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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165636
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20241121BHJP
   B66C 23/66 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B66C23/88 Q
B66C23/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081996
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】渥美 雅士
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA01
3F205AA03
3F205AA13
3F205CA03
(57)【要約】
【課題】吊荷の揚程を大きくすると共に、クレーン作業終了時にブームヘッドの内部へ風の進入を抑制してブームヘッド内にある部材の腐食を抑制することができる巻過検出ウエイトが設けられたクレーンを提供する。
【解決手段】デリッククレーン1は、径方向を前後方向に向けたシーブ22を内部に有すると共に、シーブ22の前端の下側にある箇所に第1開口が形成され、シーブ22の後端の下側にある箇所と右側に隣り合う位置に第2開口が形成された下面部を有するブームヘッド21と、ブームヘッド21の下に吊り下げられ、シーブ22と同径のシーブ32を有するフックブロック30と、ブームヘッド21の内部で端末がシーブ22と右側に隣り合う位置で固定されたワイヤロープ40と、ウエイトとを備える。フックブロック30では、シーブ32の径方向がシーブ22の前端からワイヤロープ40の端末へ向かう方向と平行である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向を前後方向に向けた第1シーブを内部に有すると共に、前記第1シーブの前端の下側にある箇所に第1開口が形成され、前記第1シーブの後端の下側にある箇所と右または左のいずれかの側方に隣り合う位置に第2開口が形成された下面部を有するブームヘッドと、
前記ブームヘッドの下に吊り下げられ、前記第1シーブと同径の第2シーブを有するフックブロックと、
前記第1シーブから前記第1開口を通って、前記第2シーブに掛け回され、前記第2シーブから前記ブームヘッドの前記第2開口を通って、前記ブームヘッドの内部へ延びると共に、前記ブームヘッドの内部で端末が前記第1シーブと右または左のいずれかの前記側方に隣り合う位置で固定されたワイヤロープと、
前記ワイヤロープの前記第1開口から前記第2シーブまでの第1部分または、前記ワイヤロープの前記第2開口から前記端末までの第2部分に通された貫通部が設けられた本体部を有し、前記ワイヤロープが巻き上げられて前記本体部が前記フックブロックと前記ブームヘッドの間に挟まれた場合に、前記本体部が前記ブームヘッドの前記下面部と接して前記第1開口または、前記第2開口を塞ぐ巻過検出用ウエイトと、
を備え、
前記フックブロックでは、前記第2シーブの径方向が前記第1シーブの前端から前記ワイヤロープの前記端末へ向かう方向と平行である、クレーン。
【請求項2】
前記フックブロックは、前記第1シーブの前端と前記ワイヤロープの前記端末との間の中央の真下に位置するフックを備える、
請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記ワイヤロープの前記端末は、前記第1シーブの後端と右または左のいずれかの前記側方に隣り合う位置で固定され、
前記ワイヤロープの、前記端末から前記第2開口へ延びる部分は、前記ブームヘッドの左右方向視で、前記第1シーブの後端の接線と重なっている、
請求項1または2に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
