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特開2024-165621温度センサシステム、情報処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165621
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】温度センサシステム、情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20241121BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01J5/48 C
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081971
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌彦
【テーマコード(参考)】
2G066
5G405
【Fターム(参考)】
2G066AC14
2G066BB15
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA04
5G405AA06
5G405AB01
5G405AD06
5G405AD07
5G405CA53
5G405EA27
5G405EA41
(57)【要約】
【課題】温度センサの各画素について温度しきい値または監視マスクを設定することを容易にする。
【解決手段】温度センサシステムは、複数の画素の各々について温度を測定し、測定した温度または温度上昇率が第1のしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力する赤外線温度センサと、情報処理装置とを備える。情報処理装置は、複数の画素の各々について、測定された温度に基づいて最高温度または温度上昇率を特定し、複数の画素の各々について、特定した最高温度または温度上昇率が第2のしきい値を超える場合に、当該画素を第1のしきい値との比較対象から除外するように赤外線温度センサを設定するか、または、特定した最高温度もしくは温度上昇率が第2のしきい値を超えない場合に、当該画素の最高温度または最大温度上昇率に所定値を加算もしくは乗算して得た値を第1のしきい値として赤外線温度センサに設定する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサシステムであって、
監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定し、測定した温度または温度上昇率が第1のしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力する赤外線温度センサと、
前記赤外線温度センサと接続され、前記異常温度検出信号を受信すると警報を出力する警報盤と、
前記赤外線温度センサと着脱自在に接続される情報処理装置と
を備え、
前記情報処理装置は、
前記複数の画素の各々について、前記赤外線温度センサにより測定された温度に基づいて最高温度または温度上昇率を特定し、
前記複数の画素の各々について、特定した最高温度または温度上昇率が第2のしきい値を超える場合に、当該画素を第1のしきい値との比較対象から除外するように前記赤外線温度センサを設定するか、または、前記特定した最高温度もしくは温度上昇率が前記第2のしきい値を超えない場合に、当該画素の最高温度または最大温度上昇率に所定値を加算もしくは乗算して得た値を第1のしきい値として前記赤外線温度センサに設定する
ことを特徴とする温度センサシステム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記第2のしきい値または前記所定値を利用者が設定するための画面を表示することを特徴とする、請求項1に記載の温度センサシステム。
【請求項3】
赤外線温度センサと着脱自在に接続される情報処理装置であって、
前記赤外線温度センサは、監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定し、測定した温度または温度上昇率が第1のしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力し、
前記情報処理装置は、
前記複数の画素の各々について、前記赤外線温度センサにより測定された温度に基づいて最高温度または温度上昇率を特定し、
前記複数の画素の各々について、特定した最高温度または温度上昇率が第2のしきい値を超える場合に、当該画素を第1のしきい値との比較対象から除外するように前記赤外線温度センサを設定するか、または、前記特定した最高温度もしくは温度上昇率が前記第2のしきい値を超えない場合に、当該画素の最高温度または最大温度上昇率に所定値を加算もしくは乗算して得た値を第1のしきい値として前記赤外線温度センサに設定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項3に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサシステム、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温の金属をロボットが運ぶ生産ラインでは、ロボットが高温の金属を掴み損ねたり、落下させたりした場合に火災のリスクがある。このようなリスクに対処するためのシステムとして、温度センサシステムが知られている。例えば、特許文献1に記載の温度センサシステムは、温度センサ、警報盤および保守用PCを備えている。
【0003】
このシステムの温度センサは、監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定し、その測定結果が警報温度(しきい値)を超える場合に異常温度検出信号を出力する。警報盤は、温度センサと接続され、異常温度検出信号を受信すると警報を出力する。保守用PCは、温度センサを保守点検するための装置である。この保守用PCは、各種設定画面を生成してディスプレイに表示させる。表示される各種設定画面は、警報温度等を設定するための画面である。この画面を通じて利用者は警報温度(しきい値)を設定することができる。また、この保守用PCは、監視マスク設定画面を生成してディスプレイに表示させる。表示される監視マスク設定画面は、監視マスクを設定するための画面である。この画面を通じて利用者は、例えば上記の生産ラインにおいて高温の金属が平常時に動く軌跡上の画素をマスクすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-162435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の温度センサシステムでは、利用者が手動で警報温度(しきい値)と監視マスクを設定することができる。しかし、温度センサの画素ごとに温度しきい値と監視マスクを手動で設定することは煩雑である。