(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165673
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像形成装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20241121BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20241121BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G03G15/01 S
B41J2/47 101M
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082057
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
【テーマコード(参考)】
2C362
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2C362AA07
2C362AA13
2C362AA53
2C362BA04
2C362BB15
2C362CA03
2C362CA18
2C362CB18
2H270MA06
2H270MA08
2H270MB04
2H270MC21
2H270MD01
2H270MD02
2H270ZC04
2H300EH15
2H300EH16
2H300EH17
2H300EH35
2H300EH36
2H300EJ09
2H300FF05
2H300GG01
2H300GG02
2H300GG04
2H300GG12
2H300GG14
2H300GG23
2H300QQ05
2H300QQ28
2H300RR19
2H300RR20
2H300SS01
2H300SS14
2H300SS20
2H300TT04
2H300TT05
(57)【要約】
【課題】 ボウ補正の境目でスジ画像が発生することを防止すると共に、色によって認知程度が異なる濃度ムラの発生を防止できる画像形成装置等を提供する。
【解決手段】 ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置において、ブラック以外の所定色のシアン、マゼンタ、イエローの画像データをブラックのボウ特性に応じて、電子的ボウ補正するボウ補正部と、ボウ補正された所定色の画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理部と、を備えた画像形成装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置において、
ブラック以外の所定色の画像データをブラックのボウ特性に応じて、電子的ボウ補正するボウ補正部と、
ボウ補正された所定色の画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定色は、シアン、マゼンタ、イエローであり、
ブラックの画像データのボウ補正は行わず、ブラック以外のシアン、マゼンタ、イエローの画像データのみをブラックのボウ特性に合うように電子的ボウ補正を行う制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
ボウ補正された所定色の画像及びボウ補正されていないブラックの画像を面跨ぎの光量補正によって濃度補正する濃度補正処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置において、
画像を面跨ぎの光量補正によって濃度補正する濃度補正処理部と、
面跨ぎの露光セグメント分布状況に応じて、濃度補正処理部の光量補正量を変化させる制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
制御部は、エリア毎に垂直方向の面跨ぎの露光セグメント露光割合を解像度又はモード別に算出し、算出した露光割合に基づき光量補正量を変化させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
制御部は、エリア毎に斜め方向の面跨ぎの露光セグメント露光割合を解像度又はモード別に算出し、算出した露光割合に基づき光量補正量を変化させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
制御部は、垂直方向への面跨ぎの露光セグメント露光割合を算出するための設定値と、斜め方向への面跨ぎの露光セグメント露光割合を算出するための設定値とを合算した結果に基づき、走査跨ぎ露光割合を算出し、算出した露光割合に基づき光量補正量を変化させることを特徴とする請求項4から6のうちの1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
露光割合は、諧調レベルを加味して算出することを特徴とする請求項4から6のうちの1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置の制御方法において、
ブラック以外の所定色の画像データをブラックのボウ特性に応じて、電子的ボウ補正するボウ補正工程と、
ボウ補正された所定色の画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理工程と、
を含むことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオード等の光源から射出される光ビームを走査光学系によって感光体ドラム(像担持体)上に結像させて、感光体ドラム表面に静電潜像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
