(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165620
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】衣服及び衣服内に収容可能な気室部材
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20241121BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A41D13/002
A41D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081970
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遥水
【テーマコード(参考)】
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B035AB01
3B035AB07
3B035AB09
3B035AB15
3B035AC03
3B035AC20
3B211AA01
3B211AB11
3B211AB15
3B211AC03
3B211AC08
3B211AC13
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】洗濯がし易く、魚釣りなど、水辺で着衣しても、保温性が維持される衣服を提供する。
【解決手段】本発明の衣服1は、ガス流路を介して気体が導入される気室を備えた気室部材20が着脱可能となっている。気室部材20は、着脱用の隙間10a,10b,10cを通じて、表地と裏地との間の収容空間に着脱されることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路を介して気体が導入される気室を備えた気室部材が着脱可能な衣服であり、
前記気室部材は、着脱用の隙間を通じて表地と裏地との間の収容空間に着脱されることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記気室部材は、左右の前身頃と後身頃、及び、左右の前身頃と後身頃を連結する肩掛け部を備えており、前記左右の前身頃と後身頃と肩掛け部は一体化され、脇下部分に前記気室が配設されていないことを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記肩掛け部は、前記左右の前身頃と後身頃とを連通させるガス流路を備えていることを特徴とする請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記肩掛け部は、前記ガス流路部分で上方に膨らむと共に、端部側の膨らみが大きくなるように段差が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の衣服。
【請求項5】
胸部位置の内側又は外側に、前記気室部材に呼気を導入する息吹き込みバルブが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項6】
前記息吹き込みバルブは、押圧操作部を備えており、
前記押圧操作部を押圧することで前記気室に充填された気体を放出可能であることを特徴とする請求項5に記載の衣服。
【請求項7】
前記気室部材には、下端に1つ以上の折曲部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項8】
前記気室部材には、背中部分の中央が折り曲げ可能となるように折曲部が形成されていることを特徴とする請求項1又は7に記載の衣服。
【請求項9】
前記着脱用の隙間は、後身頃の裏地、及び、左右の前身頃の裏地に、1個所以上形成されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項10】
前記着脱用の隙間は、横方向、又は、連続する縦横の二方向に延出したものが含まれることを特徴とする請求項9に記載の衣服。
【請求項11】
前記着脱用の隙間は、ファスナで開閉可能であることを特徴とする請求項9又は10に記載の衣服。
【請求項12】
前記衣服は、フード部を備えており、
気室部材が前記フード部の表地と裏地との間に配設可能であることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項13】
本体の内部に収容空間を備え、ガス流路を介して気体が導入される気室を備えた気室部材を前記収容空間に着脱可能な衣服であり、
前記本体には、前記気室部材を着脱可能にする着脱用の隙間が形成されていることを特徴とする衣服。
