(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165706
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/15 20210101AFI20241121BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20241121BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20241121BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20241121BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20241121BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20241121BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20241121BHJP
【FI】
H01M50/15
H01M50/627
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/477
H01M50/474
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082114
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】榊原 徹哉
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
5H023
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078HA27
5H011AA09
5H011CC06
5H011KK01
5H011KK03
5H021AA02
5H021CC12
5H021EE01
5H021HH03
5H023AS03
5H043AA04
5H043AA19
5H043BA11
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043DA05
5H043DA09
5H043DA13
5H043EA07
5H043EA16
5H043EA35
5H043GA22
5H043HA32E
5H043JA01E
5H043JA09E
5H043KA08E
5H043KA09E
5H043KA45E
5H043LA02E
5H043LA23E
(57)【要約】
【課題】封口板の内表面において、電解液が注液孔近傍に付着するのを抑制する技術の提供
【解決手段】蓄電デバイス1は、電極体20と、電解液と、電極体20と電解液とを収容するケース10と、を備えている。ケース10は、開口12hを有するケース本体12と、開口12hを封口する、矩形状の封口板14と、を備えている。封口板14は、第1長辺部の中点M1と第2長辺部の中点M2とを通る直線CLよりも、第1短辺部側に、電解液を注液する注液孔17を有している。ここで、封口板14は、内表面142からケース10の内方に向かって突出する一対の突出部90を有している。また、一対の前記突出部90は、封口板14の長辺方向において、内表面142における、注液孔17に対して対称となる部位に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
電解液と、
前記電極体と前記電解液とを収容するケースであって、
矩形状の底面と、該底面に対向する開口と、前記底面において対向する一対の長辺から延びた、対向する一対の幅広面と、前記底面において対向する一対の短辺から延びた、対向する一対の幅狭面と、を有するケース本体と、
前記開口を封口する、矩形状の封口板と、
を備えるケースと、
を備える蓄電デバイスであって、
前記封口板は、
相互に対向する第1長辺部および第2長辺部と、
相互に対向する第1短辺部および第2短辺部と、
を有しており、
前記第1長辺部の中点M1と前記第2長辺部の中点M2とを通る直線CLよりも、前記第1短辺部側に、前記電解液を注液する注液孔を有しており、
ここで、
前記封口板は、前記底面側の内表面からケースの内方に向かって突出する一対の突出部を有しており、
一対の前記突出部は、前記封口板の長辺方向において、前記内表面における、前記注液孔に対して対称となる部位に設けられている、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記突出部は、他方の前記突出部と反対側を向いた、平坦な面を有している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記突出部は、
プレート状であり、
他方の前記突出部側に平坦な第1面と、前記第1面の反対側に平坦な第2面と、を有している、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記突出部は、前記封口板の前記内表面に対して傾斜しており、
