(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165613
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】防音装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/82 20060101AFI20241121BHJP
F24F 13/24 20060101ALI20241121BHJP
F24F 7/04 20060101ALI20241121BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04B1/82 S
E04B1/82 M
F24F13/24 242
F24F7/04 B
G10K11/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081950
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】由田 哲夫
【テーマコード(参考)】
2E001
3L058
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001FA06
2E001GA01
2E001HF15
2E001NA05
2E001NB02
2E001NC01
2E001ND16
3L058BB04
3L058BC04
3L058BC05
5D061EE12
5D061EE14
5D061EE34
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑制しつつ、遮音性能の向上を図ることができる防音装置を提供する。
【解決手段】建物2のガラリ4から屋外への音の伝搬を抑制するための防音装置1であって、建物2の屋内に設けられ、屋外からガラリ4を介して屋内に給気される空気の通気路を構成する通気路上部10及び通気路下部20と、前記通気路に設けられ、吸音可能に構成された吸音部30と、前記通気路に設けられ、ガラリ4に向かって移動する音を反射させて吸音部30に誘導する反射部40と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の給気口から屋外への音の伝搬を抑制するための防音装置であって、
建物の屋内に設けられ、屋外から前記給気口を介して屋内に給気される空気の通気路を構成する通気路構成部と、
前記通気路に設けられ、吸音可能に構成された吸音部と、
前記通気路に設けられ、前記給気口に向かって移動する音を反射させて前記吸音部に誘導する反射部と、
を具備する、
防音装置。
【請求項2】
前記給気口に向かって移動する音の直進を妨げる位置に設けられ、当該音を回折可能な回折部を具備する、
請求項1に記載の防音装置。
【請求項3】
前記吸音部が前記回折部の少なくとも一部を構成する、
請求項2に記載の防音装置。
【請求項4】
前記吸音部は、
前記給気口に対して間隔をあけて、かつ、屋内側から見て前記給気口の開口と重複するように設けられる、
請求項3に記載の防音装置。
【請求項5】
前記吸音部は、
箱状に形成され、内側が複数の内部空間に区画された箱状部材と、
複数の前記内部空間それぞれに設けられた吸音材と、
を具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の給気口から屋外への音の伝搬を抑制するための防音装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等には、製造過程で生じる水蒸気や煙等を排出するため、換気設備が設けられる場合がある。換気を行うための給気口として壁面にガラリを設置することが多いが、この場合、ガラリ部分が遮音上の弱点となる。敷地境界での騒音レベルを規定値以下にするには、給気口(ガラリ)を敷地境界から離す必要があり、建物計画に大きく影響を与える。給気口が敷地境界に近接する場合は、給気口からの騒音伝搬を防止するため、給気口の屋外側に防音カバーが設置される場合がある(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、給気口の屋外側に防音カバーを設ける場合、風雨等の外部要因に対応するために、強度、対候性、耐久性等が要求される。このため、防音カバーの設置に要するコストが増大するという問題がある。
【0004】