【請求項14】
前記本体は、左右の前身頃、及び、後身頃を備え、
前記着脱用の隙間は、前記左右の前身頃、及び、後身頃の少なくとも一部に、横方向、又は、連続する縦横の二方向に延出していることを特徴とする請求項13に記載の衣服。
【請求項15】
前記左右の前身頃の少なくとも一方の胸部位置の内側又は外側には、前記気室部材に連結され、呼気を導入する息吹き込みバルブが配設可能であることを特徴とする請求項14に記載の衣服。
【請求項16】
衣服の内部に設けられた収容空間に着脱可能な気室部材であって、
前記気室部材は、樹脂製のシート部材を重ね、重ねたシート部材の所定位置を止着することで、ガス流路と、ガス流路を介して気体が導入される気室が形成されていることを特徴とする気室部材。
【請求項17】
左右の前身頃及び後身頃を有し、前記左右の前身頃及び後身頃に前記気室が形成されていることを特徴とする請求項16に記載の気室部材。
【請求項18】
前記左右の前身頃と後身頃を連結する肩掛け部を備えており、前記左右の前身頃と後身頃と肩掛け部は一体化され、脇下部分に前記気室が配設されていないことを特徴とする請求項17に記載の気室部材。
【請求項19】
前記気室部材には、下端に1つ以上の折曲部が形成されていることを特徴とする請求項16に記載の気室部材。
【請求項20】
前記気室部材には、背中部分の中央が、縦方向に止着されていることを特徴とする請求項16又は19に記載の気室部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性を有する衣服、及び、衣服内に収容可能な気室部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アウトドアで着衣される衣服は、その保温性を高めるように、表地と裏地との間に中綿が充填されている。しかし、そのような衣服を水辺(海、河川、湖など)で着衣すると、水分が中綿にしみ込み易く、保温性が損なわれてしまう。特に、魚釣りでは、着衣を着たまま水中に立ち込むことがあり、このような場面では、水分が中綿まで入り込んでしまう。
【0003】
このため、中綿を使用することなく、保温性を維持することが可能な衣服が知られている(例えば、特許文献1,2)。これらの公知文献に開示された衣服は、通気性を遮断する素材で形成された表地と裏地との間に気室を形成しており、気室に気体(空気)を封入することで保温性を確保している。また、気室の気体を抜くことで、折り畳んで収容し易くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-264393号
【特許文献2】実用新案登録第3162628号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献に開示されている衣服は、表地と裏地との間が気室となっているので洗濯し難いという問題がある。特に、魚釣りでは、汚れ易く、餌や魚の匂いがしみ込んでしまうこともあり、魚釣りに使用することは適さない。また、魚釣りでは、釣針を使用するため、釣針が引っ掛かると内部の気体が抜けてしまい、保温性が維持されなくなる。
【0006】
本発明は、洗濯がし易く、魚釣りなど、水辺で着衣しても、保温性が維持される衣服を提供することを目的とする。また、本発明は、衣服内に収容可能であり、保温性を維持することが可能な気室部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る衣服は、ガス流路を介して気体が導入される気室を備えた気室部材が着脱可能となっており、前記気室部材は、着脱用の隙間を通じて表地と裏地との間の空間に着脱されることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の衣服は、気室部材が隙間を介して着脱されるようになっており、衣服そのものに気室が形成されていないので、気室部材を取り外して衣服(本体)のみを洗濯することができる。また、気室部材は、衣服の内部に収容される構造であるため、釣針のような鋭利なものが引っ掛かっても、気室部材まで刺し込まれることが抑制され、内部の気体が抜けることを低減することができる。すなわち、気室部材が損傷することが抑制されることから、衣服として保温性を維持することが可能となる。なお、前記気室部材に形成される気室は、気室部材にステッチを設けて区切り、連続した複数個を有する構成にすることで、変形し易くなり、着衣時に違和感を生じさせないようにすることができる。或いは、そのような気室は、単一構造(1つの気室)であっても良い。
【0009】