前記突出部と前記内表面とが成す角のうちの他方の前記突出部側の角度は、90度未満である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記第1短辺部と前記第2短辺部との間の最短距離を1としたときに、前記注液孔から前記突出部までの最短距離は、0.06以上0.13以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記突出部は、前記封口板と連続的かつ一体的に設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記封口板は、前記内表面に沿って延びる絶縁部材を備えており、該絶縁部材の一部が前記突出部を構成している、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-76346号公報で開示される蓄電素子は、電解液を注入するための注液孔が隔壁に設けられている収容体と、収容体に収容されている電極体と、注液孔を封止する栓部材であって、注液孔の内径より大きい頭部と注液孔に挿入される軸部とを有する栓部材と、を備えている。この蓄電素子では、隔壁の内面に注液孔を囲む第1の凹部、又は、注液孔を囲む凸部が形成されている。同公報には、かかる構成によって、隔壁の内面に付着して、栓部材の軸部と注液孔の内周面との間を通じて外部へ移動する電解液の量を抑制することができる、と記載されている。
【0003】
特開2013-191450号公報には、電極群を収容する電池缶と、電池缶の開口部を閉塞する電池蓋と、電池蓋の表面に凹設された凹部および凹部の凹部底面に開口して電池蓋を貫通する貫通孔を有する注液口と、注液口から電池缶内に電解液が注入された後、凹部に嵌合されて凹部底面に接面した状態で電池蓋に溶接されて注液口を封止する封止栓と、を有する角形二次電池の製造方法が開示されている。この製造方法は、電解液を注入するノズルヘッドを注液口に装着して、ノズルヘッドが有する弾性材料によって構成されたヘッド本体を凹部底面に接面させて貫通孔にシールした状態で接続して電池缶内に電解液を注入する注入工程を含むことを特徴としている。同公報には、かかる構成によって、電池缶内に電解液を注液する際に、注液口の凹部への電解液の付着が防止され、注液口を封止する際の電解液の付着に起因する溶接不良を無くすことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-76346号公報
【特許文献2】特開2013-191450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、封口板の内表面において、電解液が注液孔に付着するのを抑制したい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される蓄電デバイスは、電極体と、電解液と、電極体と電解液とを収容するケースと、を備えている。ケースは、矩形状の底面と、底面に対向する開口と、底面において対向する一対の長辺から延びた、対向する一対の幅広面と、底面において対向する一対の短辺から延びた、対向する一対の幅狭面と、を有するケース本体と、開口を封口する、矩形状の封口板と、備えている。封口板は、相互に対向する第1長辺部および第2長辺部と、相互に対向する第1短辺部および第2短辺部と、を有している。また、封口板は、第1長辺部の中点M1と第2長辺部の中点M2とを通る直線CLよりも、第1短辺部側に、電解液を注液する注液孔を有している。ここで、封口板は、底面側の内表面からケースの内方に向かって突出する一対の突出部を有している。一対の突出部は、封口板の長辺方向において、内表面における、注液孔に対して対称となる部位に設けられている。かかる構成の蓄電デバイスによると、封口板の内表面において、電解液が注液孔に付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図5は、蓄電デバイス2の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される技術の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、特にここで開示される技術を限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における「R」、「L」、「U」、「D」、「F」、および「Rr」の符号は、それぞれ、「右」、「左」、「上」、「下」、「前」、および「後」を示している。また、数値範囲を示す「A~B」の表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」の意味をも包含する。
【0009】
