(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165707
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241121BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G08G1/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082116
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 謙悟
(72)【発明者】
【氏名】松平 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍馬
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181DD01
5H181EE02
5H181MC13
5H181MC25
(57)【要約】
【課題】より精度よく交通流を予測することを可能とする技術が提供されることが望まれる。
【解決手段】第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する判定部と、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測する予測部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する判定部と、
前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測する予測部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の平均交通密度のうち前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記第1の平均交通密度が前記第1の時間の前から増加している場合に、前記第2の平均交通密度のうち前記時空間領域を、渋滞終了時刻を基準として時間方向に拡張する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記第1の平均交通密度が前記第1の時間の前から減少している場合に、前記第2の平均交通密度のうち渋滞開始時刻から渋滞終了時刻までの前記時空間領域を、前記渋滞開始時刻を基準として時間方向に拡張する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間内かつ所定の地点よりも上流に位置する第1領域を上流方向に拡張することに基づいて、距離方向拡張後の領域を生成し、前記距離方向拡張後の領域と前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間内かつ前記所定の地点よりも下流に位置する第2の領域とを時間方向に拡張することに基づいて、時間方向拡張後の領域を生成し、前記第2の交通密度のうち前記第1の渋滞時間の前の時間に該当する第3の領域を、前記時間方向拡張後の領域の前の時間にシフトし、前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間より後の時間に該当する第4の領域を、前記時間方向拡張後の領域の後の時間にシフトすることに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第1の平均交通密度が所定の値以上であるか否かにより、前記第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値よりも小さい場合に、前記第2の平均交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値よりも小さい場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度のうち前記第1の平均交通密度に対応する時刻と同時刻に対応する交通密度の第3の平均交通密度の最大値以下、かつ、前記第3の平均交通密度の最小値以上である場合に、前記第2の平均交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値以上である場合に、前記第2の交通密度の前記時空間領域を距離方向および時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定することと、
前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する判定部と、
前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測する予測部と、
を備える情報処理装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサによって収集されたセンサデータに基づいて交通流をシミュレーションする技術として様々な技術が知られている。センサには、アンテナなども含まれ得る。
【0003】
交通流をシミュレーションする技術の例としては、特許文献1の段落0017~0019および段落0026~0037などに、過去の旅行時間統計データから旅行時間実測データの時間変動の傾向と時間変動の傾向が類似するデータを選択し、選択したデータに基づいて、将来の旅行時間を算出する技術が開示されている。
【0004】
また、交通流をシミュレーションする技術の他の例としては、特許文献2の段落0032-0038などに、予測を行なう現時点から一定時間過去に遡った時点までの時間帯と、経路上の小区間とからなる時空間の交通流データ分布を求め、さらに、過去における時空間の交通流データ分布を求める方法が示されている。そして、この二つの交通流データ分布のマッチングによって、過去における類似の交通状況の時点を抽出し、当経路上の小区間を順次たどりながら旅行時間を累積し、当経路の過去における将来時点での経路推定旅行時間を求める方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-196238号公報
【特許文献2】特開2007-11596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、渋滞の時間帯または渋滞長が過去のデータから逸脱する場合には、過去のデータから時間変動の傾向が似ているデータを選択できないため、旅行時間の推定精度が悪化してしまう問題点があった。さらに、特許文献2に記載された技術では、現在の交通状況と類似する過去の交通状況をマッチングによって抽出することができないため、旅行時間の推定精度が悪化してしまう問題点があった。
【0007】
そこで、より精度よく交通流を予測することを可能とする技術が提供されることが望まれる。より具体的に、渋滞の時間帯または渋滞長が過去のデータから逸脱する場合であっても、精度良く交通流を予測することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する判定部と、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測する予測部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0009】
なお、前記第3の交通密度の予測には、機械学習によって得られた学習済みモデルデータが用いられてもよい。
【0010】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の平均交通密度のうち前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0011】
前記予測部は、前記第1の平均交通密度が前記第1の時間の前から増加している場合に、前記第2の平均交通密度のうち前記時空間領域を、渋滞終了時刻を基準として時間方向に拡張してもよい。
【0012】
前記予測部は、前記第1の平均交通密度が前記第1の時間の前から減少している場合に、前記第2の平均交通密度のうち渋滞開始時刻から渋滞終了時刻までの前記時空間領域を、前記渋滞開始時刻を基準として時間方向に拡張してもよい。
【0013】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0014】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間内かつ所定の地点よりも上流に位置する第1領域を上流方向に拡張することに基づいて、距離方向拡張後の領域を生成し、前記距離方向拡張後の領域と前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間内かつ前記所定の地点よりも下流に位置する第2の領域とを時間方向に拡張することに基づいて、時間方向拡張後の領域を生成し、前記第2の交通密度のうち前記第1の渋滞時間の前の時間に該当する第3の領域を、前記時間方向拡張後の領域の前の時間にシフトし、前記第2の交通密度のうち前記第2の渋滞時間より後の時間に該当する第4の領域を、前記時間方向拡張後の領域の後の時間にシフトすることに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0015】
前記判定部は、前記第1の平均交通密度が所定の値以上であるか否かにより、前記第1の渋滞時間が存在するか否かを判定してもよい。
【0016】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値よりも小さい場合に、前記第2の平均交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0017】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値よりも小さい場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度のうち前記第1の平均交通密度に対応する時刻と同時刻に対応する交通密度の第3の平均交通密度の最大値以下、かつ、前記第3の平均交通密度の最小値以上である場合に、前記第2の平均交通密度の前記時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0018】
