(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165662
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】コンタクト及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20241121BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01R13/11 303B
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082030
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120628
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】長縄 政人
(57)【要約】
【課題】相手側コネクタとの嵌合時に当該相手側コネクタのコンタクトと接触する凸状の接触部を含むコンタクトにおいて、相手側コネクタのコンタクトに対する接触信頼性を高めること。
【解決手段】コンタクト100は、コネクタ嵌合方向に延在する底板部101及び側板部102の少なくともいずれかを含む共通部分と、当該共通部分に、前記コネクタ嵌合方向の前側と後側とで互いに独立して弾性変形可能に接続された前側接点部144及び後側接点部145と、前記前側接点部144及び後側接点部145のそれぞれに形成された複数の凸状の接触部151、157と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ嵌合方向に延在する底板部及び側板部の少なくともいずれかを含む共通部分と、
当該共通部分に、前記コネクタ嵌合方向の前側と後側とで互いに独立して弾性変形可能に接続された前側接点部及び後側接点部と、
前記前側接点部及び後側接点部のそれぞれに形成された複数の凸状の接触部と、
を備えるコンタクト。
【請求項2】
前記複数の凸状の接触部は、前記前側接点部及び後側接点部のそれぞれの前記コネクタ嵌合方向に直交する高さ方向の異なる位置にそれぞれ形成されている請求項1記載のコンタクト。
【請求項3】
前記前側接点部及び前記後側接点部は、それぞれ前記共通部分から前記コネクタ嵌合方向に直交する高さ方向に向かって逆U字形状に延出しており、互いにスリットによって前記コネクタ嵌合方向の前側と後側とに隔てられている、請求項1記載のコンタクト。
【請求項4】
前記コンタクトは、前記底板部と、当該底板部の前記コネクタ嵌合方向に直交する幅方向の両端から前記高さ方向に立ち上がって前記コネクタ嵌合方向と平行に互いに対向し合う1対の前記側板部とを有し、前記底板部には前記コネクタ嵌合方向の前端から後方に向けて底スリットが形成されている、請求項3記載のコンタクト。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の前記コンタクトと、前記コンタクトを収容するコンタクト収容キャビティを備えたハウジングと、を備えるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト及びコネクタ、特に、相手方コネクタの雄コンタクトに対して接触する凸状の接触部を複数備えた雌コンタクト及び当該コンタクトを有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄コンタクトが挿入される雌コンタクトを一対の弾性接触片によって形成し、これらの弾性接触片の内側面に凸状の接触部を設けたコネクタがある。
【0003】
例えば、下記引用文献1はそのような構造のコネクタを開示している。このコネクタでは、底板部で互いに接続された一対の弾性接触片の内側面に一対の凸状の接触部が形成されており、相手側の雄コンタクトを当該接触部の間に受け入れ、弾性的に挟持している。
【0004】
また、下記引用文献2は、接触部が連接部によって略コ字状に接続されて対面しており、各接触部の内面に突出部が形成されて、相手側端子が接触部の間に挿入された際に、相手側端子が突出部に接触するコネクタ端子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-125315号公報
【特許文献2】特開2023-8119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構造を大電流用のコネクタに適用する際に、電流が流れる箇所を分散させて発熱を抑えるために複数の接触部を設ける場合がある。しかし、接触部を複数設けると、雄コンタクト及び雌コンタクトのうちのいずれかが嵌合方向に対して傾いた状態、あるいは捻じれがある状態で挿入された場合、相手側端子の突出部に対して全ての接触部が接触しないような状態となる可能性がある。また、製造ばらつきにより凸状の接触部の高さが異なると、相手側端子の突出部に対して全ての接触部が接触しないような状態となる可能性もある。
