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特開2024-165619ピッキングシステムおよびピッキングロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165619
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ピッキングシステムおよびピッキングロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241121BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081966
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 麗子
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 忠史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET02
3C707FS01
3C707FT02
3C707JU03
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS06
3C707KS07
3C707KT01
3C707KT06
3C707LV07
3C707LV08
3C707LV14
3C707LV15
3C707NS02
3C707NS07
3C707NS08
(57)【要約】
【課題】作業者が物品ごとに使用するユニットを規定することなく、ピッキング作業を迅速に行うことができるようにする。
【解決手段】本発明のピッキングシステムは、物品を吸着する吸着部122および物品を把持する把持部124を有するロボットハンド12を備えたピッキングロボット10と、ピッキングロボット10によるピッキング作業の制御を行う制御部50とを備える。制御部50は、ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、ロボットハンド12によるピッキング手法を切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を吸着する吸着部および物品を把持する把持部を有するロボットハンドを備えたピッキングロボットと、
前記ピッキングロボットによるピッキング作業の制御を行う制御部と
を備え、
前記制御部は、ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、前記ロボットハンドによるピッキング手法を切り替える
ピッキングシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記物品情報に応じて、前記吸着部による吸着、前記把持部による把持、前記吸着部および前記把持部の両方による吸着・把持のいずれかの手法を、前記ピッキング手法として設定する
請求項1に記載のピッキングシステム。
【請求項3】
前記物品情報は、物品の種別を規定する形状種別情報、および、物品を搬送する際の取り扱いに関する取り扱い情報を含む
請求項2に記載のピッキングシステム。
【請求項4】
前記物品情報は、物品の種類ごとに、物品の特性を表す取り扱い情報、形状種別情報、および、ピッキング手法指定情報を含む
請求項3に記載のピッキングシステム。
【請求項5】
ピッキング対象の物品を撮影する撮影装置をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像装置の撮影結果から、物品の形状、位置、姿勢、および、重心に基づく把持点候補を取得し、前記把持点候補の付近の形状に応じて前記ピッキング手法を選択する
請求項3に記載のピッキングシステム。
【請求項6】
物品の形状種別ごとの処理定義データを有し、
前記制御部は、前記処理定義データ、前記物品情報、および、前記撮像装置の撮影結果から抽出した物品形状に基づいて、前記ピッキング手法を選択する
請求項5に記載のピッキングシステム。
【請求項7】
ピッキング対象の物品を撮影する撮影装置をさらに備え、
物品の基本形状を含む形状種別ごとの認識処理情報を有し、
前記制御部は、前記物品の基本形状と前記撮影装置で撮影した形状とをマッチングさせて、ピッキングの際の把持点を特定する
請求項3に記載のピッキングシステム。
【請求項8】
物品を吸着する吸着部および物品を把持する把持部を有するロボットハンドを備えたピッキングロボットの制御方法であって、
ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、前記ロボットハンドによるピッキング手法を切り替える
ピッキングロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキングシステムおよびピッキングロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫においては、物品を注文に応じて配送先ごとに仕分ける作業が必要になる。この作業を自動化するために、所謂、ピッキングロボットが実用化されている。ピッキングロボットは、物品を出荷するためのピッキング作業を自動化してくれるロボットである。ピッキングロボットには、出荷対象の物品を保持するロボットハンドが取り付けられている。
【0003】
ピッキングロボットの中には、倉庫で取り扱われる様々な形状の物品をピッキングできるようにするために、複数の保持ユニットを有するロボットハンドを備えたピッキングロボットがある(例えば、特許文献1参照)。この種のピッキングロボットは、複数の保持ユニットを使い分けることにより、多様な形状の物品のピッキングに対応することができる。
【0004】
特許文献1には、「挟持ユニットおよび吸着ユニットを有し、挟持ユニットおよび吸着ユニットを回動させることにより、挟持ユニットおよび吸着ユニットのいずれのユニットを保持対象物の保持に使用するかを切り替える」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-015567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術では、挟持ユニットおよび吸着ユニットの回動により、いずれのユニットを保持対象物の保持に使用するかを切り替えることができる。しかしながら、当該従来技術の場合、一般的には、いずれのユニットを使用するかを物品ごとに作業者が規定する必要がある。そのため、数万種類の物品を扱うこともある物流倉庫では、作業者が物品ごとに使用するユニットを規定するとした場合、その作業が多大になる課題がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、作業者が物品ごとに使用するユニットを規定することなく、ピッキング作業を迅速に行うことができるピッキングシステムおよびピッキングロボットの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のピッキングシステムは、物品を吸着する吸着部および物品を把持する把持部を有するロボットハンドを備えたピッキングロボットと、ピッキングロボットによるピッキング作業の制御を行う制御部とを備え、制御部は、ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、ロボットハンドによるピッキング手法を切り替える。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明のピッキングロボットの制御方法は、物品を吸着する吸着部および物品を把持する把持部を有するロボットハンドを備えたピッキングロボットの制御方法であって、ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、ロボットハンドによるピッキング手法を切り替える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者が物品ごとに使用するユニットを規定する必要がなく、ピッキング作業を迅速に行うことができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成、および、効果は、以下の発明を実施するための形態(以下、実施形態と記述する)の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ピッキングシステムのシステム構成の概略を模式的に示す概略構成図である。
