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特開2024-165615電力変換システムおよび電力変換システムの故障ユニット分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165615
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電力変換システムおよび電力変換システムの故障ユニット分離方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241121BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M7/12 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081958
(22)【出願日】2023-05-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEDO先導研究プログラム エネルギー・環境新技術先導研究プログラム、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 隼
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA05
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB08
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA01
5H006FA02
5H730AA20
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730XX04
5H730XX12
5H730XX15
5H730XX24
5H730XX32
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】SST方式の電力変換システムにおいて、過電圧および過電流を抑制しつつ故障検出セルをシステムから切り離すことができるようにする。
【解決手段】AC/DCコンバータ、絶縁型DCDC1次側コンバータ、絶縁型DCDC2次側コンバータを備えた電力変換器ユニット(セル)を複数台設け、それらの交流側端子を直列に接続し、直流側端子を並列に接続したシステムにおいて、前記各交流側端子間を短絡させるスイッチSWinと、直流側の並列接続を断つスイッチSWoutとを設け、セル内の各コンバータの短絡検出箇所を判定し(ステップS11)、短絡検出側のコンバータのゲートをブロック(ステップS12a、S12b)した後に非短絡検出側のコンバータのゲートをブロック(ステップS13a、S13b)し、次に交流側のスイッチSWinのオン(ステップS14)と、直流側のスイッチSWoutのオフ(ステップS15)とを行う。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する交流-直流変換器と、直流側が前記交流-直流変換器の直流側に接続され、交流側が絶縁型変圧器の1次巻線に接続された1次側単相電力変換器と、交流側が前記絶縁型変圧器の2次巻線に接続された2次側単相電力変換器と、前記1次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサと、を備えた電力変換器ユニットを複数台設け、前記複数台の電力変換器ユニットの、交流側端子を直列に接続し、直流側端子を並列に接続して構成したSST(Solid State Transformer)方式の電力変換システムにおいて、
前記複数の電力変換器ユニットの各入力側に設けられ、前記交流側端子間を短絡させる入力側システム分離用スイッチと、
前記複数の電力変換器ユニットの各出力側に設けられ、前記直流側端子の並列接続を断つ出力側システム分離用スイッチと、
前記電力変換器ユニットに備えられた前記各変換器の短絡故障を検出する短絡検出部と、
前記短絡検出部によって短絡故障が検出されたときに、当該短絡検出電力変換器ユニット内の交流-直流変換器、1次側単相電力変換器、2次側単相電力変換器のうち、短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックした後に非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックするか、又は短絡検出電力変換器ユニット内のすべての変換器の半導体スイッチのゲートを同時にブロックするゲートブロック部と、
前記ゲートブロック部によるゲートブロック後に、前記入力側システム分離用スイッチのオンおよび出力側システム分離用スイッチのオフを行うスイッチオンオフ部と、を備えたことを特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
前記電力変換器ユニットは、単方向電力供給方式の電力変換器で構成され、
前記スイッチオンオフ部は、入力側システム分離用スイッチをオンした後に出力側システム分離用スイッチをオフすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記電力変換器ユニットは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器か、又はLLC共振型コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器で構成され、
