(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165716
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】回転電機、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082128
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】花井 友
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA26
5H601BB20
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD25
5H601EE13
5H601EE19
5H601FF03
5H601GA02
5H601HH23
5H601JJ04
5H601KK10
5H601KK21
(57)【要約】
【課題】回転電機の鉄損を小さく抑えることができる技術を提供する。
【解決手段】回転電機100は、筒状のステータコア11と、ステータコア11の外周面であるコア外周面11aを覆う周壁部31を備えたケース3と、を備えた回転電機100であって、ケース3は、ステータコア11よりも線膨張係数が大きく、コア外周面11aの軸心に直交する方向を径方向Rとして、コア外周面11aと周壁部31の内周面である周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に配置された常温硬化型の接着剤40により、コア外周面11aと周壁内周面31aとが接着されて、ステータコア11がケース3に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のステータコアと、前記ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備えたケースと、を備えた回転電機であって、
前記ケースは、前記ステータコアよりも線膨張係数が大きく、
前記コア外周面の軸心に直交する方向を径方向として、
前記コア外周面と前記周壁部の内周面である周壁内周面との前記径方向の隙間に配置された常温硬化型の接着剤により、前記コア外周面と前記周壁内周面とが接着されて、前記ステータコアが前記ケースに固定されている、回転電機。
【請求項2】
前記コア外周面と前記周壁内周面との前記径方向の隙間の全周に、前記接着剤が配置されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記接着剤の硬化温度は、20℃以上30℃以下であり、
動作中の前記ステータコアの温度である動作中温度領域が、20℃以上180℃以下である請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
筒状のステータコアと、前記ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備え、前記ステータコアよりも線膨張係数が大きいケースと、を備えた回転電機を製造するための製造方法であって、
前記コア外周面の軸心に直交する方向を径方向として、
前記コア外周面と前記周壁部の内周面である周壁内周面との前記径方向の隙間に接着剤が配置された状態とした後、前記接着剤を加熱することなく常温で硬化させて前記コア外周面と前記周壁内周面とを接着することで、前記ステータコアを前記ケースに固定する工程を備える、回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のステータコアと、前記ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備えたケースと、を備えた回転電機、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の回転電機(10)では、ステータコア(16)の外周面であるコア外周面とケース(12)の周壁部の内周面である周壁内周面との間に、加熱硬化型の接着剤としての熱硬化性樹脂(20)を配置した状態とした後、ステータコア(16)及びケース(12)と共に熱硬化性樹脂(20)を所定の硬化温度まで加熱することで熱硬化性樹脂(20)を硬化させ、コア外周面と周壁内周面とを互いに固定することで、ステータコア(16)をケース(12)に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転電機(10)は、特許文献1に示されているように、ケース(12)の材料がアルミ合金とされ、ステータコア(16)の材料が鉄とされる構成が多く、当該構成の場合、ステータコア(16)よりもケース(12)のほうが線膨張係数が大きい。このため、熱硬化性樹脂(20)を硬化させるために加熱すると、ケース(12)がステータコア(16)よりも大きく膨張した状態となり、その状態で熱硬化性樹脂(20)が硬化することになる。
このようにしてケース(12)にステータコア(16)が固定された回転電機(10)では、常温状態やモータ駆動中等であって、熱硬化性樹脂(20)の硬化温度未満の状態では、熱硬化性樹脂(20)の硬化時よりもステータコア(16)とケース(12)との隙間が狭くなるため、熱硬化性樹脂(20)を介してステータコア(16)に対してケース(12)の収縮による圧縮応力が作用することになる。一般的に、ステータコア(16)に作用する圧縮応力が大きくなるに従って、回転電機(10)の動作中における鉄損が大きくなり易いことが知られている。そのため、特許文献1に記載された技術では、回転電機(10)の鉄損が大きくなり易いという課題があった。