図2】ロボットハンドの伸縮機構が伸長した状態を示す正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るピッキングシステムの制御系の構成例を示すブロック図である。
図4】ピッキング対象の物品に関する物品情報の一例を示す図である。
図5】物品情報のデータの一例を示す図である。
図6】物品情報登録画面の一例を示す図である。
図7】取り扱い注意事項ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データの一例を示す図である。
図8】動作計画結果表示画面の一例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るピッキングシステムにおいて実行されるピッキングロボットの制御方法の基本となる処理の一例を示すフローチャートである。
図10】形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、および、物品形状に基づいてピッキング手法を選択するための処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
図11】形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、および、物品形状に基づいてピッキング手法を選択するための処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
図12】ピッキングロボットの搬送動作を計画するための処理の一例を示すフローチャートである。
図13】本発明の第2の実施形態に係るピッキングシステムの制御系の構成例を示すブロック図である。
図14】形状種別ごとの認識処理情報の一例を示す図である。
図15】物品情報を倉庫管理システムで管理する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図16】物品情報をピッキングシステムのみで管理する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について、添付図面を参照して説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
<ピッキングシステムの構成の概略について>
[システム構成]
図1は、ピッキングシステムのシステム構成の概略を模式的に示す概略構成図である。図1に示すように、ピッキングシステム1は、ピッキングロボット10、搬入コンベア20、搬出コンベア30、撮像装置40、および、制御部50を備えている。
【0015】
ピッキングロボット10は、ロボットハンド12を備えた搬送ロボット11によって構成されている。すなわち、ロボットハンド12を備えた搬送ロボット11が、ピッキングロボット10と言うことになる。
【0016】
搬入コンベア20は、収納ダンボール110に収納された物品100をピッキングロボット10の作業領域内に搬入する。ピッキングロボット10は、搬入コンベア20によって作業領域内に搬入された収納ダンボール110の中の物品100をピッキングし、搬出コンベア30上の搬出コンテナ60に移載する。
【0017】
搬出コンベア30は、ピッキングロボット10によって搬出コンテナ60に移載された物品100を、あらかじめ指定された場所へ搬出する。撮像装置40は、カメラや距離センサなどからなり、収納ダンボール110に収納されている物品100の形状などを認識するために、収納ダンボール110内を撮影する。
【0018】
制御部50は、演算装置51、情報記憶装置52、入力装置53、および、出力装置54を有する構成となっている。
【0019】
制御部50において、演算装置51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、ピッキングロボット10のピッキング制御、搬入コンベア20の搬入制御、搬出コンベア30の搬出制御、撮像装置40の撮影制御などを行う。
【0020】
情報記憶装置52は、デジタル情報を記憶可能なHDD(Hard Disk e Drive)、SSD(Solid State Drive)、あるいは、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリ装置である。
【0021】
入力装置53は、キーボードやマウス、タッチパネルなどからなり、ユーザ(例えば、ライン構築担当者など)によって、ピッキングロボット10によるピッキング作業などに関する各種の情報の入力操作を行う。
【0022】
出力装置54は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置からなり、ユーザ(例えば、ライン構築担当者など)に対して、ピッキングロボット10によるピッキング作業などに関する各種の情報の表示出力を行う。
【0023】
[ロボットハンドについて]
図2は、ロボットハンド12の伸縮機構が伸長した状態を示す正面図である。図2に示すように、ロボットハンド12は、ハンド本体部121、吸着部122、伸縮機構123、把持部124、把持駆動部125、および、駆動力伝達機構126A,126Bを有する構成となっている。
【0024】
ハンド本体部121は、搬送ロボット11に取り付けられる。吸着部122は、吸着パッドからなり、物品100を吸着する。伸縮機構123は、吸着部122をハンド本体部121の軸心方向(図の上下方向)において伸縮させる。把持部124は、第1の把持部124Aと第2の把持部124Bとからなる。駆動力伝達機構126A,126Bは、第1の把持部124Aおよび第2の把持部124Bを、ハンド本体部121の軸心に対して垂直な方向(図の左右方向)において移動可能に支持し、把持駆動部125の駆動力を第1の把持部124Aおよび第2の把持部124Bに伝達する。
【0025】
上記構成のロボットハンド12によれば、例えば、吸着部122のみを用いて、物品100を吸着し、ピッキングすることによって移送することができる。また、把持部124を用いて、物品100を第1の把持部124Aおよび第2の把持部124Bによって両側から挟むように把持し、ピッキングすることによって移送することができる。さらに、吸着部122および把持部124の両方を用いて、物品100を吸着部122で吸着して持ち上げた後、第1の把持部124Aおよび第2の把持部124Bによって両側から挟み込むことにより、物品100をより安定した状態でピッキングし、移送することができる。
【0026】
