(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165658
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】加速冷却装置の制御装置および加速冷却装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
C21D 11/00 20060101AFI20241121BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20241121BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20241121BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20241121BHJP
B21B 37/74 20060101ALI20241121BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20241121BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20241121BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20241121BHJP
C22C 38/58 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C21D11/00 101
B21B45/02 320S
B21B38/00 C
B21C51/00 E
B21B37/74 A
C21D11/00 105
C21D1/00 112L
C21D1/00 118B
C21D8/02 A
C22C38/00 301A
C22C38/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082023
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌史
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 健二
(72)【発明者】
【氏名】赤木 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 友希
【テーマコード(参考)】
4E124
4K032
4K034
4K038
【Fターム(参考)】
4E124AA01
4E124BB06
4E124BB07
4E124BB08
4E124EE12
4K032AA02
4K032AA04
4K032AA08
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA17
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA22
4K032AA23
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA01
4K032CA02
4K032CC04
4K032CD05
4K032CD06
4K032CF01
4K032CF02
4K034AA01
4K034AA02
4K034AA09
4K034BA05
4K034BA08
4K034CA01
4K034DA05
4K034DA06
4K034DB03
4K034DB04
4K034EA12
4K034EB01
4K034FA05
4K034FB02
4K034FB03
4K034FB07
4K034FB08
4K034FB09
4K038AA01
4K038AA05
4K038BA01
4K038CA03
4K038DA01
4K038DA03
4K038EA01
4K038EA03
4K038FA02
(57)【要約】
【課題】加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することができ、また、鋼板の大量製造時における材質安定性を向上することのできる加速冷却装置の制御装置および加速冷却装置の制御方法を提供する。
【解決手段】搬送中の鋼板7に対して加速冷却を行って鋼板7の温度を目標加速冷却停止温度まで低下させる加速冷却装置11の制御装置19であって、加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との関係と、加速冷却装置11に進入する前の時点における鋼板7の搬送方向Tで少なくとも二箇所以上の鋼板7の温度とに基づいて、鋼板7の温度の測定箇所における目標加速冷却停止温度と、目標加速冷却停止温度を実現するための測定箇所における加速冷却装置11での加速冷却条件とを決定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の鋼板に対して加速冷却を行って前記鋼板の温度を目標加速冷却停止温度まで低下させる加速冷却装置の制御装置であって、
