IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タダノの特許一覧

<>
  • 特開-クレーン 図1
  • 特開-クレーン 図2
  • 特開-クレーン 図3
  • 特開-クレーン 図4
  • 特開-クレーン 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165635
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B66C23/88 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081995
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】渥美 雅士
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA01
3F205AA03
3F205AA13
3F205CA03
(57)【要約】
【課題】索状部材がブームヘッドとウエイトの間、またはウエイトとフックブロックとの間に挟み込まれることを防止することができるクレーンを提供する。
【解決手段】ダビットクレーン1は、開口23からワイヤロープ40が垂下するブームヘッド21と、フック31を備え、ワイヤロープ40により吊り下げられるフックブロック30と、板面に開口511aを有する平板部512を備え、開口511aにワイヤロープ40が通されるウエイト51と、ウエイト51をブームヘッド21とフックブロック30の間に吊り下げるチェーン53-55と、を備える。ウエイト51は、チェーン53-55により吊り下げられる平板部512の周縁部に、板面に交差する交差方向へ延びる突起部516-518を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた下面部を有し、前記開口からワイヤロープが垂下するブームヘッドと、
フックを備え、前記ワイヤロープにより吊り下げられるフックブロックと、
板面に開口を有する板状部を備え、前記開口に前記ワイヤロープが通される巻過検出用ウエイトと、
前記巻過検出用ウエイトを前記ブームヘッドと前記フックブロックの間に吊り下げる索状部材と、を備え、
前記巻過検出用ウエイトは、前記索状部材により吊り下げられる前記板状部の周縁部に、前記板面に交差する交差方向に延びる突起部を有する、
クレーン。
【請求項2】
前記周縁部は、前記板状部の外周よりも外方に延出したフランジ部を有し、
前記突起部は、前記フランジ部に形成されている、
請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記索状部材は、前記周縁部との接続部分を中心に前記突起部に向けて回動可能な連結部材を下端に有し、
前記突起部の長さは、前記連結部材の回動半径よりも大きい、
請求項1または2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記突起部は、前記板状部の前記周縁部から前記交差方向に延びるに従い、前記板状部の前記開口の径方向の外方に傾斜する内側面を有する、
請求項1または2に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンには、ワイヤロープを巻き過ぎてフックブロックがブーム、ジブ等に衝突することを防ぐため、巻過防止装置を装備することが求められている。巻過防止装置には、ブームヘッドとフックブロックの間に巻過検出用ウエイト(以下、単にウエイトともいう)を吊り、ウエイトがフックブロックによって持ち上げられたときに巻過したと判定するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワイヤロープの巻き過ぎを検知した際に巻過検出信号を出力する巻過防止スイッチと、巻過防止スイッチからチェーンにより吊り下げられた巻過検出用ウエイトと、を備えた巻過防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3-40873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなクレーンでは、ブーム格納時等のクレーン作業をしないときに、ワイヤロープを巻き上げてフックブロックとブームヘッドの間にウエイトを挟み込むことにより、ブームヘッドにウエイトを固定することが行われている。
【0006】
