(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165696
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】2アームベルトテンショナを備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 67/06 20060101AFI20241121BHJP
F16H 7/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F02B67/06 D
F16H7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082097
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】降旗 克行
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049BB13
3J049BB23
3J049BH02
3J049CA03
(57)【要約】
【課題】テンショナプーリを支持して揺動自在に支持されたアームの揺動軸が片持ち状態の場合、当該揺動軸が偏摩耗することを抑制することができる2アームベルトテンショナを備えた内燃機関を提供する。
【解決手段】第1・第2テンショナプーリと、これらを回転自在に支持する第1・第2アームと、これらを揺動自在に支持する第1・第2シャフトとが立設されたベース13と、第1・第2テンショナプーリの押圧力を発生させる弾性体とを有し、第1シャフト11と第2シャフト12は片持ち状態で立設され、無負荷状態では対向方向に向かってプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度θ1を有するように立設されている。ベースにおける第1シャフトと第2シャフトの間にはベース脆弱部13w、13xが設けられており、ベース脆弱部は、内燃機関が運転された場合に、傾斜していた第1シャフト11と第2シャフト12を、ほぼ平行にするベースの弾性変形の起点となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに掛けられた環状の動力伝達ベルトにテンションを付与する2アームベルトテンショナを備えた内燃機関であって、
前記2アームベルトテンショナは、
前記動力伝達ベルトにおける前記プーリへの入力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第1テンショナプーリと、
前記動力伝達ベルトにおける前記プーリからの出力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第2テンショナプーリと、
前記第1テンショナプーリを回転自在に支持する第1アームと、
前記第2テンショナプーリを回転自在に支持する第2アームと、
前記第1アームを揺動自在に支持する第1シャフトと前記第2アームを揺動自在に支持する第2シャフトとが立設されたベースと、
前記第1アームと前記第2アームに接続されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリを前記動力伝達ベルトに押圧する押圧力を発生させる弾性体と、
を有し、
前記第1シャフトと前記第2シャフトは、それぞれの一方端のみが前記ベースに接合されて片持ち状態で立設されており、前記第1テンショナプーリ及び前記第2テンショナプーリが無負荷状態の場合では互いに対向している方向に向かって前記ベースから延在するよう前記プーリの回転軸線であるプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように立設されており、
前記ベースにおける前記第1シャフトと前記第2シャフトの間には、周囲よりも剛性が低いベース脆弱部が設けられており、
前記ベース脆弱部は、前記内燃機関が運転されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリに負荷がかかった場合に、前記プーリ回転軸線に対して傾斜していた前記第1シャフトと前記第2シャフトを、前記動力伝達ベルトと前記弾性体からの押圧力によって前記プーリ回転軸線に対してほぼ平行にする前記ベースの弾性変形の起点となる、
2アームベルトテンショナを備えた内燃機関。
【請求項2】
プーリに掛けられた環状の動力伝達ベルトにテンションを付与する2アームベルトテンショナを備えた内燃機関であって、
前記2アームベルトテンショナは、
前記動力伝達ベルトにおける前記プーリへの入力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第1テンショナプーリと、
前記動力伝達ベルトにおける前記プーリからの出力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第2テンショナプーリと、
前記第1テンショナプーリを回転自在に支持する第1アームと、
前記第2テンショナプーリを回転自在に支持する第2アームと、
前記第1アームを揺動自在に支持する第1シャフトと前記第2アームを揺動自在に支持する第2シャフトとが立設されたベースと、
前記第1アームと前記第2アームに接続されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリを前記動力伝達ベルトに押圧する押圧力を発生させる弾性体と、
を有し、
前記第1シャフトと前記第2シャフトは、それぞれの一方端のみが前記ベースに接合されて片持ち状態で立設されており、前記第1テンショナプーリ及び前記第2テンショナプーリが無負荷状態の場合では互いに対向している方向に向かって前記ベースから延在するよう前記プーリの回転軸線であるプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように立設されており、
前記第1シャフトと前記第2シャフトのそれぞれにおける前記ベースへの接合個所の近傍には、周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部が設けられており、
前記シャフト脆弱部は、前記内燃機関が運転されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリに負荷がかかった場合に、前記プーリ回転軸線に対して傾斜していた前記第1シャフトと前記第2シャフトを、前記動力伝達ベルトと前記弾性体からの押圧力によって前記プーリ回転軸線に対してほぼ平行にする前記第1シャフトと前記第2シャフトの弾性変形の起点となる、
2アームベルトテンショナを備えた内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリに掛けられた動力伝達ベルトにテンションを付与する2アームベルトテンショナを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載された内燃機関には、オルタネータ(またはモータジェネレータ)、エアコンコンプレッサ、ウォーターポンプ、オイルポンプ等の種々の補機が取り付けられている。これらの補機にはプーリが取り付けられており、内燃機関のクランクシャフトに取り付けられたクランクプーリから動力伝達ベルトを介して各補機のプーリが回転駆動される。各補機のプーリには前記動力伝達ベルトが掛けられているが、当該動力伝達ベルトの滑りを抑制するために、一部のプーリには、動力伝達ベルトにテンションを付与するベルトテンショナが設けられている。
