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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165679
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20241121BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20241121BHJP
   F24F 11/32 20180101ALI20241121BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F3/044
F24F11/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082063
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 智
【テーマコード(参考)】
3L053
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BA10
3L053BB02
3L053BB04
3L260AA01
3L260AB02
3L260BA53
3L260CA39
3L260CB78
3L260DA20
3L260FA07
3L260FB19
(57)【要約】
【課題】停電後、優先して空調すべき部屋を継続して空調することができる空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムは、太陽光発電システムから供給される電力で動作可能な空調機6、この空調機に接続される主ダクト14、この主ダクトから分岐して複数の部屋に通じる複数の分岐ダクト16a~16d、少なくとも1つの分岐ダクトに設けられるダンパー18a~18d、及び、天気予報情報から太陽光発電システムの発電量を予測する発電量予測部38と、その予測された発電量に基づきダンパーの開閉を制御するダンパー制御部49とを有する空調制御ユニット27、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムから供給される電力で動作可能な空調機、
前記空調機に接続される主ダクト、
前記主ダクトから分岐して複数の部屋に通じる複数の分岐ダクト、
前記複数の分岐ダクトの少なくとも1つに設けられるダンパー、及び、
天気予報情報から前記太陽光発電システムの発電量を予測する発電量予測部と、その予測された前記発電量に基づき前記ダンパーの開閉を制御するダンパー制御部とを有し、停電が起きたとき、前記空調機を使って前記複数の部屋の少なくとも1つの部屋の空調を続けるよう制御する空調制御ユニット、を備えた空調システム。
【請求項2】
前記空調制御ユニットは、前記複数の部屋の空調に必要な電力を予測する空調消費電力予測部を有し、
前記ダンパー制御部は、前記発電量予測部により予測された発電量及び前記空調消費電力予測部により予測された電力に基づき前記ダンパーの開閉を制御する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記ダンパーは、前記複数の分岐ダクトの2以上の分岐ダクトにそれぞれ設けられる2以上のダンパーであり、
前記2以上のダンパーには優先度が設定され、
前記ダンパー制御部は、停電が発生したとき前記複数の部屋の各々の空調を、ある設定された時間のあいだ継続できるかを判定し、その判定結果及び前記優先度に基づき前記2以上のダンパーのうち閉状態にするダンパーを決定する、請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記ダンパーは前記複数の分岐ダクトにそれぞれ設置され、
前記ダンパー制御部は、前記ダンパーのうち予め設定された少なくとも1つのダンパーは、前記判定結果及び前記優先度に拘わらず開状態とする、請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いたとき前記2以上のダンパーをすべて閉じるよう制御し、
前記少なくとも1つの部屋は前記空調機により空調される、請求項3に記載の空調システム。
【請求項6】
前記ダンパー制御部は、利用者により入力される指令に基づき前記2以上のダンパーをすべて閉じるよう制御し、
前記少なくとも1つの部屋は前記空調機により空調される、請求項3に記載の空調システム。
【請求項7】
前記ダンパー制御部は、前記複数の部屋のいずれもが前記設定された時間のあいだ、空調を継続できないと判定したとき、アラームを発報するように報知装置を制御する、請求項3に記載の空調システム。
【請求項8】
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いた場合、前記少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調がさらに継続できるかを判定し、空調が不可能であると判定したときアラームを発報するように報知装置を制御する、請求項5に記載の空調システム。
【請求項9】
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いた場合、前記少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調がさらに継続できるかを判定し、空調が継続できると判定したとき、空調が停止するまで継続可能な時間を算出し、その算出した時間を表示するよう表示装置を制御する、請求項5に記載の空調システム。
【請求項10】
前記空調制御ユニットは、停電から復旧したとき、前記2以上のダンパーがすべて開いた状態となるように制御する、請求項3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の部屋の空調を行う空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
出力の大きい1台の空調機によって居室、トイレ及び脱衣所を含む家全体の部屋の空調を実施する全館空調システムは、冬季に発生しやすいヒートショックを防止できるなど健康面でも優れたシステムである。しかし、災害発生時などで停電した場合には、住宅内の空調機能が全て停止するため、これを回避するため、太陽光発電システムで発電された電力を使用する全館空調システムが提案されている。特許文献1に記載された全館空調システムでは、太陽光発電システムの発電状況などから、日射の影響による室温の上昇を算出し、算出結果を元に部屋の温度上昇を効果的に抑制し、各部屋の室温を効率的に平準化することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-106195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電システムの発電量は天候にも左右され、太陽光発電システムは住宅全体の電力を十分賄えるほど安定して電力を供給できるとは限らない。他方、住宅内には空調が必要な部屋と空調を必ずしも要しない部屋とがある。太陽光発電システムから電力を利用した空調システムであっても、停電が発生してある時間経過すると電力不足により全部屋への空調が停止することがある。
【0005】