加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との関係と、前記加速冷却装置に進入する前の時点における前記鋼板の搬送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度とに基づいて、前記鋼板の温度の測定箇所における前記目標加速冷却停止温度と、前記目標加速冷却停止温度を実現するための前記測定箇所における前記加速冷却装置での加速冷却条件とを決定する
加速冷却装置の制御装置。
【請求項2】
前記加速冷却装置に進入する前の時点とは、前記加速冷却装置に進入する際のことであり、
前記鋼板の温度は、前記加速冷却装置に進入する際の前記鋼板の表面温度である
請求項1に記載の加速冷却装置の制御装置。
【請求項3】
前記鋼板の温度は、前記搬送方向で前記加速冷却装置の上流側の熱間圧延装置の出側での前記鋼板の表面温度の実測値と、前記実測値と前記搬送方向で前記加速冷却装置と前記熱間圧延装置との間の距離とに基づいて推定した推定値との少なくともいずれか一方である
請求項1に記載の加速冷却装置の制御装置。
【請求項4】
前記鋼板の温度は、前記搬送方向で前記加速冷却装置の上流側の熱間圧延装置の出側での前記鋼板の表面温度の実測値と、前記実測値と前記搬送方向で前記加速冷却装置と前記熱間圧延装置との間の距離とに基づいて推定した推定値との少なくともいずれか一方である
請求項2に記載の加速冷却装置の制御装置。
【請求項5】
前記鋼板の搬送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度とは、前記鋼板の搬送方向で前記鋼板の先端、中央、尾端のうちの少なくとも二箇所である
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の加速冷却装置の制御装置。
【請求項6】
前記加速冷却装置は、前記鋼板に対して冷却流体を供給する複数の冷却ユニットを備え、
前記加速冷却条件は、前記加速冷却装置での前記鋼板の搬送速度と、前記加速冷却装置で前記鋼板に対して前記冷却流体を供給する前記冷却ユニットの数とを含む請求項1ないし4のいずれか一項に記載の加速冷却装置の制御装置。
【請求項7】
搬送中の鋼板に対して加速冷却を行って前記鋼板の温度を目標加速冷却停止温度まで低下させる加速冷却装置の制御方法であって、
前記加速冷却装置に進入する前の時点における前記鋼板の搬送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度を求める温度測定工程と、
加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との関係と、前記鋼板の温度とに基づいて、前記鋼板のうちの前記温度の測定箇所における前記目標加速冷却停止温度と、前記目標加速冷却停止温度を実現するための前記温度の測定箇所における前記加速冷却装置での加速冷却条件とを決定する加速冷却条件決定工程とを備える
加速冷却装置の制御方法。
【請求項8】
前記鋼板の温度を前記加速冷却停止温度まで低下させた直後、もしくは、前記鋼板の温度を前記目標加速冷却停止温度まで低下させ、さらに空冷した後に前記鋼板に焼き戻しを行う
請求項7に記載の加速冷却装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速冷却装置の制御装置および加速冷却装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延後に加速冷却を行う高強度厚鋼板の製造方法は、従来の製造方法と比較して厚鋼板の合金元素を削減でき、さらに熱処理を省略できる、もしくは熱処理の実施回数を減らせるといった利点があり、広く適用されている。加速冷却の方式としては、熱間圧延後の厚鋼板を先端から尾端にかけて加速冷却装置に連続的に進入させ、当該厚鋼板の上下面に対して水を噴射して冷却する通過型と称する加速冷却方式が一般的である。通過型の加速冷却方式は、厚鋼板全体が加速冷却装置に完全に進入してから加速水冷を開始する一斉噴射型と称する加速冷却方式と比較して加速冷却装置を小型化できる。しかしながら、厚鋼板の長手方向での厚鋼板の加速冷却開始温度が一定でないことが要因となって、通過型の加速冷却方式では、厚鋼板の長手方向に材質ばらつきを生じる可能性がある。なお、一般的に、製造能率や厚鋼板の強度低下抑制の観点から、熱間圧延完了後の厚鋼板を加速冷却装置まで最短距離で搬送し、その後直ちに厚鋼板に対して加速冷却が開始される。
【0003】
このような課題を解決するために、熱間圧延後に加速冷却を行う厚鋼板の製造方法について種々の検討が行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、制御冷却鋼板の製造方法が記載されている。その方法では、熱間圧延から制御冷却(上述した加速冷却に相当する。以下、加速冷却と記す。)を行うまでの間に、シャワー冷却設備によって加速冷却前の厚鋼板の全長に亘って緩冷却する。特許文献2には、高強度鋼板の製造方法が記載されており、その方法では、加速冷却後に誘導加熱による焼き戻し処理を行う。特許文献3および4には、鋼板の冷却制御方法が記載されている。その方法では、鋼板の加速冷却を行う通過型の冷却装置の内部に設置した温度計によって測定した鋼板の温度に基づいて、冷却装置における鋼板の通板速度を調整する。特許文献5には、鋼板の冷却制御方法が記載されている。