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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165667
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20241121BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241121BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241121BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241121BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20241121BHJP
   B22F 10/60 20210101ALI20241121BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20241121BHJP
   B22F 7/06 20060101ALI20241121BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20241121BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y80/00
B22F10/00
B22F10/60
B22F10/38
B22F7/06 Z
F16C11/04 B
F16C11/04 C
E05D3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082046
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】512209689
【氏名又は名称】SOLIZE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
(72)【発明者】
【氏名】関根 武
【テーマコード(参考)】
2E030
3J105
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
2E030CA02
2E030CB01
3J105AA03
3J105AA12
3J105AC01
3J105BB06
3J105BB07
4F213AG27
4F213AH05
4F213AH10
4F213AH14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4K018HA03
4K018HA04
4K018JA12
(57)【要約】
【課題】軸部のガタつきの少ない構造体を提供する。
【解決手段】構造体1は、実用軸部32Aと、実用軸部32Aに接続され、実用軸部32Aよりも細い造形用軸部36Aとを含む軸部30Aを有する積層造形部材10Aと、積層造形部材10Aの軸部30Aが挿通される貫通孔21Bが形成された接続部22Bを有する積層造形部材10Bとを備える。積層造形部材10Aの造形用軸部36Aは、造形用軸部36Aの外周面と積層造形部材10Bの貫通孔21Bの内周面との間に、造形用軸部36Aと接続部22Bとを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙G1が形成されるような外形を有する。積層造形部材10Bの接続部22Bは、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の実用軸部と、前記第1の実用軸部に接続され、前記第1の実用軸部よりも細い第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の積層造形部材と、
前記第1の積層造形部材の前記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の積層造形部材と
を備え、
前記第1の積層造形部材の前記第1の造形用軸部は、前記第1の造形用軸部の外面と前記第2の積層造形部材の前記第1の貫通孔の内面との間に、前記第1の造形用軸部と前記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有し、
前記第2の積層造形部材の前記第1の接続部は、前記第1の積層造形部材の前記第1の実用軸部の周囲に位置する、
構造体。
【請求項2】
前記第1の積層造形部材は、前記第2の積層造形部材の前記第1の接続部の移動を前記第1の軸部の範囲内に規制可能な第1の規制部をさらに有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
第2の実用軸部と、前記第2の実用軸部に接続され、前記第2の実用軸部よりも細い第2の造形用軸部とを含む第2の軸部を有する第3の積層造形部材をさらに備え、
前記第1の積層造形部材は、前記第3の積層造形部材の前記第2の軸部が挿通される第2の貫通孔が形成された第2の接続部をさらに有し、
前記第3の積層造形部材の前記第2の造形用軸部は、前記第2の造形用軸部の外面と前記第1の積層造形部材の前記第2の貫通孔の内面との間に、前記第3の積層造形部材の前記第2の造形用軸部と前記第1の積層造形部材の前記第2の接続部とを同一の積層面で造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有し、
前記第1の積層造形部材の前記第2の接続部は、前記第3の積層造形部材の前記第2の実用軸部の周囲に位置する、
請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記第2の積層造形部材と前記第3の積層造形部材とは、前記第1の積層造形部材に対して同じ側に配置される、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
前記第3の積層造形部材は、前記第1の積層造形部材の前記第2の接続部の移動を前記第2の軸部の範囲内に規制可能な第2の規制部をさらに有する、請求項3に記載の構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造体を含む、回転機構。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の構造体を含む、固定機構。
【請求項8】
第1の実用軸部と、前記第1の実用軸部に接続される第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の部材と、前記第1の部材の前記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、
前記積層造形工程の後に、前記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程と
を含み、
前記積層造形工程は、