本開示の目的は、停電後、優先して空調すべき部屋を継続して空調することができる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調システムは、太陽光発電システムから供給される電力で動作可能な空調機、この空調機に接続される主ダクト、この主ダクトから分岐して複数の部屋に通じる複数の分岐ダクト、少なくとも1つの分岐ダクトに設けられるダンパー、及び、天気予報情報から太陽光発電システムの発電量を予測する発電量予測部と、その予測された発電量に基づきダンパーの開閉を制御するダンパー制御部とを有する空調制御ユニット、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空調システムによれば、停電後、優先して空調すべき部屋を継続して空調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態に係る空調システムを示す構成図である。
図2】空調システムに備えられる空調機6の室内機4を示す外観図である。
図3】空調システムに備えられる可変風量装置31を示す外観図である。
図4】空調システムに備えられる空調制御ユニット27を示すブロック図である。
図5】空調制御ユニット27のダンパー制御部49を示すブロック図である。
図6】空調制御ユニット27によるモード設定の動作を示すフローチャートである。
図7】空調制御ユニット27による短期的な停電モードでの動作を示すフローチャートである。
図8】空調制御ユニット27による長期的な停電モードでの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面及び以下の説明において、同一のもの及び実質的に同一のものには同一の符号を付し、同一の符号を付したものの説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、実施の形態に係る空調システムを示す構成図である。空調システムは空調機6で複数の部屋の室温をそれぞれ調整する全館空調システムである。一般的な住宅に設置される空調システムでは、リビング、キッチン、居室の他に洗面所及びトイレが空調される。説明では簡略化のため、4つの部屋3a、3b、3c及び3dを有する平屋の住宅1が例示される。
【0011】
空調システムは、空調機6、主ダクト14、4つの分岐ダクト16a~16d、4つのダンパー18a~18d及び4つの可変風量装置31a~31dを備える。空調機6は床下給気口23から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を加熱し又は冷却して主ダクト14に吹き出す。空調機6は室内機4、室外機5及び可とう配管8を備える。室外機5は住宅1の屋外に設置され、室内機4は住宅1内の居住空間以外の空間、例えば外壁7と部屋3aを区画する内壁との間に設置される。可とう配管8は外壁7を貫通する。可とう配管8の内部には、室内機4と室外機5との間で冷媒を循環させる冷媒配管、室内機4から室外機5へ電力を供給するための電源線、及び、室内機4と室外機5との間で信号のやり取りを行う通信線が配置されている。室内機4及び室外機5は冷媒が循環する冷媒回路を構成する。室内機4には冷媒回路の圧縮機、膨張弁、第1熱交換器及び四方弁が設けられ、室内機には冷媒回路の第2熱交換器が設けられる。冷媒回路が作動することによりヒートポンプが実現される。
【0012】
図2は室内機4を示す外観図である。室内機4は、その筐体4a内に熱交換器11及び送風用ファン12を備える。筐体4aには給気口9及び放出口13が設けられる。熱交換器11は冷媒回路の第2熱交換器に相当する。送風用ファン12は図示されないモータにより回転駆動されることにより、給気口9から放出口13への気流を発生させる。熱交換器11内に組み込まれた冷媒配管10は可とう配管8内を通り室外機5に接続され、熱交換器11は冷媒配管10を流れる冷媒と給気口9から放出口13へ流れる空気との間で熱交換を行う。空調機6が冷房運転を行うときは、熱交換器11で冷媒が空気から吸熱することにより空気が冷却される。空調機6が暖房運転を行うときは、熱交換器11で冷媒が空気へ放熱することにより空気が加熱される。放出口13には熱交換された空気を各部屋に送るための主な風路となる主ダクト14が接続される。
【0013】
図1に戻り、空調機6に接続された主ダクト14は天井裏15で分岐ダクト16a~16dに分岐する。部屋3a~3dの天井にはそれぞれ送出口17a~17dが設けられ、分岐ダクト16a~16dはそれぞれ送出口17a~17dに接続される。主ダクト14を流れる空気は分岐ダクト16a~16dで分流され、送出口17a~17dからそれぞれの部屋へ供給される。
【0014】
ダンパー18a~18dはそれぞれ部屋3a~3dに対応して設けられる。ダンパー18aは分岐ダクト16aに設置され、分岐ダクト16aの風路を開閉する。ダンパー18aは通常は開いた状態にして、空調機6から主ダクト14及び分岐ダクト16aを経由して部屋3aに空気が吹き出される状態にしておく。ダンパー18bは分岐ダクト16bに設置され、分岐ダクト16bの風路を開閉する。ダンパー18bは通常は開いた状態にして、空調機6から主ダクト14及び分岐ダクト16bを経由して部屋3bに給気が吹き出される状態にしておく。
【0015】
ダンパー18cは分岐ダクト16cに設置され、分岐ダクト16cの風路を開閉する。ダンパー18cは通常は開いた状態にして、空調機6から主ダクト14及び分岐ダクト16cを経由して部屋3cに給気が吹き出される状態にしておく。ダンパー18dは分岐ダクト16dに設置され、分岐ダクト16dの風路を開閉する。ダンパー18dは通常は開いた状態にして、空調機6から主ダクト14及び分岐ダクト16bを経由して部屋3dに給気が吹き出される状態にしておく。ダンパー18a~18dの各々の開閉は後述する空調制御ユニット27により制御される。
【0016】
部屋3a~3dの床20にはそれぞれ床下排気口21a~21dが設けられ、室内機4が設置される空間の床20に設けられる床下給気口23は床下22を介して部屋3a~3dの各々に通じる。よって部屋3a~3dの各部屋の空気は、室内機4の送風用ファン12により駆動されて、床下22、室内機4、主ダクト14及び分岐ダクト16a~16dの各分岐ダクトを循環し、室内機4で空気が調和される。
【0017】
送出口17a~17dの天井裏15の側にそれぞれ可変風量装置31a~31dが設けられ、可変風量装置31a~31dの各々は、部屋に吹き出される空気の風量を調整する。図3は可変風量装置31a~31dの各々を示す外観図である。可変風量装置31a~31dの各々は筐体32、分岐ダクト接続部33及びダンパー34を備える。分岐ダクト接続部33には分岐ダクト16a~16dの一つが接続される。ダンパー34は分岐ダクト接続部33内に支持棒34aにより支えられて設けられ、風路の開口面積を多段階に制御可能となっている。ダンパー34は、設定温度と部屋の温度差が大きい場合は開口面積を大きくして部屋に吹き出す風量を多くし、設定温度と部屋の温度が近づくにつれて開口面積を小さくして部屋に吹き出す風量を少なくする。筐体32は分岐ダクト接続部33から分岐ダクト接続部33の設置されている送出口17への風路の方向を変える。
【0018】
