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特開2024-165625硬化性組成物、アルカリ現像性レジスト、および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165625
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】硬化性組成物、アルカリ現像性レジスト、および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20241121BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20241121BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08G59/20
G03F7/075 511
G03F7/027 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081976
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 卓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 大希
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 直人
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
【Fターム(参考)】
2H225AC38
2H225AC60
2H225AD12
2H225AN11P
2H225AN24P
2H225AN82P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225CA30
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J036AJ09
4J036AJ21
4J036HA02
4J036JA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷熱衝撃試験における信頼性を改善させた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記の構造とフェノール性水酸基とからなる群から選ばれる構造、及び重合性官能基を2個以上有する変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物を含有する組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(X1)~(X2)で表される構造と、フェノール性水酸基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を分子内に有し、SiH価が1.20mmol/g以下であり、重合性官能基を少なくとも2個有する変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
【請求項2】
前記変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物が、1分子中に重合性官能基を有するアルケニル化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状シロキサン化合物と、下記式(X1)~(X2)で表される構造を有するアルケニル化合物および/またはフェノール性水酸基を有するアルケニル化合物とからなる群から選ばれる少なくとも一種との反応物であることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【化2】
【請求項3】
両末端にSiH基を有する化合物との反応物である請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
アルコール性水酸基を有するアルケニル化合物との反応物である請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む化合物を含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
重合開始剤を含む請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いたアルカリ現像性レジスト。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ現像によりパターンを与える得るアルカリ現像性レジスト、硬化物、および硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサは、デジタルカメラやスマートフォン等に使用されており、近年では、自動車や工場の監視カメラの普及に伴い使用量が増大するとともに、小型化・高精細化がますます要求されてきている。
【0003】
イメージセンサを構成する基板積層体は、例えば、受光素子を有する半導体素子基板とガラス基板とが接着剤で貼り合わされた中空構造を有する。中空構造を有する基板積層体は、例えば、半導体素子基板上の周縁にエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の液状接着剤を塗布し、封止基板となるガラスを設置した後に加熱して液状接着剤を硬化させて得られる。また、パターン精度の向上を目的として液状接着剤の代わりに感光性組成物を用いる方法も検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1基板(例えばガラス基板)上に感光性組成物を塗布することにより塗膜を形成する工程と、得られた塗膜をパターン化する工程と、パターン化された塗膜(以下、「パターン膜」と記載することがある)を介して第1基板と第2基板(例えば半導体素子基板)とを積層することにより積層物を形成する工程と、得られた積層物を加熱して第1基板と第2基板とを接着する工程とを備える基板積層体の製造方法が記載されている。また、特許文献1には、感光性組成物がカチオン重合性化合物と光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)とを含むこと、及び上記塗膜をパターン化する工程において、フォトマスクを通して塗膜に光を照射することで、塗膜の露光部を半硬化状態とした後、現像することにより、半硬化状態のパターン膜を形成することが記載されている。以下、半硬化状態のパターン膜を形成することを「Bステージ化」と記載することがある。また、半硬化状態のパターン膜を介して第1基板と第2基板とが積層された積層物を加熱することにより、パターン膜を更に硬化させて、第1基板と第2基板とを接着することを、「Cステージ化」と記載することがある。なお、「半硬化状態」とは、上記積層物を加熱する工程においてパターン膜の硬化が更に進行する余地が残された状態をさす。
【0005】
イメージセンサ等に使用される基板積層体は、高い耐久性が求められており、特に冷熱衝撃試験における信頼性(硬化物のクラック、剥離等)が求められている。しかし、特許文献1に記載の技術では、製造した基板積層体の冷熱衝撃試験における信頼性において改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5491197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明では、基板積層体の製造に用いた際、冷熱衝撃試験における信頼性を改善させた硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記構成を成す。
【0009】
1).下記式(X1)~(X2)で表される構造と、フェノール性水酸基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を分子内に有し、SiH価が1.20mmol/g以下であり、重合性官能基を少なくとも2個有する変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
2).前記変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物が、1分子中に重合性官能基を有するアルケニル化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状シロキサン化合物と、下記式(X1)~(X2)で表される構造を有するアルケニル化合物および/またはフェノール性水酸基を有するアルケニル化合物とからなる群から選ばれる少なくとも一種との反応物であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