この種の画像形成装置において、感光体ドラムには、与えられる総光量が同じでも光量と露光時間の関係が異なると潜像形成状態が異なる相反則不軌の現象が生じる。すなわち、ごく短時間に露光した場合は、比較的長い時間をかけて露光した場合に比べ、総露光量が等しいにもかかわらず感光体の電位変化量が少なくなる、相反則不軌が生じる。これがマルチビーム走査光学系の場合、画像濃度ムラとなって現れてくる。
【0004】
従来、特許文献1では、この相反則不軌による画像の濃度ムラに対処するため、光源には主走査方向、副走査方向に発光点を多数個配置したVCSEL(垂直共振器型面発光レーザ)を使い、ある走査周波数以上になるように多重露光し、濃度段差をわからなくする手法が開示されている。しかしながら、この特許文献1の技術では、32ビーム等のビーム数が膨大になり、駆動させるシステムが複雑になっていた。また、コストが大幅に上昇していた等の課題があった。
【0005】
特許文献2では、相反則不軌による濃度ムラに対処するため、m回目主走査とm+1回目主走査の重合ラインに現像されるトナー量を算出し、m+1回目走査の第1番目の光量とm回目走査の第N番目の光量を調整し、相反則不軌の影響を低減させる画像形成装置を提案していたが、以下の課題があった。
【0006】
特許文献2の技術では、電子的なボウ補正を行う場合、濃度補正とボウ補正の部分倍率補正、濃度補正回路の非同期性の影響を受け、濃度補正とボウ補正の同期を容易に実現できず、ボウ補正の境目でスジ画像が発生しやすかった。また、さまざまなばらつきを考慮した精度の高い濃度補正を容易に実現できず、ボウ補正の境目で濃度段差が発生しやすかった。
【0007】
特許文献3には、画像形成における種々の原因に基づく色ズレ抑制のために、レジストマークを形成し、正規の位置に対するズレ量を検出することで、画像書き込み位置を補正する画像形成装置が開示されていたが、これは、ボウ補正自体の手段を述べたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-176094号公報
【特許文献2】特開2007-237400号公報
【特許文献3】特開2000-112206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、画像形成装置で電子的にボウ補正を行う際に、ボウ補正の境目でスジ画像が発生することを防止する技術が未提案であった。また、人間の視覚の特性上、色によって濃度ムラの認知程度が異なるが、この点を考慮して濃度ムラの発生を防止する技術が未提案であった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ボウ補正の境目でスジ画像が発生することを防止すると共に、色によって認知程度が異なる濃度ムラの発生を防止できる画像形成装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置において、ブラック以外の所定色の画像データをブラックのボウ特性に応じて、電子的ボウ補正するボウ補正部と、ボウ補正された所定色の画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
本発明は、ブラックを含む複数色の画像データに基づき複数の発光素子から出射するマルチビームを像担持体表面上に走査する電子写真方式の画像形成装置の制御方法において、ブラック以外の所定色の画像データをブラックのボウ特性に応じて、電子的ボウ補正するボウ補正工程と、ボウ補正された所定色の画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理工程と、を含むことを特徴とする画像形成装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、人間の視覚の特性上、認知されにくいボウ特性を逆に利用し、ブラック以外の所定色の画像データを、ブラックのボウ特性に合うように、電子ボウ補正するので、認知されやいブラックの濃度ムラが発生しない。また、濃度平滑処理や濃度補正のレベルを高度にする必要がなく、濃度補正の演算処理負荷が減少できる等の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の外観図である。
【
図2】画像形成装置及び光走査装置の制御ブロック図である。
【
図3】光走査装置のレーザ発光部及びレーザドライバの信号伝達経路の回路図である。
【
図4】光走査装置の信号処理及びシアン、マゼンタ、イエローの画像信号の処理の流れを概略的に説明する図である。
【
図7】濃度段差の原因を説明する、相反則不軌のイメージ図である。
【
図8】濃度段差の原因を説明する、濃淡イメージ図である。
【
図11】PDMシェーディングのイメージ図である。
【
図13】アナログ光量補正信号(Vsw)の変化の様子の説明図である。
【
図16】ブラックの濃度補正関係のブロック図である、
【
図17】光量補正量の可変処理を説明する、1bitモードにおける垂直方向の面跨ぎ(走査跨ぎ)露光割合の算出手法の説明図であって、(a)が垂直方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと垂直露光割合の算出説明図、(b)が解像度毎に面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた垂直方向への露光割合の設定値である。
【
図18】光量補正量の可変処理を説明する、4bitモードの場合であり、諧調レベルを考慮した上で垂直方向の面跨ぎ(走査跨ぎ)露光割合の算出手法の説明図であって、(a)が垂直方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと垂直露光割合の算出説明図、(b)が面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた垂直方向への露光割合の設定値である。
