(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165614
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ドローン競技のゴールゲート及びドローン競技システム
(51)【国際特許分類】
A63F 9/14 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A63F9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081953
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】515237061
【氏名又は名称】株式会社LIFE
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛之
(57)【要約】
【課題】ゴールゲートを通過したドローンを確実に判別可能なゴールゲート及びドローン競技システムの提供。
【解決手段】ドローン競技で使用するゴールゲート6は、リング状に形成され中央にゲート通路10aが形成されたゲート本体10と、ゲート通路10aの一方を入口側、他方を出口側とすると、ゲート本体10内部の入口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う入口側無線タグリーダ11と、ゲート本体10内部の出口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う出口側無線タグリーダ12を備え、入口側無線タグリーダ11及び出口側無線タグリーダ12は、其々、アンテナ送受信面をゲート通路10aの中心軸方向に向けて配設され、ゲート通路10aの直径よりも近傍のアンテナ送受信面の真正面側に位置する無線タグとの送受信を行う近接場アンテナを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四方側面及び天井面がケージで囲繞された直方体状の競技フィールドに於いて、該競技フィールドの長手方向の両端の近傍の該競技フィールド空間内にゴールゲートを設置して、其々のゴールゲートを対戦する両チームの陣営のゴールゲートとし、対戦する両チームの選手が競技フィールド内で自陣に属する複数のボール型ドローンを無線操作し、両チームの其々が、ストライカーに指定されたボール型ドローンを対戦相手側陣営のゴールゲートに通過させることで該チームのスコアを加点するドローン競技において使用されるゴールゲートであって、
全体がリング状に形成され、中央に円柱孔状のゲート通路が形成されたゲート本体と、
前記ゲート通路の一方の開口端側を入口側、他方の開口端側を出口側とすると、前記ゲート本体内部の入口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う入口側無線タグリーダと、
前記ゲート本体内部の出口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う出口側無線タグリーダと、を備え、
前記入口側無線タグリーダ及び前記出口側無線タグリーダは、それぞれ、アンテナ送受信面を前記ゲート通路の中心軸方向に向けて配設され、前記ゲート通路の直径よりも近傍の前記アンテナ送受信面の真正面側に位置する無線タグとの送受信を行うことが可能な近接場アンテナを備えていることを特徴とするゴールゲート。
【請求項2】
前記入口側無線タグリーダは、前記ゲート本体内部の入口側に、前記ゲート通路の内周に沿って、少なくとも4箇所に等間隔で配設され、
前記出口側無線タグリーダは、前記ゲート本体内部の出口側に、前記ゲート通路の内周に沿って、少なくとも4箇所に等間隔で配設されていることを特徴とする請求項1記載のゴールゲート。
【請求項3】
前記各入口側無線タグリーダ及び前記各出口側無線タグリーダの前記近接場アンテナは、直線偏波方式のアンテナであることを特徴とする請求項1記載のゴールゲート。
【請求項4】
四方側面及び天井面がケージで囲繞された直方体状の競技フィールドに於いて、該競技フィールドの長手方向の両端の近傍の該競技フィールド空間内にゴールゲートを設置して、其々のゴールゲートを対戦する両チームの陣営のゴールゲートとし、対戦する両チームの選手が競技フィールド内で自陣に属する複数のボール型ドローンを無線操作し、両チームの其々が、ストライカーに指定されたボール型ドローンを対戦相手側陣営のゴールゲートに通過させることで該チームのスコアを加点するドローン競技において使用されるドローン競技システムであって、
それぞれの前記ボール型ドローンに附された無線タグと、
前記競技フィールド空間内の長手方向の両端近傍にそれぞれ設置された2つの前記ゴールゲートであって、ゲート通路の入口側開口端が競技フィールドの中央側を向くように設置された請求項1乃至3の何れか一記載のゴールゲートと、
前記両ゴールゲートの其々に於いて、該ゴールゲートの陣営の相手側陣営に属するストライカーに指定されたボール型ドローンに附された無線タグが、前記入口側無線タグリーダで検出された直後に、該無線タグが前記出口側無線タグリーダで検出された場合に、該ゴールゲートの陣営の相手側陣営がゴールしたことを示すゴール判定信号を出力するゴール判定手段と、を備えていることを特徴とするドローン競技システム。
【請求項5】
競技フィールドを囲繞する前記ケージの天井面の離隔した複数箇所に配設された、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグを検出する無線タグリーダであって、アレイ型アンテナを備え、前記各無線タグからの電波の到来方向の検出も行う天井リーダと、
前記各天井リーダに於いて検出される、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグの識別番号及び該無線タグからの電波の到来方向に基づき、それぞれの前記ボール型ドローンの位置推定を行うドローン位置検出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載のドローン競技システム。
【請求項6】
競技フィールドの床面の長手方向を二分する中心線をハーフラインとし、
該競技フィールドを囲繞する前記ケージの天井面の該ハーフラインの真上の離隔した複数箇所に配設された、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグを検出する無線タグリーダであって、アレイ型アンテナを備え、前記各無線タグからの電波の到来方向の検出も行う天井リーダと、
前記ゴール判定手段が一方のチームに対しゴール判定信号を出力した場合、
前記各天井リーダに於いて検出される、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグの識別番号及び該無線タグからの電波の到来方向に基づき、
該チームに属するボール型ドローンが、ハーフラインより自陣側のエリアに戻ったか否かの判定を行う連続ポイント抑制ルール判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載のドローン競技システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンを用いた競技で使用されるゴールゲート及びドローン競技システムに関し、特に、ドローンサッカー(登録商標)競技での使用に適したゴールゲート及びドローン競技システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(drone;小型無人機)の普及に伴い、ドローンを用いた競技、例えば、一定コースを通過する時間を競うレーシング競技や、決められた位置の「ゴールゲート」を通過するとスコアを獲得するドローンサッカー競技など、ドローンの空中走行制御を用いたドローン競技が考案され普及しつつある。
【0003】
これらのうち、ドローンサッカー(登録商標)とは、球状のプラスチックフレーム内に取り付けたボール型ドローンを空中に飛ばして、それをボールに見立てて、サッカーに似た形式で、最大5人対5人で行うチーム競技である。長方形の競技フィールドの長手方向両端付近に円形のゴールゲートが空中に固定されており、競技フィールドの外からボール型ドローンをコントロールし、競技時間内に、自陣に属するボール型ドローンのうち「ストライカー」に指定したボール型ドローンで対戦相手側チームのゴールゲートを多く潜り抜けたチームが勝者となる(非特許文献1,2参照)。
【0004】
日本ドローンサッカー連盟の公式ルール(2019年10月15日制定,2020年2月27日改訂)(非特許文献2参照)によれば、ドローンサッカーで使用される競技フィールド及びボール型ドローンの概要は次の通りである。尚、以下の説明で「(40R)」は「40cm機体公式ルール(5vs5)」、「(20R)」は「20cm機体公式ルール(5vs5)」を示す。
【0005】
(1)競技場(競技フィールド)
競技フィールド(playfield)は、四方と天井をネットなどで囲うケージで囲繞された構造とし、床の底材は、緩衝材を使用する場合、機体を置いた際に1cm以上沈まない構造とする。競技フィールドのサイズは、(40R)短辺7m,長辺16m,高さ5m;(20R)短辺4m,長辺8m,高さ3mとする。ケージ内(競技フィールド)の床面に中心線(ハーフライン)を設け、「スターテイングポイント」を競技フィールドの短辺から(40R)1.5m以上;(20R)1m以上離し、点か線で表示する。各競技チームの競技者の「操縦スペース」は、ケージ短辺より(40R)2m以上;(20R)1m以上のスペースをとって設置する。
【0006】
(2)ゴールゲート
