(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165627
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】転写シート及び転写シートを用いてプリントした立体模様
(51)【国際特許分類】
B41M 5/36 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B41M5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081978
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】599046025
【氏名又は名称】有限会社 コーワテクノア
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111HA09
2H111HA12
2H111HA23
2H111HA35
(57)【要約】
【課題】 AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いてコピーした模様や図形を生地などの物品の表面に膨れ上がった立体模様を形成することが出来る転写シートの提供。
【解決手段】 Aシートは基材aと剥離層b及び多孔性樹脂層cの3層が積層して構成し、Bシートは基材a、剥離層b、接着層e、発泡剤を含有した発泡接着樹脂層d、及び多孔性樹脂層cの5層が積層して構成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いてコピーした模様や図形を生地などの物品表面に膨れ上がった立体模様を形成することが出来る他方のBシートにおいて、該Bシートは基材、剥離層、接着層、多孔性樹脂層を積層して構成し、該接着層又は多孔性樹脂層に発泡剤を含有したことを特徴とする転写シート。
【請求項2】
AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いてコピーした模様や図形を生地などの物品表面に膨れ上がって立体的に形成される立体模様において、上記Bシートは基材、剥離層、接着層、多孔性樹脂層が積層して構成し、該接着層、又は多孔性樹脂層の少なくとも一方には発泡剤が含有し、Aシートにコピーされて模様や図形が形成されているトナー部分にBシートの一部が発泡しない状態で移されて発泡性熱転写シートが構成され、該発泡性熱転写シートを物品表面に当てて高温セットすることで発泡剤が最高膨張温度に達して膨張し、模様や図形の部分が膨れ上がって立体化した模様や図形を形成したことを特徴とする立体模様。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTシャツやジャンパー等の物品の表面に形成される立体的な図形、文字、模様、及びその際に使用する転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、Tシャツなどの衣類にカラフルな図形、文字、模様などをプリントすることで個性化の傾向が進み、その為に商品の多種小ロット生産を余儀なくされている。
しかし、製造コストは抑制される為にTシャツ等の布地面に形成する模様や図柄等を如何に簡単に、低コストにて製作するかが大きな課題となっている。
そこで、この要求を満たすプリント方法として電子画像形成装置(コピー機)を利用し、この装置によって熱転写シートに所定の画像を映し出し、該熱転写シートを布地面にあてがって高温加圧することにて布地面に自分好みの図形や模様をプリントすることが出来る。
【0003】
ところで、従来からこの種のプリント方法は色々と存在し、出願人は以前にプリント方法に関して特許出願している。例えば、特許第5265301号に係る「転写シート及び転写シートを用いたプリント方法」、特許第5913786号に係る「電子画像の転写プリント方法及び転写シート」がある。
特許第5913786号に係る「電子画像の転写プリント方法及び転写シート」は、可塑性樹脂を含んだ液体インクや粉体トナーなどを用いた電子画像形成装置によりTシャツなどにプリントする方法である。
【0004】
すなわち、基材に離型層、樹脂層、及び多孔性樹脂層を積層して構成したAシートと、基材に離型層、接着層、及び白色多孔性樹脂層を積層して構成したBシートを用い、可塑性樹脂を含んだ液体インクや樹脂粉体トナーを用いた電子画像形成装置により、Aシートに電子画像である絵紋様を鏡像印刷し、Bシートと合わせ熱プレスした後で各シートを相互に引き剥がすことによって、Aシートの印刷された部分にのみ、Bシートの白色多孔性樹脂層と接着層が積層された転写シートを作り、これをTシャツなどの被写体に当てがい、上部より加熱・加圧し、その転写シートを離型層を介して剥がして形成される転写プリント方法である。
【0005】
ところで、従来の転写方法を用いることで色々な模様や図形をTシャツなどの生地に簡単に形成することが出来る。しかし、転写プリントされる図形や模様はカラフルではあるが平坦な図形や模様であり、生地面から盛り上がって形成される立体的な模様や図形ではない。
同じ形状をした図形や模様であっても、立体的に形成されるならば該模様や図形に重厚感が付加されてより豪華になる。