なお、吸着部122については、複数のサイズの吸着パッドを備える構成であってもよい。また、把持部124については、2つの把持部(124A,124B)を有する構成に限られるものではなく、把持部を3つ以上備える構成であってもよい。
【0027】
上記構成のロボットハンド12において、吸着部122による吸着、把持部124による把持、あるいは、吸着部122および把持部124の両方による吸着・把持は、物品100をピッキングするためのピッキング手法の一例である。そして、本構成例のロボットハンド12は、吸着部122による吸着、把持部124による把持、吸着部122および把持部124の両方による吸着・把持のいずれかの手法を、ピッキング対象の物品100のピッキング手法として選択可能な構成のロボットハンドである。
【0028】
<第1の実施形態>
[ピッキングシステムの構成例]
図3は、本発明の第1の実施形態に係るピッキングシステムの制御系の構成例を示すブロック図である。
【0029】
(制御部)
制御部50は、演算装置51、情報記憶装置52、入力装置53、および、出力装置54の他に、入出力インターフェース制御部55および通信部56を備えている、そして、演算装置51、情報記憶装置52、入力装置53、出力装置54、入出力インターフェース制御部55、および、通信部56は、バスライン57を介して相互に通信可能な構成となっている。
【0030】
(演算装置)
演算装置51は、入力受付部511、ピッキング手法選択部512、動作計画算出部513、および、出力処理部514の各機能部を有し、ピッキングシステム1の処理全般に必要な値を演算する機能を持っている。演算装置51に含まれる各機能部は、当該演算装置51に各処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、情報記憶装置52に記憶され、演算装置51によって実行される。
【0031】
演算装置51において、入力受付部511は、入力装置53や通信部56を介して入力される様々な情報の入力を受け付ける機能部である。例えば、入力受付部511は、入力装置53、あるいは、インターネットなど所定の通信ネットワークNを介して接続される外部装置(図示せず)から、ピッキング対象の物品に関する物品情報の入力を受け付ける。
【0032】
ピッキング対象の物品に関する物品情報は、物品の種別を規定する形状種別、および、物品を搬送する際の取り扱いに関する取り扱い情報といった情報である。物品情報の詳細については後述する。入力受付部511は、入力装置53、あるいは、外部装置から受け付けた物品情報を、対応する所定の機能部に受け渡す。
【0033】
ピッキング手法選択部512は、入力受付部511から与えられる物品情報のうちの物品の種別を規定する形状種別と、当該形状種別ごとの処理定義データに基づいて、物品に対してどのピッキング手法を採用するかを選択する機能部である。
【0034】
動作計画算出部513は、物品情報のうちの、物品を搬送する際の取り扱いに関する取り扱い情報を基に、取り扱い情報と紐づく速度・加速度・高度の上限を超えないように動作計画を立案する機能部である。
【0035】
出力処理部514は、例えば、出力装置54が表示装置であるとき、当該表示装置に表示させる画面情報を生成する機能部である。例えば、出力処理部514は、ユーザから物品情報の入力を受け付ける入力画面情報やピッキング手法の選択結果、動作計画結果などを示す画面情報を作成し、表示装置に表示する。
【0036】
(情報記憶装置)
情報記憶装置52は、ピッキングシステム1、特にピッキングロボット10の制御に関する所定の情報を記憶する機能部である。具体的には、情報記憶装置52は、ピッキング対象の物品の形状種別ごとの処理定義データを格納するデータ格納部521、ピッキング対象の物品に関する物品情報を格納するデータ格納部522、および、取り扱い注意事項ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データを格納するデータ格納部523を有している。
【0037】
データ格納部521に格納される形状種別ごとの処理定義データは、ピッキング対象の物品の形状種別に応じて、ピッキングロボット10によるピッキング手法や動作計画を変更するためのデータであり、表やフローチャートのような形で表される。物品の形状種別ごとの処理定義データの具体例については後述する。
【0038】
データ格納部522に格納される物品情報は、ピッキング対象の物品に関するデータであり、物品の管理単位ごとに情報を持つ。物品の管理単位としては、例えば、SKU(Stock Keeping Unit)を挙げることができる。SKUは、在庫管理を行うときの、最小の管理単位である。同じ種類の商品でも、サイズや色や包装形態などが異なる場合、それぞれ別のSKUによる管理となる。
【0039】
(入力装置)
入力装置53は、キーボードやマウス、タッチパネル、バーコードセンサなどの入力デバイスからなる。入力装置53では、ユーザ(例えば、ライン構築担当者など)による入力操作によって、ピッキングロボット10によるピッキング作業などに関する各種の情報の入力が行われる。バーコードセンサは、収納ダンボール110(図1参照)につけられたバーコード等の識別情報を読み取ることができる。
【0040】
(出力装置)
出力装置54は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置からなり、ユーザ(例えば、ライン構築担当者など)に対して、ピッキングロボット10によるピッキング作業などに関する各種の情報の表示出力を行う。
【0041】
ここでは、出力装置54をピッキングシステム1内に設ける構成を例示したが、ピッキングシステム1の外部装置に設ける構成をとることもできる。また、出力装置54については、表示装置に限られるものではなく、プリンタなどの印刷装置、あるいは、スピーカなどの音声出力装置であってもよい。
【0042】
(入出力インターフェース制御部)
入出力インターフェース制御部55は、制御部50内の入力装置53および出力装置54、ならびに、制御部50外の搬送ロボット11、搬入コンベア20、搬出コンベア30、撮像装置40、ロボットハンド12との間の通信を制御する機能部である。
【0043】
(通信部)
通信部56は、インターネットなど所定の通信ネットワークNを介して外部装置(図示せず)と通信を行う機能部である。
【0044】
[物品情報]
図4は、ピッキング対象の物品に関する物品情報の一例を示す図である。図4に示すように、物品情報として、物品の管理単位であるSKUごとのユニークなIDであるSKU ID5221と、物品の商品名である品名5222とに紐づけて、物品の種別を規定する形状種別5223と取り扱い情報5224とが保持されている。取り扱い情報5224には、ピッキング手法指定情報5225および取り扱い注意事項5226が含まれている。
【0045】
SKU ID5221および品名5222については、倉庫内の物品位置、在庫、および、出入庫を管理する倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)から取得するようにしてもよい。形状種別5223および取り扱い情報5224については、後述する物品情報登録画面(図6参照)で作業者が入力するようにしてもよい。
【0046】
図5は、物品情報のデータの一例を示す図である。物品情報のデータは、例えば、物品情報の種別5227およびデータの例5228からなる。物品情報のうち、物品の種別を規定する形状種別5223については、物品の外観形状に関する種別名で、データの例5228としては、袋、箱、円筒、球などを挙げることができる。