一方、給気口の屋内側に防音カバーを設ける場合、工場内が拡散音場(場内で反射を繰り返し、屋内のどの点でも音のレベルが同じ状態)であると、回折による低減効果が小さくなり、屋外に防音カバーを設置する場合と比べて遮音性能が低くなり易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コストの増大を抑制しつつ、遮音性能の向上を図ることができる防音装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の給気口から屋外への音の伝搬を抑制するための防音装置であって、建物の屋内に設けられ、屋外から前記給気口を介して屋内に給気される空気の通気路を構成する通気路構成部と、前記通気路に設けられ、吸音可能に構成された吸音部と、前記通気路に設けられ、前記給気口に向かって移動する音を反射させて前記吸音部に誘導する反射部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記給気口に向かって移動する音の直進を妨げる位置に設けられ、当該音を回折可能な回折部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記吸音部が前記回折部の少なくとも一部を構成するものである。
【0011】
請求項4においては、前記吸音部は、前記給気口に対して間隔をあけて、かつ、屋内側から見て前記給気口の開口と重複するように設けられるものである。
【0012】
請求項5においては、前記吸音部は、箱状に形成され、内側が複数の内部空間に区画された箱状部材と、複数の前記内部空間それぞれに設けられた吸音材と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、コストの増大を抑制しつつ、遮音性能の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2においては、遮音性能のさらなる向上を図ることができる。
【0016】
請求項3においては、部材の点数を低減することができ、ひいてはコストの増大をさらに抑制することができる。
【0017】
請求項4においては、吸音部によって、給気口から取り入れた外気の通気路を確保しつつ、給気口へ向かう音を遮蔽することにより給気口から屋外に伝搬する音をさらに低減させることができる。
【0018】
請求項5においては、吸音材の表面積を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防音装置を示す側面断面図。
【
図2】屋内で生じた音が反射する状態を示す防音装置の側面断面図。
【
図3】屋内で生じた音が回折する状態を示す防音装置の側面断面図。
【
図4】(a)箱状部材が多段に区画された別例の吸音部を示す側面断面図。(b)吸音材の厚みを厚くした別例の吸音部を示す側面断面図。(c)箱状部材に仕切りが設けられていない別例の吸音部を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。なお、図中では、屋内から屋外に向かう方向を前方、屋外から屋内に向かう方向を後方として説明を行う。
【0021】
以下では、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る防音装置1について説明する。
【0022】
防音装置1は、建物2に設けられる。建物2は、例えば工場である。建物2においては、壁3に設けられたガラリ4(給気口)から屋外の空気を屋内に給気し、例えば天井に設けられた排気口(不図示)から屋内の空気を屋外に排気することにより、換気を行うことができる。但し、建物2では、屋内で音(騒音)が生じる場合があり、この場合、音がガラリ4から屋外に伝搬する。建物2には、ガラリ4を介して屋外に伝搬する音を低減(当該音の遮音性能を向上)させるために、防音装置1が設けられている。
【0023】
防音装置1は、建物2の屋内に設けられる。防音装置1は、ガラリ4の後方(屋内側)に設けられる。防音装置1は、主として通気路上部10、通気路下部20、吸音部30及び反射部40を具備する。
【0024】
通気路上部10は、ガラリ4から屋内に取り入れた空気の通気路の上部を構成するものである。通気路上部10は、通気路上壁11及び第一吸音材12を具備する。
【0025】
通気路上壁11は、板状に形成される。通気路上壁11は、ガラリ4よりも上方において、板面を上下方向に向けた状態で壁3の屋内側の面に固定される。通気路上壁11は、左右方向(紙面に対して垂直な方向)においてガラリ4の左右幅方向と重複する位置に設けられる。好ましくは、通気路上壁11は、当該通気路上壁11の左端がガラリ4の左端よりも左方に位置し、当該通気路上壁11の右端がガラリ4の右端よりも右方に位置するように設けられる。
【0026】
第一吸音材12は、空気中に伝わる音波の振動を熱エネルギーに変換させる事で音を減衰させる素材によって形成される。第一吸音材12は、通気路上壁11の下面に貼付される。第一吸音材12は、壁3に対して前後に間隔をあけて、通気路上壁11の後端から前後中途部にかけて設けられる。