前記第1の部材の前記第1の造形用軸部と前記第2の部材の前記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形する第1の同一積層面造形工程
を含み、
前記第1の同一積層面造形工程においては、前記第1の部材の前記第1の造形用軸部の外面と前記第2の部材の前記第1の貫通孔の内面との間に、前記第1の造形用軸部と前記第1の接続部の積層造形に必要な間隙が形成されるように、前記第1の部材の前記第1の造形用軸部を前記第1の実用軸部よりも細く造形し、
前記部材移動工程は、
前記第2の部材の前記第1の接続部が前記第1の部材の前記第1の実用軸部の周囲に位置するように前記第2の部材を前記第1の部材に対して移動する第1の移動工程
を含む、
構造体の製造方法。
【請求項9】
前記積層造形工程により積層造形される前記複数の部材は、
第2の実用軸部と、前記第2の実用軸部に接続され、前記第2の実用軸部よりも細い第2の造形用軸部とを含む第2の軸部を有する第3の部材
をさらに含み、
前記第1の部材は、前記第3の部材の前記第2の軸部が挿通される第2の貫通孔が形成された第2の接続部をさらに有し、
前記積層造形工程は、
前記第3の部材の前記第2の造形用軸部と前記第1の部材の前記第2の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形する第2の同一積層面造形工程
をさらに含み、
前記第2の同一積層面造形工程においては、前記第3の部材の前記第2の造形用軸部の外面と前記第1の部材の前記第2の貫通孔の内面との間に、前記第2の造形用軸部と前記第2の接続部の積層造形に必要な間隙が形成されるように、前記第3の部材の前記第2の造形用軸部を前記第2の実用軸部よりも細く造形し、
前記部材移動工程は、
前記第1の部材の前記第2の接続部が前記第3の部材の前記第2の実用軸部の周囲に位置するように前記第1の部材を前記第3の部材に対して移動する第2の移動工程
をさらに含む、
請求項8に記載された構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及びその製造方法に係り、特に軸を有する部材とこの軸に接続される部材とを含む構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から3Dプリンタにより材料を1層ずつ積み重ねて立体構造物を造形する積層造形法が知られている。このような積層造形法は、軸を有する部材(軸部材)とこの軸に接続される部材(接続部材)とを含む構造体を作製する際にも用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような構造体を積層造形法により作製する場合には、造形中に軸部材と接続部材とが癒着してしまわないように軸部材と接続部材との間に十分な間隙を確保する必要がある。この結果、作製された軸部材と接続部材との間にも間隙が形成されることになり、作製された構造体において軸部材のガタつきが生じやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-12981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、軸部のガタつきの少ない構造体及びそのような構造体を簡単に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、軸部のガタつきの少ない構造体が提供される。この構造体は、第1の実用軸部と、上記第1の実用軸部に接続され、上記第1の実用軸部よりも細い第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の積層造形部材と、上記第1の積層造形部材の上記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の積層造形部材とを備える。上記第1の積層造形部材の上記第1の造形用軸部は、上記第1の造形用軸部の外面と上記第2の積層造形部材の上記第1の貫通孔の内面との間に、上記第1の造形用軸部と上記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有する。上記第2の積層造形部材の上記第1の接続部は、上記第1の積層造形部材の上記第1の実用軸部の周囲に位置する。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、軸部のガタつきの少ない構造体を簡単に製造することができる方法が提供される。この方法は、第1の実用軸部と、上記第1の実用軸部に接続される第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の部材と、上記第1の部材の上記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、上記積層造形工程の後に、上記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程とを含む。上記積層造形工程は、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部と上記第2の部材の上記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形する第1の同一積層面造形工程を含む。上記第1の同一積層面造形工程においては、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部の外面と上記第2の部材の上記第1の貫通孔の内面との間に、上記第1の造形用軸部と上記第1の接続部の積層造形に必要な間隙が形成されるように、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部を上記第1の実用軸部よりも細く造形する。上記部材移動工程は、上記第2の部材の上記第1の接続部が上記第1の部材の上記第1の実用軸部の周囲に位置するように上記第2の部材を上記第1の部材に対して移動する第1の移動工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における構造体を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す構造体の正面図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4A図4Aは、図1に示す構造体中の部材の斜視図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す部材の正面図である。
図4C図4Cは、図4Aに示す部材の平面図である。
図5A図5Aは、図1に示す構造体を製造するための積層造形工程を示す模式的断面図である。
図5B図5Bは、図1に示す構造体を製造するための積層造形工程を示す模式的断面図である。