特に数万画素のサーモグラフィでは、画素ごとに温度しきい値と監視マスクを手動で設定することは非常に困難である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、温度センサの各画素について温度しきい値または監視マスクを設定することを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る温度センサシステムは、監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定し、測定した温度または温度上昇率が第1のしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力する赤外線温度センサと、前記赤外線温度センサと接続され、前記異常温度検出信号を受信すると警報を出力する警報盤と、前記赤外線温度センサと着脱自在に接続される情報処理装置とを備え、前記情報処理装置は、前記複数の画素の各々について、前記赤外線温度センサにより測定された温度に基づいて最高温度または温度上昇率を特定し、前記複数の画素の各々について、特定した最高温度または温度上昇率が第2のしきい値を超える場合に、当該画素を第1のしきい値との比較対象から除外するように前記赤外線温度センサを設定するか、または、前記特定した最高温度もしくは温度上昇率が前記第2のしきい値を超えない場合に、当該画素の最高温度または最大温度上昇率に所定値を加算もしくは乗算して得た値を第1のしきい値として前記赤外線温度センサに設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度センサの各画素について温度しきい値または監視マスクを設定することを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、温度センサシステム100の構成例を示す。
図2図2は、温度センサ101の外観の一例を示す。
図3図3は、温度センサ101の内部構成の一例を示す。
図4図4は、窓板202の汚損を検出するための機構の一例を示す。
図5図5は、警報盤102の構成の一例を示す。
図6図6は、保守用PC103の構成例を示す。
図7図7は、温度ログ321の例を示す。
図8図8は、温度しきい値情報322の例を示す。
図9図9は、監視マスク情報323の例を示す。
図10図10は、放射率情報324の例を示す。
図11図11は、温度算出処理の一例を示す。
図12図12は、異常温度検出処理の一例を示す。
図13図13は、自動設定処理の一例を示す。
図14図14は、各種設定画面の一例を示す。
図15図15は、各種設定画面の一例を示す。
図16図16は、異常温度検出処理の一例を示す。
図17図17は、自動設定処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1-1.構成
本発明の一実施形態に係る温度センサシステム100について、図面を参照して説明する。
図1は、温度センサシステム100の構成例を示す。
温度センサシステム100は、防火対象エリアを監視し、異常温度を検出すると警報を出力するシステムである。この温度センサシステム100は、それぞれ異なる場所に設置される4台の温度センサ101と、各温度センサ101と有線接続される警報盤102と、警報盤102と着脱自在に有線接続される保守用PC103を備える。以下、各構成要素について説明する。
【0010】
1-1-1.温度センサ101
温度センサ101は赤外線温度センサである。この温度センサ101は、監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定する。そして当該センサは、測定した温度がしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力する。
【0011】
図2は、この温度センサ101の外観の一例を示す斜視図である。
温度センサ101は、略直方体形状の筐体201を有する。筐体201の正面板211の中央には、略矩形の開口部212が形成されている。また、筐体201の正面板211の裏面には、開口部212を塞ぐようにシリコン製の窓板202が取り付けられている。正面板211と窓板202の間には、窓板202の上側を覆うように反射板203が挿入されている。
【0012】
図3は、温度センサ101の内部構成の一例を示すブロック図である。
温度センサ101は、筐体201内に、RAM等の主記憶装置301と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置302、CPU等のプロセッサ303と、赤外線アレイセンサ304と、透過率測定モジュール305と、表示灯306と、通信モジュール307を備える。
【0013】
このうち、主記憶装置301は各種のプログラムを記憶しており、これらのプログラムをプロセッサ303が実行することにより、各種の機能が実現される。実現される機能には、温度算出部311、異常温度検出部312、汚損検出部313および設定変更部314が含まれる。以下、各機能について説明する。
【0014】
温度算出部311は、赤外線アレイセンサ304から出力される電圧値に基づいて各画素の温度を算出する。そして温度算出部311は、算出した温度の情報を補助記憶装置302に記憶する。記憶された温度情報は、温度ログ321を構成する。
【0015】
異常温度検出部312は、補助記憶装置302に記憶された温度ログ321に基づいて異常温度を検出する。異常温度検出部312は、異常温度を検出すると、警報盤102に対して異常温度検出信号を出力する。
【0016】
汚損検出部313は、透過率測定モジュール305から出力される電圧値に基づいて窓板202の汚損を検出する。具体的には汚損検出部313は、透過率測定モジュール305から出力される電圧値を汚損判定しきい値と比較し、前者が後者を超えているか否かを判定する。この判定の結果、前者が後者を超えている場合には、汚損検出部313は警報盤102に対して汚損検出信号を出力し、かつ、緑色LED205(図2参照)を点滅させる。一方、この判定の結果、前者が後者を超えていない場合には、汚損検出部313は汚損検出信号を出力せず、かつ、緑色LED205を点滅させない。汚損検出部313は、このような汚損検出処理を周期的に実行する。
【0017】
設定変更部314は、保守用PC103からの要求に応じて、補助記憶装置302に記憶される温度しきい値情報322、監視マスク情報323、放射率情報324または設定値325を更新する。
【0018】
次に、補助記憶装置302について説明する。
補助記憶装置302は、温度ログ321、温度しきい値情報322、監視マスク情報323、放射率情報324および設定値325を記憶する。以下、各情報について説明する。
【0019】
図7は、温度ログ321の例を示す。
温度ログ321は、赤外線アレイセンサ304の画素ごとに測定された温度のログである。この温度ログ321は、測定日時701、温度702等のカラムを有する。これらのカラムのうち、温度702には、画素ごとに温度が格納される。
【0020】
図8は、温度しきい値情報322の例を示す。
温度しきい値情報322は、赤外線アレイセンサ304の画素ごとに設定される、温度のしきい値を示す情報である。この温度のしきい値は、異常温度検出信号を出力するためのしきい値である。
温度しきい値情報322は、画素ID801、温度しきい値802等のカラムを有する。