【0003】
例えば特許文献1には、平ベルトを介して電動機の駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝達して送風機を回転駆動する冷却塔送風機用ベルト伝動機構が開示されている。特許文献1には、送風動作時には、動荷重によって電動機出力軸が傾くことが記載されている。そこで、電動機を固定する場合、電動機出力軸の向きを送風機作動時に傾く側とは反対側に所定角度分傾斜させて固定している。これにより、送風機作動時には、駆動側プーリの回転中心軸が、従動側プーリの回転中心軸と平行になることが記載されている。また従動側プーリの近傍には、平ベルトにテンションを付与する1個のテンショナプーリ(回転軸が片持ち状態とされたテンショナプーリ)が配置されている。
【0004】
また特許文献2には、第1のテンショナプーリを回転自在に支持したメインアームと、第2のテンショナプーリを回転自在に支持したサブアームとを有する自動車用エンジンの補機ベルト用オートテンショナ(2アームベルトテンショナに相当)が記載されている。特許文献2におけるメインアームは、片持ち状態のメインアーム揺動軸に揺動自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-094940号公報
【特許文献2】特開2022-134912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベルトテンショナのテンショナプーリには、テンショナプーリをベルトに押圧する弾性体からの押圧力と、ベルトからの押圧力と、が印加される。上記押圧力を発生させる弾性体からの押圧力と、前記ベルトからの押圧力は、アーム(テンショナプーリを支持しているアーム)を揺動自在に支持する揺動軸に印加される。そして揺動軸が片持ち状態で支持されている場合、上記のベルトと弾性体からの押圧力は、この揺動軸を傾斜させる力となる。揺動軸が傾斜した場合には、揺動軸を収容しているスリーブや軸受に、傾斜した揺動軸が当たるので、当該揺動軸または当該スリーブや軸受が偏摩耗するので好ましくない。また、上記のベルトと弾性体からの押圧力は、テンションを付与するベルトが運転状態となって駆動されている場合に、最も大きな力となる。
【0007】
特許文献1では、送風動作時(平ベルトのテンションが大きくなった時)に、電動機出力軸が傾斜する点を考慮しているが、片持ち状態とされたテンショナプーリの回転軸の傾斜については考慮されていない。従って、テンショナプーリの揺動軸または当該揺動軸の軸受が偏摩耗する可能性がある。
【0008】
また特許文献2も特許文献1と同様に、エンジン運転時(補機ベルトのテンションが大きくなった時)に、片持ち状態のメインアーム揺動軸が傾斜することを考慮していない。従って、メインアーム揺動軸または当該揺動軸の軸受が偏摩耗する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、テンショナプーリを支持して揺動自在に支持されたアームの揺動軸が片持ち状態の場合、当該揺動軸または当該揺動軸の軸受が偏摩耗することを抑制することができる2アームベルトテンショナを備えた内燃機関を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の発明は、プーリに掛けられた環状の動力伝達ベルトにテンションを付与する2アームベルトテンショナを備えた内燃機関である。前記2アームベルトテンショナは、前記動力伝達ベルトにおける前記プーリへの入力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第1テンショナプーリと、前記動力伝達ベルトにおける前記プーリからの出力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第2テンショナプーリと、前記第1テンショナプーリを回転自在に支持する第1アームと、前記第2テンショナプーリを回転自在に支持する第2アームと、前記第1アームを揺動自在に支持する第1シャフトと前記第2アームを揺動自在に支持する第2シャフトとが立設されたベースと、前記第1アームと前記第2アームに接続されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリを前記動力伝達ベルトに押圧する押圧力を発生させる弾性体と、を有する。また前記第1シャフトと前記第2シャフトは、それぞれの一方端のみが前記ベースに接合されて片持ち状態で立設されており、前記第1テンショナプーリ及び前記第2テンショナプーリが無負荷状態の場合では互いに対向している方向に向かって前記ベースから延在するよう前記プーリの回転軸線であるプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように立設されている。そして前記ベースにおける前記第1シャフトと前記第2シャフトの間には、周囲よりも剛性が低いベース脆弱部が設けられており、前記ベース脆弱部は、前記内燃機関が運転されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリに負荷がかかった場合に、前記プーリ回転軸線に対して傾斜していた前記第1シャフトと前記第2シャフトを、前記動力伝達ベルトと前記弾性体からの押圧力によって前記プーリ回転軸線に対してほぼ平行にする前記ベースの弾性変形の起点となる、2アームベルトテンショナを備えた内燃機関である。
【0011】
次に、第2の発明は、プーリに掛けられた環状の動力伝達ベルトにテンションを付与する2アームベルトテンショナを備えた内燃機関である。前記2アームベルトテンショナは、前記動力伝達ベルトにおける前記プーリへの入力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第1テンショナプーリと、前記動力伝達ベルトにおける前記プーリからの出力側の部位を外周側から内周側へと押圧する第2テンショナプーリと、前記第1テンショナプーリを回転自在に支持する第1アームと、前記第2テンショナプーリを回転自在に支持する第2アームと、前記第1アームを揺動自在に支持する第1シャフトと前記第2アームを揺動自在に支持する第2シャフトとが立設されたベースと、前記第1アームと前記第2アームに接続されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリを前記動力伝達ベルトに押圧する押圧力を発生させる弾性体と、を有する。また前記第1シャフトと前記第2シャフトは、それぞれの一方端のみが前記ベースに接合されて片持ち状態で立設されており、前記第1テンショナプーリ及び前記第2テンショナプーリが無負荷状態の場合では互いに対向している方向に向かって前記ベースから延在するよう前記プーリの回転軸線であるプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように立設されている。