3).両末端にSiH基を有する化合物との反応物である2)に記載の硬化性組成物。
【0014】
4).アルコール性水酸基を有するアルケニル化合物との反応物である2)または3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0015】
5).(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む化合物を含む1)~4)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0016】
6).重合開始剤を含む1)~5)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【0017】
7).1)~6)のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いたアルカリ現像性レジスト。
【0018】
8).1)~6)のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷熱衝撃試験における信頼性を改善させた硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0021】
まず、本明細書中で使用される用語について説明する。「光重合開始剤」とは、光照射により活性種としてカチオンまたはラジカルを生じる化合物をさす。なお、「活性種」には、ラジカル、カチオン、及びアニオンが含まれる。「重合性官能基」とは、連鎖的に重合する官能基をさす。「アルカリ可溶性基」とは、アルカリと相互作用、又はアルカリと反応することにより、アルカリ性溶液に対する溶解性を増加させる官能基をさす。「ポリシロキサン構造」とは、シロキサン単位(Si-O-Si)が連結した構造をさす。「固形分」とは組成物中の不揮発成分であり、「固形分全量」とは、組成物の構成成分から溶媒を除外した全量を意味する。
【0022】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。アクリロイル基及びメタクリロイル基を包括的に「(メタ)アクリロイル基」と総称する場合がある。
【0023】
本明細書に例示の成分や官能基等は、特記しない限り、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<硬化性組成物>
本発明に係る硬化性組成物は、下記式(X1)~(X2)で表される各構造と、フェノール性水酸基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を分子内に有し、SiH価が1.20mmol/g以下であり、重合性官能基を少なくとも2個有する変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物(以下、「成分(A)」と記載することがある)を含有する硬化性化合物である。
【0025】
【化3】
【0026】
本発明の硬化性組成物は、上記式(X1)~(X2)で表される各構造または水酸基を同一分子内に有することでアルカリ溶液への溶解が可能となり、アルカリ現像可能なレジスト材料として適用することができ得る。上記(X1)~(X2)で表される各構造の窒素原子から延びる直線は、メチル基を表すものではなく、窒素原子が他の基(部位)と結合していることを示している。
【0027】
本発明の硬化性組成物に使用される変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物(成分(A))は、主鎖にポリ環状シロキサン構造を含むポリマーである。「ポリ環状シロキサン構造」とは、環の構成要素としてシロキサン単位(Si-O-Si)を有する環状分子構造骨格を意味する。
【0028】
成分(A)は、SiH価が1.20mmol/g以下であり、0.50mmol/g以下であることがより好ましく、0.15mmol/g以下であることが更により好ましい。
【0029】
成分(A)は、単環構造でもよく、多環構造でもよい。多環構造は多面体構造でもよい。環を構成するシロキサン単位のうち、T単位(XSiO3/2)又はQ単位(SiO4/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物層は、硬度が高くなり、耐熱性に優れる傾向がある。一方、M単位(XSiO1/2)又はD単位(XSiO2/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物層は、より柔軟であり、かつ残留応力を低減できる傾向がある。
なお、ここで表されるXは有機基を示す。
【0030】
本発明の硬化性組成物に使用される成分(A)は、さらに、1分子中に重合性官能基を少なくとも2個有する。ここでいう重合性官能基とは、光または熱エネルギーが外部より加わった際に重合、架橋する官能基を示し、特に反応・架橋形式は限定されるものではない。
【0031】
本発明の硬化性化合物に使用される成分(A)の重量平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましく、20000以上40000以下であることがより好ましく、25000以上35000以下であることが更に好ましい。重量平均分子量が10000以上である場合、耐熱性に優れる硬化物層が得られる傾向がある。一方、重量平均分子量が50000以下である場合、現像時に非露光部の除去性が高くなるため、パターニング性が向上する傾向がある。
【0032】
成分(A)(変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物:詳しくは、1分子中に重合性官能基とアルカリ可溶性基とポリ環状シロキサン構造とを有する重合性化合物)は、例えば、下記の化合物(α)、化合物(γ)及び化合物(δ)を必須成分として含むヒドロシリル化反応により得られる。
・化合物(α):1分子中に少なくとも2個のSiH基(ヒドロシリル基)を有するポリ環状シロキサン化合物
・化合物(γ):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、重合性官能基とを有する化合物(1分子中に重合性官能基を有するアルケニル化合物)
・化合物(δ):1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物((X1)~(X2)で表される構造を有するアルケニル化合物および/またはフェノール性水酸基を有するアルケニル化合物)
【0033】
また、成分(A)は、下記の化合物(β)と化合物(α)、化合物(γ)及び化合物(γ)を出発物質とするヒドロシリル化反応により合成することで、冷熱衝撃試験による信頼性が向上する傾向にあるためさらに好ましい。
・化合物(β):両末端にSiH基(ヒドロシリル基)を有する化合物
【0034】
(化合物(α))
化合物(α)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリ環状シロキサン化合物であり、例えば、国際公開第96/15194号に記載の化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状のもの等が使用できる。ポリ環状シロキサンは、多環構造を有していてもよく、多環構造は多面体構造であってもよい。耐熱性及び機械強度の高い硬化物層を形成するためには、化合物(α)は1分子中に3個以上のSiH基を有するポリ環状シロキサンであることが好ましい。耐熱性及び耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子及びメチル基のいずれかであることが好ましい。
環状ポリシロキサンは、例えば下記一般式(1)で表される。
【0035】
【化4】
【0036】
一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上20以下の1価の有機基を表し、mは2以上10以上の整数を表し、nは0以上10以下の整数を表す。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、mが3以上であることが好ましい。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、m+nが3以上12以下であることが好ましい。ヒドロシリル化反応をより容易に行うためには、nが0であることが好ましい。
、R及びRとしては、C、H及びOからなる群より選択される元素により構成される有機基が好ましい。R、R及びRの例としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、オキシアルキル基、アリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状アルキル基、又はフェニル基が好ましい。環状ポリシロキサンの入手容易性の観点から、R、R及びRとしては、炭素原子数1以上6以下の鎖状アルキル基、又はフェニル基が好ましい。ヒドロシリル化反応を容易に行うためには、R、R及びRとしては、炭素原子数1以上6以下の鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0037】