交流から直流への電力変換時に前記短絡検出部により短絡故障検出がなされた場合、前記ゲートブロック部は、前記非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックする際に、非短絡検出側の変換器のうちいずれか一方の変換器の半導体スイッチのゲートを先にブロックした後にいずれか他方の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックし、前記スイッチオンオフ部は、入力側システム分離用スイッチをオンした後に出力側システム分離用スイッチをオフし、
直流から交流への電力変換時に前記短絡検出部により短絡故障検出がなされた場合、前記ゲートブロック部は、前記非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックする際に、非短絡検出側の変換器のうちいずれか他方の変換器の半導体スイッチのゲートを先にブロックした後にいずれか一方の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックし、前記スイッチオンオフ部は、出力側システム分離用スイッチをオフした後に入力側システム分離用スイッチをオンすることを特徴とする請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項4】
交流電力を直流電力に変換する交流-直流変換器と、直流側が前記交流-直流変換器の直流側に接続され、交流側が絶縁型変圧器の1次巻線に接続された1次側単相電力変換器と、交流側が前記絶縁型変圧器の2次巻線に接続された2次側単相電力変換器と、前記1次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサと、を備えた電力変換器ユニットを複数台設け、前記複数台の電力変換器ユニットの、交流側端子を直列に接続し、直流側端子を並列に接続して構成したSST(Solid State Transformer)方式の電力変換システムの故障ユニット分離方法であって、
短絡検出部が、前記電力変換器ユニットに備えられた前記各変換器の短絡故障を検出する短絡検出ステップと、
ゲートブロック部が、前記短絡検出部によって短絡故障が検出されたときに、当該短絡検出電力変換器ユニット内の交流-直流変換器、1次側単相電力変換器、2次側単相電力変換器のうち、短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックした後に非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックするか、又は短絡検出電力変換器ユニット内のすべての変換器の半導体スイッチのゲートを同時にブロックするゲートブロックステップと、
スイッチオンオフ部が、前記ゲートブロック部によるゲートブロック後に、前記複数の電力変換器ユニットの各入力側に設けられ、前記交流側端子間を短絡させる入力側システム分離用スイッチのオンと、前記複数の電力変換器ユニットの各出力側に設けられ、前記直流側端子の並列接続を断つ出力側システム分離用スイッチのオフを行うスイッチオンオフステップとを備えたことを特徴とする電力変換システムの故障ユニット分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力変換器ユニット(セル)を直列もしくは並列に接続して構成したSST(Solid State Transformer)方式の電力変換システムにおいて、故障検出したセルを安全にシステムから切り離す手法に関する。
【背景技術】
【0002】
SST方式の電力変換システムの回路構成の一例を図1に示す。図1において、11は交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータであり、その交流側は交流側端子10a,10bに接続されている。
【0003】
交流側端子10a,10b間には、交流側端子10a,10b間を短絡させる交流側スイッチSWin(入力側システム分離用スイッチ)が接続されている。
【0004】
12は絶縁型DCDCコンバータであり、後述の、直流側が前記AC/DCコンバータ11の直流側に接続された1次側単相電力変換器と、1次巻線が前記1次側単相電力変換器の交流側に接続された絶縁型変圧器と、交流側が前記絶縁型変圧器の2次巻線に接続された2次側単相電力変換器とを備えている。
【0005】
絶縁型DCDCコンバータ12の直流出力側(2次側単相電力変換器)の正、負極端は、直流側スイッチSWout(出力側システム分離用スイッチ)を介して直流側端子10c,10dに接続されている。
【0006】
上記交流側スイッチSWin、AC/DCコンバータ11、絶縁型DCDCコンバータ12、直流側スイッチSWoutによって1つの電力変換器ユニット(以下、セルと称することもある)10を構成している。
【0007】
尚、図1では図示省略しているが、AC/DCコンバータ11と絶縁型DCDCコンバータ12を結ぶ直流正負極線間には、交流側コンデンサC1(1次側コンデンサ)が接続され、絶縁型DCDCコンバータ12の直流出力側の正、負極端間には直流側コンデンサC2(2次側コンデンサ)が接続されている。