図5C図5Cは、図1に示す構造体を製造するための部材移動工程を示す模式的断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態における構造体を示す斜視図である。
図7A図7Aは、図6に示す構造体を製造するための積層造形工程を示す模式的断面図である。
図7B図7Bは、図6に示す構造体を製造するための部材移動工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る構造体及びその製造方法の実施形態について図1から図7Bを参照して詳細に説明する。図1から図7Bにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図7Bにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態における構造体1を示す斜視図、図2は正面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。図1から図3に示すように、この構造体1は、(第1の)積層造形部材10Aと(第2の)積層造形部材10Bとを含んでいる。これらの積層造形部材10A,10Bは、後述するように3Dプリンタを用いた積層造形法によって製造されるものである。
【0010】
図4Aは積層造形部材10Aの斜視図、図4Bは正面図、図4Cは平面図である。図4Aから図4Cに示すように、積層造形部材10Aは、円筒状の基部20Aと、Z方向に延びる円形の貫通孔21Aが形成された円筒状の接続部22Aと、基部20Aと接続部22Aとを接続する中間部24Aと、基部20Aから+Z方向に延びる軸部30Aと、軸部30Aの+Z方向の端部で半径方向外側に広がる拡大部40Aとを有している。
【0011】
図4Bに示すように、軸部30Aは、基部20Aから+Z方向に延びる外径D1の実用軸部32Aと、実用軸部32Aから+Z方向に沿って外径が小さくなるテーパ部34Aと、テーパ部34Aから+Z方向に延びる外径D2(<D1)の造形用軸部36Aとを含んでいる。このように、実用軸部32Aはテーパ部34Aを介して造形用軸部36Aに接続されている。本実施形態においては、実用軸部32Aの外径D1は、接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりもわずかに小さい程度となっている。基部20Aの外径D3と拡大部40Aの外径D4は、いずれも接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりも大きくなっている。
【0012】
積層造形部材10Bは、XZ平面に関して積層造形部材10Aと対称な形状を有する部材である。このため、積層造形部材10Aの構成要素に対応する積層造形部材10Bの構成要素については、積層造形部材10Aの構成要素に付した符号中の添字「A」を「B」に代えることで重複する説明を省略する。例えば、積層造形部材10Bの軸部30Bは、積層造形部材10Aの軸部30Aと同様の構成を有する。
【0013】
図1に示す例では、第1の積層造形部材としての積層造形部材10Aが、(第1の)実用軸部32Aと、実用軸部32Aよりも細い(第1の)造形用軸部36Aとを含む(第1の)軸部30Aを有している。また、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bに積層造形部材10Aの軸部30Aが挿通されており、第2の積層造形部材としての積層造形部材10Bは、積層造形部材10Aの軸部30Aが挿通される(第1の)貫通孔21Bが形成された(第1の)接続部22Bを有している。この積層造形部材10Bの接続部22Bは、積層造形部材10Aの軸部30Aの実用軸部32Aの周囲に位置している。ここで、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外径D1図4B参照)は、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内径dよりもわずかに小さく、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間には、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受として機能するのに適切な大きさの間隙が形成されている。これにより、積層造形部材10Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aを中心として回転できるようになっている。したがって、このような構造体1を用いて、積層造形部材10Aの実用軸部32Aを中心として積層造形部材10Bが回転する回転機構を構成することができる。
【0014】
また、積層造形部材10Aの基部20Aの外径D3と拡大部40Aの外径D4のいずれも、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内径dよりも大きくなっているため、積層造形部材10Bの接続部22Bが、積層造形部材10Aの基部20Aと拡大部40Aとの間に延びる軸部30Aから離脱することが防止される。このように、本実施形態における積層造形部材10Aの基部20A及び拡大部40Aは、積層造形部材10Bの接続部22Bの移動を積層造形部材10Aの軸部30Aの範囲内に規制可能な(第1の)規制部として機能する。
【0015】
本実施形態では、積層造形部材10Aの造形用軸部36Aが、造形用軸部36Aの外周面と積層造形部材10Bの貫通孔21Bの内周面との間に、造形用軸部36Aと接続部22Bとを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有している。したがって、後述するように、積層造形部材10Aの造形用軸部36Aと積層造形部材10Bの接続部22Bとの癒着を防止しつつ、造形用軸部36Aと接続部22Bとを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、造形用軸部36A及び接続部22Bの積層造形の後に、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置するように積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して移動することで、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Aの実用軸部32Aのガタつきが低減される。
【0016】
本実施形態では、積層造形部材10Aの接続部22A及び中間部24Aと積層造形部材10Bの中間部24B、軸部30B、基部20B、及び拡大部40Bが特定の用途で使用されているわけではないので、これらの部分を別の機能を発揮する構成に変更してもよいし、あるいはこれらの部分を省略してもよい。
【0017】
次に、上述した構造体1を製造する方法について図5Aから図5Cを参照して説明する。構造体1を製造する方法は、上述した積層造形部材10A,10Bを積層造形する積層造形工程と、この積層造形工程の後に、積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して移動して構造体1を形成する部材移動工程とを含んでいる。