一方、クレーンには、海岸、洋上等の強風が吹く環境に設置されるものがある。その場合、フックブロックやウエイトが、強風により煽られて大きく揺れ動くことがある。これに伴い、ウエイトを吊り下げる索状部材が、暴れて絡みつきを引き起こす可能性がある。
【0007】
その結果、索状部材が、ブームヘッドとウエイトの間、あるいはウエイトとフックブロックとの間に位置してしまうおそれがある。そのため、フックブロックとブームヘッドの間にウエイトを挟み込んでブームヘッドにウエイトを固定するときに、索状部材が挟み込まれてしまい、クレーンが損傷してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、索状部材がブームヘッドとウエイトの間、またはウエイトとフックブロックとの間に挟み込まれることを防止することができるクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクレーンは、
開口が設けられた下面部を有し、前記開口からワイヤロープが垂下するブームヘッドと、
フックを備え、前記ワイヤロープにより吊り下げられるフックブロックと、
板面に開口を有する板状部を備え、前記開口に前記ワイヤロープが通される巻過検出用ウエイトと、
前記巻過検出用ウエイトを前記ブームヘッドと前記フックブロックの間に吊り下げる索状部材と、を備え、
前記巻過検出用ウエイトは、前記索状部材により吊り下げられる前記板状部の周縁部に、前記板面に交差する交差方向に延びる突起部を有することを特徴とする。
【0010】
前記周縁部は、前記板状部の外周よりも外方に延出したフランジ部を有し、
前記突起部は、前記フランジ部に形成されていてもよい。
【0011】
前記索状部材は、前記周縁部との接続部分を中心に前記突起部に向けて回動可能な連結部材を下端に有し、
前記突起部の長さは、前記連結部材の回動半径よりも大きくてもよい。
【0012】
前記突起部は、前記板状部の前記周縁部から前記交差方向に延びるに従い、前記板状部の前記開口の径方向の外方に傾斜する内側面を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、巻過検出用ウエイトは、索状部材により吊り下げられる板状部の周縁部に、板面に交差する交差方向に延びる突起部を有している。そのため、強風が吹いて索状部材が暴れたときに、索状部材が突起部に接触してその動きが規制される。従って、索状部材が絡みつくことを防止することができる。また、索状部材が、板状部の板面の下方または上方へ入り込まない。
【0014】
その結果、フックブロックとブームヘッドの間にウエイトを挟み込んでブームヘッドにウエイトを固定するときに、索状部材がブームヘッドとウエイトの間、またはウエイトとフックブロックの間で挟み込まれず、クレーンの損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るダビットクレーンの側面図である。
図2】(a)及び(b)それぞれは実施の形態に係るダビットクレーンが備える巻過防止装置の構成を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係るダビットクレーンが備えるウエイトとチェーンの構成を示す拡大斜視図である。
図4】実施の形態に係るダビットクレーンが備えるウエイトとチェーンの構成を示す拡大斜視図である。
図5】(a)及び(b)それぞれは実施の形態に係るダビットクレーンが備えるチェーンの下端部の連結部材が突起部に接触して規制される状態を示す突起部の側面図及び外面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るクレーンについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。また、以下では、実施の形態に係るクレーンが洋上風力発電装置に設置されるダビットクレーンである場合を例とし、クレーンと巻過防止装置の構成を説明する。図1は、本実施の形態に係るダビットクレーンの全体構成を示す側面図である。図2(a)は、本実施の形態に係るダビットクレーンが備える巻過防止装置の斜視図である。図2(b)は、本実施の形態に係るダビットクレーンが備える巻過防止装置のウエイトをブームヘッドとフックブロックの間に挟み込んだときの斜視図である。
【0017】
ダビットクレーン1は、図1に示すように、旋回可能な旋回体10と、旋回体10に基部で固定されて旋回体10と一体的に旋回するブーム20と、ブーム20の先端で昇降可能なフックブロック30と、を備える。
