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特開2024-165693流体管の分岐部処理方法、及び流体管の分岐部構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165693
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】流体管の分岐部処理方法、及び流体管の分岐部構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/36 20060101AFI20241121BHJP
   F16L 41/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B29C63/36
F16L41/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082093
(22)【出願日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 徳生
(72)【発明者】
【氏名】花島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】百野 和樹
【テーマコード(参考)】
3H019
4F211
【Fターム(参考)】
3H019DA04
3H019DA16
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA14
4F211SC03
4F211SD04
4F211SH20
4F211SJ11
4F211SJ22
4F211SJ29
4F211SP12
(57)【要約】
【課題】更生管の外周面と流体管の内周面との間の接合面間に流体が浸入することを阻止可能な流体管の分岐部処理方法、及び流体管の分岐部構造を提供する。
【解決手段】分岐管Sを備えた流体管Kの内周面K1に形成された更生管2に、分岐管Sに通じる分岐口21を貫通形成し、分岐管Sの内径よりも大きく且つ分岐口21を被覆する被覆部材3を、流体管K内を移動させて分岐口21に対面する位置に搬送し、分岐管Sに挿入した長尺部材4を被覆部材3に固定し、長尺部材4を分岐管Sの軸方向AD2の外側へ引いて、被覆部材3のパッキン31が更生管2の内周面に押圧された押圧状態にし、押圧状態を維持しつつ、長尺部材4と分岐管Sとの位置関係を固定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐管を備えた流体管の内周面に形成された更生管に、前記分岐管に通じる分岐口を貫通形成し、
前記分岐管の内径よりも大きく且つ前記分岐口を被覆する被覆部材を、前記流体管内を移動させて前記分岐口に対面する位置に搬送し、
前記分岐管に挿入した長尺部材を前記被覆部材に固定し、
前記長尺部材を前記分岐管の軸方向の外側へ引いて、前記被覆部材のパッキンが前記更生管の内周面に押圧された押圧状態にし、
前記押圧状態を維持しつつ、前記長尺部材と前記分岐管との位置関係を固定する、
流体管の分岐部処理方法。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記流体管内の流体が前記分岐管へ浸入することを阻止する閉塞部材である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分岐管の開口から現れる前記長尺部材を前記分岐管と共に包囲する包囲部材を設ける、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記長尺部材が、内部に流体の流路を有する筒状部材であり、
前記被覆部材は、前記被覆部材に固定された前記筒状部材の流路と前記流体管内の流路とを接続する接続孔を有し、
前記長尺部材の第1端に前記被覆部材が取り付けられ、前記長尺部材の第2端に流体機器が取り付けられ、前記流体機器が前記長尺部材内の流路を介して前記流体管の流路に接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆部材は、前記長尺部材の先端部が挿入可能な穴部を有し、