【0021】
図9は、監視マスク情報323の例を示す。
監視マスク情報323は、赤外線アレイセンサ304の画素のうち、マスク対象を示す情報である。マスク対象の画素については、温度が算出されない。
監視マスク情報323は、画素ID901、監視マスク902等のカラムを有する。これらのカラムのうち、監視マスク902には、監視マスクの要否を示す真理値が格納される。なお、真理値の初期値は、監視マスク不要を示す「false」である。
【0022】
図10は、放射率情報324の例を示す。
放射率情報324は、赤外線アレイセンサ304の画素ごとに設定される放射率を示す情報である。この放射率情報324は、画素ID1001、放射率1002等のカラムを有する。
【0023】
設定値325は、警報判定で参照されるしきい値である。この設定値325は、画素数しきい値、フレーム数しきい値および汚損判定しきい値からなる。以下、各設定値について説明する。
【0024】
画素数しきい値は、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照される画素数である。この画素数を超える数の画素において異常温度が検出された場合に、異常温度検出信号が出力される。
【0025】
フレーム数しきい値は、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照されるフレーム数である。このフレーム数を超える数の温度情報のセットにおいて異常温度が検出された場合に、異常温度検出信号が出力される。
【0026】
汚損判定しきい値は、温度センサ101において汚損検出時に参照されるしきい値である。
【0027】
次に、再び図3を参照し、温度センサ101のその他の構成要素について説明する。
赤外線アレイセンサ304は、8×8画素で2次元エリアの温度を測定するためのセンサである。この赤外線アレイセンサ304は、8×8画素の各々について、検出した赤外線量に応じた電圧値を周期的に出力する。
【0028】
透過率測定モジュール305は、窓板202の光透過率(言い換えると、汚損の程度)を測定するための部品である。この透過率測定モジュール305は、光源401と受光素子402からなる。図4は、窓板202の汚損を検出するための機構の一例を示す図である。同図に示す機構において、光源401から放射された光は、窓板202を透過した後に反射板203により反射される。反射された光は、窓板202を透過して受光素子402に入射する。この反射光が入射した受光素子402は、窓板42の光透過率(言い換えると、汚損の程度)に応じた電圧値を出力する。
【0029】
表示灯306は、異常の発生を警告するための光源である。この表示灯306は、赤色LED204と緑色LED205(図2参照)からなる。これらのLEDは、図2に示すように、開口部212から覗くように筐体201内に配置されている。
【0030】
通信モジュール307は、保守用PC103と通信するための部品である。
【0031】
1-1-2.警報盤102
警報盤102は、温度センサ101から異常検出信号を受信し、警報を出力する装置である。図5は、この警報盤102の構成の一例を示す図である。警報盤102は、同図に示すように、メイン基板502と端子基板503を備える。なお、同図では、図面が複雑になるのを避けるために、温度センサ101を1台のみ示している。
【0032】
警報盤102のメイン基板502は、I端子、C端子、DC端子、L端子及びDA端子を備える。警報盤102の端子基板503は、I端子、C端子、DC端子、A端子及びB端子を備える。加えて端子基板503は、コネクタCN1及びCN2を備える。
一方、温度センサ101のセンサ基板501は、I端子、C端子、DC端子、A端子、B端子、L端子及びDA端子を備える。
【0033】
メイン基板502のI端子は、端子基板503のI端子およびコネクタCN1を介して、センサ基板501のI端子と電源線L1で接続されている。温度センサ101は、この電源線L1を通じて警報盤102から電源の供給を受ける。
【0034】
メイン基板502のC端子は、端子基板503のC端子およびコネクタCN1を介して、センサ基板501のC端子と信号線L2で接続されている。また、メイン基板502のL端子は、センサ基板501のL端子と信号線L3で接続されている。温度センサ101は、この信号線L2およびL3を短絡させることで、異常温度検出信号を警報盤102に対して出力する。
【0035】
メイン基板502のDC端子は、端子基板503のDC端子およびコネクタCN1を介して、センサ基板501のDC端子と信号線L4で接続されている。また、メイン基板502のDA端子は、センサ基板501のDA端子と信号線L5で接続されている。温度センサ101は、この信号線L4およびL5を短絡させることで、汚損検出信号を警報盤102に対して出力する。
【0036】
端子基板503のコネクタCN2は、当該基板のA端子とスイッチSW1を介してセンサ基板501のA端子と通信線L6で接続されている。また、このコネクタCN2は、端子基板503のB端子とスイッチSW2を介してセンサ基板501のB端子と通信線L7で接続されている。このコネクタCN2は、警報盤102の筐体の外に露出しており、このコネクタCN2には、保守用PC103から延びるケーブルが着脱自在に接続される。このコネクタCN2に接続された保守用PC103は、通信線L6およびL7を通じて温度センサ101と通信を行うことができる。この通信を通じて保守用PC103は、温度センサ101に記憶されている各種パラメータを設定することができる。また、保守用PC103は、温度センサ101に記憶されている温度ログ321を取得することができる。
【0037】
端子基板503のスイッチSW1およびSW2は、図5では1組しか示されていないが、温度センサ101ごとに1組ずつ設けられる。このスイッチSW1およびSW2は、図示せぬセンサ切替スイッチ(例えば、4回路2接点のロータリスイッチ)によりオンオフ制御可能になっている。このセンサ切替スイッチは、警報盤102の筐体の外に露出しており、利用者により操作される。利用者はこのセンサ切替スイッチを操作することにより、保守用PC103と接続される温度センサ101を選択することができる。
【0038】
警報盤102のメイン基板502には、プロセッサ、メモリ、スピーカおよび複数の表示灯が搭載されている(図示略)。このうちプロセッサは、メモリに記憶されている処理プログラムを実行することにより、警報出力部という機能を実現する。この警報出力部は、温度センサ101から異常温度検出信号の入力を受けると、スピーカから警報音を出力させ、かつ、異常温度検出を警告する表示灯を点灯させる。この警報動作により、利用者は火災の発生を知ることができる。また、この警報出力部は、温度センサ101から汚損検出信号の入力を受けると、スピーカから警報音を出力させ、かつ、汚損検出を警告する表示灯を点灯させる。この警報動作により、利用者は温度センサ101の窓板202が汚損していることを知ることができる。
【0039】
1-1-3.保守用PC103
保守用PC103は、温度センサ101を保守点検するための情報処理装置である。保守用PC103は、一例として、ノートPCやタブレット端末などである。
【0040】