【
図19】光量補正量の可変処理を説明する、斜め方向への隣接露光となる斜め方向への面跨ぎ(走査跨ぎ)による露光割合の算出手法の説明図である。
【
図20】
図19に示す概念を反映した光量補正量の可変処理を説明するタイミングチャートであって、が斜め方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと垂直露光割合である。
【
図21】
図20に対する割合設定値の面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた斜め方向への露光割合設定値である。
【
図22】光量補正量の可変処理を説明する、諧調レベル考慮した、斜め方向への面跨ぎによる露光割合の算出手法の説明図であり、4bitモードの場合であって、(a)が斜め方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと諧調レベルを考慮した上での斜め露光割合算出方法の説明図、(b)が面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた垂直方向への露光割合の設定値である。
【
図23】光量補正量の可変処理を説明する、最終露光割合に対する最終光量補正の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されない。
【0016】
[1. 実施形態]
まず、実施形態に係る画像形成装置10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る光走査装置200を搭載した画像形成装置10の外観図、
図2は、画像形成装置10及び光走査装置200の制御ブロック図である。
【0017】
[1.1 全体構成]
画像形成装置10は、
図1に示すように、画像形成装置10の上部に原稿読取部112を備えて原稿の画像を読み取り、電子写真方式により画像を出力する情報処理装置である。画像形成装置10には、多機能プリンタ(Multifunction Printer)を例に挙げることができる。
【0018】
画像形成装置10は、
図2の制御系図に示すように、主に、制御部100と、画像入力部110と、原稿読取部112と、画像処理部120と、画像形成部130と、操作部140と、表示部150と、記憶部160と、通信部170とを備え、光走査装置200の機能も有する。
【0019】
[1.2 画像形成装置10]
図2に示すように、制御部100は、画像形成装置10の全体を制御するための機能部である。
【0020】
そして、制御部100は、各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えば1又は複数の演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit))等により構成されている。
【0021】
画像入力部110は、画像形成装置10に入力される画像データを読み取るための機能部である。そして、画像入力部110は、原稿の画像を読み取る機能部である原稿読取部112と接続され、原稿読取部112から出力される画像データを入力する。
【0022】
また、画像入力部110は、USBメモリや、SDカード等の記憶媒体から画像データを入力してもよい。また、他の端末装置と接続を行う通信部170により、他の端末装置から画像データを入力してもよい。
【0023】
原稿読取部112は、コンタクトガラス(不図示)に載置された原稿を光学的に読み取り、画像処理部120へスキャンデータを渡す機能を有する。
【0024】
画像形成部130は、画像データに基づく出力データを記録媒体(例えば記録用紙)に形成するための機能部である。例えば、
図1に示すように、給紙トレイ122から記録用紙を給紙し、画像形成部130において記録用紙の表面に画像が形成された後に排紙トレイ124から排紙される。画像形成部130は、電子写真方式を利用した電子写真プロセスを利用したレーザプリンタにより構成されている。
【0025】
画像形成部130の電子写真プロセスは、後述する光走査装置200によって、感光体ドラム(像担持体)(図示省略)表面に画像データに対応するレーザビーム(レーザ光に相当)を走査して静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーによって現像し、現像したトナー像を記録媒体上に転写し及び定着して画像を形成するものである。
【0026】
画像処理部120は、原稿読取部112で読み込まれた画像データに基づき、設定されたファイル形式(TIFF,GIF,JPEG等)に変換する機能を有する。そして、画像処理が施された画像データに基づき出力画像を形成する。
【0027】
操作部140は、ユーザによる操作指示を受け付けるための機能部であり、各種キースイッチや、接触による入力を検出する装置等により構成されている。ユーザは、操作部140を介して、使用する機能や出力条件を入力する。
【0028】
表示部150は、ユーザに各種情報を表示するための機能部であり、例えばLCD(Liquid crystal display)等により構成されている。
【0029】
すなわち、操作部140は、画像形成装置10を操作するためのユーザインターフェースを提供し、表示部150には、画像形成装置の各種設定メニュー画面やメッセージが表示される。
【0030】
なお、画像形成装置10は、
図1に示すように、操作部140の構成として、操作パネル141と、表示部150とが一体に形成されているタッチパネルを備えてもよい。この場合において、タッチパネルの入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。