前記長尺部材の先端部は、前記穴部に挿入された際に前記穴部の開口よりも拡径することで前記被覆部材を保持する保持部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆部材及び前記長尺部材は、互いに嵌り合うネジ溝を有し、前記被覆部材のネジ溝と前記長尺部材のネジ溝とを螺合することで、前記被覆部材及び前記長尺部材を固定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記流体管の内径は、800mm未満である、請求項1~6のいずれかに記載の流体管の分岐部処理方法。
【請求項8】
前記分岐管の軸方向の長さは、前記流体管の内径よりも大きい、請求項1~6のいずれかに記載の流体管の分岐部処理方法。
【請求項9】
分岐管を備えた流体管の内周面に形成された更生管と、
前記更生管に貫通形成された前記分岐管に通じる分岐口を被覆する被覆部材と、
前記分岐管内に配置され且つ前記被覆部材に固定される長尺部材と、
を備え、
前記被覆部材は、パッキンを有し、前記分岐管の内径よりも大きく、
前記長尺部材が前記分岐管の軸方向の外側へ引かれることにより前記更生管の内周面に押圧された前記パッキンの弾性復元力に抗して、前記長尺部材と前記分岐管との位置関係が固定されている、
流体管の分岐部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水道管等の流体管の分岐部処理方法、及び流体管の分岐部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の水道管等の流体管の内周面に、ライニング層などの更生管を形成することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4-33520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体管が分岐管を有する場合、更生管に分岐管に通じる分岐口を貫通形成する。その場合、分岐口を介して分岐管内に流入した流体が、更生管の外周面と流体管の内周面との間の接合面間に浸入するおそれがある。
【0005】
本開示は、更生管の外周面と流体管の内周面との間の接合面間に流体が浸入することを阻止可能な流体管の分岐部処理方法、及び流体管の分岐部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の流体管の分岐部処理方法は、分岐管を備えた流体管の内周面に形成された更生管に、前記分岐管に通じる分岐口を貫通形成し、前記分岐管の内径よりも大きく且つ前記分岐口を被覆する被覆部材を、前記流体管内を移動させて前記分岐口に対面する位置に搬送し、前記分岐管に挿入した長尺部材を前記被覆部材に固定し、前記長尺部材を前記分岐管の軸方向の外側へ引いて、前記被覆部材のパッキンが前記更生管の内周面に押圧された押圧状態にし、前記押圧状態を維持しつつ、前記長尺部材と前記分岐管との位置関係を固定する。
【0007】
本開示の流体管の分岐部構造は、分岐管を備えた流体管の内周面に形成された更生管と、前記更生管に貫通形成された前記分岐管に通じる分岐口を被覆する被覆部材と、前記分岐管内に配置され且つ前記被覆部材に固定される長尺部材と、を備え、前記被覆部材は、パッキンを有し、前記分岐管の内径よりも大きく、前記長尺部材が前記分岐管の軸方向の外側へ引かれることにより前記更生管の内周面に押圧された前記パッキンの弾性復元力に抗して、前記長尺部材と前記分岐管との位置関係が固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の既設の流体管Kに更生管2を形成する工程に関する側面図である。
図2】流体管Kと分岐管Sの分岐部における流体管の軸方向に直交する断面図である。
図3】被覆部材3を分岐口21に対面する位置へ搬送する工程を示す断面図である。
図4】長尺部材4と被覆部材3とを固定する工程を示す断面図である。
図5】長尺部材4と被覆部材3とを固定する工程を示す断面図である。
図6】被覆部材3で分岐口21を閉塞した状態を示す断面図である。
図7】長尺部材4と分岐管Sとの位置関係を固定する固定構造を示す平面図である。
図8図7におけるA-A部位断面図である。
図9】包囲部材53を示す図である。図9(a)は、包囲部材53を示す平面図である。図9(b)は、図9(a)におけるB-B部位断面図である。
