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特開2024-165654半導体装置、電力変換装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165654
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/60 321E
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082018
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】浦地 剛史
(72)【発明者】
【氏名】中島 泰
(57)【要約】
【課題】回路パターンの変形を抑え電極端子と回路パターンとの良好な接合状態を実現する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、回路パターンおよび電極端子を含む。回路パターンは、導電性を有し、絶縁層上に設けられている。電極端子は、回路パターンに接合された接合部を含む。電極端子のビッカース硬さは、回路パターンのビッカース硬さよりも大きい。接合部の上面は、加圧痕を含む。接合部の下面は、回路パターンに直接接合されている。接合部の上面に形成された加圧痕の面積は、接合部の下面と回路パターンとの接触面積の1/2以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、絶縁層上に設けられている回路パターンと、
前記回路パターンに接合された接合部を含む電極端子と、を備え、
前記電極端子のビッカース硬さは、前記回路パターンのビッカース硬さよりも大きく、
前記接合部の上面は、加圧痕を含み、
前記接合部の下面は、前記回路パターンに直接接合されており、
前記接合部の前記上面に形成された前記加圧痕の面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積の1/2以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記回路パターンに接合された半導体素子を、さらに備え、
前記電極端子は、帯状の導体であり、
前記接合部の前記下面は、固相拡散接合によって、前記回路パターンに接合されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記加圧痕は、前記電極端子の幅方向における前記接合部の一端から他端まで形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記接合部は、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置を含み、電源から入力される電力を変換して負荷に出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御するための制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備える電力変換装置。
【請求項6】
導電性を有し、絶縁層上に設けられている回路パターンと、
前記回路パターンに接合された接合部を含む電極端子と、を備え、
前記接合部の上面は、加圧痕を含み、
前記接合部の下面は、前記回路パターンに直接接合されており、
前記接合部は、前記接合部の前記上面に形成された前記加圧痕の面積が前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積よりも小さくなるように、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、半導体装置。
【請求項7】
前記加圧痕の前記面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの前記接触面積の1/2以下である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
絶縁層上に設けられ導電性を有する回路パターン上に、電極端子の接合部を載置する工程と、
前記回路パターンに、前記電極端子の前記接合部を接合する工程と、を備え、
前記接合部を前記回路パターンに接合する前記工程は、
超音波接合ツールを前記接合部の上面に押し付ける工程と、
前記超音波接合ツールに超音波を印加し、前記超音波によって前記接合部の下面を前記回路パターンに直接接合する工程と、を含み、
前記回路パターンに前記接合部を載置する前記工程における前記接合部は、前記超音波接合ツールに接触する前記接合部の前記上面の面積が、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積よりも小さくなるように、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記接合部を前記回路パターンに接合する前記工程は、
前記超音波接合ツールの押し付けによる加圧痕を前記接合部の前記上面に形成することを含み、
前記加圧痕の前記面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの前記接触面積の1/2以下である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、電力変換装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、外部回路と接続可能な電極端子を有する。特許文献1に記載の半導体装置においては、電極端子は超音波接合によって絶縁基板の導体層に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-199813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁基板に設けられた導体層である回路パターンと電極端子との超音波接合の際、超音波接合ツールの先端は、電極端子の上面に押し付けられた状態で超音波を印加する。電極端子の下面に接触する回路パターンは、電極端子を介した超音波接合ツールからの加圧によって変形する。