住宅1は、太陽光で発電を行う太陽光発電システムを備える。太陽電池システムは、太陽電池パネル2、電力変換装置25及び蓄電池26を含む。太陽電池パネル2は住宅1の屋根に設置され、太陽光から発電を行う。電力変換装置25は、PV-PCS(Photovoltanic-Power Conditioning Subsystem)として知られている。電力変換装置25は、太陽電池パネル2に接続され、太陽電池パネル2で発電された電力を電力変換し、分電盤24を通じて部屋3a~3dに供給する。蓄電池26は太陽電池パネル2で発電された電力を蓄電する。太陽電池パネル2により発電された電力が住宅1内で使用される電力よりも多い場合には、電力の余剰分は商用系統電源28に電力を売電する又は蓄電池26に充電する。太陽電池パネル2により発電された電力が住宅1内で使用される電力よりも少ない場合、不足する電力を商用系統電源28又は蓄電池26で補う。
【0019】
空調システムはさらに、空調制御ユニット27を備える。空調制御ユニット27は住宅1の住民が操作しやすい部屋(例えばリビング)に設置されるのが望ましく、ここでは例えば、部屋3dに設置されるものとする。空調制御ユニット27を動作させる電源は、通常時は商用系統電源28から供給され、停電時には蓄電池26から供給される。また、通常時に室内機4が受ける電力の一部が動作電源として空調制御ユニット27に供給されてもよい。空調制御ユニット27は室内機4と双方向通信を行い、空調機6の運転モード(冷房運転、暖房運転その他)の設定、空調機6の空調能力を制御する制御指令の出力、及び室内機4の送風用ファン12の風量を制御する風量指令の出力、を行う。空調制御ユニット27はさらに、インターネット通信網30を介して気象庁サーバー29と接続され、気象庁サーバー29が配信する天気予報情報を取得する。
【0020】
部屋3a~3dに対応してそれぞれリモコン19a~19dが設置されている。空調システムの利用者はリモコン19a~19dからそれぞれの部屋の設置温度を設定することができ、空調制御ユニット27はリモコン19a~19dからそれぞれの設定温度の情報を受け、部屋の温度が設定温度となるようにそれぞれ可変風量装置31a~31dのダンパー34を制御する。空調制御ユニット27は、停電が発生したとき、ダンパー18a~18dのうち全てではない少なくとも1つは開状態とし、他のダンパーは必要に応じて閉状態とする。優先して空調すべき部屋の空調は停電後も継続し、空調の優先度の低い部屋の空調を停止することができる。
【0021】
図4は空調制御ユニット27の構成を示すブロック図である。以下において、部屋3a~3dの各々を部屋3と呼び、リモコン19a~19dのなかの部屋3に対応するリモコンをリモコン19と呼び、分岐ダクト16a~16dのなかの部屋3に対応する分岐ダクトを分岐ダクト16と呼び、ダンパー18a~18dのなかの部屋3に対応するダンパーをダンパー18と呼び、さらに可変風量装置31a~31dのなかの部屋3に対応する可変風量装置を可変風量装置31と呼んで説明することがある。
【0022】
空調制御ユニット27は、気象情報格納部35、太陽電池容量格納部36、発電量情報格納部37、発電量予測部38及び発電量予測学習部39を備える。気象情報格納部35は、空調制御ユニット27がインターネット通信網30を介して気象庁サーバー29から取得した天気予報情報を格納する。取得される天気予報情報は、例えば全球数値予報モデルGPVであり、現在からある複数の時間帯先までの時間帯毎の日照量及び気温情報を含む。取得される天気予報情報は定期的に例えば3時間毎に取得し、最新の天気予報情報に更新しておくのが望ましい。
【0023】
太陽電池容量格納部36は、太陽電池パネル2の定格容量を格納する。空調制御ユニット27は情報を入力可能とする入力装置51(操作ボタン等)を有し、空調システムの利用者が入力装置51に定格容量を入力することによって定格容量が太陽電池容量格納部36に格納される。
【0024】
発電量予測部38は、気象情報格納部35から天気予報情報を取得し、その取得した天気予報情報から太陽光発電システムにより発電される発電量を予測する。太陽光発電システムの発電量は、太陽電池パネルの定格容量×日照量×損失係数で求めることができる。よって発電量予測部38は発電量を予測するために太陽電池容量格納部36に格納された定格容量を参照する。発電量情報格納部37は、電力変換装置25から出力される発電量データを格納する。発電量データは、太陽電池パネル2が発電した発電量を示す情報である。これにより発電量情報格納部37には過去からの発電量データが蓄積される。
【0025】
発電量予測学習部39は発電量の予測に使用される損失係数を補正することにより、発電量予測部38が行う予測の精度を向上させる。具体的には発電量予測学習部39は、現在と同季節の過去であって現在の日射量及び気温に近い過去の日射量及び気温であったときの発電量データを発電量情報格納部37から取得し、発電量予測部38が予測した発電量と比較する。発電量予測学習部39はその差分を損失係数に反映させることにより、損失係数を実測値に近づける。
【0026】
気象情報格納部35及び発電量情報格納部37は、過去の日射量及び気温とその時の発電量データとを対応付けて格納している。発電量予測学習部39は、気象情報格納部35に格納された情報から現在の日射量及び気温に近い過去の日射量及び気温を探索する。発電量予測学習部39は、探索された過去の日射量及び気温に対応する発電量データを発電量情報格納部37から取得する。
【0027】
なお発電量の予測に関する学習機能は必ずしも要するものではないため、発電量情報格納部37及び発電量予測学習部39は任意に設けられる。
【0028】
リモコン19は、入力装置61、温度センサ62及び風量制御部63を備える。入力装置61は例えば操作ボタンであり、空調システムの利用者により操作されてその部屋の設定温度を設定する。温度センサ62はリモコン19が設置されている部屋の温度を測定する。風量制御部63は、リモコン19が設置されている部屋に対応する可変風量装置31のダンパー34の開口面積を制御する。
【0029】
空調制御ユニット27は室温設定温度格納部40、室温格納部41及び空調機制御部42を備える。室温設定温度格納部40は入力装置61により設定された部屋の設定温度を格納する。室温格納部41は温度センサ62により測定された部屋の温度(以下、計測温度)を格納する。これにより室温設定温度格納部40及び室温格納部41には過去からの設定温度及び計測温度がそれぞれ蓄積される。空調機制御部42は空調機6及びダンパー34を制御する。具体的には、空調機制御部42は入力装置61及び温度センサ62からそれぞれ設定温度及び計測温度を受け、計測温度が設定温度になるように空調機6及び風量制御部63に制御指令及び開口面積指令をそれぞれ送信する。空調機6は制御指令に基づき冷房時の運転能力及び暖房時の運転能力を調整する。風量制御部63は開口面積指令に基づき可変風量装置31のダンパー34の開口面積を調整する。
【0030】
空調制御ユニット27は、室外機消費電力格納部43、空調消費電力予測部44及び空調消費電力予測学習部45を備える。室外機消費電力格納部43は、室外機5から受ける消費電力情報を格納する。消費電力情報は室外機5が消費した消費電力を示す。空調消費電力予測部44は、室温設定温度格納部40から現在の設定温度を、室温格納部41から現在の測定温度をそれぞれ取得し、その取得した設定温度及び測定温度に基づき空調に必要な電力を予測する。つまり、空調消費電力予測部44は、部屋3a~3dの部屋毎に空調に必要な電力を予測する。具体的に、空調消費電力予測部44は、各部屋での設定温度と測定温度の差分をとり、その差分値から各部屋に必要な空調能力を得る。差分値と必要な空調能力との関係は予め設定されている。そして空調消費電力予測部44は、その得られた各部屋の空調能力から各部屋の空調に必要な電力を予測する。