【0031】
記憶部160は、画像形成装置10の動作に必要な制御プログラムを含む各種プログラムや、読み取りデータを含む各種データやユーザ情報が記憶されている機能部である。記憶部160は、例えば、不揮発性のROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。また、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)を備えてもよい。
【0032】
通信部170は、外部の装置と通信接続を行う。通信部170としてデータの送受信に用いられる通信インターフェース(通信I/F)が設けられている。通信I/Fにより、画像形成装置10でのユーザによる操作によって、画像形成装置10の記憶部に格納されるデータを、ネットワークを介して接続される他のコンピュータ装置へデータの送受信をすることができる。
【0033】
[1.3 光走査装置200]
図2に示すように、画像形成装置10には光走査装置200が搭載されている。
【0034】
また、
図3は、光走査装置200におけるレーザ走査ユニット220aからレーザドライバ210への信号伝達経路の説明図を示す。
【0035】
図2、
図3に示すように、光走査装置200は、複数のレーザ発光素子(半導体レーザ素子(LD:Laser Device))を備え複数ビームのレーザ光(「マルチビーム」に相当)を発光するレーザ発光部200aと、レーザ発光部200aを制御するレーザドライバ210と、画像データに基づきレーザ発光部200aから出射するマルチビームを感光体ドラム(図示省略)上に走査する光走査部220と、画像データを電子的にボウ補正するボウ補正部230と、ボウ補正された画像の濃度段差を濃度平滑処理により滑らかにする濃度平滑処理部240と、ボウ補正された画像を面跨ぎの露光セグメント光量補正によって濃度補正する光量補正部(濃度補正処理部)250と、画像にシェーディング補正処理を行うシェ―デング補正部300と、ボウ補正、濃度平滑処理された画像データ及び、濃度補正された制御信号に基づきレーザドライバ210に制御信号を送信して、レーザ発光部(LD)200aに設けられた複数のレーザ発光素子の発光を制御するレーザドライバ制御部270と、を備えている。
【0036】
レーザ発光部200aは複数のレーザ発光素子からなり、フォトダイオード(PD)からなる光量検出部280によってレーザ発光素子の出力光量を検出する。
【0037】
基準クロック信号発生部200mは、制御の基準クロック信号を発生する、BD(Beam Detect)センサ200kは光ビームの走査領域の始端側に備えられ、感光体ドラムに静電潜像を書き込むタイミングを制御するものである。なお、
図3において、Vccは電源電圧である。
【0038】
図3に示すように、ボウ補正部230、濃度平滑処理部240、光量補正部(濃度補正処理部)250、シェーディング補正部300、レーザドライバ制御部270は、光走査装置200に搭載された電子的な制御構成のレーザ走査ユニット220a(LSU:レーザスキャニングユニット)が制御部100の指令信号に基づき制御されて実現される。各部の詳細は後に詳述する。
【0039】
[1.4 制御の内容]
図4は、光走査装置200の信号処理及び信号の流れを概略的に説明する図である。
図4に示すように、ボウ補正前の画像データのうちでブラックについてはボウ補正処理を行わず、一方、ブラック以外の所定色であるシアン、マゼンタ、イエローの画像データについて、ブラックのボウ特性に応じてボウ補正部230によってボウ補正処理する(
図15にて後述する)。ボウ補正後の画像は濃度平滑処理部240にて濃度平滑処理され、処理後の画像(画像データ)は、レーザ走査ユニット220aで所要の処理がされてレーザドライバ(LDD)210に入力される。実施形態において、ブラックの画像データの処理は、後述する
図16等にて説明する。
【0040】
光量補正部250においては、ボウ補正部230によってボウ補正された画像(ブラック以外の所定色であるシアン、マゼンタ、イエローの画像)に基づき光量補正値算出部250aが面跨ぎの露光セグメント光量補正値を算出し、PDM生成部250bによって光量補正値をPDM信号化し、その光量補正値をフィルタ回路290bにおいてアナログ信号に変換し、その後、重ね合わせ回路260に入力する。また、ブラックの画像については、ボウ補正を行わず、後述の
図17に示すように、ボウ補正されない状態のブラックの画像に基づき面跨ぎの露光セグメント光量補正値を算出する。
【0041】
なお、面跨ぎの露光セグメント光量補正値は、後述する
図7、
図8にて説明するように、複数レーザ発光素子が発光するマルチビーム方式の発光部において、端部素子からの露光が相反則不軌によって濃くなる現象を補正するためのものである。例えば、
図4中に※の欄に記すように、8ビームのレーザ発光素子(LD1~LD8)の場合、端部の発光素子LD1/LD8が光量補正のため光量補正値が算出され、それ以外の発光素子LD2~LD7の光量補正値は0となる。
【0042】
また、シェーディング補正部300においては、補正値設定部300aが予め実験等で得るなどしたシェーディング補正値を設定し、PDM生成部300bでPDM信号化してフィルタ回路290aに入力する。PDM信号のシェーディング補正値をフィルタ回路290aにおいてアナログ信号に変換し、その後、重ね合わせ回路260に入力する。重ね合わせ回路260から、レーザドライバ210の基準信号となる光量補正信号(Vsw)を出力する。
【0043】
以下に各部処理の詳細を説明する。
[電子的なボウ補正]
ボウ補正部230が行う電子的なボウ補正について
図5に基づき説明する。
図5に示すように、電子的なボウ補正は、色毎に異なる曲がり成分を打ち消すように、画像データを副走査方向にセグメント単位でシフトさせることで色ズレを抑制する処理である。
