチャット、音声通話などの通信を傍受していることが広く知られている。これに対抗して通信元や通信先などの情報を通信網から秘匿することで通信の匿名性を確保するTor(The Onion Router)等の匿名化ツールが普及している。
【0003】
また、より高度な秘匿手法として、通信装置で複数回異なる公開鍵を用いて暗号化し、秘匿通信網内部の複数のサーバ装置間で復号を繰り返しながらメッセージをシャッフルすることで秘匿通信網に対する匿名性を確保する手法(mix-net)が知られている。
【0004】
また、近年、研究が盛んに行われているのが量子暗号を用いた通信である。これは伝送する符号を複雑化して解読しにくくするのみならず、盗聴者の痕跡を検出する能力に秀でており、盗聴の痕跡を見つけたセッションを破棄することで安全性を確保するものである(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-125957
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】荒平 慎, “量子暗号を用いた秘匿通信”, Kensetsu Denki Gijyutsu Vol.178 2012.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線通信の暗号化として、例えば無線LANでは、OSI参照モデルにおけるデータリンク層でWPA2(Wi-Fi Protected Access 2)やWPA3(Wi-Fi Protected Access 3)と呼ばれる規格が使われていて、これらは強固な暗号化方式ではあるものの、近年、WPA3にも脆弱性が発見されており、より強固な暗号化通信の実現のためには、さらに2重3重の暗号化が必要である。
【0008】
なお、OSI(Open Systems Interconnection: 開放型システム間相互接続)参照モデルとは、コンピュータネットワークに求められる通信機能を7階層の構造に分割し、定義したものであり、その最下層は物理層と呼ばれる。
【0009】
本発明は前記OSI参照モデルにおける物理層の通信の秘匿性を強化することを目標とするものである。つまり、ローカルなグループ間通信に対して、そのグループ内で取り決めたやり方で秘匿通信を実現するものである。
【0010】
このような技術はSNS(Social Networking Service)の利用が盛んになってきた現在、秘匿に対する必要性が高まっているため、研究も盛んである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
任意の人数によるローカルなグループのデジタル通信において、ビット列の並びを操作するビット列操作部の動作により、当該ローカルなグループ外に対する秘匿を実現することを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0012】
前記ビット列操作部の操作内容は、当該ビット列操作部に接続されたビット規則設定部に設定されていることを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0013】
前記ビット規則設定部に設定された操作内容は、任意のビットと任意のビットを入れ替えるものであることを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0014】
前記ビット規則設定部によるルール化は、任意のビットの値を演算により変化させることを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0015】
信号入力部の入力信号をビット列操作部で変換し、なおかつその変換の規則を前記ビット規則設定部に格納し、送信信号に変換する送信信号処理部を有し、送信部から信号を送信することを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0016】
信号受信部の受信信号を受信信号処理部でデジタル信号に変換し、ビット列操作部で変換し、なおかつその変換の規則を前記ビット規則設定部に格納し、出力信号に変換する出力部を有し、当該出力部からモニターやスピーカーから信号を出力することを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0017】
前記ビット列操作部の操作内容を有する前記ビット規則設定部は、当該装置に接続された外部メモリ上にあることを特徴とする秘匿通信方式とする。
【0018】
前記ビット規則設定部が有する前記操作内容はキーボード等の入力デバイスからの入力によって記載されるものであり、当該記載内容に沿って前記ビット列操作部が動作することを特徴とする秘匿通信方式とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1によれば、ディスカッションをしている任意のグループにおいて、通信の秘匿性を独自に決めたルールにより向上させることができる。
【0020】
請求項2によれば、秘匿化ルールを別ルーチンに設定することが可能になり、場面に応じた秘匿をすることが可能になる。
【0021】
請求項3によれば、簡易な方法で秘匿化をすることが可能になる。
【0022】
請求項4によれば、前記秘匿化ルールの設定をする必要がなくなり、事前に取り決めた手段で秘匿化をすることが可能になる。一例として、当該通信をしている日付が4月1日であれば4ビット目と1ビット目を入れ替えるといったルールになる。
【0023】
請求項5によれば、本発明の構成要素を含めた送信機を実現することが出来る。
【0024】
請求項6によれば、本発明の構成要素を含めた受信機を実現することが出来る。
【0025】
請求項7によれば、前記設定された秘匿化ルールはUSBメモリやクラウドといった外部メモリに保存され、それを通信機と接続することにより当該ルールを実現することが出来る。
【0026】
請求項8によれば、通信機に手動で秘匿化ルールを設定することが出来、事前にUSBメモリを配布するといった作業が不要になる。

【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ローカルな通信の意味するところを示した図
図2】全体処理フロー
図3】秘匿化の説明図
図4】秘匿化ルールを設定する手段の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0029】
通信をしている当事者の大切な情報を守るためには、いわゆるセキュア(Secure)な通信、つまり暗号化により安全が担保された通信が必須である。インターネットの普及により世の中は一気に便利になり、近年ではお金の振込すら遠隔で行えるようになっている。
