(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165663
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20241121BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241121BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241121BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241121BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20241121BHJP
B22F 10/00 20210101ALI20241121BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20241121BHJP
B22F 5/00 20060101ALI20241121BHJP
B22F 7/06 20060101ALI20241121BHJP
B22F 10/60 20210101ALI20241121BHJP
F16C 11/06 20060101ALI20241121BHJP
E05D 1/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/379
B22F10/00
B22F10/38
B22F5/00 C
B22F7/06 Z
B22F10/60
F16C11/06 A
E05D1/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082033
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】512209689
【氏名又は名称】SOLIZE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】松並 今日子
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 文嶺
【テーマコード(参考)】
3J105
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
3J105AA23
3J105AB50
3J105AC10
3J105CA02
3J105CA40
3J105CB14
3J105CB15
3J105CB17
3J105CD01
3J105CD11
3J105CE02
3J105CE03
4F213AG30
4F213AH05
4F213AH06
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4K018HA07
4K018JA12
4K018KA03
(57)【要約】
【課題】軸部のガタつきの少ない構造体を提供する。
【解決手段】構造体1は、軸部11を有する第1の積層造形部材10と、第1の積層造形部材10の軸部11を受ける実用軸受部24と、実用軸受部24に接続される造形用軸受部25とを含む第2の積層造形部材20とを備える。第2の積層造形部材20の造形用軸受部25は、第1の積層造形部材10の軸部11の外面と第2の積層造形部材20の造形用軸受部25の内面との間に、軸部11と造形用軸受部25とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙G
1を形成可能とする溝により構成される。
【選択図】
図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する第1の積層造形部材と、
前記第1の積層造形部材の前記軸部を受ける実用軸受部と、前記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の積層造形部材と
を備え、
前記第2の積層造形部材の前記造形用軸受部は、前記第1の積層造形部材の前記軸部の外面と前記第2の積層造形部材の前記造形用軸受部の内面との間に、前記軸部と前記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙を形成可能とする溝により構成される、
構造体。
【請求項2】
前記第2の積層造形部材は、前記第1の積層造形部材の前記軸部が前記造形用軸受部の前記溝から離脱することを防止する離脱防止部を有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第1の積層造形部材の前記軸部は、前記第2の積層造形部材の前記実用軸受部内で軸方向に移動するように構成される、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の構造体を含む、回転機構。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の構造体を含む、固定機構。
【請求項6】
軸部を有する第1の部材と、実用軸受部と前記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、
前記積層造形工程の後に、前記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程と
を含み、
前記積層造形工程は、
前記第1の部材の前記軸部と前記第2の部材の前記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に積層造形する同一積層面造形工程
を含み、
