(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165668
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】冷凍装置及び環境試験装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241121BHJP
F25B 49/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F25B1/00 304Z
F25B49/00 A
F25B1/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082048
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岡留 哲也
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 記大
(57)【要約】
【課題】圧縮機の発熱を適度に抑制することができる冷凍装置を提供することを目的とする。
【解決手段】冷凍回路21と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、冷凍回路21は、圧縮機35、凝縮器28、膨張手段38及び蒸発器40が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路22と、凝縮器28の吐出側と圧縮機の35吸い込み側をつなぐバイパス流路41とを有している。バイパス流路41に開度調整可能な流量制御手段51が設けられている。制御部は、圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力に応じて圧縮機35に導入される冷媒の目標温度を設定し、圧縮機35に対する冷媒の導入温度が目標温度となるように流量制御手段51の開度を変化させる。目標温度は、前記圧力が低い場合よりも前記圧力が高い場合の方が高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、
前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、
前記制御部は、前記圧縮機の吸込み側の冷媒の圧力に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、
前記目標温度は、前記圧力が低い場合よりも前記圧力が高い場合の方が高い冷凍装置。
【請求項2】
冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、
前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、
前記制御部は、冷凍能力の要求度に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、
前記目標温度は、前記要求度が低い場合よりも前記要求度が高い場合の方が高い冷凍装置。
【請求項3】
冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、
前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、
前記制御部は、前記圧縮機に吸引される吸引冷媒量に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、
前記目標温度は、前記吸引冷媒量が少ない場合よりも前記吸引冷媒量が多い場合の方が高い冷凍装置。
【請求項4】
前記目標温度は一定範囲の変化率で変化するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記目標温度は、以下のいずれかが所定の値よりも小さい第1領域にある場合には、一定範囲の変化率で変化し、以下のいずれかが前記第1領域よりも大きい第2領域にある場合には、前記一定範囲の変化率よりも大きい変化率で変化する請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置。
(1)前記圧縮機の吸込み圧力。
(2)冷凍能力の要求度。
(3)前記圧縮機に吸引される吸引冷媒量。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置を備えた環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置や冷蔵庫などに用いられる冷凍装置に関するものである。また本発明は、環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置や冷蔵庫には、冷凍装置が搭載されている。冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、膨張手段、蒸発器などによって構成され、冷媒が循環する冷凍回路を有している。そして、冷媒は、圧縮機によって圧縮され、凝縮器によって凝縮し、膨張手段で膨張した後に、蒸発器で蒸発し、再び圧縮機に戻って循環するものであり、蒸発器での蒸発の際に、周囲から熱を奪って冷却が行われる。