【0031】
空調消費電力予測学習部45は、空調に必要な電力の予測に用いられる係数を補正することにより、空調消費電力予測学習部45が行う予測の精度を向上させる。具体的には空調消費電力予測学習部45は、現在と同季節の過去であって現在の気温、設定温度及び測定温度に近い過去の気温、設定温度及び測定温度にあったときの消費電力情報を室外機消費電力格納部43から取得し、空調消費電力予測部44が予測した電力予測値と比較する。発電量予測学習部39はその差分を係数に反映させることにより損失係数を実測値に近づける。
【0032】
気象情報格納部35、室温設定温度格納部40、室温格納部41及び室外機消費電力格納部43は、過去の気温、設定温度及び測定温度とその時の消費電力情報とは対応付けてそれぞれ格納している。空調消費電力予測学習部45は、気象情報格納部35、室温設定温度格納部40及び室温格納部41にそれぞれ格納された情報から現在の気温、設定温度及び測定温度に近い過去の気温、設定温度及び測定温度を探索する。空調消費電力予測学習部45は、探索された過去の設定温度及び測定温度に対応する消費電力情報を室外機消費電力格納部43から取得する。
【0033】
なお消費電力の予測に関する学習機能は必ずしも要するものではないため、室外機消費電力格納部43及び空調消費電力予測学習部45は任意に設けられる。
【0034】
空調制御ユニット27は、蓄電池残電力監視部46、消費電力監視部47、消費電力格納部48及びダンパー制御部49を備える。蓄電池残電力監視部46は、蓄電池26の残電力量を監視する。消費電力監視部47は、電圧センサ及び電流センサ70から取得された電圧値及び電流値に基づき部屋3a~3dの各部屋で消費される消費電力を算出する。電圧センサ及び電流センサ70は、部屋3a~3dに接続されるブレーカーの各々に設置され、各部屋に供給される電圧及び電流を測定する。4つのブレーカーは分電盤24内に集約されている。消費電力監視部47により算出される消費電力には空調機6が消費した電力を含まない。よって消費電力監視部47により算出される消費電力から空調以外に使用する電力を把握することができる。消費電力格納部48は消費電力情報を格納する。消費電力情報は、消費電力監視部47により算出された各部屋の時間帯毎の消費電力を示す情報であり、時間帯毎の消費電力はその時間帯に消費した電力量を時間で除した平均の電力で表される。消費電力格納部48には過去からの部屋毎の消費電力情報が蓄積される。
【0035】
ダンパー制御部49はダンパー18a~18dのそれぞれ開閉を制御する。ダンパー制御部49には、停電後でも空調が必要な部屋である要空調部屋と、空調を必ずしも要しない部屋つまり要空調部屋以外の部屋の間での空調を行う優先度とが利用者により設定されており、例えば、入力装置51を介してダンパー制御部49に記憶される。停電時には、ダンパー制御部49は、その設定された優先度、発電量予測部38からの発電量予測値、蓄電池残電力監視部46からの蓄電池26の残電力量、消費電力格納部48からの消費電力情報、及び、空調消費電力予測部44からの電力予測値に基づき、ダンパー18a~18dのうち空調を必ずしも要しない部屋に対応するダンパーの開閉を制御する。さらにダンパー制御部49は、各ダンパー18の開閉状態を示す情報を空調機制御部42に送信する。空調機制御部42は各ダンパー18の開閉状態に応じて空調機6の運転能力を調整する。
【0036】
他方、要空調部屋に関しては、ダンパー制御部49は、発電量予測部38からの発電量予測値及び空調消費電力予測部44からの電力予測値に拘わらず、ダンパー18a~18dのうちの要空調部屋に対応するダンパーは開状態を維持する。
【0037】
なおダンパー18は部屋3と対応づけられているので、要空調部屋を設定することは、要空調部屋に対応するダンパーを設定することと言い換えることができる。また空調を必ずしも要しない部屋の間での空調を行う優先度を設定することは、空調を必ずしも要しない部屋にそれぞれ対応するダンパーの間での空調を行う優先度を設定することと言い換えることができる。
【0038】
空調制御ユニット27は報知装置52及び表示装置53を備える。報知装置52は例えば、スピーカであり、ダンパー制御部49からの指令に基づきアラームを発し、空調以外で使用する電力を減らすように利用者に促す。ただし報知装置52に代えて、リモコン19が備える報知装置にダンパー制御部49からの指令に基づきアラームを発するようにさせてもよい。表示装置53は例えば、液晶モニターであり、ダンパー制御部49からの指令に基づき空調可能な時間を表示する。ただし表示装置53に代えて、リモコン19が備える表示装置に空調可能な時間を表示させてもよい。
【0039】
図5は、ダンパー制御部49の構成を示す機能ブロック図である。ダンパー制御部49は、使用可能電力予測部71,消費電力予測部72、空調使用可能電力予測部73及びダンパー開閉判定部74を備える。使用可能電力予測部71は、発電量予測部38で予測される発電量予測値及び蓄電池残電力監視部46により監視される蓄電池26の残電力量に基づき、停電後に使用可能な電力量を予測する。消費電力予測部72は消費電力監視部47から得られる現在の消費電力及び消費電力格納部48に格納された過去の消費電力量に基づき、停電後に空調以外で使用する電力量を予測する。空調使用可能電力予測部73は、使用可能電力予測部71で予測された電力量から消費電力予測部72で予測された電力量を減算することにより、停電後に空調で使用可能な電力を予測する。空調で使用可能な電力とは、空調のために空調機6が消費する電力を意味する。
【0040】
ダンパー開閉判定部74は、空調使用可能電力予測部73で予測された電力量と空調消費電力予測部44で予測された電力予測値とを比較し、その比較結果に基づいてダンパー18a~18dのうちの閉状態にするダンパーを判定する。ダンパー開閉判定部74は、その比較結果に基づいて空調機制御部42、報知装置52及び表示装置53にそれぞれの指令を送信する。入力装置51から入力される優先情報はダンパー開閉判定部74に記憶される。
【0041】
本実施の形態に係る空調システムは通常モード、短期的な停電モード及び長期的な停電モードで動作する。空調制御ユニット27に含まれるモード切替部50が3つのモードの切替えを行う。モード切替部50は、停電が発生した場合、通常モードから短期的停電モードに切り替え、ある設定された時間(以下では第1設定時間と呼ぶ)以上に停電が継続した場合は、長期的停電モードに自動的に切り替える。利用者が短期的停電モードから長期的停電モードに手動で切り替えることも可能である。停電が復旧した場合は、モード切替部50は、通常モードに自動的に切り替わる。
【0042】
第1設定時間は空調システムの運転開始前に利用者により入力装置51を介してモード切替部50に設定される。短期的停電モードから長期的停電モードへの切替は入力装置51から利用者により操作可能である。
【0043】