【0008】
電力変換器ユニット10は複数台(セルNo.1~セルNo.n)設けられ、各電力変換器ユニット10…の交流側端子10a,10bは各々直列に接続(セルNo.1の交流側端子10bをセルNo.2の交流側端子10aに接続する、のように接続)している。
【0009】
各電力変換器ユニット10…の直流側端子10c,10dは各々並列に接続(セルNo.1~セルNo.nの直流側端子10cどうしを共通に接続し、セルNo.1~セルNo.nの直流側端子10dどうしを共通に接続)している。
【0010】
尚、各電力変換器ユニット10…を切り離さない場合は、交流側スイッチSWinをオフ(開路状態)とし、直流側スイッチSWoutをオン(閉路状態)としておくものである。
【0011】
次に、電力変換器ユニット10(セル)の回路構成例を図2とともに説明する。図2において図1と同一部分は同一符号をもって示している。図2(a)はLLC共振型コンバータによる単方向電力供給方式の電力変換器ユニットの回路構成である。
【0012】
11は半導体スイッチSW1~SW4をブリッジ接続したAC/DCコンバータであり、その直流側の正、負極端間には交流側コンデンサ(1次側コンデンサ)C1が接続されている。
【0013】
121は半導体スイッチSW5~SW8をブリッジ接続した絶縁型DCDC1次側コンバータ(1次側単相電力変換器)であり、その直流側はAC/DCコンバータ11の直流側に接続されている。
【0014】
絶縁型DCDC1次側コンバータ121の交流側はリアクトルL1、L2および電流共振コンデンサC3,C4を介して電流共振用トランスTrの1次巻線に接続されている。尚、リアクトルL1,L2は省略してもよい。
【0015】
電流共振用トランスTrの1次巻線と2次巻線は1:Nの巻線比を有し、2次巻線はダイオードD1~D4をブリッジ接続した絶縁型DCDC2次側コンバータ(2次側単相電力変換器)122aの交流側に接続されている。
【0016】
絶縁型DCDC2次側コンバータ122aの直流側の正、負極端間には直流側コンデンサ(2次側コンデンサ)C2が接続されている。
【0017】
図2(b)はDAB(Dual Active Bridge)コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器を示し、AC/DCコンバータ11、交流側コンデンサC1、絶縁型DCDC1次側コンバータ121は図2(a)と同様に構成されている。
【0018】
絶縁型DCDC1次側コンバータ121の交流側はリアクトルL1,L2を介してトランスTの1次巻線に接続されている。トランスTの1次巻線と2次巻線は1:Nの巻線比を有し、2次巻線は半導体スイッチSW9~SW12をブリッジ接続した絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの交流側に接続されている。絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの直流側の正、負極端間には直流側コンデンサC2(2次側コンデンサ)が接続されている。
【0019】
図2(c)はLLC共振型コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器を示し、AC/DCコンバータ11、交流側コンデンサC1、絶縁型DCDC1次側コンバータ121、電流共振用トランスTr、電流共振コンデンサC3,C4、リアクトルL1,L2は、図2(a)と同様に構成されている。
【0020】
電流共振用トランスTrの2次巻線は半導体スイッチSW9~SW12をブリッジ接続した絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの交流側に接続されている。絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの直流側の正、負極端間には直流側コンデンサC2(2次側コンデンサ)が接続されている。
【0021】
前記半導体スイッチSW1~SW12は例えばMOSFETやIGBTなどの他励式の半導体スイッチで構成されている。
【0022】
上記のように図1のSST方式の電力変換システムは、図2(a)に示す回路方式により単方向だけでなく、図2(b)、(c)に示す双方向の電力融通も可能である。
【0023】
複数の電力変換器ユニット(セル)を備えた電力変換システムにおいて、故障セルを電力変換システムから切り離す技術としては、従来、例えば特許文献1、2に記載の方法が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2021-141738号公報
【特許文献2】特開2022-066063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
特許文献1では、主回路構成が提案されており、直列接続されたセルの入出力にバイパススイッチと過電圧抑制素子が並列接続された構成である。上記構成により、セル故障時における過電流および過電圧を抑制しつつ、故障セルのみをシステムから安全に切り離す。
【0026】