ゴールゲート(goal gate)の形状は円形とし、(40R)外径100cm~120cm,内径60cm~80cm;(20R)内径30cm,外径50cm,厚さ10cmとする。視認性の高い色を使用し、照明装置,センサーを設置することが可能である。設置位置は、競技フィールドの短辺中心で且つ、短辺から(40R)1.5m以上;(20R)1m以上離して、地面より(40R)2~3m;(20R)1.5~2mの高さの位置に、ゴール面(ハーフラインの側を向いたゴールゲートの側面(前面))が左右に揺れないように設置する。(
図1,
図2,非特許文献2参照)
【0007】
(3)ボール型ドローン(ドローンボール)
「ボール型ドローン」は「ドローンボール」とも呼ばれ、球殻状(サッカーボールと同様の略32面体形状)の網目状の外骨格のプラスチックフレーム内にドローンを取り付けた構造を有する(公式機体は株式会社オートバックスセブンが販売)。(
図7,非特許文献2参照)ボール型ドローンの外骨格の直径は(40R)40cm±2cm;(20R)20cm±1cmとし、装備重量は(40R)1kg以下;(20R)100g以下(選手仕訳などの表示分除外)とする。また、(40R)では外骨格の解放面(網目の目地)の単一面積が150cm
2以下とする((20R)では解放面面積の規定はない)。所属チームと相手チームのボール型ドローンは確実に区別できるようにし、ストライカーのボール型ドローンも他のボール型ドローンと確実に区別できるようにする。また、各ボール型ドローンには、それを操縦する選手と同じナンバーを表示する。
【0008】
また、競技実施ルールの概要(詳細は省略)は次の通りである。(非特許文献2参照)
(4)選手規定
1チーム最大10名以下で構成する(選手7名以下、コーチ3名以下。コーチが選手と参加しても可。)とし、1チームの選手5名以下でドローンは選手数と同一とする。また、選手構成は、「ストライカー」(striker)が2名、「フィールドプレイヤー」(field player)が3名とする。「操縦スペース」には選手のみが立ち入れる。
【0009】
(5)スコア(ポイント)の獲得条件
相手チームの円型のゴールゲートに「ストライカー」のボール型ドローンが通過することにより、1ポイントのスコアが獲得出来る。この場合、ゴール前面を基準に、ボール型ドローンの半分以上が通過しなければならない。「ストライカー」以外の得点は無効とされる。また、連続ポイントを抑制するため、ポイントを獲得したチームのすべてのボール型ドローンは、ポイント獲得後に、一度、ハーフラインより自陣内に戻らなければならない。
【0010】
以上のようなドローンサッカー競技に於いて、競技に使用するゴールゲートや審判システムに関する技術としては、特許文献1~4に記載のものが公知である。
【0011】
特許文献1には、「ドローン通過多重検知センサーゲート及びそれを用いたドローンゲームシステム」が開示されている。このドローン通過多重検出センサゲートは、ドローンが飛行して通過可能な環状構造を有するゲートと、ゲートの前面又は内側前方に配置され、ドローンがゲートに近接していることを検出し又はゲートの前面を通過したか否かを検出する第1のセンサ(近接感知センサ)と、ゲートの内側の後部に配置され、第1のセンサに感知されたドローンがゲートの背面を通過するかどうかを検出する第2のセンサ(第1通過感知センサ及び第2通過感知センサ)と、ゲートの内側又は表面に配置され、第1のセンサ及び第2のセンサからドローンが近接しているかドローンを通過するかを検出信号を受信して無線で送信する検出信号送信機とを備えている。飛行中のドローンの接近を検知する近接感知センサ(120)は、ゲートの前面に、相互に離隔して計4個が配設されている(
図13(a)及び仝文献
図2~
図8参照)。近接感知センサとしては、超音波センサが用いられ、前方を検知し、飛行中のドローンがゲートに近接することを検知する一方、通過検知センサと共にドローン通過の方向性を付与する(仝文献明細書段落[39][40]参照)。また、ゲートの内側前方には、飛行中のドローンがゲートの前面を通過するか否かを感知する第1通過感知センサ(130a,130b)(垂直方向)が配設され、ゲートの内側後方には、第1通過感知センサで感知されたドローンがゲートの背面を通過するか否かを感知する第2通過感知センサ(140a,140b)(水平方向)が配設されている(仝文献
図2~
図8参照)。この第1,第2過感知センサには、発光部と受光部有するフォトカプラが用いられている(仝文献明細書段落[39]参照)。第1通過感知センサで最初にドローンが感知された後、第2通過感知センサでドローンが感知されると、ドローンがゲートを通過したと認められる(仝文献明細書段落[41]参照)。また、ドローンにはRFタグを設けて、飛行中のドローンがゲートに近接するか又はゲートを通過したときに当該ドローンのIDを検出するドローン感知センサを設けるのが好ましいと記載されている(仝文献明細書段落[52]参照)。
【0012】
また、特許文献2にも、特許文献1と同様の「ドローン通過多重感知センサゲート」が開示されている。このドローン通過多重感知センサゲートでの、ドローン感知センサにフォトカプラを用いており、検知光線の方向が垂直方向及び水平方向のフォトカプラに加えて、右斜め方向及び左斜め方向のフォトカプラも設けた構成とされている(
図13(b)及び仝文献
図5b参照)。また、特許文献1と同様、ドローンにはRFタグを設けて、飛行中のドローンがゲートに近接するか又はゲートを通過したときに当該ドローンのIDを検出するドローン感知センサを設けている(仝文献明細書段落[54]参照)。
【0013】
特許文献3には、「ドローンサッカー練習用無人審判モジュール」が開示されている。このドローンサッカー練習用無人審判モジュールは、操縦者及び観客の視界が確保されるように準備されたネット網又は透明窓の直方体形のドローンサッカー競技場(S)と、競技場(S)内の一側面及び他側面の上側にそれぞれ垂直方向に固定準備されたリング形のゴールゲート(A,B)と、競技場(S)内の一方側および他方側にそれぞれ準備された5つのドローンボール(a1~a5,b1~b5)で構成されたAチーム及びBチームのドローンボールであって、各A,Bチームのドローンボール(a1~a5,b1~b5)のうち、ゴールキーパードローンボール(a1,b1)が相手チームのゴールゲート(A,B)にゴールインしてスコアを獲得する5つのドローンボール(a1~a5,b1~b5)で構成されたAチーム及びBチームのドローンボールと、ゴールキーパードローンボール(a1,b1)に取り付けられたゴールキーパー標識(2)と、ゴールキーパードローンボール(a1,b1)を除いたドローンボール(a2~a5,b2~b5)に取り付けられたドローン標識(4)と、リング状のゴールゲート(A,B)の内側に備えられたゴール認識センサー(11)と、競技場(S)のハーフライン(H.L.)上に備えられた後退認識センサー(12)と、ゴール認識センサー(11)及び後退認識センサー(12)と通信可能に接続されたコントローラー(90)とを備えている(仝文献
図5~
図13参照)。ここで、「ドローンボール」は「ボール型ドローン」、「ドローンサッカー競技場(S)」は「競技フィールド」、「ゴールキーパードローンボール(a1,b1)」は「ストライカーのボール型ドローン」、「ゴールキーパー標識」は「ストライカー標識」、「ゴールキーパードローンボールを除いたドローンボール(a2~a5,b2~b5)」は「フィールドプレイヤーのボール型ドローン」に其々対応していると考えられる。
【0014】
ゴール認識センサー(11)は、仝文献
図6のように、リング状のゴール台(A,B)の内周縁に露出させることで、ゴールキーパードローンボール(a1,b1)に取り付けられたゴールキーパー標識(2)を検出するように構成されている(仝文献明細書段落[0084]参照)。但し、ゴールキーパー標識(2)及びゴール認識センサー(11)の具体的な構成については、何も記載されていない。
【0015】
また、特許文献4にも、特許文献3と同様の「ドローンサッカー練習用無人審判システム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2020-179983号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2021-241809号パンフレット
【特許文献3】韓国特許出願公開第2022-0101294号明細書
【特許文献4】韓国特許出願公開第2022-0096154号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2017-0243032号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】日本ドローンサッカー連盟,「ドローンサッカー(R)とは」,[online],日本ドローンサッカー連盟,[2023年4月19日検索],インターネット,<URL:https://japan-dronesoccer.com/about/>
【非特許文献2】日本ドローンサッカー連盟,「ドローンサッカー競技説明」,[online],日本ドローンサッカー連盟,[2023年4月19日検索],インターネット,<URL:https://japan-dronesoccer.com/rule/>
【非特許文献3】IMPINJ社,“MINI-GUARDRAIL ANTENNA: READER ANTENNA DATASHEET”,Version 6.0,[online],IMPINJ社,[2023年4月19日検索],インターネット,<URL:https://support.impinj.com/hc/en-us/articles/202755678-Mini-Guardrail-Antenna>
【非特許文献4】林和則,「狭帯域信号の到来方向推定」,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review,2015年8巻3号,pp.143-150,DOI https://doi.org/10.1587/essfr.8.143.