図6は空調制御ユニット27によるモード設定の動作を示すフローチャートである。空調システムが運転開始後、ステップS0において、モード切替部50は通常モードを設定する。通常モードでは空調制御ユニット27は、ダンパー18a~18dを開けた状態で空調機6を稼働し、リモコン19a~19dによりそれぞれ設定された設定温度となるように各部屋の温度を調整する。ステップS1において、モード切替部50は停電が発生したか否かを確認する。モード切替部50は、電力変換装置25から停電信号を受け取ると停電が発生したと判断し(ステップS1:Yes)、ステップS2において、通常モードから短期的停電モードにモードを切り替える。電力変換装置25から停電信号がない限り空調システムは通常モードを続ける(ステップS1:No)。
【0044】
ステップS3において、モード切替部50は、短期的停電モードが開始されてから第1設定時間が経過したか否かを計測する。第1設定時間が経過した場合(ステップS3:Yes)、ステップS4において、モード切替部50は、短期的な停電モードから長期的な停電モードにモードを切り替える。第1設定時間が経過していない場合(ステップS3:No)、ステップS7において、モード切替部50は利用者が入力装置51から長期的な停電モードを設定したか否かを判定する。長期的な停電モードが設定された場合(ステップS7:Yes)、ステップS4において、モード切替部50は短期的な停電モードから長期的な停電モードにモードを切り替える。
【0045】
短期的停電モード及び長期的停電モードのいずれにあっても、ステップS5及びS8において、モード切替部50は停電から復旧したか否かを確認する。モード切替部50は電力変換装置25から復旧信号を受け取ると停電から復旧したと判断し(ステップS5及びS8:Yes)、ステップS0において、短期的停電モード及び長期的停電モードの各々から通常モードに切り替える(ステップS0)。電力変換装置25から復旧信号がない限り(ステップS5及びS8:No)、空調システムはそれぞれの停電モードを続ける。
【0046】
電力変換装置25は商用系統電源28から供給される電圧がある閾値以下になったことを判定すると停電信号を出力し、商用系統電源28から供給される電圧が閾値以下の状態から閾値を超えた値に戻ったことを判定すると復旧信号を出力するように構成されている。
【0047】
次にステップS2において短期的停電モードが設定されたときの空調制御ユニット27が行う制御を説明する。以下では、第1設定時間として例えば5時間が設定されたものとして説明を続ける。また、ダンパー制御部49には、要空調部屋として部屋3aが設定され、空調を必ずしも要しない部屋の間で空調を行う優先度として部屋3b>部屋3c>部屋3dが設定されたものとして説明を続ける。
【0048】
短期的停電モードが開始する時点ではダンパー18a~18dは開いた状態で且つ空調機6は稼働した状態にあり、よって部屋3a~3dが空調されているものとする。短期的停電モードが設定されると、空調制御ユニット27は気象庁サーバー29から5時間先までの日射量及び気温情報を取得し、発電量情報格納部37に格納する。発電量予測部38は太陽光発電システムの5時間先までの時間帯毎の発電量を予測する。また空調消費電力予測部44は短期的停電モードが設定された時点における部屋3a~3dのそれぞれ空調に必要な電力を予測する。この予測された電力予測値は、5時間先までの時間帯毎の部屋3a~3dのそれぞれ空調に必要な電力と見做されて後の処理に利用される。
【0049】
図7は、短期的停電モードでのダンパー制御部49による動作を示すフローチャートである。ステップS9において、使用可能電力予測部71は、発電量予測部38により予測された太陽光発電システムの5時間先までの時間帯毎の発電量予測値と、蓄電池残電力監視部46の監視する蓄電池26の現在の蓄電量から、5時間先までの時間帯毎に使用可能な電力(a)を算出する。時間帯は例えば1時間単位であり、停電が例えば10:30に発生した場合、5時間先までの時間帯は、第1時間帯(10:00~11:00)、第2時間帯(11:00~12:00)、第3時間帯(12:00~13:00)、第4時間帯(13:00~14:00)、第5時間帯(14:00~15:00)及び第6時間帯(15:00~16:00)の6つに当たる。5時間先までの時間帯毎の電力(a)は、この6つの時間帯の各々における使用可能な電力を指す。
【0050】
ステップS10において、消費電力予測部72は、消費電力格納部48から前日における第1時間帯~第6時間帯のそれぞれ消費電力を取得する。消費電力予測部72は、消費電力監視部47から現在の消費電力を受け取る。消費電力予測部72は、前日の第1時間帯の消費電力と、現在の時間帯(本日の第1時間帯)の消費電力の換算値との差分を取る。消費電力予測部72はこの差分値を、消費電力格納部48から取得した前日の第2時間帯~第6時間帯の各消費電力に加算し、これらの加算値を電力(b)として得る。電圧センサ及び電流センサ70で計測される電圧及び電流は空調機6に供給された電圧及び電流を含まないため、消費電力予測部72で算出される電力(b)は現在からの第2時間帯~第6時間帯の各時間帯に空調以外で消費される電力の予測値とされる。また現在の消費電力を現在からの第1時間帯での空調以外で消費される電力(b)とすることにより、現在からの第1時間帯~第6時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(b)が用意される。
【0051】
ステップS11において、空調使用可能電力予測部73は、使用可能電力予測部71で算出された電力(a)から消費電力予測部72で算出された電力(b)を5時間先までの時間帯毎に減算し、その減算した値(つまり、電力(a)-電力(b))を時間帯毎の電力(c)として得る。電力(c)は第1時間帯~第6時間帯において空調にそれぞれ使用することのできる電力の予測値を表している。
【0052】
ステップS12において、ダンパー開閉判定部74は、要空調部屋として予め設定されている部屋3aを選択する。ダンパー開閉判定部74は、空調使用可能電力予測部73により予測された第1時間帯~第6時間帯の各電力(c)と、空調消費電力予測部44により予測された部屋毎の電力のうち、選択された部屋3aの空調に必要な電力(以下、電力(A)とする)とを比較する。ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のうち電力(A)が電力(c)以上である時間帯が一つでもあると判断した場合(ステップS12:No)、ステップS13aにおいて、ダンパー18b~18dを閉じるように制御する。よって部屋3b~3dの空調が停止され、部屋3aの空調は継続される。加えて、ダンパー開閉判定部74は、ダンパー18b~18dを特定する情報を空調機制御部42に送信する。空調機制御部42はその特定情報を受け、部屋3aだけを空調するに必要な程度に運転能力を下げるように空調機6を制御する。ステップS13bにおいて、ダンパー開閉判定部74は、アラームを発するよう報知装置52を制御し、報知装置52から空調以外で使用する電力を減らすよう利用者に促す。
【0053】
ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のいずれにおいても電力(A)が電力(c)より小さいと判断した場合(ステップS12:Yes)、ステップS14において、空調を必ずしも要しない部屋のうち最も優先度の高い部屋3bを選択する。ダンパー開閉判定部74は、「電力(c)-電力(A)」を時間帯毎に算出し、各時間帯の「電力(c)-電力(A)」と、空調消費電力予測部44により予測された部屋毎の電力のうち、選択された部屋3bの空調に必要な電力(以下、電力(B)とする)とを比較する。ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のうち、電力(B)が「電力(c)-電力(A)」以上である時間帯が一つでもあると判断した場合(ステップS14:No)、ステップS15において、ダンパー18b~18dを閉じるように制御する。よって部屋3b~3dの空調が停止され、部屋3aの空調は継続される。加えて、ダンパー開閉判定部74は、ダンパー18b~18dを特定する情報を空調機制御部42に送信する。空調機制御部42はその特定情報を受け、部屋3aだけを空調するに必要な程度に運転能力を下げるように空調機6を制御する。
【0054】
ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のいずれにおいても電力(B)が「電力(c)-電力(A)」より小さい判断した場合(ステップS14:Yes)、ステップS16において、空調を必ずしも要しない部屋のうち次に優先度の高い部屋3cを選択する。ダンパー開閉判定部74は、「電力(c)-電力(A)-電力(B)」を時間帯毎に算出し、各時間帯の「電力(c)-電力(A)-電力(B)」と、空調消費電力予測部44により予測された部屋毎の電力のうち、選択された部屋3cの空調に必要な電力(以下、電力(C)とする)とを比較する。ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のうち、電力(C)が「電力(c)-電力(A)-電力(B)」以上である時間帯が一つでもあると判断した場合(ステップS16:No)、ステップS17において、ダンパー18c及び18dを閉じるように制御する。よって部屋3c及び3dの空調が停止され、部屋3a及び3cの空調は継続される。加えて、ダンパー開閉判定部74は、ダンパー18c及び18dを特定する情報を空調機制御部42に送信する。空調機制御部42はその特定情報を受け、部屋3a及び3bだけを空調するに必要な程度に運転能力を下げるように空調機6を制御する。
【0055】
ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のいずれにおいても電力(C)が「電力(c)-電力(A)-電力(B)」より小さいと判断した場合(ステップS16:Yes)、ステップS18において、空調を必ずしも要しない部屋のうち最も優先度の低い部屋3dを選択する。ダンパー開閉判定部74は、「電力(c)-電力(A)-電力(B)-電力(C)」を時間帯毎に算出し、各時間帯の「電力(c)-電力(A)-電力(B)-電力(C)」と、空調消費電力予測部44により予測された部屋毎の電力のうち、選択された部屋3dの空調に必要な電力(以下、電力(D)とする)とを比較する。ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のうち、電力(D)が「電力(c)-電力(A)-電力(B)-電力(C)」以上である時間帯が一つでもあると判断した場合(ステップS18:No)、ステップS19において、ダンパー18dを閉じるように制御する。よって部屋3dの空調が停止され、部屋3a~3cの空調は継続される。加えて、ダンパー開閉判定部74は、ダンパー18dを特定する情報を空調機制御部42に送信する。空調機制御部42はその特定情報を受け、部屋3a~3cだけを空調するに必要な程度に運転能力を下げるように空調機6を制御する。
【0056】
ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のいずれにおいても電力(D)「電力(c)-電力(A)-電力(B)-電力(C)」より小さいと判断した場合(ステップS18:Yes)、スタート時点の空調システムの運転状態を変えることなく処理は終わる。
【0057】
次にステップS4において長期的停電モードが設定されたときの空調制御ユニット27が行う制御を説明する。この長期的停電モードが継続される想定時間を第2設定時間として利用者により事前に設定されている。第2設定時間は入力装置51を介してモード切替部50に設定され、停電発生後も変更可能である。以下、第2設定時間として例えば72時間が設定されたものとして説明を続ける。
【0058】
長期的停電モードが設定されると、空調制御ユニット27は気象庁サーバー29から72時間先までの日射量及び気温情報を取得し、発電量情報格納部37に格納する。発電量予測部38は太陽光発電システムの72時間先までの時間帯毎の発電量を予測する。また空調消費電力予測部44は長期的停電モードが設定された時点における部屋3aの空調に必要な電力を予測する。この予測された電力予測値は、72時間先までの時間帯毎の部屋3aの空調に必要な電力と見做されて後の処理に利用される。
【0059】
図8は長期的停電モードでのダンパー制御部49の動作を示すフローチャートである。ステップS20において、空調システムは、要空調部屋として設定された部屋3aを空調し、それ以外の部屋の空調を停止する。そのため、ダンパー開閉判定部74は、ダンパー18b、18c及び18dを閉じた状態にする。図7においてステップS19が実施された後のステップS20では、ダンパー開閉判定部74はダンパー18b及び18cを閉じ、部屋3aだけを空調するに必要な程度に空調機6の運転能力を調整するように空調機制御部42に指令を送信する。ステップS17が実施された後の実際のステップS20では、ダンパー開閉判定部74はダンパー18bが閉じ、部屋3aだけを空調するに必要な程度に空調機6の運転能力を調整するように空調機制御部42に指令を送信する。ステップS13a及びS15の各々が実施された後では、ステップS20ではそれまでの運転状態が継続されることになる。
【0060】
ステップS21において、使用可能電力予測部71は、発電量予測部38により予測された太陽光発電システムの72時間先までの時間帯毎の発電量予測値と、蓄電池残電力監視部46の監視する蓄電池26の現在の蓄電量から、72時間先までの時間帯毎に使用可能な電力(x)を算出する。時間帯は1時間単位であり、長期的停電モードが設定される時点を含む時間帯を第1時間帯として、72時間後の第73時間帯までの73個の電力(x)が算出される。
【0061】
ステップS22において、消費電力予測部72は、消費電力格納部48から前日における第1時間帯から第24時間帯までの24個の消費電力を取得する。消費電力予測部72は、消費電力監視部47から現在の消費電力を受け取る。消費電力予測部72は、前日の第1時間帯との消費電力と、現在の消費電力との差分を取る。消費電力予測部72はこの差分値を、消費電力格納部48から取得した前日の第2時間帯~第24時間帯の各消費電力に加え、この加算値を電力(y)として得る。この23個の電力(y)は、現在からの第2時間帯~第24時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(y)とされる。さらに、現在からの第2時間帯~第24時間帯に対する電力(y)は、現在からの第26時間帯~第48時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(y)として援用され、さらに、現在からの第50時間帯~第73時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(y)として援用される。また現在の消費電力は現在からの第1時間帯、第25時間帯、第49時間帯及び第73時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(y)とされる。以上により、現在からの第1時間帯~第73時間帯の空調以外で消費されるそれぞれ電力(y)が用意される。