【0006】
そこで、回転電機の鉄損を小さく抑えることができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、回転電機の特徴構成は、
筒状のステータコアと、前記ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備えたケースと、を備えた回転電機であって、
前記ケースは、前記ステータコアよりも線膨張係数が大きく、
前記コア外周面の軸心に直交する方向を径方向として、
前記コア外周面と前記周壁部の内周面である周壁内周面との前記径方向の隙間に配置された常温硬化型の接着剤により、前記コア外周面と前記周壁内周面とが接着されて、前記ステータコアが前記ケースに固定されている点にある。
【0008】
本構成によれば、コア外周面と周壁内周面とが常温硬化型の接着剤により接着された構造であるため、回転電機の製造工程においてステータコアとケースとを加熱することなく互いに接着することができる。これにより、常温状態でステータコアに対してケースからの径方向の圧縮応力が作用しないようにできる。また、回転電機の動作中に温度が常温より上昇した場合には、ケースの方がステータコアよりも線膨張係数が大きいため、ケースからステータコアに対して接着剤を介して引っ張り応力が作用するようにできる。従って、加熱硬化型の接着剤を用いる場合に比べて、ケースからステータコアへ作用する圧縮応力を小さく引っ張り応力を大きくすることができ、その結果、回転電機の動作中におけるステータコアでの鉄損を小さく抑えることができる。
【0009】
上記に鑑みた、回転電機の製造方法の特徴構成は、
筒状のステータコアと、前記ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備え、前記ステータコアよりも線膨張係数が大きいケースと、を備えた回転電機を製造するための製造方法であって、
前記コア外周面の軸心に直交する方向を径方向として、
前記コア外周面と前記周壁部の内周面である周壁内周面との前記径方向の隙間に接着剤が配置された状態とした後、前記接着剤を加熱することなく常温で硬化させて前記コア外周面と前記周壁内周面とを接着することで、前記ステータコアを前記ケースに固定する工程を備える点にある。
【0010】
本構成によれば、接着剤を加熱することなく常温で硬化させてコア外周面と周壁内周面とを接着するため、常温状態でステータコアに対してケースからの径方向の圧縮応力が作用しないようにできる。また、回転電機の動作中に温度が常温より上昇した場合には、ケースの方がステータコアよりも線膨張係数が大きいため、ケースからステータコアに対して接着剤を介して引っ張り応力が作用するようにできる。従って、加熱硬化型の接着剤を用いた場合に比べて、ケースからステータコアへ作用する圧縮応力を小さく引っ張り応力を大きくすることができ、その結果、回転電機の動作中におけるステータコアでの鉄損を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る回転電機の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る回転電機の径方向に沿う断面図
【
図3】常温時とモータ駆動時の実施形態に係る回転電機の軸方向に沿う一部断面図
【
図4】実施形態に係る回転電機の製造方法を示す作用図
【
図5】実施形態に係る回転電機の製造方法を示すフローチャート
【
図6】別実施形態に係る回転電機の製造方法を示す作用図
【
図7】別実施形態に係る回転電機の製造方法を示す作用図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、実施形態に係る回転電機100について、
図1から
図3を参照して説明する。本実施形態に係る回転電機100は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両の駆動力源として用いられる。
【0013】
図1に示すように、回転電機100は、ステータ1と、当該ステータ1に対して回転自在に設けられたロータ2と、ステータ1及びロータ2を収容するケース3と、を備えている。
【0014】
ステータ1は、円筒状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、当該ステータコア11の外周面としてのコア外周面11aを有している。本実施形態では、ステータコア11は、予め定められた枚数の磁性体板(ここでは、電磁鋼板111)が積層して構成されている。ステータコア11を構成する電磁鋼板111の材料は、例えば、鉄又はその合金が用いられる。
【0015】
ロータ2は、円筒状のロータコア21を備えている。本実施形態では、ロータ2は、ロータコア21と一体的に回転するように連結されたロータ軸22を更に備えている。
【0016】
以下の説明では、コア外周面11aの軸心(
図1における1点鎖線参照)に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、ステータ1をケース3に収容させる際の移動方向を基準として軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2を定義しており、ステータ1の移動方向の上流側を軸方向第1側L1とし、下流側を軸方向第2側L2としている。また、コア外周面11aの軸心に直交する方向を「径方向R」とする。そして、径方向Rにおいて、コア外周面11aの軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。また、コア外周面11aの軸心を周回する方向を「周方向C」とする。なお、コア外周面11aの軸心は、ロータ2の回転軸心に一致する。