作業効率を高めるため、ブームヘッドの高さに対して吊荷の揚程が長いクレーンの開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブームヘッドに設けられたシーブとフックブロックに設けられたシーブの間でワイヤロープを4本掛けにしたクレーンにおいて、ワイヤロープの端末をブームヘッドのシーブと左右方向に隣り合わせて固定することにより、ブームヘッドの下にワイヤロープの端末を固定した形態よりも、吊荷の揚程を長くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-40677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、クレーンには、ワイヤロープの巻き過ぎを防ぐため、ブームヘッドとフックブロックの間にワイヤロープに沿って巻過検出用ウエイト(以下、単にウエイトともいう)を吊り、そのウエイトが吊荷の吊り上げによって持ち上げられたときにワイヤロープを巻過したと判定する巻過防止装置が装備されたものがある。このような巻過防止装置を装備するクレーンでは、ブーム格納時または、走行時等のクレーン作業をしないときに、ワイヤロープを巻き上げて、フックブロックとブームヘッドの間にウエイトを挟み込むことにより、ブームヘッドにウエイトを固定することが行われている。
【0006】
しかし、このような巻過防止装置を特許文献1に記載のクレーンに装備させると、ブームヘッドにあるシーブとフックブロックにあるシーブとが径方向を共に前後方向に向けているため、フックブロックのシーブからワイヤロープの端末までの間で、ワイヤロープが左右方向に傾斜してしまう。その結果、上述した方法でウエイトを固定すると、ウエイトが傾斜して、ウエイトとブームヘッドの隙間が生じてしまう。
【0007】
また、海岸、洋上等の海風が吹く環境でクレーンが使用されることがあるが、その場合、上述した隙間から海風がブームヘッド内に入り込み、海風の塩分によりワイヤロープ、ロープソケットおよびシーブ等が腐食してしまうことがある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、吊荷の揚程を大きくすると共に、クレーン作業終了時にブームヘッドの内部へ風の進入を抑制してブームヘッド内にある部材の腐食を抑制することができる巻過検出ウエイトが設けられたクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るクレーンは、
径方向を前後方向に向けた第1シーブを内部に有すると共に、前記第1シーブの前端の下側にある箇所に第1開口が形成され、前記第1シーブの後端の下側にある箇所と右または左のいずれかの側方に隣り合う位置に第2開口が形成された下面部を有するブームヘッドと、
前記ブームヘッドの下に吊り下げられ、前記第1シーブと同径の第2シーブを有するフックブロックと、
前記第1シーブから前記第1開口を通って、前記第2シーブに掛け回され、前記第2シーブから前記ブームヘッドの前記第2開口を通って、前記ブームヘッドの内部へ延びると共に、前記ブームヘッドの内部で端末が前記第1シーブと右または左のいずれかの前記側方に隣り合う位置で固定されたワイヤロープと、
前記ワイヤロープの前記第1開口から前記第2シーブまでの第1部分または、前記ワイヤロープの前記第2開口から前記端末までの第2部分に通された貫通部が設けられた本体部を有し、前記ワイヤロープが巻き上げられて前記本体部が前記フックブロックと前記ブームヘッドの間に挟まれた場合に、前記本体部が前記ブームヘッドの前記下面部と接して前記第1開口または、前記第2開口を塞ぐ巻過検出用ウエイトと、
を備え、
前記フックブロックでは、前記第2シーブの径方向が前記第1シーブの前端から前記ワイヤロープの前記端末へ向かう方向と平行であることを特徴とする。
【0010】
前記フックブロックは、前記第1シーブの前端と前記ワイヤロープの前記端末との間の中央の真下に位置するフックを備えていてもよい。
【0011】
前記ワイヤロープの前記端末は、前記第1シーブの後端と右または左のいずれかの前記側方に隣り合う位置で固定され、
前記ワイヤロープの、前記端末から前記第2開口へ延びる部分は、前記ブームヘッドの左右方向視で、前記第1シーブの後端の接線と重なっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、ブームヘッドの内部でワイヤロープの端末が第1シーブと右または左のいずれかの側方に隣り合う位置で固定されている。このため、ワイヤロープの端末がブームヘッドの下に固定された場合より、ブームヘッドの上下方向の厚みが小さく、吊荷の揚程が長い。
【0013】