【0062】
ステップS23において、空調使用可能電力予測部73は、使用可能電力予測部71で算出された電力(x)から消費電力予測部72で算出された電力(y)を72時間先までの時間帯毎に減算し、その減算した値(つまり、電力(x)-電力(y))を時間帯毎の電力(z)として得る。電力(z)は第1時間帯~第73時間帯において空調にそれぞれ使用することのできる電力の予測値を表している。
【0063】
ステップS24において、ダンパー開閉判定部74は、空調使用可能電力予測部73により予測された第1時間帯~第73時間帯の各電力(z)と、空調消費電力予測部44により予測された部屋3aの空調に必要な電力(A)とを比較する。ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第6時間帯のうち電力(A)が電力(z)以上である時間帯が一つでもあると判断した場合(ステップS24:No)、ステップS26において、アラームを発するよう報知装置52を制御し、空調以外で使用する電力を減らすよう利用者に促す。
【0064】
ダンパー開閉判定部74は、第1時間帯~第73時間帯のいずれにおいても電力(A)が電力(z)より小さいと判断した場合(ステップS12:Yes)、空調可能時間を表示するように表示装置53を制御する。具体的には、ダンパー開閉判定部74は、電力(z)-電力(A)の全時間帯の合計値は72時間後にさらに空調に使用できる残電力に相当するので、ダンパー開閉判定部74はその残電力から72時間後に空調が可能な時間T1を算出する。ダンパー開閉判定部74は、空調可能時間として、その算出された時間に72時間を加えた時間T2(=T1+72)を表示装置53に表示させる。若しくは、ダンパー開閉判定部74は、空調可能時間として時間T2を長期的停電時モードが開始して72時間後に表示装置53に表示させてもよい。
【0065】
図6及び図7において、使用可能電力予測部71,消費電力予測部72、空調使用可能電力予測部73及びダンパー開閉判定部74の各々の動作は、ダンパー制御部49により実現される動作と言い換えることができる。
【0066】
空調制御ユニット27は例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリにより実現される。発電量予測部38,発電量予測学習部39、空調機制御部42、空調消費電力予測部44、空調消費電力予測学習部45、蓄電池残電力監視部46,消費電力監視部47、ダンパー制御部49,モード切替部50はCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。しかしこれらの機能の一部又は全部の機能は専用の処理回路で実現されてもよい。メモリはRAM(Randam Access Memory)等の揮発性メモリ、及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。メモリは、プログラムを記憶する他、気象情報格納部35,太陽電池容量格納部36,発電量情報格納部37、室温設定温度格納部40,室温格納部41,室外機消費電力格納部43及び消費電力格納部48として機能する。
【0067】
要空調部屋として部屋3aが設定された場合について説明したが、利用者は部屋3a~3dの全てではない1又は2以上の任意の部屋を設定することができる。また要空部屋以外で優先度が設定される部屋として3つの部屋3b~3dが例示されたが、利用者は2以上の任意の部屋を設定することができる。
【0068】
部屋3a~3dに対応してダンパー18a~18dが設けらるので、空調システムが住宅1に設置された後でも、部屋3a~3dの任意の部屋を要空調部屋に設定できる。しかし、空調システムが設置される前に要空調部屋がわかっている場合には、その要空調部屋に対応するダンパー18(要空調部屋が部屋3aであればダンパー18a)は分岐ダクト16に設置されなくてもよい。
【0069】
また部屋3a~3dが例示されたが、空調される部屋の数は4つに限らない。少なくとも2つの部屋に本実施の形態の空調システムが適用される。部屋の数に応じて、それぞれ設置される分岐ダクト16,ダンパー18、可変風量装置31及びリモコン19の数も変更される。
【0070】
要空調部屋の設定、要空調部屋以外の部屋の間での空調を行う優先度の設定、第1設定時間の設定、第2設定時間の設定、短期的停電モードから長期的停電モードへの切替え及び定格容量の太陽電池容量格納部36への格納は入力装置51を介して行われたが、その一部又は全部はリモコン19の入力装置61を介して行われてもよい。またステップS13b及びS26のそれぞれアラームの発報が報知装置52により行われたが、リモコン19a~19dの少なくともいずれかに備えられる報知装置により行われてもよい。このとき報知装置52は設けられなくてもよい。さらにステップS25の空調可能時間は表示装置53に表示されたが、リモコン19a~19dの少なくともいずれかに備えられる表示装置により行われてもよい。このとき表示装置53は設けられなくてもよい。
【0071】
インターネット通信網30の基地局も停電になっている場合も考え、住宅1の側で停電が発生した時点に最新の天気予報情報が取得できない可能性もある。よって第1設定時間と第2設定時間との合計時間よりも先の最新の天気予報情報を定期的に取得しておくのが望ましい。なお天気予報情報は気象庁サーバー29でなく民間の気象サービスから取得可能な情報でも構わない。
【0072】
以上のように構成される本実施の形態に係る空調システムの特徴は以下のとおりである。
【0073】
主ダクト14から分岐する複数の分岐ダクトの少なくとも一つにダンパーが設けられる。空調制御ユニット27は、天気予報情報から太陽光システムの発電量を予測する発電量予測部38と、その予測された発電量予測値に基づきダンパー(上記例ではダンパー18b~18d)の開閉を制御するダンパー制御部49を有し、停電が起きたとき、前記空調機を使って複数の部屋の少なくとも1つの部屋(上記例では部屋3a)の空調を続けるよう制御する。予測した発電量に応じてダンパーを閉じるので、停電後も優先して空調すべき部屋を継続して空調することができる。
【0074】
空調制御ユニット27は、複数の部屋3a~3dの空調に必要な電力を予測する空調消費電力予測部44を有し、ダンパー制御部49は、発電量予測部38により予測された発電量及び空調消費電力予測部44により予測された電力に基づいてダンパーの開閉を制御する。よって、優先して空調すべき部屋以外の部屋(上記例では部屋3b~3d)の空調を停電後に継続できるかを判断することができる。
【0075】
複数のダンパー18a~18dのうち2以上のダンパー(上記例ではダンパー18b~18d)には優先度が設けられる。ダンパー制御部49は、停電が発生したとき複数の部屋3a~3dの各々の空調を、ある設定された時間(上記例では第1設定時間)のあいだ継続できるかを判定し、その判定結果及び前記優先度に基づき閉状態にするダンパーを決定する。優先して空調すべき部屋以外の部屋のなかでさらに優先して空調すべき部屋の空調を継続することができる。
【0076】