また、本発明に係る衣服は、本体の内部に収容空間を備え、ガス流路を介して気体が導入される気室を備えた気室部材を前記収容空間に着脱可能に構成されており、前記本体には、前記気室部材を着脱可能にする着脱用の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように、衣服に、気室部材のための着脱用の隙間を形成しておくことで、内部の収容空間に対して気室部材を容易に着脱することが可能となる。
【0011】
また、本発明における気室部材は、衣服の内部に設けられた収容空間に着脱可能に構成されており、前記気室部材は、樹脂製のシート部材を重ね、重ねたシート部材の所定位置を溶着することで、ガス流路と、ガス流路を介して気体が導入される気室が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成の気室部材は、衣服の内部に設けられた収容空間に収容し、気室に対して気体を導入すると、衣服の保温性を維持することができるため、一般的な衣服のように、中綿を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗濯がし易く、魚釣りなど、水辺で着衣しても、保温性が維持される衣服が得られる。また、本発明の気室部材を衣服内に収容することで、保温性が維持されるため、中綿を設ける必要性が無く、気室部材を取り外すことで本体を容易に洗濯することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る衣服の第1実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図。
【
図2】
図1に示す衣服の左右の前身頃を開いた状態を示す正面図。
【
図3】衣服の内部空間に対して着脱される気室部材の一例を示す正面図。
【
図5】
図3に示す気室部材を展開した状態を示す図。
【
図6】気室部材に気体(呼気)を導入するバルブの一例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図。
【
図7】本発明に係る衣服の第2実施形態を示す図であり、左右の前身頃を開いた状態を示す正面図。
【
図8】本発明に係る衣服の第3実施形態を示す図であり、正面から見た図。
【
図9】(a)は気室部材の肩掛け部の一例を示す図、(b)は気室部材の肩掛け部の別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る衣服の実施形態について説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る衣服の第1実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、
図2は、左右の前身頃を開いた状態を示す正面図である。
【0016】
本実施形態の衣服1は、左右の前身頃2,3及び後身頃4を備えた本体1Aを有している。前記本体1Aは、外部に露出する表地1aと着衣した人の身体側に接触する裏地1bを備えており、前記表地1a(裏地1b)については、雨中、水辺で着衣することを考慮して、防水性を有する素材、或いは、防水加工が施された素材で形成されることが好ましい。
【0017】
前記左右の前身頃2,3の前側端部には、上下方向に延出するファスナ5が設けられており、ファスナ5を上下方向に操作することで、衣服1を着衣/脱衣することが可能となっている。前記左右の前身頃2,3と後身頃4との間には、装着者の腕部を挿通させる袖部(長袖)7が設けられている。また、後身頃4側の上端領域には、フード部8(ファスナ等で着脱可能であってもよい)が設けられている。
なお、本発明における衣服1は、
図1に示すような形態以外に、腕部を左右の前身頃と後身頃との間に形成した開口から露出させるベストタイプ、フード部を備えないタイプ等を含む概念であり、そのデザインについては、図に示すような形態に限定されることはない。
【0018】
前記本体1Aには、前記表地1aと裏地1bとの間の収容空間に、後述する気室部材20を装着すると共に取り外しする(着脱する)ための隙間(着脱用の隙間)が形成されている。この隙間は、裏地1b側に形成されており、この隙間を介して、気室部材20を前記収容空間に対して着脱できるようにしている。
【0019】
本実施形態では、
図2に示すように、後身頃4の裏地の下側、及び、左右の前身頃2,3の裏地の下側の夫々に、左右方向に延出するように3個所の隙間10a,10b,10cを形成している。このような隙間は、気室部材20を着脱操作し易い位置、及び、大きさに形成されていればよい。本実施形態のように3個所形成しておくことで、隙間10aから気室部材20を収容空間内に挿入し、隙間10b,10cから手を差し込んで気室部材20の一部を掴んで引くことで装着作業が容易に行えるようになる。