そして前記第1シャフトと前記第2シャフトのそれぞれにおける前記ベースへの接合個所の近傍には、周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部が設けられており、前記シャフト脆弱部は、前記内燃機関が運転されて前記第1テンショナプーリと前記第2テンショナプーリに負荷がかかった場合に、前記プーリ回転軸線に対して傾斜していた前記第1シャフトと前記第2シャフトを、前記動力伝達ベルトと前記弾性体からの押圧力によって前記プーリ回転軸線に対してほぼ平行にする前記第1シャフトと前記第2シャフトの弾性変形の起点となる、2アームベルトテンショナを備えた内燃機関である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、ベースに対して片持ち状態で立設された第1シャフトと第2シャフトを、互いに対向している方向に向かってプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように予め傾斜させておき、ベースには周囲よりも剛性が低いベース脆弱部を設けておく。これにより、内燃機関が運転された場合には、ベース脆弱部が起点となってベースが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行になる。従って、第1シャフトまたは第1シャフトの軸受、及び第2シャフトまたは第2シャフトの軸受が偏摩耗することを抑制することができる。
【0013】
第2の発明では、ベースに対して片持ち状態で立設された第1シャフトと第2シャフトを、互いに対向している方向に向かってプーリ回転軸線に対して所定傾斜角度を有するように予め傾斜させておき、第1シャフトと第2シャフトのそれぞれには周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部を設けておく。これにより、内燃機関が運転された場合には、シャフト脆弱部が起点となって第1シャフト及び第2シャフトが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行になる。従って、第1シャフトまたは第1シャフトの軸受、及び第2シャフトまたは第2シャフトの軸受が偏摩耗することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】2アームベルトテンショナを備えた内燃機関の外観の例を説明する図である。
【
図2】2アームベルトテンショナの外観の例を説明する図である。
【
図3】2アームベルトテンショナの構造を説明する図であり、第1アームと第1テンショナプーリの周囲の分解斜視図である。
【
図4】内燃機関の運転時に、動力伝達ベルトと弾性体からの押圧力が、第1シャフト及び第2シャフトに印加されることを説明する図である。
【
図5】
図4におけるA方向から2アームベルトテンショナを見た場合であって、2アームベルトテンショナにおけるベースと第1シャフト及び第2シャフトの模式図である。
【
図6】第1の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、ベースにはベース脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図7】
図6の状態から内燃機関が運転されて、ベース脆弱部が起点となってベースが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【
図8】第2の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、ベースにはベース脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図9】
図8の状態から内燃機関が運転されて、ベース脆弱部が起点となってベースが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【
図10】第2の実施の形態において、プーリ回転軸線に対して所定傾斜角度で傾斜した第1シャフトの外観の例と、第1シャフトを接合するベースの接合個所の例を説明する図である。
【
図11】第3の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、ベースにはベース脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図12】
図11の状態から内燃機関が運転されて、ベース脆弱部が起点となってベースが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【
図13】第4の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、第1シャフトと第2シャフトのそれぞれにはシャフト脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図14】
図13の状態から内燃機関が運転されて、シャフト脆弱部が起点となって第1シャフト及び第2シャフトが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【
図15】第5の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、第1シャフトと第2シャフトのそれぞれにはシャフト脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図16】
図15の状態から内燃機関が運転されて、シャフト脆弱部が起点となって第1シャフト及び第2シャフトが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【
図17】第5の実施の形態において、プーリ回転軸線に対して所定傾斜角度で傾斜した第1シャフトの外観の例と、第1シャフトを接合するベースの接合個所の例を説明する図である。
【
図18】第6の実施の形態の2アームベルトテンショナの模式図であって、第1シャフトと第2シャフトのそれぞれにはシャフト脆弱部が設けられており、第1シャフトと第2シャフトが無負荷状態の場合の模式図である。
【
図19】
図18の状態から内燃機関が運転されて、シャフト脆弱部が起点となって第1シャフト及び第2シャフトが弾性変形して、第1シャフトと第2シャフトがプーリ回転軸線に対してほぼ平行となることを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、2アームベルトテンショナ10を備えた内燃機関1を説明し、2アームベルトテンショナ10の第1~第6の実施形態について説明する。
【0016】
<2アームベルトテンショナ10を備えた内燃機関1(
図1)>
図1に、2アームベルトテンショナ10を備えた内燃機関1(以下、「2アームベルトテンショナ10を備えた内燃機関1」を「内燃機関1」と記載する)の概略外観を示す。
図1に示すように内燃機関1は、シリンダヘッド1a、シリンダ1b、クランクケース1c、オイルパン1d等を有する。クランクケース1c内のクランクシャフトの一方端には、クランクプーリ2が設けられており、クランクプーリ2の回転動力は、オルタネータやオイルポンプ等の種々の補機に伝達される。