【非特許文献5】原晋介,「位置推定における統計的推定理論」,電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review,2010年4巻1号,pp.32-38,DOI https://doi.org/10.1587/essfr.4.32.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述の通り、ドローンサッカー競技に於いては、スコア獲得の条件として、相手側チームのゴールゲートに、ストライカーのボール型ドローンが、ゴール前面を基準に半分以上通過することが必要とされる。上記特許文献1,2では、発光部と受光部を有するフォトカプラからなる第1通過感知センサ(130a,130b)及び第2通過感知センサ(140a,140b)により、ボール型ドローンがゴールゲートを通過したことを検出する。また、ゴールゲートを通過したドローンを区別するために、ドローンにはRFタグなどの情報を含む認識テーブルまたは信号を送信する送信機を取り付けている。
【0019】
しかし、実際のゲーム中には、ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを半分以上通過する前に、ゴールゲートに衝突するなどしてはじき出さることもしばしば起こるが、上記特許文献1,2のようにフォトカプラで通過を検出すると、このような場合もゴールしたものと誤判定されることが屡々生じると考えられる。
【0020】
また、ゴールゲート周辺に複数のドローンが存在した場合、通常のRFIDリーダでは、これら全てのドローンのRFタグのIDを検出するため、実際にどのドローンがゴールゲートを通過したのかを判別することが困難となることが考えられる。
【0021】
これは、ドローンサッカー競技に於いては、誤審を避ける上で重要な技術的課題であるが、このような従来技術の課題についての解決手段に関しては、特許文献3,4にも特に記載はされていない。
【0022】
そこで、本発明の目的は、ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを通過したことを確実に検出することが可能で、ゴールゲート周辺に複数のドローンが存在した場合でも、ゴールゲートを通過したドローンを確実に判別可能なドローン競技のゴールゲート及びそれを用いたドローン競技システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係るゴールゲートの第1の構成は、四方側面及び天井面がケージで囲繞された直方体状の競技フィールドに於いて、該競技フィールドの長手方向の両端の近傍の該競技フィールド空間内にゴールゲートを設置して、其々のゴールゲートを対戦する両チームの陣営のゴールゲートとし、対戦する両チームの選手が競技フィールド内で自陣に属する複数のボール型ドローンを無線操作し、両チームの其々が、ストライカーに指定されたボール型ドローンを対戦相手側陣営のゴールゲートに通過させることで該チームのスコアを加点するドローン競技において使用されるゴールゲートであって、
全体がリング状に形成され、中央に円柱孔状のゲート通路が形成されたゲート本体と、
前記ゲート通路の一方の開口端側を入口側、他方の開口端側を出口側とすると、前記ゲート本体内部の入口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う入口側無線タグリーダと、
前記ゲート本体内部の出口側に配設され、ボール型ドローンに附される無線タグの検出を行う出口側無線タグリーダと、を備え、
前記入口側無線タグリーダ及び前記出口側無線タグリーダは、それぞれ、アンテナ送受信面を前記ゲート通路の中心軸方向に向けて配設され、前記ゲート通路の直径よりも近傍の前記アンテナ送受信面の真正面側に位置する無線タグとの送受信を行うことが可能な近接場アンテナを備えていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、無線タグを附されたボール型ドローンがゴールゲートのゲート通路を入口側から出口側へ通過する際には、まず、入口側無線タグリーダが無線タグを検出した後、出口側無線タグリーダが無線タグを検出する。この一連の検出動作によって、ボール型ドローンがゴールゲートのゲート通路を入口側から出口側へ確実に通過したと判定することができる。また、ボール型ドローンは、略32面体形状の格子状球殻の外骨格の中心にドローンを連結した構造であるが、このボール型ドローンは隙間が多く(
図7,非特許文献2参照)、ボール型ドローンの通過検知にフォトカプラを使用すると、格子状球殻の隙間を光線が貫通するために、実際にボール型ドローンの通過する際には、光線が遮断されたり通過したりを繰り返し、ボール型ドローンの半分以上がゴールゲートを通過したか否かの正確な検出は困難であると考えられる。一方、ボール型ドローンの通過検知に無線タグ及び無線タグリーダの組み合わせを使用することで、ボール型ドローンに隙間が多くあるか否かに関係なく、ボール型ドローンの半分以上がゴールゲートを通過したか否かを正確に判定することが可能となる。また、無線タグ及び無線タグリーダの組み合わせを使用すると、通過検出と同時に、ゴールゲートを通過したボール型ドローンのID(identification:識別子)を同時に検出できるため、どのボール型ドローンがゴールゲートを通過したのかも正確に識別することができる。また、入口側無線タグリーダ及び出口側無線タグリーダのアンテナに、ゲート通路の直径よりも近傍のアンテナ送受信面の真正面側に位置する無線タグとの送受信を行うことが可能な近接場アンテナを用いることで、ゴールゲートのゲート通路より外側にあるボール型ドローンの無線タグを検知することはなく、ゲート通路に侵入していないボール型ドローンを誤検出することも防止できる。
【0025】
ここで、無線タグには、例えば、RFID(radio frequency identification;無線周波数識別)(JIS X 0500:2002「データキャリア用語」:10023参照)やNFC(Near field communication;近距離無線通信)(JIS X 5212:2015参照)の無線タグを使用することができる。近接場アンテナの最大受信距離は、ゲート通路の直径よりも小さい距離とされるが、誤検出を無くし且つ検出漏れを無くす観点から、入口側無線タグリーダ及び出口側無線タグリーダをゲート通路の内周に沿って複数設けると共に、近接場アンテナの最大受信距離は、ゲート通路の直径の1/10~1/2とすることが好ましい。
【0026】
本発明に係るゴールゲートの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、前記入口側無線タグリーダは、前記ゲート本体内部の入口側に、前記ゲート通路の内周に沿って、少なくとも4箇所に等間隔で配設され、
前記出口側無線タグリーダは、前記ゲート本体内部の出口側に、前記ゲート通路の内周に沿って、少なくとも4箇所に等間隔で配設されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、入口側無線タグリーダ及び出口側無線タグリーダ(以下、まとめて「無線タグリーダ」という。)を、ゲート通路の内周に沿って、少なくとも4箇所に等間隔で配設することで、ゴールゲートを通過するボール型ドローンの向きがどのような向きであっても、確実にボール型ドローンの無線タグを検知することができる。また、無線タグリーダをこのように複数箇所に設ければ、各無線タグリーダの近接場アンテナの最大受信距離を短くすることができ、各無線タグリーダの受信エリアがより局所化されるため、ゲート通路に侵入していないボール型ドローンの誤検出をより確実に防止できる。