図10】包囲部材53の内部に充填材55を充填した状態を示す断面図である。
図11】被覆部材3を示す平面図である。
図12】長尺部材104と被覆部材103とを固定する工程を示す断面図である。
図13】被覆部材103を示す平面図である。
図14】長尺部材104と被覆部材103とを固定する工程を示す断面図である。
図15】長尺部材104と分岐管Sとの位置関係を固定する固定構造を示す断面図である。
図16】長尺部材104に流体機器60を取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の流体管Kの分岐部処理方法及び流体管Kの分岐部構造について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態において、流体管Kは水道管である。流体管Kの内径は800mm未満である。内径が800mm未満の管内は人が入って作業ができないため、本手法が有効である。図1は、既設の流体管Kに更生管2を形成する工程に関する側面図である。図2は、流体管Kと分岐管Sの分岐部における流体管Kの軸方向AD1に直交する断面図である。
【0010】
図2に示すように、既設の流体管Kの内周面K1に、接着剤(非図示)を用いて可撓性を有する気密性の更生管2を形成する。具体的な一例として、図1に示すように、地中の流体管Kのうち更生管2を形成する範囲を挟む位置にそれぞれ立抗10を掘削する。各々の立抗10で流体管Kを切断し、更生管2となるチューブ20を反転挿入して、接着剤を用いてチューブ20を流体管Kの内周面K1に接着して更生管2を形成する。図1及び図2に示すように、流体管Kは分岐管Sを備える。流体管Kの内周面K1に更生管2を形成した後、図2に示すように、穿孔装置11を用いて、更生管2に分岐管Sに通じる分岐口21を貫通形成する。図2に示すように、第1実施形態では、分岐管Sの開口から穿孔装置11のホールソーを分岐管S内に進行させ、更生管2に分岐口21を形成する。更生管2に分岐口21を形成した後に、穿孔装置11のホールソーを引き抜くために、更生管2のバリが分岐管Sの軸方向外側に向けて延びている。バリは別途の工程で除去してもよい。
【0011】
図3は、被覆部材3を分岐口21に対面する位置へ搬送する工程を示す断面図である。次に、図3に示すように、分岐口21を被覆するための被覆部材3を、流体管K内を移動させて分岐口21に対面する位置に搬送する。被覆部材3の搬送には、カメラ12付きの自走車13を用いる。自走車13は遠隔操作が可能であり、作業者の操作によって自走する。自走車13に被覆部材3を載置し、自走車13を流体管Kの開口K2から流体管Kの軸方向AD1内側へ走行させる。被覆部材3は、自走車13に設けられた筒状保持部材13aによって保持される(図4参照)。作業者は、自走車13のカメラ12の映像や、流体管Kの開口K2からの視認できる流体管K内部の状態、分岐管Sから視認できる流体管K内部の状態によって、被覆部材3を分岐口21に対面する位置まで搬送する。
【0012】
図4及び図5は、長尺部材4と被覆部材3とを固定する工程を示す断面図である。次に、図4に示すように、分岐管Sに長尺部材4を挿入し、図5に示すように、挿入した長尺部材4の先端部を被覆部材3に固定する。図4及び図5に示すように、長尺部材4は、可撓性がなく曲がらない棒状部材であり、被覆部材3が固定される第1シャフト40と、第1シャフト40に継ぎ足して接続される第2シャフト41と、を有する。長尺部材4と被覆部材3とを接続する状態において、第1シャフト40は分岐管Sの開口よりも下方にあり、第2シャフト41の一部が分岐管Sの開口よりも上方に位置しており、第2シャフト41を把持して操作が可能となる。長尺部材4の長さは、分岐管Sの開口から流体管K内の被覆部材3に至る長さがあればよい。
【0013】
図11は、被覆部材3を示す平面図である。図4~5及び図11に示すように、被覆部材3は、分岐管Sの内径よりも大きく、分岐口21を被覆可能に構成されている。被覆部材3は、更生管2の内周面に接触する環状のパッキン31を有する。図11において環状のパッキン31をハッチングで示している。被覆部材3の上部には、長尺部材4の先端部が挿入可能な穴部30が形成されている。穴部30は、開口よりも底側が広がる形状に形成されている。図11に示すように、被覆部材3は平面視において矩形状に形成されている。これにより、図6に示すように、被覆部材3のパッキン31を更生管2に押し付ける押圧状態にする際に、被覆部材3の矩形の端面の位置を視認することによって、被覆部材3の分岐管Sに対する回転方向の向きのズレの視認が容易となり、被覆部材3の向き及び位置合わせを容易にすることができる。