【0018】
旋回体10は、四角筒状に形成され、その旋回中心軸Aを上下方向に向けた状態で、洋上風力発電装置100が備えるプラットホーム110に設置されている。旋回体10の内部には、ワイヤロープ40の巻取り・送出しを行う図示しない巻き上げ装置が設けられている。旋回体10は、図示しないアクチュエータ又は手動により駆動する旋回装置によって旋回中心軸Aを中心にブーム20を旋回させる。
【0019】
ブーム20は、側面視で上方へ傾斜して伸延するとともに水平方向へ伸延し、全体的に屈曲した形状をなしている。ブーム20は、内部中空の四角筒状に形成され、その内部に巻き上げ装置から延びるワイヤロープ40が通されている。
【0020】
ブーム20の水平方向へ延びる先端部の内部、即ち、ブームヘッド21内には、ワイヤロープ40が掛け回されているシーブ22が設けられている。ブームヘッド21の下面部は、平坦状に形成されている。
【0021】
ブームヘッド21の下面部には、図2(a)に示すように、ブームヘッド21内からワイヤロープ40を垂下させるための円形状の開口23が、開口面を下側に向けて形成されている。
【0022】
ブーム20の開口23の周縁には、円環状のシール部材24が設けられている。シール部材24は、ナイロン、ゴム等の樹脂により所定厚みを有して形成されている。シール部材24は、ブームヘッド21の開口23の周縁を囲うとともに開口23の開口縁面よりも下方に突出している。シール部材24の下面は、平坦に形成されている。
【0023】
図1及び図2(a)に示すように、ワイヤロープ40は、シーブ22を介してブームヘッド21の開口23から下方へ引き出されている。ワイヤロープ40の端末には、フックブロック30が接続されている。
【0024】
フックブロック30は、筒軸を上下方向に向けた六角筒状に形成されている。フックブロック30の上端部には、ブームヘッド21から延びるワイヤロープ40の端末が挿通される開口33が上方に向けて形成されている。
【0025】
フックブロック30の開口33の周縁には、円環状のシール部材34が設けられている。シール部材34は、ナイロン、ゴム等の樹脂により所定厚みを有して形成されている。シール部材34は、フックブロック30の開口33の周縁を囲うとともに開口33の開口縁面よりも上方に位置している。シール部材34の上面は、平坦に形成されている。
【0026】
ワイヤロープ40の端末は、フックブロック30の開口33から内部に通されて、筒孔の内壁に固定されている。これにより、フックブロック30が、ブームヘッド21からワイヤロープ40により吊り下げられている。また、フックブロック30の下端部には、荷を吊るためのフック31が設けられている。
【0027】
また、ダビットクレーン1は、ワイヤロープ40の巻過を検出した際に巻過ぎを知らせる巻過検出信号を出力する巻過防止装置50を備えている。巻過防止装置50は、図2(a)及び図2(b)に示すように、ウエイト51と、ウエイト51が持ち上げられることによりオンする巻過スイッチ52と、ウエイト51を吊り下げる3つのチェーン53-55と、を備える。
【0028】
ウエイト51は、3つのチェーン53-55によって、巻過スイッチ52及びブームヘッド21からブームヘッド21とフックブロック30との間の位置に吊り下げられている。
【0029】
ウエイト51は、ワイヤロープ40を巻き過ぎたときに上昇するフックブロック30によって押し上げられる部材である。ウエイト51は、ブームヘッド21及びフックブロック30に接触する平板部512と、ワイヤロープ40を通すためのパイプ部511と、を有する。
【0030】
平板部512は、上面及び下面が平坦で薄い円板状に形成されている。平板部512の外径は、ブームヘッド21の開口23及びシール部材24の内径よりも大きく、かつフックブロック30の開口33及びシール部材34の内径よりも大きい。
【0031】
これにより、図2(b)に示すように、ブームヘッド21とフックブロック30の間にウエイト51を挟み込んで固定した状態(以下、単にフック固定状態という)において、平板部512の下面が、シール部材34に密着し、フックブロック30の開口33を閉塞する。また、ウエイト51の平板部512の上面がシール部材24に密着し、ブームヘッド21の開口23を閉塞する。
【0032】
平板部512は、板面に開口511aを有する。開口511aは、図2(a)に示すように、平板部512の板面の中央部分、即ち平板部512の重心部分を板厚方向へ貫通する円形孔である。開口511aには、円筒状のパイプ部511が通されている。