前記予測部は、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合、かつ、前記第1の平均交通密度が前記第2の平均交通密度の最大値以上である場合に、前記第2の交通密度の前記時空間領域を距離方向および時間方向に拡張することに基づいて、前記予測用データを生成してもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定することと、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測することと、を含む、情報処理方法が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、コンピュータを、第1の時間に属する各時刻の第1の交通密度の第1の平均交通密度に基づいて、前記第1の時間において第1の渋滞時間が存在するか否かを判定する判定部と、前記第1の渋滞時間が存在すると判定された場合に、第2の時間に属する各時刻の第2の交通密度または前記第2の交通密度の時刻ごとの第2の平均交通密度の第2の渋滞時間に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、前記第2の時間に属する予測用データを生成し、前記予測用データに基づいて、前記第1の時間より後の時刻における第3の交通密度を予測する予測部と、を備える情報処理装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、より精度よく交通流を予測することを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る交通流予測装置1の機能構成例を示す図である。
【
図2】学習部141の詳細な構成例を示す図である。
【
図3】推論部142の詳細な構成例を示す図である。
【
図4】マスタデータ記憶部126によって記憶されるマスタデータの例を示す図である。
【
図5】学習パラメータ記憶部127によって記憶される学習パラメータの例を示す図である。
【
図6】フリーフローデータ記憶部123によって記憶されるフリーフローデータの例を示す図である。
【
図7】プローブデータ記憶部122によって記憶されるプローブデータの例を示す図である。
【
図8】交通密度(K)と速度(V)との組とKV関係式とを示す図である。
【
図9】学習パラメータ記憶部127に保存されるKVパラメータの構成例を示す図である。
【
図10】KVパラメータ作成部1411によって実行されるKVパラメータ作成処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】推定地点に到達した車両の計測地点における通過時刻の算出例を説明するための図である。
【
図12】計測地点における交通量から推定地点における交通量を算出する例を説明するための図である。
【
図13】交通密度算出部1412によって実行される交通密度算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】学習に用いられる交通密度データを模式的に示した図である。
【
図15】パーセンタイル学習の概要を説明するための図である。
【
図16】学習モデルデータ730の例としての平均交通密度パーセンタイルデータ731の例を示す図である。
【
図17】学習モデルデータ730の例としてのメッシュ交通密度パーセンタイルデータ732の例を示す図である。
【
図18】パーセンタイル学習部1414によるパーセンタイル学習の動作の例を示すフローチャートである。
【
図19】予測対象の交通密度および速度を模式的に示した図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る推論部142によるパーセンタイル予測の動作の例を示すフローチャートである。
【
図21】拡張処理部1422による拡張処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図22】時空間拡張部1424による時空間拡張処理の概要を示す図である。
【
図23】時空間拡張部1424による時空間拡張処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図24】時間拡張部1426による時間拡張処理の概要を示す図である。
【
図25】時間拡張部1426による時間拡張処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図26】学習データにはない渋滞長の実測結果と比較例による予測結果と本実施形態による予測結果とを比較して示す図である。
【
図27】学習データにはない時間帯における渋滞発生の実測結果と比較例による予測結果と本実施形態による予測結果とを比較して示す図である。
【
図28】本発明の実施形態に係る交通流予測装置1の例としての情報処理装置900のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
(1.実施形態の詳細)
以下では、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0025】
(1-1.交通流予測装置の構成)
まず、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1の構成例について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1の機能構成例を示す図である。なお、交通流予測装置1は、情報処理装置の例に該当し得る。
【0026】
図1を参照すると、道路上を走行する車両の例として、車両M1~M3が示されている。さらに、
図1を参照すると、奥側の車線を、車両M1と車両M2とが走行しており(車両M2に続いて車両M1が走行しており)、手前側の車線を、奥側の車線の車両M1および車両M2とは逆向きに車両M3が走行している。このように、本発明の実施形態では、道路が複数車線によって構成される場合を主に想定するが、道路は1つの車線によって構成されていてもよい。車両M1~M3それぞれは、車載器を搭載している。なお、車線は、「レーン」とも換言され得る。
【0027】
交通流予測装置1は、走行履歴データ記憶部121と、プローブデータ記憶部122と、フリーフローデータ記憶部123と、交通量データ記憶部124と、交通密度データ記憶部125と、マスタデータ記憶部126と、学習パラメータ記憶部127と、予測結果記憶部128とを備える。
【0028】
また、交通流予測装置1は、統計処理部131と、交通量算出部133と、処理部140とを備える。処理部140は、学習部141と、推論部142とを備える。
【0029】
図2は、学習部141の詳細な構成例を示す図である。
図2に示されるように、学習部141は、KVパラメータ作成部1411と、交通密度算出部1412と、パーセンタイル学習部1414とを備える。学習部141が備えるこれらのブロックは、学習段階において主に動作する。学習部141が備えるこれらのブロックの詳細な機能については、後に説明する。
【0030】
図3は、推論部142の詳細な構成例を示す図である。
図3に示されるように、推論部142は、拡張処理部1422を備える。また、拡張処理部1422は、時空間拡張部1424と、時間拡張部1426とを備える。推論部142が備えるこれらのブロックは、推論段階において主に動作する。推論部142が備えるこれらのブロックの詳細な機能については、後に説明する。
【0031】
走行履歴データ記憶部121には、プローブアンテナ112が接続されており、フリーフローデータ記憶部123には、フリーフローアンテナ114が接続されている。
【0032】
統計処理部131と、交通量算出部133と、処理部140とは、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置を含み、ROM(Read Only Memory)により記憶されているプログラムが演算装置によりRAMに展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。
【0033】
あるいは、統計処理部131と、交通量算出部133と、処理部140とは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。演算装置による演算に必要なデータは、図示しない記憶部によって適宜記憶される。
【0034】
走行履歴データ記憶部121と、プローブデータ記憶部122と、フリーフローデータ記憶部123と、交通量データ記憶部124と、交通密度データ記憶部125と、マスタデータ記憶部126と、学習パラメータ記憶部127と、予測結果記憶部128とは、図示しない記憶部によって実現される。かかる記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどのメモリによって構成されてよい。
【0035】
(マスタデータ記憶部126)
マスタデータ記憶部126は、各種のマスタデータをあらかじめ記憶している。マスタデータは、交通流予測装置1にユーザから入力されて交通流予測装置1によって管理されるデータである。ここで、
図4を参照しながら、マスタデータの例について説明する。
【0036】
図4は、マスタデータ記憶部126によって記憶されるマスタデータの例を示す図である。
図4に示されるように、マスタデータ記憶部126は、走行履歴時間幅611、走行履歴区間幅612、シミュレーション実行時間間隔621、シミュレーション実行セル幅622、混雑流判定速度641および渋滞波伝搬速度645それぞれをマスタデータの例として記憶している。これらのマスタデータの詳細については、後に説明する。
【0037】
(学習パラメータ記憶部127)