【0020】
なお、このような隙間は、前記左右の前身頃2,3及び後身頃4の内、1個所以上形成しておけば良い。また、図に示すような隙間10a,10b,10cは、ファスナ(図示せず)で開閉可能に構成することが好ましい。このようにファスナを設けることで、保温性が高まると共に、水分が内部に侵入するのを抑制することが可能となる。また、隙間の数を減らすことでも保温性を高めることが可能となる。
【0021】
図3から
図5は、
図1及び
図2に示した衣服1(本体1A)の収容空間に対して着脱される気室部材20の構成を示す図であり、
図3は正面図、
図4は背面図、
図5は気室部材を展開した状態を示す図である。
【0022】
前記気室部材20は、空気や呼気などの各種の気体(ガスと総称する)が移動するガス流路21と、前記基体が貯留される気室22を備えており、前記ガス流路21を介して気体を気室22に導入することで膨らむ部材である。このような気室部材20は、柔軟性を備えており、気体が導入されていない状態で、前記着脱用の隙間10a,10b,10cを通じて表地1aと裏地1bとの間の収容空間に容易に着脱することが可能となっている。また、本実施形態の気室22は、複数個設けられているが、その形成個数、配列パターンについては限定されることはなく、1つの気室で構成されていても良い。
【0023】
本実施形態の気室部材20は、例えば、
図5に示すような形状に裁断された2枚の樹脂製のシート部材20A,20Bを重ね合わせ、所定の位置を止着することで、前記ガス流路21及び複数の気室22を形成している。各シート部材20A,20Bは、例えば、ポリ塩化ビニール(PVC)ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PET)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料をシート状に形成したもの(溶着層が積層されていても良い)であり、周囲部分20aを止着(本実施形態では、熱による溶着)すると共に、予め定められた止着態様(本実施形態では、複数の線状の溶着部20b)にすることで、
図3,
図4に示すように、着衣した状態で、横方向に延びる気室22を上下方向に沿って複数形成するようにしている。この場合、各気室22は、ガス流路21によって連通された状態となっていることから、1個所から気体を導入すると、各気室22を膨らませることが可能となっている。
【0024】
なお、前記溶着部20bの配置、幅等の構成については、特に限定されることはない。図に示す構成では、ガス流路21と気室22が一体的に連結された形状となっているが、例えば、一部を未溶着状態(ガス流路となる)にして、格子状に溶着することで、隣接する矩形状の気室22を多数形成することも可能である。このように、溶着部20bの構成によって、ガス流路21の配置態様、及び、気室22の個数、形状、大きさ等を適宜、変形することが可能である。また、前記止着は、溶着以外にも、接着剤等によって接着する構成(2枚の樹脂シートを部分的に固定する構成)であっても良い。
【0025】
また、本実施形態の気室部材20は、衣服1の本体1Aと同様、左右の前身頃24,25及び後身頃26を有しており、ベスト形状に形成されている。これら左右の前身頃24,25及び後身頃26には、上記した複数の気室22が形成されている。このように、気室部材20が左右の前身頃24,25及び後身頃26を備えていることで、保温性を高めることが可能となる。
【0026】
本実施形態の気室部材20は、前記左右の前身頃24,25の上端と、後身頃26の上端とを連結するように一対の肩掛け部27を備えている。この肩掛け部27は、左右の前身頃24,25及び後身頃26と一体化されており、衣服1を着衣した際には、その脇下部分には、前記気室22が配設されていないよう構成されている。
【0027】
前記肩掛け部27は、衣服を着衣した際、左右の前身頃24,25と後身頃26が、肩の部分で湾曲して垂下するようになっている。このため、肩掛け部27には、
図5に示した状態から、
図3,4に示す状態に容易に折れ曲がるように、屈曲部27aが形成されている。この屈曲部27aについては、例えば、左右の前身頃24,25と後身頃26との間でガス流路21aを確保した状態の溶着で構成することが可能である。
【0028】
上記した構成の気室部材20は、
図1に示すように、衣服1の本体1Aの表地と裏地との間の収容空間に収容される。この場合、気室部材20は、一般的に充填される中綿と比較すると保形性があり、多少の硬度があるため、着衣した際に違和感が生じ難く、衣服との間で変位し難いように、以下のように構成することが好ましい。