【0017】
図1の例は、クランクプーリ2の回転動力が、動力伝達ベルト4を介して、プーリ3が取り付けられた補機3hに伝達される例を示している。2アームベルトテンショナ10は、
図1に示すように、第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18とを用いて、プーリ3に掛けられた動力伝達ベルト4を挟んで押圧することで環状の動力伝達ベルト4にテンションを付与し、動力伝達ベルト4の滑りを抑制する。なお、内燃機関1には一般的には複数の補機が取り付けられているが、
図1では1つの補機3hのみを記載し、他の補機の記載については省略している。
【0018】
<2アームベルトテンショナ10の外観と構造(
図2~
図4)>
次に
図2~
図4を用いて、2アームベルトテンショナ10の外観と構造について説明する。2アームベルトテンショナ10は、
図2~
図4に示すように、第1アーム15、第2アーム16、第1テンショナプーリ17、第2テンショナプーリ18、ベース13、弾性体14等を有している。なお
図4は、
図1からクランクプーリ2、プーリ3、動力伝達ベルト4、2アームベルトテンショナ10を抽出した図である。
【0019】
ベース13は、略板状の形状を有し、第1アーム15が揺動軸線11z回りに揺動自在に支持する第1シャフト11と、第2アーム16が揺動軸線12z回りに揺動自在に支持する第2シャフト12とが立設されている(
図3参照)。
図3に示すように、ベース13には、第1シャフト11の圧入部11yが圧入される嵌合孔13yが形成されている。またベース13には、第2シャフト12の圧入部12yが圧入される嵌合孔(図示省略)も形成されている。またベース13には、2アームベルトテンショナ10を内燃機関の所定位置に取り付けるための取付部19が設けられている。
【0020】
第1シャフト11は、
図3に示すように、第1アーム15に挿通される揺動軸部11kと、径方向外周側に延出されたフランジ部11xと、上記の圧入部11yと、を有し、第2シャフト12も同様に揺動軸部12k、フランジ部12x、圧入部12y(
図5参照)を有している。第1シャフト11と第2シャフト12は、それぞれ一方端のみがベース13に接合されて片持ち状態で立設されている(
図5の模式図参照)。なお、第1シャフト11及び第2シャフト12は、ベース13に対して圧入以外の方法で接合されて立設されていてもよい。
図3の例に示すように、第1アーム15は、プレート21a、21c、21d、ブッシュ21b(軸受に相当)、ワッシャ21e、キャップ21fとともに、第1シャフト11に取り付けられる。
【0021】
弾性体14は、
図2~
図4に示すように、第1アーム15における第1テンショナプーリ17とは反対側の端部と、第2アーム16における第2テンショナプーリ18とは反対側の端部とに接続されている。弾性体14は、
図4に示すように、押圧力Fc(弾性力)にて第1アーム15の他方端を押圧することで第1アーム15を揺動させ、第1アーム15の一方端の第1テンショナプーリ17の押圧力Faを発生させる。同様に、弾性体14は、
図4に示すように、押圧力Fd(弾性力)にて第2アーム16の他方端を押圧することで第2アーム16を揺動させ、第2アーム16の一方端の第2テンショナプーリ18の押圧力Fbを発生させる(押圧力Fcと押圧力Fdは、大きさが同じで方向が異なる)。
【0022】
第1アーム15は、第1シャフト11にて揺動自在に支持されており、一方端の側は第1テンショナプーリ17を回転自在に支持し、他方端の側は弾性体14が接続されて押圧力Fc(
図4参照)を受けている。同様に、第2アーム16は、第2シャフト12にて揺動自在に支持されており、一方端の側は第2テンショナプーリ18を回転自在に支持し、他方端の側は弾性体14が接続されて押圧力Fd(
図4参照)を受けている。
【0023】
第1アーム15は、
図2~
図4に示すように、第1テンショナプーリ17を、回転軸線17z回りに回転自在に支持している。同様に、第2アーム16は、
図2~
図4に示すように、第2テンショナプーリ18を、回転軸線18z回りに回転自在に支持している。
図3の例に示すように、第1テンショナプーリ17は、カバー23b及びプレート23cとともに締結部材23a、23dにて第1アーム15に取り付けられる。
【0024】
第1テンショナプーリ17は、
図4に示すように、押圧力Fcを受けて動力伝達ベルト4におけるプーリ3への入力側の部位を外周側から内周側へと押圧する。
図4の例では、第1テンショナプーリ17は、押圧力Faにて動力伝達ベルト4を押圧し、動力伝達ベルト4から押圧力Fhを受けている。
【0025】
第2テンショナプーリ18は、
図4に示すように、押圧力Fdを受けて動力伝達ベルト4におけるプーリ3からの出力側の部位を外周側から内周側へと押圧する。
図4の例では、第2テンショナプーリ18は、押圧力Fbにて動力伝達ベルト4を押圧し、動力伝達ベルト4から押圧力Fgを受けている。
【0026】
<2アームベルトテンショナ10の第1シャフト11と第2シャフト12にかかる負荷(
図4~
図5)>
なお
図5は、
図4においてA方向から2アームベルトテンショナ10を見た場合におけるベース13、第1シャフト11、第2シャフト12の模式図である。
【0027】
内燃機関1の運転時には、
図4に示すように、クランクプーリ2が回転駆動され(
図4の例では時計回り方向に駆動)、動力伝達ベルト4は、点線で示す符号4aに示す状態となって第2テンショナプーリ18を紙面右側に向けて押圧する。この押圧力は弾性体14に伝達され、弾性体14は押圧力Fc、Fd(弾性力)にて押し返し、第2テンショナプーリ18の押圧力Fbと第1テンショナプーリ17の押圧力Faを発生させる。
【0028】
図4に示すように、第1アーム15の揺動軸である第1シャフト11には、第1テンショナプーリ17が動力伝達ベルト4から受ける押圧力Fh(押圧力Faに対する反力)と、弾性体14から受ける押圧力Fc(弾性力)とが印加される。同様に、第2アーム16の揺動軸である第2シャフト12には、第2テンショナプーリ18が動力伝達ベルト4から受ける押圧力Fg(押圧力Fbに対する反力)と、弾性体14から受ける押圧力Fd(弾性力)とが印加される。
【0029】
第1シャフト11及び第2シャフト12は、ベース13に対して片持ち状態で立設されているので、
図5に示すように、第1シャフト11は、押圧力Fhと押圧力Fcによって、第2シャフト12から遠ざかる方向に傾斜するように変形する可能性がある。同様に第2シャフト12は、押圧力Fgと押圧力Fdによって、第1シャフト11から遠ざかる方向に傾斜するように変形する可能性がある。
【0030】
第1シャフト11が、
図5に実線で示す無負荷状態から、
図5に二点鎖線で示すように傾斜した場合、第1シャフト11の軸受であるブッシュ21b(
図3参照)に片当たりしてブッシュ21bが偏摩耗して寿命が短くなるので好ましくない。同様に第2シャフト12が、
図5に実線で示す無負荷状態から、
図5に二点鎖線で示すように傾斜した場合、第2シャフト12の軸受であるブッシュ22bに片当たりしてブッシュ22bが偏摩耗して寿命が短くなるので好ましくない。