【0003】
また製品や部品等の性能や耐久性を調べる試験として、環境試験が知られている。環境試験は、環境試験装置と称される設備を使用して実施される。
一般に環境試験装置は、試験室と空調部を有している。空調部は、送風機、加熱装置、冷凍装置等の空調機器を備えている。
試験室と空調部は、例えば一連の循環風路を構成しており、試験室内の空気が空調部に導入されて温度や湿度が調整され、調整後の空気が試験室内に戻されることによって試験室内に所望の温度環境や湿度環境が創出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境試験装置は、長時間にわたって連続運転される場合がある。また連続運転の間、環境試験装置の冷凍装置が一時的に過酷な条件で運転されることとなる場合がある。
そのため従来技術の環境試験装置は、運転中に圧縮機を駆動するモータが発熱する場合があり、モータの巻線の焼損、オイルの粘度の低下や早期の劣化、これらに起因する圧縮部の損傷などを来す懸念があり、環境試験装置の信頼性を低下させる要因となっている。
【0006】
業務用の冷蔵庫や冷凍庫についても同様の懸念があり、運転中に圧縮機を駆動するモータが発熱する場合がある。
【0007】
本発明は、従来技術の上記した課題を解決するものであり、圧縮機の発熱を適度に抑制することができる冷凍装置を提供することを目的とするものである。即ち、本発明は、圧縮機を冷やすだけではなく、圧縮機を冷やし過ぎない程度に冷却することができる冷凍装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、前記制御部は、前記圧縮機の吸込み側の冷媒の圧力に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、前記目標温度は、前記圧力が低い場合よりも前記圧力が高い場合の方が高い冷凍装置である。
【0009】
圧縮機の過度の発熱を防ぐ方策の一つとして、圧縮機の吸い込み側に冷却能力を有する冷媒を導入する方法がある。本態様の冷凍装置もこの方法を採用するものであり、凝縮器の吐出側と圧縮機の吸い込み側をバイパス流路で繋ぎ、圧縮機の吸い込み側に冷却能力を有する冷媒(以下、冷却用冷媒と称する)を導入して圧縮機に導入される冷媒の温度を下げる。
ここで本態様の冷凍装置の基本的な技術思想は、圧縮機に戻されて導入される冷媒量(重量流量)が多い場合に冷却用冷媒の量を少なくすることにある。
本発明者らは、圧縮機に導入される冷媒量が少ない場合に圧縮機の温度が上昇しやすい傾向があり、逆に圧縮機に導入される冷媒量が多い場合には圧縮機の発熱が少なくなる傾向があることを発見した。
また圧縮機に導入される冷媒量の多寡と圧縮機の吸込み圧力の間には正の相関関係があり、圧縮機に導入される冷媒量が多いと圧縮機の吸込み圧力が高い。
本発明の冷凍装置は、これらの知見に基づくものであり、制御部が、圧縮機の吸込み圧力に応じて圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、冷媒の導入温度が設定された目標温度となるように流量制御手段の開度を変化させて圧縮機の吸い込み側に冷却用冷媒を導入する。
本発明の構成によると、圧縮機に導入される冷媒量が多いと、冷却用冷媒の量が減少する。本発明の冷凍装置では圧縮機の過度の発熱を抑制することができ、且つ圧縮機を過度に冷やしにくい。
【0010】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、前記制御部は、冷凍能力の要求度に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、前記目標温度は、前記要求度が低い場合よりも前記要求度が高い場合の方が高い冷凍装置である。
【0011】
圧縮機に導入される冷媒量の多寡と冷凍能力の要求度の間には正の相関関係があり、冷凍能力の要求度が高いと、圧縮機に導入される冷媒量が多い。
本発明の冷凍装置は、これらの知見に基づくものであり、制御部が、冷凍能力の要求度に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、冷媒の導入温度が設定された目標温度となるように流量制御手段の開度を変化させて圧縮機の吸い込み側に冷却用冷媒を導入する。本発明の構成によると、圧縮機に導入される冷媒量が多いと、冷却用冷媒の量が減少する。本発明の冷凍装置では圧縮機の過度の発熱を抑制することができ、且つ圧縮機を過度に冷やしにくい。