その方法では、鋼板の加速冷却を行う通過型の冷却装置において、鋼板の通板方向で冷却装置の前後に温度計を配置し、それらの温度計によって測定した鋼板の温度に基づいて、冷却装置における鋼板の通板速度を調整する。特許文献6には、鋼板の加速冷却を行う通過型の冷却装置の冷却制御方法が記載されている。その方法では、鋼板の長手方向に分割した領域毎に、加速冷却開始温度を測定し、各領域の加速冷却停止温度が目標加速冷却停止温度となるように、上記の測定した加速冷却開始温度に基づいて、通過型の加速冷却装置での搬送速度を調整する。特許文献7には、熱延鋼材の材質ばらつき低減方法が記載されている。その方法では、熱延鋼板を製造するに際し、過去に製造した熱延鋼板ごとの鋼板成分、操業条件、材質実績値を含むデータを蓄積する。そして、蓄積したデータと、現時点で製造しようとする熱延鋼板の鋼板成分、操業条件を含む要求仕様とに基づいて、現時点で製造しようとする熱延鋼板を製造したときの材質を推定する。また、材質の推定値及び推定誤差に基づいて要求仕様を満足する操業条件を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-57330号公報
【特許文献2】特開2005-120409号公報
【特許文献3】特開2006―272395号公報
【特許文献4】特開2006-281300号公報
【特許文献5】特開2010-167503号広報
【特許文献6】特開2010-247234号公報
【特許文献7】特開2006-239696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、シャワー冷却設備を必要とするだけでなく、加速冷却前に実施する緩冷却により厚鋼板の強度が低下して高強度化を達成できない可能性がある。また、特許文献1の方法では、加速冷却開始温度のばらつきを抑制できないため、加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制できない可能性がある。なお、特許文献2においても、特許文献1と同様の課題がある。
【0007】
特許文献3および4の各方法は、加速冷却中に鋼板の表面温度を測定して厚鋼板の加速冷却停止温度の精度を向上するものであって、加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することはできない可能性がある。特許文献5の方法では、鋼板の先端の冷却を終了してから加速冷却条件を調整するため、鋼板の全長が長い、もしくは、加速冷却装置の全長が短い場合にしか適用できない可能性がある。また、特許文献5の方法は、鋼板の加速冷却停止温度の精度を向上するものであって、加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することはできない。特許文献6の方法は、厚鋼板の加速冷却停止温度の精度を向上するものであって、加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することはできない可能性がある。特許文献7の方法では、厚鋼板の加速冷却開始温度や加速冷却停止温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することができない可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、加速冷却開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制することができ、また、鋼板の大量製造時における材質安定性を向上することのできる加速冷却装置の制御装置および加速冷却装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、
(1)搬送中の鋼板に対して加速冷却を行って前記鋼板の温度を目標加速冷却停止温度まで低下させる加速冷却装置の制御装置であって、加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との関係と、前記加速冷却装置に進入する前の時点における前記鋼板の搬送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度とに基づいて、前記鋼板の温度の測定箇所における前記目標加速冷却停止温度と、前記目標加速冷却停止温度を実現するための前記測定箇所における前記加速冷却装置での加速冷却条件とを決定する加速冷却装置の制御装置。
(2)前記加速冷却装置に進入する前の時点とは、前記加速冷却装置に進入する際のことであり、前記鋼板の温度は、前記加速冷却装置に進入する際の前記鋼板の表面温度である(1)に記載の加速冷却装置の制御装置。
(3)前記鋼板の温度は、前記搬送方向で前記加速冷却装置の上流側の熱間圧延装置の出側での前記鋼板の表面温度の実測値と、前記実測値と前記搬送方向で前記加速冷却装置と前記熱間圧延装置との間の距離とに基づいて推定した推定値との少なくともいずれか一方である(1)に記載の加速冷却装置の制御装置。
(4)前記鋼板の温度は、前記搬送方向で前記加速冷却装置の上流側の熱間圧延装置の出側での前記鋼板の表面温度の実測値と、前記実測値と前記搬送方向で前記加速冷却装置と前記熱間圧延装置との間の距離とに基づいて推定した推定値との少なくともいずれか一方である(2)に記載の加速冷却装置の制御装置。