学習パラメータ記憶部127は、各種の学習パラメータを記憶し得る。学習パラメータは、学習によって得られるパラメータであり、学習段階において学習パラメータ記憶部127に記憶される。また、推論段階において学習パラメータ記憶部127から取得される。ここで、
図5を参照しながら、学習パラメータ記憶部127によって記憶される学習パラメータの例について説明する。
【0038】
図5は、学習パラメータ記憶部127によって記憶される学習パラメータの例を示す図である。
図5に示されるように、学習パラメータ記憶部127は、KVパラメータ710および学習モデルデータ730それぞれを学習パラメータの例として記憶し得る。これらの学習パラメータの詳細については、後に説明する。
【0039】
(フリーフローアンテナ114)
フリーフローアンテナ114は、道路上の各位置を走行する車両の検出を行う車両検出部の一例として機能する。すなわち、本発明の実施形態では、車両検出部が、フリーフローアンテナ114を含む場合を主に想定する。これによって、既に構築されているETC(Electronic Toll Collection)システムのETCフリーフローアンテナが車両検出部として用いられ得るため、新たに車両検出部を設ける必要がない。しかし、フリーフローアンテナ114の代わりに、他の車両検出部(例えば、車両感知器、赤外線センサまたは超音波センサなど)が用いられてもよい。
【0040】
より詳細には、フリーフローアンテナ114は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から車両の識別情報(車両ID)を受信することによって車両をリアルタイムに検出する。本発明の実施形態では、車載器の例として、ETC車載器が用いられる場合を主に想定する。なお、フリーフローアンテナ114は、複数のバージョンのETC車載器に対応している場合が想定される一方、後に説明するプローブアンテナ112は、特定のバージョンのETC車載器にしか対応していない場合が想定される。すなわち、フリーフローアンテナ114は、プローブアンテナ112よりも、より多くの車両を検出し得る。
【0041】
なお、フリーフローアンテナ114によって車両が検出される道路上の「各位置」は、車両検出部によって検出可能な車両の位置であれば、特に限定されない。以下では、フリーフローアンテナ114によって車両が検出され得る道路上の各位置を、単に「フリーフローアンテナ位置」と言う場合がある。
【0042】
フリーフローアンテナ114は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両IDを受信することによって車両をリアルタイムに検出すると、車両の検出結果(以下、「フリーフローデータ」とも言う。)をフリーフローデータ記憶部123にリアルタイムに出力する。そして、フリーフローアンテナ114からフリーフローデータ記憶部123にリアルタイムに出力された車両の検出結果は、交通量算出部133によって、リアルタイムに利用され得る。
【0043】
ここで、「リアルタイム」は、フリーフローアンテナ位置に車両が到達してから道路上の交通状態が変化してしまう前までの短時間のいずれかのタイミングを意味し得る。このタイミングに車両が検出されれば、道路上の交通状態が変化してしまう前に、車両が検出された時点の交通状態に応じた何らかの措置が講じられ得る。
【0044】
(フリーフローデータ記憶部123)
図6は、フリーフローデータ記憶部123によって記憶されるフリーフローデータの例を示す図である。フリーフローデータは、フリーフローアンテナ位置を走行する車両の検出結果に該当する。
図6に示されるように、フリーフローデータは、「車両ID」と「通過時刻」とが対応付けられてなる。「車両ID」は、フリーフローアンテナ114と車両に搭載された車載器との間の通信によって車両からフリーフローアンテナ114によって受信された車両の識別情報である。「通過時刻」は、フリーフローアンテナ114によって車両から車両IDが受信された時刻であり、フリーフローアンテナ位置を車両が通過した時刻に相当し得る。
【0045】
(交通量算出部133)
交通量算出部133は、フリーフローデータをフリーフローデータ記憶部123から取得する。そして、交通量算出部133は、フリーフローデータ(車両IDおよび通過時刻)に基づいて、あらかじめ設定された単位時間あたりにフリーフローアンテナ位置を通過した車両の数(換言すると、フリーフローアンテナ114によって単位時間あたりに検出された車両IDの数)を、フリーフローアンテナ位置の交通量として算出する。交通量算出部133による交通量の算出は、単位時間ごとに繰り返し行われればよい。
【0046】
なお、フリーフローアンテナ位置を通過した全部の車両に、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載されているとは限らない。そのため、フリーフローアンテナ114によってフリーフローアンテナ位置を通過した全部の車両が検出されるとは限らない。したがって、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載された車両の、(フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載されていない車両を含んだ)車両全体に対する割合を「車載器搭載割合」としてあらかじめ設定し、フリーフローアンテナ114によって検出された車両の数を「検出車両数」とした場合、交通量算出部133は、下記の式(1)によって、フリーフローアンテナ位置の交通量をより高精度に推定するのが望ましい。
【0047】
(交通量の推定値)=(検出車両数)÷(車載器搭載割合)・・・(1)
【0048】
しかし、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が十分に普及している場合などには、かかる推定は省略されてもよい。交通量算出部133によって推定された交通量と、その交通量に対応する時間の終端である計測時刻と、その交通量に対応するフリーフローアンテナ位置とは、交通量データとして交通量が推定される度に交通量データ記憶部124に出力される。
【0049】
(交通量データ記憶部124)
交通量データ記憶部124は、交通量算出部133から出力された交通量データを記憶する。
【0050】
(プローブアンテナ112)
プローブアンテナ112は、車両の走行履歴データを取得する走行履歴データ取得部の一例として機能する。すなわち、本発明の実施形態では、走行履歴データ取得部が、プローブアンテナ112を含む場合を主に想定する。これによって、既に構築されているETCシステムのETCプローブアンテナが走行履歴データ取得部として用いられ得るため、新たに走行履歴データ取得部を設ける必要がない。しかし、プローブアンテナ112の代わりに、他の走行履歴データ取得部(例えば、携帯基地局など)が用いられてもよい。
【0051】
より詳細に、プローブアンテナ112は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から走行履歴データを取得すると、取得した走行履歴データを走行履歴データ記憶部121に出力する。
【0052】
(走行履歴データ記憶部121)
走行履歴データ記憶部121は、プローブアンテナ112から出力された走行履歴データを記憶する。走行履歴データ記憶部121によって記憶されている走行履歴データは、統計処理部131によって利用され得る。
【0053】
なお、走行履歴データは、走行履歴区間幅612(例えば、100m)にて規定された道路上の区間(キロポスト間)ごと、かつ、走行履歴時間幅611(例えば、1分間)ごとに走行した各車両の速度と、プローブアンテナ112によって速度が収集された時刻である収集時刻とを含む。
【0054】
(統計処理部131)
統計処理部131は、走行履歴データ記憶部121から走行履歴データを取得し、走行履歴データに対して統計処理を施し、統計処理後の走行履歴データをプローブデータとしてプローブデータ記憶部122に出力する。そして、統計処理部131からプローブデータ記憶部122に出力されたプローブデータは、学習部141によって主に利用され得る。
【0055】
例えば、統計処理部131は、道路上の区間(キロポスト間)ごと、かつ、走行履歴時間幅611ごとに、走行した1または複数の車両の速度に対して所定の統計処理(例えば、平均化処理など)を施す。これによって、道路上の各区間における走行履歴時間幅611ごとの車両速度の統計量が得られる。なお、平均化処理の例としては、調和平均を取る処理などが挙げられる。
【0056】
(プローブデータ記憶部122)
図7は、プローブデータ記憶部122によって記憶されるプローブデータの例を示す図である。
図7に示されるように、プローブデータは、「通過時刻」と「キロポスト」と「速度」と「収集時刻」とが対応付けられてなる。
【0057】
「通過時刻」は、道路の起点からの距離標(キロポスト)を車両が通過した時間の終端時刻である。例えば、「通過時刻:2019年01月01日10時24分」は、距離標(キロポスト)を車両が通過した時間の終端時刻が「2019年01月01日10時24分」であることを示す。「キロポスト」は、道路の起点からの距離標である。
【0058】
「速度」は、道路上の各区間(キロポスト間)を走行履歴時間幅611(通過時刻間)ごとに走行した1または複数の車両速度の統計量(例えば、平均速度)である。例えば、「速度:80km/h」は、「キロポスト:100」から「キロポスト:100.1」までを、「通過時刻:2019年01月01日10時23分」から「2019年01月01日10時24分」までに走行した1または複数の車両の速度の統計量である。
【0059】
「収集時刻」は、プローブアンテナ112によって車両の速度が収集された時刻である。
【0060】
(KVパラメータ作成部1411)
KVパラメータ作成部1411は、所定期間ごとに、プローブデータ記憶部122からフリーフローアンテナ位置ごとの所定期間分の速度および通過時刻を取得する。さらに、KVパラメータ作成部1411は、所定期間ごとに、交通量データ記憶部124からフリーフローアンテナ位置ごとの所定期間分の交通量データ(交通量および計測時刻)を取得する。
【0061】