【0027】
通気路下部20は、ガラリ4から屋内に取り入れた空気の通気路の下部を構成するものである。通気路下部20は、通気路下壁21及び第二吸音材22を具備する。
【0028】
通気路下壁21は、板状に形成される。通気路下壁21は、ガラリ4よりも下方において、板面を上下方向に向けた状態で壁3の屋内側の面に固定される。通気路下壁21は、左右方向(紙面に対して垂直な方向)においてガラリ4の左右幅方向と重複する位置に設けられる。好ましくは、通気路下壁21は、当該通気路下壁21の左端がガラリ4の左端よりも左方に位置し、当該通気路下壁21の右端がガラリ4の右端よりも右方に位置するように設けられる。
【0029】
第二吸音材22は、空気中に伝わる音波の振動を熱エネルギーに変換させる事で音を減衰させる素材によって形成される。第二吸音材22は、通気路下壁21の上面に貼付される。第二吸音材22は、壁3に対して前後に間隔をあけて、通気路下壁21の後端から前後中途部にかけて設けられる。
【0030】
なお、ガラリ4よりも右方には、ガラリ4から屋内に取り入れた空気の通気路の右部を構成する通気路右部(不図示)が設けられる。一方、ガラリ4よりも左方には、ガラリ4から屋内に取り入れた空気の通気路の左部を構成する通気路左部(不図示)が設けられる。
【0031】
吸音部30は、屋内で生じた音(騒音)を吸音するものである。吸音部30は、箱状部材31及び第三吸音材32を具備する。
【0032】
箱状部材31は、前側が開口した箱状に形成される。箱状部材31は、仕切り31aによって内部空間が上下2段に区画されるように形成される。箱状部材31は、通気路上部10と通気路下部20との間に設けられる。箱状部材31は、ガラリ4の後方(屋内側)において、屋内側から見て(背面視において)ガラリ4の開口と重複する位置に設けられる。好ましくは、箱状部材31は、屋内側から見てガラリ4の開口が完全に隠れるように設けられる。
【0033】
箱状部材31は、ガラリ4に対して前後に間隔をあけて設けられる。箱状部材31は、通気路上部10に対して上下に間隔をあけて設けられる。箱状部材31は、通気路下部20に対して上下に間隔をあけて設けられる。このように箱状部材31が設けられることにより、
図1の破線の矢印で示すように、ガラリ4から取り入れた外気の通気路を確保することができる。なお、箱状部材31の取り付け(固定)方法は、外気の通気路を確保できる限りにおいて任意の方法とすることができる。例えば、箱状部材31に脚部を設け、当該脚部を介して通気路下部20に載置してもよく、或いは、箱状部材31の側面が前記通気路右部(不図示)及び前記通気路左部(不図示)に固定されてもよい。
【0034】
第三吸音材32は、空気中に伝わる音波の振動を熱エネルギーに変換させる事で音を減衰させる素材によって形成される。第三吸音材32は、箱状部材31の上段及び下段それぞれに設けられる。より詳細には、第三吸音材32は、箱状部材31の上段及び下段の内部空間を構成する壁面の全体に貼付される。以下、箱状部材31の上段に設けられる第三吸音材32を第三吸音材32Aと称し、箱状部材31の下段に設けられる第三吸音材32を第三吸音材32Bと称することもある。
【0035】
反射部40は、通気路を屋外側に向かって進む音(音波)を反射し、吸音部30に誘導するものである。反射部40は、第一反射材41及び第二反射材42を具備する。
【0036】
第一反射材41は、壁3及び通気路上部10で構成されるコーナー部分に設けられる。第一反射材41は、反射面が吸音部30に向くように傾斜した状態で設けられる。より詳細には、第一反射材41は、通気路上部10と吸音部30との間の通気路を屋外側に向けて進む音が、当該第一反射材41に反射して箱状部材31の上段に設けられた第三吸音材32Aに向かうように傾斜して設けられる。
【0037】
第二反射材42は、壁3及び通気路下部20で構成されるコーナー部分に設けられる。第一反射材41は、反射面が吸音部30に向くように傾斜した状態で設けられる。より詳細には、第二反射材42は、通気路下部20と吸音部30との間の通気路を屋外側に向けて進む音が、当該第二反射材42に反射して箱状部材31の下段に設けられた第三吸音材32Bに向かうように傾斜して設けられる。
【0038】
以下、
図2及び
図3を参照して、屋内で生じた音の流れ、並びに、通気路上部10、通気路下部20及び吸音部30の配置位置の詳細について説明する。
【0039】
上述の如く、吸音部30は、ガラリ4の後方において屋内側から見て(背面視において)ガラリ4の開口と重複するように設けられている。このため、ガラリ4に向かって
図2の矢印Aで示す方向に移動する音は、吸音部30によって遮蔽される。こうして、ガラリ4に向かって進む音がガラリ4に到達するのを抑制することができる。
【0040】