そのような回路パターンの変形は、半導体装置の絶縁性能を低下させる場合がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するため、回路パターンの変形を抑え電極端子と回路パターンとの良好な接合状態を実現する半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、回路パターンおよび電極端子を含む。回路パターンは、導電性を有し、絶縁層上に設けられている。電極端子は、回路パターンに接合された接合部を含む。電極端子のビッカース硬さは、回路パターンのビッカース硬さよりも大きい。接合部の上面は、加圧痕を含む。接合部の下面は、回路パターンに直接接合されている。接合部の上面に形成された加圧痕の面積は、接合部の下面と回路パターンとの接触面積の1/2以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路パターンの変形を抑え電極端子と回路パターンとの良好な接合状態を実現する半導体装置が提供される。
【0008】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】半導体装置の構成を示す平面図である。
図3】半導体装置の電極端子の周辺の構成を示す平面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】電極端子の接合部と回路パターンとの超音波接合工程を示す図である。
図6】超音波接合後の電極端子の接合部および回路パターンの外観を示す図である。
図7】電極端子の接合部と回路パターンとの接合強度を示す図である。
図8】加圧痕の面積が電極端子の接合部と回路パターンとの接触面積の1/2よりも大きい状態を示す図である。
図9】実施の形態1の変形例における半導体装置の構成を示す断面図である。
図10】実施の形態2における半導体装置の製造方法における超音波接合工程を示す図である。
図11】実施の形態3における半導体装置の製造方法における超音波接合工程を示す図である。
図12】実施の形態4における半導体装置の製造方法における超音波接合工程を示す図である。
図13】実施の形態5における電力変換システムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における半導体装置101の構成を示す断面図である。図2は、半導体装置101の構成を示す平面図である。半導体装置101は、ベース板1、絶縁基板2、半導体素子3、ケース4、電極端子5、導電ワイヤ6および封止部材7を含む。図3は、半導体装置101の電極端子5の周辺の構成を示す平面図である。
【0011】
ベース板1は、例えばCuなどの金属、Cuなどを含む合金、またはAlSiCなどの金属基複合材料によって形成されている。ベース板1は、半導体素子3で発生した熱を、半導体装置101の外部へ放散させるヒートシンクの機能を有する。
【0012】
絶縁基板2は、ベース板1に保持されている。絶縁基板2は、絶縁層2A、回路パターン2Bおよび導体層2Cを含む。
【0013】
絶縁層2Aは、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などのセラミックスで形成されている。絶縁層2Aは、バインダー樹脂とフィラーとを含む有機絶縁材料で形成されていてもよい。フィラーはバインダー樹脂の中で分散している。バインダー樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、液晶ポリマーなどである。フィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素などである。
【0014】
回路パターン2Bは、絶縁層2Aの上面に設けられている。回路パターン2Bは、導電性を有する。回路パターン2Bは、アルミニウムなどの金属で形成されている。回路パターン2Bは、例えば、圧延されたアルミニウムの板であってもよい。回路パターン2Bは、絶縁層2Aにろう付けされていてもよい。回路パターン2Bの厚みは、例えば、0.25mm以上1.0mm以下である。
【0015】
導体層2Cは、絶縁層2Aの下面に設けられている。導体層2Cは、アルミニウムなどの金属で形成されている。導体層2Cは、例えば、圧延されたアルミニウムの板であってもよい。導体層2Cの厚みは、例えば、0.25mm以上1.0mm以下である。導体層2Cの厚みは、回路パターン2Bの厚みと同じであってもよいし、異なっていてもよい。導体層2Cは、絶縁層2Aの線膨張係数と回路パターン2Bの線膨張係数との差に起因して発生する反りを減少させる機能を有する。導体層2Cは、例えば、はんだなどの導電性接合部材8を介して、ベース板1に接合されている。
【0016】
半導体素子3は、例えば、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド(C)などの半導体材料で形成されている。実施の形態1における半導体素子3は、パワー半導体素子であり、スイッチング素子(図示せず)および還流ダイオード(図示せず)を含む。スイッチング素子は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)である。スイッチング素子がMOSFETである場合、スイッチング素子は、ドレイン電極、ソース電極およびゲート電極を含む。還流ダイオードは、例えば、ショットキーバリアダイオードである。還流ダイオードは、アノード電極およびカソード電極を含む。還流ダイオードは、スイッチング素子に逆並列に接続されている。半導体素子3は、IGBTおよび還流ダイオードが1つの半導体チップ内に形成された逆導通IGBT(RC-IGBT)であってもよい。
【0017】
半導体素子3は、導電性接合部材9を介して絶縁基板2の回路パターン2Bに接合されている。具体的には、スイッチング素子のドレイン電極または還流ダイオードのカソード電極が、導電性接合部材9によって回路パターン2Bに接合されている。導電性接合部材9は、はんだ、焼結体等である。焼結体は、例えば、銀などの金属微粒子を含む。
【0018】