【0007】
本発明の目的は、相手側コネクタとの嵌合時に当該相手側コネクタのコンタクトと接触する凸状の接触部を複数備えたコンタクトにおいて、相手側コネクタのコンタクトに対する接触信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、コネクタ嵌合方向に延在する底板部及び側板部の少なくともいずれかを含む共通部分と、当該共通部分に、前記コネクタ嵌合方向の前側と後側とで互いに独立して弾性変形可能に接続された前側接点部及び後側接点部と、前記前側接点部及び後側接点部のそれぞれに形成された複数の凸状の接触部と、を備えるコンタクトである。
【0009】
また、本発明の一態様において、前記複数の凸状の接触部は、前記前側接点部及び後側接点部のそれぞれの前記コネクタ嵌合方向に直交する高さ方向の異なる位置にそれぞれ形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様において、前記前側接点部及び前記後側接点部は、それぞれ前記共通部分から前記コネクタ嵌合方向に直交する高さ方向に向かって逆U字形状に延出しており、互いにスリットによって前記コネクタ嵌合方向の前側と後側とに隔てられている。
【0011】
また、本発明の一態様において、前記コンタクトは、前記底板部と、当該底板部の前記コネクタ嵌合方向に直交する幅方向の両端から前記高さ方向に立ち上がって前記コネクタ嵌合方向と平行に互いに対向し合う1対の前記側板部とを有し、前記底板部には前記コネクタ嵌合方向の前端から後方に向けて底スリットが形成されている。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記いずれかの態様のコンタクトと、前記コンタクトを収容するコンタクト収容キャビティを備えたハウジングと、を備えるコネクタである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、相手側コネクタとの嵌合時に当該相手側コネクタのコンタクトと接触する凸状の接触部を複数備えたコンタクトにおいて、相手側コネクタのコンタクトに対する接触信頼性を高めることができる。
【0014】
また、本発明の他の態様によれば、コンタクトを前方から画像検査する際に、凸状の接触部の突出高さを正確に測定することが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様によれば、前側接点部と後側接点部とが、互いに独立して弾性変位することが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様によれば、前側接点部と後側接点部とが設けられた側板部が幅方向に弾性変形することが可能となる。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、相手側コネクタのコンタクトに対する接触信頼性を高めたコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のプラグコネクタの分解斜視図である。
【
図2】実施形態の雌コンタクトを示す図であり、
図2(A)は上面図、
図2(B)は底面図、
図2(C)は、側面図、
図2(D)は正面図、
図2(E)は背面図である。
【
図3】
図3(A)は実施形態の雌コンタクトを上方から見た場合の斜視図、
図3(B)は実施形態の雌コンタクトを下方から見た場合の斜視図である。
【
図4】実施形態の雌コンタクトを示す図であり、
図4(A)は
図2(D)のIVA-IVA線断面図、
図4(B)は
図2(C)のIVB-IVB線断面図、
図4(C)は
図2(C)のIVC-IVC線断面図である。
【
図5】実施形態のプラグハウジングを示す図であり、
図5(A)は上方から見た場合の斜視図、
図5(B)は下方から見た場合の斜視図、
図5(C)は上面図、
図5(D)は底面図である。
【
図6】実施形態のプラグハウジングを示す図であり、
図6(A)は正面図、
図6(B)は側面図、
図6(C)は
図6(A)のVIC-VIC線断面図である。
【
図7】
図7(A)は雌コンタクトに電線を圧着した場合の斜視図、
図7(B)は雌コンタクトに電線を圧着した場合の側面図である。
【
図8】
図8(A)は電線を接続した雌コンタクトをプラグハウジングに装着した場合の正面図、
図8(B)は電線を接続した雌コンタクトをプラグハウジングに装着した場合の側面図、
図8(C)は
図8(A)のVIIIC-VIIIC線断面図である。