図6は、保守用PC103の構成例を示すブロック図である。
保守用PC103は、RAM等の主記憶装置601と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置602、CPU等のプロセッサ603と、マウスやキーボード等の入力装置604と、ディスプレイやスピーカ等の出力装置605と、ネットワークカード等の通信制御部606を備える。
【0041】
このうち、主記憶装置601は各種のプログラムを記憶している。これらのプログラムは、非一時的な記憶媒体やインターネット等のネットワークを介して頒布可能なプログラムである。これらのプログラムをプロセッサ603が実行することにより、各種の機能が実現される。実現される機能には、第1設定部611、第2設定部612、第3設定部613が含まれる。以下、各機能について説明する。
【0042】
第1設定部611は、温度センサ101の各画素について温度しきい値と監視マスクを自動的に設定する。その際、第1設定部611は、第1に、複数の画素の各々について、温度センサ101により測定された温度に基づいて最高温度を特定する。第2に第1設定部611は、複数の画素の各々について、特定した最高温度が上限温度を超える場合に、当該画素を温度しきい値との比較対象から除外するように温度センサ101を設定する。第3に第1設定部611は、複数の画素の各々について、特定した最高温度が上限温度を超えない場合に、当該画素の最高温度に所定値(加算値)を加算して得た値を、温度しきい値として温度センサ101に設定する。
【0043】
第2設定部612は、各種設定画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させる。図14は、各種設定画面の一例を示す図である。同図に示す各種設定画面1400は、センサ番号表示欄1401、画素数しきい値入力欄1402、フレーム数しきい値入力欄1403、汚損判定しきい値入力欄1404、設定初期化ボタン1405、センサ読込ボタン1406、センサ書込ボタン1407およびキャンセルボタン1408を含む。以下、各表示要素について説明する。
【0044】
センサ番号表示欄1401には、保守用PC103に現在接続されている温度センサ101の識別番号が表示される。
【0045】
画素数しきい値入力欄1402には、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照される、画素数のしきい値が入力される。この入力欄に入力される画素数を超える数の画素において異常温度が検出された場合に、異常温度検出信号が出力される。
【0046】
フレーム数しきい値入力欄1403には、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照される、フレーム数のしきい値が入力される。この入力欄に入力されるフレーム数を超える数の温度情報のセットにおいて異常温度が検出された場合に、異常温度検出信号が出力される。
【0047】
汚損判定しきい値入力欄1404には、温度センサ101において汚損検出時に参照される、しきい値が入力される。
【0048】
設定初期化ボタン1405は、上記の入力欄1402~1404に初期値を設定するためのボタンである。
【0049】
センサ読込ボタン1406は、現在接続中の温度センサ101の画素数しきい値、フレーム数しきい値および汚損判定しきい値を上記の入力欄1402~1404に表示するためのボタンである。このボタンが選択されると、第2設定部612は、現在接続中の温度センサ101から画素数しきい値等を取得し、上記の入力欄1402~1404に表示する。
【0050】
センサ書込ボタン1407は、上記の入力欄1402~1404に設定されている情報を、現在接続中の温度センサ101に書き込むためのボタンである。このボタンが選択されると、第2設定部612は、入力欄1402~1404に設定されている情報を温度センサ101に送信する。この情報を受信した温度センサ101の設定変更部314は、受信した情報を設定値325として補助記憶装置302に記憶する。
【0051】
キャンセルボタン1408は、各種設定をキャンセルするためのボタンである。
【0052】
次に、第3設定部613について説明する。
第3設定部613は、各種設定画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させる。表示される各種設定画面は、上限温度と加算値を利用者が設定するための画面である。
図15は、各種設定画面の一例を示す図である。同図に示す各種設定画面1500は、センサ番号表示欄1501、上限温度入力欄1502、加算値入力欄1503、設定初期化ボタン1504、登録ボタン1505およびキャンセルボタン1506を含む。以下、各表示要素について説明する。
【0053】
センサ番号表示欄1501には、保守用PC103に現在接続されている温度センサ101の識別番号が表示される。
【0054】
上限温度入力欄1502には、第1設定部611により温度しきい値と監視マスクが設定される際に参照される上限温度が入力される。この入力欄に入力される上限温度は、しきい値であり、画素の最高温度がこの上限温度を超える場合に当該画素はマスクされる。逆に、画素の最高温度がこの上限温度を超えない場合には、当該画素の最高温度に所定値(加算値)を加算して、温度しきい値が算出される。
【0055】
加算値入力欄1503には、第1設定部611により画素の最高温度に加算される値が入力される。この加算値が画素の最高温度に加算されることで、当該画素の温度しきい値が算出される。
【0056】
設定初期化ボタン1504は、上記の入力欄1502および1503に初期値を設定するためのボタンである。
【0057】
登録ボタン1505は、上記の入力欄1502および1503に設定されている情報を補助記憶装置602に記憶するためのボタンである。
【0058】
キャンセルボタン1506は、各種設定をキャンセルするためのボタンである。
【0059】
次に、補助記憶装置602について説明する。
補助記憶装置602は、温度ログ621、温度しきい値情報622、監視マスク情報623、放射率情報624および設定値625を記憶する。以下、各情報について説明する。
【0060】
温度ログ621は、温度センサ101の画素ごとに測定された温度を示す情報である。この温度ログ621のデータ構成は、図7に示す通りである。この温度ログ621は、温度センサ101ごとに記憶される。
【0061】
温度しきい値情報622は、温度センサ101の画素ごとに設定される、温度のしきい値を示す情報である。この温度しきい値情報622のデータ構成は、図8に示す通りである。この温度しきい値情報622は、温度センサ101ごとに設定されて記憶される。
【0062】
監視マスク情報623は、温度センサ101の画素のうち、マスク対象を示す情報である。マスク対象の画素については、温度が算出されない。
監視マスク情報623のデータ構成は、図9に示す通りである。この監視マスク情報623は、温度センサ101ごとに設定されて記憶される。
【0063】
放射率情報624は、温度センサ101の画素ごとに設定される放射率を示す情報である。この放射率情報324のデータ構成は、図10に示す通りである。この放射率情報624は、温度センサ101ごとに設定されて記憶される。