【0047】
取り扱い情報5224は、ピッキング手法指定情報と取り扱い注意事項とを含む。ピッキング手法指定情報は、ロボットハンド12で取り得るピッキング手法のうち、どの手法を使ってピッキング作業を行うかを直接指定するためのデータである。データの例5228としては、吸着部122による吸着、把持部124による把持、吸着部122および把持部124の両方による吸着・把持などを例示することができる。
【0048】
取り扱い情報5224における取り扱い注意事項は、物品がどのような性質を持ち、どのように扱わなければいけないかを規定するデータであり、物品の外観形状だけからでは判断できない、梱包の強度や内容物の性質などを示す情報である。データの例5228としては、壊れ物、柔軟物、危険物などを例示することができる。
【0049】
[物品情報登録画面]
図6は、物品情報登録画面の一例を示す図である。図6に示すように、物品情報登録画面には、SKU ID5221と品名5222とが表示される。作業者は、物品情報登録画面上において、SKU ID5221の物品に対する、形状種別5223、ピッキング手法指定情報5225、および、取り扱い注意事項5226を入力することができる。入力されたデータは、登録ボタン5230を押すことにより、物品情報としての登録が完了し、情報記憶装置52のデータ格納部522に格納される。
【0050】
図7は、取り扱い注意事項ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データの一例を示す図である。取り扱い注意事項ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データでは、取り扱い注意事項5231と形状種別5232とに紐づけて、加速度上限5233、速度上限5234、および、高度上限5235を保持する。物品情報で物品ごとに取り扱い注意事項5231を指定した場合は、この取り扱い注意事項5231ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データを参照して、上限を超えないようにピッキングロボット10の動作を計画する。
【0051】
[動作計画結果表示画面]
続いて、出力処理部514で作成される動作計画結果表示画面について説明する。図8は、動作計画結果表示画面の一例を示す図である。
【0052】
図8に示すように、動作計画結果表示画面には、図3におけるピッキング手法選択部512および動作計画算出部513の処理結果が表示される。例えば、ピッキング手法選択部512で物品に対するピッキング手法を選択した後、動作計画算出部513で搬送動作を算出した場合、あるいは、入力受付部511を介してユーザから動作計画結果表示画面の表示指示を受け付けた場合、出力処理部514は、当該動作計画結果表示画面の情報を生成し、出力装置54の表示部に表示する
【0053】
図8に示すように、動作計画結果表示画面は、ピッキング対象の物品の物品情報表示領域401と、選択されたピッキング手法・動作計画表示領域402とを有している。
【0054】
ピッキング対象の物品の物品情報表示領域401には、ピッキング手法選択および動作計画算出に用いた対象物品のSKU ID5221、品名5222、形状種別5223、ピッキング手法指定情報5225、および、取り扱い注意事項5226が表示される。物品情報表示領域401には、さらに、形状種別5223と取り扱い注意事項5226とから規定される加速度上限5233、速度上限5234、および、高度上限5235の各情報が表示される。
【0055】
物品情報表示領域401内の認識結果表示領域403には、撮像装置40で撮影し、その撮影結果を基に認識した物品形状(認識結果)と、ピッキング手法選択部512で選択した、ピッキングの際の把持点(把持位置)が重畳表示される。
【0056】
ピッキング手法・動作計画表示領域402には、ピッキング手法選択部512で選択した物品に対するピッキング手法404、動作計画算出部513で算出した搬送経路405、当該搬送経路405上をピッキングロボット10が動作する際の最大加速度406、最大速度407、および、最大高度408が表示される。
【0057】
ユーザ(作業者)は、選択されたピッキング手法・動作計画表示領域402に表示された物品に対するピッキング手法404が適切か否か、当該搬送経路405を動作する際の最大加速度406、最大速度407、および、最大高度408が、加速度上限5233、速度上限5234、および、高度上限5235を超えていないかを確認することができる。確認の結果、不適当な場合は、図6に示す物品情報登録画面において、ユーザが物品情報を修正して、再度、ピッキング手法選択部512と動作計画算出部513の処理を実行することで、計画を修正することができる。
【0058】
<ピッキングロボットの制御方法>
続いて、上記構成のピッキングシステム1において実行される、本発明の実施形態に係るピッキングロボットの制御方法について説明する。
【0059】
[基本となる処理]
図9は、本発明の第1の実施形態に係るピッキングシステム1において実行されるピッキングロボット10の制御方法の基本となる処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
図1に示すピッキングシステム1において実行されるピッキングロボット10の制御方法の基本的な処理は、例えば、CPUによって構成される演算装置51による制御の下に実行される。
【0061】
本処理は、例えば、収納ダンボール110が搬入コンベア20上を通過した際に、収納ダンボール110につけられたバーコード等の識別情報を、バーコードセンサを含む入力装置53が読み取り、演算装置51に対して実行指示を与えることによって開始される。
【0062】
演算装置51は、入力装置53から実行指示を受けると、収納ダンボール110につけられたバーコード等の識別情報から物品100のSKU IDを取得し、当該SKU IDに対応する物品情報を取得する(ステップS11)。
【0063】
次に、演算装置51は、カメラや距離センサ等の撮像装置40を起動し、当該撮像装置40によって、収納ダンボール110の中にある物品100を撮影する(ステップS21)。ここでは、収納ダンボール110の中に、同じSKUの物品100が複数個入っていることを想定する。ステップS21では、撮像装置40によるである画像情報や距離情報などから、物品100の形状、位置・姿勢・重心の各情報を抽出することができる。
【0064】
次に、演算装置51は、撮像装置40による撮影結果である画像情報や距離情報などから、物品100の形状、位置・姿勢・重心に基づく把持点候補を抽出する(ステップS31)。ここでは、収納ダンボール110の中にある複数の物品100を撮影したデータの中から、物品個々の形状を切り分けるように認識する処理が行われる。
【0065】
物品100の形状、位置・姿勢・重心に基づく把持点候補は、周知技術(例えば、特許第7186128号公報に記載のような技術)により、認識対象の特徴を定義したマスタデータと、撮影結果の画像の中から抽出した認識対象の特徴点とを一致させることによって求めることができる。あるいは、周知技術(例えば、特開2022-181142号公報に記載のような技術)のように、過去の認識結果から得られる類似パターンを使って、撮影結果から抽出してもよい。
【0066】
次に、演算装置51は、情報記憶装置52のデータ格納部521に格納された物品の形状種別ごとの処理定義データ、データ格納部522に格納された物品情報、および、ステップS21で抽出した物品形状に基づいて、物品のピッキング手法を選択する(ステップS41)。ステップS41の処理の詳細については後述する。