【0029】
前記気室部材20に1つ以上の折曲部28を形成しておく。この折曲部28は気室部材20が変位し易いように形成されるものであり、例えば、開口、スリット、折曲部、薄肉厚部、溶着部等で構成される。本実施形態では、
図4,5に示すように、後身頃26の下端の両側に溶着部として構成された2つの折曲部28を形成している。このように折曲部28を形成することで、後身頃26が変形して身体が動き易くなる。なお、折曲部の形成位置、個数、方向性については、適宜変形することが可能であり、例えば、後身頃26の中央の下端に形成してもよい。
【0030】
前記気室部材20の背中部分の中央部分に折曲部20cを形成して折曲げし易くする。例えば、後身頃26の中央部分を縦方向に溶着したり、断面山形状に屈曲させることで、中央部分を屈曲し易くする。このように、折曲部20cを形成することで、着衣した際に動き易くなると共に着心地が向上し、更には、気室部材20をコンパクトに折り畳むことが可能となる。
【0031】
前記気室部材20は、気室22に気体を導入した際、気室の膨らみが1~2cm程度になるように構成する。このような膨らみ具合であれば、十分な保温性を確保することができると共に、嵩張ることを抑制することが可能となる。
なお、気室22に、より多くの気体が導入できるように構成することで、フローティングベストとしての機能を持たせることも可能である。
【0032】
前記肩掛け部27は、
図3,4に示すように、左右の前身頃24,25の上端から、軸方向に沿って左右(外側)に広がるように形成することが好ましい。このように構成することで、衣服1の肩にバック等を掛けた際、或いは、フローティングベストを着衣した際など、その肩紐が肩掛け部27と干渉し難くなり、ずれ落ちることを防止することが可能となる。
なお、肩掛け部27の上端部における幅Wは、4~20cmに形成しておくことが好ましく、これにより、衣服1の内部に、気室部材20を固定するための縫着等をしなくても、気室部材20が衣服から外れ難くすることができる。
【0033】
前記肩掛け部27は、左右の前身頃24,25と後身頃26とを連通させるガス流路21aを設けておくことが好ましい。
このようにすることで、いずれか1個所から気体を導入することで、左右の前身頃24,25及び後身頃26の気室22に気体を充填することができ、気体導入の効率を高めることが可能となる。
【0034】
上記した衣服1には、胸部位置の内側に、前記気室部材20に呼気を導入する息吹き込みバルブ40が配設されている。前記息吹き込みバルブ40は、
図6に示すように、筒状の本体40Aを備えており、一端側40aに流路を開閉する押圧操作部41がバネ付勢されて保持されている。前記押圧操作部41を押圧することで、弁体(図示せず)が開放されると共に、押圧操作部41の押圧状態を解除することで、前記弁体が閉塞されるように構成されている。このため、押圧操作部41を押圧して、一端側40aの開口40bから呼気を導入することで、前記気室部材20の気室22に気体を充填することが可能となる。
【0035】
前記息吹き込みバルブ40は、本体40Aの他端側40cが、気室部材20の左前身頃24の上端内側に設けられた注入口20eに圧入可能となっており、前記一端側40aは、衣服1の左前身頃2の上端内側に設けられた開口2eから突出可能に保持される。
【0036】
このように、本実施形態の息吹き込みバルブ40は、衣服の胸部位置の内側に配設されるため、他物(例えば、釣り用として使用する場合、釣糸や仕掛けなど)が引っ掛かることはない。また、水中に立ち込んだ際、寒くなってきたら直ちに開口40bを口に含んで気体(呼気)を充填することができるので、保温性を調整することが容易に行える。さらに、前記息吹き込みバルブ40は、押圧操作部41を押圧することで、気室部材20の気室22に充填された気体を直ちに放出することができ、気室部材20の扱い性の向上が図れるようになる。
【0037】
上記した構成の衣服1によれば、従来のように、保温性を高める中綿を内部に充填する必要がなく、保温性を調整できる気室部材20を着脱できるようにしたため、気室部材20を取り外して衣服1(本体)のみを洗濯することが可能となる。また、中綿を設ける必要が無いため、水分を吸い上げることもない。また、気室部材20は、衣服1の内部に着脱自在に収容される構造(衣服そのものに気室が形成されていない構造)であるため、釣り用として着衣した際、釣針のような鋭利なものが引っ掛かっても、気室部材20まで刺し込まれることが抑制される。すなわち、気室部材20が損傷することが抑制されるため、衣服として保温性を維持することが可能である。