【0064】
設定値625は、各種の設定値である。この設定値625は、画素数しきい値、フレーム数しきい値、汚損判定しきい値、上限温度および加算値からなる。以下、各設定値について説明する。
【0065】
画素数しきい値は、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照される画素数である。
フレーム数しきい値は、温度センサ101において異常温度を検出する際に参照されるフレーム数である。
画素数しきい値を超える数の画素において異常温度が検出され、それがフレーム数しきい値を超える数、連続して検出されると、異常温度検出信号が出力される。
【0066】
汚損判定しきい値は、温度センサ101において汚損検出時に参照されるしきい値である。
【0067】
上限温度は、しきい値であり、温度センサ101の画素の最高温度がこの上限温度を超える場合に当該画素はマスクされる。逆に、温度センサ101の画素の最高温度がこの上限温度を超えない場合には、当該画素の最高温度に所定値(加算値)を加算して、温度しきい値が算出される。
【0068】
加算値は、第1設定部611により画素の最高温度に加算される値が入力される。この加算値が画素の最高温度に加算されることで、当該画素の温度しきい値が算出される。
以上説明した画素数しきい値等の設定値は、温度センサ101ごとに設定されて記憶される。
【0069】
1-2.動作
1-2-1.温度算出処理
温度センサ101で実行される温度算出処理について説明する。図11は、この温度算出処理の一例を示すフロー図である。
【0070】
同図に示す温度算出処理1100において、温度算出部311は、赤外線アレイセンサ13から、各画素について検出された赤外線量に応じた電圧値を取得する(ステップ1101)。次に温度算出部311は、各画素について、当該画素の電圧値および放射率と、所定の補正係数とを所定の式に代入することにより、温度を算出する(ステップ1102)。その際、温度算出部311は、放射率情報324を参照して画素ごとに放射率を特定する。
【0071】
次に温度算出部311は、算出した各画素の温度を測定日時と対応付けて補助記憶装置302に記憶する(ステップ1103)。
以上が温度算出処理1100についての説明である。
【0072】
以上説明した温度算出処理1100は周期的に実行され、補助記憶装置302には時系列で温度情報が蓄積される。蓄積された温度情報は、温度ログ321を構成する。
なお、上記の温度算出処理1100では、監視マスク情報323でマスク対象に指定されている画素については、温度の算出が省略される。そのため、当該画素については、後述する異常温度検出処理において、温度しきい値との比較が省略される。
【0073】
1-2-2.異常温度検出処理
温度センサ101で実行される異常温度検出処理について説明する。ここで説明する異常温度検出処理では、温度しきい値を超える画素が所定数以上検出され、それが所定回数以上連続して検出されると、異常温度検出信号が出力される。
【0074】
図12は、異常温度検出処理の一例を示すフロー図である。
同図に示す異常温度検出処理1200において、異常温度検出部312は、1セットの温度情報を処理対象として取得する(ステップ1201)。その際、異常温度検出部312は、未取得であって、測定日時が最も古い1セットの温度情報を補助記憶装置302から取得する。なお、ここで言う1セットの温度情報とは、同じ測定日時と対応付けられた1レコード分の温度情報のことである。
【0075】
次に異常温度検出部312は、取得した1セットの温度情報において、処理対象の画素を1つ特定する(ステップ1202)。その際、異常温度検出部312は、未だ処理対象としていない画素を特定する。
【0076】
次に異常温度検出部312は、特定した処理対象の画素について、当該画素の温度と温度しきい値を比較する(ステップ1203)。その際、異常温度検出部312は、温度しきい値情報322を参照して、当該画素の温度しきい値を特定する。
【0077】
ステップ1203の比較の結果、温度が温度しきい値を超えている場合には(ステップ1204のYES)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をインクリメントする(ステップ1205)。一方、温度が温度しきい値を超えていない場合には(ステップ1204のNO)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をインクリメントせずに、ステップ1212に進む。
【0078】
画素数カウンタのカウント値をインクリメントした場合、異常温度検出部312は次に、インクリメントしたカウント値と画素数しきい値を比較する(ステップ1206)。その際、異常温度検出部312は、設定値325を参照して、画素数しきい値を特定する。
【0079】
ステップ1206の比較の結果、カウント値が画素数しきい値を超えている場合には(ステップ1207のYES)、異常温度検出部312は、フレーム数カウンタのカウント値をインクリメントする(ステップ1208)。一方、カウント値が画素数しきい値を超えていない場合には(ステップ1207のNO)、異常温度検出部312は、フレーム数カウンタのカウント値をインクリメントせずに、ステップ1212に進む。
【0080】
フレーム数カウンタのカウント値をインクリメントした場合、異常温度検出部312は次に、インクリメントしたカウント値とフレーム数しきい値を比較する(ステップ1209)。その際、異常温度検出部312は、設定値325を参照して、フレーム数しきい値を特定する。
【0081】
ステップ1209の比較の結果、カウント値がフレーム数しきい値を超えている場合には(ステップ1210のYES)、異常温度検出部312は警報を出力する(ステップ1211)。その際、異常温度検出部312は、警報盤102に対して異常温度検出信号を出力し、かつ、赤色LED204を点灯させる。一方、カウント値がフレーム数しきい値を超えていない場合には(ステップ1210のNO)、異常温度検出部312は、警報を出力せずに、ステップ1214に進む。
【0082】
ステップ1212では、異常温度検出部312は、処理対象の1セットの温度情報において、すべての画素を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての画素を処理対象としていない場合には(ステップ1212のNO)、異常温度検出部312はステップ1202に戻り、別の画素を処理対象として特定する。一方、この判定の結果、すべての画素を処理対象とした場合には(ステップ1212のYES)、異常温度検出部312は、フレーム数カウンタのカウント値をリセットし(ステップ1213)、ステップ1214に進む。
【0083】
ステップ1214では、異常温度検出部312は、すべてのセットの温度情報を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべてのセットの温度情報を処理対象としていない場合には(ステップ1214のNO)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をリセットし(ステップ1215)、ステップ1201に戻り、別のセットの温度情報を処理対象として特定する。一方、この判定の結果、すべてのセットの温度情報を処理対象とした場合には(ステップ1214のYES)、異常温度検出部312は本処理を終了する。