【0028】
ここで、入口側無線タグリーダ及び出口側無線タグリーダの設置数は「少なくとも4箇所」であればよく、4箇所以上(例えば、8箇所)であってもかまわない。
【0029】
本発明に係るゴールゲートの第3の構成は、前記第1の構成に於いて、前記各入口側無線タグリーダ及び前記各出口側無線タグリーダの前記近接場アンテナは、直線偏波方式のアンテナであることを特徴とする。
【0030】
このように、各無線タグリーダの近接場アンテナを直線偏波方式のアンテナとすることで、近接場アンテナの指向性が高くなり、近接場アンテナのアンテナ送受信面の真正面の領域よりも外側への電波の漏れが少なくなるため、ゲート通路に侵入していないボール型ドローンの誤検出をより確実に防止できる。
【0031】
本発明に係るドローン競技システムの第1の構成は、四方側面及び天井面がケージで囲繞された直方体状の競技フィールドに於いて、該競技フィールドの長手方向の両端の近傍の該競技フィールド空間内にゴールゲートを設置して、其々のゴールゲートを対戦する両チームの陣営のゴールゲートとし、対戦する両チームの選手が競技フィールド内で自陣に属する複数のボール型ドローンを無線操作し、両チームの其々が、ストライカーに指定されたボール型ドローンを対戦相手側陣営のゴールゲートに通過させることで該チームのスコアを加点するドローン競技において使用されるドローン競技システムであって、
それぞれの前記ボール型ドローンに附された無線タグと、
前記競技フィールド空間内の長手方向の両端近傍にそれぞれ設置された2つの前記ゴールゲートであって、ゲート通路の入口側開口端が競技フィールドの中央側を向くように設置された請求項1乃至3の何れか一記載のゴールゲートと、
前記両ゴールゲートの其々に於いて、該ゴールゲートの陣営の相手側陣営に属するストライカーに指定されたボール型ドローンに附された無線タグが、前記入口側無線タグリーダで検出された直後に、該無線タグが前記出口側無線タグリーダで検出された場合に、該ゴールゲートの陣営の相手側陣営がゴールしたことを示すゴール判定信号を出力するゴール判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを半分以上通過したことを確実に検出することができる。また、ゴールゲート周辺に複数のドローンが存在した場合でも、ゴールゲートを通過したボール型ドローンを確実に判別することができる。
【0033】
本発明に係るドローン競技システムの第2の構成は、前記第1の構成に於いて、競技フィールドを囲繞する前記ケージの天井面の離隔した複数箇所に配設された、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグを検出する無線タグリーダであって、アレイ型アンテナを備え、前記各無線タグからの電波の到来方向の検出も行う天井リーダと、
前記各天井リーダに於いて検出される、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグの識別番号及び該無線タグからの電波の到来方向に基づき、それぞれの前記ボール型ドローンの位置推定を行うドローン位置検出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、競技中に、各天井リーダに対する各ボール型ドローンの方位を検出することができるため、三角法により各ボール型ドローンの位置を検出することができる。従って、ストライカーがゴールゲートを通過してスコアを獲得した後、スコアを獲得したチームのすべてのボール型ドローンが、一端、ハーフラインより自陣内に戻ったか否かの判定なども行うことが可能となる。
【0035】
本発明に係るドローン競技システムの第3の構成は、前記第1の構成に於いて、競技フィールドの床面の長手方向を二分する中心線をハーフラインとし、
該競技フィールドを囲繞する前記ケージの天井面の該ハーフラインの真上の離隔した複数箇所に配設された、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグを検出する無線タグリーダであって、アレイ型アンテナを備え、前記各無線タグからの電波の到来方向の検出も行う天井リーダと、
前記ゴール判定手段が一方のチームに対しゴール判定信号を出力した場合、
前記各天井リーダに於いて検出される、それぞれの前記ボール型ドローンに附された前記無線タグの識別番号及び該無線タグからの電波の到来方向に基づき、
該チームに属するボール型ドローンが、ハーフラインより自陣側のエリアに戻ったか否かの判定を行う連続ポイント抑制ルール判定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを半分以上通過したことを確実に検出することが可能で、ゴールゲート周辺に複数のドローンが存在した場合でも、ゴールゲートを通過したドローンを確実に判別可能なドローン競技のゴールゲート及びドローン競技システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施例1に係るドローン競技システムの競技フィールドの(a)側面図及び(b)平面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るゴールゲートの透視斜視図である。
【
図4】
図3のゴールゲートの(a)正面透視図及び(b)A-A線断面透視図である。
【
図5】無線タグリーダの(a)正面図、(b)側面図、及び(c)斜視図である。
【
図6】無線タグリーダ11,12の送受信可能領域の一例を示す模式図(リードゾーン・ダイアグラム)である。
【
図7】実施例1のドローン競技システムで使用されるボール型ドローンの一例を示す斜視図である。
【
図8】実施例1のドローン競技システムの全体構成を表すブロック図である。
【
図9】ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを通過するときの様子を表す模式図(ゴールゲート6の側面側から視た図)である。
【
図10】ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを通過するときの様子を表す模式図(ゴールゲート6の背面側(ケージ2のケージ短辺の側)から視た図)である。
【
図11】
図9,
図10の入口側無線タグリーダ11b及び出口側無線タグリーダ12bで検出されるストライカータグ25aの検出信号の時間変化を示す図である。
【
図12】天井リーダ7に用いられる2次元アレイアンテナの一例を示す図である。
【
図13】ゴールゲート6にボール型ドローン通過検出用の透過型光電センサを配設した図である。
【
図14】ボール型ドローンがゴールゲートを通過する際の入口側無線タグリーダ,出口側無線タグリーダ,及び光電センサで検出される検出信号を示す模式図である。
【
図15】本発明の実施例2に係るドローン競技システムの競技フィールドの(a)側面図及び(b)平面図である。
【
図16】天井リーダ7’に用いられる1次元アレイアンテナの一例を示す図である。
【
図17】実施例2のドローン競技システムの全体構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0039】
(1)ドローン競技システムの構成