【0044】
詳しくは、
図5(a)に示すように、入力された画像データに副走査方向の曲がりがないものでも、実際の光学系の状態等が影響して出力画像に
図5(b)に示すような、副走査方向に弓状の曲がりが生じる場合がある。そこで、
図5(c)に示すように、画像データには、逆向きに曲がらせるボウ補正をして、
図5(d)に示すように、出力画像が直線的になるよう画像をボウ補正する。
図5(e)には、ボウ補正する前とボウ補正後の出力画像の例を示している。
【0045】
図6は、ボウ補正の副作用について説明するものである。
図6に示すように、副走査方向に画像をセグメント単位でスライドさせる処理をするだけなので、濃度段差が発生する。
図6(a)に示すように、画像の一部を副走査方向に1ライン下にずらすだけ(ズレを符号Lで示す)で濃度段差が発生する。なお、濃度段差は
図6(b)に示すように、副走査方向へのレジ調(Ref、1行、2行~の例を示す)によっても発生する。
【0046】
図7は、濃度段差が発生する原因の説明図である。
相反則不軌という、複数のレーザ発光素子を有するマルチビーム方式の発光部において、走査を跨ぐエリア(面跨ぎ)が濃くなる現象により、ディザパターンにおいて、濃くなる分布が変わるため、濃度段差が生じる。
【0047】
例えば、
図7では、半導体レーザを4チャンネル(LD1~LD4)使用したマルチビーム走査システムで生じた画像濃度ムラの模式図を示している。
図7の例では、ポリゴン面の1面から2面を走査方向に跨ぐ領域が面跨ぎとなる。
走査の際に、LD1とLD2の境界領域は、ほぼ同時に露光されているため、短い時間で強い光量が当たっている。一方、LD4とLD1の境界領域は、始めにLD4が露光した後に、ポリゴン面の異なるLD1が露光することになるのでタイムラグ(時間差)が生じ、結果的に長い時間に弱い光量が当たったことになる。そのような相反則不軌の結果、LD4とLD1の境界領域は他の部分よりも画像濃度が濃くなり、濃度ムラが生じる(学術論文「電子写真における静電潜像計測に関する研究」須原博之著;2015年7月発行参考)。
【0048】
図8は、相反則不軌が影響した、マルチビームにおけるディザパターンについてミクロレベルの濃淡イメージを示すものである。発光素子は8ビーム構成のもの(LD1~LD8)である。
【0049】
図8から、LD8とLD1の境界領域を跨ぐ部分では他の部分よりも画像濃度が濃くなり、濃度ムラが生じていることが理解される。
【0050】
[濃度平滑処理、及び、PDMシェーディング(ボウ補正用)処理]
図9は、濃度平滑処理により濃度段差を滑らかにすると同時に、シェーディング処理によって濃度補正する説明図である。シェーディング処理については、好ましくは、PDM(Pulse Density Modulation:パルス密度変調)シェーディングで濃度補正する。
【0051】
図9(a)に示すように、ボウ補正のみ実施されたハーフトーン画像に対して、濃度平滑処理を行い(処理1)、濃度段差を滑らかにする。
図9(b)に示すように、濃度平滑処理された画像を逆位相で光量補正してPDMシェーディング処理(ボウ補正用)(面跨ぎの露光セグメント光量補正)によって濃度補正を行い、濃淡の無い最終濃度の画像を得る。
【0052】
実施形態において、濃度補正に使用するボウ補正用PDMシェーディング信号は、複数の発光素子の発光タイミングに合わせて相反則不軌による濃度ムラを除去するようにタイミングを合わせて光量補正するように設定したPDM信号による濃度補正信号である。複数の発光素子の発光タイミングに合わせて相反則不軌による濃度ムラを除去するようにタイミングを合わせて光量補正することは、面跨ぎの露光セグメントを光量補正することと同義である。
【0053】
また、逆位相での面跨ぎの露光セグメント光量補正は、具体的には、ボウ補正と面跨ぎの露光セグメント光量補正の2つを利かせた状態で画像を出力させ、濃淡差がなくなるように、後述する濃度平滑処理のパターンを選択するようにしている。それによって、結果的にボウ補正及び濃度平滑処理を利かせた画像に対して、面跨ぎの露光セグメント光量補正が逆位相になる。
濃度補正のイメージとしては、実験的に求めた濃度平滑処理のパターンによってどのような画像に対しても同じように処理し、面跨ぎの露光セグメント光量補正は、面跨ぎ露光の有無に応じて光量補正していくことになる。仮に、ボウ補正で隣接するセグメント間の副走査方向のスライドがない場合、濃度平滑処理はそのセグメント間において事実上、無効になる。
【0054】
図10は濃度平滑処理の説明図である。
濃度平滑処理は、
図10のミクロレベルのイメージで示すように、画像スライドをミクロレベル(図では24000dpi)で何回か往復させて、濃度変化がマクロレベルで滑らかになるようにするものである。なお、「dpi」は一般に解像度の単位であり、「ドット・パー・インチ(Dots Per Inch)」である。
【0055】
なお、ボウ補正のみであると以下の課題が生じるため、ボウ補正の項目でスジ画像が発生しやすいため、濃度平滑処理を行う。すなわち、課題には、部分が倍率補正、濃度補正回路の非同期性の影響を受け、濃度補正とボウ補正の同期を容易に実現できない場合や、さまざまなばらつきを考慮した精度の高い濃度補正を容易に実現できない場合等がある。
【0056】
ここで、前述の
図3において、
図2のボウ補正部230、濃度平滑処理部240、面跨ぎ光量補正部250、及びシェーディング補正部300の各処理は、レーザ走査ユニット220aが主に実現するが、対応する具体的構成を説明する。
【0057】
図3に示すように、光走査装置200おいて、光走査部220のレーザ走査ユニット(LSU)220aは、制御部100で制御されるものである。
レーザ走査ユニット220aには、基準クロック(200m)やBD信号(200k)が入力される。
