(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165666
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ふろ装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20241121BHJP
F24H 15/176 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/254 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/335 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/355 20220101ALI20241121BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20241121BHJP
【FI】
F24H15/196 301G
F24H15/176
F24H15/219
F24H15/246
F24H15/254
F24H15/265
F24H15/269
F24H15/335
F24H15/355
F24H15/395
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082040
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀弘
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勲
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC10
3L024CC11
3L024DD06
3L024DD27
3L024GG02
3L024GG06
3L024GG12
3L024GG43
3L024HH24
(57)【要約】
【課題】入浴者が、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感をより確実に得ることが可能なふろ装置を提供する。
【解決手段】給湯装置10(ふろ装置)は、浴槽内の湯水の水位を検出するための水位センサと、浴槽内の湯温を検知するための温度センサと、浴室内の室温を検知するための室温センサ127と、水位センサの検出結果に基づき浴槽への入浴を検知する入浴検知部111aと、入浴の検知に基づいて入浴時間のカウントを開始する入浴タイマー部111bと、入浴の検知時における湯温および室温に基づいて入浴者の体温が所定以上まで上昇することを制限するための入浴予定時間を設定する時間設定部123aと、入浴時間が入浴予定時間に到達したことにより報知を行う報知処理部111cと、入浴タイマーの実行中に、湯温が入浴開始時の湯温より低いことに基づいて浴槽内の湯水を追い焚きする処理を実行する追い焚き実行部111dとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器と浴槽との間で前記浴槽内の湯水を循環させるための循環路に配置され、前記浴槽内の湯水の水位を検出するための水位センサと、
前記循環路に配置され、前記浴槽内の湯温を検知するための温度センサと、
前記浴槽が設置された浴室内の室温を検知するための室温センサと、
前記水位センサの検出結果に基づき前記浴槽への入浴を検知する入浴検知部と、
前記入浴の検知に基づいて入浴時間のカウントを開始する入浴タイマー部と、
前記入浴の検知時における前記湯温および前記室温に基づいて、入浴者の体温が所定以上まで上昇することを制限するための入浴予定時間を設定する時間設定部と、
前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達したことにより報知を行う報知処理部と、
前記入浴タイマーの実行中において、前記温度センサにより検知された前記湯温が入浴開始時の前記湯温より低いことに基づいて前記浴槽内の湯水を追い焚きする処理を実行する追い焚き実行部と、を備える、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記追い焚き実行部は、前記入浴予定時間より所定時間前のタイミングから、前記湯温の低下に基づく追い焚きの処理を実行する、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記循環路に湯水を循環させるための循環ポンプを備え、
前記追い焚き実行部は、前記循環ポンプを動作させた状態で、前記入浴タイマー実行中の前記湯温を前記温度センサに検知させる、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記追い焚き実行部は、前記追い焚きの実行中に、前記湯温が、予め設定された設定温度に到達したことに基づいて、前記追い焚きを停止する、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のふろ装置において、
前記追い焚き実行部は、前記追い焚きを停止した後、前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達するまでの間、前記湯温の低下に基づく前記追い焚きの処理を繰り返し実行する、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のふろ装置において、
前記追い焚き実行部は、前記追い焚きの実行中に、前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達したことに基づいて、前記追い焚きを停止する、
ことを特徴とするふろ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のふろ機能を実行するふろ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ふろ装置には、入浴時間を表示する機能が設けられている。入浴者が浴槽に入ったことが水位センサの出力等により検知される。この検知により、入浴時間の計時が開始される。入浴時間は、浴室に設置されたリモートコントローラに表示される。入浴者は、表示された時間を見ることで、自身の入浴時間を随時把握できる。このような機能が、たとえば以下の特許文献1に記載されている。
【0003】
また、ふろ装置には、単に入浴時間を表示するだけでなく、所定の条件に従って、入浴者に退浴を促すタイマー機能も設けられ得る。たとえば、良質な睡眠を得るのに適した入浴時間を推定し、この時間が経過すると、入浴者にそのことを報知する機能が、タイマー機能としてふろ装置に設けられ得る。このような機能を有するふろ装置が、たとえば、以下の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-107767号公報