(5)前記鋼板の搬送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度とは、前記鋼板の搬送方向で前記鋼板の先端、中央、尾端のうちの少なくとも二箇所である(1)ないし(4)のいずれかに記載の加速冷却装置の制御装置。
(6)前記加速冷却装置は、前記鋼板に対して冷却流体を供給する複数の冷却ユニットを備え、前記加速冷却条件は、前記加速冷却装置での前記鋼板の搬送速度と、前記加速冷却装置で前記鋼板に対して前記冷却流体を供給する前記冷却ユニットの数とを含む(1)ないし(4)のいずれかに記載の加速冷却装置の制御装置。
(7)搬送中の鋼板に対して加速冷却を行って前記鋼板の温度を目標加速冷却停止温度まで低下させる加速冷却装置の制御方法であって、前記加速冷却装置に進入する前の時点における前記鋼板の搬 送方向で少なくとも二箇所以上の前記鋼板の温度を求める温度測定工程と、加速冷却開始温度と加速冷却停止温度との関係と、前記鋼板の温度とに基づいて、前記鋼板のうちの前記温度の測定箇所における前記目標加速冷却停止温度と、前記目標加速冷却停止温度を実現するための前記温度の測定箇所における前記加速冷却装置での加速冷却条件とを決定する加速冷却条件決定工程とを備える加速冷却装置の制御方法。
(8)前記鋼板の温度を前記加速冷却停止温度まで低下させた直後、もしくは、前記鋼板の温度を前記目標加速冷却停止温度まで低下させ、さらに空冷した後に前記鋼板に焼き戻しを行う(7)に記載の加速冷却装置の制御方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、船舶、橋梁、建築、海洋構造物、ラインパイプなどに用いられる、加速冷却を適用した鋼板(高強度鋼板と称される。)の材質均一性、および、大量製造時の材質安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る加速冷却装置を備えた厚鋼板製造ラインの一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る加速冷却装置の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る加速冷却装置を備えた厚鋼板製造ラインの一例を示す図である。
図1に示す厚鋼板製造ライン1は、加熱炉2で加熱されたスラブ3を搬送装置4によって第1圧延機5、第2圧延機6の順に搬送し、各圧延機5、6でスラブ3を段階的に熱間圧延して厚鋼板(以下、単に鋼板と記す。)7を製造するようになっている。搬送装置4は
図1に示す例では、複数の搬送ロールによって構成されている。第1圧延機5は粗圧延機であって、所定の厚さまでスラブ3を粗圧延するようになっている。第2圧延機6は仕上げ圧延機であって、第1圧延機5で粗圧延されたスラブ3を製品厚さまで圧延して鋼板7を製造するようになっている。なお、上記の各圧延機5、6が、本発明の実施形態における熱間圧延装置に相当している。鋼板7は搬送装置4での搬送方向Tに沿って延びている。したがって、鋼板7の搬送方向Tと鋼板7の長さ方向とはほぼ平行になっている。
【0013】
鋼板7の搬送方向Tで第2圧延機6の入側に第1温度計8が設置されており、第2圧延機6の出側に第2温度計9が設置されている。それらの温度計8、9は鋼板7の表面温度を測定できるものであれば従来知られたいずれのものであってもよいが、放射温度計などの非接触式の温度計であることが好ましい。
【0014】
鋼板7の搬送方向Tで第2圧延機6の下流側に第1レベラー10が設けられている。第1レベラー10は各圧延機5、6で圧延された鋼板7の形状を矯正するものであって、従来知られたレベラーであってよい。
【0015】
第1レベラー10の出側に、鋼の変態温度域において、冷却速度を制御して所定の加速冷却停止温度(以下、単に停止温度と記す。)まで鋼板7を冷却する加速冷却装置11が第1レベラー10に接近して設けられている。加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度と、第2圧延機6から出て加速冷却装置11に搬送される鋼板7の搬送速度とには速度差がある。そのため、加速冷却装置11に進入する際つまり直前の鋼板7の表面温度を測定するために、第1レベラー10の入側に第3温度計12が設けられている。加速冷却装置11に進入する直前の鋼板7の表面温度が加速冷却開始温度(以下、単に開始温度と記す。)となっている。また、本発明の実施形態では、第3温度計12によって加速冷却装置11に進入する直前の鋼板7の表面温度を鋼板7の搬送方向Tあるいは鋼板7の長さ方向で複数個所、測定するようになっている。なお、第3温度計12は、第1温度計8や第2温度計9と同様に、非接触式の温度計であることが好ましい。
【0016】
図2は、加速冷却装置11の構成の一例を示す図である。
図2に示す加速冷却装置11は通過型と称される加速冷却装置であって、その内部に鋼板7の長さ方向で当該鋼板7の先端から尾端にかけて連続的に進入させるようになっている。そして、鋼板7の上面と下面とのそれぞれに対して冷却流体を噴射して、後述するように設定した停止温度まで鋼板7を冷却するようになっている。上記の冷却流体は、液相の冷却水であってよい。
【0017】