図1は、本発明の実施例1に係るドローン競技システムの競技フィールドの(a)側面図及び(b)平面図である。
図2は、
図1の競技フィールドの斜視図である。
図1,
図2は、ドローンサッカー競技の日本ドローンサッカー連盟の公式ルール(非特許文献2参照)に準じて設定されている。
【0040】
競技フィールド1は、平らな床面G上に設けられた直方体状の空間であり、天井面及び四方の側面を、無底直方体状のネット又は透明板のケージ2により囲繞され、外部から内部が見通せるように、外部空間と仕切られている。以下の説明では、競技フィールド1の長手方向の側面を左右側面、短手方向の側面を前後側面と呼ぶ。ケージ2(競技フィールド1)内の床面の長手方向中央には、中心線(ハーフライン)3が設けられている。競技フィールド1内の長手方向に対向する左右側面の底辺を「ケージ短辺」とすると、床面G上のケージ短辺の近傍の所定の幅の領域に、床面G上に引かれた枠線で囲繞されたスターテイングポイント4,4が設けられている。また、競技フィールド1の外側の、左右のケージ短辺の近傍の所定の幅の領域には、各競技チームの競技者のがボール型ドローンを操縦するための操縦スペース5,5が設けられ、床面G上に引かれた枠線で囲繞されている。
【0041】
競技フィールド1内の左右のケージ短辺の近傍の空中には、円環状のゴールゲート6,6が天井面に固定して設けられている(
図1,
図2では固定構造は図示せず)。ゴールゲート6,6は、左右ともに同一サイズ・同一構造であり、左右ともに競技フィールド1の長手方向中心線上に位置し、ケージ短辺から同じ水平距離だけ離し、且つ、床面Gから同じ高さだけ離して設けられている。
【0042】
ケージ2の天井面の上側には、RFIDリーダである天井リーダ7が離隔して複数個設けられている。
図1,
図2の例では、天井リーダ7の個数は11個であるが、本発明では天井リーダ7の個数は11個に限られるものではない。また、
図1,
図2の例では、11個の天井リーダ7は、ケージ2の天井面に斜め格子状に配置されているが、本発明では各天井リーダ7の配置はこれに限られるものではない。各天井リーダ7は、2次元のアレイ型アンテナを備え、アレイ型アンテナのアンテナ面が下向き(競技フィールド1内側の向き)に配設されている。これらの、各天井リーダ7は、競技フィールド1内の各ボール型ドローンに附された無線タグ(後述)のIDを検出するとともに、フェーズドアレイによるビームステアリング走査(beam steering scanning)(送受信したい電波の向きに合わせて最大の指向性を生成しながら走査すること)によって各無線タグからの電波の到来方向の検出も行う。
【0043】
図3は、本発明の実施例1に係るゴールゲートの透視斜視図である。
図4は、
図3のゴールゲートの(a)正面透視図及び(b)A-A線断面透視図である。
図3,
図4に示すゴールゲートは、
図1,
図2の各ゴールゲート6に該当する。
【0044】
図3,
図4に於いて、ゴールゲート6は、ゲート本体10、複数の入口側無線タグリーダ11及び複数の出口側無線タグリーダ12を備えている。ゲート本体10は、全体の形状が、中央に円柱孔状のゲート通路10aが貫通形成されたリング状に形成され、内部が中空であるリング状箱体である。ゲート通路10aの一方の開口端側を入口側、他方の開口端側を出口側とする。また、ゲート本体10は、RFIDの通信で使用される500MHz~2GHzの周波数帯の電波の透過性の高い樹脂により構成されている。以下、ゲート通路10aの断面半径をR、断面直径を2Rとする。
【0045】
入口側無線タグリーダ11及び出口側無線タグリーダ12は、ゲート本体10の箱内に複数個配設されており、ゲート通路10aに侵入したボール型ドローンに附される無線タグの検出を行うRFIDリーダである。
図3,
図4の例では、入口側無線タグリーダ11及び出口側無線タグリーダ12は、ゲート本体10の箱内に、其々8個ずつ設けられているが、本発明では入口側無線タグリーダ11,出口側無線タグリーダ12を設ける個数はこれに限るものではない。また、ゲート本体10の箱内(ゲート本体10の内部)に於いては、入口側無線タグリーダ11は、入口側に偏倚して配設され、ゲート通路10aの円形の周壁に沿って等間隔で配設されている。一方、出口側無線タグリーダ12は、出口側に偏倚して配設され、入口側無線タグリーダ11とは円周方向にずらして、ゲート通路10aの円形の周壁に沿って等間隔で配設されている。入口側無線タグリーダ11及び出口側無線タグリーダ12(以下、まとめて「無線タグリーダ」と呼ぶ。)の其々は、そのアンテナ送受信面をゲート通路10aの中心軸方向に向けて配設されている。
【0046】
これら各無線タグリーダに実装された、RFタグ(JIS X 0500:2002「データキャリア用語」10024参照)との間で電波の送受信を行うアンテナには、近接場アンテナが使用されている。
図5は、無線タグリーダ11,12の(a)正面図、(b)側面図、及び(c)斜視図である。
図5において、無線タグリーダ11,12は、本体形状が扁平直方体状の形成されており、本体上側の胴面(最も面積が大きい面)が、内蔵された近接場アンテナのアンテナ送受信面15とされている。また、本体側部の一方の小口面(最も面積が小さい面)には、外部とのデータの入出力を行う入出力端子16が設けられており、本体底面の両短辺には、それぞれ2つの取付金具17が設けられている。入出力端子16は、ゲート本体10の内部に設けられた無線LANルータ(図示せず。)に接続され、この無線LANルータは、無線LANを介して外部の通信回線に接続される。
【0047】
この無線タグリーダ11,12に内蔵された近接場アンテナは、RFタグとの間で送受信可能な指向性利得が得られる領域(以下「送受信可能領域(リードゾーン;Read Zone)」という。)がアンテナ送受信面15の真正面側領域(アンテナ送受信面15を前方に向かって面と垂直方向に平行に押し出した領域)内のアンテナ送受信面近傍に限定されている。具体的には、送受信可能領域は、アンテナ送受信面15からの最大距離が、ゲート通路10aの直径2Rよりも近傍であるようなアンテナ送受信面の真正面側領域とされる。送受信可能領域がゲート通路10aの直径2Rよりも大きいと、ゲート通路10aの外側に位置するRFタグとの通信が可能となるため、ゲート通路10aの外側に位置するボール型ドローンを、ゲート通路10a内に侵入したと誤って検出する可能性が高くなるからである。また、送受信可能領域としては、より好ましくは、送受信可能領域は、アンテナ送受信面15からの最大距離が、ゲート通路10aの直径2Rの1/10~1/2とするのがよい。ゲート通路10aの直径2Rの1/2以下であれば、送受信可能領域がアンテナ送受信面15の真正面側から横にはみ出すことが抑制されるからである。また、ゲート通路10aの直径2Rの1/10以下となると、送受信可能領域が狭すぎて、ゲート通路10aに侵入したボール型ドローンのRFタグとの通信が十分にできなくなり、検出漏れが生じ易くなる。送受信可能領域がアンテナ送受信面15の真正面側から横にはみ出すことを抑制するためには、近接場アンテナとして、指向性の高い(ビームの広がり角度が狭く、ビーム方向以外に於いて強さができるだけ弱い)とされる直線偏波方式のアンテナを用いることが好ましい。
【0048】
図6は、無線タグリーダ11,12の送受信可能領域の一例を示す模式図(リードゾーン・ダイアグラム)である。
図6に於いて、
図5と対応する無線タグリーダ11,12の構成部分には同符号を付している。また、符号Mが附された曲面体領域が近接場アンテナの送受信可能領域を表している。具体的には、ゲート通路10aの直径(内径)を60cm~80cmとすると、送受信可能領域Mのアンテナ送受信面15からの最大距離d