【0012】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、冷凍回路と、当該冷凍回路を制御する制御部を有し、前記冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張手段及び蒸発器が接続されていて相変化する冷媒が循環する主流路と、前記凝縮器の吐出側と前記圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路とを有し、当該バイパス流路に開度調整可能な流量制御手段が設けられたものであり、前記制御部は、前記圧縮機に吸引される吸引冷媒量に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、前記圧縮機に対する冷媒の導入温度が前記目標温度となるように前記流量制御手段の開度を変化させるものであり、前記目標温度は、前記吸引冷媒量が少ない場合よりも前記吸引冷媒量が多い場合の方が高い冷凍装置である。
【0013】
本発明の冷凍装置は、制御部が、圧縮機に吸引される吸引冷媒量に応じて前記圧縮機に導入される冷媒の目標温度を設定し、冷媒の導入温度が設定された目標温度となるように流量制御手段の開度を変化させて圧縮機の吸い込み側に冷却用冷媒を導入する。本発明の構成によると、圧縮機に導入される冷媒量が多いと、冷却用冷媒の量が減少する。本発明の冷凍装置では圧縮機の過度の発熱を抑制することができ、且つ圧縮機を過度に冷やしにくい。
【0014】
上記した各態様において、前記目標温度は一定範囲の変化率で変化するものであることが望ましい。
【0015】
本態様によると、当該導入される冷媒量の変化に応じて目標温度を直線的、略直線的、又は一定範囲の傾きの曲線的に変更することができる。そのため、圧縮機の過度な発熱と圧縮機の過度な冷却への対処がしやすい。
【0016】
上記した各態様において、前記目標温度は、以下のいずれかが所定の値よりも小さい第1領域にある場合には、一定範囲の変化率で変化し、以下のいずれかが前記第1領域よりも大きい第2領域にある場合には、前記一定範囲の変化率よりも大きい変化率で変化することが望ましい。
(1)前記圧縮機の吸込み圧力。
(2)冷凍能力の要求度。
(3)前記圧縮機に吸引される吸引冷媒量。
【0017】
本態様によると、圧縮機に導入される冷媒量の状況に応じて目標温度をより柔軟に変更することができる。そのため、圧縮機の過度な発熱と圧縮機の過度な冷却への対処がしやすい。
【0018】
上記した各態様の冷凍装置は、環境試験装置の冷凍装置に好適である。
即ち環境試験装置に関する態様は、上記したいずれかに記載の冷凍装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の冷凍装置は、冷却能力を有する冷媒が適量、圧縮機に導入され、圧縮機のモータの過度の発熱等を抑制することができる効果がある。即ち、本発明によると、圧縮機を冷やすのではなく、圧縮機を冷やし過ぎない程度に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の断面図である。
【
図2】
図1の環境試験装置に搭載されている冷凍装置の作動原理図である。
【
図3】本発明の第一実施形態の冷凍装置の制御部のブロック図である。
【
図4】冷媒の目標温度と吸込み圧力等との関係の一例を示すグラフであり、横軸は冷凍装置の圧縮機の吸込み圧力、縦軸は冷媒の目標温度である。
【
図5】本発明の第二実施形態の冷凍装置の制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、
図1に示すように断熱壁2によって覆われた断熱槽3を有している。そして当該断熱槽3の一部に試験室5が形成されている。試験室5は、被試験物100を設置する空間である。
環境試験装置1は、さらに加湿装置6、冷凍装置(冷却手段)7、加熱ヒータ(加熱手段)8、及び送風機10を備えている。環境試験装置1には、試験室5と連通する空気流路15があり、当該空気流路15に前記した加湿装置6、冷凍装置7、加熱ヒータ8、及び送風機10が設けられている。
【0022】
また空気流路15の出口側に、温度センサー(槽内温度検知手段)12と湿度センサー13が設けられている。環境試験装置1では、前記した空気流路15内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置17が構成されている。空気調和装置17は、制御装置(制御部)16によって制御される。なお湿度を調節する機能を持たない環境試験装置もあり、この種の環境試験装置には加湿装置6や湿度センサー13は無い。
環境試験装置1は、入力装置11を有し、当該入力装置11に希望する環境条件を入力する。例えば温度と湿度を入力する。あるいは温度又は湿度の上昇カーブの条件を入力する。
環境試験装置1は、制御装置16に制御される空気調和装置17によって、入力装置11に入力された温度・湿度環境を試験室5内に作ることができる。即ち、制御装置16は、試験室5内を所定の環境に制御するものである。
【0023】