また,特許文献2はバイパススイッチのサージ電流耐量を低減でき、低コスト化が図られている。特許文献1、2ともにセルの並列接続時に故障が発生したときの対処法は言及されていない。また、図1の構成例のようにセルの並列接続時の故障にも対応するためにスイッチを追加する構成が考えられるが、追加スイッチの遮断するタイミングによっては過電圧が発生し、セル内の正常な半導体スイッチも故障する可能性がある。
【0027】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、SST方式の電力変換システムにおいて、過電圧および過電流を抑制しつつ故障検出セルをシステムから切り離すことができる電力変換システムおよびその故障ユニット分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するための請求項1に記載の電力変換システムは、
交流電力を直流電力に変換する交流-直流変換器と、直流側が前記交流-直流変換器の直流側に接続され、交流側が絶縁型変圧器の1次巻線に接続された1次側単相電力変換器と、交流側が前記絶縁型変圧器の2次巻線に接続された2次側単相電力変換器と、前記1次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサと、を備えた電力変換器ユニットを複数台設け、前記複数台の電力変換器ユニットの、交流側端子を直列に接続し、直流側端子を並列に接続して構成したSST(Solid State Transformer)方式の電力変換システムにおいて、
前記複数の電力変換器ユニットの各入力側に設けられ、前記交流側端子間を短絡させる入力側システム分離用スイッチと、
前記複数の電力変換器ユニットの各出力側に設けられ、前記直流側端子の並列接続を断つ出力側システム分離用スイッチと、
前記電力変換器ユニットに備えられた前記各変換器の短絡故障を検出する短絡検出部と、
前記短絡検出部によって短絡故障が検出されたときに、当該短絡検出電力変換器ユニット内の交流-直流変換器、1次側単相電力変換器、2次側単相電力変換器のうち、短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックした後に非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックするか、又は短絡検出電力変換器ユニット内のすべての変換器の半導体スイッチのゲートを同時にブロックするゲートブロック部と、
前記ゲートブロック部によるゲートブロック後に、前記入力側システム分離用スイッチのオンおよび出力側システム分離用スイッチのオフを行うスイッチオンオフ部と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項2に記載の電力変換システムは、請求項1において、
前記電力変換器ユニットは、単方向電力供給方式の電力変換器で構成され、
前記スイッチオンオフ部は、入力側システム分離用スイッチをオンした後に出力側システム分離用スイッチをオフすることを特徴としている。
【0030】
請求項3に記載の電力変換システムは、請求項1において、
前記電力変換器ユニットは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器か、又はLLC共振型コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器で構成され、
交流から直流への電力変換時に前記短絡検出部により短絡故障検出がなされた場合、前記ゲートブロック部は、前記非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックする際に、非短絡検出側の変換器のうちいずれか一方の変換器の半導体スイッチのゲートを先にブロックした後にいずれか他方の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックし、前記スイッチオンオフ部は、入力側システム分離用スイッチをオンした後に出力側システム分離用スイッチをオフし、
直流から交流への電力変換時に前記短絡検出部により短絡故障検出がなされた場合、前記ゲートブロック部は、前記非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックする際に、非短絡検出側の変換器のうちいずれか他方の変換器の半導体スイッチのゲートを先にブロックした後にいずれか一方の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックし、前記スイッチオンオフ部は、出力側システム分離用スイッチをオフした後に入力側システム分離用スイッチをオンすることを特徴としている。
【0031】
請求項4に記載の電力変換システムの故障ユニット分離方法は、
交流電力を直流電力に変換する交流-直流変換器と、直流側が前記交流-直流変換器の直流側に接続され、交流側が絶縁型変圧器の1次巻線に接続された1次側単相電力変換器と、交流側が前記絶縁型変圧器の2次巻線に接続された2次側単相電力変換器と、前記1次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相電力変換器の直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサと、を備えた電力変換器ユニットを複数台設け、前記複数台の電力変換器ユニットの、交流側端子を直列に接続し、直流側端子を並列に接続して構成したSST(Solid State Transformer)方式の電力変換システムの故障ユニット分離方法であって、