また、フックブロックが第1シーブと同径の第2シーブを有し、第2シーブの径方向が、第1シーブの前端からワイヤロープの端末へ向かう方向と平行である。このため、フックブロックのシーブから端末までの間で、ワイヤロープが左右方向または前後方向に概ね傾斜しない。その結果、クレーン作業終了時に巻過検出用ウエイトの本体部がブームヘッドの下面部と接して第1開口または、第2開口を塞ぐときに、傾斜しにくく、第1開口または、第2開口との間に隙間が生じにくい。また、ワイヤロープがねじれたりしない結果、隙間が生じにくい。このため、ブームヘッドの内部へ風の進入が抑制され、ブームヘッド内にある部材の腐食が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るダビットクレーンの側面図である。
図2】実施の形態に係るダビットクレーンのブームヘッドの上面図である。
図3】実施の形態に係るダビットクレーンのブームヘッドの右側面図である。
図4】実施の形態に係るダビットクレーンのブームヘッドの下面図である。
図5】実施の形態に係るダビットクレーンのブームヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るクレーンについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0016】
実施の形態に係るクレーンは、ブームヘッドに設けられたシーブとフックブロックに設けられたシーブの間で2本掛けされたワイヤロープに、巻過を検出するためのウエイトが通された巻過防止装置を備えるクレーンである。以下、そのクレーンが洋上風力発電装置に設置されるダビットクレーンである場合を例に、クレーンと巻過防止装置の構成を説明する。まず、クレーンの全体の構成について説明する。
【0017】
図1は、実施の形態に係るダビットクレーン1の側面図である。なお、図1では、理解を容易にするため、フックブロック30の形状を簡略化している。
【0018】
図1に示すように、ダビットクレーン1は、旋回体10と、ブーム20と、フックブロック30とを備える。
【0019】
旋回体10は、四角筒の形状に形成され、その中心軸線A1を上下方向に向けた状態で、洋上風力発電装置100が備えるプラットホーム110に設置されている。また、旋回体10には、ブーム20が設けられている。旋回体10は、図示しないアクチュエータまたは手動により駆動する旋回装置によって旋回の中心軸線A1を中心にブーム20を旋回させる。
【0020】
ブーム20は、旋回体10から傾斜した方向へ延び、その後、水平方向へ折れ曲がった四角筒の形状に形成されている。図示しないが、ブーム20の内部には、旋回体10の内部に設けられたウインチドラムから延びるワイヤロープ40が通されている。そして、ブーム20の水平方向へ延びる先端部の下面部、すなわち、ブームヘッド21の下面部には、図1に示さない開口が2つ形成されている。また、ブームヘッド21内には、シーブ22が設けられ、そのシーブ22に上述したワイヤロープ40が掛け回されている。そして、ワイヤロープ40は、ブームヘッド21の2つの開口のうちの一方からブームヘッド21の下へ引き出されて、さらに、フックブロック30にまで延びている。
【0021】
フックブロック30は、下端側が細くなる略四角筒の形状に形成されている。そして、フックブロック30の上端部には、図1に示さない開口が2つ設けられている。また、フックブロック30の内部には、図1に示さないシーブが設けられている。上述した開口のうちの一方には、ブームヘッド21から延びるワイヤロープ40が通され、さらに、そのワイヤロープ40が上述したフックブロック30内のシーブに掛け回されている。そして、ワイヤロープ40は、シーブに掛け回された後、上述した開口のうちの他方を通って、ブームヘッド21へ戻され、ワイヤロープ40の端末がブームヘッド21に固定されている。これにより、フックブロック30は、2本掛けの方式でブームヘッド21から吊り下げられている。
【0022】
一方、フックブロック30の下端部には、荷を吊るためのフック31が設けられている。フック31は、荷が吊られた状態でワイヤロープ40が巻き上げられることにより、荷を吊り上げる。
【0023】
また、フックブロック30とブームヘッド21との間には、その荷の吊り上げで、ワイヤロープ40の巻過ぎを検出するため、巻過防止装置50のウエイト51が吊られている。
【0024】
詳細には、ウエイト51は円板状に形成されている。その板面中央には、図1に示さない貫通孔が形成され、その貫通孔にワイヤロープ40が通されている。そして、ブームヘッド21にある巻過スイッチ52から延びるチェーンと、図1に示さないチェーン取り付け棒の左端、右端それぞれから延びるチェーンとにより、ウエイト51が吊り下げられている。これにより、ウエイト51は、クレーン作業の通常時、ワイヤロープ40に沿った状態で、ブームヘッド21から特定の距離だけ離れている。そして、ウエイト51は、ワイヤロープ40の巻過ぎ時にフックブロック30が衝突すると、巻過スイッチ52との間にあるチェーンを弛ませる。これにより、ウエイト51は、巻過スイッチ52をオンにして、ワイヤロープ40の巻過ぎを検出する。