加速冷却装置11は、鋼板7の上面に向けて冷却水を噴射する複数の上部ヘッダユニット13、14と、鋼板7の下面に向けて冷却水を噴射する複数の下部ヘッダユニット15、16とを備えている。なお、
図2には、図面を簡単にするために、一対の上部ヘッダユニット13、14と、2つの下部ヘッダユニット15、16とを記載してある。上記の各ヘッダユニットが、本発明の実施形態における冷却ユニットに相当している。
【0018】
第1上部ヘッダユニット13は、加速冷却装置11の高さ方向Hで鋼板7の上側に位置しており、かつ、搬送方向Tで第2上部ヘッダユニット14の上流側に所定の間隔をあけて配置されている。第1上部ヘッダユニット13は例えば円管からなる複数の第1上ノズル13Aを有している。それらの第1上ノズル13Aは、
図2に示すように、鋼板7の上面に対して搬送方向Tで上流側から下流側に向かって角度を付けて冷却水を噴射するように、鋼板7の上面に対して予め定めた角度、傾斜して設けられている。
【0019】
第2上部ヘッダユニット14は、加速冷却装置11の高さ方向Hで鋼板7の上側に位置しており、また、例えば円管からなる複数の第2上ノズル14Aを有している。それらの第2上ノズル14Aは、
図2に示すように、鋼板7の上面に対して、搬送方向Tで下流側から上流側に向かって角度を付けて冷却水を噴射するように鋼板7の上面に対して予め定めた角度、傾斜して設けられている。このように各上部ヘッダユニット13、14は、加速冷却装置11の内部における設計上、定めた箇所に向かって冷却水をそれぞれ噴射するようになっている。
【0020】
鋼板7と第1上部ヘッダユニット13から噴射された冷却水との衝突位置の反対側に、第1下部ヘッダユニット15が設けられている。第1下部ヘッダユニット15は例えば円管からなる複数の第1下ノズル15Aを有しており、それらの第1下ノズル15Aは加速冷却装置11の高さ方向Hに沿って延びている。なお、上述した衝突位置の反対側に、第1下部ヘッダユニット15を配置できるように、前記衝突位置の反対側において、互いに隣接する搬送ロール同士の間隔が設定されている。
【0021】
鋼板7と第2上部ヘッダユニット14から噴射された冷却水との衝突位置の反対側に、第2下部ヘッダユニット16が設けられている。第2下部ヘッダユニット16は例えば円管からなる複数の第2下ノズル16Aを有しており、それらの第2下ノズル16Aは加速冷却装置11の高さ方向Hに沿って延びている。なお、上述した衝突位置の反対側に、第2下部ヘッダユニット16を配置できるように、前記衝突位置の反対側において、互いに隣接する搬送ロール同士の間隔が設定されている。
【0022】
図1の説明に戻る。加速冷却装置11の出側に第4温度計17が設けられている。第4温度計17によって加速冷却装置11で加速冷却された鋼板7の表面温度を測定するようになっている。なお、第4温度計17は、上述した各温度計8、9、12と同様に、非接触式の温度計であることが好ましい。
【0023】
鋼板7の搬送方向Tで第4温度計17の下流側に第2レベラー18が設けられており、第2レベラー18によって加速冷却に起因する鋼板7の形状変形を矯正するようになっている。第2レベラー18は、第1レベラー10と同様に、従来知られたレベラーであってよい。なお、第2レベラー18の下流側に図示しない焼き戻し装置が設けられており、焼き戻し装置によって鋼板7の硬度が調整される。焼き戻し装置は従来知られた誘導加熱タイプの焼き戻し装置であってよい。
【0024】
そして、加速冷却装置11での鋼板7の冷却量すなわち鋼板7の開始温度と停止温度との差を制御する電子制御装置(以下、ECUと記す。)19が設けられている。ECU19はマイクロコンピュータを主体として構成されており、入力されるデータ、および、予め記憶されたデータや演算式に基づいて演算を行う。そして、演算結果を制御指令信号として加速冷却装置11や搬送装置4に出力するようになっている。ECU19に入力されるデータとしては、例えば、各温度計8、9、12で測定した鋼板7の表面温度、各圧延機5、6での鋼板7の搬送速度、加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度を挙げることができる。ECU17から出力される制御指令信号としては、例えば、加速冷却装置11で鋼板7に冷却水を噴射する各上部ヘッダユニット13、14の数を制御する信号、各下部ヘッダユニット15、16の数を制御する信号、および、加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度を制御する信号を挙げることができる。
【0025】
ここで、加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度と、第2圧延機6から出て加速冷却装置11に搬送される鋼板7の搬送速度との速度差について説明する。加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度は、第2圧延機6から出て加速冷却装置11に搬送される鋼板7の搬送速度よりも遅い。そのため、鋼板7の長さ方向で鋼板7の先端は第2圧延機6から出てその温度をほぼ維持した状態で加速冷却装置11に進入することができる。しかしながら、鋼板7の長さ方向で鋼板7の中央や尾端は、加速冷却装置11で先端が冷却されているときに、第2圧延機6と加速冷却装置11との間の搬送装置4上で外気に曝され、空冷されている状態で待機することになってしまう。そのため、鋼板7の中央や尾端は、先端よりも温度が低下した状態で加速冷却装置11に進入される。したがって、鋼板7の中央や尾端は、それらの各開始温度が先端の開始温度よりも低下した状態で加速冷却が開始され、その結果、鋼板7の長さ方向で材質ばらつきが生じてしまう可能性がある。そこで、本発明の実施形態では、鋼板7の長さ方向での開始温度のばらつきに起因した材質ばらつきを抑制するために、以下に説明する制御を実行するように構成されている。