本実施形態の環境試験装置1で採用する冷凍装置7は、
図2に示されるような冷凍回路18を備えている。
以下、冷凍装置(冷却手段)7の冷凍回路18について説明する。
冷凍装置7は、一次側冷凍回路20と二次側冷凍回路21を備えた二元冷却構造を持っている。
一次側冷凍回路20は、高温側圧縮機25の冷媒吐出口32と、高温側凝縮器26と、高温側膨張手段27と、カスケードコンデンサ28の一次側流路30と、高温側圧縮機25の冷媒吸い込み口33が順次環状に配管されたものである。
そして上記した一次側冷凍回路20内に相変化する高温側冷媒が封入されている。一次側冷凍回路20は、公知のそれと同様に冷凍サイクルを実現するものである。
【0024】
二次側冷凍回路21は、低温側圧縮機35の冷媒吐出口31と、カスケードコンデンサ(凝縮器)28の二次側流路37と、低温側膨張手段38と、低温側蒸発器(冷却器)40と、低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45が順次環状に配管された主流路22を有するものである。なおカスケードコンデンサ28は、二次側冷凍回路21の凝縮器として機能する。低温側膨張手段38は、膨張弁であり、モータ等のアクチェータによって開度を調節することができるものである。
二次側冷凍回路21の主流路22を冷媒が循環し、低温側蒸発器(冷却器)40の温度を低下させる。
低温側蒸発器(冷却器)40は、
図1の様に、空気流路15内に設置されている。
【0025】
上記した二次側冷凍回路21内に相変化する低温側冷媒が封入されている。二次側冷凍回路21内に封入された冷媒は、例えば-70℃の低温を作ることができるものである。 限定するものではないが、二次側冷凍回路21内に封入された冷媒は、温度によって比体積が大きく変化する特性を持っている。
二次側冷凍回路21は、公知のそれと同様に冷凍サイクルを実現するものである。そして公知の二元冷却構造と同様に、一次側冷凍回路20のカスケードコンデンサ28の一次側流路30で一次側冷凍回路20の冷媒を蒸発させて、カスケードコンデンサ28を温度降下させる。
この時に発生した低温によって、二次側冷凍回路21のカスケードコンデンサ(凝縮器)28を通過する冷媒を凝縮させる。
【0026】
二次側冷凍回路21には、バイパス流路41がある。
バイパス流路41は、カスケードコンデンサ(凝縮器)28と低温側膨張手段38との間から分岐され、低温側蒸発器40と低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45の間に繋がる流路である。即ち、バイパス流路41は、カスケードコンデンサ(凝縮器)28の吐出側と低温側圧縮機35の吸い込み側をつなぐ流路である。バイパス流路41は、カスケードコンデンサ(凝縮器)28と低温側膨張手段38との間にある分岐点42で主流路22から分岐され、低温側蒸発器40と低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45の間にある合流点48で主流路42と合流する流路である。
【0027】
バイパス流路41には、バイパス膨張手段(流量制御手段)51が設けられている。バイパス膨張手段51は、モータ等のアクチェータを備え、電気信号によって開度を任意に変更することができる制御弁である。バイパス膨張手段51は、全閉状態にすることもできるものであることが望ましい。
【0028】
二次側冷凍回路21には、圧力検知手段46と冷媒温度検知手段47が設けられている。
圧力検知手段46と冷媒温度検知手段47は、いずれもバイパス流路41の合流点48と低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45との間に設けられている。本実施形態では、圧力検知手段46と冷媒温度検知手段47は、いずれも低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45の直前の位置に設けられている。
【0029】
圧力検知手段46は、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力を検知するものである。また冷媒温度検知手段47は、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の温度を検知するものである。冷媒温度検知手段47は、例えばサーミスタや熱電対である。
【0030】
バイパス流路41を流れる冷媒は、液相又は気液混合状態であるので、十分に冷却能力を有している。そのため、バイパス流路41は、低温側圧縮機35の温度を低下させる冷却用冷媒流路としての機能を果たすことができる。
【0031】
本実施形態で採用する低温側圧縮機35は、密閉型圧縮機であり、低温側圧縮機35の密閉容器70内に、圧縮機構(圧縮手段)71、モータ72及びオイルポンプ(図示せず)が内蔵されたものである。