ケース4は、例えば、平面視において矩形状の枠体を有する。ケース4は、その枠体の内側に絶縁基板2および半導体素子3を収容している。言い換えると、絶縁基板2および半導体素子3は、ケース4によって囲まれている。ケース4は、接着材などによって、ベース板1に固定されている。ケース4は、絶縁性樹脂で形成されている。絶縁性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)またはポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などである。
【0019】
電極端子5は、ケース4に固定されている。電極端子5は、例えば、その一部がケース4に埋め込まれて固定されている。電極端子5は、帯状の導体であり、その帯状の導体が曲げられたり、部分的に押しつぶされたりして成形されている。電極端子5は、例えば、金属製の平板が予め定められた形状に加工された帯状の導体である。電極端子5は、半導体装置101の外部に設けられる外部回路(図示せず)と接続可能に構成されている。電極端子5の厚さは、例えば0.6mm以上2.5mm以下である。電極端子5は、回路パターン2Bとは異なる金属で形成されている。電極端子5は、例えば、無酸素銅(C1020-1/2H、C1020-1/4もしくはC1020-H)またはタフピッチ銅で形成されている。
【0020】
電極端子5のビッカース硬さは、回路パターン2Bのビッカース硬さよりも大きい。電極端子5が銅で形成され、回路パターン2Bがアルミニウムで形成されている場合、銅のビッカース硬さは130GPa程度であり、アルミニウムのビッカース硬さは70GPa程度である。
【0021】
電極端子5は、回路パターン2Bに接合された接合部5Aを含む。接合部5Aは、電極端子5の端部に設けられている。実施の形態1における接合部5Aは、電極端子5の端部が折り曲げられて形成されている。
【0022】
接合部5Aの上面は、加圧痕5Bを含む。その加圧痕5Bは、凹凸パターンを含む。加圧痕5Bは、接合部5Aが回路パターン2Bに接合される際に、超音波接合ツールが接合部5Aの上面に押し付けられることによって形成される。超音波接合ツールの先端には、凹凸構造が設けられている。超音波接合の際、その凹凸構造に対して相補的な関係を有する凹凸パターンが電極端子5の接合部5Aの上面に転写される。
【0023】
接合部5Aの下面は、回路パターン2Bに直接接合されている。言い換えると、接合部5Aの下面は、固相拡散接合によって、回路パターン2Bに接合されている。その接合部5Aの下面は、超音波接合によって回路パターン2Bに接合される。
【0024】
接合部5Aの上面に形成された加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。
【0025】
接合部5Aの厚みは、接合部5A以外の電極端子5の厚みよりも薄くてもよい。接合部5Aがその接合部5A以外の部分よりも薄いことにより、超音波接合が容易になるだけでなく、半導体装置101の動作時において接合部5Aに加わる応力が小さくなる。電極端子5は、ニッケルめっきなどの導電膜で覆われていてもよい。その導電膜は、接合部5Aを覆っていてもよいし、接合部5A以外の部分のみを覆っていてもよい。1つの半導体装置101内に、複数の電極端子5が設けられていてもよい。それら電極端子5および接合部5Aの幅および厚みは、電極端子5を流れる電流に応じて異なっていてもよい。
【0026】
導電ワイヤ6は、半導体素子3の表面電極(図示せず)、回路パターン2Bまたは電極端子5に、ワイヤボンディングによって固相接合されている。導電ワイヤ6の材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などである。導電ワイヤ6は、制御信号用ワイヤ、センス用ワイヤおよび大電流用ワイヤを含む。制御信号用ワイヤは、半導体素子3のゲートを駆動させるための信号を送るためのワイヤである。センス用ワイヤは、半導体装置101に組み込まれているサーミスタなどのセンサの電圧を測定するためのワイヤである。大電流用ワイヤは、ドレイン電極およびソース電極に大電流を流すためのワイヤである。センス用ワイヤには、許容電流を考慮して大電流用ワイヤとは異なる線径を有するワイヤが適用されてもよい。例えば、大電流用ワイヤには、直径200μm以上600μm以下のワイヤが使用される。センス用ワイヤには、直径50μm以上200μm以下のワイヤが使用される。一方で、生産性を考慮して、センス用ワイヤには、大電流用ワイヤの線径と同じ線形を有するワイヤが使用されてもよい。大電流を流すのに必要な断面積を確保するため、複数の大電流用ワイヤが並列配線されることが好ましい。導電ワイヤ6に代えて、電極端子5と同様の帯状の導体によって配線されてもよい。すなわち、帯状の導体が、はんだなどの導電性接合部材を介して、半導体素子3の電極、回路パターン2Bなどを接続してもよい。これは、いわゆるダイレクト・リード・ボンディングである。または、導電ワイヤ6に代えて、平たいリボン状の導電材によって配線されてもよい。これは、いわゆるリボンボンディングである。
【0027】
封止部材7は、ケース4の内側の空間に充填されている。封止部材7は、ベース板1の表面、絶縁基板2、半導体素子3、接合部5Aを含む電極端子5の一部および導電ワイヤ6を封止している。封止部材7は、絶縁性を有する樹脂で形成されている。その樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーンゲルなどである。その封止部材7の樹脂に、フィラーが分散されてもよい。
【0028】
図4は、実施の形態1における半導体装置101の製造方法を示すフローチャートである。図4に示される製造方法は、半導体装置101の製造工程のうち電極端子5と回路パターン2Bとの超音波接合工程に対応する。
【0029】
ステップS1において、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2B上に載置される。このステップS1において、接合部5Aの上面および下面は平坦面である。
【0030】
ステップS2において、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2Bに接合される。図5は、電極端子5の接合部5Aと回路パターン2Bとの超音波接合工程を示す図である。以下、超音波接合工程の詳細を説明する。
【0031】