【0031】
以下では、内燃機関1の運転時における第1シャフト11と第2シャフト12の傾斜を抑制することでブッシュ(軸受)の偏摩耗を抑制することができる、2アームベルトテンショナ10の第1の実施形態(2アームベルトテンショナ10a)~第6の実施形態(2アームベルトテンショナ10f)を説明する。なお、以降の説明において各図に示した所定傾斜角度θ1は、実際には微細な傾斜角度であるが、説明のため、実際よりも大きな傾斜角度としている。
【0032】
<第1の実施形態の2アームベルトテンショナ10a(
図6~
図7)>
図6及び
図7に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第1の実施形態の2アームベルトテンショナ10aのベース13a(13)、第1シャフト11a(11)、第2シャフト12a(12)を示している。また
図6は、2アームベルトテンショナ10aが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(第1テンショナプーリと第2テンショナプーリに負荷がかかっていない製造時の状態)の場合を示している。そして
図7は、2アームベルトテンショナ10aが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(第1テンショナプーリと第2テンショナプーリに最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0033】
図6及び
図7に示すように、ベース13a(13)における第1シャフト11a(11)と第2シャフト12a(12)の間には、薄肉状にして周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xが設けられている。なお、
図6及び
図7の例では、ベース13a(13)における第1シャフトと第2シャフトを立設した側にベース脆弱部13wを設け、反対側にベース脆弱部13xを設けているが、ベース脆弱部13w、13xは、少なくとも一方が設けられていればよい(以降の第2、第3の実施形態も同様)。
【0034】
図6に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11a(11)がベース13a(13)に対して揺動軸線11zが直角となるように取り付けられている。同様に、第2シャフト12a(12)がベース13a(13)に対して揺動軸線12zが直角となるように取り付けられている。その後、ベース13a(13)は、ベース脆弱部13w、13xの位置にて、第1シャフト11a(11)及び第2シャフト12a(12)が立設されている側へ向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1を有するように折り曲げられている。
【0035】
これにより、第1シャフト11a(11)は、プーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて、対向している第2シャフト12a(12)に向かってベースから延在するように傾斜している。同様に、第2シャフト12a(12)は、プーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて、対向している第1シャフト11a(11)に向かってベースから延在するように傾斜している。
【0036】
そして
図7に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11a(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12a(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、ベース13a(13)が、周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなればベース13a(13)の形状は戻る)。
図7に示すように、弾性変形の結果、ベース13a(13)の所定傾斜角度θ1は無くなり、第1シャフト11a(11)と第2シャフト12a(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。ベース脆弱部13w、13xの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0037】
つまり、ベース脆弱部13w、13xは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11a(11)と第2シャフト12a(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図7参照)ベース13a(13)の弾性変形の起点となる。
【0038】
<第2の実施形態の2アームベルトテンショナ10b(
図8~
図10)>
図8及び
図9に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第2の実施形態の2アームベルトテンショナ10bのベース13b(13)、第1シャフト11b(11)、第2シャフト12b(12)を示している。また
図8は、2アームベルトテンショナ10bが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(製造時の状態)の場合を示している。そして
図9は、2アームベルトテンショナ10bが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0039】
図8及び
図9に示す第2の実施形態は、
図6及び
図7に示す第1の実施形態に対して、無負荷時において傾斜が設けられている部材が、ベース13b(13)ではなく、第1シャフト11b(11)及び第2シャフト12b(12)である点が異なる。
【0040】
図8及び
図9に示すように、ベース13b(13)における第1シャフト11b(11)と第2シャフト12b(12)の間には、薄肉状にして周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xが設けられている。また
図8に示すように、無負荷時(製造時)において、ベース13b(13)は、折り曲げられておらず、仮想基準面Mに沿った平板状とされている。
【0041】
図10に示すように、第1シャフト11b(11)は、フランジ部11xと圧入部11yの軸線3y(3z)はプーリ回転軸線3zと平行とされているが、揺動軸部11kはプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。また揺動軸部11kの傾斜方向を第2シャフト12b(12)の側にするため、ベース13b(13)には突起部13uが設けられ、フランジ部11xには切欠凹部11uが設けられている。第2シャフト12b(12)の側も同様に、突起部13vと切欠凹部12v(
図8、
図9参照)が設けられている。
【0042】