本明細書において、「蓄電デバイス」とは、電解質を介して一対の電極(正極および負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電が生じるデバイスをいう。かかる蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池;リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ;を包含する。以下では、上述した蓄電デバイスの一例として、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、蓄電デバイス1の断面図である。
図1には、幅広面12aに沿う蓄電デバイス1の断面構造が示されている。
図2は、
図1の部分拡大図である。
図2には、
図1における注液孔17近傍の断面構造が部分的に拡大されて示されている。
図1に示されているように、蓄電デバイス1は、ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極側の集電部材50と、負極側の集電部材60と、絶縁フィルム70と、絶縁部材80と、図示されない電解液と、を備えている。
【0011】
ケース10は、例えば、電極体20と電解液とを収容する部材である。特に限定するものではないが、例えば、ケース10は、軽量化と所要の剛性を確保するとの観点で、それぞれアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されたものであるとよい。
【0012】
図1および
図2に示されているように、ケース10は、ケース本体12と封口板14とを有している。ケース本体12は、例えば、電極体20を内部に収容する、ケース10の本体である。この実施形態では、ケース本体12は、開口12hと、対向する一対の幅広面12aと、対向する一対の幅狭面12bと、底面12cとを有している。底面12cは、ここでは、開口12hに対向している。底面12cは、ここでは、矩形状であり、対向する一対の長辺と、対向する一対の短辺とを有している。対向する一対の幅広面12aは、底面12cにおける対向する一対の長辺から延びた面である。対向する一対の幅狭面12bは、底面12cにおける対向する一対の短辺から延びた面である。なお、本明細書において、「矩形状」あるいは「矩形」の記載は、直線状の長辺と短辺とが曲線を介して互いに接合している形状、長辺および短辺の少なくとも一方が直線状ではなく、湾曲したり、凹凸になっていたり、屈曲して複数の直線あるいは曲線から構成されている形状、等を包含する。
【0013】
開口12hは、例えば、封口板14が装着される部位である。ここでは、開口12hは、一対の幅広面12aの上縁と、一対の幅狭面12bの上縁とで囲まれることによって形成されており、矩形状である。開口12hには、封口板14が嵌め込まれ、接合(例えば、溶接)されることによって、ケース本体12と封口板14とが一体化され、ケース10が気密に封止される。
【0014】
図3は、封口板14の平面図である。
図3には、ケース10の外側からみた封口板14の構造が示されている。封口板14は、例えば、開口12hを封口する平板状の部材である。このため、封口板14の形状は、開口12hの形状に応じた形状であるとよい。この実施形態では、封口板14は、矩形状である。ここでは、封口板14が開口12hに取り付けられると、封口板14は、例えば、底面12cに対向する。
図3に示されているように、封口板14は、相互に対向する第1長辺部14aおよび第2長辺部14bと、相互に対向する第1短辺部14cおよび第2短辺部14dとを有している。
図3に示された形態において、第1長辺部14aは、対向する一対の長辺部のうちの前(F)側の長辺部である。第2長辺部14bは、対向する一対の長辺部のうちの後ろ(Rr)側の長辺部である。第1短辺部14cは、対向する一対の短辺部のうちの右(R)側の長辺部である。第2短辺部14dは、対向する一対の短辺部のうちの左(L)側の長辺部である。
【0015】
図3に示されているように、封口板14は、図示されない取付孔と、排出弁15と、注液孔17と、を有している。取付孔は、例えば、電極端子を取り付けるための貫通孔である。このため、封口板14は、正極端子30を取り付けるための取付孔と、負極端子40を取り付けるための取付孔をそれぞれ有しているとよい。かかる取付孔に、電極端子の一部が挿通される。排出弁15は、例えば、薄肉部である。ここでは、排出弁は15、ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。注液孔17は、電解液を注入する部位である。
図1~
図3に示されているように、注液孔17には、封止部材16が取り付けられている。この実施形態では、注液孔17は、第1長辺部14aの中点M1と第2長辺部14bの中点M2とを通る直線CLよりも、第1短辺部14c側(
図3では、右側)に設けられている。
【0016】
封止部材16は、例えば、金属製であるとよい。
図3に示された形態では、封止部材16は、フランジ部161と挿入部162とを有している。フランジ部161は、ここでは、板状であり、封口板14上に配置されるとともに、封口板14に溶接される部位である。挿入部162は、軸状あるいは突起状であり、注液孔17に挿入される部位である。なお、封止部材16の形状は、これに限定されない。他の実施形態において、封止部材16は、フランジ部161からなるものであってもよい。