このステップS2においては、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に押し付けられる。超音波接合ツール10の先端には、凹凸構造が設けられている。超音波接合ツール10と電極端子5の接合部5Aとの間に加えられる面圧は、超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が接合部5Aの上面に食い込む程度の大きさである。凹凸構造が接合部5Aの上面に食い込むことによって、超音波接合ツール10は電極端子5に係り合う。言い換えると、超音波接合ツール10と電極端子5の接合部5Aとは凹凸を介して引っ掛かり合う。その状態で、超音波ホーン11から超音波接合ツール10に超音波が印加され、超音波接合ツール10が振動する。その振動に応じて接合部5Aも振動し、接合部5Aの下面が回路パターン2Bに直接接合される。つまり、超音波によって、接合部5Aの下面が回路パターン2Bに固相拡散接合される。
【0032】
また、このステップS2においては、超音波接合ツール10の押し付けによって、超音波接合ツール10の凹凸構造に対して相補的な関係を有する凹凸パターンが、電極端子5の接合部5Aの上面に転写される。つまり、凹凸パターンを有する加圧痕5Bが形成される。超音波接合ツール10の先端の面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さい。実施の形態1における超音波接合ツール10の先端の面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。そのため、接合部5Aの上面に形成される加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さい。実施の形態1における加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。
【0033】
実施の形態1において、電極端子5の接合部5Aと回路パターン2Bとの接触面積は、超音波接合ツール10の先端と接合部5Aとの接触面積よりも大きい。超音波接合ツール10から加えられる応力は、接合部5Aと回路パターン2Bとの間で分散され、面圧の平均は小さくなる。そのため、回路パターン2Bの変形が防止される。
【0034】
次に、上記の半導体装置101の製造方法による超音波接合の結果を説明する。ここでは、条件A、条件Bおよび条件Cで超音波接合を行った結果を示す。以下、「接触面積の割合」とは、電極端子5の接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積に対する超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積の割合のことである。つまり、「接触面積の割合」とは、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積に対する加圧痕5Bの面積の割合に対応する。
【0035】
条件Aにおける「接触面積の割合」は70%である。
【0036】
条件Bにおける「接触面積の割合」は条件Aと同じであり70%である。ただし、条件Bにおいては、超音波接合ツール10と接合部5Aの上面との間に加えられる面圧が条件Aよりも小さい。
【0037】
条件Cにおける「接触面積の割合」は30%である。また、条件Cにおける超音波接合ツール10と接合部5Aの上面との間に加えられる面圧は、条件Aと同じである。
【0038】
図6は、超音波接合後の電極端子5の接合部5Aおよび回路パターン2Bの外観を示す図である。図6(a)は、条件Aにおける接合結果を示している。図6(b)は、条件Bにおける接合結果を示している。図6(c)は、条件Cにおける接合結果を示している。いずれの条件においても、電極端子5は銅で形成され、回路パターン2Bはアルミニウムで形成されている。
【0039】
図7は、電極端子5の接合部5Aと回路パターン2Bとの接合強度を示す図である。図7において、「ピール強度の比率」とは、電極端子5を真上方向に引っ張った際に接合部5Aと回路パターン2Bとの接合が破断するまでのピーク強度を規格化した値である。「ピール強度/接触幅の比率」とは、ピール強度を超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触幅で割った値を規格化した値である。
【0040】
条件Aにおいては、電極端子5が真上に引っ張り上げられた時のピール強度は十分である。しかし、図6(a)に示されるように、回路パターン2Bが大きく変形しており、電極端子5の側方からはみ出し、バリが発生している。この金属のバリが飛散した場合、半導体装置101の絶縁性能が低下する。また、変形後の回路パターン2Bは変形前の回路パターン2Bよりも薄くなる。そのため、超音波接合時に、回路パターン2Bの下側の絶縁層2Aに伝わる熱および応力が増大する。その結果、絶縁層2Aが破損しやすくなるため、半導体装置101の絶縁性能が低下する。
【0041】
条件Bにおいては、図6(b)に示されるように、条件Aよりも面圧が低下しているため、超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が電極端子5の上面に十分に転写されていない。言い換えると、超音波接合ツール10の電極端子5への食い込みが浅い。超音波によって超音波接合ツール10に加えられる振動が電極端子5に十分に伝わらず、超音波接合ツール10の先端は電極端子5の上面を滑る。そのため、電極端子5と回路パターン2Bとの間の摺動距離が小さくなる。その結果、図7に示されるように、接合強度が低下する。電極端子5の側方にバリは発生していないものの、ピール強度が条件Aの20%に低下している。
【0042】
条件Cにおいては、条件Aと面圧が同じであるため、図6(c)に示されるように、超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が電極端子5の上面に十分に転写されている。言い換えると、超音波接合ツール10の先端が電極端子5へ十分に食い込んでいる。また、回路パターン2Bの変形が抑えられている。図7に示されるように、ピール強度は、条件Aの60%に低下しているものの、ピール強度を超音波接合ツール10の幅で割った値は、条件Aと同じ値である。条件Bにおいては、接合面が疎な接合であるのに対して、条件Cにおいては、超音波接合ツール10によって加圧された部分の直下で、密な接合が形成されている。