また、屋内で生じた音の一部は、通気路上部10と吸音部30との間の通気路において屋外側に向けて(
図2の矢印B1で示す方向に)進む。ここで、通気路上壁11の下面に第一吸音材12が貼付されていることにより、通気路上部10と吸音部30との間の通気路内での音の乱反射が抑制される。通気路上部10と吸音部30との間の通気路を矢印B1で示す方向に進む音は、第一反射材41に到達すると当該第一反射材41によって反射される。第一反射材41に反射した音は、箱状部材31の上段に設けられた第三吸音材32Aに向けて進み、当該第三吸音材32Aによって吸音される。こうして、通気路上部10と吸音部30との間の通気路を
図2の矢印B1で示す方向に移動する音は、第一反射材41によって吸音部30の第三吸音材32Aに誘導されることにより、ガラリ4から屋外に伝搬することが抑制される。
【0041】
また、屋内で生じた音の一部は、通気路下部20と吸音部30との間の通気路において屋外側に向けて(
図2の矢印B2で示す方向に)進む。ここで、通気路下壁21の上面に第二吸音材22が貼付されていることにより、通気路下部20と吸音部30との間の通気路内での音の乱反射が抑制される。通気路下部20と吸音部30との間の通気路を矢印B2で示す方向に進む音は、第二反射材42に到達すると当該第二反射材42によって反射される。第二反射材42に反射した音は、箱状部材31の下段に設けられた第三吸音材32Bに向けて移動し、当該第三吸音材32Bによって吸音される。こうして、通気路下部20と吸音部30との間の通気路を
図2の矢印B2で示す方向に移動する音は、第二反射材42によって吸音部30の第三吸音材32Bに誘導されることにより、ガラリ4から屋外に伝搬することが抑制される。
【0042】
また、吸音部30の箱状部材31は、仕切り31aによって内部空間が上下2段に区画されるように形成されており、各段の壁面に第三吸音材32(32A,32B)が設けられている。これにより、第三吸音材32の表面積を増大させることができ、ひいては音の低減効果(特に対象音の周波数が比較的高い場合における低減効果)を向上させることができる。
【0043】
また、
図3に示すように、吸音部30は、側面視において通気路上部10の下後端とガラリ4の開口の上後端とを結ぶ直線(一点鎖線で示す矢印C1)上に設けられている。このため、吸音部30は、矢印C1方向への音が直進するのを妨げることができる。よって、ガラリ4に向けて矢印C1方向に移動する音は、吸音部30の上前端において回折し、これにより音が低減(減衰)される。
【0044】
また、吸音部30は、側面視において通気路下部20の上後端とガラリ4の開口の下後端とを結ぶ直線(一点鎖線で示す矢印C2)上に設けられている。このため、吸音部30は、矢印C2方向への音が直進するのを妨げることができる。よって、ガラリ4に向けて矢印C2方向に移動する音は、吸音部30の下前端において回折し、これにより音が低減(減衰)される。
【0045】
また、通気路上部10は、側面視において吸音部30の上前端とガラリ4の開口の上後端とを結ぶ直線(二点鎖線で示す矢印D1)上に設けられている。このため、通気路上部10は、矢印D1方向への音が直進するのを妨げることができる。よって、ガラリ4に向けて矢印D1方向に移動する音は、通気路上部10の後端において回折し、これにより音が低減(減衰)される。
【0046】
また、通気路下部20は、側面視において吸音部30の下前端とガラリ4の開口の下後端とを結ぶ直線(二点鎖線で示す矢印D2)上に設けられている。このため、通気路下部20は、矢印D2方向への音が直進するのを妨げることができる。よって、ガラリ4に向けて矢印D2方向に移動する音は、通気路下部20の後端において回折し、これにより音が低減(減衰)される。
【0047】
このように、通気路上部10、通気路下部20及び吸音部30は、ガラリ4に向かう音の直進を妨げる位置に設けられているため、ガラリ4に向かう音が必ず一度は回折することとなる。このため、ガラリ4から屋外に伝搬する音を低減(減衰)させることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る防音装置1は、ガラリ4に向かう音を反射部40によって反射させて吸音部30(第三吸音材32)に誘導するように構成されている。これにより、ガラリ4から屋外に伝搬する音を低減させることができる。さらに、通気路上部10、通気路下部20及び吸音部30によって、ガラリ4に向かう音を必ず一度は回折させる。これにより、ガラリ4から屋外に伝搬する音をさらに低減させることができる。
【0049】
そして、吸音部30は、ガラリ4から屋内に取り入れた空気の通気路を確保するように設けられているため、本実施形態に係る防音装置1は通気と遮音性能を両立させることができる。また、本実施形態に係る防音装置1は、建物2の屋内に設置しても音の十分な低減効果が得られるため、通気と遮音性能の両立を低コストで実現することができる。