【
図9】
図9(A)は実施形態のプラグコネクタをレセプタクルコネクタに接続して下方から見た場合の斜視図、
図9(B)は
図9(A)の側面図、
図9(C)は
図9(A)の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態のプラグコネクタ10を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明のコンタクト及びコネクタを例示して説明するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された他の形態のコンタクト及びコネクタにも等しく適用されるべきものである。
【0020】
図1に示すように、プラグコネクタ10は、雌コンタクト100とプラグハウジング200とを含む。本実施形態では、2つの雌コンタクト100が、1つのプラグハウジング200に収容されている。
【0021】
図2(A)-
図2(E)、
図3(A)-
図3(B)、
図4(A)-
図4(C)に示すように、雌コンタクト100は、被覆把持部110、導体圧着部120、ハウジング固定部130、接点部140を含む、いわゆるオープンバレル式の圧着端子である。なお、被覆把持部110は被覆バレル、導体圧着部120は芯線バレルとそれぞれ呼ばれることもある。雌コンタクト100は、被覆把持部110、導体圧着部120、ハウジング固定部130、接点部140全体に共通する共通部分としてコネクタ嵌合方向に延在する底板部101と側板部102とを有している。
【0022】
なお、以下の説明において、雌コンタクト100が延在する方向をコネクタ嵌合方向あるいは単に嵌合方向、又は前後方向と呼ぶこととする。特に、雌コンタクト100の被覆把持部110から接点部140に向かう方向を前方向又は前側、反対方向を後方向又は後側と呼ぶこととする。また、底板部101が延材している方向のうち、雌コンタクト100の前後方向に直交する方向を、幅方向と呼ぶ。さらに、前後方向と幅方向の両方に直交する方向を上下方向と呼んで説明することとする。特に、底板部101が設けられる側を下側、反対側を上側と呼ぶ。
【0023】
底板部101は、嵌合方向及び幅方向に広がり、且つ嵌合方向に長尺であり、前端103を有する。前端103から後方に向けて、後述するハウジング固定部130付近に達するまで底スリット104が形成されている。
【0024】
底板部101の幅方向の両端から高さ方向に立ち上がるように1対の側板部102が設けられている。これら側板部102は嵌合方向と平行になるように互いに対向し合っている。
【0025】
被覆把持部110は、雌コンタクト100の最後部に形成される。被覆把持部110は、2つの側板部102の嵌合方向後方部分の上端からそれぞれ上方に突出するように形成された一対の把持片111を含む。これら一対の把持片111、一対の側板部102、及び底板部101で囲まれる空間が被覆把持空間112となり、全体として被覆把持部110を構成する。
【0026】
導体圧着部120は、雌コンタクト100の後方部分の、被覆把持部110よりも前方側に形成される。導体圧着部120は、2つの側板部102の、被覆把持部110よりも前方側の上端からそれぞれ上方に突出するように形成された一対の圧着片121を含む。これら一対の圧着片121、一対の側板部102、及び底板部101で囲まれる空間が芯線収容空間122となり、全体として導体圧着部120を構成する。
【0027】
導体圧着部120において、底板部101と側板部の内面、及び圧着片121の内面には、嵌合方向に直交する方向に延在する溝123が複数本刻設されている。これらの溝123は、芯線収容空間122に電線300が挿入されて圧着片121がカシメられた際に、芯線320との接触表面積を増大させる。また、芯線320に対する摩擦力を増大させて、芯線320と導体圧着部120とが電気的、機械的に良好に接続されるようにする。
【0028】
ハウジング固定部130は、雌コンタクト100の嵌合方向中央部分であって、導体圧着部120よりも前方側に形成される。ハウジング固定部130は、2つの側板部102の、導体圧着部120よりも前方側の上端からそれぞれ上方に突出して形成された一対の側板延長部131と、それらの上端で互いに幅方向内側に屈曲されて互いに接続された上板部132とを含む。上板部132の後端は、係止端133を有している。この係止端133は、雌コンタクト100が後述するプラグハウジング200の雌コンタクト収容キャビティ230に収容された際に、雌コンタクト収容キャビティ230内に突出するランス232に係合される。また、ハウジング固定部130は、雌コンタクト100が雌コンタクト収容キャビティ230に収容された際に、雌コンタクト収容キャビティ230内で回転しない形状となっている。