KVパラメータ作成部1411は、所定期間分の交通量および計測時刻と、当該所定期間分の速度および通過時刻とに基づいて、機械学習により交通密度(K)と速度(V)との対応関係(以下の例では、近似式)を示すパラメータをフリーフローアンテナ位置ごとに作成する。
【0062】
より詳細には、KVパラメータ作成部1411は、同一の時刻および同一のフリーフローアンテナ位置に対応する交通量(Q)と速度(V)とを対応付ける。そして、KVパラメータ作成部1411は、下記の式(2)によって、対応付けられた交通量(Q)および速度(V)ごとに、交通密度(K)を算出する。
【0063】
K=Q×1/(V×60)・・・(2)
【0064】
ただし、Kは、交通密度(台/km)を示し、Qは、交通量(台/分)を示し、Vは、速度(km/時間)を示す。KVパラメータ作成部1411は、対応する交通密度(K)と速度(V)との組を所定の関係で近似し、近似によって得られた近似式(KV関係式)のパラメータをKVパラメータとして作成する。
【0065】
ここでは、KVパラメータ作成部1411が、渋滞流に対応する近似式のパラメータを作成する場合を想定する。より詳細に、KVパラメータ作成部1411は、混雑流判定速度641(例えば、高速道では55km/hなど)以下の速度(V)とその速度(V)に対応する交通密度(K)との組を所定の関係で近似することによって、渋滞流に対応するKV関係式のパラメータを作成する。例えば、渋滞流に対応するKV関係式は、下記の式(3)によって表現される指数関数であってよい。
【0066】
V=a×exp(-b×K)・・・(3)
【0067】
ただし、Kは、交通密度(台/km)を示し、Vは、速度(km/時間)を示し、aおよびbは、KVパラメータである。なお、本明細書において、混雑流は、渋滞流に包含される概念として使用されており、渋滞流の中でも速度がある値より大きい状態を意味し得る。
【0068】
図8は、交通密度(K)と速度(V)との組とKV関係式とを示す図である。
図8に示された例において、横軸は、交通密度(K)を示しており、縦軸は、速度(V)を示している。かかるKV図において、交通密度(K)と速度(V)とが対応付けられた各組が、各点としてプロットされている。また、
図8を参照すると、これらの組を近似して得られるKV関係式を示す指数関数が示されている。
【0069】
KVパラメータ作成部1411は、作成したKVパラメータを、KVパラメータ710として学習パラメータ記憶部127に保存する。なお、典型的には、所定期間は、1カ月であってよい。しかし、所定期間は、1カ月に限定されない。例えば、所定期間は、1日であってもよい。
【0070】
図9は、学習パラメータ記憶部127に保存されるKVパラメータの構成例を示す図である。
図9に示されるように、KVパラメータは、「パラメータa」および「パラメータb」を含む。さらに、「パラメータa」および「パラメータb」は、道路形状および車線数などにより異なることが想定されるため、車両検知位置ごと(フリーフローアンテナ位置ごと)に作成されるのが望ましい。
【0071】
そこで、
図9に示されるように、「パラメータa」および「パラメータb」には、「路線コード」および「車両検知位置ID」が対応付けられているのが望ましい。なお、「路線コード」は、路線(起点から終点までの道路)を識別するためのコードである。車両検知位置IDは、フリーフローアンテナ位置を識別するためのコードである。
【0072】
また、学習パラメータ記憶部127には、車線数に応じた標準的なKVパラメータがさらに記憶されていてもよい。例えば、フリーフローアンテナ位置の車線数が取得されれば、その車線数に応じた標準的なKVパラメータが、そのフリーフローアンテナ位置に対応するKVパラメータの初期値として用いられてもよい。
【0073】
図10は、KVパラメータ作成部1411によって実行されるKVパラメータ作成処理の例を示すフローチャートである。まず、KVパラメータ作成部1411は、プローブデータ記憶部122に記憶されているプローブデータからフリーフローアンテナ位置ごとの所定期間分の速度および通過時刻を取得する(S11)。また、KVパラメータ作成部1411は、交通量データ記憶部124からフリーフローアンテナ位置ごとの所定期間分の交通量データ(交通量および計測時刻)を取得する(S12)。
【0074】
KVパラメータ作成部1411は、同一の時刻および同一のフリーフローアンテナ位置に対応する交通量(Q)と速度(V)とを対応付ける。そして、KVパラメータ作成部1411は、対応付けられた交通量(Q)および速度(V)ごとに、交通密度(K)を算出する(S13)。
【0075】
KVパラメータ作成部1411は、交通密度(K)と速度(V)との関係を示すKV関係式のパラメータを機械学習により作成する(S14)。より詳細に、KVパラメータ作成部1411は、対応する交通密度(K)と速度(V)との組を所定の関係(例えば、指数関数など)で近似し、近似によって得られたKV関係式のパラメータをKVパラメータとして作成する。ここでは、KVパラメータ作成部1411は、渋滞流に対応する近似式のパラメータを作成する場合を想定する。
【0076】
KVパラメータ作成部1411は、作成したKVパラメータをKVパラメータ710として、学習パラメータ記憶部127に保存する(S15)。
【0077】
(交通密度算出部1412)
交通密度算出部1412は、あらかじめ設定されたシミュレーション実行時間間隔621(例えば、5分間隔など)で、交通密度の算出に用いたプローブデータの前回の取得時刻よりも後の時刻に記憶された、区間ごとの速度および通過時刻をプローブデータ記憶部122から取得する。また、交通密度算出部1412は、シミュレーション実行時間間隔621で、交通密度の算出に用いた交通量データの前回の取得時刻よりも後の時刻に記憶された、フリーフローアンテナ位置ごとの交通量データ(交通量および計測時刻)を交通量データ記憶部124から取得する。
【0078】
交通密度算出部1412は、少なくとも速度に基づく交通密度の算出を区間ごとに行う。ここで、各区間における交通密度は、具体的にどのようにして算出されてもよい。
【0079】
例えば、交通密度算出部1412は、学習パラメータ記憶部127からKVパラメータを取得し、道路上のある対象区間における交通密度を、その対象区間における速度と、KVパラメータによって規定されるKV関係式とに基づいて算出してもよい。
【0080】
より詳細に、交通密度算出部1412は、渋滞流である区間、すなわち、速度が混雑流判定速度641(閾値)以下である対象区間における交通密度を、その対象区間における速度とKV関係式とに基づいて算出してもよい。
【0081】
また、交通密度算出部1412は、道路上の対象区間に応じた地点を推定地点とし、対象区間における交通密度を、推定地点における交通量および対象区間における速度に基づいて算出してもよい。例えば、推定地点は、対象区間の起点などであってよい。
【0082】
より詳細に、交通密度算出部1412は、速度が混雑流判定速度641を上回る対象区間における交通密度を、推定地点における交通量および対象区間における速度に基づいて算出してもよい。例えば、交通密度算出部1412は、推定地点における交通量を、交通量算出部133によって算出された計測地点における交通量と、計測地点からその対象区間までの区間ごとの速度とに基づいて算出し得る。例えば、計測地点は、対象区間から上流のフリーフローアンテナ位置(例えば、対象区間から最も近い上流のフリーフローアンテナ位置など)であってよい。
【0083】
図11および
図12を参照しながら、推定地点における交通量および対象区間における速度に基づいて対象区間における交通密度を算出する手法の例について説明する。
【0084】
図11は、推定地点に到達した車両の計測地点における通過時刻の算出例を説明するための図である。
図11に示された例において、横軸は、道路上における距離(右方向が道路の下流方向)を示し、縦軸は、時刻(下方向が時間の経過方向)を示す。プローブデータにおける区間(キロポスト間)および単位時間(すなわち、通過時刻から当該通過時刻の直前の通過時刻までの時間)に対応する速度が、その区間および単位時間に対応する矩形(時空間範囲)内の色の濃さによって示されている。この例では、矩形内の色が濃いほど速度が低くなっている。
【0085】
交通密度算出部1412は、それぞれの区間および単位時間に対応する速度に基づいて、推定地点および推定地点における通過時刻から、上流および過去に向かって計測地点までの軌跡を算出する。より詳細に、交通密度算出部1412は、推定地点および推定地点における時刻から、それぞれの区間および単位時間に対応する速度に応じた傾きの直線によって矩形内を移動し、矩形の境界においては隣接し合う矩形間を移動するように軌跡を算出する。
【0086】
これによって、交通密度算出部1412は、軌跡が到達した計測地点における時刻を、計測地点における通過時刻として得ることができる。
図11を参照すると、2台の車両の軌跡が描かれている。ここで、2台の車両の推定地点への到達時刻間における交通量と、その2台の車両の計測地点における通過時刻間における交通量とは一致すると見なされ得る。
【0087】
図12は、計測地点における交通量から推定地点における交通量を算出する例を説明するための図である。
図12を参照すると、推定地点への到達時刻間における交通量Qと、計測地点における通過時刻間における交通量Q’とが示されている。ここで、計測地点における通過時刻間における交通量は、交通量データ記憶部124に保存されている。したがって、交通密度算出部1412は、交通量データ記憶部124から計測地点における通過時刻間における交通量Q’を取得し得る。
【0088】
交通密度算出部1412は、計測地点における通過時刻間における交通量Q’から、推定地点への到達時刻差と計測地点における通過時刻差との比によって、推定地点における交通量を算出し得る。例えば、計測地点における通過時刻差をt1とし、推定地点への到達時刻差をt2とすると、交通密度算出部1412は、計測地点における通過時刻間における交通量Q’に対して、t1/t2を乗じることによって、推定地点における交通量Qを算出し得る。以下では、このように計測地点における交通量Q’から推定地点における交通量Qを算出する手法を「車両追跡」による交通量算出手法とも言う。