図8に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11b(11)は、圧入部11yとフランジ部11xの軸線がベース13b(13)に対して直角となるように取り付けられている。また、第2シャフト12b(12)も同様に、圧入部12yとフランジ部12xの軸線がベース13b(13)に対して直角となるように取り付けられている。そして突起部13u及び切欠凹部11uにより、第1シャフト11b(11)は、対向している第2シャフト12b(12)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、突起部13v及び切欠凹部12vにより、第2シャフト12b(12)は、対向している第1シャフト11b(11)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0043】
そして
図9に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11b(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12b(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、ベース13b(13)が、周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなればベース13b(13)の形状は戻る)。
図9に示すように、弾性変形の結果、ベース13b(13)は、仮想基準面Mに対して、第1シャフト11b(11)及び第2シャフト12b(12)の立設方向とは反対の側へ、所定傾斜角度θ1にて弾性変形した状態となる。これにより、第1シャフト11b(11)と第2シャフト12b(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。ベース脆弱部13w、13xの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0044】
つまり、ベース脆弱部13w、13xは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11b(11)と第2シャフト12b(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図9参照)ベース13b(13)の弾性変形の起点となる。
【0045】
<第3の実施形態の2アームベルトテンショナ10c(
図11~
図12)>
図11及び
図12に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第3の実施形態の2アームベルトテンショナ10cのベース13c(13)、第1シャフト11c(11)、第2シャフト12c(12)を示している。また
図11は、2アームベルトテンショナ10cが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(製造時の状態)の場合を示している。そして
図12は、2アームベルトテンショナ10cが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0046】
図11及び
図12に示す第3の実施形態は、
図6及び
図7に示す第1の実施形態に対して、無負荷時において傾斜が設けられている部材が、ベース13c(13)における第1シャフト11c(11)を取り付ける座面13m、及びベース13c(13)における第2シャフト12c(12)を取り付ける座面13nである点が異なる。
【0047】
図11及び
図12に示すように、ベース13c(13)における第1シャフト11c(11)と第2シャフト12c(12)の間には、薄肉状にして周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xが設けられている。また
図11に示すように、無負荷時(製造時)において、ベース13c(13)は、折り曲げられておらず、仮想基準面Mに沿った平板状とされている。
【0048】
図11に示すように、ベース13c(13)における第1シャフト11c(11)の座面13mは、第2シャフト12c(12)の側に向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、ベース13c(13)における第2シャフト12c(12)の座面13nは、第1シャフト11c(11)の側に向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0049】
図11に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11c(11)は、傾斜している座面13mに取り付けられることで、対向している第2シャフト12c(12)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、第2シャフト12c(12)は、傾斜している座面13nに取り付けられることで、対向している第1シャフト11c(11)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0050】
そして
図12に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11c(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12c(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、ベース13c(13)が、周囲よりも剛性が低いベース脆弱部13w、13xを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなればベース13c(13)の形状は戻る)。
図12に示すように、弾性変形の結果、ベース13c(13)は、仮想基準面Mに対して、第1シャフト11c(11)及び第2シャフト12c(12)の立設方向とは反対の側へ、所定傾斜角度θ1にて弾性変形した状態となる。これにより、第1シャフト11c(11)と第2シャフト12c(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。ベース脆弱部13w、13xの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0051】
つまり、ベース脆弱部13w、13xは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11c(11)と第2シャフト12c(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図12参照)ベース13c(13)の弾性変形の起点となる。
【0052】
<第4の実施形態の2アームベルトテンショナ10d(
図13~
図14)>
図13及び
図14に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第4の実施形態の2アームベルトテンショナ10dのベース13d(13)、第1シャフト11d(11)、第2シャフト12d(12)を示している。また