以上が異常温度検出処理1200についての説明である。
【0084】
1-2-3.自動設定処理
保守用PC103で実行される自動設定処理について説明する。ここで説明する自動設定処理は、温度センサ101の各画素について温度しきい値と監視マスクを自動的に設定するための処理である。
【0085】
この自動設定処理を行うにあたって利用者は、温度センサ101に防火対象エリアを予め監視させる。例えば防火対象エリアが、高温の金属をロボットが運ぶ生産ラインである場合には、利用者は、ロボットが高温の金属を運ぶ様子を温度センサ101に予め監視させる。このように温度センサ101に予め監視させることで、利用者は、温度センサ101に防火対象エリアの平常時の温度を記録させる。なお、温度センサ101の監視期間は、任意の長さでよい。
【0086】
この監視期間(言い換えると、学習期間)の後に利用者は、警報盤102を介して温度センサ101に保守用PC103を接続する。その上で利用者は、保守用PC103において所定の操作を行う。その結果、保守用PC103では自動設定処理が実行される。図13は、この自動設定処理の一例を示すフロー図である。
【0087】
同図に示す自動設定処理1300において、第1設定部611は、温度センサ101から温度ログ321を取得する(ステップ1301)。ここで取得される温度ログ321は、防火対象エリアの平常時の温度を示す情報である。
【0088】
次に第1設定部611は、処理対象の画素を1つ特定する(ステップ1302)。その際、第1設定部611は、未だ処理対象としていない画素を特定する。
【0089】
次に第1設定部611は、処理対象の画素の最高温度を特定する(ステップ1303)。その際、第1設定部611は、取得した温度ログ321を参照して、処理対象の画素について測定された温度の中で最高の温度を特定する。
【0090】
次に第1設定部611は、特定した最高温度と上限温度(例えば、500℃)を比較する(ステップ1304)。その際、第1設定部611は、補助記憶装置602に記憶された設定値625を参照して、上限温度を特定する。
【0091】
ステップ1304の比較の結果、最高温度が上限温度を超えている場合には(ステップ1305のYES)、第1設定部611は、処理対象の画素をマスク対象に設定する(ステップ1306)。具体的には第1設定部611は、補助記憶装置602に記憶されている監視マスク情報623を更新して、当該画素に真理値「true」を対応付ける。そして第1設定部611は、ステップ1307に進む。
【0092】
一方、ステップ1304の比較の結果、最高温度が上限温度を超えていない場合には(ステップ1305のNO)、第1設定部611は、最高温度に加算値(例えば、30(℃))を加算して、当該画素の温度しきい値を算出する(ステップ1308)。その際、第1設定部611は、補助記憶装置602に記憶された設定値625を参照して、加算値を特定する。第1設定部611は、温度しきい値を算出後、補助記憶装置602に記憶されている温度しきい値情報622を更新して、当該画素に、算出した温度しきい値を対応付ける。そして第1設定部611は、ステップ1307に進む。
【0093】
ステップ1307において、第1設定部611は、すべての画素を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての画素を処理対象としていない場合には(ステップ1307のNO)、第1設定部611はステップ1302に戻り、別の画素を処理対象として特定する。一方、この判定の結果、すべての画素を処理対象とした場合には(ステップ1307のYES)、第1設定部611は本処理を終了する。
以上が自動設定処理1300についての説明である。
【0094】
以上説明した自動設定処理1300によれば、温度センサ101の画素ごとに温度しきい値と監視マスクを自動的に設定することができる。そのため、画素ごとに温度しきい値等を手動で設定する手間が省ける。この効果は、特に数万画素のサーモグラフィにおいて顕著である。
【0095】
2.変形例
上記の実施形態を以下のように変形してもよい。以下の変形例は互いに組み合わせて適用してもよい。
(1)上記の異常温度検出処理1200では、ある時点での画素の温度を温度しきい値と比較し、画素の温度が温度しきい値を超えている場合に警報を出力している。このような判定方法に代えて、画素の温度の上昇率を算出し、この上昇率を所定のしきい値と比較し、上昇率がしきい値を超えている場合に警報を出力するようにしてもよい。以下、このような変形例について説明する。
【0096】
本変形例を適用する場合、温度センサ101は、監視領域を複数の画素に分割し、分割した複数の画素の各々について温度を周期的に測定する。そして当該センサは、測定した温度の上昇率(言い換えると、単位時間あたりの上昇幅)がしきい値を超える場合に異常温度検出信号を出力する。
【0097】
図16は、本変形例に係る異常温度検出処理の一例を示すフロー図である。
同図に示す異常温度検出処理1600において、異常温度検出部312は、補助記憶装置302に記憶された温度ログ321を参照して処理対象の区間を特定する(ステップ1601)。その際、異常温度検出部312は、未だ処理対象としていない区間を特定する。例えば異常温度検出部312は、処理対象の区間として、「2023/02/01 10:00」から「2023/02/01 10:30」までの30分の区間を特定する。
【0098】
次に異常温度検出部312は、処理対象の画素を1つ特定する(ステップ1602)。その際、異常温度検出部312は、処理対象の区間について未だ処理対象としていない画素を特定する。
【0099】
次に異常温度検出部312は、処理対象の画素について、処理対象の区間内の最高温度と最低温度を特定する(ステップ1603)。その際、異常温度検出部312は、まず最高温度を特定し、その後に、当該最高温度よりも前に測定された温度の中で最低の温度を特定する。あるいは異常温度検出部312は、まず最低温度を特定し、その後に、当該最低温度よりも後に測定された温度の中で最高の温度を特定する。これは、温度上昇時の最高温度と最低温度を特定するためである。
【0100】
次に異常温度検出部312は、特定した最高温度と最低温度の差分を算出する(ステップ1604)。そして異常温度検出部312は、算出した差分と上昇率しきい値を比較する(ステップ1605)。この際、算出した差分と比較される上昇率しきい値は、保守用PC103を用いて設定されて、温度センサ101の補助記憶装置302に記憶される。
【0101】
ステップ1605の比較の結果、差分が上昇率しきい値を超えている場合には(ステップ1606のYES)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をインクリメントする(ステップ1607)。一方、差分が上昇率しきい値を超えていない場合には(ステップ1606のNO)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をインクリメントせずに、ステップ1611に進む。