【0014】
図4及び図5に示すように、長尺部材4の先端部(第1シャフト40の先端部)は、穴部30に挿入された際に穴部30の開口よりも拡径することで被覆部材3を保持する保持部43を有する。保持部43は、保持コマとも呼ばれる一対の可動部材で構成されている。一対の可動部材は、第1シャフト40の先端部の外径よりも突出する位置と、第1シャフト40の先端部の外径よりも内周側に退避する位置との間を、回転によって移動可能に構成されている。すなわち、長尺部材4を被覆部材3の穴部30に挿入する際に、一対の可動部材が退避位置に移動し、一対の可動部材が穴部30の開口を乗り越えると、重力によって一対の可動部材が突出位置に移動し、長尺部材4が穴部30から抜脱不能になり、長尺部材4と被覆部材3とが固定される。被覆部材3の下方は閉塞されており、流体管Kの内部の流体が穴部30に浸入しないように構成されている。
【0015】
図6は、被覆部材3で分岐口21を閉塞した状態を示す断面図である。図6に示すように、長尺部材4を分岐管Sの軸方向AD2の外側へ引いて、被覆部材3のパッキン31が更生管2の内周面に押圧された押圧状態にする。押圧状態においてパッキン31は、外力が作用していない自然状態の寸法よりも圧縮される。これにより、弾性復元力がパッキン31に発現する。弾性復元力は、被覆部材3を分岐管Sの軸方向AD2の内側へ向かわせる力である。
【0016】
図7は、長尺部材4と分岐管Sとの位置関係を固定する固定構造を示す平面図である。図8は、図7におけるA-A部位断面図である。図7及び図8に示すように、パッキン31の押圧状態を維持しつつ、長尺部材4と分岐管Sとの位置関係を固定する。具体的には、分岐管Sの開口を閉塞する分岐管閉塞蓋50と分岐管Sの開口のフランジ部とを第1締結具51(ボルト、ナット等)で締結する。次に、長尺部材4(第1シャフト40)の外周に形成されたネジ溝に第2締結具52(ナット)を嵌め、第2締結具52(ナット)の下端を分岐管閉塞蓋50に接触させ、第2締結具52(ナット)を介して長尺部材4(第1シャフト40)を分岐管閉塞蓋50で支持する。尚、長尺部材4の上端は2面取り部4aを有し、この2面取り部4aをスパナ等で回転を規制し、第2締付具52を締め付け操作すると互いに相対回転しないため締め付けしやすい。これにより、長尺部材4と分岐管Sとの位置関係が固定される。被覆部材3は、流体管K内の流体が分岐管Sへ浸入することを阻止する閉塞部材として機能する。分岐管閉塞蓋50と分岐管Sの間は環状のパッキンで密閉される。
【0017】
図7及び図8の状態では、ネジ溝などの錆びやすい部位を有する長尺部材4が分岐管Sから露出している状態であり、耐候性に優れているとは言い難い。そこで、図9に示すように、包囲部材53を設けることが好ましい。図9は、包囲部材53を示す図である。図9(a)は、包囲部材53を示す平面図である。図9(b)は、図9(a)におけるB-B部位断面図である。包囲部材53は、長尺部材4の先端を覆うことが可能なキャップ形状に形成されており、下端のフランジ部が分岐管閉塞蓋50に第3締結具54(ボルト、ナット等)を介して固定される。分岐管閉塞蓋50には、第3締結具54を締結するためのボルト孔50aが形成されている(図7及び図8参照)。これにより、分岐管Sに締結された状態の分岐管閉塞蓋50のボルト孔50aに対してネジボルト(第3締結具54の一部)を締結可能に構成されている。また、包囲部材53のフランジ部には、第1締結具51を通すための挿通孔53aが形成されている(図9参照)。これにより、第1締結具51で分岐管閉塞蓋50と分岐管Sとを締結した状態で、包囲部材53を分岐管閉塞蓋50に固定可能となる。包囲部材53と分岐管閉塞蓋50との間には環状のパッキンが配置される。
【0018】