図13は、2アームベルトテンショナ10dが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(製造時の状態)の場合を示している。そして
図14は、2アームベルトテンショナ10dが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0053】
図13及び
図14に示すように、第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)のそれぞれにおけるベース13d(13)への接合個所の近傍(揺動軸部11k、12kの根本)には、揺動軸部11k、12kの径を絞って小径状にして周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wが設けられている。
【0054】
図13に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11d(11)は、ベース13d(13)に対して揺動軸線11zが直角となるように取り付けられている。同様に、第2シャフト12d(12)がベース13d(13)に対して揺動軸線12zが直角となるように取り付けられている。その後、ベース13d(13)は、第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)の間の位置にて、第1シャフト11d(11)及び第2シャフト12d(12)が立設されている側へ向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1を有するように折り曲げられている。
【0055】
これにより、第1シャフト11d(11)は、プーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて、対向している第2シャフト12d(12)に向かってベースから延在するように傾斜している。同様に、第2シャフト12d(12)は、プーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて、対向している第1シャフト11d(11)に向かってベースから延在するように傾斜している。
【0056】
そして
図14に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11d(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12d(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)のそれぞれが、周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなれば第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)の形状は戻る)。
図14に示すように、ベース13d(13)は変形しないが、第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)の弾性変形の結果、第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。シャフト脆弱部11w、12wの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0057】
つまり、シャフト脆弱部11w、12wは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図14参照)第1シャフト11d(11)と第2シャフト12d(12)の弾性変形の起点となる。
【0058】
<第5の実施形態の2アームベルトテンショナ10e(
図15~
図17)>
図15及び
図16に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第5の実施形態の2アームベルトテンショナ10eのベース13e(13)、第1シャフト11e(11)、第2シャフト12e(12)を示している。また
図15は、2アームベルトテンショナ10eが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(製造時の状態)の場合を示している。そして
図16は、2アームベルトテンショナ10eが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0059】
図15及び
図16に示す第5の実施形態は、
図13及び
図14に示す第4の実施形態に対して、無負荷時において傾斜が設けられている部材が、ベース13d(13)ではなく、第1シャフト11e(11)及び第2シャフト12e(12)である点が異なる。
【0060】
図15及び
図16に示すように、第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)のそれぞれにおけるベース13e(13)への接合個所の近傍(揺動軸部11k、12kの根本)には、揺動軸部11k、12kの径を絞って小径状にして周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wが設けられている。また
図15に示すように、無負荷時(製造時)において、ベース13e(13)は、折り曲げられておらず、仮想基準面Mに沿った平板状とされている。
【0061】
図17に示すように、第1シャフト11e(11)において、フランジ部11xと圧入部11yの軸線3y(3z)はプーリ回転軸線3zと平行とされているが、揺動軸部11kはプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。また揺動軸部11kの傾斜方向を第2シャフト12b(12)の側にするため、ベース13e(13)には突起部13uが設けられ、フランジ部11xには切欠凹部11uが設けられている。第2シャフト12e(12)の側も同様に、突起部13vと切欠凹部12v(
図15、
図16参照)が設けられている。
【0062】
図17に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11e(11)は、圧入部11yとフランジ部11xの軸線がベース13e(13)に対して直角となるように取り付けられている。また、第2シャフト12e(12)も同様に、圧入部12yとフランジ部12xの軸線がベース13e(13)に対して直角となるように取り付けられている。そして突起部13u及び切欠凹部11uにより、第1シャフト11e(11)は、対向している第2シャフト12e(12)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、突起部13v及び切欠凹部12vにより、第2シャフト12e(12)は、対向している第1シャフト11e(11)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0063】
そして