【0018】
積層造形工程においては、3Dプリンタを用いた積層造形法によって積層造形部材10A,10Bを作製する。この積層造形法の種類は特に限定されるものではなく、例えば、溶融した材料をノズルから押し出して積層する材料押出法、光硬化性樹脂をレーザで照射して積層する光造形法、ヘッドから噴射した材料を紫外線で硬化させて積層するマテリアルジェッティング法、材料粉末にノズルからバインダを噴射して固めることで積層するバインダジェッティング法、材料粉末にレーザを照射して焼結させることで積層する粉末床溶融結合法などを用いることができる。また、積層造形に用いる材料も特定のものに限定されるものではなく、例えば樹脂、金属、セラミック、石膏など各種の材料を用いることができる。
【0019】
積層造形工程では、図5Aに示すように、積層造形法により3Dプリンタのステージ3上に積層造形部材10A,10Bに対応する部材110A,110Bを構成する層を1層ずつ積み重ねていく。このとき、必要に応じてサポート材5を部材110A,110Bとともに積層してもよい。以下の説明では、積層造形工程中の部材110A,110Bをそれぞれ積層造形部材10A,10Bと呼ぶことがある。図5Aに示す例では、積層造形部材10Aを構成する基部20A、接続部22A、中間部24A、実用軸部32A、及びテーパ部34Aと、積層造形部材10Bを構成する拡大部40B、造形用軸部36B、テーパ部34B、及び実用軸部32Bとが形成されている。
【0020】
図5Bに示すように、図5Aに示す状態から部材110Aのテーパ部34A上に造形用軸部36A及び拡大部40Aを積層して積層造形部材10Aを作製し、部材110Bの実用軸部32B上に基部20B、接続部22B、及び中間部24Bを積層して積層造形部材10Bを作製する。
【0021】
ここで、部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの基部20B、接続部22B、及び中間部24Bとは同一の積層面(XY平面)に位置しているため、これらの部分は同一の積層面で連続的に積層される。換言すれば、積層造形工程は、部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの基部20B、接続部22B、及び中間部24Bとを同一の積層面で連続的に造形する工程(同一積層面造形工程)を含んでいる。この同一積層面造形工程においては、部材110Bの接続部22Bを部材110Aの造形用軸部36Aの周囲に造形するが、この造形用軸部36Aを先に造形した実用軸部32Aよりも細く造形する。これにより、部材110Aの造形用軸部36Aの外周面と部材110Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間に相対的に大きな間隙G1を確保することができる。したがって、この間隙G1の大きさを部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの接続部22Bとが同一積層面造形工程中に互いに癒着してしまうことがないような大きさとすることで、積層造形部材10Aと積層造形部材10Bとを互いに癒着させることなく安定的に作製することができる。
【0022】
図5A及び図5Bに示す例では、部材110Aの実用軸部32Aを積層造形する工程の後に、上述した同一積層面造形工程が行われるが、使用する積層造形法に応じてこれらの工程の順序を逆にすることも可能である。
【0023】
図5Bに示す積層造形部材10A,10Bの造形が完了した後、必要に応じてサポート材5を適切な方法により除去し、上述した部材移動工程を行う。この部材移動工程は、図5Cに示すように、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置するように積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して-Z方向に移動する工程(移動工程)を含んでいる。上述した積層造形工程と部材移動工程とにより、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間の間隙を上記間隙G1よりも小さくして、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Aの実用軸部32Aのガタつきが抑えられた構造体を製造することが可能となる。
【0024】
本実施形態では、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間には何も介在していないが、これらの面の間にベアリングを挿入して軸受性能を向上させてもよく、あるいはスペーサを挿入して間隙の大きさを調整してもよい。また、本実施形態では、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外径D1を積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内径dよりもわずかに小さくしているが、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外径D1を積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内径dよりも大きくして、部材移動工程において、積層造形部材10Bの接続部22Bを積層造形部材10Aの実用軸部32Aに圧入してもよい。この場合には、積層造形部材10Aの実用軸部32Aが積層造形部材10Bの接続部22Bに固定されることとなるので、この構造体を用いて固定機構を構成することができる。
【0025】
上述した構造体1の製造方法によれば、同一積層面造形工程において、部材110Aの造形用軸部36Aを実用軸部32Aよりも細く造形しているため、部材110Aの造形用軸部36Aの外周面と部材110Bの貫通孔21Bの内周面との間に、造形用軸部36Aと接続部22Bの積層造形に必要な間隙G1を確保することができる。したがって、同一積層面造形工程中に部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの接続部22Bとが互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置するように積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して移動することで、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Aの実用軸部32Aのガタつきが抑えられた構造体1を簡単に製造することが可能となる。
【0026】