【0025】
このようなダビットクレーン1では、保守点検をしやすくすると共に、揚程を長くするため、ブームヘッド21の上下方向の厚みが小さいことが望ましい。また、ダビットクレーン1が海岸、洋上等の海風が吹く環境に設置された場合に、海風の塩分による腐食を抑制するため、ブームヘッド21とフックブロック30にある上述した開口から海風が入りにくいことが望ましい。
【0026】
そこで、ダビットクレーン1では、ワイヤロープ40の端末の固定機構をブームヘッド21に内蔵させてブームヘッド21の上下方向の厚みを小さくするため、図1には示さないが、ワイヤロープ40の端末がブームヘッド21の下面部にある2つの開口のうちの他方から、ブームヘッド21の内部に入れられ、その内部で固定されている。
【0027】
一方、ダビットクレーン1では、クレーン作業終了時にワイヤロープ40を巻き上げることにより、フックブロック30とブームヘッド21の間にウエイト51を挟み込んでブームヘッド21にウエイト51を固定することが行われる。ダビットクレーン1では、そのウエイト51の固定時に、ブームヘッド21内への海風の進入を抑制するため、ウエイト51がフックブロック30によってブームヘッド21の下面部の開口周縁に密着する位置に、ワイヤロープ40の端末とブームヘッド21およびフックブロック30のシーブが配設されている。
【0028】
次に、図2図5を参照して、ワイヤロープ40の端末の固定機構について説明する。また、そのワイヤロープ40の端末とブームヘッド21およびフックブロック30のそれぞれに設けられたシーブとの位置関係について説明する。
【0029】
図2図5は、実施の形態に係るダビットクレーン1のブームヘッド21の上面図、右側面図、下面図および、正面図である。
【0030】
なお、図2図5では、理解を容易にするため、フックブロック30も示している。また、ブームヘッド21の上面はカバーで覆われるところ、そのカバーを省略している。さらに、ワイヤロープ40の一部分を点線で示している。また、図2図4には、位置関係を示すため、フックブロック30内のシーブ32の位置を示している。また、図示しないカバーを含めたブームヘッド21の全体の軸線A2を示している。
【0031】
図2に示すように、ブームヘッド21の内部の左領域には、外周部にワイヤロープ40を掛け回すための溝が形成された円盤の形状のシーブ22が設けられている。
【0032】
そのシーブ22は、円盤軸を左方向Lまたは右方向R(以下、左右方向という)に向けている。換言すると、円盤の径方向を、ブームヘッド21の軸線A2が延在する前方向Fまたは後方向B(以下、前後方向という)に向けている。そして、シーブ22の外周部には、図3に示すように、ワイヤロープ40が掛け回されている。
【0033】
一方、ブームヘッド21の下面部の、シーブ22の前端と後端の真下にある箇所それぞれには、図3に示すように、ワイヤロープ40を通すための円形状の開口25、27それぞれが設けられている。
【0034】
これら開口25、27のうち、開口27の周縁には、ナイロン、ゴム等の樹脂により形成された円環状かつ平らなシール部材28が設けられている。これにより、開口27は、そのシール部材28によって囲まれている。その結果、開口27では、クレーン作業終了時にワイヤロープ40を巻き上げてウエイト51をフックブロック30とブームヘッド21の間に挟み込んでウエイト51を固定するときに、シール部材28がウエイト51に密着して海風が進入することが防がれている。そして、ブームヘッド21内のワイヤロープ40、ロープソケット41およびシーブ22等の腐食が抑制されている。
【0035】
また、これらの開口25、27のうち、開口25には、上述したシーブ22に掛け回されたワイヤロープ40が通されている。これにより、ワイヤロープ40がブームヘッド21の下へ引き出されている。
【0036】
これに対して、フックブロック30の上端部には、ワイヤロープ40を通すため、前端側と後端側それぞれに開口35、37それぞれが設けられている。
【0037】