短絡検出部が、前記電力変換器ユニットに備えられた前記各変換器の短絡故障を検出する短絡検出ステップと、
ゲートブロック部が、前記短絡検出部によって短絡故障が検出されたときに、当該短絡検出電力変換器ユニット内の交流-直流変換器、1次側単相電力変換器、2次側単相電力変換器のうち、短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックした後に非短絡検出側の変換器の半導体スイッチのゲートをブロックするか、又は短絡検出電力変換器ユニット内のすべての変換器の半導体スイッチのゲートを同時にブロックするゲートブロックステップと、
スイッチオンオフ部が、前記ゲートブロック部によるゲートブロック後に、前記複数の電力変換器ユニットの各入力側に設けられ、前記交流側端子間を短絡させる入力側システム分離用スイッチのオンと、前記複数の電力変換器ユニットの各出力側に設けられ、前記直流側端子の並列接続を断つ出力側システム分離用スイッチのオフを行うスイッチオンオフステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
(1)請求項1~4に記載の発明によれば、短絡故障を検出した際に、過電圧および過電流を抑制しつつ故障検出セルのみをシステムから切り離すことができる。故障検出セルの切り離し時は、1次側コンデンサ(交流側キャパシタ)が大きく増加しないので、従来技術よりもキャパシタ容量を低減することができる。
【0033】
また、入力側システム分離用スイッチ(交流側端子間を短絡させるスイッチ)と出力側システム分離用スイッチ(直流側端子の並列接続を断つスイッチ)に大きな電圧電流ストレスがかからないため、長寿命化が達成できる。
(2)請求項2に記載の発明によれば、単方向電力供給方式の場合に適用することができ、双方向電力供給方式と比べて少ないフローで実施できるため、高速に遮断(切り離し)が行える。
(3)請求項3に記載の発明によれば、双方向電力供給方式の、パワーフローが交流から直流の場合と、直流から交流の場合の両方に適用することができ、双方向のパワーフローにおいて(1)と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】SST方式の電力変換システムの回路構成図。
図2図1の各セルの構成例を示し、(a)はLLC共振型コンバータによる単方向電力供給方式の電力変換器の回路図、(b)はDABコンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器の回路図、(c)はLLC共振型コンバータによる双方向電力供給方式の電力変換器の回路図。
図3】本発明の実施例1における処理のフローチャート。
図4】本発明の実施例2における交流から直流への電力変換時の処理のフローチャート。
図5】本発明の実施例3における直流から交流への電力変換時の処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0036】
本実施形態例は、図1図2に示すSST方式の電力変換システムに適用するものであり、電力変換器ユニット10に備えられた各変換器(AC/DCコンバータ11、絶縁型DCDC1次側コンバータ121、絶縁型DCDC2次側コンバータ122b)の短絡故障を各々検出する短絡検出部と、前記短絡故障検出時に前記各変換器の半導体スイッチのゲートをブロックするゲートブロック部と、前記ゲートブロック後に交流側スイッチSWinのオンおよび直流側スイッチSWoutのオフを行うスイッチオンオフ部を備えている。
【0037】
前記短絡検出部は半導体スイッチの電流検出手法や飽和電圧計測を行うことで短絡を検出する。
【0038】
前記ゲートブロック部は適用する電力供給方式に応じて、以下の実施例1~3に示すフローによりゲートブロックを実施する。
【0039】
前記スイッチオンオフ部は電力供給方式に応じて、以下の実施例1~3に示すフローによりオン、オフを実施する。
【0040】
前記交流側スイッチSWinおよび直流側スイッチSWoutは、半導体スイッチでもよいし、リレーなどの機械式スイッチでもよい。
【0041】
ゲートブロック部およびスイッチオンオフ部のフローの実装は、ハードウェア、ソフトウェアどちらでもよい。
【実施例0042】
図3は、本発明を図2(a)の絶縁型DCDC単方向方式に適用した場合のフローチャートを示している。
【0043】
まずステップ1(S11)では短絡検出箇所を判断する。
【0044】
次にステップ2(S12a,S12b)では、短絡検出箇所の(短絡検出側の)電力変換器の半導体スイッチのゲートをゲートブロックすることで、短絡状態を開放する(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS12aにおいてそのコンバータ121を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS12bにおいてそのコンバータ11を各々ゲートブロックする)。
【0045】