【0029】
接点部140は、雌コンタクト100の前方部分に形成されるが、ハウジング固定部130の前方側に形成される延長部141と、この延長部141のさらに前方側に形成される先端部142とを備えている。
【0030】
延長部141は、ハウジング固定部130の底板部101と側板部102を前方向に延ばして形成されており、底板部101には、前端103から後方に向けてハウジング固定部130付近に達するまで形成された底スリット104が存在している。延長部141に底スリット104が形成されているため、延長部141の側板部102は、底スリット104の最奥部分付近を支点として幅方向に外側に弾性変位可能となっている。
【0031】
先端部142は、2つの側板部102の、延長部141よりも前方側の上端から、上方向及び幅方向内側に向かってそれぞれ逆U字形状に延出した一対の前側接点部144及び後側接点部145を含む。前側接点部144と後側接点部145とは、互いに接点スリット146によって嵌合方向の前側と後側とに隔てられており、前側接点部144と後側接点部145とが互いに独立して弾性変形可能に側板部102の上端に接続されている。なお、「独立して弾性変形可能」とは、前側接点部144の弾性変位が後側接点部145の弾性変位に影響を与えない、あるいは予め定められた変位量の範囲でのみ影響を与えることを意味している。また、後側接点部145の弾性変位が前側接点部144の弾性変位に与える影響についても同様である。
【0032】
一対の前側接点部144は、前方から見た場合に逆U字形状であり、第1外側梁部材147、第1上部梁部材148、第1内側梁部材149を含む。第1外側梁部材147は、側板部102の上端から上方に突出している。第1上部梁部材148は、第1外側梁部材147の上端から幅方向内側に向かって屈曲して延出している。第1内側梁部材149は、第1上部梁部材148の幅方向内側部分から下方に向かって屈曲して延出している。第1内側梁部材149の第1内壁面150には、それぞれ幅方向内側に向けて対向し合うように突出する凸状の第1接触部151が形成されている。
【0033】
さらに、第1内側梁部材149は、前方に向かって延出しており、その前端部分には幅方向外側に開くように形成されたテーパ部152が設けられている。このテーパ部152は、相手方コネクタの雄コンタクトが挿入された際に、これを受け入れて第1内側梁部材149の間に案内する働きをする。
【0034】
一対の後側接点部145は、前側接点部144と同様に、前方から見た場合に逆U字形状であり、第2外側梁部材153、第2上部梁部材154、第2内側梁部材155を含む。第2外側梁部材153は、側板部102の上端から上方に突出している。第2上部梁部材154は、第2外側梁部材153の上端から幅方向内側に向かって屈曲して延出している。第2内側梁部材155は、第2上部梁部材154の幅方向内側部分から下方に向かって屈曲して延出している。第2内側梁部材155の第2内壁面156には、それぞれ幅方向内側に向けて対向し合うように突出する凸状の第2接触部157が形成されている。
【0035】
第1接触部151と第2接触部157は、互いに対して高さ方向の異なる位置に形成されている。具体的には、第1接触部151は、第2接触部157よりも高い位置に形成されているが、第1接触部151が第2接触部157よりも低い位置に形成されていてもよい。なお、第1接触部151の第1内壁面150からの幅方向への突出量と第2接触部157の第2内壁面156からの幅方向への突出量は同一、あるいは略同一である。
【0036】
図5(A)-
図5(D)、
図6(A)-
図6(C)に示すように、プラグハウジング200は、基部210、プラグ部220を含み、基部210とプラグ部220内部を貫通するように雌コンタクト収容キャビティ230が形成されている。
【0037】
基部210は、直方体形状であり、前面211と後面212を有している。前面211には、複数のプラグ部220が前方に突出するように設けられている。なお、本実施形態では、基部210の前面211に2つのプラグ本体部221が設けられている。
【0038】
プラグ本体部221は、前後方向に若干長尺な直方体形状で、後述する相手方コネクタのレセプタクルハウジング400に挿入可能な大きさ及び形状であり、前端222及び下面223を含む。前端222の下端には、ロックレバー224が接続されており、このロックレバー224は下面223に沿ってカンチレバー型に後方に延出している。
【0039】