【0017】
ところで、封止部材16と封口板14との溶接では、例えば、封止部材16(ここでは、フランジ部161)が封口板14の外表面141(
図2および
図3参照)に溶接される。このとき、封口板14において、例えば、注液孔17の近傍では、他の部位よりも温度の上昇度合いが大きくなる。このため、注液孔17の近傍に電解液が付着していると、溶接による温度の上昇によって、電解液が気化しうる。本発明者は、溶接の際、注液孔17の近傍で電解液の気化を抑制したい、と考えた。そして、本発明者は、封口板14の内表面142(
図2参照)において、電解液が注液孔17に付着するのを抑制することによって、溶接の際に当該部位における電解液の気化を抑制することができ、延いては、電解液の気化にともなう不具合(例えば、溶接不良等)が発生するリスクを低減することができると考えた。
【0018】
図1~
図3に示された形態では、封口板14は、一対の突出部90を有している。一対の突出部90は、ここでは、底面12c側の内表面142からケース10の内方に向かって突出している。突出部90の突出方向は、例えば、突出部90の基端90Bと突出部90の先端90Eとを結ぶ直線L1によって、規定されうる。突出部90の基端90Bは、ここでは、内表面142と突出部90との境界である。この実施形態では、一対の突出部90は、封口板14の長辺方向において、内表面142における注液孔17に対して対称となる部位に設けられている。封口板14の長辺方向は、ここでは、第1長辺部14aが延びる方向をいい、
図1~
図3においては、左右方向である。また、本明細書において、「一対の突出部90が封口板14の長辺方向において注液孔17に対して対称である」とは、封口板14の長辺方向において、一対の突出部90が注液孔17を挟み込み、かつ、一方の突出部90から注液孔17までの最短距離と他方の突出部90から注液孔17までの最短距離とが等しいことをいう。なお、説明の便宜上、以下の説明において、
図2および
図3における左側の突出部90を第1突出部901と称し、同図中の右側の突出部90を第2突出部902と称することがある。
【0019】
図1および
図2に示された形態では、突出部90は、プレート状である。
図2に示されているように、突出部90は、第1面91と第2面92とを有している。第1面91は、ここでは、平坦な面であり、他方の突出部90側の面である。ここでいう「他方の突出部90側の面」とは、他方の突出部90側に設けられた面であればよく、後述する角θ(
図2参照)の大きさによっては、必ずしも他方の突出部90と対向していない。
図2に示されているように、第1突出部901における第1面91は、第2突出部902側の面である。第2突出部902における第1面91は、第1突出部901側の面である。第2面92は、ここでは、平坦な面であり、第1面91と反対側の面である。
図2に示されているように、第1突出部901における第2面92は、第2突出部902と反対側を向いた面である。第2突出部902における第2面92は、第1突出部901と反対側を向いた面である。
【0020】
この実施形態では、突出部90は、封口板14の内表面142に対して傾斜している。ここでは、突出部90と、封口板14の内表面142とが成す角のうちの他方の突出部90側(注液孔17側の角)が、90度未満である。
図2に示された形態では、線分LSと、直線L1と、が成す角θは、90度未満である。線分LSは、ここでは、第1突出部901の基端90Bと第2突出部902の基端90Bとを最短距離で結んだ線分である。角度θは、例えば80度以下がよく、70度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、50度以下がさらに好ましく、40度以下が特に好ましい。角度θは、概ね3度以上がよく、5度以上が好ましく、10度以上がより好ましい。
【0021】
注液孔17と突出部90との間の最短距離W1は、ここで開示される技術の効果が実現される限り、特に限定されない。最短距離W1は、例えば、注液孔17の中心Pと、突出部90の基端90Bとの最短距離である(
図3参照)。第1短辺部14cと第2短辺部14dとの最短距離W2(外寸、
図3参照)を1としたときに、最短距離W1は、例えば0.02以上であり、0.04以上が好ましく、0.06以上がより好ましい。また、最短距離W2を1としたときに、最短距離W1は、例えば0.17以下であり、0.15以下が好ましく、0.13以下がより好ましい。一例において、最短距離W2が120mmであるとき、最短距離W1は、好ましくは7mm~15mmである。この場合において、第2突出部902の基端90Bと第1短辺部14cとの最短距離W3は、31mm以上39mm以下であることが好ましい。
【0022】
この実施形態では、突出部90は、封口板14と連続的かつ一体的に設けられている。この場合、突出部90は、封口板14と同じ材質であるとよい。特に限定するものではないが、突出部90は、プレス加工によって封口板14に設けられたものであるとよい。
【0023】