maxは、6cm~40cmとするのが最も好ましい。
図6の例では、送受信可能領域Mのアンテナ送受信面15からの最大距離d
maxを、6~8cmとした例(IMPINJ社(米国)のRFIDリーダIPJ-A0303-000のリードゾーン・ダイアグラムの例)を示している(非特許文献3参照)。
【0049】
図7は、実施例1のドローン競技システムで使用されるボール型ドローンの一例を示す斜視図である。
図7には、説明の便宜上、形状を簡略化して示したボール型ドローンの斜視図を表す(尚、ドローンサッカーの公式ルールで採用されるボール型ドローンの形状については非特許文献2に掲載の写真を参照)。
【0050】
図7に於いて、ボール型ドローン20は、機体本体21の周囲に、球殻網目状(サッカーボールと同様の略32面体形状)の外骨格のプラスチックフレーム22が取り付けられた構成を有している。プラスチックフレーム22は、弾性を有する樹脂製であり、ボール型ドローン20が他の物体と衝突したときに衝撃を吸収する機能を備える。機体本体21の上面には、機体を識別するためのIDが記憶されたRFタグである機体タグ23が附されている。
【0051】
また、ストライカーのボール型ドローン20のプラスチックフレーム22の下部には、2枚のリボン状のストライカーシール24,24が、互いに離隔して、フレーム底部にぶら下がった状態で取り付けられる。各ストライカーシール24には、ストライカーの機体を識別するためのIDが記憶されたRFタグであるストライカータグ25が取り付けられている。尚、このストライカーシール24及びストライカータグ25は、フィールドプレイヤーのボール型ドローン20には取り付けられない。
【0052】
図8は、実施例1のドローン競技システムの全体構成を表すブロック図である。
図8において、
図1,
図2の構成部分に対応する部分には同符号を附している。このドローン競技システムは、上述のように競技フィールド1に設けられたゴールゲート6及び天井リーダ7に加えて、無線LANアクセスポイント31及びシステムサーバ32を備えている。無線LANアクセスポイント31は、無線LANにより、各ゴールゲート6内の無線タグリーダ11,12、及び各天井リーダ7との間で通信を行う。システムサーバ32は、無線LANアクセスポイント31に接続されたサーバである。
【0053】
さらに、システムサーバ32は、ゴール判定手段32a及びドローン位置検出手段32bを備えている。ゴール判定手段32aは、両ゴールゲート6,6の其々に於いて、該ゴールゲート6の陣営の相手側陣営に属するストライカーに指定されたボール型ドローン20に附されたストライカータグ25が、該ゴールゲート6の入口側無線タグリーダ11で検出された直後に、該ストライカータグ25が該ゴールゲート6の出口側無線タグリーダ12で検出された場合に、該ゴールゲート6の陣営の相手側陣営がゴールしたことを示すゴール判定信号を出力する機能モジュールである。ドローン位置検出手段32bは、各天井リーダ7に於いて検出される、それぞれのボール型ドローン20に附された機体タグ23の識別番号及び該機体タグ23からの電波の到来方向に基づき、それぞれのボール型ドローン20の位置検出を行う機能モジュールである。これらのゴール判定手段32a及びドローン位置検出手段32bは、プログラムをシステムサーバ32に読み込ませて実行させることにより、システムサーバ32内に機能的に構成されるモジュールである。
【0054】
(2)ドローン競技システムの動作
以上のように構成された実施例1のドローン競技システムについて、以下、その動作を説明する。
【0055】
(2.1)ゴール判定手段によるインゴール判定
図9,
図10は、ストライカーのボール型ドローンがゴールゲートを通過するときの様子を表す模式図である。
図9は、ゴールゲート6の側面側から視た図であり、
図10は、ゴールゲート6の背面側(ケージ2のケージ短辺の側)から視た図を表している。また、説明の便宜上、ストライカーのボール型ドローン20のプラスチックフレーム22の底部に取り付けられた2枚のストライカーシール24のストライカータグ25のうち、進行方向前側のストライカータグ25をストライカータグ25a、進行方向後側のストライカータグ25をストライカータグ25bと記して区別する。また、ゴールゲート6のゲート本体10内に配設された複数の入口側無線タグリーダ11及び出口側無線タグリーダ12のうち、最下部に位置するものを入口側無線タグリーダ11b及び出口側無線タグリーダ12bと記す。また、入口側無線タグリーダ11bの送受信可能領域Mを送受信可能領域M1、出口側無線タグリーダ12bの送受信可能領域Mを送受信可能領域M2と記す。
【0056】
まず、
図9(a)に示すように、ストライカーのボール型ドローン20は飛行しつつ、ゴールゲート6の入口側からゲート通路10aに侵入する。このとき、通常、ボール型ドローン20は高速で飛行するため、ストライカーシール24はボール型ドローン20の進行方向とは反対側に傾いて顫動する。
【0057】
次いで、
図9(b)及び
図10に示すように、ボール型ドローン20がゲート通路10aに侵入して、ストライカータグ25aが入口側無線タグリーダ11bの送受信可能領域M1内に侵入すると、入口側無線タグリーダ11bはこのストライカータグ25aのIDを検出し、システムサーバ32へ送信する。
【0058】
次いで、
図9(c)及び
図10に示すように、ボール型ドローン20がゲート通路10a内をさらに進行して、ストライカータグ25aが出口側無線タグリーダ12bの送受信可能領域M2内に侵入すると、出口側無線タグリーダ12bはこのストライカータグ25aのIDを検出し、システムサーバ32へ送信する。このとき、ストライカータグ25aは入口側無線タグリーダ11bの送受信可能領域M1からは離脱するため、入口側無線タグリーダ11bからのストライカータグ25aのID検出信号は途絶える。
【0059】
次いで、
図9(d)に示すように、ボール型ドローン20がゲート通路10aを通り抜けると、ストライカータグ25aは出口側無線タグリーダ12bの送受信可能領域M2からも離脱するため、出口側無線タグリーダ12bからのストライカータグ25aのID検出信号も途絶える。
【0060】
図11は、
図9,
図10の入口側無線タグリーダ11b及び出口側無線タグリーダ12bで検出されるストライカータグ25aの検出信号の時間変化を示す図である。
図11(a)は入口側無線タグリーダ11bが出力するストライカータグ25aの検出信号を表し、
図11(b)は出口側無線タグリーダ12bが出力するストライカータグ25aの検出信号を表している。
【0061】
システムサーバ32のゴール判定手段32aは、ゴールゲート6から受信する入口側無線タグリーダ11bが出力するストライカータグ25aの検出信号Sd1、及び出口側無線タグリーダ12bが出力するストライカータグ25aの検出信号Sd2をリアルタイムで監視する。
【0062】