【特許文献2】特開2021-120604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ふろ装置に設けられ得るタイマー機能として、さらに、入浴者ののぼせを防止するためのタイマー機能が検討され得る。このタイマー機能では、入浴者にのぼせが生じ得る入浴予定時間が推定され、入浴後にこの時間が経過すると、入浴者に退浴を促す報知が行われる。
【0006】
しかし、浴槽内の湯の温度は、保温動作を行っていない場合などでは環境温度等の影響によって低下し得る。このような湯温の低下は、上述のタイマー機能により設定された時間内にも生じ得る。この場合、入浴者は、十分に身体が温まっていないと感じているにも拘わらず、タイマー機能によって退浴を促される結果となりかねない。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、入浴者が、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感をより確実に得ることが可能なふろ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係るふろ装置は、給湯器と浴槽との間で前記浴槽内の湯水を循環させるための循環路に配置され、前記浴槽内の湯水の水位を検出するための水位センサと、前記循環路に配置され、前記浴槽内の湯温を検知するための温度センサと、前記浴槽が設置された浴室内の室温を検知するための室温センサと、前記水位センサの検出結果に基づき前記浴槽への入浴を検知する入浴検知部と、前記入浴の検知に基づいて入浴時間のカウントを開始する入浴タイマー部と、前記入浴の検知時における前記湯温および前記室温に基づいて、入浴者の体温が所定以上まで上昇することを制限するための入浴予定時間を設定する時間設定部と、前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達したことにより報知を行う報知処理部と、前記入浴タイマーの実行中において、前記温度センサにより検知された前記湯温が入浴開始時の前記湯温より低いことに基づいて前記浴槽内の湯水を追い焚きする処理を実行する追い焚き実行部と、を備える。
【0009】
本態様に係るふろ装置によれば、入浴タイマーの実行中に浴槽内の湯温が低下すると、追い焚きが行われて湯温が高められる。このため、入浴予定時間が経過したタイミングにおいて、入浴者の身体は十分に温まった状態となっている。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感をより確実に得ることができる。
【0010】
本態様に係るふろ装置において、前記追い焚き実行部は、前記入浴予定時間より所定時間前のタイミングから、前記湯温の低下に基づく追い焚きの処理を実行するよう構成され得る。
【0011】
この構成によれば、入浴タイマーの開始時から追い焚きが繰り返されることを回避しつつ、入浴予定時間の経過時に入浴者の身体を効果的に温めておくことができる。
【0012】
本態様に係るふろ装置は、前記循環路に湯水を循環させるための循環ポンプを備え、前記追い焚き実行部は、前記循環ポンプを動作させた状態で、前記入浴タイマー実行中の前記湯温を前記温度センサに検知させるよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、浴槽内と循環路の湯温が略等しくなるため、温度センサにより浴槽内の湯水の温度をより正確に検知できる。このため、湯温の低下に基づく追い焚きの処理をより適正に行うことができ、入浴予定時間経過時に入浴者の身体を適切に温めておくことができる。
【0014】
本態様に係るふろ装置において、前記追い焚き実行部は、前記追い焚きの実行中に、前記湯温が、予め設定された設定温度に到達したことに基づいて、前記追い焚きを停止するよう構成され得る。
【0015】
この構成によれば、入浴タイマー実行中の追い焚き処理によって、浴槽内の湯水の温度が高くなりすぎて、入浴者の身体が温まりすぎることを抑制できる。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感を適切に得ることができる。
【0016】
この場合、前記追い焚き実行部は、前記追い焚きを停止した後、前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達するまでの間、前記湯温の低下に基づく前記追い焚きの処理を繰り返し実行するよう構成され得る。
【0017】
この構成によれば、入浴タイマー実行中の湯温を設定温度付近に保つことができる。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感を得ることができる。
【0018】
また、前記追い焚き実行部は、前記追い焚きの実行中に、前記入浴時間が前記入浴予定時間に到達したことに基づいて、前記追い焚きを停止するよう構成され得る。
【0019】
この構成によれば、入浴時間が入浴予定時間に到達したことが入浴者に報知された後に、追い焚きが実行され続けることを回避できる。よって、入力タイマーと連動した追い焚きを効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、入浴者が、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感をより確実に得ることが可能なふろ装置を提供できる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、給湯装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、給湯装置を構成する各機器の回路ブロックを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、給湯器の燃焼系および配管の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、入浴予定時間設定テーブルの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る、人体熱モデルについて説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、人体熱モデルについて説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、タイマー機能実行のために浴室リモコンの制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、タイマー機能実行のために給湯器の制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、浴室リモコンが入浴予定時間の到達の報知を行っている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
以下の実施形態では、給湯装置10が、特許請求の範囲に記載の「ふろ装置」に対応する。以下の実施形態では、給湯装置10が、ふろ関連機能とともに、台所の蛇口や、浴室のカラン等に対する給湯機能も実行する。
【0025】
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0026】