図4は、電極体20の模式図である。電極体20は、例えば、正極と負極とを有する、蓄電デバイス1の発電要素である。電極体20は、例えば、シート状の正極22とシート状の負極24とが、セパレータ23を介在させつつ積層された積層構造を有している。また、電極体20は、シート状の正極22とシート状の負極24との積層方向が、一対の幅広面12aに向けられて重ねられた状態で、ケース10に収容されている。
【0024】
図4に示されているように、電極体20は、例えば、シート状の正極22とシート状の負極24とが、セパレータ23を介在させつつ積層され、シート長手方向LDに捲回された、捲回電極体である。電極体20は、例えば、正極22と負極24とセパレータ23とを捲回して筒状体とし、かかる筒状体をプレス成形することによって作製されうる。このため、電極体20は、扁平形状である。電極体20は、例えば、対向する一対の扁平面20aを有している(
図1参照)。
【0025】
また、電極体20の一方の端面20bは一方の幅狭面12b(
図1では、左側の幅狭面12b)と対向しており、他方の端面20cは他方の幅狭面12b(
図1では、右側の幅狭面12b)と対向している。端面20bは、ここでは、正極集電箔22cの未塗工部22c1の積層面であり、開放面である。端面20cは、ここでは、負極集電箔24cの未塗工部24c1の積層面であり、開放面である。
図1および
図4に示されているように、電極体20は、捲回軸方向WDと蓄電デバイス1の左右方向とが略平行になるように、ケース本体12に収容されている。また、電極体20の捲回軸WLは、幅広面12aと幅狭面12bと略垂直になり、かつ、封口板14と略平行である。
【0026】
図4に示されているように、正極22は、長尺な帯状の正極集電箔22c(例えばアルミニウム箔)と、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極22の捲回軸方向WDにおける一方の側縁部には、必要に応じて、保護層(図示なし)が設けられていてもよい。なお、正極活物質層22aの構成材料と保護層の構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0027】
正極集電箔22cの捲回軸方向WDの一方の端部(
図4の左端部)には、長手方向LDに沿って、帯状の未塗工部22c1が設けられている。未塗工部22c1は、正極集電箔22cの一部である。未塗工部22c1は、正極集電箔22cにおける、正極活物質層22aが塗工されていない部位である。この実施形態では、未塗工部22c1は、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。未塗工部22c1は、捲回軸方向WDの一方の端部(
図4の左端部)で積層される。
図1に示されているように、未塗工部22c1には、集電部材50が接合される。
【0028】
図4に示されているように、負極24は、長尺な帯状の負極集電箔24c(例えば銅箔)と、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aとを有する。なお、負極活物質層24aの構成材料としては、この種の蓄電デバイス(この実施形態では、リチウムイオン二次電池)において用いられるものが特に制限なく用いられてよい。
【0029】
負極集電箔24cの捲回軸方向WDの一方の端部(
図4の右端部)には、長手方向LDに沿って、帯状の未塗工部24c1が設けられている。未塗工部24c1は、負極集電箔24cの一部である。未塗工部24c1は、負極集電箔24cにおける、負極活物質層24aが形成されていない部位である。この実施形態では、未塗工部24c1は、セパレータ23よりも捲回軸方向WDに突出している。例えば、未塗工部24c1は、捲回軸方向WDの一方の端部(
図4の右端部)で積層される。
図1に示されているように、未塗工部22c1には、集電部材60が接合される。
【0030】
セパレータ23は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ23は、この実施形態では、電極体20の外表面を構成している。セパレータ23としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが用いられる。
【0031】
正極端子30は、例えば、電極体20の正極22と電気的に接続される部材である。上記のように、正極端子30は、封口板14に設けられた取付孔に挿通され、ケース本体12の外側と内側とに配置されている。このため、正極端子30には、例えば、ケース10の外側に配置される部位と、取付孔に挿通される部位と、ケース10の内側に配置される部位とを有しているとよい。正極端子30は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。
【0032】
正極側の集電部材50は、例えば、ケース10の内側において、正極22と正極端子30とを電気的に接続する部材である。
図1に示された形態では、集電部材50は、板状であり、封口板14から電極体20に向かって延びている。集電部材50は、ここでは、一端(