【0043】
以上をまとめると、実施の形態1における半導体装置101は、回路パターン2Bおよび電極端子5を含む。回路パターン2Bは、導電性を有し、絶縁層2A上に設けられている。電極端子5は、回路パターン2Bに接合された接合部5Aを含む。電極端子5のビッカース硬さは、回路パターン2Bのビッカース硬さよりも大きい。接合部5Aの上面は、加圧痕5Bを含む。接合部5Aの下面は、回路パターン2Bに直接接合されている。接合部5Aの上面に形成された加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。
【0044】
このような半導体装置101においては、回路パターン2Bの硬度が電極端子5の硬度よりも小さい場合であっても、回路パターン2Bの変形が抑えられ、かつ、十分な接合強度が得られる。安定した超音波接合が可能となり、電極端子5と回路パターン2Bとの良好な接合状態が実現される。その結果、半導体装置101の絶縁性能が安定し、信頼性が向上する。
【0045】
超音波接合は、同種の金属だけでなく、異種金属の接合を可能にする。回路パターン2Bには、銅のほか、例えばアルミニウムが使用される。アルミニウムは、銅よりもビッカース硬さおよびヤング率が小さい。例えば、電極端子5が銅で形成され、回路パターン2Bがアルミニウムで形成されている場合、超音波接合ツール10から電極端子5への加圧によって、回路パターン2Bは変形しやすい。
【0046】
図8は、加圧痕5Bの面積が電極端子5の接合部5Aと回路パターン2Bとの接触面積の1/2よりも大きい状態を示す図である。つまり、図8は、超音波接合ツール10の先端と接合部5Aとの接触面積が、接合部5Aと回路パターン2Bとの接触面積の1/2よりも大きい状態を示している。この場合、回路パターン2Bの一部が、電極端子5の接合部5Aとの接触領域から外側に押し出され、金属のバリまたは粉塵となって飛散する。その結果、半導体装置101の絶縁性能が低下する。また、変形後の回路パターン2Bは変形前の回路パターン2Bよりも薄くなる。そのため、超音波接合時において、回路パターン2Bの下側の絶縁層2Aに伝わる熱および応力が増大する。その結果、絶縁層2Aが破損しやすくなるため、半導体装置101の絶縁性能が低下する。また、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に十分に食い込まない状態で加振された場合、超音波接合ツール10と電極端子5と間ですべりが生じる。超音波接合ツール10の振動が電極端子5に十分に伝わらず、電極端子5と回路パターン2Bとの間の摺動距離も小さくなる。そのため、接合強度が低下する。
【0047】
その一方で、実施の形態1においては、超音波接合ツール10の先端の面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。言い換えると、図3に示されるように、接合部5Aの上面に形成される加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。このような構成では、回路パターン2Bの変形が抑えられる。超音波接合ツール10の先端の凹凸構造を電極端子5に押し付けて、安定した超音波接合を行うことができる。
【0048】
図9は、実施の形態1の変形例における半導体装置101Aの構成を示す断面図である。図1に示されるベース板1および絶縁基板2は、導電性接合部材8によって接合されていた。ベース板1および絶縁層2Aは、図9に示されるように、1つの部品として一体型構造を有していてもよい。例えば、絶縁基板一体型ベース板1Aは、アルミニウムの溶湯を鋳型に流し込み、窒化アルミニウムなどのセラミックスと一体化させることによって形成される。
【0049】
<実施の形態2>
実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。図10は、実施の形態2における半導体装置102の製造方法における超音波接合工程を示す図である。半導体装置102は、複数の電極端子5を含む。図10には、2本の電極端子5が示されている。
【0050】
実施の形態2の半導体装置102の製造方法において、図4に示されるステップS1は、実施の形態1と同様である。
【0051】
ステップS2において、電極端子5の幅方向における超音波接合ツール10の先端の幅は、接合部5Aの幅よりも広い。電極端子5の幅方向とは、平面視において、電極端子5の延伸方向に対して直交する方向である。電極端子5の延伸方向にける超音波接合ツール10の先端の幅は、接合部5Aの幅よりも狭い。超音波接合ツール10の先端は、接合部5Aの幅方向においてその接合部5Aからはみ出した状態で、接合部5Aの上面に押し付けられる。超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。
【0052】
電極端子5の接合部5Aと回路パターン2Bとの接触面積は、超音波接合ツール10の先端と接合部5Aとの接触面積よりも大きい。超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が接合部5Aの上面に食い込むような応力で、超音波接合ツール10が接合部5Aに押し付けられた場合であっても、電極端子5と回路パターン2Bと間においてその応力は分散し面圧は小さくなる。そのため、回路パターン2Bの変形が防止される。
【0053】
また、超音波接合ツール10の振動方向は、平面視において、電極端子5の幅方向に対して直交する方向であることが好ましい。言い換えると、超音波接合ツール10の振動方向は、平面視において、超音波接合ツール10が電極端子5からはみ出している方向に対して直交する方向であることが好ましい。それによりバリの発生が減少する。
【0054】
超音波接合ツール10の押し付けによって、凹凸パターンを有する加圧痕5Bが、電極端子5の接合部5Aの上面に形成される。超音波接合ツール10の先端が接合部5Aからはみ出した状態で接合部5Aの上面に押し付けられるため、加圧痕5Bは、電極端子5の幅方向における接合部5Aの一端から他端まで形成される。言い換えると、加圧痕5Bは、その幅方向において、全域に形成されている。例えば、加圧痕5Bは平面視において矩形を有する。例えば、電極端子5の幅方向における加圧痕5Bの幅は、電極端子5の延伸方向における加圧痕5Bの幅よりも広い。加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。