【0033】
パイプ部511は、開口511aに通された状態で、平板部512よりも上へ延びる上側部分UPと平板部512よりも下へ延び下側部分LPとを有する。詳細には、パイプ部511は、上側部分UPと下側部分LPの延在方向を平板部512の板面に直交させた状態で、平板部512を貫通して平板部512に固定されている。
【0034】
パイプ部511の筒孔には、ワイヤロープ40が通されている。パイプ部511は、開口23から垂下するワイヤロープ40の垂下方向に沿ってウエイト51の姿勢を安定させる。
【0035】
パイプ部511の内径は、ワイヤロープ40が引っ掛からない程度にワイヤロープ40の外径よりも大きく、ただし、パイプ部511の管内でワイヤロープ40が大きく傾斜できない径に形成されている。詳細には、パイプ部511の内径は、ワイヤロープ40の外径の2倍程度、例えば1.5倍~2.5倍大きい。これにより、ワイヤロープ40が、図示しない巻き取り装置によって巻き上げられ、または、巻き下げられたときにパイプ部511の内部をスムーズに移動することができる。さらに、パイプ部511の延在方向が概ねワイヤロープ40の垂下方向へ向く。その結果、ウエイト51に強風が当たったとしても、パイプ部511は延在方向を概ねワイヤロープ40の垂下方向へ向ける。従って、ウエイト51の向きが一定方向に保たれる。また、ウエイト51が揺れにくくなる。
【0036】
パイプ部511の上側部分UPは、ブームヘッド21の開口23の内径及びシール部材24の内径よりも小さい外径を有する。また、パイプ部511の上側部分UPの長さは、ブームヘッド21の開口23とシール部材24の円環が形成する内部空間に完全に入り込むことが可能な長さである。また、パイプ部511の下側部分LPは、フックブロック30の開口33の内径及びシール部材34の内径よりも小さい外径を有する。パイプ部511の下側部分LPの長さは、フックブロック30の開口33とシール部材34の円環が形成する内部空間に完全に入り込むことが可能な長さである。
【0037】
これにより、フック固定状態で、パイプ部511の上側部分UPが、開口23とシール部材24の内部空間に収容される。また、パイプ部511の下側部分LPが、開口33とシール部材34の内部空間に収容される。その結果、パイプ部511が、シール部材24と開口23及びシール部材34と開口33に干渉せず、平板部512が開口23及び開口33を閉塞する。
【0038】
開口23を中心にブームヘッド21の前方F、即ちブームヘッド21の前端に、2つのチェーン53と54を吊り下げるチェーン取付棒56が設けられている。チェーン取付棒56は、ブームヘッド21の幅方向に延びてブームヘッド21の右方向R及び左方向Lへそれぞれ突出した右端部561と左端部562を有する。右端部561及び左端部562それぞれには、チェーン53及び54の上端が取り付けられている。なお、本実施形態において、右方向Rと左方向Lは、旋回体10の旋回中心軸Aからブームヘッド21を見た場合の右と左を意味する。
【0039】
また、ブームヘッド21の下面の開口23より後方Bの位置に、巻過スイッチ52が設けられている。巻過スイッチ52は、上下方向へ回動可能なレバー521を有する。レバー521にチェーン55の上端が取り付けられている。
【0040】
巻過スイッチ52は、図2(a)に示すように、レバー521の押下げ姿勢ではオフし、図2(b)に示すように、レバー521の押上げ姿勢ではオンして、巻過検出信号を出力する。
【0041】
レバー521は、図示しないバネ等の付勢手段により先端部が上を向くように付勢されている。巻過スイッチ52は、レバー521の先端部でチェーン55によってウエイト51を吊り下げている。
【0042】
通常時、レバー521には、緊張した状態のチェーン55を介してウエイト51の重さが負荷され、押下げ姿勢となっている。このため、巻過スイッチ52は、オフしている。一方、ワイヤロープ40を巻き過ぎてウエイト51がフックブロック30により押し上げられると、チェーン55が弛緩し、ウエイト51によるレバー521への負荷がなくなる。その結果、レバー521が付勢手段により押上げ姿勢となり、巻過スイッチ52がオンし、巻過スイッチ52は巻過検出信号を出力する。
【0043】
チェーン取付棒56の右端部561と左端部562及び巻過スイッチ52のレバー521は、平面視で、ワイヤロープ40の垂下軸Xを重心とする正三角形の頂点に位置し、且つ、平板部512の外周よりも外方に位置する。このため、チェーン53-55は、上に向かうに従って平板部512からその外方へ放射状に離れていく。