ダンパーが複数の分岐ダクト16a~16dにそれぞれ設置された場合、予め設定された少なくとも1つのダンパーは、その判定結果及び優先度に拘わらず開状態とする。複数の分岐ダクト16a~16dの各々にダンパーが設けられても、停電後も優先して空調すべき部屋を継続して空調することができる。
【0077】
ダンパー制御部49は、設定された時間を超えて停電が続いたとき複数のダンパー18a~18dのうちの2以上のダンパーをすべて閉じるよう制御し、少なくとも1つの部屋は空調機により空調される。停電が長期に続いたときには優先して空調すべき部屋以外の空調を停止させるので、優先して空調すべき部屋の空調の継続時間を延ばすことができる。
【0078】
ダンパー制御部49は、利用者による入力される指令に基づき複数のダンパー18a~18dのうちの2以上のダンパーを閉じるよう制御する。よって設定された時間を待つことなく利用者の判断により優先して空調すべき部屋の空調の継続時間を延ばすことができる。
【0079】
ダンパー制御部49は、複数の部屋3a~3dのいずれもが設定された時間のあいだ、空調を継続できないと判定したときアラームを発報するように報知装置を制御する。空調すべき部屋の空調の継続時間を延ばすために空調以外で使用する電力を減らすように利用者に促すことができる。
【0080】
ダンパー制御部49は、設定された時間を超えて停電が続いた場合、或いは利用者による入力される指令があった場合、停電後に空調が継続している少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調がさらに継続できるかを判定し、空調が不可能であると判定したときアラームを発報するように報知装置を制御する。空調すべき部屋の空調の継続時間を確保するために空調以外で使用する電力を減らすように利用者に促すことができる。
【0081】
ダンパー制御部49は、設定された時間を超えて停電が続いた場合、或いは利用者により入力される指令があった場合、停電後に空調が継続している少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調が停止するまで継続可能な時間を算出し、その算出した時間を表示するよう表示装置を制御する。空調が停止するまで継続可能な時間を利用者に把握させることにより、空調の継続時間をできるだけ延ばすために空調以外で使用する電力を減らすように利用者に促すことができる。
【0082】
以下に、本開示に含まれ得る態様の例について、付記として明記する。
(付記1)
太陽光発電システムから供給される電力で動作可能な空調機、
前記空調機に接続される主ダクト、
前記主ダクトから分岐して複数の部屋に通じる複数の分岐ダクト、
前記複数の分岐ダクトの少なくとも1つに設けられるダンパー、及び、
天気予報情報から前記太陽光発電システムの発電量を予測する発電量予測部と、その予測された前記発電量に基づき前記ダンパーの開閉を制御するダンパー制御部とを有し、停電が起きたとき、前記空調機を使って前記複数の部屋の少なくとも1つの部屋の空調を続けるよう制御する空調制御ユニット、を備えた空調システム。
(付記2)
前記空調制御ユニットは、前記複数の部屋の空調に必要な電力を予測する空調消費電力予測部を有し、
前記ダンパー制御部は、前記発電量予測部により予測された発電量及び前記空調消費電力予測部により予測された電力に基づき前記ダンパーの開閉を制御する、付記1に記載の空調システム。
(付記3)
前記ダンパーは、前記複数の分岐ダクトの2以上の分岐ダクトにそれぞれ設けられる2以上のダンパーであり、
前記2以上のダンパーには優先度が設定され、
前記ダンパー制御部は、停電が発生したとき前記複数の部屋の各々の空調を、ある設定された時間のあいだ継続できるかを判定し、その判定結果及び前記優先度に基づき前記2以上のダンパーのうち閉状態にするダンパーを決定する、付記1又は付記2に記載の空調システム。
(付記4)
前記ダンパーは前記複数の分岐ダクトにそれぞれ設置され、
前記ダンパー制御部は、前記ダンパーのうち予め設定された少なくとも1つのダンパーは、前記判定結果及び前記優先度に拘わらず開状態とする、付記3に記載の空調システム。
(付記5)
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いたとき前記2以上のダンパーをすべて閉じるよう制御し、
前記少なくとも1つの部屋は前記空調機により空調される、付記3又は付記4に記載の空調システム。
(付記6)
前記ダンパー制御部は、利用者により入力される指令に基づき前記2以上のダンパーをすべて閉じるよう制御し、
前記少なくとも1つの部屋は前記空調機により空調される、付記3から付記5のいずれか一項に記載の空調システム。
(付記7)
前記ダンパー制御部は、前記複数の部屋のいずれもが前記設定された時間のあいだ、空調を継続できないと判定したとき、アラームを発報するように報知装置を制御する、付記3から付記6のいずれか一項に記載の空調システム。
(付記8)
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いた場合、前記少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調がさらに継続できるかを判定し、空調が不可能であると判定したときアラームを発報するように報知装置を制御する、付記5又は付記6に記載の空調システム。
(付記9)
前記ダンパー制御部は、前記設定された時間を超えて停電が続いた場合、前記少なくとも1つの部屋においてある設定された別の時間のあいだ、空調がさらに継続できるかを判定し、空調が継続できると判定したとき、空調が停止するまで継続可能な時間を算出し、その算出した時間を表示するよう表示装置を制御する、付記5、付記6又は付記8に記載の空調システム。
(付記10)
前記空調制御ユニットは、停電から復旧したとき、前記2以上のダンパーがすべて開いた状態となるように制御する、付記3から付記9のいずれか一項に記載の空調システム。
【0083】
今回開示された実施の形態は例示的なものであり、特許請求の範囲の記載から逸脱しない範囲で、実施の形態において構成要素の変形、省略又は追加が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 住宅、2 太陽電池パネル、3a~3d 部屋、4 室内機、5 室外機、6 空調機、14 主ダクト、16a~16d 分岐ダクト、18a~18d ダンパー、19a~19d リモコン、24 分電盤、25 電力変換装置、26 蓄電池、27 空調制御ユニット、28 商用系統電源、29 気象庁サーバー、30 インターネット通信網、31a~31d 可変風量装置、35 気象情報格納部、36 太陽電池容量格納部、37 発電量情報格納部、38 発電量予測部、39 発電量予測学習部、40 室温設定温度格納部、41 室温格納部、42 空調機制御部、43 室外機消費電力格納部、44 空調消費電力予測部、45 空調消費電力予測学習部、46 蓄電池残電力監視部、47 消費電力監視部、48 消費電力格納部、49 ダンパー制御部、50 モード切替部、51 入力装置、52 報知装置、53 表示装置、71 使用可能電力予測部、72 消費電力予測部、73 空調使用可能電力予測部、74 ダンパー開閉判定部
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8