一般式(1)で表される環状ポリシロキサンとしては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、及び1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン等が例示される。中でも、入手容易性及びSiH基の反応性の観点から、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(一般式(1)において、m=4、n=0であり、Rがメチル基である化合物)が好ましい。
化合物(α)は、公知の合成方法により得られる。例えば、一般式(1)で表される環状ポリシロキサンは、国際公開第96/15194号等に記載の方法により合成できる。多面体骨格を有する環状ポリシロキサンは、例えば、特開2004-359933号公報、特開2004-143449号公報、特開2006-269402号公報等に記載の方法により合成できる。また、化合物(α)として、市販のポリ環状シロキサン化合物を用いてもよい。
【0038】
(化合物(β))
両末端にSiH基(ヒドロシリル基)を有する化合物としては、ジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン、並びにジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CHSiO1/2単位)と、SiO単位、SiO3/2単位及びSiO単位からなる群より選択される1種以上のシロキサン単位とからなるポリシロキサン等が例示される。化合物(β)の好ましいSiH基の数は、2つである。
【0039】
化合物(β)の具体例としては1,1,5,5,-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、1,1,1,3,5,7,7,7-オクタメチルテトラシロキサン、1,2-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等が挙げられる。中でも樹脂の靭性向上の観点から、1,1,5,5,-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサンまたは1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンがより好ましい。
【0040】
(化合物(γ))
化合物(γ)は、1分子中に、SiH基(ヒドロシリル基)との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、重合性官能基とを有する化合物である。化合物(γ)は、重合性官能基として、カチオン重合性基またはラジカル重合性基を有することが好ましい。特に化合物(γ)は、重合性官能基としては、カチオン重合性基が好ましく、カチオン重合性基の中でもエポキシ基を有することが好ましく、脂環式エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましく、脂環式エポキシ基を有することが更に好ましい。
【0041】
SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「アルケニル基」と記載することがある)としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2,2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。SiH基との反応性の観点から、化合物(γ)は、アルケニル基として、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
【0042】
化合物(γ)の具体例としては、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。カチオン重合における反応性の観点から、化合物(γ)としては、脂環式エポキシ基を有する化合物が好ましく、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンが特に好ましい。
【0043】
(化合物(δ))
化合物(δ)は、1分子中に、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合と、アルカリ可溶性基とを有する化合物である。化合物(δ)におけるアルカリ可溶性基は、前述の硬化性組成物が有するアルカリ可溶性基と同じであり、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(δ)は、アルカリ可溶性基として、X1基、X2基及びフェノール性水酸基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましく、X1基及びX2基からなる群より選択される1種以上を有することがより好ましく、X2基を有することが更に好ましい。
【0044】
化合物(δ)は、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(アルケニル基)を有する。化合物(δ)が有するアルケニル基の例としては、前述の化合物(γ)が有するアルケニル基として例示したものと同じアルケニル基が挙げられ、好ましい態様も同じである。すなわち、化合物(δ)は、アルケニル基として、ビニル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上を有することが好ましい。
【0045】
化合物(δ)の具体例としては、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、2,2’-ジアリルビスフェノールA、ビニルフェノール、アリルフェノール等が挙げられる。パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、化合物(δ)としては、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレートからなる群より選択される1種以上がより好ましく、ジアリルイソシアヌレートが更に好ましい。
【0046】
(他の出発物質)
ヒドロシリル化反応において、上記の化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、及び化合物(δ)に加えて、他の出発物質を用いてもよい。例えば、他の出発物質として、上記の化合物(γ)及び化合物(δ)とは異なるアルケニル基含有化合物(以下、「他のアルケニル基含有化合物」と記載することがある)を用いてもよい。
【0047】
アルカリ現像液との親和性をあげ、現像速度を向上するために、アルコール性水酸基を有するアルケニル化合物(π)を用いて、成分(A)を合成してもよい。アルコール性水酸基を有するアルケニル化合物(π)の好ましい例としては、エチレングリコールモノアリルエーテル・・・等を例示することができ、エチレングリコールモノアリルエーテルが現像速度の面からエチレングリコールモノアリルエーテルが好ましい。
【0048】
耐熱性に優れる硬化物層を得るためには、他のアルケニル基含有化合物として、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(以下、「化合物(ε)」と記載することがある)を用いることが好ましい。化合物(ε)を用いれば、ヒドロシリル化反応の際、架橋点が増えるため、得られる硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
【0049】
化合物(ε)の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、及びこれらのオリゴマーが挙げられる。
【0050】
得られる硬化物層の耐熱性をより向上させるためには、化合物(ε)としては、ジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい。
【0051】
現像時の膜減りをより抑制するためには、他のアルケニル基含有化合物として、1分子中にアルケニル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(以下、「化合物(ζ)」と記載することがある)を用いることが好ましい。化合物(ζ)を用いれば、化合物に(メタ)アクリロイル基が導入されるため、ラジカル重合反応の反応点が比較的多くなる。これにより、半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めることができる。