前記同一積層面造形工程においては、前記第1の部材の前記軸部の外面と前記第2の部材の前記造形用軸受部の内面との間に、前記軸部と前記造形用軸受部の積層造形に必要な間隙が形成されるような収容空間を形成し、
前記部材移動工程は、
前記第1の部材の前記軸部を前記第2の部材の前記造形用軸受部から前記実用軸受部に移動する移動工程
を含む、
構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及びその製造方法に係り、特に軸を有する部材とこの軸を受ける軸受部を有する部材とを含む構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から3Dプリンタにより材料を1層ずつ積み重ねて立体構造物を造形する積層造形法が知られている。このような積層造形法は、軸を有する部材(軸部材)とこの軸を受ける軸受部を有する部材(軸受部材)とを含む構造体を作製する際にも用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような構造体を積層造形法により作製する場合には、造形中に軸部材と軸受部材とが癒着してしまわないように軸部材と軸受部材との間に十分な間隙を確保する必要がある。この結果、作製された軸部材と軸受部材との間にも間隙が形成されることになり、作製された構造体において軸部材のガタつきが生じやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、軸部のガタつきの少ない構造体及びそのような構造体を簡単に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、軸部のガタつきの少ない構造体及びそのような構造体が提供される。この構造体は、軸部を有する第1の積層造形部材と、上記第1の積層造形部材の上記軸部を受ける実用軸受部と、上記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の積層造形部材とを備える。上記第2の積層造形部材の上記造形用軸受部は、上記第1の積層造形部材の上記軸部の外面と上記第2の積層造形部材の上記造形用軸受部の内面との間に、上記軸部と上記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙を形成可能とする溝により構成される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、軸部のガタつきの少ない構造体を簡単に製造することができる方法が提供される。この方法は、軸部を有する第1の部材と、実用軸受部と上記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、上記積層造形工程の後に、上記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程とを含む。上記積層造形工程は、上記第1の部材の上記軸部と上記第2の部材の上記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に積層造形する同一積層面造形工程を含む。上記同一積層面造形工程においては、上記第1の部材の上記軸部の外面と上記第2の部材の上記造形用軸受部の内面との間に、上記軸部と上記造形用軸受部の積層造形に必要な間隙が形成されるような収容空間を形成する。上記部材移動工程は、上記第1の部材の上記軸部を上記第2の部材の上記造形用軸受部から上記実用軸受部に移動する移動工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における構造体を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、
図4に示す構造体における第1の積層造形部材を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図4に示す構造体における第2の積層造形部材を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す構造体を製造する方法を説明する斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、
図1に示す構造体を製造するための積層造形工程を示す模式的断面図である。
【
図8B】
図8Bは、
図1に示す構造体を製造するための部材移動工程を示す模式的断面図である。
【
図8C】
図8Cは、
図1に示す構造体を製造するための部材移動工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る構造体及びその製造方法の実施形態について
図1から
図8Cを参照して詳細に説明する。
図1から
図8Cにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図8Cにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態における構造体1を示す斜視図、
図2は平面図、
図3は
図2のA-A線断面図、
図4は分解斜視図である。
図1から
図4に示すように、この構造体1は、第1の積層造形部材10と第2の積層造形部材20とを含んでいる。これらの積層造形部材10,20は、後述するように3Dプリンタを用いた積層造形法によって製造されるものである。本実施形態における構造体1は、第1の積層造形部材10をX方向に移動させることでオンオフの切替を行うことができるスライドスイッチ機構であるものとして説明するが、本発明は、このようなスライドスイッチ機構に限らず、軸とこの軸を受ける軸受とを含む任意の構造体に適用できるものである。
【0010】