【0027】
給湯装置10は、ふろ装置として、ふろ自動機能、追い焚き機能、足し湯機能、足し水機能などのふろ機能を実行する。
【0028】
給湯装置10は、給湯器11と、リモートコントローラ12、13とを備えている。給湯器11は、ガスを燃料として湯水を供給するガス給湯器である。給湯器11により生成された湯水は、給湯口11aにそれぞれ接続された配管を介して、台所の蛇口や、浴槽、カラン等に供給される。給湯器11が、床暖房機能や、浴室暖房機能およびパネルヒータによる暖房機能を備える場合、これら機能を実現する機器に対して、給湯器11から湯水が供給される。
【0029】
リモートコントローラ12、13は、給湯器11に接続され、給湯装置10の各機能について種々の設定を行うために用いられる。リモートコントローラ12は、表示部121と、入力部122とを備え、リモートコントローラ13は、タッチパネルからなる表示入力部131と、運転ボタン132とを備える。操作者は、表示部121に表示された画面に従って入力部122を操作することにより、湯張りや給湯温度調節等について、任意の設定を行うことができる。また、操作者は、表示入力部131を操作することによっても、湯張り等の設定を行える。
【0030】
リモートコントローラ12は、浴室に設置され、リモートコントローラ13は、キッチン等に設置される。リモートコントローラ12、13には、音声を入出力するための音声窓12a、13aが設けられている。
【0031】
以下、浴室に設置されるリモートコントローラ12を、「浴室リモコン12」と称し、キッチン等に設置されるリモートコントローラ13を、「台所リモコン13」と称する。
【0032】
浴室リモコン12の入力部122には、運転ボタン122aが含まれている。運転ボタン122a、132は、給湯器11を運転オン状態と運転オフ状態とに切り替えるためのボタンである。
【0033】
さらに、入力部122および表示入力部131には、給湯温度を変更するためのボタンが含まれている。操作者は、このボタンを操作することにより、給湯の設定温度を変更することができる。この他、入力部122および表示入力部131には、ふろ自動機能や、追い焚き機能、足し湯機能、足し水機能等を実行するためのボタン等、給湯器11の動作を制御するためのボタンが含まれている。
【0034】
図2は、給湯装置10を構成する各機器の回路ブロックを示す図である。
【0035】
給湯器11は、制御部111と、記憶部112と、通信部113と、検出部114と、を備える。制御部111は、マイクロコンピュータを備え、記憶部112に記憶されたプログラムに従って、給湯器11内の各部の制御を行う。記憶部112は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0036】
通信部113は、制御部111からの制御に従って、浴室リモコン12および台所リモコン13と通信を行う。通信部113は、2芯通信線L1、L2を介して、浴室リモコン12の通信部125および台所リモコン13の通信部135と接続されている。また、2芯通信線L1、L2は、通信部113の内部において、互いに接続されている。したがって、浴室リモコン12の通信部125と台所リモコン13の通信部135は、2芯通信線L1、L2によって互いに接続されている。このため、通信部113、125、135の何れかから送信された信号は、他の通信部に同時に送信される。
【0037】
検出部114は、給湯器11に配置された各種センサを含んでいる。たとえば、検出部114は、湯水の温度を検出するための温度センサ、湯水の供給を検出するための流量センサ等を含んでいる。
【0038】
浴室リモコン12は、上述の表示部121および入力部122の他、制御部123と、記憶部124と、通信部125と、スピーカ126と、室温センサ127とを備える。表示部121は、たとえば、液晶パネルにより構成される。入力部122は、温度設定ボタン等の各種操作ボタンを備える。表示部121が、タッチパネルであってもよい。
【0039】
制御部123は、マイクロコンピュータを備え、記憶部124に記憶されたプログラムに従って所定の制御を行う。記憶部124は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0040】
通信部125は、制御部123からの制御に従って、給湯器11および台所リモコン13と通信を行う。スピーカ126は、制御部123により生成された音声信号に基づく音声を出力する。制御部123は、記憶部124に記憶されている音声情報を随時読み出して、音声信号を生成する。スピーカ126から出力された音声は、
図1の音声窓12aから出力される。
【0041】
室温センサ127は、浴室3内の温度(室温)を検出し、検出した室温を制御部123に出力する。検出された室温は、後述のように、タイマー機能における入浴予定時間の設定に用いられる。また、検出された室温は、随時、制御部123から給湯器11に送信される。
【0042】
台所リモコン13は、上述の表示入力部131および運転ボタン132の他、制御部133と、記憶部134と、通信部135と、スピーカ136とを備える。制御部133は、マイクロコンピュータを備え、記憶部134に記憶されたプログラムに従って所定の制御を行う。記憶部134は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0043】
通信部135は、制御部133からの制御に従って、給湯器11および浴室リモコン12と通信を行う。スピーカ136は、制御部133により生成された音声信号に基づく音声を出力する。制御部133は、記憶部134に記憶されている音声情報を随時読み出して、音声信号を生成する。スピーカ136から出力された音声は、
図1の音声窓13aから出力される。
【0044】
本実施形態では、入浴者ののぼせを防止するためのタイマー機能が給湯装置10に装備されている。このタイマー機能を実現するために、給湯器11の制御部111には、記憶部112に記憶されたプログラムによって、入浴検知部111a、入浴タイマー部111b、報知処理部111cおよび追い焚き実行部111dの機能が付与されている。また、このタイマー機能を実現するために、浴室リモコン12の制御部123には、記憶部124に記憶されたプログラムによって、時間設定部123aの機能が付与されている。
【0045】
入浴検知部111aは、後述する水位センサS1(
図3参照)の検出結果に基づき浴槽への入浴を検知する。湯が張られた浴槽内に人が入ると浴槽内の水位が上昇する。浴槽内へ人が入ったことに基づく水位変動を、水位センサS1によって検知できる。入浴検知部111aは、水位センサS1の検知結果に基づいて、浴槽2に対する人の入浴を検知する。
【0046】
なお、湯が張られた浴槽内から人が出ると浴槽内の水位が低下する。よって、制御部111は、水位センサS1が浴槽内から人が出たことに基づく水位変動を検知することにより、浴槽内からの人の退出を検知できる。
【0047】