圧縮機構71の形式は限定されるものではなく、例えばレシプロ式、ロータリー式、スクロール式等であってもよい。
高温側圧縮機25は、低温側圧縮機35と同様に、高温側圧縮機25の密閉容器内に圧縮機構(圧縮手段)、モータ及びオイルポンプが内蔵されたものである。
【0032】
密閉容器70には、冷媒吸い込み口45と冷媒吐出口31が開口している。
冷媒吸い込み口45は、密閉容器70の内外を連通する管路である。冷媒吐出口31は、圧縮機構71の吐出部と外部を繋ぐ管路である。
【0033】
次に制御装置16について説明する。制御装置16は、CPUやメモリーを有し、所望の動作を実行するコンピュータプログラムが格納された装置である。
制御装置16は、
図3の様に、温度調節手段80と、吸込み圧力認識手段81と、冷媒目標温度設定手段82とを有している。
制御装置16には、入力装置11の信号が入力される。さらに制御装置16には、圧力検知手段46の信号と冷媒温度検知手段47の信号が入力される。
制御装置16の出力側には、空気調和装置17の主流路22を構成する部材と、バイパス膨張手段51が接続されている。
【0034】
制御装置16は、公知の環境試験装置と同様に、温度調節手段80を有し、入力装置11で設定された環境となるように空気調和装置17の主流路22を制御する。即ち冷凍装置7は、制御装置16の温度調節手段80によって制御され、試験室5内の温度が設定温度に維持されるように運転される。本実施形態では、制御装置16によって、試験室5内の温度が設定温度に近づくように低温側膨張手段38が制御される。即ち、低温側膨張手段38は、試験室5内の温度と設定温度の差が大きい場合に開度が大きくなり、試験室5内の温度が設定温度に近づいて冷凍負荷が減少すると、開度が小さくなるように制御される。
【0035】
吸込み圧力認識手段81は、圧力検知手段46で検知された実際の低温側圧縮機35の吸い込み側の冷媒圧力を認識するものである。
冷媒目標温度設定手段82は、圧力検知手段46で検知された実際の低温側圧縮機35の吸い込み側の冷媒圧力から、冷媒目標温度を演算するものである。ここで冷媒目標温度は、低温側圧縮機35に導入される冷媒の目標温度である。
冷媒目標温度は、所定の数式や、数値テーブルを利用して設定される。
限定するものではないが、低温側圧縮機35の吸い込み側の冷媒圧力(以下、単に冷媒圧力と称する)と冷媒目標温度の関係は、
図4のグラフの通りに設定される。
【0036】
冷媒目標温度は、冷媒圧力(吸込み側の冷媒の圧力)の範囲に応じて、複数の領域に分けられる。
図4を例にとると、所定の冷媒圧力(吸込み側の冷媒の圧力)を境にして、2つの領域に分けられる。
冷媒圧力が一定値以下の第1領域(以下、低圧領域と称する。)において、冷媒目標温度は冷媒圧力の上昇に応じて上昇する。低圧領域における冷媒目標温度の上昇曲線は、略直線的である。低圧領域における冷媒目標温度の上昇は、一次関数に近似される直線に近い。即ち、低圧領域における冷媒目標温度は、圧力の変化に伴って一定範囲の変化率で変化する。言い換えると、冷媒目標温度は、一定範囲の比例定数で上昇又は下降する。
なお、低圧領域における冷媒目標温度の上昇曲線を直線とし、所定の比例定数で上昇させてもよい。この場合、冷媒目標温度は、一定の変化率で変化する。
低圧領域における冷媒目標温度の変化率や上昇曲線の比例定数は比較的小さい。
【0037】
冷媒圧力(吸込み側の冷媒の圧力)が一定値を超える第2領域(以下、高圧領域と称する。)において、冷媒目標温度は急激に上昇する。冷媒目標温度の上昇率(変化率)に着目すると、高圧領域のうち多くの領域では、冷媒目標温度の上昇率は、低圧領域における上昇率よりも大きい。本実施形態では高圧領域の全領域における冷媒目標温度の上昇率は、低圧領域における上昇率よりも大きい。なお、高圧領域の中に冷媒目標温度の上昇率が低圧領域における上昇率よりも低い領域があってもよい。
【0038】
低圧領域における冷媒目標温度は、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が高い。本実施形態では、低圧領域においては、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が、冷媒目標温度が常に高い。
高圧領域においても、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が、冷媒目標温度が高い。本実施形態では、高圧領域においては、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が、冷媒目標温度が常に高い。
冷媒圧力の全域を見ても、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が、冷媒目標温度が高い。冷媒圧力の全域においても、冷媒圧力が低い場合よりも高い場合の方が、冷媒目標温度が常に高い。
冷媒目標温度は、低温側圧縮機35に液戻りが発生することが無い温度に設定される。
【0039】