【0067】
次に、演算装置51は、ステップS41で選択した物品のピッキング手法および物品情報を基に、複数ある物品100のうち、最も優先度の高い物品100を1つ選定し、ピッキングロボット10の搬送動作を計画する(ステップS51)。ステップS51の処理の詳細については後述する。
【0068】
次に、演算装置51は、ステップS51での動作計画に基づいて、収納ダンボール110から物品100を1つピッキングし、搬出コンベア30上の搬出コンテナ60へ移載する動作を実行する(ステップS61)。
【0069】
次に、演算装置51は、収納ダンボール110から搬送した物品100の個数が指定個数に達したか否か、即ち、物品100を指定個数搬送したか否かを判断し(ステップS71)、指定個数に達した場合は(S71のYES)、ピッキングロボット10の制御のための一連の処理を終了する。指定個数に達していない場合は(S71のNO)、ステップS21に戻り、再度、収納ダンボール110の中にある物品100の撮影から実行して、指定個数まで搬送する。
【0070】
上述したピッキングロボット10の制御のための一連の処理により、ピッキング対象の物品に関する物品情報に応じて、ロボットハンド12によるピッキング手法を切り替えることができる。これにより、ロボットハンド12に対して作業者が物品ごとに使用するユニットを規定する必要がないため、ピッキング作業を迅速に行うことができる。
【0071】
[ピッキング手法の選択処理]
続いて、物品の形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、および、ステップS21で抽出した物品形状に基づいて物品のピッキング手法を選択する、図9のステップS41の具体的な処理について、図10および図11を用いて説明する。
【0072】
図10は、形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、および、物品形状に基づいてピッキング手法を選択するための処理の一例を示すフローチャート(その1)であり、図11は、形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、および、物品形状に基づいてピッキング手法を選択するための処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
【0073】
図3に示すデータ格納部521に格納される形状種別ごとの処理定義データは、物品の形状種別に基づいて、物品のピッキング手法を決定する方法を定義したデータである。物品の形状種別ごとの処理定義データについては、例えば、形状種別とピッキング手法の対応表や、形状種別を判定して処理を変更するフローチャートの形式で表すことができる。本実施形態では、形状種別ごとの処理定義データがフローチャートの形式で表される例を示す。
【0074】
図10のフローチャートの処理)
演算装置51は、まず、ステップS11で取得したSKUごとの物品情報の中から、図4に示す形状種別5223およびピッキング手法指定情報5225を取得し(ステップS411)、次いで、ピッキング手法の指定ありか否かを判断する(ステップS412)。この判断処理において、ピッキング手法の指定ありの場合は(S412のYES)、演算装置51は、指定されたピッキング手法を選択結果とし(ステップS413)、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0075】
ステップS412の判断処理において、演算装置51は、ピッキング手法が指定されていない場合は(S412のNO)、形状種別5223の登録があるか否かを判断し(ステップS414)、形状種別5223が登録されていなければ(S414のNO)、図11のフローチャートの処理に移行する。
【0076】
演算装置51は、ステップS414の判断処理において、形状種別5223が登録されており(S414のYES)、形状種別5223が「袋」の場合(ステップS415)、吸着のみでピッキングすることを選択結果とする(ステップS416)。
【0077】
次いで、演算装置51は、ロボットハンド12が複数サイズの吸着パッドを備えている場合は、ステップS31で抽出した物品100の形状から、略平面状の領域を抽出し(ステップS417)、当該略平面状の領域に入る最大の吸着パッド径を選択し(ステップS418)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。ステップS418の処理により、ロボットハンド12において、複数サイズの吸着パッドのうち、どの吸着パッドを使うかを特定することができる。
【0078】
演算装置51は、ステップS414の判断処理において、形状種別5223が登録されており(S414のYES)、形状種別5223が「箱」の場合(ステップS419)、まず、ステップS31で抽出した物品100の形状から、平面の領域の寸法を算出し(ステップS420)、次いで、当該平面に入る最大の吸着パッド径を選択する(ステップS421)。
【0079】
次に、演算装置51は、把持部124(第1の把持部124Aおよび第2の把持部124B)で箱を挟めるか否かを判断する(ステップS422)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、ステップS31で抽出した物品100の形状から求められる、平面寸法の短辺距離とを比較することにより、把持部124で箱を挟むことができるか否かを判断することができる。
【0080】
そして、演算装置51は、把持部124の最大開き幅が平面寸法の短辺距離よりも大きい場合は、把持部124で箱を挟むことができると判断し(S422のYES)、ピッキング手法として「吸着と把持」を選択し(ステップS423)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0081】
また、演算装置51は、把持部124の最大開き幅が平面寸法の短辺距離以下の場合は、把持部124で箱を挟むことができないため、ピッキング手法として「吸着のみ」を選択し(ステップS424)、ステップS421で求めた最大の吸着パッド径の吸着パッドを使用する。
【0082】
演算装置51は、ステップS414の判断処理において、形状種別5223が登録されており(S414のYES)、形状種別5223が「円筒」または「球」の場合(ステップS425)、まず、ステップS31で抽出した物品100の形状から、円筒・球の半径を算出する(ステップS426)。
【0083】
次に、演算装置51は、当該円筒・球を吸着部122で吸着できるか否かを判断する(ステップS427)。具体的には、吸着部122で吸着可能な半径と、ステップS426で算出した円筒・球の半径とを比較することにより、吸着部122で吸着できるか否かを判断することができる。例えば、吸着部122で吸着可能な半径が、ステップS426で算出した半径よりも大きい場合は、吸着部122で吸着できると判断する。
【0084】
演算装置51は、ステップS427の判断処理において、吸着部122で吸着できると判断した場合(S427のYES)、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断する(ステップS428)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、ステップS426で算出した円筒・球の半径から求める直径とを比較することにより、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断することができる。