ロックレバー224の下面部中央部分にはロック突起225が形成されている。ロック突起225は、プラグハウジング200が相手方コネクタのレセプタクルハウジング400に嵌合された際に、当該レセプタクルハウジング400に形成された係止爪(図示せず)に対して係止される。ロックレバー224の最後部には下方に突出した押し釦226が形成され、ロックレバー224を、前端222を支点として上方に変位させてロック突起225を相手方コネクタの係止爪(図示せず)から解除するのに用いられる。なお、押し釦226は、2つのプラグ本体部221から延びた2つのロックレバー224を一体に接続しており、1つの押し釦226を操作することにより2つのロックレバー224が同時に変位するようになっている。
【0040】
雌コンタクト収容キャビティ230は、プラグ本体部221の前端222から基部210の後面212を貫通するように嵌合方向に平行に形成されている。本実施形態では、プラグ部220の数と対応する数の雌コンタクト収容キャビティ230が形成されている。
【0041】
雌コンタクト収容キャビティ230は、前方側、つまりプラグ本体部221の内部に形成される雌コンタクト収容部233と、後方側、つまり基部210の内部に形成される導線収容部234を含む。雌コンタクト収容部233は、雌コンタクト100のハウジング固定部130と接点部140とを収容する。一方、導線収容部234は、導線が接続された雌コンタクト100の被覆把持部110と導体圧着部120とを収容する。
【0042】
雌コンタクト収容部233の前端部分は、下面部分及び左右壁面部分が、雌コンタクト収容部233内において嵌合方向に対して直交する方向に突出することによって幅狭となったストッパ231が形成されている。ストッパ231には、雌コンタクト100の底板部101と側板部102の前端103が当接し、雌コンタクト100が雌コンタクト収容キャビティ230から前方に移動することを阻止する。
【0043】
雌コンタクト収容部233と導線収容部234の間には、雌コンタクト収容キャビティ230の上壁面から前方に向けてカンチレバー状に突出したランス232が設けられている。ランス232は、雌コンタクト収容キャビティ230に雌コンタクト100が挿入された際に、ハウジング固定部130の係止端133が係止され、雌コンタクト100が雌コンタクト収容キャビティ230から後方に抜け落ちることを阻止する。
【0044】
以上説明したプラグコネクタ10の組み立てについて説明する。
図7(A)、
図7(B)に示すように、先端部分の絶縁被覆310を剥いて芯線320を所定長さ露出させた電線300を、雌コンタクト100の被覆把持部110及び導体圧着部120に圧着する。このとき、電線300の芯線320は導体圧着部120の芯線収容空間122に挿入され、圧着片121を芯線320に対して圧着工具によりカシメて圧着接続する。このとき、導体圧着部120に刻設された溝123は、芯線320との接触表面積が増大し、また芯線320に対する摩擦力を増大させ、芯線320と導体圧着部120とが電気的、機械的に良好に接続される。
【0045】
電線300の絶縁被覆310の部分は、雌コンタクト100の被覆把持部110の被覆把持空間112に挿入され、把持片111を絶縁被覆310に対して圧着工具によりカシメて圧着接続する。被覆把持部110を構成する底板部101、側板部102、及び把持片111は絶縁被覆310を周囲から把持し、電線300が雌コンタクト100から外れないようになる。
【0046】
次いで、
図8(A)-
図8(C)に示すように、電線300が接続された雌コンタクト100を、プラグハウジング200の基部210の後方から雌コンタクト収容キャビティ230に挿入する。雌コンタクト100の被覆把持部110と導体圧着部120は導線収容部234に収容され、ハウジング固定部130と接点部140は、雌コンタクト収容部233に収容される。
【0047】
このとき、雌コンタクト100の底板部101と側板部102の前端103は、雌コンタクト収容部233の前端部分のストッパ231に当接し、雌コンタクト100が雌コンタクト収容キャビティ230から前方に移動することを阻止する。さらに、ハウジング固定部130の係止端133は、雌コンタクト収容部233と導線収容部234の間のランス232に係止され、雌コンタクト100が雌コンタクト収容キャビティ230から後方に抜け落ちることが阻止される。
【0048】
次に、上記説明したプラグコネクタ10を、相手方コネクタであるレセプタクルコネクタ20に嵌合する場合について説明する。
図9(C)に示すように、レセプタクルコネクタ20のレセプタクルハウジング400には、プラグ本体部221を挿入可能なレセプタクル開口410が形成されている。レセプタクル開口410内には、雄コンタクト420が嵌合方向後方に向かって突出している。雄コンタクト420は、幅方向に所定厚みを有する嵌合方向に長尺な平板状又はブレード状の部材である。
【0049】