図5Aは第1の積層造形部材10を示す平面図、
図5Bは左側面図、
図5Cは正面図、
図5Dは底面図である。
図5Aから
図5Dに示すように、第1の積層造形部材10は、X方向に延びる円柱状の軸部11と、XY平面に沿って延びる台形状板部12と、台形状板部12と軸部11とを接続する接続部13と、台形状板部12からY方向に突出する矩形突起14と、台形状板部12から-Z方向に延びる筒状突起15とを有している。筒状突起15の-Z方向の端面には、Y方向に延びる溝15Aが形成されている。
【0011】
図6Aは第2の積層造形部材20を示す平面図、
図6Bは
図6AのB-B線断面図、
図6Cは
図6BのC-C線断面図である。
図6Aから
図6Cに示すように、第2の積層造形部材20は、XY平面に沿って延びる矩形状板部21を有している。この矩形状板部21は、第1の積層造形部材10の軸部11が収容される軸収容部22を有している。矩形状板部21には、軸収容部22に隣接して、第1の積層造形部材10の筒状突起15が挿入される長孔23が形成されている。この長孔23に挿入された第1の積層造形部材10の筒状突起15は矩形状板部21の-Z方向側に露出するようになっている。長孔23はX方向に長く形成されており、矩形状板部21の-Z方向側から筒状突起15の溝15Aに指や工具を引っ掛けることで第1の積層造形部材10をX方向に移動できるようになっている。
【0012】
軸収容部22は、第1の積層造形部材10の軸部11を受ける実用軸受部24と、この実用軸受部24に接続される造形用軸受部25と、造形用軸受部25から+Y方向に向かうにつれ次第に+Z方向に高くなる傾斜面26と、軸収容部22から第1の積層造形部材10の軸部11が離脱することを防止する1対の離脱防止片27(離脱防止部)とを含んでいる。
【0013】
実用軸受部24と造形用軸受部25とは、それぞれX方向に延びる円筒状の溝により形成されており、これらの溝がY方向に部分的に重なっている。実用軸受部24のX方向の長さ及び造形用軸受部25のX方向の長さはいずれも第1の積層造形部材10の軸部11のX方向の長さよりも長くなっている。それぞれの離脱防止片27は、造形用軸受部25のX方向の端部を覆うようにX方向に延びており、離脱防止片27の間のX方向に沿った距離は、第1の積層造形部材10の軸部11のX方向の長さよりも短くなっている。
【0014】
図6Bに示すように、実用軸受部24を構成する溝の内径D
1は造形用軸受部25を構成する溝の内径D
2よりも小さくなっている。本実施形態においては、実用軸受部24を構成する溝の内径D
1は、第1の積層造形部材10の軸部11の外径d(
図5C参照)よりもわずかに小さい程度となっている。第1の積層造形部材10の軸部11の外周面と第2の積層造形部材20の実用軸受部24の内周面との間には、第2の積層造形部材20の実用軸受部24が第1の積層造形部材10の軸部11の軸受として機能するのに適切な大きさの間隙が形成されている。これにより、第1の積層造形部材10が第2の積層造形部材20に対して軸部11を中心として回転できるようになっている。したがって、このような構造体1を用いて、第1の積層造形部材10が第2の積層造形部材20に対して軸部11を中心として回転する回転機構を構成することができる。
【0015】
本実施形態では、第2の積層造形部材20の造形用軸受部25が、第1の積層造形部材10の軸部11の外周面と第2の積層造形部材20の造形用軸受部25の内周面との間に、軸部11と造形用軸受部25とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙を形成可能な溝により構成されている。したがって、後述するように、第1の積層造形部材10の軸部11と第2の積層造形部材20の造形用軸受部25との癒着を防止しつつ、軸部11と造形用軸受部25とを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、軸部11及び造形用軸受部25の積層造形の後に、第1の積層造形部材10の軸部11を造形用軸受部25から実用軸受部24に移動することで、第1の積層造形部材10の軸部11の外周面と第2の積層造形部材20の実用軸受部24の内周面との間の間隔を狭めて、第2の積層造形部材20の実用軸受部24が第1の積層造形部材10の軸部11の軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の積層造形部材10の軸部11のガタつきが低減される。
【0016】
第1の積層造形部材10の矩形突起14はX方向に移動することで、図示しない電気的スイッチを作動できるようになっている。したがって、上述したように、第1の積層造形部材10の筒状突起15の溝15Aに指や工具を引っ掛けて第1の積層造形部材10をX方向に移動させることで、矩形突起14をX方向に移動させ、図示しない電気的スイッチのオンオフを切り替えることができるようになっている。
【0017】
次に、上述した構造体1を製造する方法について説明する。構造体1を製造する方法は、上述した積層造形部材10,20を積層造形する積層造形工程と、この積層造形工程の後に、第1の積層造形部材10を第2の積層造形部材20に対して移動して構造体1を形成する部材移動工程とを含んでいる。
【0018】
積層造形工程においては、3Dプリンタを用いた積層造形法によって積層造形部材10,20を作製する。この積層造形法の種類は特に限定されるものではなく、例えば、溶融した材料をノズルから押し出して積層する材料押出法、光硬化性樹脂をレーザで照射して積層する光造形法、ヘッドから噴射した材料を紫外線で硬化させて積層するマテリアルジェッティング法、材料粉末にノズルからバインダを噴射して固めることで積層するバインダジェッティング法、材料粉末にレーザを照射して焼結させることで積層する粉末床溶融結合法などを用いることができる。また、積層造形に用いる材料も特定のものに限定されるものではなく、例えば樹脂、金属、セラミック、石膏など各種の材料を用いることができる。