入浴タイマー部111bは、入浴検知部111aにより入浴が検知されたことに基づいて入浴時間のカウントを開始する。報知処理部111cは、入浴タイマー部111bによりカウントされる入浴時間が、時間設定部123aにより設定された入浴予定時間に到達したことにより所定の報知を行う。追い焚き実行部111dは、入浴タイマーの実行中において、後述する温度センサS5(
図3参照)により検知された浴槽内の湯温が入浴開始時の湯温より低いことに基づいて浴槽内の湯水を追い焚きする処理を実行する。
【0048】
時間設定部123aは、入浴検知部111aにより入浴が検知された際に、温度センサS5によって検知された湯温と室温センサ127によって検知された室温とに基づいて、入浴者の体温が所定温度以上まで上昇することを制限するための入浴予定時間を設定する。
【0049】
時間設定部123aにおける入浴予定時間の設定方法は、追って、
図4~
図7を参照して説明する。また、入浴検知部111a、入浴タイマー部111b、報知処理部111cおよび追い焚き実行部111dにおける入浴タイマー実行時の処理は、追って、
図8を参照して説明する。
【0050】
図3は、給湯器11の燃焼系および配管の構成を模式的に示す図である。
【0051】
図3に示すように、給湯器11は、燃焼系の構成として、給湯部210と、追い焚き部220と、バイパス部230とを備える。給湯器11は、浴槽2が設けられた浴室3の外に設置される。
【0052】
給湯部210は、給水管路211と、給湯熱交換器212と、給湯管路213と、給湯燃焼器214と、給気ファン215とを含む。給水管路211は、水道管と給湯熱交換器212とに繋がり、給湯管路213は、給湯熱交換器212と浴室水栓4および外部水栓5とに繋がる。給湯燃焼器214には、比例弁216の開度に応じた量のガス(燃料ガス)が給湯ガス管路217を通じて供給される。図示しないガス電磁弁が開放されると、給湯ガス管路217にガスが供給される。給湯燃焼器214は、ガスを燃料として、ガスの供給量に応じた強さで燃焼する。給気ファン215は、給湯燃焼器214に燃焼用の空気を供給する。
【0053】
追い焚き部220は、戻り管路221と、ふろ熱交換器222と、往き管路223と、ふろ燃焼器224と、循環ポンプ225とを含む。戻り管路221は、浴槽2の循環アダプタ2aとふろ熱交換器222とに繋がり、往き管路223は、ふろ熱交換器222と循環アダプタ2aとに繋がる。戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223は、給湯器11と浴槽2との間で浴槽2内の湯水を循環させるための循環路P1を構成する。
【0054】
ふろ燃焼器224には、比例弁226の開度に応じた量のガス(燃料ガス)がふろガス管路227を通じて供給される。図示しないガス電磁弁が開放されると、ふろガス管路227にガスが供給される。ふろ燃焼器224は、ガスを燃料として、ガスの供給量に応じた強さで燃焼する。給気ファン215が給湯部210と追い焚き部220との間で共用され、給気ファン215からふろ燃焼器224に燃焼用の空気が供給される。戻り管路221に、循環ポンプ225および水位センサS1が配置される。水位センサS1は、戻り管路221内の水圧に基づいて浴槽2内の水位を検出する。
【0055】
バイパス部230は、バイパス管路231と、給湯電磁弁232とを含む。バイパス管路231は、給湯管路213と戻り管路221とに繋がる。給湯電磁弁232は、バイパス管路231を開閉する。
【0056】
給湯器11は、水位センサS1の他に、給水管路211の流量を検出するための流量センサS2と、給水管路211に導入された水の温度を検出するための温度センサS3と、給湯熱交換器212で加温された後の湯水の温度を検出するための温度センサS4とを備えている。また、給湯器11は、戻り管路221内の湯水の温度を検出することにより、浴槽2内に溜められた湯水の温度を検出する温度センサS5を備えている。これらセンサS1~S5は、
図2の検出部114に含まれる。
【0057】
制御部111は、給湯部210の給湯燃焼器214、給気ファン215および比例弁216、追い焚き部220のふろ燃焼器224、循環ポンプ225および比例弁226、バイパス部230の給湯電磁弁232などを制御する。
【0058】
浴室水栓4または外部水栓5が開かれると、給湯機能が実行される。水道管からの水が給水管路211を通じて給湯熱交換器212に導入されるとともに、給湯燃焼器214が燃焼して給湯熱交換器212が加熱される。給湯熱交換器212に導入された水が加熱されて湯となり、湯が給湯管路213を通じて浴室水栓4または外部水栓5に供給される。浴室水栓4または外部水栓5が閉じられると、水道管から給水管路211への給水が停止するとともに給湯燃焼器214の燃焼が停止する。
【0059】
また、制御部111は、給湯部210を制御して、湯張り機能(ふろ自動機能)を実行する。この場合、給湯電磁弁232が開放されるとともに、水道管からの水が給水管路211を通じて給湯熱交換器212に導入され、給湯熱交換器212で加熱される。そして、給湯熱交換器212からの湯が給湯管路213およびバイパス管路231を通じて戻り管路221に導入される。
【0060】
戻り管路221に導入された湯の一部は、戻り管路221を循環アダプタ2a側へと流れ、循環アダプタ2aから浴槽2内に注がれる。戻り管路221に導入された湯の残りは、戻り管路221をふろ熱交換器222側へと流れ、さらにふろ熱交換器222および往き管路223を流れて循環アダプタ2aから浴槽2内に注がれる。
【0061】
給湯が行われて浴槽2内に湯水が溜められると、戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223が湯水で満たされた状態となる。これにより、水位センサS1での浴槽2内の水位検出が可能となる。浴槽2内の水位が予め設定された水位に到達したことが水位センサS1により検出されると、給湯電磁弁232が閉じられ、水道管から給水管路211への給水が停止するとともに給湯燃焼器214の燃焼が停止する。
【0062】
戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223が湯水で満たされた状態にあるとき、戻り管路221内の湯水の温度は、浴槽2内の湯水の温度とほぼ等しくなる。温度センサS5により、戻り管路221内の湯水の温度を、浴槽2内の湯水の温度として検出できる。温度センサS5が検出した温度は、浴槽2内の湯水の温度(湯温)として用いられる。温度センサS5は、検出した湯温を制御部111に出力する。
【0063】
この他、制御部111は、追い焚き部220を制御して、追い焚き機能を実行する。この場合、循環ポンプ225が作動するとともにふろ燃焼器224が燃焼する。浴槽2内の湯が、戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223からなる循環路P1と浴槽2との間で循環し、その間にふろ熱交換器222で加熱される。これにより、浴槽2内の湯温が上昇する。
【0064】
また、足し湯機能、足し水機能が、制御部111の制御による給湯部210からの浴槽2への給湯および給水により実行される。足し水機能では、給湯燃焼器214は燃焼しない。
【0065】