図1では、上端)において正極端子30に接続されており、他端(
図1では、下端)において電極体20に接続されている。集電部材50と正極端子30との接続は、この実施形態では、集電部材50の一端と正極端子30とが接合(例えば、溶接)されることによって実現されている。また、集電部材50と電極体20との接続は、この実施形態では、集電部材50の他端と未塗工部22c1とが接合(例えば、溶接)されることによって実現されている。集電部材50は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される。
【0033】
負極端子40は、例えば、電極体20の負極24と電気的に接続される部材である。負極端子40は、例えば、銅または銅合金で構成される。負極端子40は、例えば、正極端子30と同様の構成を有してもよい。このため、負極端子40の構成についての説明は、ここでは省略する。負極側の集電部材60は、例えば、ケース10の内側において、負極24と負極端子40とを電気的に接続する部材である。集電部材60は、例えば、銅または銅合金で構成される。負極側の集電部材60は、例えば、正極側の集電部材50と同様の構成を有してもよい。このため、集電部材60の構成についての説明は、ここでは省略する。
【0034】
絶縁フィルム70は、例えば、電極体20を覆う部材である。絶縁フィルム70は例えば、袋状であり、一部が開口している。
図1に示されているように、絶縁フィルム70では、下端において閉じられ、上端において開口している。この実施形態では、絶縁フィルム70は、内部に電極体20を収容した状態で、ケース10に収容されている。
【0035】
図1および
図2に示されているように、正極端子30と封口板14との間、ならびに、負極端子40と封口板14との間には、絶縁部材80が配置されている。絶縁部材80は、例えば、正極端子30と封口板14の外側表面との間、正極端子30と封口板14の内側表面との間、ならびに、取付孔の内周面に沿って配置されている。負極側も同様であり、絶縁部材80は、例えば、負極端子40と、封口板14の外側表面と封口板14の内側表面と取付孔との間に配置されている。絶縁部材80は、一体的に成型されたものでもよいし、複数の部位ごとに成型されたものが組み合わされたものでもよい。
【0036】
電解液は、例えば、電解質塩と、非水溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、LiPF6等が挙げられる。電解液における電解質塩の濃度は、例えば、0.7mol/L~1.3mol/Lである。非水溶媒は、例えば、カーボネート類であるとよい。カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が挙げられる。これらは単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
蓄電デバイス1は、種々の用途に用いられるものであるが、なかでも、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好ましく用いられうる。車両の種類は特に限定されないが、好適例として、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。
【0038】
上述のとおり、蓄電デバイス1は、電極体20と、電解液と、電極体20と電解液とを収容するケース10と、を備えている。ケース10は、矩形状の底面12cと、底面12cに対向する開口12hと、底面12cにおいて対向する一対の長辺から延びた、対向する一対の幅広面12aと、底面12cにおいて対向する一対の短辺から延びた、対向する一対の幅狭面12bと、を有するケース本体12と、開口12hを封口する、矩形状の封口板14と、を備えている。封口板14は、相互に対向する第1長辺部14aおよび第2長辺部14bと、相互に対向する第1短辺部14cおよび第2短辺部14dと、を有している。封口板14は、第1長辺部14aの中点M1と第2長辺部14bの中点M2とを通る直線CLよりも、第1短辺部14c側に、電解液を注液する注液孔17を有している。
【0039】
ここで、封口板14は、底面12c側の内表面142からケース10の内方に向かって突出する一対の突出部90(ここでは、第1突出部901および第2突出部902)を有している。また、一対の前記突出部90は、封口板14の長辺方向において、内表面142における、注液孔17に対して対称となる部位に設けられている。
【0040】
蓄電デバイス1では、封口板14の内表面142において、注液孔17に対して、長辺方向においてそれぞれが対称になるように、一対の突出部90が設けられている。換言すれば、封口板14の内表面142において、注液孔17は、一対の突出部90によって挟み込まれている。このため、例えば、蓄電デバイス1の製造プロセスにおいて、電極体20と電解液を収容した、本封止前のケース10について、これが移動した場合における、突出部90がケース本体12の内壁面(例えば、幅狭面12b)から跳ね返った電解液を、突出部90が堰き止めることができる。これによって、封口板14の内表面142において、電解液が注液孔17近傍に付着するのを抑制することができる。そして、例えば、電解液が注液孔17近傍に付着することによって生じうる不具合(例えば、封止部材16と封口板14との溶接不良)の発生を抑制することができる。