【0019】
積層造形工程では、積層造形法により3Dプリンタのステージ上に積層造形部材10,20を構成する層を例えば+X方向に向かって1層ずつ積み重ねていくが、積層造形部材10,20を最初から
図1に示すような状態に造形するのではなく、第1の積層造形部材10を構成する部材110(第1の部材)と第2の積層造形部材20を構成する部材120(第2の部材)とを
図7に示すような状態で造形する。このとき、必要に応じてサポート材(図示せず)を部材110,120とともに積層してもよい。以下の説明では、積層造形工程中の部材110,120をそれぞれ積層造形部材10,20と呼ぶことがある。
【0020】
図7に示す例では、部材110,120は、+X方向に向かって1層ずつ積層されて造形される。
図8Aは、積層造形工程が完了したときの部材110,120の状態を示す模式的断面図である。
図8Aに示すように、部材110の軸部11と部材120の造形用軸受部25とは同一の積層面(YZ平面)に位置しており、これらの部分は同一の積層面で連続的に積層される。換言すれば、積層造形工程は、部材110の軸部11と部材120の造形用軸受部25とを同一の積層面で連続的に造形する工程(同一積層面造形工程)を含んでいる。この同一積層面造形工程においては、部材120の造形用軸受部25を部材110の軸部11の周囲に造形するが、造形用軸受部25の溝の内径は実用軸受部24の溝の内径よりも大きくなっているため、部材110の軸部11の外周面と部材120の造形用軸受部25の内周面との間に相対的に大きな間隙G
1を確保することができる。したがって、この間隙G
1の大きさを部材110の軸部11と部材120の造形用軸受部25とが同一積層面造形工程中に互いに癒着してしまうことがないような大きさとすることで、積層造形部材10と積層造形部材20とを互いに癒着させることなく安定的に作製することができる。
【0021】
図8Aに示す積層造形部材10,20の造形が完了した後、必要に応じてサポート材を適切な方法により除去し、上述した部材移動工程を行う。この部材移動工程は、
図8Bに示すように、積層造形部材10の軸部11を+Y方向に積層造形部材20の造形用軸受部25から実用軸受部24に移動する工程(移動工程)を含んでいる。上述した積層造形工程と部材移動工程とにより、積層造形部材10の軸部11の外周面と積層造形部材20の実用軸受部24の内周面との間の間隙を上記間隙G
1よりも小さくして、積層造形部材20の実用軸受部24が積層造形部材10の軸部11の軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10の軸部11のガタつきが抑えられた構造体を製造することが可能となる。
【0022】
本実施形態では、
図8Bに示すように積層造形部材10の軸部11を積層造形部材20の実用軸受部24に移動した後、
図8Cに示すように、積層造形部材10を軸部11周りに回転させることで構造体1が完成する。
【0023】
本実施形態では、積層造形部材10の軸部11の外周面と積層造形部材20の実用軸受部24の内周面との間には何も介在していないが、これらの面の間にベアリングを挿入して軸受性能を向上させてもよく、あるいはスペーサを挿入して間隙の大きさを調整してもよい。また、本実施形態では、積層造形部材20の実用軸受部24の内径D1を積層造形部材10の軸部11の外径dよりもわずかに大きくしているが、積層造形部材20の実用軸受部24の内径D1を積層造形部材10の軸部11の外径dよりも小さくして、部材移動工程において、積層造形部材10の軸部11を積層造形部材20の実用軸受部24に圧入してもよい。この場合には、積層造形部材10の軸部11が積層造形部材20の実用軸受部24に固定されることとなるので、この構造体を用いて固定機構を構成することができる。
【0024】
上述した構造体1の製造方法によれば、同一積層面造形工程において、部材20の造形用軸受部25の溝を実用軸受部24の溝よりも大きく造形しているため、部材10の軸部11の外周面と部材20の造形用軸受部25の内周面との間に、軸部11と造形用軸受部25の積層造形に必要な間隙G1を確保することができる。したがって、同一積層面造形工程中に部材10の軸部11と部材20の造形用軸受部25とが互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、積層造形部材10の軸部11を積層造形部材20の造形用軸受部25から実用軸受部24に移動することで、積層造形部材10の軸部11の外周面と積層造形部材20の実用軸受部24の内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材20の実用軸受部24が積層造形部材10の軸部11の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10の軸部11のガタつきが抑えられた構造体1を簡単に製造することが可能となる。
【0025】
上述した実施形態においては、積層造形部材10の軸部11が円柱状であり、積層造形部材20の造形用軸受部25を構成する溝及び実用軸受部24を構成する溝がそれぞれ円筒状であるが、積層造形部材10の軸部11を角柱状又は角柱と円柱などを組み合わせた形態にしてもよく、積層造形部材20の造形用軸受部25を構成する溝及び実用軸受部24を構成する溝をこれに対応した形状としてもよい。
【0026】