【0044】
次に、ウエイト51とチェーン53-55の構成について、図3図5を参照しながら、さらに詳細に説明する。図3及び図4は、チェーン53-55とウエイト51の構成を示す拡大斜視図である。図5(a)及び図5(b)は、チェーン53-55の下端部が突起部516-518に接触してその動きが規制される状態を示す突起部516-518の側面図及び外面図である。
【0045】
図3及び図4に示すように、ウエイト51の平板部512の周縁部には、3つのフランジ部513-515が形成されている。
【0046】
フランジ部513-515それぞれは、平面視における平板部512の外周から径方向の外方へ延出して形成されている。詳細には、フランジ部513-515それぞれは、平板部512の周方向へ120°毎に3つ形成されている。また、フランジ部513-515それぞれは、平板部512の板厚と同じ厚み、かつ平板部512の板面と面一に形成されている。
【0047】
フランジ部513-515それぞれには、突起部516-518が形成されている。突起部516-518は、図3図5(b)に示すように、フランジ部513-515の下面からフランジ部513-515の板厚方向へ突出している。
【0048】
フランジ部513-515の下面において突起部516-518が設けられている位置は、平板部512の平面視において、フックブロック30の上端部の外周よりも外方の位置である。これにより、フック固定状態で、突起部516-518が、フックブロック30に干渉しない。
【0049】
突起部516-518は、側面視で逆L字状の肉厚の爪部材からなり、図3図5(b)に示すように、フランジ部513-515に固定されている固定部516a-518aと、固定部516a-518aから平板部512の板厚方向の下方へ延出している規制部516b-518bと、を有する。
【0050】
固定部516a-518aは、突起部516-518において側面視で逆L字状の短辺部分に相当し、かつ平板部512の径方向の外方へ膨出している方形状の部分である。固定部516a-518aの上面は、フランジ部513-515の下面に接合している。
【0051】
固定部516a-518aには、チェーン53-55の下端部が接続されている連結孔516c-518cが設けられている。換言すれば、突起部516-518は、固定部516a-518aに連結孔516c-518cを有することにより、チェーン53-55との接続部分として機能する。
【0052】
連結孔516c-518cは、固定部516a-518aを幅方向に貫通して形成されている。連結孔516c-518cの孔軸方向は、平面視した平板部512の円形の接線方向である。連結孔516c-518cは、図5(a)に示すように、平板部512の周縁と面一か又はわずかに外側に形成されている。
【0053】
規制部516b-518bは、突起部516-518において側面視で逆L字状の長辺部分に相当し、かつ平板部512の板厚方向へ伸延した略細長方形状の部分である。規制部516b-518bは、連結孔516c-518cより内側に形成されている。規制部516b-518bの先端部分は、R形状に形成されている。
【0054】
また、突起部516-518は、平板部512の板厚方向へ延びるに従い、平板部512の開口511aの径方向の外方へ向けて傾斜する内側面516d-518dを有している。傾斜する内側面516d-518dは、固定部516a-518a及び規制部516b-518bに連続して形成されている。このため、3つの突起部516-518の内側面516d-518dそれぞれは、突起部516-518の固定部516a-518aから規制部516b-518bの先端部分へいくに従い、平板部512の開口511aから放射状に離れていく。
【0055】
ウエイト51を吊り下げるチェーン53-55それぞれは、図3及び図4に示すように、下端に連結部材531-551を有する。連結部材531-551は、突起部516-518の連結孔516c-518cに回動可能に通されている。連結部材531-551は、連結孔516c-518cを中心に回動したときの半径(回動半径)が突起部516-518の長さよりも短いリングである。図5(a)、(b)に示すように、連結部材531-551は、連結孔516c-518cを中心に、平板部512に当接する位置と連結部材531-551に当接する位置の範囲で回動可能である。
【0056】
次に、上記構成を有するダビットクレーン1の動作について説明する。