【0058】
レーザ走査ユニット220aは,制御部100の制御信号によって、ボウ補正処理部230は画像データに電子的ボウ補正処理を行う。濃度平滑処理部240は、ボウ補正処理された画像に対して制御部100の指令に基づき濃度平滑処理を行う。ボウ補正部230によって電子的にボウ補正された画像について面跨ぎ露光セグメントの光量補正部250が相反則不軌に対する濃度補正を行う。シェーディング補正部300が画像のシェーディング補正処理を行う。このためシェ―ディン補正部300がシェ―ディン補正信号Vshadeを作成し、ボウ補正部230が電子的なボウ補正のためのボウ補正信号Vbow等の制御信号(デジタル信号)を作成して、レーザドライバ制御部270がレーザドライバ210に制御信号(ボウ補正、面跨ぎ露光セグメントの光量補正による濃度補正、及びシェーディング補正の信号など)の出力を制御する。レーザドライバ制御部270によって出力された制御信号に基づき、レーザドライバ210は、レーザ発光部200aのマルチビーム発光動作を制御する。
【0059】
レーザ走査ユニット220aは、特定用途向け集積回路(LSUASIC)として構成されている。レーザ走査ユニット220aの集積回路(LSUASIC)には、制御部100から制御信号と、画像データと、水平同期信号HSYNCや、基準クロック信号200mと、BD(Beam Detect)センサ200kの検出信号等が入力される。
【0060】
Vshade信号は、シェーディング用アナログ電圧信号である。
レーザ走査ユニット(LSU)220aのシェーディング補正部300は、補正値設定部300aに設定されたテーブル(EEPROM等の記憶部220bに記憶される)から読みだしたシェーディング補正値を、PDM生成部300bを経てPDM波信号として出力する。そのシェ―デング補正値のPDM波信号は外付けのフィルタ回路290aによってアナログのシェーディング用電圧信号(Vshade)に変換されて、重ね合わせ回路260に入力される。なお、シェーディング補正値は、予め実験等で得られており、記憶部220bのほか、画像形成装置の記憶部160のROM等に記憶される等してもよい。
【0061】
Vbow信号はボウ補正用アナログ電圧信号である。
レーザ走査ユニット(LSU)220aのボウ補正部230がボウ補正用のPDM信号を出力し、外付けのフィルタ回路290bによってアナログのボウ補正用の電圧信号(Vbow)に変換されて重ね合わせ回路260に入力される。
重ね合わせ回路260によってアナログのシェーディング用電圧信号(Vshade)とアナログのボウ補正用の電圧信号(Vbow)が重ね合わされた信号がレーザドライバ210に入力され、マルチビーム発光を制御・補正する。
また、面跨ぎ露光セグメントの光量補正部250は、面跨ぎにおいて光量の補正値を算出する(補正値算出部250a)。算出された光量補正値を、PDM生成部250bを経て図示しないフィルタ回路を経て光量補正信号としてレーザドライバ210に入力し、レーザドライバ210によってマルチビーム発光を制御・補正する。
【0062】
図11は、PDM信号のアナログ変換のイメージを示す。
図11のように、レーザ走査ユニット220aから出力されたデジタルのシェーディング用の信号(PDM信号)とボウ補正用の信号(PDM信号)は、それぞれがフィルタ回路290aとフィルタ回路290bによってアナログのシェーディング用電圧信号(Vshade)とボウ補正信号(Vbow)に変換される。
【0063】
図12は、重ね合わせ回路260の基本構成を示す。
図12に示すように、アナログ電圧信号のシェーディング用電圧信号(Vshade)、ボウ補正信号(Vbow)が抵抗Ra、Rbを経由して対地抵抗Rcの加算点によって重ね合わされてアナログ基準信号の光量補正信号(Vsw)となり、レーザドライバ210に入力される。なお、符号Gは大地である。
【0064】
レーザドライバ210に入力する光量補正信号(Vsw)は、抵抗Ra、Rb、Rcからなる重ね合わせ回路260により、Vshade信号とVbow信号との重ね合わせの理に基づき下式(1)によって求められる。
Vsw=(Vshade×RbRc+Vbow×RcRa)/(RaRb+RbRc+RcRa) ・・・(1)
【0065】
図13は、レーザドライバ210に入力する、アナログの光量補正信号(アナログ基準信号となる)(Vsw)の変化の様子を示すものである。
【0066】
図13の場合、従来のシェーディングの仕組み(シェーディング設定信号)にボウ補正用PDMシェーディングの仕組みを重ね合わせたシミュレーション波形を示す。
【0067】
図13において、信号[1]が従来のシェーディング設定信号、信号[2]がボウ補正用PDM設定信号、信号[3]がシェーディング設定信号[1]とボウ補正用PDM設定信号[2]を足し合わせた合成信号、信号[4]がレーザドライバ210に入力するアナログの光量補正信号(Vsw)である。
【0068】
[光量補正量可変処理]
ここで、光量補正量可変処理に関して
図14~
図22に基づき説明する。
面跨ぎ露光セグメントの光量補正部250の光量補正において、光量補正量を可変させないと以下の理由から濃度ムラが発生しやすくなる。
・半導体レーザLDは応答に時間を要するので、これを考慮した解像度/モード別(1bit/4bit)の補正が必要。
・光量と画像濃度は比例関係にないので、諧調別の補正が必要。
・走査跨ぎ(面跨ぎ)の露光割合(垂直/斜め方向)に応じた補正が必要。
そこで、実施形態では、面跨ぎ(走査跨ぎ)の露光割合に応じた解像度/モード別(1bit/4bit)の光量テーブルを設定することによって、光量補正量を可変させている。
【0069】
[ブラックの濃度ムラについて]
ブラックは人間の視覚上、濃度ムラとして認知されやすい。しかしながら、ボウ特性自体は認知されにくい。そこでブラックは電子ボウ補正せずに、シアン、マゼンタ、イエローはブラックのボウ特性に合うように電子ボウ補正を行う。