【0089】
図13は、交通密度算出部1412によって実行される交通密度算出処理の例を示すフローチャートである。まず、交通密度算出部1412は、あらかじめ設定されたシミュレーション実行時間間隔621で、交通密度の算出に用いたプローブデータの前回の取得時刻よりも後の時刻に記憶されたプローブデータ(区間ごとの速度および通過時刻)をプローブデータ記憶部122から取得する(S21)。
【0090】
また、交通密度算出部1412は、シミュレーション実行時間間隔621に、交通密度の算出に用いた交通量データの前回の取得時刻よりも後の時刻に記憶された、フリーフローアンテナ位置ごとの交通量データ(交通量および計測時刻)を交通量データ記憶部124から取得する(S22)。交通密度算出部1412は、対象区間の速度が渋滞流の速度、すなわち、混雑流判定速度641以下の速度であるかを判定する(S23)。
【0091】
交通密度算出部1412は、対象区間の速度が渋滞流の速度(すなわち、混雑流判定速度641以下である速度)である場合(S23において「YES」)、その対象区間における速度とKV関係式とに基づいてその対象区間における交通密度を算出する(S24)。
【0092】
一方、交通密度算出部1412は、対象区間の速度が自由流の速度(すなわち、混雑流判定速度641を上回る速度)である場合(S23において「NO」)、車両追跡により計測地点における交通量を算出し、算出した計測地点における交通量と、計測地点からその対象区間までの区間ごとの速度とに基づいて、その対象区間における交通密度を算出する(S25)。交通密度算出部1412は、交通量の計測時刻と区間と交通密度とが対応付けられた交通密度データを、交通密度データ記憶部125に出力する。
【0093】
(交通密度データ記憶部125)
交通密度データ記憶部125は、交通密度算出部1412から出力された交通密度データを記憶する。
【0094】
(学習用の交通密度)
上記のようにして、時刻と区間と交通密度とが対応付けられた交通密度データが記憶される。以下の学習においては、時刻とセルと交通密度とが対応付けられた交通密度データが用いられる。
【0095】
ここで、区間の幅は、走行履歴区間幅612に規定されている。一方、セルの幅は、シミュレーション実行セル幅622に規定されている。
【0096】
セルの幅は、区間の幅と同じであってもよいし、区間の幅と異なっていてもよい。例えば、区間の幅が100mであるのに対し、セルの幅は500mなどであってもよい。この例のように、セルの幅が、区間の幅と異なる場合には、学習部141は、セルに属する複数の区間を特定し、当該複数の区間それぞれに対応する交通密度に対する統計処理を施し、統計処理後の交通密度を、セルに対応する交通密度として取得してもよい。
【0097】
区間に対応する時間間隔は、走行履歴時間幅611に規定されている。一方、セルに対応する時間間隔は、シミュレーション実行時間間隔621に規定されている。
【0098】
セルに対応する時間間隔は、区間に対応する時間間隔と同じであってもよいし、区間に対応する時間間隔と異なっていてもよい。例えば、区間に対応する時間間隔が1分であるのに対し、セルに対応する時間間隔は5分などであってもよい。この例のように、セルに対応する時間間隔が、区間に対応する時間間隔と異なる場合には、学習部141は、セルに対応する時間に属する、区間に対応する時間を特定し、特定した時間に対応する交通密度に対して統計処理を施し、統計処理後の交通密度を、セルに対応する時間の交通密度として取得してもよい。
【0099】
図14は、学習に用いられる交通密度データを模式的に示した図である。
図14を参照すると、道路の上流側から下流側に向けて、セル1~nが示されている。セル1の上流端は、道路の起点であり、セルnの下流端は、道路の終点である。iは、1≦i≦Nを満たす任意の整数であり、セルiは、対象セルである。Δtは、セルに対応する時間間隔である。mは、1以上の整数である。
【0100】
また、
図14を参照すると、時刻tにおける、セル1~nの交通密度K
1(t)~K
n(t)(台/km)が示されている。例えば、時刻tは、現在時刻であってよいが、時刻tは、現在時刻に限定されない。同様に、時刻t-Δtにおける、セル1~nの交通密度K
1(t-Δt)~K
n(t-Δt)が示され、時刻t-mΔtにおける、セル1~nの交通密度K
1(t-mΔt)~K
n(t-mΔt)が示されている。
【0101】
学習部141による学習においては、時刻t~t-mΔtと、セル1~Nと、交通密度Kとが対応付けられた交通密度データが用いられる。学習部141による学習の例としては、パーセンタイル学習部1414によるパーセンタイル学習が挙げられる。以下では、このようなパーセンタイル学習について説明する。
【0102】
(パーセンタイル学習部1414)
パーセンタイル学習部1414は、学習部の例として機能し、パーセンタイル学習を行う。ここで、
図15~
図17を参照しながら、パーセンタイル学習の概要について説明する。
【0103】
図15は、パーセンタイル学習の概要を説明するための図である。
図15を参照すると、時刻と起点からの距離とに対応する速度が、時刻と起点からの距離とに対応する矩形領域の色の濃さによって示されている。起点からの距離は、セルに該当し得る。なお、以下においては、時刻と起点からの距離とに対応する矩形領域(時空間範囲)を「メッシュ」とも言う。
【0104】
例えば、パーセンタイル学習によれば、起点からの距離C1における交通密度の時間変化G1が、学習モデルデータ730の例として、学習パラメータ記憶部127に記憶される。同様に、起点からの距離C2における交通密度の時間変化G2が、学習モデルデータ730の例として、学習パラメータ記憶部127に記憶され、起点からの距離C3における交通密度の時間変化G3が、学習モデルデータ730の例として、学習パラメータ記憶部127に記憶される。
【0105】
図16は、学習モデルデータ730の例としての平均交通密度パーセンタイルデータ731の例を示す図である。
図16に示されるように、平均交通密度パーセンタイルデータ731は、「地点間」と「時刻」と「平均交通密度」と「平均交通密度学習パーセンタイル値」とが対応付けられて構成される。平均交通密度パーセンタイルデータ731に含まれるこれらの各項目については、
図18を参照しながら説明する。
【0106】
図17は、学習モデルデータ730の例としてのメッシュ交通密度パーセンタイルデータ732の例を示す図である。
図17に示されるように、メッシュ交通密度パーセンタイルデータ732は、「セル」と「時刻」と「交通密度」と「メッシュ交通密度学習パーセンタイル値」とが対応付けられて構成される。メッシュ交通密度パーセンタイルデータ732に含まれるこれらの各項目については、
図18を参照しながら説明する。
【0107】
図18は、パーセンタイル学習部1414によるパーセンタイル学習の動作の例を示すフローチャートである。
図18を参照しながら、パーセンタイル学習部1414によるパーセンタイル学習の動作の例について説明する。
【0108】
まず、パーセンタイル学習部1414は、あらかじめ設定された学習時刻に現在時刻(第3の時刻)が達すると、交通密度データ記憶部125から、現在時刻を基準とした所定の対象時間分の交通密度データを、新規の交通密度データとして取得する(S31)。新規の交通密度データは、まだ学習に用いられていない交通密度データである。なお、基準となる第3の時刻は、現在時刻でなくてもよい。基準となる第3の時刻は、過去の時刻であってもよい。
【0109】
例えば、学習時刻は、毎週月曜日の2時であってもよい。このとき、所定の対象時間は、1週間であってよい。しかし、学習時刻および所定の対象時間それぞれの具体的な値は限定されない。また、以下では、現在時刻を基準とした所定の対象時間が、現在時刻から所定の対象時間だけ遡った時刻を開始時点とし、現在時刻を終了時点とした時間である場合を主に想定する。しかし、現在時刻を基準とした所定の対象時間は、かかる時間に限定されない。
【0110】
パーセンタイル学習部1414は、交通密度データ記憶部125から取得した新規の交通密度データに基づいて、あらかじめ設定された二つの地点間ごとのあらかじめ設定された処理対象時間幅の平均交通密度を、あらかじめ設定された処理時間間隔で算出する(S32)。パーセンタイル学習部1414は、平均交通密度の算出に用いられた交通密度に対応する「地点間」および「時刻」と、平均交通密度とを対応付けて学習パラメータ記憶部127に記憶させる。
【0111】
例えば、地点間は、二つのインターチェンジ間であってもよい。しかし、二つの地点間は、かかる例に限定されない。また、処理対象時間幅は、計測時刻から所定の時間幅(例えば、30分など)だけ遡った時刻から計測時刻までの時間幅であってもよい。しかし、処理対象時間幅は、かかる例に限定されない。また、処理時間間隔は、5分間隔であってもよい。しかし、処理時間間隔は、かかる例に限定されない。
【0112】
なお、平均交通密度パーセンタイルデータ731(
図16)では、「地点間」に、平均交通密度の算出に用いられた交通密度に対応するセルの例として、対象セルiが属する「セルh~j」が記録されている。また、「時刻」に、平均交通密度の算出に用いられた交通密度に対応する時間の例として、現在時刻tが記録されている。また、「平均交通密度」に、「32台/km」「40台/km」が記録されている。
【0113】
パーセンタイル学習部1414は、地点間が同一、かつ、時間が同一、かつ、当該時間が属する日の種類が同一である平均交通密度が同じグループになるように平均交通密度を分類する。日の種類は、曜日であってもよいし、曜日属性(例えば、平日、休前日、3連休初日など)であってもよい。そして、パーセンタイル学習部1414は、グループごとに、平均交通密度の全体に対する各々の平均交通密度のパーセンタイル値(以下、「平均交通密度学習パーセンタイル値」とも言う。)を算出する(S34)。
【0114】