まず、ダビットクレーン1の作業時には、旋回中心軸Aを中心に旋回体10を旋回させ、ブームヘッド21を所望の方向へ向ける。その状態で、図示しない巻き上げ装置を作動させ、ブームヘッド21からワイヤロープ40の巻き上げ、または送り出しを行う。これにより、フックブロック30を上下方向に移動させて、下端のフック31に掛けた荷を移動させる。
【0057】
クレーン作業中、通常は、ワイヤロープ40を巻き過ぎることはないので、図2(a)に示すように、フックブロック30はウエイト51を押し上げない。従って、巻過スイッチ52のレバー521がウエイト51の重みにより押下げ姿勢を保ち、巻過検出信号が出力されない。
【0058】
一方、ワイヤロープ40を巻き過ぎたときには、フックブロック30が平板部512にあたりウエイト51を上昇させる。これに伴い、巻過スイッチ52のレバー521が付勢手段により押上げ姿勢となり、巻過スイッチ52が巻過検出信号を出力する。その結果、警報が発せられる。
【0059】
クレーン作業が完了すると、図2(b)に示すように、ワイヤロープ40を巻き上げてフックブロック30をブームヘッド21側へ移動させ、フックブロック30によりウエイト51を持ち上げ、フックブロック30とブームヘッド21との間にウエイト51の平板部512を挟み込んでウエイト51を固定する。
【0060】
このようなクレーン作業時やフックの固定時に強風が吹いても、パイプ部511の向きがワイヤロープ40により規制される。従って、ウエイト51が、板面をワイヤロープ40の垂下方向に向けた一定の姿勢に保たれる。また、ウエイト51が、傾いたままでブームヘッド21とフックブロック30の間に挟み込まれない。その結果、シール部材24やウエイト51が損傷することを防ぐことができる。
【0061】
なお、クレーン作業においては、フック31に吊り下げられた荷を横引きすることや斜め吊りすることがある。この際、ワイヤロープ40は、垂下方向から傾斜した傾斜姿勢となる。そのため、傾斜姿勢のワイヤロープ40が、パイプ部511の上側部分UP及び下側部分LPの開口縁部に引っ掛かるおそれがある。従って、ワイヤロープ40が巻き上げられたときに、ウエイト51がワイヤロープ40に追従して持ち上げられる可能性がある。
【0062】
また、フックの固定時において、フックブロック30やウエイト51が強風に煽られて大きく揺れ動くことがある。
【0063】
これらの状況に伴って、弛緩して自重で垂れ下がるチェーン53-55が、ブームヘッド21とウエイト51の間やウエイト51とフックブロック30との間、即ち平板部512の上方や下方へ入り込む可能性がある。
【0064】
通常、チェーン53-55が緊張した状態では、図5(a)及び図5(b)のIの位置に示すように、連結部材531-551は、連結孔516c-518cを中心に上方へ回動してフランジ部513よりも外で上方へ傾斜した状態で止まっている。
【0065】
このような状態で例えばフックブロック30やウエイト51が大きく揺れ動いてチェーン53-55が弛緩した場合でも、図5(a)及び図5(b)のIIの位置に示すように、連結部材531-551が、連結孔516c-518cを中心に上方へ回動してフランジ部513に接触してわずかに外側に傾斜した状態で止まる。従って、連結部材531-551のそれ以上の回動が規制される。その結果、チェーン53-55が、平板部512の上方へ入り込まない。
【0066】
また、フックの固定時に、フックブロック30が上昇して大きく揺れ動いても、フックブロック30の上端縁部が突起部516-518の傾斜した内側面516d-518dに接触する。従って、フックブロック30が、平板部512の下方の内側へ誘導される。その結果、パイプ部511の下側部分LPが、フックブロック30の開口33に位置して、開口33とシール部材34の内部空間に収容される。
【0067】
また、図5(a)及び図5(b)に示すIの位置からチェーン53-55が弛緩して自重で垂れ下がるに伴い、チェーン53-55の下端の連結部材531-551は、連結孔516c-518cを中心に下方へと徐々に回動する。
【0068】
下方へ回動してきた連結部材531-551は、図5(a)及び図5(b)のIIIの位置に示すように、規制部516b-518bの外側面516e-518eに接触する。その結果、連結部材531-551の連結孔516c-518cを中心とした回動が規制される。従って、チェーン53-55が、平板部512の下方へ入り込まない。
【0069】