【0085】
演算装置51は、ステップS428の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径よりも大きく、把持部124で円筒・球を挟むことができると判断した場合(S428のYES)、ピッキング手法として「吸着と把持」を選択し(ステップS429)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0086】
また、演算装置51は、ステップS428の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径以下で、把持部124で円筒・球を挟むことができないと判断した場合(S428のNO)、ピッキング手法として「吸着のみ」を選択し(ステップS430)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0087】
演算装置51は、ステップS427の判断処理において、吸着部122で吸着できないと判断した場合(S427のNO)、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断する(ステップS431)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、ステップS426で算出した円筒・球の半径から求める直径とを比較することにより、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断することができる。
【0088】
演算装置51は、ステップS431の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径よりも大きく、把持部124で円筒・球を挟むことができると判断した場合(S431のYES)、ピッキング手法として「把持のみ」を選択し(ステップS431)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0089】
また、演算装置51は、ステップS431の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径以下の場合、把持部124で円筒・球を挟むことができないと判断する(S431のNO)。そして、吸着部122でも把持部124でもピッキングできないため「ピッキング不可」とし(ステップS433)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。この場合、ピッキングロボット10によるピッキングではなく、例えば、作業者によるピッキングで対応することになる。
【0090】
図11のフローチャートの処理)
次に、ステップS414の判断処理において、形状種別の登録なしの場合(S414のNO)の処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0091】
形状種別が登録されていない場合、ステップS31で抽出した、撮像装置40の撮影結果から抽出した物品の形状・位置・姿勢・重心に基づく把持点候補の情報に基づいて、ピッキング手法を選択する。ここでは、物品の形状を、多角形の平面データであるポリゴンの形式で表現しているとする。例えば、STLのデータ形式などで形状情報を保持する。
【0092】
演算装置51は、初めに、ステップS31で抽出した、物品の重心に基づく把持点候補付近のポリゴンを取得し(ステップS441)、次いで、取得したポリゴンの頂点座標から、把持点付近の曲率を計算する(ステップS442)。
【0093】
次に、演算装置51は、曲率から把持点候補付近が平面であるか否かを判定するための閾値をεとするとき、把持点付近の曲率が閾値εよりも小さいか否かを判定し(ステップS443)、閾値εよりも曲率が小さい場合(S443のYES)、把持点候補付近が平面であるとして、ステップS21で抽出した物品形状から、平面寸法を算出する(ステップS444)。
【0094】
次に、演算装置51は、算出した平面寸法内に入る最大の吸着パッド径を選択し(ステップS445)、次いで、把持部124で物品100を挟むことができるか否かを判断する(ステップS446)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、平面寸法の短辺距離とを比較することにより、把持部124で箱を挟むことができるか否かを判断することができる。
【0095】
そして、演算装置51は、把持部124の最大開き幅が平面寸法の短辺距離よりも大きい場合は、把持部124で箱を挟むことができると判断し(S446のYES)、ピッキング手法として「吸着と把持」を選択し(ステップS447)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0096】
また、演算装置51は、把持部124の最大開き幅が平面寸法の短辺距離以下の場合は、把持部124で箱を挟むことができないため、ピッキング手法として「吸着のみ」を選択し(ステップS448)、ステップS445で求めた最大の吸着パッド径の吸着パッドを使用する。
【0097】
演算装置51は、ステップS443の判定処理において、把持点付近の曲率が閾値ε以上であると判定した場合(S443のNO)、把持点候補付近が円筒面や球面であるとして、ステップS21で抽出した物品形状から円筒・球の半径を算出する(ステップS449)。
【0098】
次に、演算装置51は、円筒面や球面である把持点候補付近を吸着部122で吸着することができるか否かを判断する(ステップS450)。具体的には、吸着部122で吸着可能な半径と、ステップS449で算出した円筒・球の半径とを比較することにより、吸着部122で吸着できるか否かを判断することができる。例えば、吸着部122で吸着可能な半径が、ステップS449で算出した半径よりも大きい場合は、吸着部122で吸着できると判断する。
【0099】
演算装置51は、ステップS450の判断処理において、吸着部122で吸着できると判断した場合(S450のYES)、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断する(ステップS451)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、ステップS449で算出した円筒・球の半径から求める直径とを比較することにより、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断することができる。
【0100】
演算装置51は、ステップS451の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径よりも大きく、把持部124で円筒・球を挟むことができると判断した場合(S451のYES)、ピッキング手法として「吸着と把持」を選択し(ステップS452)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0101】
また、演算装置51は、ステップS451の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径以下で、把持部124で円筒・球を挟むことができないと判断した場合(S451のNO)、ピッキング手法として「吸着のみ」を選択し(ステップS453)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0102】