図10は、包囲部材53の内部に充填材55を充填した状態を示す断面図である。図10に示すように、包囲部材53の上部に形成された開口53bを介して包囲部材53の内部及び分岐管Sの内部に、樹脂などの充填材55を流し込み、開口53bを栓53cで閉塞する。充填材55としては、二液混合型エポキシ系の硬化性樹脂などが利用可能である。図7~9に示すように、分岐管閉塞蓋50には、挿通孔50bが形成されており、挿通孔50bを介して包囲部材53の内部と分岐管Sの内部が連通している。これにより、開口53bから投入された充填材55は、挿通孔50bを通って分岐管Sの内部に入るため、包囲部材53及び分岐管Sの内部を充填材55で充填可能となる。開口53bの内周面にはネジ溝が形成されており、栓53cの外周のネジ溝と嵌り合うことで、栓53cを固定可能となる。以上により、長尺部材4を包囲部材53及び充填材55で包囲するので、耐候性を向上可能となる。
【0019】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態で用いた被覆部材3及び長尺部材4とは異なる被覆部材103及び長尺部材104を用いる。図12及び図14は、長尺部材104と被覆部材103とを固定する工程を示す断面図である。図13は、被覆部材103を示す平面図である。図14に示すように、第2実施形態の長尺部材104は、内部に流体の流路142を有する筒状部材である。図12図14に示すように、被覆部材103は、分岐管Sの内径よりも大きく、分岐口21を被覆可能に構成されている。被覆部材103は、更生管2の内周面に接触する環状のパッキン31を有する。図13において環状のパッキン31をハッチングで示している。被覆部材103の上部に、長尺部材104の先端部が挿入可能な凹部130を有する。
【0020】
図12~14に示すように、被覆部材103の凹部130は、長尺部材104を接続可能に構成されている。具体的には、凹部130の内周面がネジ溝を有し、凹部130の内周面のネジ溝に嵌り合うネジ溝を長尺部材104の下端部の外周面が有しており、両者のネジ溝を螺合することで、被覆部材103の凹部130に長尺部材104を固定可能となる。また、被覆部材103の凹部130には、環状の接続用パッキン132が設けられている。図13において環状の接続用パッキン132をハッチングで示している。接続用パッキン132が圧縮されて、長尺部材104と被覆部材103の凹部130との間を密閉する。これにより、長尺部材104の内部の流路142から分岐管Sの内部へ流体が漏れることを回避している。
【0021】
凹部130の底には、被覆部材103を貫通する接続孔130aが形成されている。接続孔130aは、非円形状であり、第2実施形態では矩形状に形成されている。図12に示す回り止めシャフト141の非円形状(矩形状)の下端部が接続孔130aに挿入されることで、長尺部材104と被覆部材103の固定時に被覆部材103が回転することを防止可能となる。
【0022】
第2実施形態の流体管Kの分岐部処理方法は、第1実施形態と同様に、被覆部材103を分岐口21に対面する位置まで搬送する。次に、図14に示すように、被覆部材103の接続孔130aにシャフト141を差し込む。また、被覆部材103の凹部130に長尺部材104を差し込んで回転させて固定する。被覆部材103の凹部130に長尺部材104を差し込んで回転させて固定する際には、シャフト141の上端部をスパナなどの工具141aで保持して、シャフト141及び被覆部材103が回転しないようにする。
【0023】
図15は、長尺部材104と分岐管Sとの位置関係を固定する固定構造を示す断面図である。被覆部材103と長尺部材104の固定が完了すると、シャフト141を引き抜く。次に、図15に示すように、長尺部材104を分岐管Sの軸方向AD2の外側へ引いて、被覆部材103のパッキン31が更生管2の内周面に押圧された押圧状態にする。次に、長尺部材104のフランジ部と分岐管Sのフランジ部とを第3締結具151(ボルト、ナット)で締結し、長尺部材104と分岐管Sの位置関係を固定する。
【0024】
図16は、長尺部材104に流体機器60を取り付けた状態を示す図である。図16に示すように、長尺部材104のフランジ部に直接的に又は間接的に流体機器60を接続する。流体機器60は、長尺部材104のフランジ部に第4締結具152(ボルトやナット)を介して接続される。第4締結具152と第3締結具151は、長尺部材104のフランジ部における周方向の位置を異ならせて配置されている。図16の例では、流体機器60と長尺部材104の間に仕切弁61(別の流体機器)を介在させているが、種々変更可能である。第2実施形態の流体機器60は、流路内の空気を抜く空気弁であるが、これに限定されない。流体機器60は、流体を制御するための弁装置などの機器であればよく、空気弁の他に、流路を閉塞する仕切弁、流体の流れを制御する消火栓などが挙げられる。