【0052】
化合物(ζ)の具体例としては、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、2-ブテニルアクリレート、2-ブテニルメタクリレート等が挙げられる。現像時の膜減りを更に抑制するためには、化合物(ζ)としては、ビニルアクリレート及びアリルアクリレートからなる群より選択される1種以上が好ましく、アリルアクリレートがより好ましい。
【0053】
(ヒドロシリル化反応)
変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物を得るためのヒドロシリル化反応の順序及び方法は特に限定されない。例えば、上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、化合物(δ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて、国際公開第2009/075233号に記載の方法に準じたヒドロシリル化反応により、変性ポリ環状シロキサン化合物が得られる。上述した化合物(α)、化合物(β)、化合物(γ)、化合物(δ)、及び必要に応じて任意成分である他の出発物質を用いて得られる変性ポリ環状オルガノシロキサン化合物は、例えば、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖にポリ環状シロキサン構造を有するポリマーである。
【0054】
ヒドロシリル化反応における各化合物の割合は、出発物質のうちアルケニル基の総物質量AとSiH基の総物質量Bとが、1≦B/A≦30を満たすことが好ましく、1≦B/A≦10を満たすことがより好ましく、1≦B/A≦1.1を満たすことが更に好ましい。
【0055】
パターン膜の半硬化状態を安定して維持しつつ、Bステージ化により得られる硬化物の柔軟性を高めるためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(β)の仕込み比(化合物(β)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上5.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。
【0056】
パターン膜の半硬化状態を安定して維持しつつ、Bステージ化により得られる硬化物の耐熱性を高めるためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(γ)の仕込み比(化合物(γ)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.2以上0.9以下であることがより好ましい。
【0057】
パターニング性に優れる感光性組成物を得るためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(δ)の仕込み比(化合物(δ)の質量/(化合物(α)の質量+化合物(β)の質量))は、0.1以上0.9以下であることが好ましく、0.2以上0.8以下であることがより好ましい。
【0058】
出発物質として化合物(ε)を使用する場合、Bステージ化により得られる硬化物の耐熱性を高めつつ、パターニング性に優れる感光性組成物を得るためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(ε)の仕込み比(化合物(ε)の質量/化合物(α)の質量)は、0.01以上0.5以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下であることがより好ましい。
【0059】
出発物質として化合物(ζ)を使用する場合、Bステージ化する際のパターン膜の接着性を確保しつつ、現像時の膜減りをより抑制するためには、ヒドロシリル化反応における化合物(α)に対する化合物(ζ)の仕込み比(化合物(ζ)の質量/化合物(α)の質量)は、0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.2以上0.4以下であることがより好ましい。
【0060】
ヒドロシリル化反応には、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化触媒と助触媒とを併用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量(物質量)は特に限定されないが、出発物質に含まれるアルケニル基の総物質量に対して、好ましくは10-8倍以上10-1倍以下、より好ましくは10-6倍以上10-2倍以下である。
【0061】
ヒドロシリル化の反応温度は適宜に設定すればよく、好ましくは30℃以上200℃以下、より好ましくは50℃以上150℃以下である。ヒドロシリル化反応における気相部の酸素濃度は3体積%以下が好ましい。ヒドロシリル化反応促進の観点からは、気相部には0.1体積%以上3体積%以下の酸素が含まれていてもよい。
【0062】
ヒドロシリル化反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、1種単独溶媒、又は2種以上を混合した混合溶媒が使用できる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。反応後の留去が容易であることから、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、又はクロロホルムが好ましい。ヒドロシリル化反応においては、必要に応じて、ゲル化抑制剤を用いてもよい。
【0063】
[(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む化合物]
(メタ)アクリロイル基を含む化合物(以下、「成分(B)」と記載することがある)としては、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物である限り特に限定されない。(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも1つを、1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。
【0064】
ラジカル重合反応の反応性を高めることで半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めて、現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(B)としては、アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0065】
また、ラジカル重合反応の反応性を高めることで半硬化させた露光部のアルカリ耐性を高めて、現像時の膜減りをより抑制するためには、成分(B)としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有しておればよいが、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物が硬化性の点から好ましい。現像時の膜減りを特に抑制するためには、(メタ)アクリロイル基を含む化合物としては、アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物がより好ましい。
【0066】
Bステージ化する際のパターン膜の接着性を確保するためには、成分(B)が1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の個数が、6個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましく、4個以下であることが更に好ましい。
(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個有する成分(B)としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(より具体的には、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート等)、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個有する成分(B)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
(メタ)アクリロイル基を1分子中に4個有する成分(B)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