それら開口35、37は、上述したブームヘッド21の下面部に形成された開口25、27と同じ形状、同じ大きさに形成され、前後方向に、開口25と27の間隔と同じ間隔、すなわち、シーブ22の直径とほぼ同じ間隔を設けて配置されている。また、開口35、37の周縁には、上述したブームヘッド21のシール部材28と同じ材質、同じ形状および同じ大きさのシール部材36、38が設けられている。これにより、開口35、37は、シール部材36、38によって囲まれている。これにより、開口35では、クレーン作業終了時のウエイト51の固定時に、シール部材36がブームヘッド21の下面部に密着して海風が進入することが防がれている。また、開口37でも、クレーン作業終了時のウエイト51の固定時に、シール部材38がウエイト51に密着して海風が進入することが防がれている。
【0038】
一方、フックブロック30の内部の、開口35と37の前後方向の間かつ、開口35と37の真下には、外周部にワイヤロープ40を掛け回すための溝が形成された円盤の形状のシーブ32が設けられている。
【0039】
シーブ32は、ブームヘッド21にあるシーブ22とほぼ同径である。また、図2および図4に示すように、シーブ32は、円盤軸を左斜め後方または右斜め前方に向けている。詳細には、図2に示すように、シーブ32は、円盤の径方向を、シーブ22の前端221からワイヤロープ40の端末を止めるロープソケット41へ向かう方向R1に向けている。シーブ32は、このような構成を備えることにより、ワイヤロープ40が掛け回されたときに、図3に示すように、ブームヘッド21のシーブ22または、ロープソケット41との間でワイヤロープ40を前後方向と左右方向とに概ね傾けないで上下方向に真っ直ぐ張ることを可能にしている。また、ワイヤロープ40のねじれを抑制している。その結果、クレーン作業終了時のウエイト51を固定するときに、ウエイト51を上下方向に真っ直ぐ引き上げてブームヘッド21の下面部のシール部材28に密着させる。これにより、海風が進入することを防いでいる。
【0040】
また、図3に示すように、シーブ32の外周部には、ブームヘッド21の開口25から引き出され、かつ開口35からフックブロック30の内部へ引き込まれたワイヤロープ40が掛け回されている。そのワイヤロープ40は、シーブ32の後端側からフックブロック30の上端部へ延ばされ、開口37、シール部材38を通されて、フックブロック30の上へ引き出されている。そして、ブームヘッド21の側へ延ばされている。
【0041】
ブームヘッド21では、フックブロック30から引き出されたワイヤロープ40が開口27、シール部材28を通されている。そして、その内部でワイヤロープ40の端末がブームヘッド21のフレーム211に固定されている。
【0042】
詳細には、ブームヘッド21の内部では、ワイヤロープ40の端末がロープソケット41に連結されている。そして、そのロープソケット41が、図2に示すように、ブームヘッド21が有するフレーム211に固定されている。これにより、ロープソケット41は、それ自体がブームヘッド21の下に固定される形態と比較して、ブームヘッド21の上下方向の厚みを小さくする。その結果、ロープソケット41は、吊荷の揚程を長くしながら、ブームヘッド21の上面をできるだけ低くして保守点検をしやすくしている。
【0043】
また、ロープソケット41の固定位置は、上下方向から視たときに、図2に示すように、ワイヤロープ40の端末がブームヘッド21のシーブ22の後端とブームヘッド21の軸線A2に対して概ね左右対称となる位置である。また、ロープソケット41の固定位置は、左右方向から視たときに、図3に示すように、ロープソケット41に連結された端末から垂下するワイヤロープ40が、ブームヘッド21のシーブ22の後端の接線と概ね重なる位置、または、接線方向へ延びる位置である。
【0044】
ロープソケット41は、このような位置に固定されることにより、図4に示すように、フックブロック30の下面視中央に位置するフック31を、ブームヘッド21の軸線A2の下に位置させている。その結果、ロープソケット41により、吊荷の負荷がブームヘッド21に左右に均等に加わる状態となり、ブームヘッド21のねじれを防いでいる。
なお、ブームヘッド21には、図5に示すように、左右方向中央に仕切り板212が設けられている。ロープソケット41は、ブームヘッド21のフレーム211に固定されているが、そのフレーム211と上記の仕切り板212でシーブ22の反力が支えられている。
【0045】
また、ロープソケット41は、このような位置に固定されることにより、図3に示すように、ワイヤロープ40を上下方向へ概ね真っ直ぐに延ばし、クレーン作業終了時のウエイト51の固定時に、ウエイト51を概ね上下方向へ真っ直ぐ引き上げることを可能にする。その結果、ロープソケット41は、ウエイト51をブームヘッド21の下面部のシール部材28に密着することを可能にする。これにより、海風が進入することを防いでいる。