【0026】
図3は、本発明に係る加速冷却装置11の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図3に示す制御例は、厚鋼板製造ライン1の運転時における所定の短時間ごとにECU19で繰り返し実行される。先ず、製品として出荷する鋼板(以下、製品鋼板と記す。)についての設計条件がECU19に入力され、設計条件に基づいて製品鋼板を得るための加速冷却装置11での開始温度と停止温度との関係が算出される(ステップS1)。上述した設計条件としては、例えば、製品鋼板の目標化学成分、目標板厚、第2圧延機6を出た直後の鋼板7の目標表面温度、焼き戻し方法および目標焼き戻し温度を挙げることができる。これらの値は製品鋼板の設計値として予め決定される。
【0027】
上述した開始温度と停止温度との関係は、例えば先ず、同一化学成分、同一板厚、同一加熱温度、同一圧延終了温度を狙った鋼板の製造結果を複数、取得する。それらの製造結果の中から、例えば、引張試験結果がほぼ一定の製造結果を選択し、選択した製造結果の開始温度と停止温度とを求める。そして、こうして求めた開始温度と停止温度との関係つまり検量線を算出する。あるいは、これに代えて、ディープラーニングなどの機械学習モデルを用いて開始温度と停止温度との関係を求めてもよい。
【0028】
ステップS1に続いて、あるいは、ほぼ同時に、加速冷却装置11に進入する際の鋼板7の長さ方向での少なくとも二箇所以上の温度が開始温度として取得され(ステップS2)、ステップS2で取得された開始温度がECU19に入力される。上述したステップS2が本実施形態の温度測定工程に相当している。
【0029】
上記の加速冷却装置11に進入する際とは、加速冷却装置11に鋼板7が進入する時点、あるいは、その直前を意味している。また、鋼板7の長さ方向での少なくとも二箇所とは、鋼板7の長さ方向に互いに異なる少なくとも二箇所を意味している。より具体的には、鋼板7の長さ方向で先端、中央部、尾端のうちの少なくとも二箇所を意味している。本発明の実施形態では、上記の三箇所の温度を第3温度計12によって測定し、それらの測定値のうちの少なくとも二つ以上の測定値を前記温度の測定箇所での開始温度とすることが好ましい。上述した開始温度は第3温度計12による実測値であってよい。もしくは、開始温度は第2圧延機6を出た直後において、第2温度計9によって測定した鋼板7の表面温度からの推定値であってもよい。その推定値は例えば、外気温、第2圧延機6と加速冷却装置11との間の距離、第2圧延機6を出てから加速冷却装置11に進入するまでの時間などに基づいて算出することができる。
【0030】
次いで、ステップS2で取得した各開始温度の実測値や推定値に対応する停止温度がそれぞれ算出される(ステップS3)。具体的には、
図3のステップS3に、ステップS1で算出した開始温度と停止温度との関係を示す検量線を記載してあり、その検量線を使用して、ステップS2で取得した開始温度に対応する停止温度が算出される。こうして算出された停止温度が、上述した開始温度を実測もしくは推定した箇所における停止温度の目標値(以下、目標停止温度と記す。)であり、これが加速冷却装置11に設定される。本発明の実施形態では、
図3のステップS3に示すように、鋼板7の先端、中央部、尾端の順にそれらの開始温度が低くなっており、先端、中央部、尾端の順に停止温度がそれぞれ低くなる。なお、目標停止温度は鋼板全体について求めてもよいが、計算負荷低減の観点から、上述したように、鋼板7の温度を実測もしくは推定した箇所について求めることが好ましい。上記の目標停止温度が、本発明の実施形態における目標加速冷却停止温度に相当している。
【0031】
ステップS3に続いて、鋼板7の先端について、開始温度から目標停止温度まで冷却するための加速冷却条件(以下、単に冷却条件と記す。)が決定される(ステップS4)。具体的には、ステップS4では、前記先端の加速冷却に使用する上部ヘッダユニットの数および下部ヘッダユニットの数が決定される。各ヘッダユニットから鋼板7に噴射される冷却水の量はほぼ一定である。そのため、例えば、開始温度から目標停止温度まで鋼板7の先端の温度を低下させることのできる冷却水の噴射量、すなわち、各ヘッダユニットの数が決定される。例えば、開始温度と停止温度との温度差と、上部ヘッダユニットの数および下部ヘッダユニットの数との関係を定めたマップやテーブルを予め用意しておき、そのマップやテーブルを使用して上述した各ヘッダユニットの数を求めることができる。なお、加速冷却装置11に設けられている上部ヘッダユニットの数、下部ヘッダユニットの数は、設計上、決まっている。そのため、加速冷却装置11に設けられている上部ヘッダユニットの数、下部ヘッダユニットの数を上限として、前記先端の加速冷却に使用する上部ヘッダユニットの数および下部ヘッダユニットの数が決定される。