図14は、ブラックの濃度ムラのイメージ図である。
図14に枠線400で示す部分が、ボウ補正のみを実施した際に発生する元々の濃いエリアである。濃度平滑処理及び濃度補正を追加で施すことにより、真ん中のエリアの濃度差はなくなっているが、枠内の両端のエリアに濃度差が残りやすい。
【0070】
[シアン、マゼンタ、イエローに対する電子ボウ補正のイメージ]
図15に示す電子ボウ補正のイメージ図を示す。ボウ補正部230は、
図15に示すように、ブラックについて電子ボウ補正を実施せず、シアン、マゼンタ、イエローについて、ブラックのボウ特性に合うように、副走査方向に向く矢印に示すように、電子的ボウ補正を行う。
なお、実施形態では、色彩に関しブラック以外の所定色には、シアン、マゼンタ、イエローばかりでなく特色も含むことができる。
【0071】
[ブラックの画像データの濃度補正]
図16は、ブラックの濃度補正関係を示すブロック図である。
図4と同様部分に同一符号を付している。
図4に示したように、ブラック以外のシアン、マゼンタ、イエローの画像データについてはボウ補正するが、ブラックの画像データについては、
図16に示すように、ボウ補正せず、平滑処理もせずに、光量補正値を算出する。つまり、
図4のボウ補正部230と濃度平滑処理部240を除いた形の信号処理を行う。
【0072】
図16に示すように、ブラックの画像データは、ボウ補正及び濃度平滑処理もされない状態で、レーザ走査ユニット220aで所用の処理がされてレーザドライバ(LDD)210に入力される。
【0073】
また、ブラック以外のシアン、マゼンタ、イエローのボウ補正された画像及びボウ補正されていないブラックの画像を面跨ぎ(走査跨ぎ)の光量補正によって濃度補正する濃度補正処理部250aを備えたものである。
面跨ぎの光量補正は、8ビームの半導体レーザLD(LD1~LD8)の場合、面跨ぎ露光セグメントに関するLD1/LD8を光量補正し、LD2~LD7の光量補正値は0(ゼロ)とする。
【0074】
[面跨ぎ露光セグメントの濃度補正に関する光量補正量の可変処理]
次に、
図17~
図22によって、光量補正量の可変処理を説明する。
図17は、1bitモードにおける垂直方向の面跨ぎ(走査跨ぎ)露光割合の算出手法の説明図であって、600dpi/1200dpi/2400dpi 1bitモードの場合を示す。
【0075】
図17(a)が垂直方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと垂直露光割合の算出説明図である。図に示すデータカウンタ(DATA_CNT)数はモードによって異なり、符号「M」で示し、図の場合600dpiでは、データカウンタ(DATA_CNT)数が12となる。
そして、ポリゴン一面の第8の半導体レーザLD8と次の面で第1の半導体レーザLD1が垂直方向に同時に1になったときに、合致数のカウンタ(MATCH_CNT)を+1し、エリア毎に垂直露光割合を算出する。図の場合、データカウンタ(DATA_CNT)数は12の時点で、合致数のカウンタ(MATCH_CNT)が3となり、LD8/LD1の垂直露光割合設定値は、LD81_MATCH_RATIOは2となる。
【0076】
図17(b)が解像度毎に面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた垂直方向への露光割合の設定値の説明図である。
図17(b)に示すように、解像度に応じて、算出方法が変わらないように、処理を一般化したうえで、合致数のカウンタ(MATCH_CNT)に応じた割合設定値(LD81_MATCH_RATIO)を解像度(600dpi/1200dpi/2400dpi)別に設定する。
【0077】
図17において、符号M、Nは以下を意味する。
M;DATA_CNT数
600dpi 1bitモードの場合 → 12
1200dpi 1bitモードの場合 → 24
2400dpi 1bitモードの場合 → 48
N;MATCH_CNT数
【0078】
次に、
図18は、光量補正量の可変処理において、600dpiで4bitモードの場合を示すものである。この場合、諧調レベルを考慮した上で加算し、エリア毎の垂直方向の面跨ぎ(走査跨ぎ)露光割合設定値(LD81_MATCH_RATIO)の算出手法の説明図である。
【0079】
第8の半導体レーザLD8の階調レベル(0~15)、第1の半導体レーザLD8の階調レベル(0~15)について、それらの平均値を下式(2)により算出する。
MATCH_VALUE=(LD8諧調レベル+LD1階調レベル)/2 … (2)
算出された階調レベルMATCH_VALUEを加算していき、合致数カウントMATCH_CNTを求める。
そして、
図18(b)に示す補正表によって、面跨ぎの露光セグメント合致数MATCH_CNTから露光割合設定値(LD81_MATCH_RATIO)を算出する。この場合600dpi 4bitである。
図18(a)に示すように、エリアに対応するデータカウントがMATCH_VALUEを加算したMATCH_CNTが「36」であり、(b)から、露光割合設定値(LD81_MATCH_RATIO)が「1.5」となる。
【0080】
次に、
図19は、光量補正量の可変処理において、斜め方向への隣接露光となる斜め方向への面跨ぎ(走査跨ぎ)による露光割合の算出手法の説明図である。(a)が斜め方向への隣接状態、(b)がカウント方法の説明図である。
【0081】
第8の半導体レーザLD8と第1の半導体レーザLD1による垂直露光ではなく、斜め方向への隣接露光でも、相反則不軌の影響を受ける可能性があるので、垂直露光とは、別にカウントする。
カウント方法としては、表1に示すように、半導体レーザLD8とLD1の露光位置が主走査方向にD0かD1の位置になったパターンによってカウンタ値をアップさせている。