【0046】
なお、フックブロック30の上端部には、図3および図5に示すように、ウエイト51の厚みとシール部材36の厚みとをあわせた距離Dと同じ大きさの段差39が設けられている。その結果、フックブロック30の上端部の後端側は、前端側よりも距離Dと同じ大きさだけ低くなっている。フックブロック30は、このような構成を備えることにより、ウエイト51を固定するときに、上端部の後端側とブームヘッド21との間にウエイト51を挟んで、その後端側にあるシール部材38をウエイト51に密着させると共に、シール部材36をブームヘッド21の下面部に密着させる。その結果、ブームヘッド21との間に隙間が生じることが防がれている。
【0047】
以上のように、実施の形態に係るダビットクレーン1では、ワイヤロープ40がフックブロック30にあるシーブ32からブームヘッド21の開口27を通って、ブームヘッド21の内部へ延びると共に、ブームヘッド21の内部でワイヤロープ40の端末がシーブ22の右側に隣り合う位置で固定されている。このため、ワイヤロープ40の端末がブームヘッド21の下に固定された場合より、ブームヘッド21の上下方向の厚みが小さい。その結果、吊荷の揚程を長くしながら、ブームヘッド21の上面部の位置を低くして、保守点検をしやすくすることができる。
【0048】
また、フックブロック30がブームヘッド21にあるシーブ22と同径のシーブ32を有し、シーブ32の径方向が、ブームヘッド21にあるシーブ22の前端221からワイヤロープ40の端末へ向かう方向と平行である。このため、フックブロック30のシーブ32から端末までの間で、ワイヤロープ40が左右方向または前後方向に概ね傾斜しない。その結果、クレーン作業終了時にウエイト51がブームヘッド21の下面部と接して開口27を塞ぐときに、ウエイト51が傾斜しにくく、開口27との間に隙間が生じにくい。また、ワイヤロープ40がねじれたりしない結果、開口27との間に隙間が生じにくい。このため、ブームヘッド21の内部へ海風の進入が抑制され、ブームヘッド21内にある部材の腐食を抑制できる。さらに、ウエイト51とフックブロック30の開口37との間にも隙間が生じにくく、その結果、フックブロック30の内部へ海風の進入が抑制され、部材の腐食を抑制できる。
【0049】
さらに、フックブロック30は、ブームヘッド21にあるシーブ22の前端221とワイヤロープ40の端末との間の中央の真下にフック31を備える。そして、ワイヤロープ40の端末はシーブ22の右側に隣り合う。このため、ブームヘッド21がひずみにくい。クレーン作業終了時のウエイト51の固定時にもブームヘッド21がひずみにくいので、ウエイト51と開口27との間にも隙間が生じにくい。
【0050】
ワイヤロープ40の端末からブームヘッド21の開口27へ延びる部分は、左右方向視で、シーブ22の後端の接線方向へ延びる。シーブ22の前端221でも、掛け回されたワイヤロープ40が接線方向へ延びるので、吊荷の負荷がブームヘッド21の左右方向で均等にかかり、ブームヘッド21がひずみにくい。
【0051】
なお、ブームヘッド21にあるシーブ22とフックブロック30にあるシーブ32は、特許請求の範囲でいう第1シーブと第2シーブに相当する形態であり、ブームヘッド21の下面部にある開口25と27は、特許請求の範囲でいう第1開口と第2開口に相当する形態である。また、ウエイト51の貫通孔と円板状のウエイト51それ自体は、特許請求の範囲でいう貫通部と本体部に相当する形態である。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態では、ブームヘッド21にあるシーブ22の右側にワイヤロープ40の端末が固定されているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、ブームヘッド21の内部でワイヤロープ40の端末がブームヘッド21にあるシーブ22と右または左のいずれかの側方に隣り合う位置で固定されていればよい。このため、例えば、ブームヘッド21にあるシーブ22の左側にワイヤロープ40の端末が固定されていてもよい。
【0053】
また、実施の形態では、ブームヘッド21にあるシーブ22の後端とワイヤロープ40の端末がブームヘッド21の軸線A2に対して左右対称であるが、シーブ22の後端とワイヤロープ40の端末は、ブームヘッド21の軸線A2に対して左右対称でなくてもよい。例えば、シーブ22の後端とワイヤロープ40の端末は、ブームヘッド21の軸線A2に平行な線に対して左右対称であってもよい。要するに、実施の形態で説明したシーブ22の後端とワイヤロープ40の端末がブームヘッド21内で、右または左へオフセットされていてもよい。