次にステップ3(S13a,S13b)では、残った(非短絡検出側の)電力変換器の半導体スイッチをゲートブロックすることで短絡検出セルの動作を停止させる(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS13aにおいてAC/DCコンバータ11を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS13bにおいて絶縁型DCDC1次側コンバータ121を各々ゲートブロックする)。
【0046】
次にステップ4(S14)では、短絡故障発生セルの交流側スイッチSWinをオンすることで、交流側端子10a,10b間をバイパスさせて、短絡検出セルを交流から切り離す。
【0047】
次にステップ5(S15)では、短絡故障発生セルの直流側スイッチSWoutをオフにすることで短絡検出セルを直流側から切り離す。
【0048】
尚、ステップ2とステップ3は同時に実行してもよい。すなわち、絶縁型DCDC1次側コンバータ121およびAC/DCコンバータ11の半導体スイッチを同時にゲートブロックしてもよい。
【0049】
以上のように実施例1によれば、絶縁型DCDC単方向方式の電力変換システムの場合に、短絡検出箇所を遮断することができ、過電圧や過電流なしで短絡検出セルのみをシステムから切り離すことができる。
【0050】
また、故障検出セルの切り離し時に交流側コンデンサ(交流側キャパシタ)が大きく増加しないので、従来技術よりもキャパシタ容量を低減することができる。
【0051】
さらに、交流側スイッチSWinおよび直流側スイッチSWoutに大きな電圧電流ストレスがかからないため、長寿命化が達成できる。
【実施例0052】
図4は、本発明を図2(b)、(c)の絶縁型DCDC双方向方式において、パワーフローが交流から直流の場合に適用したフローチャートを示している。双方向方式は、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの半導体スイッチがMOSFETやIGBTなどの他励式の半導体スイッチであるため、実施例1と比べて、短絡検出箇所に絶縁型DCDC2次側コンバータ122bが追加される。
【0053】
まずステップ1(S21)では短絡検出箇所を判断する。次にステップ2(S22a,S22b,S22c)では、短絡検出箇所の(短絡検出側の)電力変換器の半導体スイッチのゲートをゲートブロックすることで、短絡状態を開放する(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS22aにおいてそのコンバータ121を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS22bにおいてそのコンバータ11を、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS22cにおいてそのコンバータ122bを各々ゲートブロックする)。
【0054】
次にステップ3(S23a,S23b,S23c)では、残った(非短絡検出側の)電力変換器のうちいずれか一方の電力変換器の半導体スイッチをゲートブロックする(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS23aにおいてAC/DCコンバータ11を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS23bにおいて絶縁型DCDC1次側コンバータ121を、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS23cにおいてAC/DCコンバータ11を各々ゲートブロックする)。
【0055】
ステップS23a,S23cのように、絶縁型DCDC1次側コンバータ121もしくは絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの短絡検出およびそのゲートブロックを行った後にAC/DCコンバータ11のゲートブロックを行っているので、交流側コンデンサC1の直流電圧Vdc1の過電圧を防止することができる。
【0056】
一方、ステップS23bのように、AC/DCコンバータ11の短絡検出およびそのゲートブロックを行った後に絶縁型DCDC1次側コンバータ121のゲートブロックを行っているので、交流側コンデンサC1に残った電荷は直流側に供給されない。
【0057】
次にステップ4(ステップS24a,S24b,S24c)では、残った電力変換器(非短絡検出側のいずれか他方の電力変換器)の半導体スイッチをゲートブロックすることで短絡検出セルの動作を停止させる(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS24aにおいてDCDC2次側コンバータ122bを、AC/DCコンバータ11の場合はステップS24bにおいて絶縁型DCDC2次側コンバータ122bを、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS24cにおいて絶縁型DCDC1次側コンバータ121を各々ゲートブロックする)。
【0058】
次にステップ5(S25)では、短絡故障発生セルの交流側スイッチSWinをオンすることで、交流側端子10a,10b間をバイパスさせて、短絡検出セルを交流から切り離す。
【0059】
次にステップ6(S26)では、短絡故障発生セルの直流側スイッチSWoutをオフにすることで短絡検出セルを直流側から切り離す。