図6は、本発明の第2の実施形態における構造体201を示す斜視図である。図6に示すように、この構造体201は、上述した第1の実施形態における(第1の)積層造形部材10A及び(第2の)積層造形部材10Bに加えて、(第3の)積層造形部材10Cを含んでいる。この積層造形部材10Cは、積層造形部材10A,10Bと同様に3Dプリンタを用いた積層造形法によって製造されるものである。積層造形部材10Cは、XZ平面に関して積層造形部材10Aと対称な形状を有する部材であり、積層造形部材10Bと同一の構成を有している。したがって、積層造形部材10Aの構成要素に対応する積層造形部材10Cの構成要素については、積層造形部材10Aの構成要素に付した符号中の添字「A」を「C」に代えることで重複する説明を省略する。例えば、積層造形部材10Cの軸部30Cは、積層造形部材10Aの軸部30Aと同様の構成を有する。
【0027】
図6に示す例では、第1の実施形態と同様に、第1の積層造形部材としての積層造形部材10Aが、(第1の)実用軸部32Aと、実用軸部32Aよりも細い(第1の)造形用軸部36Aとを含む(第1の)軸部30Aを有している。また、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bに積層造形部材10Aの軸部30Aが挿通されており、第2の積層造形部材としての積層造形部材10Bは、積層造形部材10Aの軸部30Aが挿通される(第1の)貫通孔21Bが形成された(第1の)接続部22Bを有している。この積層造形部材10Bの接続部22Bは、積層造形部材10Aの軸部30Aの実用軸部32Aの周囲に位置している。そして、第3の積層造形部材としての積層造形部材10Cが、(第2の)実用軸部32Cと、実用軸部32Cよりも細い(第2の)造形用軸部36Cとを含む(第2の)軸部30Cを有している。また、積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aに積層造形部材10Cの軸部30Cが挿通されており、第1の積層造形部材としての積層造形部材10Aは、積層造形部材10Cの軸部30Cが挿通される(第2の)貫通孔21Aが形成された(第2の)接続部22Aを有している。この積層造形部材10Aの接続部22Aは、積層造形部材10Cの軸部30Cの実用軸部32Cの周囲に位置している。
【0028】
ここで、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外径D1図4B参照)は、積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりもわずかに小さく、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外周面と積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間には、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの軸受として機能するのに適切な大きさの間隙が形成されている。これにより、積層造形部材10Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cを中心として回転できるようになっている。このように、本実施形態においては、積層造形部材10Aの実用軸部32Aを中心として積層造形部材10Bを回転させることができるとともに、積層造形部材10Cの実用軸部32Cを中心として積層造形部材10Aを回転させることができるので、本実施形態における構造体201を用いることで、第1の実施形態に比べてより柔軟な回転を実現する回転機構を構成することができる。
【0029】
また、積層造形部材10Cの基部20Cの外径D3と拡大部40Cの外径D4のいずれも、積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりも大きくなっているため、積層造形部材10Aの接続部22Aが、積層造形部材10Cの基部20Cと拡大部40Cとの間に延びる軸部30Cから離脱することが防止される。このように、本実施形態における積層造形部材10Cの基部20C及び拡大部40Cは、積層造形部材10Aの接続部22Aの移動を積層造形部材10Cの軸部30Cの範囲内に規制可能な(第2の)規制部として機能する。
【0030】
本実施形態では、積層造形部材10Cの造形用軸部36Cが、造形用軸部36Cの外周面と積層造形部材10Aの貫通孔21Aの内周面との間に、造形用軸部36Cと接続部22Aとを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有している。したがって、後述するように、積層造形部材10Cの造形用軸部36Cと積層造形部材10Aの接続部22Aとの癒着を防止しつつ、造形用軸部36Cと接続部22Aとを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、造形用軸部36C及び接続部22Aの積層造形の後に、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの周囲に位置するように積層造形部材10Aを積層造形部材10Cに対して移動することで、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外周面と積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Cの実用軸部32Cのガタつきが低減される。
【0031】
本実施形態では、積層造形部材10Cの接続部22C及び中間部24Cと積層造形部材10Bの中間部24B、軸部30B、基部20B、及び拡大部40Bが特定の用途で使用されているわけではないので、これらの部分を別の機能を発揮する構成に変更してもよいし、あるいはこれらの部分を省略してもよい。
【0032】
本実施形態では、積層造形部材10Bと積層造形部材10Cとが、積層造形部材10Aに対して同じ側(+Z方向側)に配置されているため、構造体201のZ方向の厚みを抑えることができ、構造体201をコンパクトにすることができる。
【0033】
本実施形態における構造体201を製造する方法も、第1の実施形態における構造体1を製造する方法と同様に、3Dプリンタを用いた積層造形法によって積層造形部材10A,10B,10Cを積層造形する積層造形工程と、この積層造形工程の後に、積層造形部材10A,10B,10Cを相対的に移動して構造体201を形成する部材移動工程とを含んでいる。本実施形態においても、積層造形法の種類は特に限定されるものではなく、積層造形に用いる材料も特定のものに限定されるものではない。
【0034】
積層造形工程では、第1の実施形態と同様に、図7Aに示すように、積積層造形法により3Dプリンタのステージ3上に積層造形部材10A,10B,10Cに対応する部材110A,110B,110Cを構成する層を1層ずつ積み重ねていく。このとき、必要に応じてサポート材5を部材110A,110B,110Cとともに積層してもよい。以下の説明では、積層造形工程中の部材110A,110B,110Cをそれぞれ積層造形部材10A,10B,10Cと呼ぶことがある。