【0054】
さらに、実施の形態では、巻過防止装置50のウエイト51が、ワイヤロープ40の、フックブロック30の開口37からブームヘッド21の開口27までの間の部分に設けられている。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0055】
本発明では、ウエイト51は、貫通部(例えば貫通孔)が設けられた本体部を有し、その貫通部に、ワイヤロープ40の、ブームヘッド21にある開口25からフックブロック30にあるシーブ32までの第1部分が通されてもよい。例えば、ウエイト51の貫通部に、実施の形態で説明したワイヤロープ40の、ブームヘッド21の開口25からフックブロック30の開口35までの間の部分が通されてもよい。当然ながら、実施の形態と同様に、貫通部に、ワイヤロープ40の、フックブロック30にあるシーブ32からブームヘッド21にある開口27までの第2部分が通されていてもよい。
【0056】
その場合、上述した本体部は、例えば、ウエイト51それ自体の円板部分であるとよい。また、本体部は、ワイヤロープ40が巻き上げられて本体部がフックブロック30とブームヘッド21の間に挟まれた場合に、ブームヘッド21の下面部と接して開口25または27を塞げばよい。
【0057】
実施の形態では、ブームヘッド21にあるシーブ22とフックブロック30にあるシーブ32がほぼ同径である。本発明では、ブームヘッド21にあるシーブ22とフックブロック30にあるシーブ32が同径であればよく、ここでいう同径とは、ワイヤロープ40がシーブ22と32の間で実質的に鉛直方向へ張られて、左右方向、前後方向に実質的に傾かないでねじれがない程度に外径が実質的に同じあることをいう。従って、シーブ22は、例えば、シーブ32よりもやや大きくてもよく、また逆にやや小さくてもよい。このような大きさでも、クレーン作業終了時にウエイト51がブームヘッド21の下面部と接して開口27(または開口25)を塞ぐときに、ウエイト51が傾斜しにくくして、開口27(または開口25)との間に隙間が生じにくくすることができるからである。
【0058】
また、実施の形態では、ブームヘッド21にあるシーブ22とフックブロック30にあるシーブ32との間でワイヤロープ40が掛け回され、2本掛けにされている。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0059】
本発明では、ブームヘッド21が、径方向を前後方向に向けた第1シーブを内部に有すると共に、第1シーブの前端の下側にある箇所に第1開口が形成され、第1シーブの後端の下側にある箇所と右または左のいずれかの側方に隣り合う位置に第2開口が形成された下面部を有していればよい。また、フックブロック30が、ブームヘッド21の下に吊り下げられ、第1シーブと同径の第2シーブを有していればよい。そして、ワイヤロープ40が第1シーブから第1開口を通って、第2シーブに掛け回され、第2シーブからブームヘッド21の第2開口を通って、ブームヘッド21の内部へ延びると共に、ブームヘッド21の内部で端末が第1シーブと右または左のいずれかの側方に隣り合う位置で固定されていればよい。ワイヤロープ40の複数本掛けは、このような条件を満たすものであればよい。例えば、ワイヤロープ40は、偶数掛けであってもよい。
【0060】
なお、実施の形態では、クレーンがダビットクレーン1であるが、本発明は、これに限定されず、ブームヘッド21の開口25,27から風、例えば海風の侵入を防ぐ必要のあるデリッククレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン等のクレーン全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…ダビットクレーン、10…旋回体、20…ブーム、21…ブームヘッド、22…シーブ、25,27…開口、28…シール部材、30…フックブロック、31…フック、32…シーブ、35,37…開口、36,38…シール部材、39…段差、40…ワイヤロープ、41…ロープソケット、50…巻過防止装置、51…ウエイト、52 …巻過スイッチ、100…洋上風力発電装置、110…プラットホーム、211…フレーム、212…仕切り板、221…前端、A1…中心軸線、A2…軸線、B…後方向、D…距離、F…前方向、L…左方向、R…右方向、R1…方向
図1
図2
図3
図4
図5