まず、ストライカータグ25aがゴールゲート6のゲート通路10aの外に位置するときには、検出信号Sd1及び検出信号Sd2はともに“False”(未検出状態)である。そして、時刻t1で、ストライカータグ25aのストライカータグ25aが送受信可能領域M1に侵入すると、検出信号Sd1が“True”(検出状態)となる。時間の経過と共にボール型ドローン20が移動して時刻t2で、ストライカータグ25aが送受信可能領域M1から離脱すると、検出信号Sd1が“False”(未検出状態)となる。さらにボール型ドローン20が移動して時刻t3で、ストライカータグ25a送受信可能領域M2に侵入すると、検出信号Sd2が“True”(検出状態)となる。さらにボール型ドローン20が移動して時刻t2で、ストライカータグ25aが送受信可能領域M2から離脱すると、検出信号Sd2は“False”(未検出状態)となる。従って、システムサーバ32のゴール判定手段32aは、一定時間幅Tの時間区間内のストライカータグ25aの検出信号(Sd1,Sd2)の真理値が((0,0),(1,0),(0,0),(0,1),(0,0))(但し、0はFalse、1はTrueを表す。)となるパターンを検出すると、そのストライカータグ25aに対応するボール型ドローン20がゲート通路10a通過した(インゴールした)と判定し、該ボール型ドローン20が所属するチームにスコアを加点する。
【0063】
尚、ストライカーのボール型ドローン20のストライカータグは2つ(ストライカータグ25a及びストライカータグ25bの2つ)あるため、ストライカータグ25a又はストライカータグ25bのいずれかの検出信号(Sd1,Sd2)が、一定時間幅Tの時間区間内で((0,0),(1,0),(0,0),(0,1),(0,0)) となるパターンを検出すると、そのストライカータグ25aに対応するボール型ドローン20がゲート通路10a通過した(インゴールした)と判定し、該ボール型ドローン20が所属するチームにスコアを加点するようにしてもよい。これにより、検出漏れによる誤審をより確実に防ぐことが出来る。
【0064】
尚、
図9,
図10では、説明の便宜上、ストライカーのボール型ドローン20は、ゴールゲート6の中心軸上を回転することなく飛行する様子を示したが、実際の競技中に於いては、通常、ゴールゲート6のゲート通路10aを通過するボール型ドローン20の軌道は、ゴールゲート6の中心軸からはずれた軌道であったり、曲線を描く軌道であったり、他のボール型ドローン20やゴールゲート6のゲート通路10aの内面や端面に衝突して折れ曲がった軌道であったりする。また、通常、ボール型ドローン20は回転又は振動しながらゴールゲート6のゲート通路10aを通過する。従って、ゲート通路10aを通過するストライカーのボール型ドローン20のストライカータグは、必ずしも入口側無線タグリーダ11b及び出口側無線タグリーダ12bで検出されるとは限られず、複数ある入口側無線タグリーダ11の何れかと、複数ある出口側無線タグリーダ12の何れかとで検出されると考えられる。そこで、各入口側無線タグリーダ11及び各出口側無線タグリーダ12を番号付けして、i番目の入口側無線タグリーダ11が出力するストライカータグ25の検出信号をS
(i)
d1、j番目の出口側無線タグリーダ12bが出力するストライカータグ25の検出信号をS
(j)
d2とし、システムサーバ32のゴール判定手段32aは、これらの出力信号{S
(i)
d1},{S
(j)
d2}をリアルタイムで監視する。そして、入口側におけるストライカータグ25の検出信号S
d1及び出口側におけるストライカータグ25の検出信号S
d2を次のように算出する。
【0065】
【0066】
これにより求められる検出信号Sd1及びSd2を用いれば、先の説明と同様にして、システムサーバ32のゴール判定手段32aは、そのストライカータグ25aに対応するボール型ドローン20がゲート通路10a通過した(インゴールした)と判定することができる。
【0067】
また、この検出方法では、ボール型ドローン20がゲート通路10a通過したことの判定を行うことができると同時に、ストライカータグ25のIDが同時に検出されるので、通過したボール型ドローン20を特定できる。従って、例えば、競技中に、ディフェンスを行っている自陣側(以下「Aチーム」という。)のフィールドプレイヤーのボール型ドローン20(以下「ディフェンダードローン20A」という。)が、対戦側(以下「Bチーム」という。)のストライカーのボール型ドローン20(以下「ストライカードローン20B」という。)と激しく衝突して、Aチームのディフェンダードローン20Aがゴールゲート6のゲート通路10aを入口側から出口側に通過した場合であっても、Bチームのストライカードローン20Bがインゴールしたと誤審されることはない。
【0068】
尚、本実施例のゴールゲート6において、ボール型ドローン20の通過検出をより確実なものとするため、特許文献1,2と同様に、ゴールゲート6のゲート通路10aの内周に沿って、ゲート本体10にボール型ドローン20の通過検出用の光電センサを追加的に配設することができる。
図13は、ゴールゲート6にボール型ドローン通過検出用の透過型光電センサを配設した一例を示す図である。
図13(a)は、特許文献1と同様の位置に投光器51及び受光器52からなる透過型の光電センサを配設した図であり、
図13(b)は、特許文献2と同様の位置に投光器51及び受光器52からなる透過型の光電センサを配設した図である。各光電センサは、一対の投光器51及び受光器52により構成され、投光器51から透光された光が物体により遮られたか否かを受光器52により検出することで物体検出を行う。尚、
図13では、透過型光線センサを用いた例を示すが、回帰反射型の光線センサ(
図13で投光器51を配設した位置に隣接して受光器52を同向きに配設し、
図13で受光器52を配設した位置に受光器52の代わりに回帰反射板を配設し、投光器51から投光されて回帰反射板で反射される光を受光器52で検出し、受光器52での検出光の変化により物体検出を行う方式の光電センサ)や、拡散反射型の光電センサ(
図13で投光器51又は受光器52を配設した位置に投光器51及び受光器52を隣接して同向きに配設し、投光器51から投光されて拡散され(物体がないとき)又は物体で反射され(物体があるとき)る光を受光器52で検出し、受光器52での検出光の変化により物体検出を行う方式の光電センサ)を使用することもできる。
【0069】
このように、光電センサを配設しておき、ボール型ドローン20が入口側無線タグリーダ11で検出されるか又は入口側の光電センサで検出された場合、式(1a)のSd1を1(True)とし、入口側無線タグリーダ11でも入口側の光電センサでも検出されない場合には、式(1a)のSd1を0(false)とする。また、ボール型ドローン20が出口側無線タグリーダ12で検出されるか又は出口側の光電センサで検出された場合、式(1b)のSd2を1(True)とし、出口側無線タグリーダ12でも入口側の光電センサでも検出されない場合には、式(1b)のSd2を0(false)とする。
【0070】
図14は、ボール型ドローンがゴールゲートを通過する際の入口側無線タグリーダ,出口側無線タグリーダ,及び光電センサで検出される検出信号を示す模式図である。
図11と同様、入口側無線タグリーダ11において検出される検出信号は
図14(a)のようになり、出口側無線タグリーダ12において検出される検出信号は
図14(d)のようになる。一方、ボール型ドローン20は隙間が多いため、入口側に偏倚して設けられた光電センサの検出信号は
図14(b)のようになり、出口側に偏倚して設けられた光電センサの検出信号は
図14(e)のようになると考えられる。従って、入口側の検出信号である
図14(a)及び
図14(b)の信号の論理和の検出信号(以下「入口側検出信号」)S
d1は、
図14(c)に示すようになり、出口側の検出信号である
図14(d)及び
図14(e)の信号の論理和の検出信号(以下「出口側検出信号」)S
d2は、