なお、ふろ自動機能には、湯張り機能と、湯張りの後に浴槽2内の湯水の温度を所定のふろ設定温度に維持する保温機能とが含まれる。保温機能において、制御部111は、所定のタイミングで、温度センサS5からの湯温を参照し、参照した湯温に基づいて、浴槽2内の湯温がふろ設定温度となるように、追い焚き部220による追い焚きを実行する。保温機能により、浴槽2内の湯温は、ふろ設定温度に追従する。ふろ設定温度は、浴室リモコン12でのボタン操作により設定される。
【0066】
次に、入浴予定時間の設定方法について説明する。
【0067】
本実施形態では、入浴者ののぼせを防止するためのタイマー機能により、入浴予定時間が設定される。ただし、入浴予定時間は、のぼせ防止のタイマー機能とは異なるタイマー機能によって設定されてもよい。たとえば、入浴後に入浴者が心地よく眠りにつけるよう入浴者の体を温めるためのタイマー機能により、入浴予定時間が設定されてもよい。
【0068】
入浴予定時間は、
図2の時間設定部123aが設定する。入浴予定時間は、浴槽2内への入浴開始から入浴者の深部体温の上昇値がのぼせ防止のために設定された所定の温度上昇値に到達するまでの時間である。入浴により過度に深部体温が上昇すると、熱中症等の体調不良症状、すなわちのぼせの発症につながりやすくなる。この点を考慮して、上述の温度上昇値が選定される。
【0069】
本実施形態では、入浴者の深部体温が入浴開始からこの温度上昇値に到達するまでの入浴予定時間が、室温および湯温の組合せに紐づけられた入浴予定時間設定テーブルが予め準備される。このような入浴予定時間設定テーブルが、浴室リモコン12の記憶部124に記憶されている。入浴予定時間設定テーブルは、後述する人体熱モデルHMを用いて生成され得る。すなわち、人体熱モデルHMにより得られる計算式に基づいて深部体温が算出され、算出された深部体温に基づき入浴予定時間設定テーブルの登録される入浴予定時間が算出される。
【0070】
但し、入浴予定時間テーブルの生成方法は、これに限られるものではなく、たとえば、実際に人が湯に浸かったときの深部体温の温度上昇値を計測し、その計測結果を統計処理することで、入浴予定時間テーブルが生成されてもよい。
【0071】
図4は、入浴予定時間設定テーブルの構成例を示す図である。
【0072】
入浴予定時間設定テーブルには、浴槽2内の湯温および浴室3内の室温の組合せに対応付けて、これら湯温および室温のときに深部体温の上昇値が所定の温度上昇値(のぼせを監視するための温度上昇値)に到達する時間が入浴予定時間として登録されている。
図4には、入浴予定時間がtn(n=1~221)として示されている。たとえば、湯温32°と室温5°の組合せには入浴予定時間t1が紐付けられている。
【0073】
上述の人体熱モデルHMを用いる場合、入浴予定時間設定テーブルは、たとえば、以下の工程により作成される。
【0074】
入浴開始から所定時間毎の深部体温が推定(計算式により算出)され、入浴開始からの時間経過と深部体温との関係を示すデータ(グラフ)が作成される。浴槽2内の湯温と浴室3内の室温とをそれぞれ変化させながら、このようなデータが湯温と室温の組合せごとに作成される。作成された各データ(グラフ)から、深部体温の上昇値が所定の温度上昇値に到達する時間が、各データの湯温および室温の組合せに紐付けられる入浴予定時間として算出される。こうして、それぞれの湯温および室温の組合せに入浴予定時間を紐づけた入浴予定時間設定テーブルが作成される。入浴予定時間設定テーブルにおいて、入浴予定時間は、浴槽2内の湯温が高いほど短くなり、且つ、浴室3内の室温が高いほど短くなる。
【0075】
入浴者の深部体温の推定に用いられる人体熱モデルHMは、人体を複数の部位(層)に分割したときの各部位における熱収支に基づいて体温を計算する物理モデルである。
【0076】
図5および
図6は、人体熱モデルHMを説明する図である。
【0077】
図5に示すように、本実施形態の人体熱モデルHMでは、人体が、皮膚層SKと、皮膚層SKよりも人体の中心側となるコア層CRと、皮膚層SKとコア層CRとの間の中間層MDと、に分割される。さらに、皮膚層SKは、浴室3内の空気に接する第1皮膚層SK1と浴槽2内の湯水に接する第2皮膚層SK2とに分割され、中間層MDは、第1皮膚層SK1に接する第1中間層MD1と第2皮膚層SK2に接する第2中間層MD2とに分割される。
【0078】
図6に示すように、第1皮膚層SK1では、浴室3内の空気と当該第1皮膚層SK1との間の熱移動として、放射・対流による熱移動および蒸発による熱損失が生じる。また、当該第1皮膚層SK1と第1中間層MD1との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。さらに、当該第1皮膚層SK1とコア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。
【0079】
第2皮膚層SK2では、浴槽2内の湯水と当該第2皮膚層SK2との間の熱移動として、対流による熱移動が生じる。また、第2皮膚層SK2と第2中間層MD2との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。さらに、第2皮膚層SK2とコア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。
【0080】
第1中間層MD1では、第1皮膚層SK1と当該第1中間層MD1との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。また、当該第1中間層MD1とコア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。
【0081】
第2中間層MD2では、第2皮膚層SK2と当該第2中間層MD2との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。また、当該第2中間層MD2とコア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。
【0082】
コア層CRでは、第1中間層MD1と当該コア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。また、第2中間層MD2と当該コア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。さらに、第1皮膚層SK1と当該コア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。さらに、第2皮膚層SK2と当該コア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。さらに、代謝による熱生産、呼吸による熱損失および外部仕事による熱移動が生じる。
【0083】
人体熱モデルHMにより得られる、第1中間層MD1、第2中間層MD2、コア層CR、第1皮膚層SK1および第2皮膚層SK2における熱収支式(熱収支の関係式)は、それぞれ、以下の式1、式2、式3、式4および式5により表される。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