レセプタクルハウジング400の下部には、プラグコネクタ10のロックレバー224を収容するレバー収容部430が形成され、レバー収容部430の後部には、レバー収容部430内で上方に突出する係止爪(図示せず)が形成されている。
【0050】
図9(A)-
図9(C)に示すように、プラグコネクタ10のプラグハウジング200のプラグ本体部221は、レセプタクルコネクタ20のレセプタクルハウジング400のレセプタクル開口410に挿入される。すると、雌コンタクト100の前側接点部144に形成された一対の第1接触部151の間と、後側接点部145に形成された一対の第2接触部157の間とに、雄コンタクト420が挟まれるように受け入れられ、電気的な導通が確立する。
【0051】
このとき、前側接点部144と後側接点部145は、側板部102との接続部分を支点としてそれぞれ独立に変位する。そのため、雄コンタクト420が嵌合方向に対して傾いた状態、あるいは捻じれがある状態で雌コンタクト100に挿入された場合でも、第1接触部151、第2接触部157のすべての接触部に接触し、良好な電気的導通を維持できる。
【0052】
また、プラグコネクタ10がレセプタクルコネクタ20に完全に嵌合されると、ロックレバー224がレバー収容部430内に挿入され、ロックレバー224のロック突起225は、レバー収容部430内の係止爪(図示せず)に係止される。これにより、プラグコネクタ10がレセプタクルコネクタ20から嵌合方向に外れないようになる。
【0053】
プラグコネクタ10とレセプタクルコネクタ20の嵌合を解除するためには、ロックレバー224の押し釦226を上方に押して変位させ、ロック突起225を係止爪(図示せず)から解除する。同時に、プラグハウジング200をレセプタクルハウジング400から嵌合方向後方に引き抜く。すると、雌コンタクト100の前側接点部144に形成された一対の第1接触部151の間と、後側接点部145に形成された一対の第2接触部157の間に挟まれるように接続されていた雄コンタクト420が引き抜かれ、電気的に非導通状態となる。
【0054】
以上、本実施形態のプラグコネクタ10について説明した。上述のように、このプラグコネクタ10において、前側接点部144に形成された第1接触部151と後側接点部145に形成された第2接触部157の上下方向の高さは、異なる位置に形成されている。そのため、第1接触部151と第2接触部157両方の幅方向の突出量を、前方から画像検査によって測定することが可能である。
【0055】
なお、上述のプラグコネクタ10においては、底板部101と側板部102を共通部分とした場合を説明した。そして、この共通部分から被覆把持部110の把持片111、導体圧着部120の圧着片121、ハウジング固定部130の側板延長部131、及び前側接点部144、後側接点部145が形成されていた。しかしながら、本開示はこれに限定されない。底板部101のみを共通部分として、底板部101から被覆把持部110の把持片111、導体圧着部120の圧着片121、ハウジング固定部130の側板延長部131、及び前側接点部144、後側接点部145が形成されるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、雄コンタクト420を嵌合方向前方から前側接点部144の間、及び後側接点部145の間に挿入した場合を説明した。しかしながら、雄コンタクト420を上記実施形態における上方向から受け入れるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 プラグコネクタ
20 レセプタクルコネクタ
100 雌コンタクト
101 底板部
102 側板部
103 前端
104 底スリット
110 被覆把持部
111 把持片
112 被覆把持空間
120 導体圧着部
121 圧着片
122 芯線収容空間
123 溝
130 ハウジング固定部
131 側板延長部
132 上板部
133 係止端
140 接点部
141 延長部
142 先端部
144 前側接点部
145 後側接点部
146 接点スリット
147 第1外側梁部材
148 第1上部梁部材
149 第1内側梁部材
150 第1内壁面
151 第1接触部
152 テーパ部
153 第2外側梁部材
154 第2上部梁部材
155 第2内側梁部材
156 第2内壁面
157 第2接触部
200 プラグハウジング
210 基部
211 前面
212 後面
220 プラグ部
221 プラグ本体部
222 前端
223 下面
224 ロックレバー
225 ロック突起
226 押し釦
230 雌コンタクト収容キャビティ
231 ストッパ
232 ランス
233 雌コンタクト収容部
234 導線収容部
300 電線
310 絶縁被覆
320 芯線
400 レセプタクルハウジング
410 レセプタクル開口
420 雄コンタクト
430 レバー収容部