【0102】
画素数カウンタのカウント値をインクリメントした場合、異常温度検出部312は次に、インクリメントしたカウント値と画素数しきい値を比較する(ステップ1608)。この際、インクリメントされたカウント値と比較される画素数しきい値は、保守用PC103を用いて設定されて、温度センサ101の補助記憶装置302に記憶される。
【0103】
ステップ1608の比較の結果、カウント値が画素数しきい値を超えている場合には(ステップ1609のYES)、異常温度検出部312は警報を出力する(ステップ1610)。その際、異常温度検出部312は、警報盤102に対して異常温度検出信号を出力し、かつ、赤色LED204を点灯させる。一方、カウント値が画素数しきい値を超えていない場合には(ステップ1609のNO)、異常温度検出部312は、警報を出力せずに、ステップ1611に進む。
【0104】
ステップ1611では、異常温度検出部312は、処理対象の区間についてすべての画素を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての画素を処理対象としていない場合には(ステップ1611のNO)、異常温度検出部312はステップ1602に戻り、別の画素を処理対象として特定する。一方、この判定の結果、すべての画素を処理対象とした場合には(ステップ1611のYES)、異常温度検出部312は、画素数カウンタのカウント値をリセットし(ステップ1612)、ステップ1613に進む。
【0105】
ステップ1613で異常温度検出部312は、すべての区間を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての区間を処理対象としていない場合には(ステップ1613のNO)、異常温度検出部312は、ステップ1601に戻り、別の区間を処理対象として特定する。例えば異常温度検出部312は、「2023/02/01 10:00」から「2023/02/01 10:30」までの区間を処理した後には、次に「2023/02/01 10:01」から「2023/02/01 10:31」までの30分の区間を特定する。すなわち、異常温度検出部312は、処理した区間から1分ずらした区間を特定する。
【0106】
ステップ1613の判定の結果、すべての区間を処理対象とした場合には(ステップ1613のYES)、異常温度検出部312は本処理を終了する。
以上が異常温度検出処理1600についての説明である。
【0107】
以上説明した異常温度検出処理1600のように、異常温度検出部312は、温度の上昇率に基づいて警報の要否を判定してもよい。
なお、上記の処理において、処理対象とする区間の長さと区間間のずれ量は、保守用PC103を用いて任意に設定してよい。
【0108】
なお、上記のステップ1605において温度差分と上昇率しきい値を比較する際、最低温度から最高温度に至るまでの時間を考慮してもよい。
その場合、異常温度検出部312は、最高温度と最低温度の差分を算出後(ステップ1604)、最高温度の時点と最低温度の時点の間の時間を算出する。そして異常温度検出部312は、算出した時間で、ステップ1604で算出した温度差分を除算する。そして異常温度検出部312は、求めた値(言い換えると、上昇率)を上昇率しきい値と比較する。
このような比較方法の方が、より正確な上昇率に基づいて異常温度判定を行うことができる。
【0109】
(2)上記の自動設定処理1300では、画素の最高温度と上限温度を比較して、当該画素をマスク対象にするか、それとも当該画素について温度しきい値を設定するかを判定している。このような判定方法に代えて、画素の温度の上昇率を算出し、この上昇率を所定のしきい値と比較することで、当該画素をマスク対象にするか、それとも当該画素について温度しきい値を設定するかを判定するようにしてもよい。以下、このような変形例について説明する。
【0110】
本変形例を適用する場合、保守用PC103の第1設定部611は、温度センサ101の各画素について温度しきい値と監視マスクを自動的に設定する。その際、第1設定部611は、第1に、複数の画素の各々について、温度センサ101により測定された温度に基づいて温度上昇率(言い換えると、単位時間あたりの温度の上昇幅)を特定する。第2に第1設定部611は、複数の画素の各々について、特定した上昇率が所定のしきい値を超える場合に、当該画素を温度しきい値との比較対象から除外するように温度センサ101を設定する。第3に第1設定部611は、複数の画素の各々について、特定した上昇率が所定のしきい値を超えない場合に、当該画素の最高温度に所定値(加算値)を加算して得た値を、温度しきい値として温度センサ101に設定する。
【0111】
図17は、本変形例に係る自動設定処理の一例を示すフロー図である。
同図に示す自動設定処理1700において、第1設定部611は、温度センサ101から温度ログ321を取得する(ステップ1701)。ここで取得される温度ログ321は、防火対象エリアの平常時の温度を示す情報である。
【0112】
次に第1設定部611は、処理対象の画素を1つ特定する(ステップ1702)。その際、第1設定部611は、未だ処理対象としていない画素を特定する。
【0113】
次に第1設定部611は、処理対象の区間を特定する(ステップ1703)。その際、第1設定部611は、未だ処理対象としていない区間を特定する。例えば第1設定部611は、処理対象の区間として、「2023/02/01 10:00」から「2023/02/01 10:30」までの30分の区間を特定する。
【0114】
次に第1設定部611は、処理対象の画素について、処理対象の区間内の最高温度と最低温度を特定する(ステップ1704)。その際、第1設定部611は、まず最高温度を特定し、その後に、当該最高温度よりも前に測定された温度の中で最低の温度を特定する。あるいは第1設定部611は、まず最低温度を特定し、その後に、当該最低温度よりも後に測定された温度の中で最高の温度を特定する。これは、温度上昇時の最高温度と最低温度を特定するためである。
【0115】
次に第1設定部611は、特定した最高温度と最低温度の差分を算出する(ステップ1705)。そして第1設定部611は、算出した差分と上昇率しきい値を比較する(ステップ1706)。この際、算出した差分と比較される上昇率しきい値は、保守用PC103を用いて設定されて、その補助記憶装置602に記憶される。その設定にあたり、第3設定部613は、上昇率しきい値を利用者が設定するための画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させてもよい。
【0116】
ステップ1706の比較の結果、差分が上昇率しきい値を超えている場合には(ステップ1707のYES)、第1設定部611は、処理対象の画素をマスク対象に設定する(ステップ1708)。具体的には第1設定部611は、補助記憶装置602に記憶されている監視マスク情報623を更新して、当該画素に真理値「true」を対応付ける。そして第1設定部611は、ステップ1709に進む。
【0117】
一方、ステップ1706の比較の結果、差分が上昇率しきい値を超えていない場合には(ステップ1707のNO)、第1設定部611はステップ1710に進む。