本実施形態では、制御装置(制御部)16に冷媒温度検知手段47の信号が入力される。また制御装置16の信号によって、バイパス膨張手段(流量制御手段)51が制御される。本実施形態では、冷媒温度検知手段47で検知された低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の温度(実際の冷媒温度)が、冷媒目標温度に一致する様に、バイパス膨張手段51の開度が制御される。
【0040】
具体的には、制御装置16は、実際の冷媒温度が冷媒目標温度よりも高い場合には、バイパス膨張手段51の開度を大きくし、バイパス流路41を流れる冷媒を増加させる。即ち、実際の冷媒温度の冷媒目標温度に対する相対値が高い場合には、バイパス膨張手段51の開度が大きくなり、バイパス流路41を流れる冷媒が増加する。
前記した様に、バイパス流路41を流れる冷媒は、液相又は気液混合状態であるので、十分に冷却能力を有している。バイパス膨張手段51の開度を大きくすることにより、冷却能力を有する冷媒がより多く低温側蒸発器40の下流側に流れ込み、低温側圧縮機35に供給される冷媒の温度を低下させる。
逆に実際の冷媒温度が冷媒目標温度よりも低い場合には、制御装置16は、バイパス膨張手段51の開度を絞り、バイパス流路41を流れる冷媒を減少させる。即ち、実際の冷媒温度の冷媒目標温度に対する相対値が低い場合には、バイパス膨張手段51の開度が小さくなり、バイパス流路41を流れる冷媒が減少する。その結果、冷却能力を有する冷媒が低温側蒸発器40の下流側へ流入する量が減少し、低温側圧縮機35に供給される冷媒の温度が上昇する。
【0041】
ここで注意すべきは、バイパス膨張手段51の開度は、実際の冷媒温度の冷媒目標温度に対する相対値によって変わるものであり、実際の冷媒温度の値によって変わるものではない。実際の冷媒温度が高い場合は、主流路22を循環する冷媒の重量流量が多い場合であり、冷凍能力の要求度が高い場合である。
【0042】
次に、冷凍装置7の動作について説明する。
冷凍装置7は、一次側冷凍回路20の高温側圧縮機25と、二次側冷凍回路21の低温側圧縮機35を起動して運転する。
一次側冷凍回路20では、高温側圧縮機25で冷媒が圧縮され、当該冷媒が、高温側凝縮器26で冷却されて凝縮する。そして液化した冷媒が、高温側膨張手段27の狭い空隙を通過してカスケードコンデンサ28の一次側流路30に入って気化し、カスケードコンデンサ28の温度を低下させる。カスケードコンデンサ28の一次側流路30から排出された冷媒は、高温側圧縮機25に戻って再度圧縮される。
【0043】
二次側冷凍回路21では、低温側圧縮機35で冷媒が圧縮され、当該冷媒が、カスケードコンデンサ(凝縮器)28の二次側流路37で冷却されて凝縮する。そして液化した冷媒が、低温側膨張手段38の狭い空隙を通過して低温側蒸発器(冷却器)40に入って気化し、低温側蒸発器(冷却器)40の温度を低下させる。低温側蒸発器(冷却器)40から排出された冷媒は、低温側圧縮機35に戻って再度圧縮される。
【0044】
冷凍装置7は、制御装置16によって制御され、試験室5内の温度が設定温度に維持されるように運転される。本実施形態では、低温側膨張手段38は、制御装置16によって試験室5内の温度が設定温度に近づくように制御される。即ち、低温側膨張手段38は、試験室5内の温度と設定温度の差が大きい場合に開度が大きくなり、試験室5内の温度が設定温度に近づいて冷凍負荷が減少すると、開度が小さくなるように制御される。
低温側膨張手段38の開度変化に伴って、主流路22の冷媒循環量が変化する。即ち、低温側膨張手段38の開度が大きくなると、冷媒循環量が多くなり、低温側膨張手段38の開度が小さくなると、冷媒循環量が少なくなる。
【0045】
本実施形態では、低温側圧縮機35内が過度に高温になった場合や、過度に高温になる懸念がある場合に、バイパス流路41から冷却用冷媒が低温側圧縮機35に供給され、モータ72の過負荷運転や、コイルの焼損、潤滑油の粘度低下や潤滑油の劣化が防がれる。
また本実施形態では、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒目標温度は、冷媒圧力(吸込み側の冷媒の圧力)が低い場合よりも高い場合の方が常に高くなるように設定されている。主流路22の冷媒循環量が多く、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が多くなると、冷媒圧力が高くなる。この結果、バイパス流路41が絞られ、バイパス流路41から導入される冷却用冷媒が減少する。
【0046】
順序だてて説明すると、主流路22の冷媒循環量が多く、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が多くなると、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力が増加する。この圧力増加を圧力検知手段46が検知し、制御装置16に吸込み側の冷媒の圧力に関する信号が送信される。制御装置16の冷媒目標温度設定手段82は、