成分(B)は、カチオン重合性官能基を有してもよい。また、アルカリ可溶性基を有してもよい。ただし、パターニング性を向上させつつ、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、第1実施形態に係る感光性組成物は、(メタ)アクリロイル基を含む化合物として、1分子中にカチオン重合性官能基及びアルカリ可溶性基を有する化合物を含まないことが好ましい。つまり、本特許に係る硬化性組成物では、(メタ)アクリロイル基を含む化合物が、1分子中にカチオン重合性官能基及びアルカリ可溶性基を有する化合物ではないことが好ましい。
【0070】
[重合開始剤]
重合開始剤(以下、「成分(C)」と記載することがある)は、カチオン重合開始剤および/またはラジカル重合開始剤を用いることができる。
カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、又は熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。
【0071】
熱カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、トリフルオロ酸塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素等のようなカチオン系又はプロトン酸触媒が用いることができる。加熱によってカチオン種を発生するまでは高い安定性を持っているため潜在性硬化触媒と言える。置換基の種類やオニウム塩の陰イオンの種類により重合活性が変化し、特に、陰イオンについては、BF-<AsF6-<PF6-<SbF6-<B(C6F5)4-の順で重合活性が高くなることが知られている。この他、アルミニウム錯体とシラノール化合物、アルミニウム錯体とビスフェノールSなど特定のフェノール化合物がカチオン重合触媒になることが知られている。
【0072】
また一方、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。例としては、サンエイドSI-60L、SI-80L及びSI-100L(三新化学工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)がある。これらのカチオン重合開始剤の中で、芳香族オニウム塩が、取扱い性及び潜在性と硬化性のバランスに優れるという点で好ましい。
【0073】
カチオン重合開始剤の使用量は、変性ポリオルガノシロキサン化合物(成分(A))100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部の量である。カチオン重合開始剤量が少ないと、硬化に長時間を要したり、十分に硬化した硬化物が得られない。開始剤量が多いと、開始剤の色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色や隆起したり、硬化物の耐熱耐光性を損なうために好ましくない。
ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線によりラジカル種を発生する、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤、又は熱によりラジカル種を発生する熱ラジカル重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。
【0074】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、ビイミダゾール系化合物、多核キノン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3-ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、フルオロアミン系化合物等が挙げられる。現像時の膜減りをより抑制するためには、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及びオキシムエステル系化合物からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0075】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4’-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2’-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4’-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4’-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0076】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0077】
オキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0078】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0079】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0080】
α-ジケトン系化合物としては、例えば、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
【0081】
ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等が挙げられる。
【0082】
多核キノン系化合物としては、例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0083】
キサントン系化合物としては、例えば、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0084】
トリアジン系化合物としては、例えば、1,3,5-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(2’-フリルエチリデン)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-ブロモ-4’-メチルフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-チオフェニルエチリデン)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0085】
現像時の膜減りをより抑制するためには、ラジカル重合開始剤の量は、成分(B)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。また、Bステージ化する際のパターン膜の接着性を確保するためには、ラジカル重合開始剤の量は、成分(B)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0086】
[溶媒]
本発明に係る硬化性組成物は、溶媒を含有してもよい。例えば、上述の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて後述する他の成分を、溶媒中に溶解又は分散させることにより、第1実施形態に係る感光性組成物が得られる。
【0087】
溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、イソ酪酸イソブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒としては、エステル系溶媒が好ましく、イソ酪酸イソブチルがより好ましい。
【0088】
感光性組成物の塗布性(製膜安定性)の観点から、溶媒の量は、変性ポリ環状オルガノシロキサン100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0089】
[他の成分]
本発明に係る硬化性組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、上述以外の成分(他の成分)を含有してもよい。ただし、現像時の膜減りをより抑制しつつ、パターン膜の半硬化状態をより安定して維持するためには、上述の成分量の合計量が、硬化性組成物の固形分全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが更により好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。他の成分としては、ラジカル捕捉剤、着色剤、増感剤、充填材、接着性改良剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、劣化防止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤等が挙げられる。