【0082】
【0083】
図20は、
図19に示したパターンの概念を反映した光量補正量の可変処理を説明するタイミングチャートである。1bitモードの場合であって、斜め方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと垂直露光割合を示す。
図21が面跨ぎの露光セグメント合致数に応じた垂直方向への露光割合の設定値を示す。600dpi/1200dpi/2400dpiの解像度別に設定する。
図19のパターン1~パターン6に一致/不一致することを、
図20のNEXT_Pattern1~NEXT_Pattern6にて1/0で示している。NEXT_Pattern1~NEXT_Pattern6のカウンタ数DATA_CNT内の合計値をNEXT_CNTで表している。
【0084】
NEXT_RATIOの算出方法については
図17のMATCH_RATIOと同様、
図21に示す通り、合致数に応じた割合設定値(RATIO、NEXT_RATIO)を解像度別に設定する。
図20、
図21において、符号「M」「N」は以下を意味する。
M;DATA_CNT数
600dpi 1bitモードの場合 → 12
1200dpi 1bitモードの場合 → 24
2400dpi 1bitモードの場合 → 48
N;NEXT_CNT数
【0085】
図22は、光量補正量の可変処理を説明する、諧調レベル考慮した、斜め方向への面跨ぎによる露光割合の算出手法の説明図であり、4bitモードの場合であって、(a)が斜め方向への面跨ぎの露光セグメント合致数カウントと諧調レベルを考慮した上での斜め露光割合の説明図である。
【0086】
図22(a)に示すように、半導体レーザLD8とLD1の階調レベルの平均値NEXT_VALUEを下式(3)から算出する。
NEXT_VALUE=(LD8階調レベル+LD1階調レベル)/2 … (3)
合致数カウントNEXT_CNTは諧調レベルを考慮するため、式(3)で求めた階調レベルの平均値NEXT_VALUEの値を、カウント値DATA_CNTが12アップする毎に加算して合致数カウントNEXT_CNTを求める。
【0087】
図22(b)に示すように、面跨ぎの露光セグメント合致数(合致数カウントNEXT_CNT)に応じた垂直方向への露光割合の設定値(NEXT_RATIO)を求め、これによってエリア毎の斜め露光割合を算出する。(a)の例では、合致数カウントNEXT_CNTが「66」であるので露光割合の設定値NEXT_RATIOが「1.5」と算出される。
【0088】
次に、
図23は、跨ぎ露光における光量補正量の可変処理を説明するものであって、最終露光割合に対する最終光量補正量の例の説明図である。
実施形態では垂直方向と斜め方向の露光割合の設定値を下記式(4)のように合算し、最終的な跨ぎ露光割合を算出する。
最終露光割合=垂直露光割合+斜め露光割合 … (4)
最終的に、跨ぎ露光割合に応じた光量補正量を設定する。
図23には、LD8/LD1の最終露光割合に対する最終光量補正値を設定する。なお、最終露光割合が小数点ありの場合、四捨五入する。また、最終露光割合が11decを超えた場合、11decとして丸め処理を行う。
【0089】
以上、実施形態について説明してきたが、具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0090】
また、実施形態において、各装置で動作するプログラムは、上述の実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えばRAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行われる。
【0091】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えばROMや不揮発性メモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versataile Disc)、MO(magneto Optical Disc)、MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc等の光記録媒体)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の非一時的記録媒体であればいずれでもよい。
【0092】
また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本開示の機能が実現される場合もある。
【0093】
また、プログラムを市場に流通させる場合、可搬型の記憶装置にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されるサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのはもちろんである。
【0094】
また、上述した実施形態における各装置の一部又は全部を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現してもよい。各装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部又は全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0095】
10 画像形成装置
200 光走査装置
200a レーザ発光部
210 レーザドライバ(LDD)
220 光走査部
220a レーザ走査ユニット
230 ボウ補正部
240 濃度平滑処理部
250 面跨ぎ露光セグメントの光量補正部
260 重ね合わせ回路
270 レーザドライバ制御部
290a フィルタ回路
290b フィルタ回路