【0041】
また、突出部90は、他方の突出部90と反対側を向いた、平坦な面(ここでは、第2面92)を有しているとよい。突出部90における、他方の突出部90と反対側の面を凹凸のない平坦な面とすることによって、ケース本体12の内壁面から跳ね返った電解液をよりスムーズにケース10の内方に流すことができる。このため、封口板14の内表面142における、注液孔17への電解液の付着抑制効果を高めることができる。
【0042】
また、突出部90は、プレート状であるとよい。突出部90は、他方の突出部90側に平坦な第1面91と、第1面91の反対側に平坦な第2面92と、を有しているとよい。この場合において、第2面92が平坦な面であることによって、電解液をケース10に注液する際に、電解液がケース10内で飛散するのを抑制することができる。これによって、封口板14の内表面142における、注液孔17への電解液の付着抑制効果をより高めることができる。
【0043】
また、突出部90は、封口板14の内表面142に対して傾斜しているとよい。突出部90と内表面142とが成す角のうちの他方の突出部90側の角度θは、90度未満であるとよい。これによって、封口板14の内表面142における、注液孔17への電解液の付着抑制効果をより高めることができる。
【0044】
また、第1短辺部14cと第2短辺部14dとの間の最短距離W2を1としたときに、注液孔17から突出部90までの最短距離W1は、0.06以上0.13以下であるとよい。これによって、封口板14の内表面142における、注液孔17への電解液の付着抑制効果をより高めることができる。
【0045】
また、突出部90は、封口板14と連続的かつ一体的に設けられているとよい。これによって、突出部90は、を設けるための部材を別途用意する必要がなくなる。このため、注液孔17への電解液の付着抑制効果に加えて、蓄電デバイス1の形成容易性を高めることができる。
【0046】
上記実施形態では、突出部90が封口板14と一体的に形成されていた。しかし、これに限定されない。
図5は、蓄電デバイス2の部分断面図である。
図5には、蓄電デバイス2の注液孔17近傍における断面構造が部分的に拡大されて示されている。
図5に示されているように、蓄電デバイス2において、封口板14は、内表面142からケース10の内方に向かって突出する一対の突出部290を有している。一対の突出部290は、封口板14の長辺方向において、内表面142における、注液孔17に対して対称となる部位に設けられている。
【0047】
この実施形態では、封口板14は、内表面142に沿って延びる絶縁部材280を備えている。また、絶縁部材280の一部が突出部290を構成している。この実施形態における絶縁部材280は、上記実施形態の絶縁部材80と同様に、正極端子30と封口板14の内表面142とを絶縁する機能、ならびに、負極端子40と封口板14の内表面142とを絶縁する機能を有している。
図5に示されているように、正極側(
図5の左側、
図1参照)に配置された絶縁部材280は、注液孔17側の端部(
図5では、右側端部)において、突出部290を備えている。また、負極側(
図5の右側、
図1参照)に配置された絶縁部材280は、注液孔17側の端部(
図5では、右側端部)において、突出部290を備えている。この実施形態では、突出部290が絶縁性の材料(例えば、樹脂材料)で構成されている。このため、注液孔17への電解液の付着抑制効果に加えて、電極体20と封口板14との接触リスクを低減する効果が実現されうる。
【0048】
以下、ここで開示される技術に関して、本発明者が実施した検討例(試験例)について説明する。しかし、かかる試験例は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。なお、以下の試験例における各部の参照番号については、
図1~
図3を適宜参照されたい。
【0049】
<評価用サンプルの設計>
本試験例に係る突出部90に関して、以下の表1に示されている各サンプルを設計した。ただし、本試験例において設計した突出部90は、第1短辺部14c側の突出部90のみであり、第2短辺部14d側の突出部90に関しては設計しなかった。各サンプルについてCAE(computor aided engineering)解析によって、電解液の注液孔17への付着に関するシミュレーションを実施した。CAE解析では、電極体20と電解液とがケース本体12に収容され、かつ、開口12hに封口板14が取り付けられた試験用組立体を、第1短辺部14cに対応する幅狭面12bから左側に搬送し、所定のタイミングで減速させたときに、電解液が注液孔17に付着するか否かを評価した。ここでは、電解液を静止状態から加速させた。この静止状態から加速するのと同じ結果となるように、等加速度から減速させて解析を行った。このとき、電解液は、静止状態となる。なお、CAE解析における試験用組立体の搬送速度は、1000mm/sであった。また、減速時の加速度(すなわち、減速度)は、1.2×9.8m/s2であった。