また、上述した実施形態においては、積層造形部材20の造形用軸受部25と実用軸受部24とが部分的に重なっているが、積層造形部材20の造形用軸受部25と実用軸受部24とが互いに接続され、積層造形部材20の造形用軸受部25から実用軸受部24に積層造形部材10の軸部11が移動可能となっていれば、造形用軸受部25と実用軸受部24とが離れた位置にあってもよい。
【0027】
以上述べたように、本発明に係る構造体は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0028】
[構成1]
構造体は、軸部を有する第1の積層造形部材と、上記第1の積層造形部材の上記軸部を受ける実用軸受部と、上記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の積層造形部材とを備える。上記第2の積層造形部材の上記造形用軸受部は、上記第1の積層造形部材の上記軸部の外面と上記第2の積層造形部材の上記造形用軸受部の内面との間に、上記軸部と上記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙を形成可能とする溝により構成される。
【0029】
このような構成によれば、第2の積層造形部材の造形用軸受部が、第1の積層造形部材の軸部の外面と第2の積層造形部材の造形用軸受部の内面との間に、軸部と造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙を形成可能とする溝により構成されているため、軸部と造形用軸受部との癒着を防止しつつ、軸部と造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、軸部及び造形用軸受部の積層造形の後に、第1の積層造形部材の軸部を第2の積層造形部材の造形用軸受部から実用軸受部に移動することで、第1の積層造形部材の軸部の外面と第2の積層造形部材の実用軸受部の内面との間の間隙を狭めて、第2の積層造形部材の実用軸受部が第1の積層造形部材の軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の積層造形部材の軸部のガタつきが低減される。
【0030】
[構成2]
上記構成1において、上記第2の積層造形部材は、上記第1の積層造形部材の上記軸部が上記造形用軸受部の上記溝から離脱することを防止する離脱防止部を有し得る。このような離脱防止部により、第1の積層造形部材の軸部が造形用軸受部の溝から離脱してしまうことを防ぐことができる。
【0031】
[構成3]
上記構成1又は2において、上記第1の積層造形部材の上記軸部は、上記第2の積層造形部材の上記実用軸受部内で軸方向に移動するように構成されていてもよい。
【0032】
[構成4]
また、本発明に係る回転機構は、上記構成1から3のいずれかに記載の構造体を含み得る。この場合には、第1の積層造形部材の軸部を中心として第2の積層造形部材を回転させることが可能な回転機構を実現することができる。
【0033】
[構成5]
また、本発明に係る固定機構は、上記構成1から3のいずれかに記載の構造体を含み得る。この場合には、第1の積層造形部材の軸部が第2の積層造形部材の実用軸受部に固定された固定機構を実現することができる。
【0034】
さらに、本発明に係る構造体の製造方法は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0035】
[構成6]
構造体の製造方法は、軸部を有する第1の部材と、実用軸受部と上記実用軸受部に接続される造形用軸受部とを含む第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、上記積層造形工程の後に、上記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程とを含む。上記積層造形工程は、上記第1の部材の上記軸部と上記第2の部材の上記造形用軸受部とを同一の積層面で連続的に積層造形する同一積層面造形工程を含む。上記同一積層面造形工程においては、上記第1の部材の上記軸部の外面と上記第2の部材の上記造形用軸受部の内面との間に、上記軸部と上記造形用軸受部の積層造形に必要な間隙が形成されるような収容空間を形成する。上記部材移動工程は、上記第1の部材の上記軸部を上記第2の部材の上記造形用軸受部から上記実用軸受部に移動する移動工程を含む。
【0036】
このような方法によれば、同一積層面造形工程において、第2の部材の造形用軸受部の溝を実用軸受部の溝よりも細く造形しているため、第1の部材の軸部の外面と第2の部材の造形用軸受部の内面との間に、軸部と造形用軸受部の積層造形に必要な間隙を確保することができる。したがって、同一積層面造形工程中に第1の部材の軸部と第2の部材の造形用軸受部とが互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、第1の部材を第2の部材の造形用軸受部から実用軸受部に移動することで、第1の部材の軸部の外面と第2の部材の実用軸受部の内面との間の間隙を狭めて、第2の部材の実用軸受部が第1の部材の軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の部材の軸部のガタつきが抑えられた構造体を簡単に製造することが可能となる。
【0037】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 構造体
10 第1の積層造形部材
11 軸部
12 台形状板部
13 接続部
14 矩形突起
15 筒状突起
20 第2の積層造形部材
21 矩形状板部
22 軸収容部
23 長孔
24 実用軸受部
25 造形用軸受部
26 傾斜面
27 離脱防止片(離脱防止部)