より具体的に、パーセンタイル学習部1414は、グループごとに、平均交通密度の全体を平均交通密度の小さい順に並び替える。そして、パーセンタイル学習部1414は、グループごとに、各々の平均交通密度に対して、平均交通密度の小さい順に平均交通密度学習パーセンタイル値を割り当てる。例えば、最も小さい平均交通密度に対しては、0パーセンタイル値、最も大きい平均交通密度に対しては、100パーセンタイル値、中央値を取る平均交通密度に対しては、50パーセンタイル値が割り当てられる。
【0115】
パーセンタイル学習部1414は、地点間と時刻と平均交通密度とに平均交通密度学習パーセンタイル値を対応付けて、学習パラメータ記憶部127に記憶させる(S35)。
【0116】
平均交通密度パーセンタイルデータ731(
図16)では、「平均交通密度」=「32台/km」に対応する「平均交通密度学習パーセンタイル値」の例として、「32台/km」のパーセンタイル値「41」が記録されている。また、「平均交通密度」=「40台/km」に対応する「平均交通密度学習パーセンタイル値」の例として、「40台/km」のパーセンタイル値「42」が記録されている。
【0117】
さらに、パーセンタイル学習部1414は、交通密度データ記憶部125から取得した新規の交通密度データに基づいて、各々の交通密度を、セルが同一、かつ、時刻が属する日の種類が同一である交通密度が同じグループになるように分類する。そして、パーセンタイル学習部1414は、グループごとに、交通密度の全体に対する各々の交通密度のパーセンタイル値(以下、「メッシュ交通密度学習パーセンタイル値」とも言う。)を算出する(S36)。
【0118】
パーセンタイル学習部1414は、地点間と時刻と平均交通密度と平均交通密度学習パーセンタイル値とに、セルとメッシュ交通密度学習パーセンタイル値とを対応付けて、学習パラメータ記憶部127に記憶させる。
【0119】
メッシュ交通密度パーセンタイルデータ732(
図17)では、「交通密度」=「34台/km」に対応する「メッシュ交通密度学習パーセンタイル値」の例として、「34台/km」のパーセンタイル値「38」が記録されている。また、「交通密度」=「38台/km」に対応する「メッシュ交通密度学習パーセンタイル値」の例として、「38台/km」のパーセンタイル値「40」が記録されている。
【0120】
(予測対象の交通密度および速度)
上記のようにして、パーセンタイル学習によって学習モデルデータ730が生成される。推論部142は、この学習モデルデータ730を用いた推論によって、現在時刻より後の時刻の交通密度および速度を予測し得る。
【0121】
図19は、予測対象の交通密度および速度を模式的に示した図である。
図19を参照すると、学習に用いられる交通密度データを模式的に示した図(
図14)と同様に、時刻tにおける、セル1~nの交通密度K
1(t)~K
n(t)(台/km)が示されている。例えば、時刻tは、現時刻であってよいが、時刻tは、現時刻に限定されない。
【0122】
同様に、時刻t+Δtにおける、セル1~nの交通密度K1(t+Δt)~Kn(t+Δt)が示され、時刻t+MΔtにおける、セル1~nの交通密度K1(t+MΔt)~Kn(t+MΔt)が示されている。
【0123】
推論部142による推論においては、時刻t+Δt~t+MΔt(第4の時刻)と、セル1~Nとに対応する、交通流特性が予測される。以下では、このような交通流特性の予測について説明する。なお、交通流特性の例としては、交通密度Kおよび速度Vの少なくとも一方が挙げられる。
【0124】
(推論部142による予測の概要)
続いて、推論部142による予測の概要について説明する。推論部142は、上記のようにして生成された、学習モデルデータ730に基づいて、時刻t+Δt~t+MΔtと、セル1~Nとに対応する、交通流特性を予測する。
【0125】
(推論部142)
図20は、本発明の実施形態に係る推論部142によるパーセンタイル予測の動作の例を示すフローチャートである。
図20を参照しながら、本発明の実施形態に係る推論部142によるパーセンタイル予測の動作の例について説明する。
【0126】
まず、推論部142は、プローブデータ記憶部122から、現在時刻(第1の時刻)を基準とした所定の対象時間分(第1の時間分)のプローブデータを、最新のプローブデータとして取得する。さらに、推論部142は、交通量データ記憶部124から、現在時刻を基準とした所定の対象時間分の交通量データを、最新の交通量データとして取得する(S51)。なお、基準となる第1の時刻は、現在時刻でなくてもよい。基準となる第1の時刻は、過去の時刻であってもよい。
【0127】
例えば、所定の対象時間は、1時間であってよい。しかし、所定の対象時間それぞれの具体的な値は限定されない。また、以下では、現在時刻を基準とした所定の対象時間が、現在時刻から所定の対象時間だけ遡った時刻を開始時点とし、現在時刻を終了時点とした時間である場合を主に想定する。しかし、現在時刻を基準とした所定の対象時間は、かかる時間に限定されない。
【0128】
続いて、推論部142は、取得した最新のプローブデータおよび最新の交通量データに基づいて、あらかじめ設定された二つの地点間ごとの各セルの交通密度を算出する(S52)。なお、ここでの交通密度の算出に対しても、
図13を参照しながら説明した、交通密度を算出する手法が適用され得る。
【0129】
続いて、推論部142は、現在時刻を基準とした所定の対象時間分の交通密度に基づいて、地点間ごとのあらかじめ設定された処理対象時間幅の平均交通密度(第1の平均交通密度)を算出する。本発明の実施形態においては、推論部142は、現在時刻に応じた処理対象時間幅の平均交通密度を算出する(S53)。
【0130】
例えば、処理対象時間幅は、現在時刻から所定の時間幅(例えば、30分など)だけ遡った時刻から現在時刻までの時間幅であってもよい。しかし、処理対象時間幅は、かかる例に限定されない。
【0131】
続いて、推論部142は、拡張処理部1422による拡張処理を実行する(S54)。かかる拡張処理によって、学習パラメータ記憶部127によって記憶された、学習モデルデータ730の平均交通密度および交通密度のうち、現在時刻に一致する時刻に対応する平均交通密度および交通密度が更新される。拡張処理部1422による拡張処理の詳細については、
図21~
図25を参照しながら、後に詳細に説明する。
【0132】
続いて、推論部142は、算出した平均交通密度と、学習パラメータ記憶部127によって記憶された、平均交通密度と、平均交通密度学習パーセンタイル値と、メッシュ交通密度学習パーセンタイル値とに基づいて、現在時刻より後の時刻の交通密度を予測する。
【0133】
例えば、推論部142は、基準時刻と一致する時刻に対応付けられ、平均交通密度を算出した地点間と同一の地点間に対応付けられた平均交通密度を、学習パラメータ記憶部127から取得する。
【0134】
あるいは、推論部142は、現在時刻と一致する時刻に対応付けられ、かつ、現在時刻が属する日の種類と同一の種類の日に属する時刻にさらに対応付けられた平均交通密度を、学習パラメータ記憶部127から取得してもよい。
【0135】
そして、推論部142は、算出した平均交通密度と、取得した平均交通密度とに基づく予測パーセンタイル値を得る(S55)。
【0136】
より具体的に、推論部142は、算出した平均交通密度に最も近い、取得した平均交通密度に対応付けられた平均交通密度学習パーセンタイル値を、予測パーセンタイル値として特定してもよい。
【0137】
あるいは、推論部142は、算出した平均交通密度よりも大きく、かつ、算出した平均交通密度に最も近い、取得した平均交通密度を上側の平均交通密度として算出してもよい。さらに、推論部142は、算出した平均交通密度よりも小さく、かつ、算出した平均交通密度に最も近い、取得した平均交通密度を下側の平均交通密度として算出してもよい。そして、推論部142は、上側の平均交通密度と下側の平均交通密度とに基づく線形補間により予測パーセンタイル値を算出してもよい。
【0138】
推論部142は、現在時刻から所定の設定時間後(例えば、2時間後など)までの、平均交通密度を算出した地点間と同一の地点間に対応付けられた、時刻とセルとメッシュ交通密度学習パーセンタイル値とを、学習パラメータ記憶部127から取得する。
【0139】
あるいは、推論部142は、現在時刻から所定の設定時間後(例えば、2時間後など)までの、平均交通密度を算出した地点間と同一の地点間に対応付けられ、かつ、現在時刻が属する日の種類と同一の種類の日に属する時刻に対応付けられた、時刻とセルとメッシュ交通密度学習パーセンタイル値とを、学習パラメータ記憶部127から取得してもよい。
【0140】
推論部142は、学習パラメータ記憶部127から取得した、時刻とセルとメッシュ交通密度学習パーセンタイル値とに基づいて、予測パーセンタイル値に応じたメッシュ交通密度学習パーセンタイル値を、シミュレーション実行セル幅のセルごとに、シミュレーション実行時間間隔で得る。
【0141】
例えば、推論部142は、予測パーセンタイル値に最も近いメッシュ交通密度学習パーセンタイル値を得てもよい。
【0142】
あるいは、推論部142は、予測パーセンタイル値よりも大きく、かつ、予測パーセンタイル値に最も近いメッシュ交通密度学習パーセンタイル値を、上側のメッシュ交通密度学習パーセンタイル値として算出してもよい。さらに、推論部142は、予測パーセンタイル値よりも小さく、かつ、予測パーセンタイル値に最も近いメッシュ交通密度学習パーセンタイル値を、下側のメッシュ交通密度学習パーセンタイル値として算出してもよい。そして、推論部142は、上側の平均交通密度と下側の平均交通密度とに基づく線形補間または調和平均による線形補間により予測パーセンタイル値を算出してもよい。
【0143】
推論部142は、予測部の例として機能し、このようにして得たメッシュ交通密度学習パーセンタイル値に対応付けられた交通密度を、シミュレーション実行セル幅のセルごと、かつ、シミュレーション実行時間間隔の予測交通密度として得る。また、推論部142は、予測交通密度に対応する予測速度を、シミュレーション実行セル幅のセルごと、かつ、シミュレーション実行時間間隔で算出し得る(S56)。例えば、推論部142は、予測交通密度に対応する予測速度を、上記の式(3)によって示されるKV関係式により算出してもよい。