図4のように吸込み側の圧力と冷媒目標温度との関係を定めているので、吸込み側の冷媒の圧力上昇に伴い冷媒目標温度が上昇するよう目標温度を変更する。
その結果、実際の冷媒温度が冷媒目標温度よりも低くなり、バイパス膨張手段51の開度が絞られ、バイパス流路41を流れる冷媒が減少する。即ち主流路22の冷媒循環量が多く、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が多くなると、バイパス膨張手段51の開度が絞られ冷却用冷媒の導入量が減少する。
そのため本態様によると、低温側圧縮機35が過度に冷やされることが防止される。
【0047】
本発明者らの実験によると、上記した冷凍装置7は、広範囲の冷凍能力の要求度に応じて運転しても、低温側圧縮機35の温度が一定の範囲に収まることが確認できた。即ち、低温側圧縮機35の温度は過度に高くなることも、過度に低くなることもなく、一定の水準を維持することができる。上記した冷凍装置7は、要求される冷凍能力が小さい場合であっても低温側圧縮機35の温度が一定の範囲に収まり、冷凍能力が大きい場合であっても低温側圧縮機35の温度が一定の範囲に収まる。
【0048】
本実施形態の冷凍装置7では、冷媒圧力が低圧領域(第1領域)にあるときと、低圧領域よりも大きい高圧領域(第2領域)にあるときで、冷媒目標温度の上昇曲線が変わる。そのため、圧縮機に導入される冷媒量が少ない低圧領域では、圧縮機の過度の発熱を抑制することができ、圧縮機に導入される冷媒量が多い高圧領域では、圧縮機を過度に冷やしにくい。
低圧領域と高圧領域の境界は、理論的には冷媒の比体積が大きく変化する圧力領域であるが、現実的には実験によって適正値が求められるものである。
また冷媒目標温度の上昇曲線についても、多くの実験によって最適値が求められる。
【0049】
以上説明した実施形態の冷凍装置7の技術思想は、前記した様に低温側圧縮機35に導入される冷媒の重量流量が多い場合にバイパス流路41から導入される冷却用冷媒の量を少なくすることにある。
主流路22を流れる冷媒量(重量流量)は、圧力検知手段46で検知される低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力と正の相関がある。本実施形態では、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力を検知することにより、主流路22を流れる冷媒の重量流量を間接的に検知している。
即ち、低温側圧縮機35に導入される冷媒量は、圧力検知手段46で検知される低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力と正の相関がある。本実施形態では、低温側圧縮機35の吸込み側の冷媒の圧力を検知することにより、低温側圧縮機35に導入される冷媒の重量流量を間接的に検知している。
【0050】
低温側圧縮機35に導入される冷媒量(重量流量)を検知する方法は、これ以外にも考えられる。
冷凍能力の要求度が大きい場合には、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が増加する。例えば試験室5内の温度を急激に低下させる際には、冷凍能力の要求度が大きくなり、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が増加する。そのため、吸込み側の冷媒の圧力に代えて冷凍能力の要求度に応じて冷媒目標温度を変化させてもよい。
【0051】
図5に示された制御装置90は、冷凍能力の要求度に応じて低温側圧縮機35に導入される冷媒目標温度を設定し、低温側圧縮機35に対する冷媒の導入温度が目標温度となるようにバイパス膨張手段51の開度を変化させるものである。
【0052】
制御装置90は、要求度認識手段91を有している。要求度認識手段91は、入力装置11で入力された試験室5の設定温度と、試験室5に設けられた温度センサー(槽内温度検知手段)12の検知温度とを比較して、冷凍能力の要求度を認識するものである。試験室5の設定温度が温度センサー(槽内温度検知手段)12の検知温度に比べて低く、両者の差が大きい場合には冷凍能力の要求度が高く、両者の差が小さい場合には冷凍能力の要求度は低い。
本実施形態を採用しても、低温側圧縮機35の温度が一定の範囲に収まる。
【0053】
低温側圧縮機35に導入される冷媒量を検知する方法には、その他に次のものがある。
(1)低温側圧縮機35の電流。
(2)低温側膨張手段38の開度。
【0054】
低温側圧縮機35の電流値が増加している場合は、低温側圧縮機35の負荷が大きい状態であり、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が多い。そのため圧力検知手段46の検出値や、冷凍能力の要求度に代えて、低温側圧縮機35の電流に応じて冷媒目標温度を決定してもよい。