これにより、図16に示すように、長尺部材104の第1端104aに被覆部材103が取り付けられ、長尺部材104の第2端104bに流体機器60が接続される。長尺部材104内の流路142は、被覆部材103の接続孔130aを介して流体管Kの流路K3に連通している。流体機器60が長尺部材104内の流路142を介して流体管Kの流路K3に接続される。
【0025】
次に、図示しないが、分岐管Sの内部であって長尺部材104の外周側の空間に樹脂などの充填材を流し込んで分岐管Sを閉塞する。これにより、耐候性を向上可能となる。
【0026】
<変形例>
(A)上記実施形態では、流体管Kは水道管であるが、これに限定されない。
【0027】
(B)上記実施形態では、更生管2が、ポリエステル繊維、ガラス繊維、樹脂などの複合材からなるチューブ20で形成されており、チューブ20を圧縮空気によって流体管K内に反転挿入する工法であるが、流体管Kの内周面K1を被覆できる更生管2であれば、これに限定されない。例えば、更生管2となるバックを水圧若しくは空気圧で流体管内に引き込む工法であってもよい。また、流体管Kの内部に対して径が少し小さい新管を挿入して、新管を更生管とする工法であってもよい。
【0028】
(C)上記実施形態の流体管Kの内径は800mm未満であるが、内径が800mm以上の流体管Kに本発明を適用してもよい。
【0029】
(D)上記実施形態では、穿孔装置11によって更生管2の径方向外側から更生管2の径方向内側へ向かって穿孔しているが、更生管2の径方向内側から更生管2の径方向外側へ向かって穿孔してもよい。
【0030】
(F)上記実施形態では、長尺部材4,104は、可撓性がなく曲がらない棒状部材であり、可撓性を有するワイヤは使用できない。
【0031】
(G)上記第1実施形態では、長尺部材4が、第1シャフト40及び第2シャフト41で構成されているが、これに限定されない。長尺部材4は、単一又は複数のシャフトで構成可能である。
【0032】
(H)上記実施形態では、充填材で分岐管Sの内部を充填しているが、充填材を省略可能である。
【0033】
(I)第2実施形態において、長尺部材104のネジ溝と被覆部材103のネジ溝の位置関係は入れ替えることが可能である。
第2実施形態において、回り止めシャフト141の先端形状は、矩形状であるが、非円形状であれば、これに限定されず、種々の形状が採用可能である。
分岐管Sの軸方向AD2の長さは、流体管Kの内径よりも大きければ、本手法が好適であるが、これに限定されない。分岐管Sの軸方向AD2の長さは、流体管Kの内径以下であってもよい。
長尺部材4,104の分岐管Sの軸方向AD2の長さは、流体管Kの内径よりも大きいことが好ましい。
【0034】
[1]
以上のように、特に限定されないが、上記実施形態のように、流体管Kの分岐部処理方法は、分岐管Sを備えた流体管Kの内周面K1に形成された更生管2に、分岐管Sに通じる分岐口21を貫通形成し、分岐管Sの内径よりも大きく且つ分岐口21を被覆する被覆部材(3,103)を、流体管K内を移動させて分岐口21に対面する位置に搬送し、分岐管Sに挿入した長尺部材(4,104)を被覆部材(3,103)に固定し、長尺部材(4,104)を分岐管Sの軸方向AD2の外側へ引いて、被覆部材(3,103)のパッキン31が更生管2の内周面に押圧された押圧状態にし、押圧状態を維持しつつ、長尺部材(4,104)と分岐管Sとの位置関係を固定する、としてもよい。
【0035】
このようにすれば、被覆部材(3,103)が分岐口21を被覆するので、更生管2の外周面と流体管Kの内周面との接合面間への流体の浸入を的確に阻止可能となる。また、被覆部材(3,103)が分岐管Sの内径よりも大きいので、被覆部材(3,103)のパッキン31を流体管Kの内周面に対して押圧でき、更生管2のうち裏側に流体管Kがない部分を押圧する場合に比べて、より一層堅固な密封が可能となる。
【0036】
[2]