【0030】
反面、こういった便利になった状況を悪用し、情報を盗聴したり内容を改ざんしたりするといった悪意のある人間も現れてきている。場合によれば、こういった悪意により金銭的に甚大な被害が発生することがあり、また、防衛面で被害が発生すれば、国家に多大な影響を与えうる。
【0031】
これらの被害を最小限にするためにも前記セキュアな通信は必須であるが、秘匿を実現するためには、いわゆるOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルのレイヤ2と言われるデータリンク層で取り決めたプロトコルに沿った暗号化制御が必要であり、その基盤となる秘匿のルールは当該システムに対して取り決めたものに沿うことになる。
【0032】
しかるに、無線機そのものといった最下層であるところの物理層レベルでの秘匿が可能になれば、極ローカルなグループ間のみで秘匿ルールを決め、上位層で取り決めたルールに沿わないセキュア通信が可能になる。
【0033】
このことにより、例えば戦時下において、同じ通信装置を使っている同一国軍内であっても、特定のグループが、当該グループ内でのみ解読出来る秘匿通信をすることが可能になり、スパイが存在したとしても影響を最小限に抑えることが出来る。
【0034】
本発明が目的とするところは、このように、物理層レベルで実施可能な秘匿通信に関するものである。以下、その実現方法について説明する。
【0035】
図1は本発明の利用環境を説明するための図である。ある通信事業者がサービスしている利用者の集団を101とし、この通信システムを利用して任意の団体が通信をしているとする。この任意の団体を103とする。本発明は、103内で通信しているグループ(例えば図101における黒丸の三者)に関して、その秘匿性を確保することを目的とするものである。
【0036】
一般にハッカーと呼ばれている集団は101のセキュリティの穴に侵入し、そこから101全体の中の任意の通信を傍受し、結果として103の利用者も盗聴されることになる。
【0037】
本発明は103がローカルルールとして独自の秘匿をすることによって、ハッカーにより通信内容を復元されたとしても、意味のある情報列として複合されない秘匿方式を付加するものである。
【0038】
図2は103の前記ローカルルールを示した図である。任意の通信端末のマイクロホンなどの入力部201に音声入力をし、当該入力部201にてデジタル信号に変換され、ビット列操作部203にて前記デジタル信号のビット列に対して、入れ替えるなどの処理をし、ビット列を操作する。
【0039】
ビット配列の入れ替え等の処理を行ったデータ列は送信信号処理部207にて通常の処理であるところの、変調処理や暗号化処理を行い、アンテナ等の送信部209から送信される。
【0040】
任意の端末の前記送信部209から送信された信号は他の端末の受信部211にて受信される。当該受信データは受信信号処理部213にて復号処理される。ここで復号とは復調処理や通信事業者ごとに行っている暗号処理の復号等を指す。
【0041】
前記復号処理された受信信号はビット列操作部によって所望のビット列の並びに変換される。所望のビット列とは前記送信側のビット規則設定部205によって規定されるビット列の置き換え作業をすることである。
【0042】
つまり送信側ビット規則設定部205が例えば1ビット目と3ビット目を入れ替える設定であれば、1ビット目をテンポラリのレジスタ等に退避し、3ビット目の値を1ビット目にコピーし、前記テンポラリのレジスタ等に退避してある値を3ビット目にコピーする作業を行う。
【0043】
こういったビット操作の規則がビット規則設定部には格納されているのである。
【0044】
図3は前記ビット操作の一例を示したものである。つまり、ビット規則設定部に1ビット目と3ビット目を入れ替える旨の記載がある場合、例えば301のような格納データであれば、303に示すように1ビット目の信号をテンポラリのレジスタに退避し、3ビット目の信号を1ビット目にコピーする。さらに、退避したレジスタ内の信号を3ビット目にコピーするのである。
【0045】
そして305のように、テンポラリのレジスタへの格納データを3ビット目に戻す処理を行う。以上のような処理により、フレーム内のデータ配列は操作され、仮にハッカーによりこの通信事業者内の通信の暗号が解読されたとしても、このローカルな通信は独自にビット配列が操作されているため復号盗聴される心配は無い。
【0046】
次に本発明にかかるビット列操作部とビット規則設定部について図4を用いて説明する。通信機401のビット列操作部403に前記ビット操作の規則を設定する方法に関するものである。
【0047】
当該設定する方法としては複数考えることが出来る。一つ目はUSBメモリやクラウドの外部記憶装置405の記憶内容を読み込むことである。
【0048】
利用形態の一例して、ビット操作の規則を格納したUSBメモリを通信の代表者がメンバーに配布する。また、通信の代表者がクラウドに格納し、メンバーがこれをダウンロードする。当該USBメモリや外部クラウドに格納されたビット操作規則に沿ってビット列操作部403がビット列を操作する。
【0049】
また、他の手段として、例えば会議を実施する日付を元に何らかの操作規則が定まるように事前に決めておき、参加者がキーボードなどから手動で規則を設定してもよい。
【0050】
また、本発明にかかるビット操作は、あるビットの内容とあるビットの内容を入れ替えるのみではなく、ビット規則設定部に設定された任意の変換を施すものであってもよい。
【0051】
以上のように、本発明は、通信事業者によって定義された秘匿手段に加えて、ローカルなグループにおいて独自に秘匿手段を付加することができ、その秘匿の手段であるところのビット配置ルールを設定するために複数の手段を有し、よりセキュアな通信を可能にすることができるものである。
【符号の説明】
【0052】
101…通信事業者の通信網、 103…任意のローカルなグループ、
201…入力部、 203…送信側ビット列操作部、
205…送信側ビット規則設定部、 207…送信信号処理部、
209…送信部、
211…信号受信部、 213…受信信号処理部、
215…受信側ビット列操作部、 217…受信側ビット規則設定部、
219…出力部、
301…あるフレームの送信データ列、
303…コピーされるビット位置の内容を退避、
305…退避した内容をペースト、
401…通信機全体、 403…ビット列操作部、
405…ビット規則設定部、




















図1
図2
図3
図4