【0055】
電極端子5の幅および厚みは、その電極端子5を流れる電流に応じて変更される。電極端子5の形状またはサイズごとに超音波接合ツール10を使い分ける製造方法においては、超音波接合ツール10の取り換え作業が発生する。または、複数の超音波接合装置を設置し、それら超音波接合装置の間の搬送工程が必要となる。いずれの製造方法も経済的ではない。実施の形態2における半導体装置102の製造方法によれば、1台の超音波接合装置における1種類の超音波接合ツール10によって、複数種類の電極端子5の超音波接合が可能である。
【0056】
回路パターン2Bと電極端子5とが異種金属で形成されており、回路パターン2Bのビッカース硬さが電極端子5のビッカース硬さよりも小さい場合であっても、1種類の超音波接合ツール10により、複数種類の電極端子5の超音波接合が可能である。
【0057】
<実施の形態3>
実施の形態3において、実施の形態1または2と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。図11は、実施の形態3における半導体装置の製造方法における超音波接合工程を示す図である。
【0058】
図4に示されるステップS1において、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2B上に載置される。図11(a)は、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2B上に載置された状態を示す断面図である。接合部5Aの上面および下面は平坦である。接合部5Aは、傾斜した側面5Cを有する。この傾斜した側面5Cは、次のステップS2において、超音波接合ツール10に接触する接合部5Aの上面の面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さくなるように形成されている。その傾斜した側面5Cは、超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下となるように形成されていることが好ましい。実施の形態3における接合部5Aは、断面視において、台形を有するが、接合部5Aの断面形状はそれに限定されるものではない。
【0059】
ステップS2において、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に押し付けられる。図11(b)は、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に押し付けられた状態を示す断面図である。接合部5Aが傾斜した側面5Cを有するため、超音波接合ツール10に接触する接合部5Aの上面の面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さい。ここでは、その超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が接合部5Aの上面に食い込むような応力で、超音波接合ツール10が接合部5Aに押し付けられた場合であっても、電極端子5と回路パターン2Bと間においてその応力は分散し面圧は小さくなる。そのため、回路パターン2Bの変形が防止される。
【0060】
超音波接合ツール10の押し付けによって、加圧痕5Bが、接合部5Aの上面に形成される。図11(c)は、加圧痕5Bが接合部5Aの上面に形成された状態を示す断面図である。加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。言い換えると、接合部5Aは、加圧痕5Bの面積が接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さくなるように、傾斜した側面5Cを有する。電極端子5に転写される加圧痕5Bは、超音波接合ツール10と最初に接触する部分には、はっきりと転写されるが、遅れて接触する部分には、薄く転写される。
【0061】
<実施の形態4>
実施の形態4において、実施の形態1から3のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。図12は、実施の形態4における半導体装置の製造方法における超音波接合工程を示す図である。
【0062】
図4に示されるステップS1において、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2B上に載置される。図12(a)は、電極端子5の接合部5Aが回路パターン2B上に載置された状態を示す断面図である。接合部5Aは、上面に段差5Dを有する。この段差5Dは、次のステップS2において、超音波接合ツール10に接触する接合部5Aの上面の面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さくなるように形成されている。その段差5Dは、超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下となるように形成されていることが好ましい。
【0063】
ステップS2において、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に押し付けられる。図12(b)は、超音波接合ツール10の先端が接合部5Aの上面に押し付けられた状態を示す断面図である。接合部5Aが上面に段差5Dを有するため、超音波接合ツール10に接触する接合部5Aの上面の面積が、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さい。ここでは、その超音波接合ツール10の先端と接合部5Aの上面との接触面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。超音波接合ツール10の先端の凹凸構造が接合部5Aの上面に食い込むような応力で、超音波接合ツール10が接合部5Aに押し付けられた場合であっても、電極端子5と回路パターン2Bと間においてその応力は分散し面圧は小さくなる。そのため、回路パターン2Bの変形が防止される。
【0064】