演算装置51は、ステップS450の判断処理において、吸着部122で吸着できないと判断した場合(S450のNO)、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断する(ステップS454)。具体的には、把持部124の最大開き幅と、ステップS449で算出した円筒・球の半径から求める直径とを比較することにより、円筒・球を把持部124で挟むことができるか否かを判断することができる。
【0103】
演算装置51は、ステップS454の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径よりも大きく、把持部124で円筒・球を挟むことができると判断した場合(S454のYES)、ピッキング手法として「把持のみ」を選択し(ステップS455)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。
【0104】
また、演算装置51は、ステップS454の判断処理において、把持部124の最大開き幅が円筒・球の直径以下の場合、把持部124で円筒・球を挟むことができないと判断する(S454のNO)。そして、吸着部122でも把持部124でもピッキングできないため「ピッキング不可」とし(ステップS456)、しかる後、ピッキング手法を選択するための処理を終了する。この場合、ピッキングロボット10によるピッキングではなく、作業者によるピッキングで対応することになる。
【0105】
なお、図11のフローチャートの処理で選択したピッキング手法については、図4に示すピッキング対象の物品に関する物品情報に、SKU IDの物品100に対するピッキング手法指定情報5225として保持するようにしてもよい。また、ステップS443の判定処理において、把持点付近の曲率が0の場合は「箱」、把持点付近の曲率が0でない場合は「円筒」もしくは「球」として、物品情報の形状種別5223として保持するようにしてもよい。
【0106】
このように、SKU IDに対するピッキング手法指定情報5225、あるいは、形状種別5223として保持することで、同じSKU IDに対する2回目以降のピッキング手法選択処理(図10のフローチャートの処理)で、ピッキング手法指定あり(ステップS412)、あるいは、形状種別の情報あり(ステップS414)と判定することができる。これにより、図11のフローチャートの処理において、形状と曲率を計算する場合よりも計算時間の削減が期待できる。
【0107】
以上の一連の処理により、物品100のピッキング作業において、物品100の形状種別ごとの処理定義データ、物品情報、ステップS21で撮像装置40の撮影結果から抽出した物品形状に基づいて、吸着部122による吸着、把持部124による把持、吸着部122および把持部124の両方による吸着・把持などのピッキング手法を選択することができる。
【0108】
[搬送動作の計画処理]
次に、ピッキングロボット10の搬送動作を計画するための処理、即ち、図9のステップS51の具体的な処理について、図12を用いて説明する。図12は、ピッキングロボット10の搬送動作をするための処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、演算装置51による制御の下に、図3に示す動作計画算出部513で実行される。
【0109】
演算装置51は、まず、図9のステップS31で抽出した各物品の位置と把持点、および、図10の処理で選択したピッキング手法を基に、収納ダンボール110内の複数の物品100の搬送優先度を計算する(ステップS511)。
【0110】
ステップS511の処理は、前述のとおり、収納ダンボール110の中に、同じSKUの物品100が複数個入っていることを想定しているため、収納ダンボール110の中のどの物品100を搬送するかを決める処理である。搬送優先度は、例えば、搬送ロボット11の現在位置から最も近い位置にある物品を優先する、あるいは、物品群の中で一番上に載置されている物品を優先する、などの算出方法によって決めることができる。
【0111】
次に、演算装置51は、収納ダンボール110の中から、優先度が最も高い物品100を選択する(ステップS512)。以降、選択した物品100に対して、搬送ロボット11の待機位置から物品のピッキング、搬送、設置の一連の動作を計画する。
【0112】
演算装置51は、まず、搬送ロボット11の待機位置から、優先度が最も高い物品100の把持点までのロボット動作を計画し(ステップS513)、次いで、図10の処理で選択したピッキング手法に応じた、把持点でのピッキング動作を計画する(ステップS514)。
【0113】
次に、演算装置51は、図7に示した取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データを参照し、SKU IDの取り扱い注意事項5231と形状種別5232から、加速度上限5233、速度上限5234、高度上限5235の上限値を取得する(ステップS515)。
【0114】
次に、演算装置51は、把持点から物品の設定位置までの動作計画において、各経由点で加速度、速度、高度が加速度上限5233、速度上限5234、高度上限5235の上限値を超えないように動作計画する(ステップS516)。
【0115】
次に、演算装置51は、設置位置における、選択したピッキング手法に応じた設置動作を計画し(ステップS517)、次いで、設置位置から待機位置までのロボット動作を計画し(ステップS518)、ピッキングロボット10の搬送動作を計画するための一連の処理を終了する。
【0116】
上述した一連の処理による動作計画により、1個の物品を設置位置まで、取り扱い注意事項5231と選択したピッキング手法に従って搬送するための動作計画が立案される。この動作計画の結果については、図8に示す動作計画結果表示画面上に表示され、作業者が確認・修正指示できる。
【0117】
その後、この動作計画にしたがって、図9のステップS61において、収納ダンボール110から物品100を1つピッキングし、搬送する動作が実行される。そして、この処理を、図9のステップS71において、収納ダンボール110の中にある複数個の物品100に対して、指定された個数分繰り返すことにより、オーダーに対するピッキング作業を完了することができる。
【0118】
以上、第1の実施形態に係るピッキングシステム1および当該ピッキングシステム1におけるピッキングロボットの制御方法について説明した。
【0119】
このようなピッキングシステム1あるいはピッキングロボットの制御方法によれば、複数種類のピッキング手法をとることができるロボットハンド12を用いた際に、物品形状や包装強度、壊れやすさや安定性などを踏まえて、適切なピッキング手法と動作計画を自動的に選定することができる。これにより、安定したピッキングによって物品の破損リスクを低減しつつ、高速に物品を移載することができる。
【0120】
なお、本発明は、前述の第1の実施形態に限られるものではない。前述の第1の実施形態について、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、形状種別5223に応じて、図9のステップS21における撮影処理や、図9のステップS31における物品の形状・位置・姿勢・重心に基づいて把持点候補を抽出する処理を変更するようにしてもよい。また、図12の処理で計画した動作を実行した結果に応じて、ピッキング対象の物品に関する物品情報を更新するようにしてもよい。