これらの式中の記号の意味は、以下のとおりである。
【0090】
cmd:中間層MD(第1中間層MD1、第2中間層MD2)の比熱[J/kg・℃]
ccr:コア層CRの比熱[J/kg・℃]
csk:皮膚層SK(第1皮膚層SK1、第2皮膚層SK2)の比熱[J/kg・℃]
cbl:血流の比熱[[J/kg・℃]
mmd_a:第1中間層MD1の質量[kg]
mmd_b:第2中間層MD2の質量[kg]
msk_a:第1皮膚層SK1の質量[kg]
msk_b:第2皮膚層SK2の質量[kg]
mcr:コア層CRの質量[kg]
Tmd_a:第1中間層MD1の温度[℃]
Tmd_b:第2中間層MD2の温度[℃]
Tsk_a:第1皮膚層SK1の温度[℃]
Tsk_b:第2皮膚層SK2の温度[℃]
Tcr:コア層CRの温度[℃]
α:湯水に接している体表面積率[%]
Kcm:コア層CRと中間層MDとの間の熱コンダクタンス[W/(m2・℃)]
Kms:中間層MDと皮膚層SKとの間の熱コンダクタンス[W/(m2・℃)]
M:代謝による生産性[W/m2]
W:外部仕事量[W/m2]
Eres:呼吸による外部への熱損失[W/m2]
Esk:皮膚表面での蒸発による熱損失[W/m2]
Ra:空気に対する放射による熱伝達[W/m2]
Ca:空気に対する対流による熱伝達[W/m2]
Chw:湯水に対する対流による熱伝達[W/m2]
Vbl:血流量[m2/(m2・S)]
A:体表面積[m2]
【0091】
cmd、ccr、csk、cbl、mmd_a、mmd_b、msk_a、msk_b、mcr、α、Kcm、Kms、M、W、Aの値は、予め決められる。
【0092】
すなわち、中間層MD、コア層CRおよび皮膚層SKのそれぞれの比熱には大差はないため、たとえば、cmd、ccr、cskは、同じ値とされ、人体の比熱が用いられる。たとえば、mmd_a、mmd_b、msk_a、msk_b、mcrは、第1中間層MD1、第2中間層MD2、コア層CR、第1皮膚層SK1および第2皮膚層SK2の質量比率を定めて、日本人の標準的な体重とこれら各層の質量比率とに基づいて決定する。αは、人体の脇より下が湯水に接していると見做し、たとえば、70%に設定される。
【0093】
また、KcmおよびKmsは、たとえば、身長と、体重と、コア層CR、中間層MDおよび皮膚層SKの各層の密度、熱伝導率および質量比率と、を用いて、各層の熱抵抗が算出され、これら熱抵抗の逆数として、これら熱抵抗から求めることができる。
【0094】
さらに、Mは、たとえば、日本人の標準的な基礎代謝量が用いられる。Wは、入浴中、入浴者はほぼ動かないため、0に設定される。Aは、たとえば、日本人の標準的な体表面積が用いられる。
【0095】
EresおよびEskは、人体温熱生理モデルに関する文献「Gagge, A.P., Stolwijk, J.A.J and Nishi,Y.:An Effective TemperatureScale Based on a Simple Model of Human Physiological Regulatory Response,ASHRAETrans., 77,247-262,1971」に示された計算式により算出できる。すなわち、Eresは、浴室3内の気温Taにおける飽和水蒸気圧と、空気中の相対湿度と、代謝による生産性Mとを用いて求めることができる。Eskは、水蒸気の拡散熱Ediffと発汗による蒸発熱Erswの合算により求められる。Ediffは、空気の熱伝達率、皮膚層SKの温度Tskにおける飽和水蒸気圧、浴室3内の気温Taにおける飽和水蒸気圧、空気中の相対湿度などを用いて求めることができる。Erswは、皮膚層SKの温度Tsk、コア層CRの温度Tcrなどを用いて求めることができる。
【0096】
Raは、Tsk_aと浴室3内の気温Taとの差分に放射熱伝達率を乗じることにより算出される。Caは、Tsk_aとTaとの差分に対流熱伝達率を乗じることにより算出される。Chwは、Tsk_bと浴槽2内の湯温Tbとの差分に対流熱伝達率を乗じることにより算出される。
【0097】
Vblの値は、以下の式6により算出される。
【0098】
【0099】
この式中の記号の意味は、以下のとおりである。
【0100】
Tsk:皮膚層SKの温度[℃]
Tsk_sp:皮膚層SKのセットポイント[℃]
Tcr_sp:コア層CRのセットポイント[℃]
【0101】
Tskは、αに基づいたTsk_aとTsk_bの重み付平均であり、皮膚層SKの平均温度である。Tsk_spは、皮膚層SKの平均温度を基準として定められる。
【0102】
入浴者の深部体温は、上述の計算式(熱収支式)を用いて、以下のように算出される。
【0103】
まず、第1中間層MD1の温度Tmd_a、第2中間層MD2の温度Tmd_b、第1皮膚層SK1の温度Tsk_a、第2皮膚層SK2の温度Tsk_b、コア層CRの温度Tcrの初期値が設定される。初期値は、入浴前の各層の温度である。
【0104】
ここで、入浴前のTmd_aとTmd_b(初期値)は同じ値に設定され、入浴前のTsk_aとTsk_b(初期値)は同じ値に設定される。たとえば、日本人の平均深部体温がTcrの初期値とされ、日本人の平均皮膚温がTsk_a、Tsk_bの初期値とされる。そして、これら平均深部体温と平均皮膚温とに基づいて、Tmd_a、Tmd_bの初期値が決められる。
【0105】
次に、入浴から時間ΔT経過時における第1中間層MD1、第2中間層MD2、コア層CR、第1皮膚層SK1および第2皮膚層SK2の温度勾配dTmd_a/dt、dTmd_b/dt、dTcr/dt、dTsk_a/dt、dTsk_b/dtが、上記式(1)~(5)に基づいて算出される。ここでは、今回のタイミングから時間ΔTだけ前の各層の温度Tmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_b、Tcrを上記式(1)~(5)に適用して、これら各層の温度勾配が算出される。入浴後、最初に時間ΔTが経過したタイミングでは、上述の初期値をそれぞれ対応する式に適用して、各層の温度勾配が算出される。
【0106】
このとき、式(4)に含まれる、空気に対する放射による熱伝達Raおよび空気に対する対流による熱伝達Caの算出に用いられる気温Taに、入浴開始時の浴室3内の室温が適用される。さらに、式(5)に含まれる、湯水に対する対流による熱伝達Chwの算出に用いられる湯温Tbに、入浴開始時の浴槽2内の湯温が適用される。
【0107】
したがって、式(3)により算出されるコア層CRの温度dTcr/dtr、すなわち深部体温の温度勾配の算出にも、入浴開始時の湯温および室温が用いられることになる。
【0108】
次に、算出された各層の温度勾配を時間ΔTで積分して、各層の温度上昇値が算出される。そして、算出された各層の温度上昇値を、今回のタイミングから時間ΔTだけ前の各層の温度Tmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_b、Tcrに加算して、これら各層の温度が算出される。入浴開始時から最初に時間ΔTが経過したタイミングでは、上述の初期値に各層の温度上昇値を加算して、今回のタイミングにおける各層の温度Tmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_b、Tcrが算出される。