【0017】
本実施形態では、回転電機100は、ラジアルギャップ型、より詳しくは、インナロータ型の回転電機である。そのため、ロータコア21が、ステータコア11に対して径方向内側R1に配置されている。また、ロータ軸22が、ロータコア21に対して径方向内側R1に配置されている。
【0018】
また、本実施形態では、回転電機100は、回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコア11には、ステータコイルが巻装されている。本実施形態では、ステータコイルは、ステータコア11に対して軸方向Lの両側に突出した一対のコイルエンド部12が形成されるように、ステータコア11に巻装されている。また、図示は省略するが、ロータコア21には、永久磁石が設けられている。
【0019】
ケース3は、円筒状であり、ステータコア11のコア外周面11aを覆う周壁部31を備えている。周壁部31は、当該周壁部31の内周面としての周壁内周面31aを有している。本実施形態では、周壁部31は、コア外周面11aと同軸の軸心を有する筒状に形成されている。そして、周壁部31は、コア外周面11aの全域を覆うように形成されている。コア外周面11aと周壁内周面31aとは、互いに圧接しないような直径に設定されている。本実施形態では、コア外周面11aと周壁内周面31aとの径方向Rの間に、規定のクリアランスが形成されている。ケース3の材料は、例えば、アルミニウム又はその合金が用いられる。
これまで説明してきように、ケース3及びステータコア11の材料を選択することにより、ケース3の線膨張係数は、ステータコア11の線膨張係数よりも大きくなっている。
【0020】
図2に示すように、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間には、周方向Cの全周に、接着剤40が配置されている。更に、当該接着剤40は、
図1に示すように、ステータコア11の軸方向Lの全域に配置されている。接着剤40の径方向Rでの厚みは、例えば、0.2mm以上1.0mm以下である。
接着剤40は、常温硬化型の接着剤として、硬化剤を添加することで強制的に化学反応を起こし硬化させる二液混合型(硬化剤混合型)の接着剤が用いられる。当該二液混合型(硬化剤混合型)の接着剤としては、二液エポキシ接着剤が好適に用いられる。
当該接着剤40の熱伝導率は、例えば、1W/m・K以上である。
【0021】
以上のように、回転電機100は、
筒状のステータコア11と、ステータコア11の外周面であるコア外周面11aを覆う周壁部31を備えたケース3と、を備えた回転電機100であって、
ケース3は、ステータコア11よりも線膨張係数が大きく、
コア外周面11aの軸心に直交する方向を径方向Rとして、
コア外周面11aと周壁部31の内周面である周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に配置された常温硬化型の接着剤40により、コア外周面11aと周壁内周面31aとが接着されて、ステータコア11がケース3に固定されている。
【0022】
本構成によれば、コア外周面11aと周壁内周面31aとが常温硬化型の接着剤40により接着された構造であるため、回転電機100の製造工程においてステータコア11とケース3とを加熱することなく互いに接着することができる。これにより、
図3に示すように、常温状態(
図3で上側に示す状態)でステータコア11に対してケース3からの径方向Rの圧縮応力、より詳細には径方向内側R1への圧縮応力が作用しないようにできる。また、回転電機100の動作中に温度が常温より上昇した場合(
図3で下側に示す場合)には、ケース3の方がステータコア11よりも線膨張係数が大きいため、ケース3からステータコア11に対して接着剤40を介して引っ張り応力、より詳細には径方向外側R2への引っ張り応力が作用するようにできる。従って、加熱硬化型の接着剤を用いる場合に比べて、ケース3からステータコア11へ作用する圧縮応力を小さく引っ張り応力を大きくすることができ、その結果、回転電機100の動作中におけるステータコア11での鉄損を小さく抑えることができる。
ここで、常温とは、10℃以上35℃以下の温度であり、好ましくは20℃以上30℃以下の温度を指す。当該実施形態に係る接着剤40の硬化温度は、20℃以上30℃以下の温度である。
【0023】
一般的に、加熱硬化型の接着剤は、120℃以上180℃以下程度の硬化温度まで加熱することで硬化する。このため、加熱硬化型の接着剤を用いる場合、硬化温度を超える場合に、ケース3からステータコア11へ引っ張り応力を作用するようにできるが、以上の如く、常温硬化型の接着剤40を用いる場合、常温から硬化温度までにおいても、ケース3からステータコア11へ引っ張り応力を作用するようにできる。
一般的に、回転電機100は、通常運転時等の動作時は80℃以下の温度であることが多い。このため、回転電機100の動作時の多くの期間で、ケース3からステータコア11へ引っ張り応力を作用するようにして鉄損を低減できる。
当該実施形態に係る回転電機100は、動作中のステータコア11の温度である動作中温度領域が20℃以上180℃以下である。本例において、回転電機100の動作中とは、回転電機100の動作開始から設定時間を経過した後のことを指す。そして、ここでの設定時間は、ステータコア11の温度が、停止中の温度から上昇して温度変化が緩やかになるまでの時間に設定されると好適である。このようにすれば、動作中温度領域に、外気温の影響を強く受ける動作開始時の温度が含まれないようにできる。