【0006】
生地に刺繍を施すことで豪華な立体模様や立体図形を形成することは出来るが、手間がかかりコスト的には高くなってしまう。
また、型版を用いてスクリーン印刷で生地に直接印刷したり、転写紙に一旦印刷してから生地に移して加熱プレスすることも可能であるが、細かい模様や図形を形成することは難しい。勿論、型版を使用する方法では作業が煩雑化してコスト的には高くなってしまい、素人では容易でない。
【0007】
【特許文献1】特許第5265301号に係る「転写シート及び転写シートを用いたプリント方法」
【特許文献2】特許第5913786号に係る「電子画像の転写プリント方法及び転写シート」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来のプリント方法及び形成される模様や図形には上記のごとき問題がある。
本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、電子画像形成装置(コピー機)を使用することで複雑な図形や模様を手軽にプリントすることが出来、しかも生地面(布地面)から盛り上がって立体的に形成される模様や図形、及びプリントに際して使用する転写シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプリント方法は、AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いて好みの模様や図形をコピーする。
ここで、Aシートは一般的に基材と剥離層及び多孔性樹脂層の3層が積層して構成している。そして、Bシートは一般的に基材、剥離層、接着層、発泡接着樹脂層、及び多孔性樹脂層の5層が積層して構成し、上記接着層又は多孔性樹脂層に発泡剤を含有している。
ただし、Aシート及びBシートの具体的な積層構造は限定せず、Bシートを基材、剥離層、接着層、多孔性樹脂層を積層して構成する場合もある。また、上記剥離層を設けることなく剥離面とすることもある。
【0010】
電子画像形成装置によってコピーしたAシート面の多孔性樹脂層の表面には模様又は図形が形成される。模様又は図形を形成したAシートをBシートに重ね合わせて高温に加熱して熱プレスする。その後、AシートとBシートは引き離されるが、Aシートにコピーされた模様や図形の上にBシートが接着することで、剥離層から剥がされる。
すなわち、Aシートにコピーされた模様や図形の部分にBシートの発泡剤入りの層が発泡しない状態で移され、発泡性熱転写シートが出来上がる。
【0011】
そこで、上記発泡性熱転写シートをTシャツなどの生地に当ててアイロンにて熱プレスするならば、模様や図形の部分は生地にプリントされる。さらに、離型紙を当ててアイロンの温度を高めて高温セットするならば、発泡接着樹脂層に含まれている発泡剤が膨張し、模様や図形の部分が膨れ上がる。すなわち、平坦な模様や図形ではなく、膨れ上がって立体化した模様や図形となる。
さらに、上記発泡接着樹脂層に含まれる発泡剤の量を位置によって加減することで、模様や図形の盛り上がり高さを部分的に(位置によって)調整することが出来る。すなわち、高低差のある立体模様や図形を形成することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は転写シートを用いたプリント方法であるが、立体的に盛り上がった模様や図形を形成することが出来、より華やかで豪華な紋様となる。型版を用いることなく、Bシートの接着樹脂層内部に発泡剤を混入することで、高温プレスするならば、混入した発泡剤が膨張して膨れ上がる。従って、多くの手間をかけることなく、低コストで手軽に優雅で豪華な立体的な模様や図形を製作することが出来る。
転写される被転写物は、Tシャツなどの生地(布地)に限らず、木質や金属などの物品に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】AシートとBシートを貼り合わせ、引きがした発泡性熱転写シートの断面図を示す実施例。
【
図4】発泡性熱転写シートの模様や図形を形成したトナー画像をTシャツなどの生地にプリントした断面図。
【
図5】Tシャツなどの生地にプリントされた模様や図形部分を高温で再プレスすることで発泡剤が膨れ上がって形成される立体模様を示す実施例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るプリント方法は、AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いて色々な模様や図形をコピーすることが出来る。そして、コピーしたAシートとBシートを貼り合わせて剥がすならば、コピーした上記の模様や図形の部分にBシートの一部が剥がされて接着される。
【0015】
図1は本発明に係る一方の転写シートであるAシートの断面を示す実施例であり、
図2は他方の転写シートであるBシートの断面を示す実施である。ただし、同図に示すAシート及びBシートはあくまでも1具体例であり、その積層構造は限定しない。
ところで、同図のaは基材、bは剥離層、cは多孔性樹脂層、dは発泡接着樹脂層、eは接着層、fはトナー層、gはTシャツなどの布地をそれぞれ表している。