【0035】
本実施形態においては、図7Aに示すように、部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの基部20B、接続部22B、及び中間部24Bとが同一の積層面で連続的に積層されるだけではなく、部材110Cの造形用軸部36Cと部材110Aの基部20A、接続部22A、及び24Aとも同一の積層面で連続的に積層される。換言すれば、本実施形態の積層造形工程は、部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの基部20B、接続部22B、及び中間部24Bとを同一の積層面で連続的に造形する工程(第1の同一積層面造形工程)と、部材110Cの造形用軸部36Cと部材110Aの基部20A、接続部22A、及び中間部24Aとを同一の積層面で連続的に造形する工程(第2の同一積層面造形工程)とを含んでいる。第1の同一積層面造形工程は、第1の実施形態における同一積層面造形工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
第2の同一積層面造形工程においては、部材110Aの接続部22Aを部材110Cの造形用軸部36Cの周囲に造形するが、この造形用軸部36Cを先に造形した実用軸部32Cよりも細く造形する。これにより、部材110Cの造形用軸部36Cの外周面と部材110Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間に相対的に大きな間隙G2を確保することができる。したがって、この間隙G2の大きさを部材110Cの造形用軸部36Cと部材110Aの接続部22Aとが造形時に互いに癒着してしまうことがないような大きさとすることで、積層造形部材10Cと積層造形部材10Aとを互いに癒着させることなく安定的に作製することができる。
【0037】
図7Aに示す例では、部材110Cの実用軸部32Cを積層造形する工程の前に、上述した第2の同一積層面造形工程が行われるが、使用する積層造形法に応じてこれらの工程の順序を逆にすることも可能である。
【0038】
図7Aに示す積層造形部材10A,10B,10Cの造形が完了した後、必要に応じてサポート材5を適切な方法により除去し、上述した部材移動工程を行う。この部材移動工程は、図7Bに示すように、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置するように積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して-Z方向に移動する工程(第1の移動工程)と、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの周囲に位置するように積層造形部材10Aを積層造形部材10Cに対して+Z方向に移動する工程(第2の移動工程)とを含んでいる。上述した積層造形工程と部材移動工程とにより、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間の間隙を上記間隙G1よりも小さくして、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。また、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外周面と積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間の間隙を上記間隙G2よりも小さくして、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの軸受として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Aの実用軸部32A及び積層造形部材10Cの実用軸部32Cのガタつきが抑えられた構造体を製造することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外周面と積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間には何も介在していないが、これらの面の間にベアリングを挿入して軸受性能を向上させてもよく、あるいはスペーサを挿入して間隙の大きさを調整してもよい。また、本実施形態では、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外径D1を積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりもわずかに小さくしているが、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外径D1を積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内径dよりも大きくして、部材移動工程の第2の移動工程において、積層造形部材10Aの接続部22Aを積層造形部材10Cの実用軸部32Cに圧入してもよい。この場合には、積層造形部材10Cの実用軸部32Cが積層造形部材10Aの接続部22Aに固定されることとなるので、この構造体を用いて固定機構を構成することができる。例えば、積層造形部材10Aの実用軸部32Aを積層造形部材10Bの接続部22Bに対して回転可能に構成し、積層造形部材10Cの実用軸部32Cを積層造形部材10あの接続部22Aに対して固定してもよい。
【0040】
上述した構造体201の製造方法によれば、第1の同一積層面造形工程において、部材110Aの造形用軸部36Aを実用軸部32Aよりも細く造形しているため、部材110Aの造形用軸部36Aの外周面と部材110Bの貫通孔21Bの内周面との間に、造形用軸部36Aと接続部22Bの積層造形に必要な間隙G1を確保することができ、第2の同一積層面造形工程において、部材110Cの造形用軸部36Cを実用軸部32Cよりも細く造形しているため、部材110Cの造形用軸部36Cの外周面と部材110Aの貫通孔21Aの内周面との間に、造形用軸部36Cと接続部22Aの積層造形に必要な間隙G2を確保することができる。したがって、第1の同一積層面造形工程中に部材110Aの造形用軸部36Aと部材110Bの接続部22Bとが造形時に互いに癒着してしまうこと及び第2の同一積層面造形工程中に部材110Cの造形用軸部36Cと部材110Aの接続部22Aとが造形時に互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの周囲に位置するように積層造形部材10Bを積層造形部材10Aに対して移動することで、積層造形部材10Aの実用軸部32Aの外周面と積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bの内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材10Bの接続部22Bが積層造形部材10Aの実用軸部32Aの軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。また、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの周囲に位置するように積層造形部材10Aを積層造形部材10Cに対して移動することで、積層造形部材10Cの実用軸部32Cの外周面と積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aの内周面との間の間隙を狭めて、積層造形部材10Aの接続部22Aが積層造形部材10Cの実用軸部32Cの軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、積層造形部材10Aの実用軸部32A及び積層造形部材10Cの実用軸部32Cのガタつきが抑えられた構造体201を簡単に製造することが可能となる。