【0024】
以上のように、本実施形態の回転電機100は、
コア外周面11aと周壁内周面31aとの径方向Rの隙間の全周に、接着剤40が配置されている。
【0025】
本構成によれば、ケース3からステータコア11へ作用する応力が、周方向Cに不均等になり難い。従って、回転電機100の動作中におけるステータコア11での鉄損が局所的に大きくなることを回避できる。
【0026】
以上のように、本実施形態の回転電機100は、
接着剤40の熱伝導率が、1W/m・K以上である。
【0027】
本構成によれば、回転電機100の動作中におけるステータコア11からケース3への熱伝導を良くし、回転電機100の放熱性能を高めることができる。
更に、本構成によれば、ステータコア11からケース3への熱伝導を良くし、ケース3の熱膨張を促進させて、ケース3からステータコア11への引っ張り応力を、より一層良好に作用するようにできる。
【0028】
以上のように、本実施形態の回転電機100は、
接着剤40の硬化温度は、20℃以上30℃以下であり、
当該回転電機100の動作中のステータコア11の温度である動作中温度領域が、20℃以上180℃以下である。
【0029】
本構成によれば、ステータコア11の動作中温度領域である20℃以上180℃以下のうち、比較的低い温度である接着剤40の硬化温度(20℃以上30℃以下)を超え180℃以下の温度範囲において、ケース3からステータコア11へ引っ張り応力を作用するようにできる。従って、動作中温度領域の大部分においてステータコア11へ引っ張り応力を作用させて鉄損を低減できる。
【0030】
以下では、回転電機100の製造方法に係る製造工程について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0031】
図5に示すように、本実施形態では、製造工程は、接着剤配置工程S1とステータコア配置工程S2とを、記載の順に実行する工程である。
【0032】
接着剤配置工程S1は、
図4に示すように、接着剤40が、接着剤吐出装置のノズルDから吐出され、ケース3の周壁内周面31aへ塗布される工程である。接着剤40は、例えば、軸方向Lで一定の間隔を隔てて塗布される。
【0033】
ステータコア配置工程S2は、
図4に示すように、軸方向L及び周方向Cに沿って、コア外周面11aと周壁内周面31aとを互いに摺動移動させて接着剤40を塗り伸ばした後、コア外周面11aと周壁内周面31aとが対向するようにステータコア11とケース3とが互いに組み付けられる工程である。
【0034】
以上のように、製造工程は、
筒状のステータコア11と、ステータコア11の外周面であるコア外周面11aを覆う周壁部31を備え、ステータコア11よりも線膨張係数が大きいケース3と、を備えた回転電機100を製造するための製造方法であって、
コア外周面11aの軸心に直交する方向を径方向Rとして、
コア外周面11aと周壁部31の内周面である周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に、接着剤40が配置された状態とした後、接着剤40を加熱することなく常温で硬化させてコア外周面11aと周壁内周面31aとを接着することで、ステータコア11をケース3に固定する工程を備える。
【0035】
本構成によれば、接着剤40を加熱することなく常温で硬化させてコア外周面11aと周壁内周面31aとを接着するため、常温状態でステータコア11に対してケース3からの径方向Rの圧縮応力が作用しないようにできる。また、回転電機100の動作中に温度が常温より上昇した場合には、ケース3の方がステータコア11よりも線膨張係数が大きいため、ケース3からステータコア11に対して接着剤40を介して引っ張り応力が作用するようにできる。従って、加熱硬化型の接着剤を用いた場合に比べて、ケース3からステータコア11へ作用する圧縮応力を小さく引っ張り応力を大きくすることができ、その結果、回転電機100の動作中におけるステータコア11での鉄損を小さく抑えることができる。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、回転電機100は、ラジアルギャップ型の回転電機として構成されている例を示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、アキシャルギャップ型の回転電機として構成されても良い。
【0037】
(2)上記実施形態では、ケース3は、円筒状であり、その周壁部31は、コア外周面11aと同軸の軸心を有する筒状に形成されている構成の例を示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース3が、円筒状以外の筒状であっても良く、周壁部31の周壁内周面31aや周壁外周面に凹凸がある構成としても良い。
【0038】
(3)上記実施形態では、ケース3の材料は、アルミニウムやその合金が用いられる構成の例を示した。しかし、そのような構成に限定されることはなく、ケース3の材料は、マグネシウム又はその合金、或いは樹脂を用いても良い。
【0039】
(4)上記実施形態では、ステータコア11は、複数枚の電磁鋼板111が積層している構成を例として示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ステータコア11は、磁性材料の粉体である磁性粉体を加圧成形してなる粉体コアから構成されていても良い。
【0040】