【0050】
各サンプルの寸法関係に関して、以下のとおり、設計した。
・封口板14の長辺長さ(外寸):120mm(内寸:119mm)
・ケース本体12の高さ(外寸):65mm
・電解液の液面の高さ(封口板14の外表面141からの距離):8mm
・突出部90の厚み:0.5mm
・突出部90の幅(封口板14の短辺方向に沿う長さ):10.5mm
・距離X:表1に記載のとおりである。
・距離Z:表1に記載のとおりである。
・角度θ:表1に記載のとおりである。
なお、「距離X」は、
図3に示されている最短距離W3に相当する。「距離Z」は、
図2に示されているように、封口板14の内表面142から突出部90の先端90Eまでの距離である。「角度θ」は、
図2に示されているように、線分LSと直線L1とが成す角度である。
【0051】
<評価>
各サンプルの評価基準は、以下のとおりである。
「○」:
封口板14の内表面142において、注液孔17への電解液の付着がなかった(注液孔17への電解液の付着抑制効果があった)。
「×」:
封口板14の内表面142において、注液孔17への電解液の付着があった(注液孔17への電解液の付着抑制効果がなかった)。
【0052】
【0053】
封口板14の第1短辺部14c側にのみ突出部90を設けた場合において、表1に示されているように、角度θが小さいほど、ここで開示される技術の効果が実現される傾向があることがわかった。また、距離Zが小さいほど、ここで開示される技術の効果が実現される傾向があることがわかった。また、突出部90が注液孔17に近く設けられるほど(すなわち、距離Xが大きいほど)、ここで開示される技術の効果が実現される傾向があることがわかった。
【0054】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:
電極体と、
電解液と、
前記電極体と前記電解液とを収容するケースであって、
矩形状の底面と、該底面に対向する開口と、前記底面において対向する一対の長辺から延びた、対向する一対の幅広面と、前記底面において対向する一対の短辺から延びた、対向する一対の幅狭面と、を有するケース本体と、
前記開口を封口する、矩形状の封口板と、
を備えるケースと、
を備える蓄電デバイスであって、
前記封口板は、
相互に対向する第1長辺部および第2長辺部と、
相互に対向する第1短辺部および第2短辺部と、
を有しており、
前記第1長辺部の中点M1と前記第2長辺部の中点M2とを通る直線CLよりも、前記第1短辺部側に、前記電解液を注液する注液孔を有しており、
ここで、
前記封口板は、前記底面側の内表面からケースの内方に向かって突出する一対の突出部を有しており、
一対の前記突出部は、前記封口板の長辺方向において、前記内表面における、前記注液孔に対して対称となる部位に設けられている、蓄電デバイス。
項2:
前記突出部は、他方の前記突出部と反対側を向いた、平坦な面を有している、項1に記載の蓄電デバイス。
項3:
前記突出部は、
プレート状であり、
他方の前記突出部側に平坦な第1面と、前記第1面の反対側に平坦な第2面と、を有している、項1または2に記載の蓄電デバイス。
項4:
前記突出部は、前記封口板の前記内表面に対して傾斜しており、
前記突出部と前記内表面とが成す角のうちの他方の前記突出部側の角度は、90度未満である、項1~3のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
項5:
前記第1短辺部と前記第2短辺部との間の最短距離を1としたときに、前記注液孔から前記突出部までの最短距離は、0.06以上0.13以下である、項1~4のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
項6:
前記突出部は、前記封口板と連続的かつ一体的に設けられている、項1~5のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
項7:
前記封口板は、前記内表面に沿って延びる絶縁部材を備えており、該絶縁部材の一部が前記突出部を構成している、項1~5のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
【0055】
以上、ここで開示される技術の実施形態について説明したが、ここで開示される技術を上記実施形態に限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、他の実施形態においても実施されうる。特許請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,2 蓄電デバイス
10 ケース
12 ケース本体
12h 開口
14 封口板
141 外表面
142 内表面
17 注液孔
20 電極体
30 正極端子
40 負極端子
50,60 集電部材
70 絶縁フィルム
80,280 絶縁部材
90,290 突出部