【0144】
推論部142は、予測結果を予測結果記憶部128に出力する(S57)。
【0145】
(拡張処理部1422)
図21は、拡張処理部1422による拡張処理の詳細を示すフローチャートである。なお、かかる拡張処理は、推論部142によるパーセンタイル予測におけるS54(
図20)から呼び出される。
図21を参照しながら、拡張処理部1422による拡張処理の詳細について説明する。
【0146】
拡張処理部1422は、S53(
図20)において算出された平均交通密度を取得するとともに、学習モデルデータ730から平均交通密度を取得する。拡張処理部1422は、判定部の例として機能し、算出された平均交通密度に基づいて、渋滞時間(第1の渋滞時間)が存在するか否かを判定する。より具体的に、拡張処理部1422は、算出された平均交通密度が所定の値以上であるか否かにより、渋滞時間が存在するか否かを判定する。
【0147】
一例として、所定の値は、あらかじめ決められた閾値である。すなわち、拡張処理部1422は、算出された平均交通密度が閾値以上であるか否かにより、渋滞時間が存在するか否かを判定する(S61)。しかし、所定の値は、かかる例に限定されない。例えば、所定の値は、学習モデルデータ730から取得した平均交通密度のうち、自由流の交通密度から算出した平均交通密度などであってもよい。
【0148】
拡張処理部1422は、算出された平均交通密度が閾値未満である場合(S61において「NO」)、渋滞時間が存在しないとして、処理を終了する。一方、拡張処理部1422は、算出された平均交通密度が閾値以上である場合(S61において「YES」)、算出された平均交通密度が学習モデルデータ730から取得した全時刻における平均交通密度の最大値よりも小さいか否かを判定する(S62)。
【0149】
算出された平均交通密度が、学習モデルデータ730から取得した全時刻における平均交通密度の最大値以上である場合には(S62において「NO」)、距離方向への拡張も行わなければ予測精度が向上しないと考えられる。そこで、かかる場合には、拡張処理部1422は、時空間拡張部1424による時空間拡張処理(S64)を行い、処理を終了する。時空間拡張処理(S64)の詳細については、
図22および
図23を参照しながら、後に詳細に説明する。
【0150】
一方、算出された平均交通密度が、学習モデルデータ730から取得した全時刻における平均交通密度の最大値より小さい場合には(S62において「YES」)、距離方向への拡張が行われなくても予測精度が向上すると考えられる。かかる場合には、拡張処理部1422は、算出した平均交通密度が、学習モデルデータ730から取得した、当該平均交通密度に対応する時刻と同時刻に対応する平均交通密度(第3の平均交通密度)の最大値以下、かつ、最小値以上であるか否かを判定する(S63)。
【0151】
算出された平均交通密度が、学習モデルデータ730から取得した、当該平均交通密度に対応する時刻と同時刻に対応する平均交通密度の最大値以下、かつ、最小値以上である場合には(S63において「YES」)、時間方向への拡張が行われなくても予測精度がある程度担保できることが想定される。そこで、かかる場合には、拡張処理部1422は、処理を終了する。
【0152】
一方、算出された平均交通密度が、学習モデルデータ730から取得した、当該平均交通密度に対応する時刻と同時刻に対応する平均交通密度の最大値を上回り、かつ、最小値未満である場合には(S63において「NO」)、時間方向への拡張が行われなければ予測精度が向上しないと考えられる。そこで、かかる場合には、時間拡張部1426による時間拡張処理(S65)を行い、処理を終了する。時間拡張処理(S65)の詳細については、
図24および
図25を参照しながら、後に詳細に説明する。
【0153】
(時空間拡張部1424)
図22は、時空間拡張部1424による時空間拡張処理の概要を示す図である。
図23は、時空間拡張部1424による時空間拡張処理の詳細を示すフローチャートである。なお、かかる拡張処理は、拡張処理部1422による拡張処理におけるS64(
図21)から呼び出される。
図22および
図23を参照しながら、時空間拡張部1424による時空間拡張処理の詳細について説明する。
【0154】
図23に示されるように、時空間拡張部1424は、交通密度データ記憶部125から交通密度データ(第2の交通密度)を取得する(S71)。交通密度データは、時刻ごと、かつ、セルごとの交通密度である。
図22を参照すると、時空間拡張部1424によって取得される交通密度データG1が示されている。交通密度データG1において、色が濃い時空間範囲ほど交通密度が高い時空間範囲である。時空間拡張部1424は、このような交通密度の渋滞時間(第2の渋滞時間)に応じた時空間領域を時間方向および距離方向に拡張することに基づいて、予測用データを生成する。
【0155】
時空間拡張部1424は、渋滞流域においてその前後で速度変化が生じる地点の最上流地点を基準地点L1(所定の地点)として取得する。なお、基準地点L1としては、インターチェンジ(IC)、ジャンクション(JCT)、サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)、または、車線数変更地点などが挙げられる。このような基準地点L1の場所は、あらかじめ交通流予測装置1の内部または外部の図示しない記憶部に登録されていてもよい。また、時空間拡張部1424は、基準地点L1における交通密度から変換される速度が混雑流判定速度641以下の速度となる時間を渋滞時間(第2の渋滞時間)として取得する(S72)。
【0156】
交通密度データG1には、「(基準地点L1における)渋滞時間」「(渋滞時間の)開始時刻」および「(渋滞時間の)終了時刻」が示されている。また、時空間領域R11は、基準地点L1における渋滞時間内、かつ、基準地点L1よりも上流に位置する時空間領域(第1の領域)である。時空間領域R21は、基準地点L1における渋滞時間内、かつ、基準地点L1よりも下流に位置する時空間領域(第2の領域)である。
【0157】
さらに、時空間領域R31aは、基準地点L1における渋滞時間の前の時間に該当する時空間領域(第3の領域)である。時空間領域R31bは、基準地点L1における渋滞時間の後の時間に該当する時空間領域(第4の領域)である。時空間領域R31aと時空間領域R11と時空間領域R21と時空間領域R31bとを合わせた全体領域の時間幅は、第2の時間である。
【0158】
時空間拡張部1424は、時空間領域R11を距離方向(上流方向)に拡張することに基づいて、交通密度データG2における距離方向拡張後の時空間領域R12を生成する(S73)。例えば、距離方向への拡張により、基準地点L1が0m地点の場合、0m・500m・1000m地点のデータが0m・750m・1500m地点のデータとされる。
【0159】
続いて、時空間拡張部1424は、渋滞時間内の時空間領域(時空間領域R12と領域R21)を時間方向に拡張することに基づいて、時間方向拡張後の時空間領域R23および時空間領域R13を生成する(S74)。例えば、時間方向への拡張により、基準地点L1における渋滞時間が12:00~13:00の場合、12:00~12:30~13:00時点のデータが11:45~12:30~13:15時点のデータとされる。
【0160】
続いて、時空間拡張部1424は、渋滞時間外の時空間領域(時空間領域R31aおよび時空間領域R31b)を時間方向に平行移動させる(S75)。より具体的に、時空間拡張部1424は、時空間領域R31aを時間方向拡張後の時空間領域R23および時空間領域R13の前の時間にシフトし、時空間領域R31bを時間方向拡張後の時空間領域R23および時空間領域R13の後の時間にシフトすることに基づいて、交通密度データG3を生成する。例えば、時間方向への平行移動により、渋滞発生前の11:45,11:50,11:55の時点のデータが11:30,11:35,11:40時点のデータとされる。
【0161】
続いて、時空間拡張部1424は、交通密度データG3に対して、線形補間などの既存手法を施すことによって、交通密度データG3を調整して、あらかじめ設定されたシミュレーション実行時間間隔621(例えば、5分間隔など)で、シミュレーション実行セル幅622(例えば、500mなど)ごとの予測用データを生成する(S76)。時空間拡張部1424は、予測用データを交通密度データ記憶部125に記憶させる。
【0162】
(時間拡張部1426)
図24は、時間拡張部1426による時間拡張処理の概要を示す図である。
図25は、時間拡張部1426による時間拡張処理の詳細を示すフローチャートである。なお、かかる拡張処理は、拡張処理部1422による拡張処理におけるS65(
図21)から呼び出される。
図24および
図25を参照しながら、時間拡張部1426による時間拡張処理の詳細について説明する。
【0163】
図24を参照すると、「時刻調整前」における過去の平均交通密度H11と、「時刻調整後」における過去の平均交通密度H12とが示されている。また、現在の平均交通密度H21も示されている。「渋滞開始」は、渋滞開始時刻に該当し、「渋滞解消」は、渋滞終了時刻に該当する。
【0164】
「時間調整前」においては、現在の平均交通密度H21が、現在の平均交通密度H21に対応する時刻と同時刻における過去の平均交通密度H11の最大値よりも大きくなってしまっている。そのため、「時間調整前」においては、「時刻調整前」における過去の平均交通密度H11と現在の平均交通密度H21を用いて予測を行ったとしても精度が向上しない。
【0165】
一方、「時間調整後」においては、過去の平均交通密度H11の「渋滞開始」から「渋滞解消」までが、「渋滞解消」を基準に現在の平均交通密度H21に向かって伸張されている。これによって、現在の平均交通密度H21が、現在の平均交通密度H21に対応する時刻と同時刻における過去の平均交通密度H12の最小値以上、かつ、最大値以下となっている。そのため、「時刻調整後」の過去の平均交通密度H12と現在の平均交通密度H21を用いて予測を行うことにより、予測精度が向上する。
【0166】