Aシートは所定の縦・横寸法を有す四角形のシートであって、基材a、剥離層b、及び多孔性樹脂層cが積層した3層構造と成っている。
そして、Bシートも同じく所定の縦・横寸法を有す四角形のシートであって、多孔性樹脂層c、発泡接着樹脂層d、接着層d,剥離層b、及び基材aが積層した5層構造と成っている。
【0016】
電子画像形成装置によってコピーすることでAシートの多孔性樹脂層cの表面には模様又は図形がトナー層fにて形成される。ここで、具体的な電子画像形成装置の型式は限定しないが、例えば沖電気社製マイクロラインVINCI 941 白トナー搭載LEDプリンターで模様や図形を鏡象印刷する。
模様や図形をトナー層fで形成したAシートとBシートを重ね合わせて高温(例えば120℃)に加熱して熱プレスする。その後、AシートとBシートは引き離されるが、Aシートにコピーされた模様や図形を形成したトナー層fの上にBシートが接着することで、該Bシートは剥離層bから剥がされる。
【0017】
すなわち、Aシートにコピーされて模様や図形が形成されているトナー層fの部分にBシートの発泡剤入りの接着層が発泡しない状態で移され、発泡性熱転写シートhが出来上がる。
図3は発泡性熱転写シートhの断面を示している実施例であり、上記トナー層fにはBシートの多孔性樹脂層c、発泡接着樹脂層d、及び接着層eがコピーされた模様や図形をなして移され、発泡性熱転写シートhと成る。
【0018】
そこで、上記発泡性熱転写シートhをTシャツなどの生地gに当ててアイロンにて約120℃の高温下で熱プレスするならば接着層eが固着し、発泡性熱転写シートhを剥がすならば模様や図形の部分は生地gにプリントされる。
すなわち、発泡性熱転写シートhはトナー層fに固着した多孔性樹脂層cを残して剥がされ、生地gには接着層e、発泡接着樹脂層d、多孔性樹脂層c、トナー層f、及び多孔性樹脂層cの5層が積層した図柄生地iが出来あがる。
図4はコピーして模様や図形が形成された図柄生地iを示す断面図である。
【0019】
さらに、図柄生地iの上に離型紙を当ててアイロンの温度を高めて高温セット(例えば、170℃前後の高温で20秒間)するならば、発泡接着樹脂層dに含まれている発泡剤が170℃で最高膨張温度に達して膨張し、模様や図形の部分が膨れ上がる。すなわち、平坦な模様や図形ではなく、膨れ上がって立体化した模様や図形となる。
図5は発泡剤が膨張して発泡接着樹脂層dの厚みが大きくなった場合の断面図を示している。
【0020】
このように、電子画像形成装置によってコピーした領域が膨れ上がった立体的な模様や図形として形成される。
さらに、上記発泡接着樹脂層dに含まれる発泡剤の量を位置によって加減することで、模様や図形の盛り上がり高さを部分的に調整することが出来る。すなわち、高低差のある立体模様や図形を形成することが出来る。
ただし、上記発泡接着樹脂層dに含まれる発泡剤の量を位置によって加減する具体的な方法は限定しない。
【0021】
例えば、模様や図形をデザイン作成時にアドビ社の画像編集ソフトである「Photoshop」や「illustrator」にてカラーハーフトーンや網目ドットなどのトナードッドサイズを大中小での加工を施してAシートに模様や図形を鏡像印刷する。
そして、Bシートの発泡接着樹脂層dがAシートに合わせ移される時にトナードットの大きさを大中小にしたことにより発泡剤を増加減してAシートに移すことが出来る。
【0022】
Aシートに発泡剤が増加減している発泡性熱転写シートhをTシャツなどの生地gに当てがい、アイロンプレス機の温度を120℃前後にセットして熱プレスし、模様や図形をTシャツなどの生地gにプリントを施し、さらに再度、離型紙を当ててアイロンプレス機の温度を170℃前後にセットして約20秒間熱プレスしたところ、最高膨張温度に達した発泡剤の膨れ方にトナーの増加減が高低差のある発泡プリント模様や図形が出来上がる。
【0023】
発泡性熱転写シートhが貼り付けられて転写する被転写物は、実施例に示すTシャツなどの生地gに限定はしない。例えば、木製の家具などの表面に転写して立体的な模様や図形を形成することが出来る。また、商品のラベルとして発泡性熱転写シートhを用いるならば、日本酒などが収容されるガラス瓶の表面に立体的な模様や図形を形成することが出来る。
【符号の説明】
【0024】
a 基材
b 剥離層
c 多孔性樹脂層
d 発泡接着樹脂層
e 接着層
f トナー層
g Tシャツなどの生地
h 発泡性熱転写シート
i 図柄生地
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係るプリント方法は、AシートとBシートの2種類のシートを使用し、一方のAシートに電子画像形成装置(コピー機)を用いて好みの模様や図形をコピーする。
ここで、Aシートは一般的に基材と剥離層及び多孔性樹脂層の3層が積層して構成している。そして、Bシートは一般的に基材、剥離層、接着層、発泡接着樹脂層、及び多孔性樹脂層の5層が積層して構成し、上記接着層又は多孔性樹脂層に発泡剤を含有している。
ただし、Aシート及びBシートの具体的な積層構造は限定せず、Bシートを基材、剥離層、接着層、多孔性樹脂層を積層して構成する場合もある。また、上記剥離層を設けることなく剥離面とすることもある。