【0055】
低温側膨張手段38の開度が大きくなると、低温側圧縮機35に導入される冷媒量が増大する。そのため圧力検知手段46の検出値や、冷凍能力の要求度に代えて、低温側膨張手段38の開度に応じて冷媒目標温度を決定してもよい。
【0056】
低温側圧縮機35に導入される冷媒量を検知する方法として、冷凍能力の要求度、低温側圧縮機35の電流及び低温側膨張手段38の開度を指標として用いる場合、
図4に示す冷媒の圧力を指標として用いる場合と同様に、それぞれの指標が一定値以下の第1領域と、それぞれの指標が第1領域よりも大きい第2領域に分けて、冷媒目標温度を変化させてもよい。即ち、冷媒目標温度を、それぞれの指標が第1領域にある場合には、一定範囲の変化率で変化させ、それぞれの指標が第2領域にある場合には前記一定範囲の変化率よりも大きい変化率で変化するように設定してもよい。
【0057】
以上説明した実施形態では、冷媒圧力を低圧領域(第1領域)と高圧領域(第2領域)に分け、低圧領域と高圧領域の冷媒目標温度の上昇曲線を明確に分けたが、本発明はこの構成に限定されるものでなく、冷媒目標温度が冷媒圧力の全ての領域に渡って直線的に、或いはなだらかな曲線を描いて変化するものであってもよい。また冷媒圧力が3以上の領域に区分され、冷媒目標温度の変化率がそれぞれの領域で不連続的に変化してもよい。
【0058】
以上説明した実施形態は、主として高温環境や低温環境に被試験物をさらす用途に使用される環境試験装置であるが、本発明は、このタイプの環境試験装置に限定されるものではなく、冷熱衝撃試験装置や熱サイクル試験装置と称される環境試験装置に本発明を適用することもできる。
【0059】
以上説明した実施形態では、低温側蒸発器40と低温側圧縮機35の冷媒吸い込み口45が直接的に接続され、この管路に圧力検知手段46と冷媒温度検知手段47が設けられている。
しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、低温側蒸発器40と低温側圧縮機35との間に何らかの部材が介在されていてもよい。例えば低温側蒸発器40と低温側圧縮機35の間にアキュームレーターが設けられていてもよい。
アキュームレーターの導入側の流路に圧力検知手段46と冷媒温度検知手段47を設けてもよい。即ちアキュームレーターの吸い込み側の冷媒温度を低温側圧縮機35に対する冷媒の導入温度としてもよい。
【0060】
以上説明した実施形態では、バイパス流路の開度を調節する流量制御手段として、電気信号によって開度を任意に変更することができる電子膨張弁を採用した。しかしながら本発明は、流量制御手段を電子膨張弁に限定するものではない。
例えばキャピラリーチューブ等の絞り部材と電磁弁等の弁を組み合わせたものを、流量制御手段としてもよい。この場合は、電磁弁の開閉の時間間隔を制御して、実質的な開度を制御する構成が考えられる。
キャピラリーチューブ等の絞り部材を複数、並列に配管したサブバイパス流路を設け、各サブバイパス流路に弁を設けて流量制御手段とすることもできる。この場合は、開状態の弁の数を変化させることによって、サブバイパス流路全体の実質的な開度が制御される。
【0061】
以上説明した環境試験装置1は、二元冷却構造の冷凍装置7を採用しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、一元冷却構造の冷凍装置を採用するものであってもよい。
代表的な一元冷却構造の冷凍装置は、一台の圧縮機と、一つの凝縮器と、一つの膨張手段と、一つの蒸発器を有していて相変化する冷媒が循環するものである。一元冷却構造を採用する場合の冷凍装置は、凝縮器の吐出側と圧縮機の吸い込み側をつなぐバイパス流路を有し、当該バイパス流路に流量制御手段が設けられている。また圧力検知手段と冷媒温度検知手段が圧縮機の冷媒吸い込み口の近傍に設けられている。
【0062】
以上説明した実施形態では、バイパス流路41は、主流路22のカスケードコンデンサ(凝縮器)28と低温側膨張手段38との間の分岐点42で主流路22から分岐されたものであるが、低温側膨張手段38と低温側蒸発器40の間に分岐点を設けてもよい。
【0063】
以上説明した冷凍装置7は、環境試験装置1に組み込まれているが、冷凍装置7の用途は環境試験装置1に限定されるものではなく、冷蔵庫や自動販売機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 環境試験装置
7 冷凍装置(冷却手段)
16 制御装置(制御部)
18 冷凍回路
20 一次側冷凍回路
21 二次側冷凍回路
22 主流路
28 カスケードコンデンサ(凝縮器)
35 低温側圧縮機
38 低温側膨張手段
40 低温側蒸発器
41 バイパス流路
46 圧力検知手段
47 冷媒温度検知手段
51 バイパス膨張手段(流量制御手段)
81 吸込み圧力認識手段
82 冷媒目標温度設定手段
90 制御装置
91 要求度認識手段