図16に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11e(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12e(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)のそれぞれが、周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなれば第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)の形状は戻る)。
図16に示すように、弾性変形の結果、ベース13e(13)は変形しないが、第1シャフト11e(11)及び第2シャフト12e(12)は、互いに対向する側とは反対の側へ、所定傾斜角度θ1にて弾性変形した状態となる。これにより、第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。シャフト脆弱部11w、12wの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0064】
つまり、シャフト脆弱部11w、12wは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図16参照)第1シャフト11e(11)と第2シャフト12e(12)の弾性変形の起点となる。
【0065】
<第6の実施形態の2アームベルトテンショナ10f(
図18~
図19)>
図18及び
図19に示す模式図は、
図4のA方向から見た場合における、第6の実施形態の2アームベルトテンショナ10fのベース13f(13)、第1シャフト11f(11)、第2シャフト12f(12)を示している。また
図18は、2アームベルトテンショナ10fが内燃機関に取り付けられる前の無負荷時の状態(製造時の状態)の場合を示している。そして
図19は、2アームベルトテンショナ10fが内燃機関に取り付けられて内燃機関の運転時の負荷がかかった状態(最大の負荷がかかった状態)の場合を示している。
【0066】
図18及び
図19に示す第6の実施形態は、
図13及び
図14に示す第4の実施形態に対して、無負荷時において傾斜が設けられている部材が、ベース13f(13)における第1シャフト11f(11)を取り付ける座面13m、及びベース13f(13)における第2シャフト12f(12)を取り付ける座面13nである点が異なる。
【0067】
図18及び
図19に示すように、第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)のそれぞれにおけるベース13f(13)への接合個所の近傍(揺動軸部11k、12kの根本)には、揺動軸部11k、12kの径を絞って小径状にして周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wが設けられている。
【0068】
図18に示すように、ベース13f(13)における第1シャフト11f(11)の座面13mは、第2シャフト12f(12)の側に向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、ベース13f(13)における第2シャフト12f(12)の座面13nは、第1シャフト11f(11)の側に向かって、仮想基準面Mに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0069】
図18に示すように、無負荷時(製造時)では、第1シャフト11f(11)は、傾斜している座面13mに取り付けられることで、対向している第2シャフト12f(12)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。同様に、第2シャフト12f(12)は、傾斜している座面13nに取り付けられることで、対向している第1シャフト11f(11)に向かって、ベースから延在するようプーリ回転軸線3zに対して所定傾斜角度θ1にて傾斜している。
【0070】
そして
図19に示すように、内燃機関1の運転時(最大の負荷がかかった場合)では、第1シャフト11f(11)にかかる押圧力Fhと押圧力Fc、及び第2シャフト12f(12)にかかる押圧力Fgと押圧力Fdによって、第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)のそれぞれが、周囲よりも剛性が低いシャフト脆弱部11w、12wを起点として弾性変形する(押圧力Fh、Fg、押圧力Fc、Fdが無くなれば第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)の形状は戻る)。
図19に示すように、弾性変形の結果、ベース13f(13)は変形しないが、第1シャフト11f(11)及び第2シャフト12f(12)は、互いに対向する側とは反対の側へ、所定傾斜角度θ1にて弾性変形した状態となる。これにより、第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)は、プーリ回転軸線3zとほぼ平行になる。シャフト脆弱部11w、12wの深さ等は、適切な深さ等に設定されている。
【0071】
つまり、シャフト脆弱部11w、12wは、内燃機関1が運転されて第1テンショナプーリ17と第2テンショナプーリ18(
図4参照)に負荷がかかった場合に、プーリ回転軸線3zに対して傾斜していた第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)を、動力伝達ベルト4からの押圧力Fh、Fg(
図4参照)と弾性体14からの押圧力Fc、Fd(
図4参照)によってプーリ回転軸線3zに対してほぼ平行にする(
図19参照)第1シャフト11f(11)と第2シャフト12f(12)の弾性変形の起点となる。
【0072】
本発明の、2アームベルトテンショナを備えた内燃機関1は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
図10及び
図17において、突起部13uと切欠凹部11uを、別の構造に変更してもよい。また第1シャフトと第2シャフトは、片持ち状態で立設されていれば、圧入でベースに接合されていなくてもよい。
【0073】
またベース脆弱部13w、13x、シャフト脆弱部11w、12wの深さや幅等は、実際の車両を用いた実験等によって適切な値に設定される。
【符号の説明】
【0074】
1 内燃機関
2 クランクプーリ
3 プーリ
3h 補機
3z プーリ回転軸線
4 動力伝達ベルト
10 2アームベルトテンショナ
10a、10b、10c、10d、10e、10f 2アームベルトテンショナ
11 第1シャフト
11a、11b、11c、11d、11e、11f 第1シャフト
11k、12k 揺動軸部
11x、12x フランジ部
11y、12y 圧入部
11z、12z 揺動軸線
12 第2シャフト
12a、12b、12c、12d、12e、12f 第2シャフト
13 ベース
13a、13b、13c、13d、13e、13f ベース
13w、13x ベース脆弱部
14 弾性体
15 第1アーム
16 第2アーム
17 第1テンショナプーリ
17z、18z 回転軸線
18 第2テンショナプーリ
Fa、Fb 押圧力
Fc、Fd 押圧力
Fh、Fg 押圧力
M 仮想基準面
θ1 所定傾斜角度