【0109】
こうして、室温および湯温がそれぞれ所定の温度であるときの各層の温度が、入浴開始時から時間ΔTの経過ごとに算出される。入浴者の深部体温はコア層CRの温度である。したがって、入浴開始時から時間ΔT経過ごとに算出されるコア層CRの温度が、上述の入浴開始からの時間経過と深部体温との関係を示すデータ(グラフ)に対応する。
【0110】
図4の入浴予定時間設定テーブルの生成では、浴槽2内の湯温と浴室3内の室温とをそれぞれ変化させながら、上述の算出方法により、このようなデータが複数作成される。そして、作成された各データ(グラフ)から、深部体温の上昇値が所定の温度上昇値に到達する時間が、各データの湯温および室温の組合せに紐付けられる入浴予定時間として抽出される。
【0111】
ここで、所定の温度上昇値は、上記のように、のぼせ発生の可能性が想定され得る温度上昇値である。タイマー機能が、入浴後に入浴者が心地よく眠りにつけるよう入浴者の体を温めるためのタイマー機能である場合、深部体温と比較される所定の温度上昇値は、このような安眠効果の観点から設定される。たとえば、安眠効果の観点から設定される所定の温度上昇値は、のぼせ防止の観点から設定される所定の温度上昇値の半分程度に設定され得る。
【0112】
図7は、タイマー機能実行のために浴室リモコン12の制御部123が実行する処理を示すフローチャートである。
図7の処理は、主として時間設定部123aの機能により行われる。
【0113】
制御部123は、浴槽2に対する入浴が行われたか否かを判定する(S101)。この判定は、給湯器11側の制御部111(入浴検知部111a)による入浴検知結果に基づいて行われる。すなわち、給湯器11の制御部111(入浴検知部111a)は、水位センサS1の検知結果を随時参照して、浴槽2に人が入浴したか否かを監視する。制御部123は、浴槽2に人が入浴したことを検知すると、そのことを浴室リモコン12および台所リモコン13に通知する。浴室リモコン12の制御部123は、この通知を受信したことに基づいて、ステップS101の判定をYESとする。
【0114】
浴槽2に人が入浴すると(S101:YES)、制御部123は、室温センサ127から室温を取得し(S102)、さらに、浴槽2内の湯の温度(湯温)を取得する(S103)。ステップS103の湯温は、現在のふろ設定温度がそのまま用いられる。これに代えて、
図3の温度センサS5が入浴開始時に検出した現在の湯温を、制御部123が給湯器11から取得してもよい。
【0115】
制御部123は、取得した室温および湯温から入浴予定時間を取得する(S104)。具体的には、制御部123は、これら室温および湯温の組合せに紐付けられている入浴予定時間を、
図4の入浴予定時間設定テーブルから取得する。制御部123は、取得した入浴予定時間を給湯器11に通知する(S105)。これにより、制御部123は、
図7の処理を終了する。
【0116】
図8は、タイマー機能実行のために給湯器11の制御部111が実行する処理を示すフローチャートである。
【0117】
図8の処理において、ステップS201は、入浴検知部111aの機能により行われ、ステップS202は、入浴タイマー部111bの機能により行われ、ステップS203~S209、S212は、追い焚き実行部111dの機能により行われ、ステップS210、S211は、報知処理部111cの機能により行われる。
【0118】
制御部111は、水位センサS1の検知結果に基づき、浴槽2に人が入浴したか否かを監視する(S201)。浴槽2に人が入浴すると(S201:YES)、制御部111は、入浴時間のカウントを開始させ(S202)、入浴時間が、入浴予定時間に対して所定時間ΔTだけ前の時点に到達したか否かを判定する(S203)。
【0119】
ステップS203の入浴予定時間は、
図7に処理により、浴室リモコン12から給湯器11に通知される。また、所定時間ΔTは、数分程度(たとえば3分)に設定される。但し、所定時間ΔTは、これに限られるものではなく、入浴開始の直後付近のタイミングでステップS203の判定がYESとなるように設定されてもよい。
【0120】
ステップS203の判定がYESとなると、制御部111は、
図3の循環ポンプ225を動作させて、浴槽2内の湯水を循環路P1に循環させる(S204)。これにより、温度センサS5によって、浴槽2内の湯水の温度(湯温)を正確に検知できる。そして、制御部111は、温度センサS5により検知された現在の湯温が、入浴時の浴槽2内の湯水の温度(湯温)に比べて、所定の閾値温度だけ低下したか否かを判定する(S205)。
【0121】
ここで、入浴時の湯温は、入浴時のふろ設定温度がそのまま用いられる。これに代えて、
図3の温度センサS5によって入浴時に検知された湯温が入浴時の湯温として用いられてもよい。また、閾値温度は、たとえば、1℃までの範囲で設定され得る。なお、ステップS205では、閾値温度を用いずに、現在の湯温が入浴時の湯温より低下したか否かが判定されてもよい。
【0122】
ステップS206の判定がNOである場合、制御部111は、処理をステップS210に進める。ステップS206の判定がYESである場合、制御部111は、浴槽2内の湯水に対して追い焚きを開始する(S206)。この追い焚きは、入浴時間が入浴予定時間に到達せず(S207:YES)、且つ、浴槽2内の湯水の温度(湯温)がふろ設定温度未満である期間において(S208:NO)、継続される。
【0123】
入浴時間が入浴予定時間に到達し(S207:NO)、あるいは、浴槽2内の湯水の温度(湯温)がふろ設定温度以上になると(S208:YES)、制御部111は、追い焚きを終了する(S209)。そして、制御部111は、入浴時間が入浴予定時間に到達したか否かを判定する(S210)。
【0124】
入浴時間が入浴予定時間に到達していない場合(S210:NO)、制御部111は、処理をステップS205に進めて、上記の処理を繰り返し行う。入浴時間が入浴予定時間に到達した場合(S210:YES)、制御部111は、入浴者に対して退浴を促すための報知処理を行う(S211)。そして、制御部111は、循環ポンプ225を停止させる(S212)。これにより、制御部111は、
図8の処理を終了する。
【0125】
ステップS211のこの報知処理において、制御部111は、浴室リモコン12に対し、退浴報知のための指令を送信する。これにより、浴室リモコン12において、入浴者に退浴を促すための報知がなされる。たとえば、浴室リモコン12の制御部123は、
図9に示すようなメッセージ音声を、スピーカ126に出力させる。これにより、入浴者は、退浴を促され、浴槽2から退出する。こうして、過度の温まりにより入浴者にのぼせが生じることが、未然に回避される。
【0126】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0127】