【0090】
[硬化性組成物を用いたレジスト、硬化物及び基板積層体]
次に、本発明の硬化性化合物を用いたレジストとその硬化物、及びそれを用いた基板積層体の製造方法について説明する。
【0091】
製造方法は、塗膜形成工程と、露光工程と、現像工程と、積層工程と、加熱工程とを備える。塗膜形成工程では、第1基板上に硬化性組成物を塗布することにより塗膜を形成する。露光工程では、塗膜にフォトマスクを通して光を照射することにより、塗膜において、半硬化状態の感光性組成物からなる露光部と、非露光部とを形成する。現像工程では、アルカリ性現像液で非露光部を基板上から除去することにより、第1基板上にパターン化された塗膜を形成する。積層工程では、第1基板と第2基板とを、パターン化された塗膜を介して積層することにより積層物を形成する。加熱工程では、積層物を加熱して半硬化状態のパターン化された塗膜を更に硬化させることにより、第1基板と第2基板とを接着する。
【0092】
[塗膜形成工程]
硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
【0093】
塗膜形成工程では、基材上に調整した硬化性組成物を塗布することにより塗膜を形成する。硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、印刷法、バーコート法等が挙げられる。イメージセンサに用いられる積層体において、厚みは、例えば0.01μm以上200μm以下であり、好ましくは0.1μm以上150μm以下であり、より好ましくは5μm以上150μm以下である。
【0094】
例えば、シリコンウェハー、ガラス基板、樹脂基板(透明樹脂基板等)、セラミック基板、半導体素子基板等が挙げられる。半導体素子基板としては、例えばセンサ基板(より具体的には、イメージセンサ基板等)等が挙げられる。
【0095】
[露光工程]
塗膜にフォトマスクを通して光を照射することにより、半硬化状態の硬化性組成物からなる露光部と、非露光部とを形成する。露光工程では、露光部において光照射により活性種が発生し、露光部中の官能基が重合することにより、半硬化状態の露光部を形成できる。
【0096】
光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200~450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。露光工程で光が照射される露光部26aの積算露光量は、好ましくは1mJ/cm以上50000mJ/cm以下であり、より好ましくは1mJ/cm以上20000mJ/cm以下である。
【0097】
また溶剤除去および硬化物の物性向上の目的で、光硬化前後に熱を加えプリベークおよびアフターベークさせてもよい。硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の範囲は60~400℃、より好ましくは90~350℃である。
【0098】
[現像工程]
現像工程では、アルカリ性現像液で非露光部を基板上から除去することにより、基板上にパターン化された塗膜であるパターン膜を形成する。現像工程で用いるアルカリ性現像液としては、アルカリ成分を含む水溶液が挙げられる。アルカリ性現像液に含まれるアルカリ成分としては、アルカリ有機成分、アルカリ無機成分等が挙げられる。アルカリ有機成分としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」と記載することがある)、コリン等が挙げられる。アルカリ無機成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。露光部と非露光部とのコントラストを高める観点から、アルカリ性現像液におけるアルカリ成分の濃度は、25質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。アルカリ性現像液の温度は、塗膜の現像性に合わせて調整することができる。アルカリ性現像液を非露光部に接触させる方法としては、浸漬法、パドル法、スプレー法等が挙げられる。
【0099】
現像工程でアルカリ性現像液を非露光部に接触させた後、基板と露光部(パターン膜)とを有する積層物を水洗し、乾燥させてもよい。上記積層物を乾燥させる場合、例えば、水洗後の上記積層物の表面の水分を、圧縮空気や自然乾燥等により除去することができる。
【0100】
また、現像工程後、かつ後述する積層工程の前に、パターン膜の接着性が低下しない程度に、パターン膜を加熱してもよい。この際の加熱温度は、適宜設定され得るが、好ましくは40℃以上200℃以下である。
【0101】
[積層工程]
積層工程では、第1基板と第2基板とを、パターン膜を介して積層することにより積層物を形成する。
【0102】
[加熱工程]
加熱工程では、積層物を加熱して半硬化状態のパターン膜を更に硬化させることにより、第1基板と第2基板とを、パターン膜の硬化物からなる硬化物層を介して接着する。加熱工程では、積層物に対して、例えば0.05MPa以上100MPa以下の範囲で荷重をかけながら加熱してもよい。加熱工程における加熱温度は、例えば60℃以上300℃以下である。以上の工程を経て、基板積層体が得られる。
【実施例0103】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0104】
[反応率]
下記合成実施例および合成比較例における、アリル基およびビニル基の反応率は、下記のとおり測定した。
測定にはブルカー・バイオスピン株式会社製 400MHz NMR装置を用いた。合成でのアリル基の反応率は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応アリル基/ビニル基由来のピークと、反応アリル基/ビニル基由来のピークから算出した。
【0105】
[SiH価]
SiH価は、その化合物とジブロモエタンの混合物を作り、重クロロホルムに溶解させ、ブルカー・バイオスピン株式会社製 400MHz NMRを用いてNMR測定を行うことで、下記計算式(1)
SiH価(mmol/g)=[化合物のSiH基に帰属されるピークの積分値]/[ジブロモエタンのメチル基に帰属されるピークの積分値]×4×[混合物中のジブロモエタン重量]/[ジブロモエタンの分子量]/[混合物中の化合物重量] (1)
を用いて計算した。
【0106】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]
ジアリルイソシアヌレート15gとジアリルモノメチルイソシアヌレート10.72gと1,4-ジオキサン99gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)0.047gを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン33.06gをトルエン66gに溶解させて溶液S2を得た。
【0107】
そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、500mL四つ口フラスコにおいて溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ1時間攪拌して、溶液S3を得た。なお、得られた溶液S3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0108】
また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン26.23gをトルエン37.19gに溶解させて溶液S4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に溶液S4を30分間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ1時間攪拌して、溶液S5を得た。なお、得られた溶液S5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。
【0109】
次いで、溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレン及び1,4-ジオキサン)を減圧留去し、固形分を得た。次いで、得られた固形分にイソ酪酸イソブチル(以下、「IBIB」と記載する)を加えて、変性ポリ環状オルガノシロキサンP1を含む溶液SP1(P1の濃度:70重量%)を得た。P1は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P1における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して18.11%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は1.17mmol/gであった。