【0038】
また、本実施形態の気室部材20は、着衣した人体の前側と後側に面として配置されるので、保温性に優れ暖かい構造となる。この場合、気室部材20に折曲部28を形成したり、脇下部分に気室22を配設しない構造としたことで、動き易くなり、釣りなどをする際の操作を妨げることが抑制される。また、気室部材20は、1つの型で様々なサイズの衣服に適用することができ、気室部材20を外すことで、衣服単体として使用することも可能となる。
【0039】
次に、
図7から
図9を参照して本発明に係る衣服の別の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、上記した第1実施形態と同一の部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0040】
図7は、本発明の第2実施形態を示す図であり、左右の前身頃を開いた状態を示す正面図である。
本実施形態では、後身頃4の裏地の下側に横方向に延出する隙間10aを形成すると共に、左右の前身頃2,3の裏地の下側の夫々に、連続する縦横の二方向に延出する隙間(L字状の隙間)10e,10fを形成している。
このように二方向に延出する隙間10e,10fを設けることで、内部の収容空間に手を差し込み易くなり、気室部材20を衣服1の本体1Aに対して着脱操作し易くすることができる。また、上記した隙間を肩部の周辺に設けることで、後身頃26から左右の前身頃24,25を、衣服の本体内に装着し易くなると共に、ねじれ難くすることができ、取り外しも容易に行えるようになる。
【0041】
図8は、本発明の第3実施形態を示す図であり、正面から見た図である。
この実施形態では、上記した息吹き込みバルブ40の一端側40aを、胸部位置の外側に露出させている。このような構成によれば、衣服のファスナ5を開けることなく、気室部材20の気室22に気体を充填することが可能となる。この場合、息吹き込みバルブ40の一端側40aが衣服から突出するため、他物と引っ掛からないように、フラップ1dを設けるなど、息吹き込みバルブ40を露出させないことが好ましい。
【0042】
また、衣服1のフード部8の内部空間(表地と裏地との間の空間)にも、前記気室部材20と同様な構成の気室部材20´を配設しても良い。この気室部材20´は、フード部8内に装着されたままであっても良いし、着脱可能であっても良く、例えば、首部分1Bから息吹き込みバルブ42を突出させて気体を導入するようにしても良い。
このような構成によれば、フード部8の保形性を保つことができ、頭や首にフィットして暖かくすることが可能となる。なお、気室部材20´への気体の導入は、前身頃に配設された前記息吹き込みバルブ40から行なうようにしても良い。
【0043】
図9(a)は、上記した気室部材20の肩掛け部27の変形例を示す図である。
上記したように、前記肩掛け部27は、ガス流路21a部分で上方に膨らむように構成されており、この構成において、端部側となる外側のサイド27bの膨らみを首側のサイド27cよりも大きくなるように段差27Aを形成することが好ましい。
このように肩掛け部27に段差27Aを形成することで、リュックなどの肩紐をずれ難くすることが可能となる。
【0044】
図9(b)は、肩掛け部27の別の変形例を示す図である。
この変形例では、段差27Bを、両端部(両サイド27b,27c)側の膨らみH1が大きくなるように構成している。すなわち、肩掛け部27の中央部分27dが窪んでおり、両サイド27b,27cに移行するに連れて段階的に膨らみが大きくなるようにしている。
このような構成によれば、リュックなどの肩紐が更にずれ難くなると共に、中央部分27dに肩紐が位置することで、より安定するようになる。なお、中央部分と両サイドに生じる段差H2(膨らみH1に対する窪み量)については、5~20mm程度、確保されていれば良い。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
前記気室部材20に対する気体の導入は、呼気以外にも、専用のポンプで行なうようにしても良い。また、気室部材20の形状については、適宜、変形することができ、ガス流路や気室の配置態様等、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 衣服
1A 本体
2,3 左右の前身頃
4 後身頃
5 ファスナ
8 フード部
10a,10b,10c,10e,10f 隙間
20,20´ 気室部材
21 ガス流路
22 気室
24,25 左右の前身頃
26 後身頃
27 肩掛け部
28 折曲部
40 息吹き込みバルブ