図8に示したように、入浴タイマーの実行中(S202)に浴槽2内の湯温が低下すると(S205)、追い焚きが行われて(S206)、浴槽2の湯温が高められる。このため、入浴予定時間が経過したタイミングにおいて(S210:YES)、入浴者の身体は十分に温まった状態となっている。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感をより確実に得ることができる。
【0128】
図8に示したように、制御部111(追い焚き実行部111d)は、入浴予定時間より所定時間ΔT前のタイミングから(S203:YES)、湯温の低下に基づく追い焚きの処理を実行する(S204~S209)。これにより、入浴タイマーの開始時から追い焚きが繰り返されることを回避しつつ、入浴予定時間の経過時に入浴者の身体を効果的に温めておくことができる。
【0129】
図3に示したように、給湯装置10(ふろ装置)は、循環路P1に湯水を循環させるための循環ポンプ225を備え、
図8に示したように、制御部111(追い焚き実行部111d)は、循環ポンプ225を動作させた状態で(S204)、入浴タイマー実行中の湯温を温度センサS5に検知させる(S205)。これにより、浴槽2内と循環路P1の湯温が略等しくなるため、温度センサS5により浴槽2内の湯水の温度をより正確に検知できる。このため、湯温の低下に基づく追い焚きの処理をより適正に行うことができ、入浴予定時間経過時に入浴者の身体を適切に温めておくことができる。
【0130】
図8に示したように、制御部111(追い焚き実行部111d)は、追い焚きの実行中に、湯温が、予め設定された設定温度に到達したことに基づいて(S208:YES)、追い焚きを停止する(S209)。これにより、入浴タイマー実行中の追い焚き処理によって、浴槽2内の湯水の温度が高くなりすぎて、入浴者の身体が温まりすぎることを抑制できる。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感を適切に得ることができる。
【0131】
図8に示したように、制御部111(追い焚き実行部)は、追い焚きを停止した後(S209)、入浴時間が入浴予定時間に到達するまでの間(S210:NO)、湯温の低下に基づく追い焚きの処理(S205、S206)を繰り返し実行する。これにより、入浴タイマー実行中の湯温を設定温度付近に保つことができる。よって、入浴者は、タイマー機能により退浴を促された際に、温まりの満足感を得ることができる。
【0132】
図8に示したように、制御部111(追い焚き実行部)は、追い焚きの実行中に、入浴時間が入浴予定時間に到達したことに基づいて(S207:NO)、追い焚きを停止する(S209)。これにより、入浴時間が入浴予定時間に到達したことが入浴者に報知された後に、追い焚きが実行され続けることを回避できる。よって、入力タイマーと連動した追い焚きを効率的に行うことができる。
【0133】
<変更例>
上記実施形態では、入浴時の室温および湯温に対応する入浴予定時間が、
図4の入浴予定時間設定テーブルから取得された。しかし、入浴予定時間の取得方法はこれに限られるものではなく、たとえば、上述の算出方法により、入浴予定時間が算出されてもよい。この場合、入浴時の室温および湯温から上述の算出方法によりコア層CRの温度データ(グラフ)が算出される。そして、算出された温度データ(グラフ)から、入浴開始時からのコア層CRの温度(深部体温)の温度上昇値が所定の温度上昇値に到達する時間が算出される。こうして算出された時間が、入浴予定時間として取得される。
【0134】
また、上記実施形態では、入浴開始時からの深部体温の温度上昇値が、所定の温度上昇値に到達するまでの時間が、入浴予定時間とされた。しかし、入浴予定時間の設定方法はこれに限られるものではなく、たとえば、深部体温が入浴開始時から所定の温度に到達するまでの時間が入浴予定時間とされてもよい。
【0135】
さらに、上記実施形態では、浴室リモコン12のスピーカ126により、退浴を促す報知が行われたが、浴室リモコン12だけでなく、台所リモコン13においても、スピーカ136による音声や表示入力部131による画面表示によって、この報知が行われてもよい。また、給湯装置10(ふろ装置)が、当該給湯装置10を利用する家族の携帯端末装置と通信可能である場合は、この携帯端末装置に対し、退浴を促す報知が行われたことの通知が送信されてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、給湯器11の制御部111に入浴検知部111a、入浴タイマー部111b、報知処理部111cおよび追い焚き実行部111dの機能が設定され、浴室リモコン12の制御部123に時間設定部123aの機能が設定されたが、これらの機能の設定形態は、これに限られるものではない。
【0137】
たとえば、給湯器11の制御部111にさらに時間設定部123aの機能が設定され、浴室リモコン12の制御部123から時間設定部123aの機能が省略されてもよい。この場合、給湯器11の制御部111は、時間設定部の機能により、
図7のS101~S104の処理を実行して、入浴予定時間を取得する。ステップS102において、制御部111は、浴室リモコン12から室温を取得する。また、
図4の入浴予定時間設定テーブルは、給湯器11の記憶部112に保持される。
【0138】
あるいは、浴室リモコン12にこれらの機能の全部または一部が設定されてもよく、また、台所リモコン13にこれらの機能の全部または一部が設定されてもよい。この他、給湯装置10(ふろ装置)が、給湯器11、浴室リモコン12および台所リモコン13以外の制御ユニットを備える場合は、この制御ユニットにこれらの機能の全部または一部が設定されてもよい。
【0139】
また、
図8の処理は、一例であって、一部が変更されてもよい。たとえば、
図8の処理からステップS203が省略され、入浴時間のカウント開始に応じて、ステップS204以降の処理が実行されてもよい。
【0140】
また、入浴検知部111a、入浴タイマー部111b、報知処理部111cおよび追い焚き実行部111dおよび時間設定部123aは、必ずしも、プログラムに基づく機能として実現されなくてもよく、ロジック回路に基づくハードウエアにより実現されてもよい。
【0141】
また、室温センサ127は、必ずしも、浴室リモコン12に配置されなくてもよく、たとえば、浴室3内の浴室リモコン12とは別の位置に配置されてもよい。
【0142】
さらに、給湯器11の構成は、
図2および
図3に示した構成に限られるものではなく、他の構成であってもよい。また、給湯装置10(ふろ装置)は、ガス燃料を用いるものに限らず、オイルを燃料とする給湯装置であってもよい。給湯装置10は、貯留タンクを用いた貯留式のものであってもよく、燃料電池等の発電ユニットをさらに備えた構成であってもよい。
【0143】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0144】
2 浴槽
3 浴室
10 給湯装置(ふろ装置)
111a 入浴検知部
111b 入浴タイマー部
111c 報知処理部
111d 追い焚き実行部
123a 時間設定部
127 室温センサ
S1 水位センサ
S5 温度センサ