超音波接合ツール10の押し付けによって、加圧痕5Bが、電極端子5の接合部5Aの上面に形成される。図12(c)は、加圧痕5Bが接合部5Aの上面に形成された状態を示す断面図である。加圧痕5Bの面積は、接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積の1/2以下である。超音波接合後においても、段差5Dは残存していてもよいし、加圧痕5Bに埋もれていてもよい。段差5Dが残存している場合には、その電極端子5は、加圧痕5Bの面積が接合部5Aの下面と回路パターン2Bとの接触面積よりも小さくなるように、その上面に段差5Dを有する。電極端子5に転写される加圧痕5Bは、接合部5Aの上面のうち、超音波接合ツール10が最初に接触する部分には、はっきりと転写されるが、遅れて接触する部分には、薄く転写される。また、実施の形態4の半導体装置は、段差5Dに加えて、実施の形態3に示された傾斜した側面を有していてもよい。それにより、接合部5Aの上面のうち、遅れて接触する部分に形成される加圧痕5Bの面積が制御される。また、段差5Dは、電極端子5の幅方向に延伸するように形成されていてもよい。それにより、実施の形態2に示された半導体装置102が容易に実現可能である。
【0065】
<実施の形態5>
実施の形態5において、実施の形態1から4のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0066】
図13は、実施の形態5における電力変換システムの構成を示す機能ブロック図である。
【0067】
電力変換システムは、電源300、電力変換装置200および負荷400を含む。
【0068】
電源300は、直流電源である。電源300は、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源300は、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池などである。電源300は、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータであってもよい。電源300は、交流系統に接続された整流回路、AC/DCコンバータなどであってもよい。
【0069】
電力変換装置200は、電源300と負荷400との間に接続されている。実施の形態5における電力変換装置200は、三相インバータである。電力変換装置200は、電源300から供給された直流電力を交流電力に変換する。電力変換装置200は、その交流電力を負荷400に供給する。
【0070】
負荷400は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動する。実施の形態5における負荷400は、三相電動機である。その三相電動機は、特定の用途に限定されるものではない。三相電動機は、各種電気機器に搭載される。三相電動機は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベータ、空調機器などに搭載される。
【0071】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。電力変換装置200は、主変換回路110および制御回路120を含む。
【0072】
主変換回路110は、少なくとも1つの半導体装置100および駆動回路(図示せず)を含む。半導体装置100は、上記の実施の形態1から4のうちいずれかに示された半導体装置に対応する。
【0073】
半導体装置100は、2レベルの三相フルブリッジ回路(図示せず)を構成している。三相フルブリッジ回路は、6つのスイッチング素子(図示せず)および6つの還流ダイオード(図示せず)を含む。それらスイッチング素子および還流ダイオードのうち少なくとも1つの素子が、実施の形態1から4のうちいずれかに示された半導体装置に含まれる半導体素子3に対応する。
【0074】
三相フルブリッジ回路は、3つの上アームおよび3つの下アームを含む。上アームおよび下アームの各々は、1つのスイッチング素子と、そのスイッチング素子に逆並列に接続される1つの還流ダイオードとを含む。また、1つの上アームに含まれるスイッチング素子は、1つの下アームに含まれるスイッチング素子に直列に接続されており、それらは1組の上下アームを構成している。つまり、三相フルブリッジ回路は、3組の上下アームを含む。3組の上下アームは、三相フルブリッジ回路のU相、V相、W相にそれぞれ対応している。3組の上下アームの出力端子、すなわち主変換回路110の3つの出力端子は、負荷400に接続される。
【0075】
主変換回路110は、スイッチング素子のスイッチング動作によって、電源300から供給される直流電力を交流電力に変換する。主変換回路110は、出力端子を介して、その交流電力を負荷400に供給する。
【0076】
駆動回路は、半導体装置100に内蔵されていてもよいし、半導体装置100とは別に設けられていてもよい。駆動回路は、制御回路120から出力される制御信号に従い、主変換回路110のスイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成する。駆動回路は、その駆動信号を、半導体装置100のスイッチング素子の制御電極に供給する。
【0077】
駆動信号は、スイッチング素子をオン状態にするための信号、または、スイッチング素子をオフ状態にするための信号である。より詳細には、スイッチング素子がオン状態に維持される場合の駆動信号は、スイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)である。スイッチング素子がオフ状態に維持される場合の駆動信号は、スイッチング素子の閾値電圧よりも小さい電圧信号(オフ信号)である。
【0078】
制御回路120は、駆動回路を制御するための制御信号を駆動回路に出力する。その際、制御回路120は、負荷400に供給すべき電力に基づいて主変換回路110の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出して、制御信号を生成する。つまり、制御回路120は主変換回路110がPWM(Pulse Width Modulation)制御されるように制御信号を生成する。制御回路120は、駆動回路がオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号を出力するように、制御信号を駆動回路に出力する。このようにして、制御回路120は、負荷400に所定の電力が供給されるよう主変換回路110のスイッチング素子を制御する。