【0032】
ステップS4に続いて、あるいは、ほぼ同時に、加速冷却装置11で鋼板7の先端を加速冷却するときの鋼板7の搬送速度が決定される(ステップS5)。ステップS5で先端の搬送速度が決定すると、それに伴って、加速冷却装置11を先端が通過する時間が決まる。これにより、先端の冷却速度が決まる。なお、先端の搬送速度は、例えば、開始温度と停止温度との温度差と、上部ヘッダユニットの数および下部ヘッダユニットの数と、加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度との関係を定めたマップやテーブルを予め用意しておき、そのマップやテーブルを使用して求めることができる。
【0033】
ステップS5に続いて、鋼板7の中央部、尾端の冷却条件として鋼板7の中央部や尾端で所期の金属組織や強度を得るために適した搬送速度がそれぞれ決定される(ステップS6)。これは、上述したように、加速冷却装置11において、使用する上部ヘッダユニットの数、および、下部ヘッダユニットの数は既に決定されているためである。鋼板7の中央部や尾端の各搬送速度は例えば、開始温度と停止温度との温度差と、上部ヘッダユニットの数および下部ヘッダユニットの数と、加速冷却装置11での鋼板7の搬送速度の関係を定めたマップやテーブルを予め用意する。そして、そのマップやテーブルを使用して求めることができる。こうして鋼板7の中央部や尾端の搬送速度が決定すると、それに伴って、加速冷却装置11を中央部や尾端が通過する時間が決まる。これに基づいて、中央部や尾端の冷却速度が決まる。なお、鋼板7の先端、中央部、尾端の各冷却速度は互いに異なる場合がある。
【0034】
ステップS6に続いて、搬送速度の設備制約が取得される(ステップS7)。ここで、設備制約とは、加速冷却装置11に起因する搬送速度の制限値を意味している。具体的には、加速冷却装置11の設計上、決まっている搬送速度の上限値や下限値、加速度の上限値や下限値を意味している。あるいは、メンテナンスなどに起因して搬送速度の上限値や下限値、加速度の上限値や下限値が制限されている場合には、それらの値を意味している。このような制限値は図示しない記憶部にデータとして保存されており、それらのデータがECU19に入力される。
【0035】
ステップS7に続いて、各ステップS5、S6で決定した各搬送速度がステップS7で取得した制限値以下であるか否かが判断される(ステップS8)。各搬送速度が制限値を超える場合には、すなわち、設備上の制約があって、各ステップS5、S6で決定した各搬送速度を設定できない場合には、ステップS8で否定的に判断されてステップS9に進む。ステップS9では、加速冷却装置11で鋼板7の加速冷却に使用する各ヘッダユニットの数が変更される。その後、ステップS5に進み、従前の制御が実行される。
【0036】
これに対して、各搬送速度が制限値以下の場合には、ステップS8で肯定的に判断されてステップS10に進む。ステップS10では、ステップS4で決定した各ヘッダユニットの数、および、各ステップS5、S6で決定した各搬送速度が、目標停止温度を実現するための鋼板7の冷却条件として決定される。そして、加速冷却装置11に前記冷却条件が設定され、前記冷却条件で加速冷却装置11が作動され、鋼板7が加速冷却される。その後、
図3にフローチャートで示す制御を一旦終了する。上述したステップS3ないしステップS10が本実施形態の加速冷却条件決定工程に相当している。
【0037】
このように、本発明の実施形態に係る加速冷却装置11の制御装置では、鋼板7の先端、中央、尾端のうち、少なくとも二箇所以上で、加速冷却装置11に進入する鋼板7の表面温度(開始温度)を実測し、あるいは、推定する。そして、それらの開始温度に応じた停止温度を設定する。そのため、開始温度のばらつきが避けられないとしても、開始温度に応じた停止温度を設定するため、上述した各部分でほぼ同様の加速冷却を行うことができる。その結果、開始温度のばらつきに起因した鋼板7の長さ方向での材質ばらつきを抑制することができる。これにより、加速冷却された鋼板7の材質均一性、および、鋼板7の大量製造時における材質安定性を向上することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、鋼板7の先端、中央、尾端の三箇所の温度を測定したが、これに代えて、温度の測定箇所は鋼板7の先端、中央、尾端のうち、少なくとも二箇所以上であればよい。例えば、鋼板7の先端と中央、先端と尾端、中央と尾端であってもよい。これらの場合であっても、従来と比較して、開始温度のばらつきに起因した鋼板7の長さ方向での材質ばらつきを抑制することができる。すなわち、上述した実施形態とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、加速冷却装置11の各ヘッダユニットから鋼板7に噴射される冷却水の量を変更可能に構成し、当該冷却水の量を冷却条件に含めてもよい。
【実施例0039】
次に、本発明の実施形態に係る加速冷却装置11の制御装置の作用および効果を確認するために行った実施例について説明する。この実施例では、