さらに、チェーン53-55が平板部512の下方へ向かおうとする移動応力が、連結部材531-551が突起部516-518に接触することによって減衰される。これにより、チェーン53-55が制動されてそれ以上暴れて絡まってしまうことを抑制できる。その結果、図4に示すように、弛緩するチェーン53-55が、平板部512の周縁よりも外方で、安定してU字状に撓む。
【0070】
このように突起部516-518によってチェーン53-55が平板部512の下方へ入り込むことを規制できる。そのため、チェーン53-55が、ブームヘッド21とウエイト51の間、及びウエイト51とフックブロック30の間に位置しない。従って、ウエイト51をブームヘッド21とフックブロック30の間に挟み込んで固定できる。
【0071】
また、フック固定状態において、ウエイト51の平板部512の上面及び下面が、ブームヘッド21のシール部材24とフックブロック30のシール部材34に密着し、ブームヘッド21の開口23及びフックブロック30の開口33を閉塞する。その結果、ブームヘッド21の内部へ海風が進入することを抑制して、ワイヤロープ40、ロープソケット及びシーブ等が腐食されることを防止できる。
【0072】
また、チェーン53-55が平板部512の下方へ入り込むことを規制する突起部516-518が平板部512に形成されているため、ウエイト51を全体的に薄くすることができ、軽量にすることができる。その結果、クレーン懐の揚程を大きく確保することができ、またブームヘッド21のヘッド高さを抑えてクレーンの保守性を向上させることができる。
【0073】
以上、実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では、ウエイト51の平板部512は、平面視で円形であったが、平板部の形状は、開口23と33を閉塞できるサイズと形状を有すれば、任意であり、例えば、楕円、長円、三角形等の多角形等でもよい。また、平板部512、換言すると板状部は、厳格な平板を意味せず、開口23と33を閉塞できる形状であればよい。ただし、クレーン懐の揚程の確保の観点から平板状であることが望ましい。また、開口23と33を閉塞すると説明した。閉鎖は気密性までは必要なく、外気のブーム20内への外気の流入を制限できればよい。
【0074】
また、パイプ部511が平板部512に直交する例を示したが、ワイヤロープ40が通過可能で、平板部512の揺動或いは振動を制限できれば、パイプ部511が平板部512に傾斜して配置されていてもよい。また、平板部512の揺動或いは振動を制限できれば、パイプ以外の、ワイヤロープ40に沿って摺動する摺動部材等の制動部材を配置してもよい。
【0075】
また、平板部512は、ワイヤロープ40を通す開口511aを有していればよく、パイプ部511等の揺動防止部材は任意の構成である。
【0076】
実施の形態では、開口23と33を閉塞するために表面が平坦なシール部材24と34及び平板部512を使用したが、開口23と24の閉塞が可能ならば、これらの部材の表面は平坦である必要はない。例えば、シール部材24と34の表面に凹凸、段差等を形成し、その凹凸、段差等に嵌め合う形状の表面を平板部512に配置してもよい。
【0077】
また、平板部512は、ワイヤロープ40を通す開口511aを有していればよく、パイプ部511は任意の構成である。
【0078】
また、実施の形態では、ブームヘッド21に設けられた開口23の周縁がシール部材24で囲まれている。また、フックブロック30に設けられた開口33の周縁がシール部材34で囲まれている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、シール部材24と34は任意の構成である。例えば、開口23と33の周縁にウエイト51の平板部512、換言すると、板状部が当接する場合、シール部材24と34は省略されてもよい。
【0079】
また、実施の形態では、ウエイト51は、平板部512の周縁部に3つのフランジ部513-515を備え、3つのフランジ部513-515の下面に3つの突起部516-518を有し、突起部516-518に接続したチェーン53-55により吊り下げられている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、平板部512の周縁部、換言すると、フランジ部513-515或いは平板部512の周縁部にチェーン53-55が接続されてもよい。
【0080】