【0079】
このような電力変換装置200においては、実施の形態1から4のうちいずれかに示された半導体装置が主変換回路110に適用されるため、絶縁性能が安定し、信頼性が向上する。
【0080】
実施の形態5においては、電力変換装置200が2レベルの三相インバータである例が示されたが、電力変換装置200の構成はそれに限定されるものではない。例えば、電力変換装置200は、3レベルなどマルチレベルの電力変換装置であってもよい。または、電力変換装置200は、単相負荷に電力を供給するための単相のインバータであってもよい。負荷400が直流負荷である場合には、電力変換装置200は、DC/DCコンバータあるいはAC/DCコンバータであってもよい。負荷400が太陽光発電システム、蓄電システム等である場合には、電力変換装置200はパワーコンディショナーであってもよい。
【0081】
実施の形態5においては、負荷400が三相電動機である例が示されたが、負荷400の構成はそれに限定されるものではない。例えば、負荷400は、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理器、非接触式給電システムであってもよい。
【0082】
本開示は、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0083】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0084】
(付記1)
導電性を有し、絶縁層上に設けられている回路パターンと、
前記回路パターンに接合された接合部を含む電極端子と、を備え、
前記電極端子のビッカース硬さは、前記回路パターンのビッカース硬さよりも大きく、
前記接合部の上面は、加圧痕を含み、
前記接合部の下面は、前記回路パターンに直接接合されており、
前記接合部の前記上面に形成された前記加圧痕の面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積の1/2以下である、半導体装置。
【0085】
(付記2)
前記回路パターンに接合された半導体素子を、さらに備え、
前記電極端子は、帯状の導体であり、
前記接合部の前記下面は、固相拡散接合によって、前記回路パターンに接合されている、付記1に記載の半導体装置。
【0086】
(付記3)
前記加圧痕は、前記電極端子の幅方向における前記接合部の一端から他端まで形成されている、付記1または付記2に記載の半導体装置。
【0087】
(付記4)
前記接合部は、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、付記1から付記3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0088】
(付記5)
付記1から付記4のいずれか1項に記載の半導体装置を含み、電源から入力される電力を変換して負荷に出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御するための制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備える電力変換装置。
【0089】
(付記6)
導電性を有し、絶縁層上に設けられている回路パターンと、
前記回路パターンに接合された接合部を含む電極端子と、を備え、
前記接合部の上面は、加圧痕を含み、
前記接合部の下面は、前記回路パターンに直接接合されており、
前記接合部は、前記接合部の前記上面に形成された前記加圧痕の面積が前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積よりも小さくなるように、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、半導体装置。
【0090】
(付記7)
前記加圧痕の前記面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの前記接触面積の1/2以下である、付記6に記載の半導体装置。
【0091】
(付記8)
絶縁層上に設けられ導電性を有する回路パターン上に、電極端子の接合部を載置する工程と、
前記回路パターンに、前記電極端子の前記接合部を接合する工程と、を備え、
前記接合部を前記回路パターンに接合する前記工程は、
超音波接合ツールを前記接合部の上面に押し付ける工程と、
前記超音波接合ツールに超音波を印加し、前記超音波によって前記接合部の下面を前記回路パターンに直接接合する工程と、を含み、
前記回路パターンに前記接合部を載置する前記工程における前記接合部は、前記超音波接合ツールに接触する前記接合部の前記上面の面積が、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの接触面積よりも小さくなるように、傾斜した側面または前記上面に段差を有する、半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記9)
前記接合部を前記回路パターンに接合する前記工程は、
前記超音波接合ツールの押し付けによる加圧痕を前記接合部の前記上面に形成することを含み、
前記加圧痕の前記面積は、前記接合部の前記下面と前記回路パターンとの前記接触面積の1/2以下である、付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0093】
1 ベース板、1A 絶縁基板一体型ベース板、2 絶縁基板、2A 絶縁層、2B 回路パターン、2C 導体層、3 半導体素子、4 ケース、5 電極端子、5A 接合部、5B 加圧痕、5C 側面、5D 段差、6 導電ワイヤ、7 封止部材、8 導電性接合部材、9 導電性接合部材、10 超音波接合ツール、11 超音波ホーン、100 半導体装置、101 半導体装置、101A 半導体装置、102 半導体装置、110 主変換回路、120 制御回路、200 電力変換装置、300 電源、400 負荷。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13