(5)上記実施形態では、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間には、周方向Cの全周に、接着剤40が配置されている構成を例に示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、周方向Cの一部の領域に接着剤40が配置されている構成であっても良い。
更に、接着剤40は、ステータコア11の軸方向Lの全域に配置されている構成を例に示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ステータコア11の軸方向Lの一部の領域に配置されている構成であっても良い。
【0041】
(6)上記実施形態では、接着剤40は、二液混合型(硬化剤混合型)の接着剤である例を示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、水分もしくは溶剤が蒸発することで硬化が進む溶液乾燥型の接着剤や、被着材に付着している水分と反応して硬化する湿気硬化型の接着剤であっても良い。
【0042】
(7)上記の実施形態では、周壁部31がコア外周面11aの全域を覆うように形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、周壁部31がコア外周面11aの一部(例えば、軸方向Lの一部の領域)を覆うように形成されていても良い。
【0043】
(8)上記実施形態では、接着剤配置工程S1は、接着剤40が、接着剤吐出装置のノズルDから吐出され、ケース3の周壁内周面31aへ塗布される工程である例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、接着剤40が、コア外周面11aへ塗布される工程としても良いし、接着剤40が、ケース3の周壁内周面31aとコア外周面11aの双方へ塗布される工程としても良い。
【0044】
(9)上記実施形態では、回転電機100の製造方法に係る製造工程は、接着剤配置工程S1とステータコア配置工程S2とを、記載の順に実行する工程である例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、
図6に示すように、接着剤40が、コア外周面11aと周壁内周面31aとが対向した状態で、コア外周面11aと周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に対して軸方向Lの外側から供給される工程としても良い。
当該工程を実行する場合、例えば、ケース3は、軸方向第1側L1の端部に、軸方向第1側L1に向かうに従って径方向外側R2へ拡径する拡径部32を周方向Cの全周周に亘って備えている。接着剤40を、接着剤吐出装置のノズルDから、拡径部32を介して、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて滴下することで、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間へ接着剤40が供給される。当該ノズルDから接着剤40を滴下させながら、回転電機100を軸心周りで周方向Cに回動することで、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間には、周方向Cの全周に接着剤40が配置され、且つ自重により接着剤40が軸方向第2側L2へ移動することで、ステータコア11の軸方向Lの全域に配置される。
【0045】
(10)上記実施形態では、回転電機100の製造方法に係る製造工程は、接着剤配置工程S1とステータコア配置工程S2とを、記載の順に実行する工程である例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、
図7に示すように、接着剤40は、コア外周面11aと周壁内周面31aとが対向した状態で、周壁部31に設けられて周壁部31の外周面である周壁外周面31bと周壁内周面31aとを連通する連通孔33を介して、コア外周面11aと周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に供給される工程としても良い。
当該工程を実行する場合、例えば、連通孔33は、周方向Cで間隔を隔てて等間隔で、ケース3の周壁部31に複数備えられると共に、当該連通孔33を封止可能な封止部材33aが備えられる。
接着剤40は、封止部材33aを外した連通孔33にノズルDの先端を当接した状態で、ノズルDから所定の圧力で吐出され、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間へ供給される。接着剤40は、複数の連通孔33に順次ノズルDの先端を当接して供給されることで、ステータコア11のコア外周面11aとケース3の周壁内周面31aとの径方向Rの隙間に、周方向Cの全周で且つ径方向Rの全域に高い充填率で供給される。
【0046】
(11)上記実施形態では、接着剤40の硬化温度は、20℃以上30℃以下である例を示した。しかし、そのような構成に限定されることなく、接着剤40の硬化温度は、上述した常温の範囲内の温度としても良い。
【0047】
(12)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示に係る技術は、筒状のステータコアと、当該ステータコアの外周面であるコア外周面を覆う周壁部を備えたケースと、を備えた回転電機、およびその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
3:ケース、11:ステータコア、11a:コア外周面、31:周壁部、31a:周壁内周面、40:接着剤、100:回転電機、R:径方向