【0110】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP2の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン29.89gをトルエン29.89gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法で2を含む溶液SP2(P2の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、硬化性化合物P2における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して12.74%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.79mmol/gであった。
【0111】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP3の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン34.32gをトルエン34.32gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP3を含む溶液SP3(P3の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、硬化性化合物P3における未反応のSiH基は初期のSi-H基に対して6.25%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.37mmol/gであった。
【0112】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP4の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン37.19gをトルエン37.19gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP4を含む溶液SP4(P4の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P4における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して2.05%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.12mmol/gであった。
【0113】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP5の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン38.59gをトルエン38.59gに溶解させて溶液S5を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP5を含む溶液SP5(P5の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P5における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して0.00%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.00mmol/gであった。
【0114】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP6の合成]
ジアリルイソシアヌレート15gとジアリルモノメチルイソシアヌレート6.43gと1,4-ジオキサン99gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)0.039gを加えて溶液S1を得た。また、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン14.49g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン13.36gをトルエン66gに溶解させて溶液S2を得た。1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン14.96gをトルエン14.96gに溶解させて溶液S4を得た。S1、S2、S4の調整以外は上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP6を含む溶液SP6(P6の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P6における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して2.05%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.10mmol/gであった。
【0115】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP7の合成]
ジアリルイソシアヌレート15gとジアリルモノメチルイソシアヌレート6.43gと1,4-ジオキサン99gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)0.039gを加えて溶液S1を得た。また、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン14.49g、1,4ビス(ジメチルシリル)ベンゼン7.81gをトルエン66gに溶解させて溶液S2を得た。また、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン14.14gをトルエン14.14gに溶解させて溶液S4を得た。S1、S2、S4の調整以外は上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP7を含む溶液SP7(P7の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P7における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して2.05%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.11mmol/gであった。
【0116】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP8の合成]
ジアリルイソシアヌレート15gとジアリルモノメチルイソシアヌレート6.43gと1,4-ジオキサン99gとの混合物に、白金-ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製「Pt-VTSC-3X」、白金を3重量%含有する溶液)0.039gを加えて溶液S1を得た。また、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン14.49g、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン13.36gをトルエン66gに溶解させて溶液S2を得た。また、エチレングリコールモノアリルエーテル8.14g、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン4.24gをトルエン14.14gに溶解させて溶液S4を得た。S1、S2、S4の調整以外は上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP8を含む溶液SP8(P8の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P8における未反応のSiH基は初期のSiH基に対して2.05%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は0.11mmol/gであった。
【0117】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP9の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン23.15gをトルエン23.15gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP9を含む溶液SP9(P9の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P9における未反応のSiH基は初期のSiH基に対し22.62%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は1.52mmol/gであった。