また、実施の形態では、突起部516-518が平板部512の周縁部から平板部512の板厚方向、即ち板状部の板面に直交した直交方向に延びるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、突起部516-518が延びる方向が平板部512の板面に交差する交差方向、換言すると、板状部の板面に斜めに交差した傾斜方向であってもよい。
【0081】
また、チェーン53-55、換言すると索状部材は、例えばワイヤ、ロープであってもよい。
【0082】
また、実施の形態では、チェーン53-55は、その下端部に連結孔516c-518cを中心に回動する円形リング状の連結部材531-551を有しているが、本発明はこれに限定されない。連結部材531-551の形状は、任意であり、例えば、三角形状又は四角形状のリングでもよい。
【0083】
また、実施の形態では、チェーン53-55の上端を、ブームヘッド21の下面の、ワイヤロープ40の垂下軸Xを重心とする正三角形の頂点に相当する位置に固定したが、取り付け位置は任意である。平板部512の形状、重量のバランスなどを考慮して配置すればよい。チェーン53-55の上端は、ブームヘッド21の下面で、平面視で平板部512の周縁の位置、または内側の位置に固定されていてもよい。ただし、チェーン53-55の平板部512上に入り込むことをさけるために、平面視で平板部512の外側の位置にチェーン53-55の上端を固定することが望ましい。
【0084】
チェーン53-55の上端が平面視で平板部512の周縁の位置、または内側の位置に固定されている場合、チェーン53-55が平板部512の上に載りブームヘッド21との間に挟み込まれる可能性がある。その場合、突起部516-518は、平板部512の周縁部から上方へ突出して形成してもよい。これにより、チェーン53-55の平板部512の上方への進入を防止することができる。
【0085】
突起部516-518の内側面516d-518dは、突起部516-518が平板部512の周縁部から交差方向へ延びるに従い、板状部の開口511aの径方向の外方へ傾斜していればよく、その面形状は平坦面や湾曲面であってもよい。また、内側面516d-518dの傾斜は、少なくとも規制部516b-518bに形成されていればよい。
【0086】
また、実施の形態では、フランジ部513-515の数及びチェーン53-55の数を3つとしたが、これらの数は任意である。ただし、安定性の観点より、3つとすることが望ましい。
【0087】
本発明は、弛緩したチェーン53-55が突起部516-518に接触して平板部512の下方や上方へ入り込まなければよく、例えば連結孔516c-518cが平板部512の板厚方向に貫通していてもよいし、連結部材531-551はリングでなくともよい。また、突起部516-518の長さや数は、特に限定されることはない。また、実施の形態では、突起部516-518の形状が側面視で逆L字形状であったが、例えば長方形状や三角形状であってもよい。なお、連結部材531-551は、取り外し及び交換可能な部材、例えば、二重リングなどが望ましい。
【0088】
実施の形態では、ダビットクレーンが、フックブロックがブームヘッド内の1つのシーブから垂下する1本のワイヤロープにより吊られたいわゆる1本掛けのクレーンであるが、これに限定されることはない。本発明は、ブームヘッド内のシーブとフックブロック内のシーブの間でワイヤロープを複数回掛けたクレーン、例えば、偶数掛けまたは奇数掛けのクレーンであっても適用可能である。また、本発明は、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン等のクレーン全般に適用可能である。この場合、ウエイト51の平板部は、ブーム20に形成された複数の開口(ワイヤロープ40を垂下させるための複数の開口)を塞ぐことが可能なサイズと形状に形成されることが望ましい。また、この場合は、複数の開口それぞれ、又は、それらを纏めて囲ってシール部材24、34が配置されることが望ましい。
【符号の説明】
【0089】
1…ダビットクレーン、10…旋回体、20…ブーム、21…ブームヘッド、22…シーブ、23…開口、24…シール部材、30…フックブロック、30…フック、33…開口、34…シール部材、40…ワイヤロープ、50…巻過防止装置、51…ウエイト、52…巻過スイッチ、53-55…チェーン、56…チェーン取付棒、100…洋上風力発電装置、110…プラットホーム、511…パイプ部、511a…開口、512…平板部、513-515…フランジ部、516-518…突起部、521…レバー、531-551…連結部材、561…右端部、562…左端部
図1
図2
図3
図4
図5