図1に示す厚鋼板製造ラインと同様の厚鋼板製造ラインを用いて厚鋼板の製造を行った。すなわち、表1に示す化学成分を有するスラブを連続鋳造法により製造した。
【0040】
【0041】
(発明例1~10)
加熱炉に上述したスラブを装入後、第1圧延機および第2圧延機で熱間圧延を行った。第2圧延機での圧延終了直後において、鋼板の板幅方向で鋼板の中央部の表面温度を第2温度計によって測定した。当該鋼板は直ちに第1レベラーの前まで搬送し、第3温度計によって鋼板の長さ方向で鋼板の表面温度を複数、測定した。具体的には、第1レベラーおよび加速冷却装置に鋼板を連続的に進入させながら(搬送しながら)第3温度計によって鋼板の長さ方向で鋼板の先端、中央、尾端のうちの少なくとも二箇所の表面温度を実測した。それらの実測値を鋼板の開始温度として使用し、
図3にフローチャートで示す制御を行って鋼板の冷却条件を決定した。すなわち、上述した本発明の実施形態と同様に、開始温度に応じて停止温度を変更した。そして、前記冷却条件で加速冷却装置を作動させて鋼板の加速冷却を行った。
【0042】
加速冷却後においては、鋼板を十分に復熱し、例えば、50秒以上空冷した。その後の第2レベラーに連続的に進入させながら(搬送しながら)鋼板の表面温度を第4温度計で測定し、更に空冷した。
【0043】
(発明例11~20)
第2温度計によって測定した鋼板の板幅方向で鋼板の中央部の表面温度を使用して、加速冷却装置に進入する鋼板の表面温度を推定した以外は、発明例1~10と同様に鋼板を製造した。
【0044】
(発明例21~30)
鋼板の先端、中央、尾端のうち、先端および尾端の温度を測定し、第2レベラーを通過した後に、誘導加熱装置で焼き戻しを行った以外は発明例1~10と同様に鋼板を製造した。
【0045】
(発明例31~40)
第2レベラーを通過した後に、誘導加熱装置で焼き戻しを行った以外は発明例11~20と同様に鋼板を製造した。
【0046】
(発明例41~50)
誘導加熱装置に代えて加熱炉で焼き戻しを行った以外は発明例31~40と同様に鋼板を製造した。
【0047】
(比較例1~10)
開始温度に関わらず、停止温度を予め決定した温度に設定して加速冷却装置において、鋼板の加速冷却を行った。また、第2レベラーの直後に設置した誘導加熱装置で焼き戻しを行った後に空冷した。それら以外は発明例1~10と同様にして鋼板を製造した。
【0048】
(比較例11~20)
鋼板の先端についてのみ、
図3にフローチャートで示す制御によって冷却条件を決定し、当該冷却条件で加速冷却を行った以外は比較例1~10と同様にして鋼板を製造した。
【0049】
(比較例21~30)
第2レベラーを通過した後に、誘導加熱装置で焼き戻しを行った以外は比較例1~10と同様に鋼板を製造した。
【0050】
(比較例31~40)
誘導加熱装置に代えて加熱炉で焼き戻しを行った以外は比較例21~30と同様に鋼板を製造した。
【0051】
(材質の評価)
材質の評価は、引張試験で行った。引張試験片の採取位置は、鋼板の先端から250mmの箇所と、鋼板の中央部、鋼板の尾端から250mmの箇所との3箇所とした。いずれの箇所においても、鋼板の板幅方向で中央部から引張試験片を採取した。引張試験片の採取および引張試験はASTM A370に準拠して実施した。
【0052】
発明例1~50、比較例1~40の各鋼板について、上述したように、鋼板の長さ方向で3箇所から試験片を採取し引張試験を行って引張強度を求めた。それらの引張強度の標準偏差を算出し、その標準偏差の6倍が60MPa以下の場合を合格とし、それ以外を不合格とした。
【0053】
表2に、発明例1~50、比較例1~40の各停止温度の決定方法、各鋼板の製造条件、および、各鋼板について引張強度、引張強度の標準偏差を6倍にした値を記載してある。
図3にフローチャートで示す制御によって停止温度を決定した発明例や比較例については、表2における目標加速冷却停止温度決定方法の欄に「ロジック」と記載してある。製造条件は、スラブの加熱温度、最終圧延温度つまり第2温度計の実測値、加速冷却装置での開始温度、目標停止温度、停止温度の実測値つまり第4温度計の実測値、焼き戻し方法、および、焼き戻し温度である。
【0054】
【0055】
なお、表2に記載の先端の加速冷却開始温度および加速冷却停止温度は、加速冷却装置に進入する鋼板の先端から500mm程度の位置における温度の最大値である。中央部の加速冷却開始温度および加速冷却停止温度は、鋼板の長さ方向での中央近傍における温度の最大値である。尾端の加速冷却開始温度および加速冷却停止温度は、鋼板の長さ方向での尾端から500mm程度の位置における温度の最大値である。
【0056】
表2に示すように、発明例1~50では、目標性能を満たしている。これに対して、比較例1~40では、目標性能を満たしていない。
【0057】
1 厚鋼板製造ライン
2 加熱炉
3 スラブ
4 搬送装置
5 第1圧延機
6 第2圧延機
7 鋼板
8 第1温度計
9 第2温度計
10 第1レベラー
11 加速冷却装置
12 第3温度計
13 第1上部ヘッダユニット
14 第2上部ヘッダユニット
15 第1下部ヘッダユニット
16 第2下部ヘッダユニット
17 第4温度計
18 第2レベラー
19 電子制御装置(ECU)