【0050】
以上の如く、本実施形態に係る防音装置1は、
建物2のガラリ4(給気口)から屋外への音の伝搬を抑制するための防音装置1であって、
建物2の屋内に設けられ、屋外から前記ガラリ4を介して屋内に給気される空気の通気路を構成する通気路上部10及び通気路下部20(通気路構成部)と、
前記通気路に設けられ、吸音可能に構成された吸音部30と、
前記通気路に設けられ、前記ガラリ4に向かって移動する音を反射させて前記吸音部30に誘導する反射部40と、
を具備するものである。
【0051】
このような構成により、コストの増大を抑制しつつ、遮音性能の向上を図ることができる。
具体的には、防音装置1は建物2の屋内に設けられるため、風雨等の外部要因に影響を受けることがないので、強度、対候性、耐久性等の向上に要するコストを低減することができる。
また、ガラリ4に向かう音を反射部40によって反射させて吸音部30に誘導することにより、吸音部30の第三吸音材32によって吸音させることができ、ひいてはガラリ4から屋外に伝搬する音を低減させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る防音装置1は、
前記ガラリ4に向かって移動する音の直進を妨げる位置に設けられ、当該音を回折可能な回折部(通気路上部10、通気路下部20及び吸音部30)を具備するものである。
【0053】
このような構成により、遮音性能のさらなる向上を図ることができる。
具体的には、ガラリ4に向かう音を回折部(通気路上部10、通気路下部20及び吸音部30)によって回折させることにより、ガラリ4から屋外に伝搬する音を低減させることができる。
【0054】
また、前記吸音部30が前記回折部の少なくとも一部を構成するものである。
【0055】
このような構成により、部材の点数を低減することができ、ひいてはコストの増大をさらに抑制することができる。
【0056】
また、前記吸音部30は、
前記ガラリ4に対して間隔をあけて、かつ、屋内側から見て前記ガラリ4の開口と重複するように設けられるものである。
【0057】
このような構成により、吸音部30によって、ガラリ4から取り入れた外気の通気路を確保しつつ、ガラリ4へ向かう音を遮蔽することによりガラリ4から屋外に伝搬する音をさらに低減させることができる。
【0058】
また、前記吸音部30は、
箱状に形成され、内側が複数の内部空間に区画された箱状部材31と、
複数の前記内部空間それぞれに設けられた第三吸音材32(吸音材)と、
を具備するものである。
【0059】
このような構成により、第三吸音材32の表面積を増大させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、本実施形態においては、反射部40(第一反射材41及び第二反射材42)は、壁3及び通気路上部10又は通気路下部20で構成されるコーナー部分に設けられるものとしたが、反射部40の配置位置はこれに限定されるものではなく、ガラリ4に向かう音を吸音部30に誘導可能な位置であれば任意の位置とすることができる。
【0062】
また、吸音部30は、対象音の周波数に応じて、適宜形状を変更することができる。例えば本実施形態においては、吸音部30の箱状部材31は、仕切り31aによって内部空間が上下2段に区画されるように形成されるものとしたが、3段以上に区画されてもよく、あるいは仕切り31aが設けられてなくてもよい。また、第三吸音材32の厚みは、対象音の周波数に応じて適宜の厚みとすることができる。
【0063】
例えば、
図4(a)に示す吸音部30は、箱状部材31が仕切り31aによって内部空間が上下4段に区画されるように形成されており、各段の壁面に第三吸音材32が設けられている。これにより、第三吸音材32の表面積をさらに増大させることができ、ひいては、対象音の周波数が比較的高い場合における音の低減効果を向上させることができる。
【0064】
また、
図4(b)に示す吸音部30においては、
図1に示す例と比べて第三吸音材32の厚みを厚くしている。これにより、対象音の周波数が中音域である場合における音の低減効果を向上させることができる。
【0065】
また、
図4(c)に示す吸音部30においては、仕切り31aが設けられておらず、第三吸音材32の厚みが最大化されている。対象音の周波数が比較的低い場合における音の低減効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 防音装置
2 建物
4 ガラリ
10 通気路上部
12 第一吸音材
20 通気路下部
22 第二吸音材
30 吸音部
32 第三吸音材
40 反射部