図25に示されるように、まず、時間拡張部1426は、現在時刻が属する日の種類と同一の種類の日に属する時刻に対応付けられた学習モデルデータ730を学習パラメータ記憶部127から取得する。時間拡張部1426は、このような学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度および交通密度それぞれの渋滞時間(第2の渋滞時間)に応じた時空間領域を時間方向に拡張することに基づいて、予測用データを生成する。
【0167】
時間拡張部1426は、取得した学習モデルデータ730に基づいて、渋滞開始時刻および渋滞終了時刻を取得する(S81)。なお、時間拡張部1426は、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度の各渋滞の開始時刻を統計処理して得られた代表値(例えば、中央値など)を渋滞開始時刻として算出してもよい。同様に、時間拡張部1426は、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度の各渋滞の終了時刻を統計処理して得られた代表値(例えば、中央値など)を渋滞終了時刻として算出してもよい
【0168】
続いて、時間拡張部1426は、現在時刻の前から現在時刻にかけて平均交通密度が増加しているか否かを判定する。より具体的に、時間拡張部1426は、現在時刻の平均交通密度が直近(例えば、過去30分間)において増加傾向にあるか否かを判定する(S82)。これにより、渋滞が発生しているか、渋滞が延伸しているかが判定される。
【0169】
現在時刻の平均交通密度が増加傾向にある場合(S82において「YES」)、渋滞が発生していると考えられる。そのため、時間拡張部1426は、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度および交通密度のうちを、渋滞終了時刻を基準として渋滞開始時刻を現在時刻と一致するまで時間方向に伸張する(S83)。これによって、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度および交通密度のうち、渋滞開始時刻から渋滞終了時刻までの渋滞領域(渋滞時間に応じた時空間領域)が時間方向に拡張される。そして、S85に動作が移行される。
【0170】
一方、現在時刻の平均交通密度が減少傾向にある場合(S82において「NO」)、渋滞が延伸していると考えられる。そのため、時間拡張部1426は、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度および交通密度のうち、渋滞開始時刻を基準として渋滞終了時刻を現在時刻と一致するまで時間方向に伸張する(S84)。これによって、取得した学習モデルデータ730に含まれる平均交通密度および交通密度のうち、渋滞開始時刻から渋滞終了時刻までの渋滞領域(渋滞時間に応じた時空間領域)が時間方向に拡張される。そして、S85に動作が移行される。
【0171】
続いて、時間拡張部1426は、時間方向拡張後の平均交通密度および交通密度に対して、線形補間などの既存手法を施すことによって、時間方向拡張後の平均交通密度および交通密度を調整して、あらかじめ設定されたシミュレーション実行時間間隔621(例えば、5分間隔など)で、シミュレーション実行セル幅622(例えば、500mなど)ごとの予測用データを生成する(S85)。予測用データは、S55(
図20)における予測パーセンタイル値の算出に用いられる。
【0172】
(予測結果記憶部128)
予測結果記憶部128は、推論部142から出力された予測結果を記憶する。
【0173】
以上、本発明の実施形態の詳細について説明した。
【0174】
(1-2.効果)
以上に説明したように、本発明の実施形態およびその変形例によれば、走行履歴データと交通量データとに基づいて、交通密度データが算出され、交通密度データに基づいて、あらかじめ設定された時間幅および区間の平均交通密度が算出される。また、記憶されている過去の交通密度、平均交通密度に基づいて学習パーセンタイル値が算出され、リアルタイムに取得された最新データから平均交通密度が算出される。
【0175】
このとき、平均交通密度が学習データから逸脱しているかが判定され、平均交通密度が学習データから逸脱している場合は、学習モデルデータに対してデータ拡張が適用される。そして、データ拡張後の学習モデルデータと、算出された平均交通密度との比較に基づいて、予測パーセンタイル値が算出され、予測パーセンタイル値から速度が予測される。これによって、学習データから逸脱した交通流においても高い精度で交通流を予測できるという効果が得られる。
【0176】
図26は、学習データにはない渋滞長の実測結果と比較例による予測結果と本実施形態による予測結果とを比較して示す図である。
図26を参照すると、「比較例による予測」では、渋滞末尾付近に関する学習が不十分であるため、「比較例による予測」が「実測」とかけ離れてしまっていることが把握される。一方、「本実施形態による予測」では、距離方向に拡張された後のデータに基づいて予測が行われているため、「実測」に近い予測が行われていることが把握される。
【0177】
図27は、学習データにはない時間帯における渋滞発生の実測結果と比較例による予測結果と本実施形態による予測結果とを比較して示す図である。
図27を参照すると、「比較例による予測」では、早朝の時間帯付近に関する学習が不十分であるため、「比較例による予測」が「実測」とかけ離れてしまっていることが把握される。一方、「本実施形態による予測」では、時間方向に拡張された後のデータに基づいて予測が行われているため、「実測」に近い予測が行われていることが把握される。
【0178】
以上、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1およびその変形例が奏する効果について説明した。
【0179】
(2.ハードウェア構成例)
続いて、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1のハードウェア構成例について説明する。
【0180】
以下では、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1のハードウェア構成例として、情報処理装置900のハードウェア構成例について説明する。なお、以下に説明する情報処理装置900のハードウェア構成例は、交通流予測装置1のハードウェア構成の一例に過ぎない。したがって、交通流予測装置1のハードウェア構成は、以下に説明する情報処理装置900のハードウェア構成から不要な構成が削除されてもよいし、新たな構成が追加されてもよい。
【0181】
図28は、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1の例としての情報処理装置900のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ホストバス904と、ブリッジ905と、外部バス906と、インタフェース907と、入力装置908と、出力装置909と、ストレージ装置910と、通信装置911と、を備える。
【0182】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバス等から構成されるホストバス904により相互に接続されている。
【0183】
ホストバス904は、ブリッジ905を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス等の外部バス906に接続されている。なお、必ずしもホストバス904、ブリッジ905および外部バス906を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0184】
入力装置908は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバー等ユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等から構成されている。情報処理装置900を操作するユーザは、この入力装置908を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0185】
出力装置909は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、ランプ等の表示装置およびスピーカ等の音声出力装置を含む。
【0186】
ストレージ装置910は、データ格納用の装置である。ストレージ装置910は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。ストレージ装置910は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置910は、ハードディスクを駆動し、CPU901が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0187】
通信装置911は、例えば、ネットワークに接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置911は、無線通信または有線通信のどちらに対応してもよい。
【0188】
以上、本発明の実施形態に係る交通流予測装置1のハードウェア構成例について説明した。
【0189】
(3.まとめ)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0190】
1 交通流予測装置
112 プローブアンテナ
114 フリーフローアンテナ
121 走行履歴データ記憶部
122 プローブデータ記憶部
123 フリーフローデータ記憶部
124 交通量データ記憶部
125 交通密度データ記憶部
126 マスタデータ記憶部
127 学習パラメータ記憶部
128 予測結果記憶部
131 統計処理部
133 交通量算出部
140 処理部
141 学習部
1411 KVパラメータ作成部
1412 交通密度算出部
1414 パーセンタイル学習部
142 推論部
1422 拡張処理部
1424 時空間拡張部
1426 時間拡張部