【0118】
ステップ1710において第1設定部611は、すべての区間を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての区間を処理対象としていない場合には(ステップ1710のNO)、第1設定部611は、ステップ1703に戻り、別の区間を処理対象として特定する。例えば第1設定部611は、「2023/02/01 10:00」から「2023/02/01 10:30」までの区間を処理した後には、次に「2023/02/01 10:01」から「2023/02/01 10:31」までの30分の区間を特定する。すなわち、第1設定部611は、処理した区間から1分ずらした区間を特定する。
【0119】
ステップ1710の判定の結果、すべての区間を処理対象とした場合には(ステップ1710のYES)、第1設定部611は、処理対象の画素の最高温度を特定する(ステップ1711)。その際、第1設定部611は、取得した温度ログ321を参照して、すべての区間の中で最高の温度を特定する。そして第1設定部611は、特定した最高温度に加算値(例えば、30(℃))を加算して、処理対象の画素の温度しきい値を算出する(ステップ1712)。この際、特定した最高温度に加算される加算値は、保守用PC103を用いて設定されて、その補助記憶装置602に記憶される。その設定にあたり、第3設定部613は、加算値を利用者が設定するための画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させてもよい。
【0120】
第1設定部611は、温度しきい値を算出後、補助記憶装置602に記憶されている温度しきい値情報622を更新して、処理対象の画素に、算出した温度しきい値を対応付ける。そして第1設定部611は、ステップ1709に進む。
【0121】
ステップ1709において、第1設定部611は、すべての画素を処理対象としたか否かを判定する。この判定の結果、すべての画素を処理対象としていない場合には(ステップ1709のNO)、第1設定部611はステップ1702に戻り、別の画素を処理対象として特定する。一方、この判定の結果、すべての画素を処理対象とした場合には(ステップ1709のYES)、第1設定部611は本処理を終了する。
以上が自動設定処理1700についての説明である。
【0122】
以上説明した自動設定処理1700のように、第1設定部611は、画素の温度の上昇率に基づいて、当該画素をマスク対象にするか、それとも当該画素について温度しきい値を設定するかを判定してもよい。
なお、上記の処理において、処理対象とする区間の長さと区間間のずれ量は、保守用PC103を用いて任意に設定してよい。
【0123】
なお、上記のステップ1706において温度差分と上昇率しきい値を比較する際、最低温度から最高温度に至るまでの時間を考慮してもよい。
その場合、第1設定部611は、最高温度と最低温度の差分を算出後(ステップ1705)、最高温度の時点と最低温度の時点の間の時間を算出する。そして第1設定部611は、算出した時間で、ステップ1705で算出した温度差分を除算する。そして第1設定部611は、求めた値(言い換えると、上昇率)を上昇率しきい値と比較する。
このような比較方法の方が、より正確な上昇率に基づいて、マスク対象等の自動設定を行うことができる。
【0124】
(3)上記の自動設定処理1300では、第1設定部611は、画素の最高温度に加算値を加算して温度しきい値を算出している。このような計算方法に代えて、第1設定部611は、画素の最高温度に所定値を乗算して温度しきい値を算出するようにしてもよい。その際に画素の最高温度に乗算される所定値(例えば、「1.5」)は、加算値と同様に、保守用PC103を用いて設定されて、その補助記憶装置602に記憶されてよい。その際、第3設定部613は、乗算値を利用者が設定するための画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させてもよい。
【0125】
(4)赤外線アレイセンサ304は、8×8画素で2次元エリアの温度を測定するためのセンサである。この赤外線アレイセンサ304の画素数は、監視対象に応じて適宜変更してよい。
【0126】
(5)温度センサ101の機能の全部または一部を、警報盤102に実行させるようにしてもよい。
【0127】
(6)上記の自動設定処理1700では、異常温度検出処理1200で使用される温度しきい値を設定している(ステップ1712参照)。この自動設定処理1700において、温度しきい値に代えて上昇率しきい値を設定するようにしてもよい。この上昇率しきい値は、異常温度検出処理1600のステップ1605で使用されるしきい値である。
【0128】
自動設定処理1700において上昇率しきい値を設定する場合、第1設定部611は、ステップ1711において最大温度上昇率を特定する。ここで特定される最大温度上昇率は、ステップ1705において処理対象の画素について特定した最高温度と最低温度の差分のうち、最大の差分のことである。
【0129】
そして第1設定部611は、ステップ1712において、特定した最大温度上昇率に加算値を加算して、処理対象の画素の上昇率しきい値を算出する。なお、この際に加算される加算値は、保守用PC103を用いて設定されて、その補助記憶装置602に記憶される。その設定にあたり、第3設定部613は、加算値を利用者が設定するための画面を生成して、出力装置605(具体的には、ディスプレイ)に表示させてもよい。
【0130】
第1設定部611は、上昇率しきい値を算出後、補助記憶装置602に記憶されている温度しきい値情報622を更新して、処理対象の画素に、算出した上昇率しきい値を対応付ける。
【0131】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0132】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0133】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0134】
100…温度センサシステム、101…温度センサ、102…警報盤、103…保守用PC、201…筐体、202…窓板、203…反射板、211…正面板、212…開口部、301…主記憶装置、302…補助記憶装置、303…プロセッサ、304…赤外線アレイセンサ、305…透過率測定モジュール、306…表示灯、307…通信モジュール、311…温度算出部、312…異常温度検出部、313…汚損検出部、314…設定変更部、321…温度ログ、322…温度しきい値情報、323…監視マスク情報、324…放射率情報、325…設定値、501…センサ基板、502…メイン基板、503…端子基板、601…主記憶装置、602…補助記憶装置、603…プロセッサ、604…入力装置、605…出力装置、606…通信制御部、611…第1設定部、612…第2設定部、613…第3設定部、621…温度ログ、622…温度しきい値情報、623…監視マスク情報、624…放射率情報、625…設定値

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