【0041】
上述した実施形態においては、積層造形部材10B,10CがXZ平面に関して積層造形部材10Aと対称な形状を有していたが、積層造形部材10A,10B,10Cの形状はこれに限られるものではなく、積層造形部材10A,10B,10Cのそれぞれが任意の形状を有し得る。また、第1の実施形態における構造体1は2つの積層造形部材10A,10Bを含み、第2の実施形態における構造体201は3つの積層造形部材10A,10B,10Cを含んでいるが、本発明に係る構造体は4以上の積層造形部材を含むものであってもよい。
【0042】
上述した実施形態においては、積層造形部材10Aの実用軸部32A及び造形用軸部36Aが円柱状であり、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bが円形孔であるが、積層造形部材10Aの実用軸部32A及び造形用軸部36Aを角柱状又は角柱と円柱などを組み合わせた形態にしてもよく、積層造形部材10Bの接続部22Bの貫通孔21Bをこれに対応した形状としてもよい。同様に、積層造形部材10Cの実用軸部32C及び造形用軸部36Cを角柱状又は角柱と円柱などを組み合わせた形態にしてもよく、積層造形部材10Aの接続部22Aの貫通孔21Aをこれに対応した形状としてもよい。
【0043】
以上述べたように、本発明に係る構造体は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0044】
[構成1]
構造体は、第1の実用軸部と、上記第1の実用軸部に接続され、上記第1の実用軸部よりも細い第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の積層造形部材と、上記第1の積層造形部材の上記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の積層造形部材とを備える。上記第1の積層造形部材の上記第1の造形用軸部は、上記第1の造形用軸部の外面と上記第2の積層造形部材の上記第1の貫通孔の内面との間に、上記第1の造形用軸部と上記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有する。上記第2の積層造形部材の上記第1の接続部は、上記第1の積層造形部材の上記第1の実用軸部の周囲に位置する。
【0045】
このような構成によれば、第1の積層造形部材の第1の造形用軸部が、第1の造形用軸部の外面と第2の積層造形部材の第1の貫通孔の内面との間に、第1の造形用軸部と第1の接続部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有しているため、第1の造形用軸部と第1の接続部との癒着を防止しつつ、第1の造形用軸部と第1の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、第1の造形用軸部及び第1の接続部の積層造形の後に、第2の積層造形部材の第1の接続部が第1の積層造形部材の第1の実用軸部の周囲に位置するように第2の積層造形部材を第1の積層造形部材に対して移動することで、第1の積層造形部材の第1の実用軸部の外面と第2の積層造形部材の第1の接続部の第1の貫通孔の内面との間の間隙を狭めて、第2の積層造形部材の第1の接続部が第1の積層造形部材の第1の実用軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の部材の第1の実用軸部のガタつきが低減される。
【0046】
[構成2]
上記構成1において、上記第1の積層造形部材は、上記第2の積層造形部材の上記第1の接続部の移動を上記第1の軸部の範囲内に規制可能な第1の規制部をさらに有し得る。このような第1の規制部により、第2の積層造形部材の第1の接続部が第1の積層造形部材から離脱してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
[構成3]
上記構成1又は2において、上記構造体は、第2の実用軸部と、上記第2の実用軸部に接続され、上記第2の実用軸部よりも細い第2の造形用軸部とを含む第2の軸部を有する第3の積層造形部材をさらに備えていてもよい。上記第1の積層造形部材は、上記第3の積層造形部材の上記第2の軸部が挿通される第2の貫通孔が形成された第2の接続部をさらに有し得る。上記第3の積層造形部材の上記第2の造形用軸部は、上記第2の造形用軸部の外面と上記第1の積層造形部材の上記第2の貫通孔の内面との間に、上記第3の積層造形部材の上記第2の造形用軸部と上記第1の積層造形部材の上記第2の接続部とを同一の積層面で造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有し得る。上記第1の積層造形部材の上記第2の接続部は、上記第3の積層造形部材の上記第2の実用軸部の周囲に位置し得る。
【0048】
このような構成によれば、第3の積層造形部材の第2の造形用軸部が、第2の造形用軸部の外面と第1の積層造形部材の第2の貫通孔の内面との間に、第2の造形用軸部と第2の接続部とを同一の積層面で連続的に造形するのに必要な間隙が形成されるような外形を有しているため、第2の造形用軸部と第2の接続部との癒着を防止しつつ、第2の造形用軸部と第2の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形することが可能となる。また、第2の造形用軸部及び第2の接続部の積層造形の後に、第1の部材の第2の接続部が第3の部材の第2の実用軸部の周囲に位置するように第1の部材を第3の部材に対して移動することで、第3の部材の第2の実用軸部の外面と第1の部材の第2の接続部の第2の貫通孔の内面との間の間隙を狭めて、第1の部材の第2の接続部が第3の部材の第2の実用軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の部材の第1の実用軸部のガタつきとともに、第3の部材の第2の実用軸部のガタつきが低減される。
【0049】
[構成4]