【0121】
<第2の実施形態>
[ピッキングシステムの構成例]
図13は、本発明の第2の実施形態に係るピッキングシステムの構成例を示すブロック図である。
【0122】
演算装置51は、入力受付部511、ピッキング手法選択部512、動作計画算出部513、および、出力処理部514の各機能部の他に、物品の形状種別ごとに物品の認識処理方法を指定する認識方法算出部515、および、物品の基本形状および把持点を指定する物品情報更新演算部516の各機能部を有している。
【0123】
情報記憶装置52は、物品の形状種別ごとの処理定義データを格納するデータ格納部521、物品に関する物品情報を格納するデータ格納部522、および、取り扱い注意事項ごとの加速度、速度、経路の高度の各上限データを格納するデータ格納部523の他に、物品の形状種別ごとの認識処理情報を格納するデータ格納部524を有している。
【0124】
(物品の形状種別ごとの認識処理情報)
図14は、物品の形状種別ごとの認識処理情報の一例を示す図である。物品の形状種別ごとの認識処理情報は、形状種別341に紐づけて、認識処理の名称342と、物品の基本形状と把持点343の情報を持つ。そして、演算装置51において、物品の形状種別341ごとに、認識方法算出部515によって物品の認識処理方法を指定し、物品情報更新演算部516によって物品の基本形状および把持点を指定する。
【0125】
例えば、形状種別341が袋の場合に、認識処理の方法を「ルールベース処理」と指定すると、「ルールベース処理」に応じた撮像装置40の撮像種別、撮像時の光量、あるいは、図9のステップS31の処理の閾値、即ち、物品の形状・位置・姿勢・重心に基づいて把持点候補を抽出する処理の閾値を変更することができる。
【0126】
また、基本形状として、例えば、STLデータ形式など3次元形状の形式で形状種別ごとの基本形状と、その形状における把持点位置を事前に保持しておくことができる。この基本形状と把持点を使うことで、図9のステップS31の処理、即ち、物品の形状・位置・姿勢・重心に基づいて把持点候補を抽出する処理において、物品の基本形状と撮像装置40で撮影した物品の形状とをマッチングさせて、ピッキングの際の把持点を特定することができる。
【0127】
また、例えば、形状種別341が箱の場合に、認識処理の方法を「カテゴリベース処理」と指定すると、撮像装置40の種類、撮像時の光量を変更したり、物品の形状・位置・姿勢・重心に基づいて把持点候補を抽出する処理(図9のステップS31の処理)において、抽出が必要な寸法箇所を指定したりしておくことができる。
【0128】
[物品情報の更新処理]
続いて、図12の処理で計画した動作を実行した結果に応じて、ピッキング対象の物品に関する物品情報を更新する処理について説明する。この物品情報の更新処理については、物品情報を倉庫管理システム(WMS)で管理する場合と、ピッキングシステム1のみで管理する場合の2通り考えられる。
【0129】
ここで、倉庫管理システム(WMS)とは、ロケーション管理や入出庫に伴う在庫の変動や納品書の作成など、倉庫で行われる業務のマネジメントを支えるシステムである。倉庫管理システムによれば、業務の標準化や効率化だけでなくコスト削減も行うことができるとともに、在庫管理の強化を図ることができる。
【0130】
[物品情報を倉庫管理システムで管理]
図15は、物品情報を倉庫管理システムで管理する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【0131】
物品情報を倉庫管理システムで管理する場合は、図9のピッキングロボット10を動作させる処理を開始する前に、倉庫管理システムに登録されている物品情報、および、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データを取得して、情報記憶装置52に保持する(ステップS711)。
【0132】
次に、ピッキングシステム1において、演算装置51は、取り扱い情報を入力し(ステップS712)、次いで、形状情報を入力するか、あるいは、図10の処理で形状種別ごとの処理定義データに従って算出する(ステップS713)。
【0133】
次に、図12の処理で動作計画して、搬送動作を実行する。このとき、図12の処理で動作実行した結果、搬送に失敗した場合、演算装置51は、加速度、速度、経路の高度上限を変更して再度動作計画する(ステップS714)。具体的には、加速度上限、速度上限、経路の高度上限を低く設定して、より安定して搬送するように再計画を行う。
【0134】
この再計画によって搬送が成功した場合、演算装置51は、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データにある当該SKU IDに対する加速度上限5233、速度上限5234、高度上限5235を、搬送成功時のパラメータに変更する(ステップS715)。
【0135】
そして、演算装置51は、倉庫管理システムに登録されている物品情報、および、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データを更新する(ステップS716)。
【0136】
[物品情報をピッキングシステムのみで管理]
図16は、物品情報をピッキングシステムのみで管理する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【0137】
物品情報をピッキングシステム1のみで管理する場合、演算装置51は、情報記憶装置52に保持している物品情報、および、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データを取得する(ステップS811)。
【0138】
そして、演算装置51は、ステップS812からステップS815までの各処理を順に実行する。ステップS812からステップS815までの各処理は、物品情報を倉庫管理システムで管理する場合のステップS712からステップS715までの処理と同様である。すなわち、動作実行して搬送に失敗した場合は、上限値を変更して再計画し、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データにある当該SKU IDに対する加速度上限5233、速度上限5234、高度上限5235を、搬送成功時のパラメータに変更する。
【0139】
最後に、演算装置51は、情報記憶装置52にある物品情報、および、取り扱い注意事項ごとの加速度上限、速度上限、経路の高度上限の各データを更新する(ステップS816)。
【0140】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0141】
1…ピッキングシステム、10…ピッキングロボット、11…搬送ロボット、12…ロボットハンド、20…搬入コンベア、30…搬出コンベア、40…撮像装置、50…制御部、51…演算装置、52…情報記憶装置、53…入力装置、54…出力装置、55…入出力インターフェース制御部、56…通信部、57…バスライン、60…搬出コンテナ、110…収納ダンボール、121…ハンド本体部、122…吸着部、123…伸縮機構、124…把持部、124A…第1の把持部、124B…第2の把持部、125…把持駆動部、126A,126B…駆動力伝達機構、511…入力受付部、512…ピッキング手法選択部、513…動作計画算出部、514…出力処理部、515…認識方法算出部、516…物品情報更新演算部
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