【0060】
尚、図4のステップ2~ステップ4のうち少なくとも2つ以上のステップを同時に実行してもよい。すなわち、AC/DCコンバータ11、絶縁型DCDC1次側コンバータ121、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bのうち少なくとも2つ以上のコンバータの半導体スイッチを同時にゲートブロックしてもよい。
【0061】
以上のように実施例2によれば、絶縁型DCDC双方向方式の電力変換システムで且つパワーフローが交流から直流の場合に、短絡検出箇所を遮断することができ、過電圧や過電流なしで短絡検出セルのみをシステムから切り離すことができる。
【実施例0062】
図5は、本発明を図2(b)、(c)の絶縁型DCDC双方向方式において、パワーフローが直流から交流の場合に適用したフローチャートを示している。
【0063】
まずステップ1(S31)では短絡検出箇所を判断する。次にステップ2(S32a,S32b,S32c)では、短絡検出箇所の(短絡検出側の)電力変換器の半導体スイッチのゲートをゲートブロックすることで、短絡状態を開放する(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS32aにおいてそのコンバータ121を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS32bにおいてそのコンバータ11を、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS32cにおいてそのコンバータ122bを各々ゲートブロックする)。
【0064】
次にステップ3(S33a,S33b,S33c)では、残った(非短絡検出側の)電力変換器のうちいずれか他方の電力変換器の半導体スイッチをゲートブロックする(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS33aにおいてDCDC2次側コンバータ122bを、AC/DCコンバータ11の場合はステップS33bにおいて絶縁型DCDC2次側コンバータ122bを、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS33cにおいて絶縁型DCDC1次側コンバータ121を各々ゲートブロックする)。
【0065】
ステップS33a,S33bのように、ステップ2の絶縁型DCDC1次側コンバータ121もしくはAC/DCコンバータ11のゲートブロックを行った後に、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bをゲートブロックしているので、交流への電力供給を停止させることができる。
【0066】
一方、ステップS33cのように、ステップ2の絶縁型DCDC2次側コンバータ122bのゲートブロックを行った後に絶縁型DCDC1次側コンバータ121をゲートブロックすることで、交流側コンデンサC1の直流電圧Vdc1の過電圧を防止することができる。
【0067】
次にステップ4(ステップS34a,S34b,S34c)では、残った電力変換器(非短絡検出側のいずれか一方の電力変換器)の半導体スイッチをゲートブロックすることで短絡検出セルの動作を停止させる(すなわち短絡検出箇所が、絶縁型DCDC1次側コンバータ121の場合はステップS34aにおいAC/DCコンバータ11を、AC/DCコンバータ11の場合はステップS34bにおいて絶縁型DCDC1次側コンバータ121を、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bの場合はステップS34cにおいてAC/DCコンバータ11を各々ゲートブロックする)。
【0068】
次にステップ5(S35)では、短絡故障発生セルの直流側スイッチSWoutをオフすることで、短絡検出セルを直流側から切り離す。
【0069】
次にステップ6(S36)では、短絡故障発生セルの交流側スイッチSWinをオンにすることで、交流側端子10a,10b間をバイパスさせて短絡検出セルを交流側から切り離す。
【0070】
尚、図5のステップ2~ステップ4のうち少なくとも2つ以上のステップを同時に実行してもよい。すなわち、AC/DCコンバータ11、絶縁型DCDC1次側コンバータ121、絶縁型DCDC2次側コンバータ122bのうち少なくとも2つ以上のコンバータの半導体スイッチを同時にゲートブロックしてもよい。
【0071】
以上のように実施例3によれば、絶縁型DCDC双方向方式の電力変換システムで且つパワーフローが直流から交流の場合に、短絡検出箇所を遮断することができ、過電圧や過電流なしで短絡検出セルのみをシステムから切り離すことができる。
【符号の説明】
【0072】
10…電力変換器ユニット(セル)
10a,10b…交流側端子
10c、10d…直流側端子
11…AC/DCコンバータ
12…絶縁型DCDCコンバータ
121…絶縁型DCDC1次側コンバータ
122a,122b…絶縁型DCDC2次側コンバータ
C1…交流側コンデンサ
C2…直流側コンデンサ
C3,C4…電流共振コンデンサ
D1~D4…ダイオード
SWin…交流側スイッチ
SWout…直流側スイッチ
SW1~SW12…半導体スイッチ
T…トランス
Tr…電流共振用トランス
L1,L2…リアクトル

図1
図2
図3
図4
図5