上記構成3において、上記第2の積層造形部材と上記第3の積層造形部材とは、上記第1の積層造形部材に対して同じ側に配置され得る。このような構成によれば、構造体の厚みを抑えることができ、構造体をコンパクトにすることができる。
【0050】
[構成5]
上記構成3又は4において、上記第3の積層造形部材は、上記第1の積層造形部材の上記第2の接続部の移動を上記第2の軸部の範囲内に規制可能な第2の規制部をさらに有し得る。このような第2の規制部により、第1の積層造形部材の第2の接続部が第3の積層造形部材から離脱してしまうことを防ぐことができる。
【0051】
[構成6]
また、本発明に係る回転機構は、上記構成1から5のいずれかに記載の構造体を含み得る。この場合には、第1の積層造形部材の第1の実用軸部を中心として第2の積層造形部材を回転させることが可能な回転機構(及び第3の積層造形部材の第2の実用軸部を中心として第1の積層造形部材を回転させることが可能な回転機構)を実現することができる。
【0052】
[構成7]
また、本発明に係る固定機構は、上記構成1から5のいずれかに記載の構造体を含み得る。この場合には、第1の積層造形部材の第1の実用軸部が第2の積層造形部材の第1の接続部に固定された固定機構(及び第3の積層造形部材の第2の実用軸部が第1の積層造形部材の第2の接続部に固定された固定機構)を実現することができる。
【0053】
さらに、本発明に係る構造体の製造方法は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0054】
[構成8]
構造体の製造方法は、第1の実用軸部と、上記第1の実用軸部に接続される第1の造形用軸部とを含む第1の軸部を有する第1の部材と、上記第1の部材の上記第1の軸部が挿通される第1の貫通孔が形成された第1の接続部を有する第2の部材とを含む複数の部材を積層造形する積層造形工程と、上記積層造形工程の後に、上記複数の部材を相対的に移動して構造体を形成する部材移動工程とを含む。上記積層造形工程は、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部と上記第2の部材の上記第1の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形する第1の同一積層面造形工程を含む。上記第1の同一積層面造形工程においては、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部の外面と上記第2の部材の上記第1の貫通孔の内面との間に、上記第1の造形用軸部と上記第1の接続部の積層造形に必要な間隙が形成されるように、上記第1の部材の上記第1の造形用軸部を上記第1の実用軸部よりも細く造形する。上記部材移動工程は、上記第2の部材の上記第1の接続部が上記第1の部材の上記第1の実用軸部の周囲に位置するように上記第2の部材を上記第1の部材に対して移動する第1の移動工程を含む。
【0055】
このような方法によれば、第1の同一積層面造形工程において、第1の部材の第1の造形用軸部を第1の実用軸部よりも細く造形しているため、第1の部材の第1の造形用軸部の外面と第2の部材の第1の貫通孔の内面との間に、第1の造形用軸部と第1の接続部の積層造形に必要な間隙を確保することができる。したがって、第1の同一積層面造形工程中に第1の部材の第1の造形用軸部と第2の部材の第1の接続部とが互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、第2の部材の第1の接続部が第1の部材の第1の実用軸部の周囲に位置するように第2の部材を第1の部材に対して移動することで、第1の部材の第1の実用軸部の外面と第2の部材の第1の接続部の第1の貫通孔の内面との間の間隙を狭めて、第2の部材の第1の接続部が第1の部材の第1の実用軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の部材の第1の実用軸部のガタつきが抑えられた構造体を簡単に製造することが可能となる。
【0056】
[構成9]
上記構成8において、上記積層造形工程により積層造形される上記複数の部材は、第2の実用軸部と、上記第2の実用軸部に接続され、上記第2の実用軸部よりも細い第2の造形用軸部とを含む第2の軸部を有する第3の部材をさらに含み得る。上記第1の部材は、上記第3の部材の上記第2の軸部が挿通される第2の貫通孔が形成された第2の接続部をさらに有し得る。上記積層造形工程は、上記第3の部材の上記第2の造形用軸部と上記第1の部材の上記第2の接続部とを同一の積層面で連続的に積層造形する第2の同一積層面造形工程をさらに含み得る。上記第2の同一積層面造形工程においては、上記第3の部材の上記第2の造形用軸部の外面と上記第1の部材の上記第2の貫通孔の内面との間に、上記第2の造形用軸部と上記第2の接続部の積層造形に必要な間隙が形成されるように、上記第3の部材の上記第2の造形用軸部を上記第2の実用軸部よりも細く造形し得る。上記部材移動工程は、上記第1の部材の上記第2の接続部が上記第3の部材の上記第2の実用軸部の周囲に位置するように上記第1の部材を上記第3の部材に対して移動する第2の移動工程をさらに含み得る。
【0057】
このような方法によれば、第2の同一積層面造形工程において、第3の部材の第2の造形用軸部を第2の実用軸部よりも細く造形しているため、第3の部材の第2の造形用軸部の外面と第1の部材の第2の貫通孔の内面との間に、第2の造形用軸部と第2の接続部の積層造形に必要な間隙を確保することができる。したがって、第2の同一積層面造形工程中に第3の部材の第2の造形用軸部と第1の部材の第2の接続部とが互いに癒着してしまうことを防止することができる。また、積層造形工程の後は、第1の部材の第2の接続部が第3の部材の第2の実用軸部の周囲に位置するように第1の部材を第3の部材に対して移動することで、第3の部材の第2の実用軸部の外面と第1の部材の第2の接続部の第2の貫通孔の内面との間の間隙を狭めて、第1の部材の第2の接続部が第3の部材の第2の実用軸部の軸受又は固定部として機能するのに適切な大きさとすることができる。したがって、第1の部材の第1の実用軸部のガタつきとともに、第3の部材の第2の実用軸部のガタつきが抑えられた構造体を簡単に製造することが可能となる。
【0058】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1,201 構造体
10A 第1の積層造形部材
10B 第2の積層造形部材
10C 第3の積層造形部材
20A,20B,20C 基部
21A 第2の貫通孔
21B 第1の貫通孔
22A 第2の接続部
22B 第1の接続部
24A,24B,24C 中間部
30A 第1の軸部
30C 第2の軸部
32A 第1の実用軸部
32C 第2の実用軸部
34A,34B,34C テーパ部
36A 第1の造形用軸部
36C 第2の造形用軸部
40A,40B,40C 拡大部
110A 第1の部材
110B 第2の部材
110C 第3の部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B