上記[1]に記載の方法であって、被覆部材3は、流体管K内の流体が分岐管Sへ浸入することを阻止する閉塞部材である、としてもよい。
このようにすれば、流体管Kの分岐管Sを閉塞することが可能となる。
【0037】
[3]
上記[2]に記載の方法であって、分岐管Sの開口から現れる長尺部材4を分岐管Sと共に包囲する包囲部材53を設ける、としてもよい。
このようにすれば、包囲部材53及び分岐管Sが長尺部材4を包囲するので、耐候性を確保可能となる。
【0038】
[4]
上記[1]に記載の方法であって、長尺部材104が、内部に流体の流路142を有する筒状部材であり、被覆部材103は、被覆部材103に固定された筒状部材(104)の流路142と流体管K内の流路K3とを接続する接続孔130aを有し、長尺部材104の第1端104aに被覆部材103が取り付けられ、長尺部材104の第2端104bに流体機器60が取り付けられ、流体機器60が長尺部材104内の流路142を介して流体管Kの流路K3に接続される、としてもよい。
この構成によれば、分岐管Sの内周面にライニング処理や更生管2を形成しなくても、長尺部材104の内部の流路142を通じて流体機器60を流体管Kに接続可能となる。
【0039】
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法であって、被覆部材3は、長尺部材4の先端部が挿入可能な穴部30を有し、長尺部材4の先端部は、穴部30に挿入された際に穴部30の開口よりも拡径することで被覆部材3を保持する保持部43を有する、としてもよい。
この構成によれば、長尺部材4の先端部を穴部30に挿入するだけで、長尺部材4と被覆部材3の固定が完了するので、作業性を向上可能となる。
【0040】
[6]
上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法であって、被覆部材103及び長尺部材104は、互いに嵌り合うネジ溝を有し、被覆部材103のネジ溝と長尺部材104のネジ溝とを螺合することで、被覆部材103及び長尺部材104を固定する、としてもよい。
この構成によれば、互いに嵌り合うネジ溝によって被覆部材103及び長尺部材104を螺合で固定するので、堅固な固定が可能となる。
【0041】
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法であって、流体管Kの内径は、800mm未満である、としてもよい。内径が800mm未満の管内は人が入って作業ができないため、本手法が有効である。
【0042】
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載の方法であって、分岐管Sの軸方向AD2の長さは、流体管Kの内径よりも大きい、としてもよい。
この構成であれば、長尺部材(4,104)と被覆部材(3,103)が一体になった部材を流体管Kの内部に通すことができないので、本手法が有効である。
【0043】
[9]
特に限定されないが、上記実施形態のように、流体管Kの分岐部構造は、分岐管Sを備えた流体管Kの内周面K1に形成された更生管2と、更生管2に貫通形成された分岐管Sに通じる分岐口21を被覆する被覆部材(3,103)と、分岐管S内に配置され且つ被覆部材(3,103)に固定される長尺部材(4,104)と、を備え、被覆部材(3,103)は、パッキン31を有し、分岐管Sの内径よりも大きく、長尺部材(4,104)が分岐管Sの軸方向AD2の外側へ引かれることにより更生管2の内周面に押圧されたパッキン31の弾性復元力に抗して、長尺部材(4,104)と分岐管Sとの位置関係が固定されている、としてもよい。
【0044】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
2 :更生管
3 :被覆部材
4 :長尺部材
21 :分岐口
30 :穴部
31 :パッキン
43 :保持部
53 :包囲部材
53b :開口
60 :流体機器
103 :被覆部材
104 :長尺部材
104a :第1端
104b :第2端
130a :接続孔
142 :流路
AD1 :軸方向
AD2 :軸方向
K :流体管
K1 :内周面
K2 :開口
K3 :流路
S :分岐管
図1
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