【0118】
[変性ポリ環状オルガノシロキサンP10の合成]
1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン11.57gをトルエン11.57gに溶解させて溶液S4を得たこと以外は、上記[変性ポリ環状オルガノシロキサンP1の合成]と同じ合成方法でP10を含む溶液SP10(P10の濃度:70重量%)を得た。上記ポリシロキサン化合物は、1分子中に複数個のカチオン重合性官能基(具体的には脂環式エポキシ基)と複数個のアルカリ可溶性基(具体的にはX2基)とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有するポリシロキサン化合物であった。また、P10における未反応のSiH基は初期のSiH基に対し39.58%であり、1g中におけるSiH基のmol数を示すSiH価は3.09mmol/gであった。
【0119】
[他の材料の準備]
硬化性組成物の材料として、上記溶液SP1~SP10並びにIBIB以外に、以下の材料を準備した。
・光ラジカル重合開始剤としてのベンゾフェノン系化合物(IGM Resins社製「Omnirad(登録商標)651」、以下、「Omnirad651」と記載する)
・ラジカル捕捉剤としての4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(エボニック社製、以下、「H-TEMPO」と記載する)
・ガラス、及びSi基板との接着付与剤としてのシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM9659」、以下、「KBM9659」と記載する)
・白金安定剤としての2-メチル-3-ブチン-2-オール(信越化学工業社製「MBO」、以下、「MBO」と記載する)
・酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系化合物(BASF社製「Irganox1010」、以下、「Irganox1010」と記載する)
・光ラジカル架橋剤としてのトリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A9300」、以下、「A9300」と記載する)
【0120】
[硬化性組成物の調製]
表1に記載の材料を、表1に記載の配合量で配合し、実施例及び比較例で使用する感光性組成物PS1~PS9をそれぞれ得た。なお、硬化性化合物P1~P9を配合する際は、それぞれ溶液SP1~SP9として配合した。また、表1において、感光性組成物PS1~PS7のPGMEAの配合量には、溶液SP1~SP7中のIBIBの量も含まれる。
【0121】
【表1】
【0122】
[光半導体装置模擬サンプルの作製]
以下、実施例1~8、及び比較例1~2の光半導体装置模擬サンプルの作製方法について説明する。
【0123】
[パターン膜の形成]
ガラス基板としてのガラス板上に、プリベーク後の塗膜の厚みが100μmとなるように、表1に記載の各硬化性組成物をスピンコーターにより塗布し、ホットプレートにて、温度85℃で5分間加熱した後、温度120℃で10分間加熱することによりプリベークし、試料1を得た。
次いで、手動露光機(大日本科研社製「MA-1300」、ランプ:高圧水銀ランプ)を用いて、格子状にラインパターンが形成されたフォトマスクを通して、積算露光量3000mJ/cmの条件で試料1の塗膜に光を照射することにより、塗膜を露光(詳しくは、ソフトコンタクト露光)した。
そして、露光後の試料1を、温度25℃の雰囲気下で5分間放置した後、アルカリ性現像液としてのTMAH水溶液(TMAHの濃度:2.38質量%)に60秒間浸漬した。次いで、アルカリ性現像液に浸漬した試料1を、30秒間水洗した後、表面の水分を圧縮空気で除去し、塗膜が格子状にパターン化された、半硬化状態のパターン膜を有する試料2を得た。
【0124】
[試料3(試料2を個片化したリブ付き基板)]
試料3をダイシング装置で切断し、試料3(個片化した試料)(面が12mm×12mmである試料)を得た。
【0125】
[接着工程]
次に、フリップチップボンダー(アスリートFA社製「CB-505」)を用いて、上述の手順で得られたリブ付き基板と、ガラスエポキシ基板上にシリコンウェハーを張り付けることで得た模擬半導体基板とを積層した。詳しくは、フリップチップボンダーのステージに、模擬半導体基板をセットし、リブ付き基板のリブ材が形成されていない方の面をコレットで吸着・固定した後、フリップチップボンダーに付属するカメラを用いて確認しながら、模擬半導体基板上の位置までコレットを移動させた。その後、コレットの温度を90℃、ステージの温度を90℃、荷重4Nで30秒間という条件で張り合わせること、リブ付き基板と模擬半導体基板が積層された試料4を得た。
次いで、試料4の積層体を温度200℃のオーブン中で2時間加熱した。これにより、リブ材と半導体基板積層物とを接着させた。次いで、加熱後の試料4の積層体のリブ材周辺部をHenkel社製黒色封止樹脂で封止し、165℃のオーブン中で2時間加熱することで試料5を得た。加熱後の試料5を240℃で5分間、260℃で15分間加熱することで中空構造を持つ光半導体装置の模擬サンプルを作成した。
【0126】
[評価]
以下、実施例1~8、及び比較例1~2のパターニング性及び信頼性に関する評価方法とその結果について説明する。
【0127】
[パターニング性の評価試験]
3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000、オリンパス社製)用いて、前記試料2のパターン形状を観察し、下記基準に従って評価した。
◎:50μm間隔のラインアンドスペースに残渣が生じていない。
○:50μm間隔のラインアンドスペースに残渣が生じたが、100μm間隔のラインアンドスペースにはが生じていない。
×:◎、〇以外
結果を下記表2に示す。
【0128】
[冷熱衝撃試験による信頼性]
各実施例及び各比較例について2つの光半導体装置模擬サンプルを準備し、それぞれヒートショック試験装置(日立グローバルライフソリューションズ社製「ES-57L」)を用いて冷熱衝撃試験を実施した。冷熱衝撃試験は、光半導体装置を、-50℃の雰囲気下で30分保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する操作を1サイクルとして行った。100サイクル、300サイクル、500サイクルで取り出し、光学顕微鏡により模擬サンプルをガラス基板側から観察し、樹脂のクラックと剥離を、それぞれ以下の基準で判定した。
◎:2つの模擬サンプルのいずれにもリブ材の剥離もしくはクラックが確認されなかった。
〇:2つの模擬サンプルうちの1つにリブ材の剥離(詳しくは、部分的な剥離)もしくはクラックが確認されたが、個数(2つの光半導体装置の剥離箇所の合計)が1個であった。
×:2つの模擬サンプルのうちの少なくとも1つにリブ材の剥離(詳しくは、部分的な剥離)もしくはクラックが確認され、個数(2つの模擬サンプルの剥離箇所の合計)が2個以上であった。結果を下記表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
比較例1及び比較例2では100サイクルでエラーが発生したが、実施例1~5では剥離、クラック共に改善が見られ、残SiH基が減少するほど改善する傾向が見られた。これは硬化性化合物の残SiH基を減少させたことにより樹脂主骨格間の架橋が抑制され、樹脂の靭性が向上したためと考えられえる。
【0131】
直鎖状シロキサンを導入したP6、P7を用いた実施例6、7では導入しなかった実施例4よりもさらに改善が見られた。直鎖状シロキサンを導入したため、さらに樹脂の柔軟性が向上したためと考えられる。
【0132】
一方でSiH基のキャップ材として用いている1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンは疎水性のエポキシ基を持つため、導入する量を増やすほどアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性が低下し、リブとリブの間に残渣が見られるようになった。実施例8で1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンの一部を親水性のヒドロキシ基を持つエチレングリコールモノアリルエーテルに変更したところ、アルカリ水溶液に対する溶解性があがり、残渣が見られなくなった。
【0133】
以上の結果から、本発明によれば、冷熱衝撃試験で評価される信頼性が向上した光半導体装置を提供できることが示された。