図14(f)に示すようになる。この入口側検出信号S
d1及び出口側検出信号S
d2ではノイズが多いため、ローパスフィルタ(又はボール型ドローンがゴールゲートを通過する平均通過時間に比べて十分短い時間区間での移動時間平均で定義される時間平均フィルタ)によりフィルタリングすれば、其々、
図14(c),
図14(f)に示すLP(S
d1),LP(S
d2)のような信号が得られ、これを、
図14(c),
図14(f)に示す閾値Th
1,Th
2により閾値判定すれば、閾値処理した入口側検出信号S
d1’及び出口側検出信号S
d2’が得られる。ここで、LP(S
di)>Th
iならばS
di’=1でそれ以外はS
di’=0(i=1,2)である。これにより求められる入口側検出信号S
d1’及び出口側検出信号S
d2’を用いれば、先の説明と同様にして、システムサーバ32のゴール判定手段32aは、そのストライカータグ25aに対応するボール型ドローン20がゲート通路10a通過した(インゴールした)ことをより確実に判定することができる。尚、この場合、検出信号(S
d1’,S
d2’)が、一定時間幅Tの時間区間内で((0,0),(1,0),(1,1),(0,1),(0,0)) となるパターンを検出すれば、ゲート通路10aをボール型ドローン20が通過したと判定すればよいことになる。
【0071】
(2.2)ドローン位置検出手段によるボール型ドローンの位置検出
次に、ドローン位置検出手段32bによる各ボール型ドローン20の競技フィールド1内に於ける位置検出動作について説明する。
【0072】
上述したように、各天井リーダ7は、2次元のアレイ型アンテナによって構成されている。2次元のアレイ型アンテナとは、アンテナ素子が平面状に2次元的に配列され、各アンテナ素子で送受信する信号の位相制御を行うことによって、ビームステアリング走査を行うことが出来るようにしたアンテナをいう。
図12に、天井リーダ7に用いられる2次元アレイアンテナの一例を示す。
図12のアレイアンテナ40は、特許文献5に記載されたものであり、矩形平面状のアンテナ面41の面上に、9個のアンテナ素子42が配列されている。各アンテナ素子で送受信される信号は、移相器により独立に位相調整が可能とされ、これによりビームステアリング走査を行うことが出来る。
図12の2次元アレイアンテナの場合、x
1軸,x
2軸,x
3軸,x
4軸の4つの軸方向で独立にビームステアリングが可能なため、信号の送受信時のメインローブ方向を2次元的に細かく調整することができる。尚、
図12は一例であり、天井リーダ7に用いられる2次元アレイアンテナについてはこれ以外の公知の構成のものを用いることもできる。
【0073】
天井リーダ7は、競技フィールド1の各ボール型ドローン20に附された機体タグ23に対して質問信号を送信し、該質問信号に対する後方散乱波にのせて返信される応答信号を受信して、各ボール型ドローン20の機体タグ23を検出する。このとき、天井リーダ7は、機体タグ23からの応答信号の到来方向の検出も行う。応答信号の到来方向推定には、ビームフォーマー法(beamformer method)、Capon法(Capon method)、最大エントロピー法、線型予測法(Linear Prediction method:LP法)、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)などの公知の方法を使用することができる(非特許文献4参照)。
【0074】
各天井リーダ7は、検出した機体タグ23のID及び到来方向をリアルタイムでシステムサーバ32へ送信する。システムサーバ32のドローン位置検出手段32bは、各天井リーダ7から送信される{(機体タグID,到来方向)}のデータに基づき、各機体タグIDに対応するボール型ドローン20の位置推定計算を行い、各ボール型ドローン20の位置検出を行う。ここで、位置推定計算は、三角法をベースとした最尤推定法により行うことが出来る(非特許文献5参照)。具体的に説明すると、次のようにして計算される。
【0075】
まず、各天井リーダ7は固定されており、それらの中心位置(アンカーポイント)及び向きは、システムサーバ32内の記憶装置に予め記憶されているとする。各天井リーダ7から送信される到来方向(到来方向ベクトル)は、天井リーダ7に固定された座標系におけるベクトルであるため、ドローン位置検出手段32bは、これらの到来方向ベクトルを、システムサーバ32内に記憶された各天井リーダ7の向き情報に基づき、絶対座標系(競技フィールド1の床面に固定された座標系)のベクトルに座標変換する。
【0076】
今、各天井リーダ7に付番して、それぞれの天井リーダ7をA1,A2,…,ANaと記す。ここで、Naは天井リーダ7の数である。天井リーダAi(i=1,2,…,Na)の中心位置(アンカーポイント)の位置ベクトルをai=(aix,aiy,aiz)とする。或るボール型ドローンPの機体タグID ID(P)について、同時刻にID(P)が検出された天井リーダ7の集合をCiとする。集合Ciに属する天井リーダAi(∈Ci)において検出された機体タグID ID(P)の信号の到来方向ベクトルdiとし、到来方向ベクトルdiの絶対座標系に於ける座標値を(αi,βi,γi)とする。但し、αi
2+βi
2+γi
2=1である。このとき、ボール型ドローンPの推定位置の位置ベクトルx=(x,y,z)(但し、座標値(x,y,z)は絶対座標系に於ける座標値。)は、最尤推定法を用いると次式により計算することができる。
【0077】
【0078】
ドローン位置検出手段32bは、上式(2)を算出することにより、競技フィールド1内の各ボール型ドローン20の位置をリアルタイムで検出する。これにより、ストライカーがインゴールしたことでスコアを獲得したチームのすべてのボール型ドローン20が、スコア獲得後に、一度、ハーフライン3より自陣内に戻ったかどうかの判定などを行うことが出来る。
1次元アレイアンテナの場合も、2次元アレイアンテナの場合と同様に、各アンテナ素子で送受信される信号は、移相器により独立に位相調整が可能とされ、これによりx軸方向のビームステアリング走査を行うことが出来る。また、天井リーダ7’は、各ボール型ドローン20の機体タグ23に対して質問信号を送信し、該質問信号に対する後方散乱波にのせて返信される応答信号を受信して、各ボール型ドローン20の機体タグ23を検出する。そして、天井リーダ7’は、実施例1の場合と同様、各種到来方向推定法によって機体タグ23からの応答信号の到来方向の検出も行う。但し、1次元アレイアンテナの場合には、到来方向推定ができるのは、x軸に沿った方向となる。
また、ポイント獲得チームの全てのボール型ドローン20が自陣に戻る前に、一端自陣に戻った一部のボール型ドローン20が再びハーフライン3を超えて敵陣側に戻る場合も考えられる。その場合、連続ポイント抑制ルール判定手段32cは、天井リーダ7’により、ポイント獲得チームの各ボール型ドローン20がハーフライン3を過ぎった否かの検出に加え、過ぎった際の移動方向も検出するため、一端自陣に戻ったボール型ドローン20が再び敵陣側に戻ったことも検出可能する。これにより、連続ポイント抑制ルールが満たされたか否かの正確な判定が可能となる。
尚、本実施例においても、1次元アレイアンテナを備えたRFIDリーダである天井リーダ7’に加えて、実施例1と同様、2次元アレイアンテナを備えたRFIDリーダである天井リーダ7をケージ2の天井面の上側に複数個設置するとともに、ドローン位置検出手段32bを備えて、各ボール型ドローン20の位置検出を行うように構成することもできる。