IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 佐藤 嘉昭の特許一覧 ▶ 株式会社ゼロテクノの特許一覧

<>
  • 特開-改質フライアッシュ 図1
  • 特開-改質フライアッシュ 図2
  • 特開-改質フライアッシュ 図3
  • 特開-改質フライアッシュ 図4
  • 特開-改質フライアッシュ 図5
  • 特開-改質フライアッシュ 図6
  • 特開-改質フライアッシュ 図7
  • 特開-改質フライアッシュ 図8
  • 特開-改質フライアッシュ 図9
  • 特開-改質フライアッシュ 図10
  • 特開-改質フライアッシュ 図11
  • 特開-改質フライアッシュ 図12
  • 特開-改質フライアッシュ 図13
  • 特開-改質フライアッシュ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165718
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】改質フライアッシュ
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/08 20060101AFI20241121BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20241121BHJP
【FI】
C04B18/08 Z
B09B3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082132
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】599096455
【氏名又は名称】佐藤 嘉昭
(71)【出願人】
【識別番号】504094626
【氏名又は名称】株式会社ゼロテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉昭
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AB10
4D004BA02
4D004CA15
4D004CA22
4D004CB09
4D004CB32
4D004CB36
4D004CC01
4D004CC02
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
(57)【要約】
【課題】保管中に固化し難く、コンクリート混和材として使用した場合、コンクリート混練時にアンモニア臭を感じることがなく、ポゾラン反応を活性化させることができる改質フライアッシュを提供する。
【解決手段】改質フライアッシュは、石炭の燃焼によって発生するフライアッシュを原料として製造したものであり、強熱減量(未燃カーボン含有率の代替値)が1.0wt%以下であり、平均粒径が20μm~70μmであり、硫黄含有率が1.00wt%以下であり、全窒素含有率が0.05wt%以下であり、主要成分(SiО2+Al2О3)の含有率が70wt%~95.0wt%であり、ガラス化率が50wt%~90.0wt%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭専焼火力発電所で発生するフライアッシュ原粉を加熱処理した改質フライアッシュであって、強熱減量が1.0wt%以下であり、平均粒径が2.0μm~70.0μmであり、硫黄(SO3)含有率が1.00wt%以下であり、全窒素(N2)含有率が0.05wt%以下である改質フライアッシュ。
【請求項2】
主要成分である(SiO2+Al23)の含有率が70.0wt%~95.0wt%であり、ポゾラン反応に関係するガラス化率が50.0wt%~90.0wt%である請求項1記載の改質フライアッシュ。
【請求項3】
塩基度((CaO+MgO+Al23)/SiO2)の値が0.2~0.8である請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【請求項4】
ネットワーク比Nr=(CaO+MgO+K2O+Na2O)/(SiO2+Al23)の値が0.02~0.15である請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【請求項5】
ガラス安定性比GSR=SiO2/(Na2O+K2O+CaO+MgO+Al23)の値が1.0~4.0である請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【請求項6】
平均粒径が2μm~10μmである請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【請求項7】
平均粒径が10μm~40μmである請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【請求項8】
平均粒径が40μm~70μmである請求項1または2記載の改質フライアッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電所など(石炭専焼火力発電所)から発生するフライアッシュを原料として製造される改質フライアッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所などから発生するフライアッシュ中に含まれる炭素(未燃カーボン)を除去して改質フライアッシュを得る技術、並びに、フライアッシュを原料とする改質フライアッシュについては、従来、様々な提案が行われているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「工業用の改質フライアッシュとその製造方法」などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-126117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明を実施することによって得られる従来の改質フライアッシュは未燃カーボン含有率が低い点においては優れている。しかしながら、従来の改質フライアッシュはサイロなどに保管しているときに固化するという問題がある。
【0005】
また、従来の改質フライアッシュは、コンクリート混和材として使用した場合にアンモニア臭を感じることがあるという問題も生じている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、保管中に固化し難く、コンクリート混練時にアンモニア臭を感じることがなく、ポゾラン反応を活性化させることができる改質フライアッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る改質フライアッシュは、石炭専焼火力発電所で発生するフライアッシュ原粉を加熱処理した改質フライアッシュであって、強熱減量が1.0wt%以下であり、平均粒径が2.0μm~70.0μmであり、硫黄(SO3)含有率が1.00wt%以下であり、全窒素(N2)含有率が0.05wt%以下であることを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、本発明に係る改質フライアッシュをコンクリート混和材として使用した場合、強熱減量(未燃カーボン含有率の代替値)が1.0wt%以下であることにより、単位水量(kg/m3)を低減することができ、AE剤吸着による空気連行性が良好に維持され、スランプロスが増大せず、固化後のコンクリートの圧縮強度が向上して乾燥収縮量が減少するので、ひび割れなどを防止することができる。また、ポゾラン反応が活性化されることによりコンクリート組織が緻密になるため、長期に亘って強度が進展し、耐久性が向上する。
【0009】
なお、前記強熱減量はJISA6201に準じて測定し、平均粒径は体積平均粒径であり、レーザ式粒子径分布測定装置を用いて測定した。また、化学成分は蛍光X線分析装置(XRF装置)を用いて測定し、窒素成分については元素分析装置(CHNコーダー法)を用いて求めた。
【0010】
前記AE剤とは「Air Entraining 剤」の略称であり、コンクリート打設作業能率、耐凍性を向上させる混和剤の一つで、界面活性剤の一種である。予めコンクリートに混和させることで、コンクリート中に微少な空気粒を生じさせることができ、これによってコンクリートの流動性が高まるので、型枠への充填性が向上し、打ち込み欠陥を減少させることができる。
【0011】
また、平均粒径が2.0μm~70μmであることにより、コンクリートの流動性が良好となり、単位水量を低減することができるので、コンクリートの乾燥収縮歪やひび割れが低減し、ポゾラン反応によって組織が緻密化するため耐久性が向上する。
【0012】
また、硫黄含有率は、1.00wt%以下であり、特に0.01wt%~0.60wt%であることが好ましい。硫黄含有率がこのような数値範囲内であることにより、フライアッシュ保管時の固化現象を抑制することができる。また、硫黄の含有量が多くなると、コンクリートやモルタルの初期凝結時間の遅延や強度の低下、膨張などを引き起こすことになるため、硫黄含有率を前述した数値範囲内とすることにより、このような問題が起こることを防ぐことができる。
【0013】
さらに、窒素含有率は0.05wt%以下であり、特に0.01wt%~0.04wt%であることが好ましい。窒素含有率がこのような数値範囲内であることにより、コンクリート混練時にアンモニア臭を感じることがなくなる。
【0014】
なお、脱硝対策としてアンモニアが用いられることが一般的であり、その際、過剰なアンモニアがフライアッシュ粒子に付着することになる(アンモニアスリップ現象と言われている)。アンモニアの量が多くなると、コンクリートやモルタルの凝結時間の遅延、または強度低下を生じさせたり、さらには耐久性にも悪影響を及ぼしたりする場合があることが指摘されているが、アンモニアは300℃~450℃の温度で脱離することから、加熱処理によってほとんどのアンモニアは除去される。
【0015】
前記改質フライアッシュにおいては、主要成分である(SiO2+Al23)の含有率が70.0wt%~95.0wt%であり、ポゾラン反応に関係するガラス化率が50.0wt%~90.0wt%であることが望ましい。
【0016】
このような構成とすれば、改質フライアッシュをコンクリート混和材として使用した場合、強熱減量が低減された分、ポゾラン反応に寄与するガラス化率に寄与する成分が増えることになるため、従来の加熱改質フライアッシュよりもポゾラン反応が活性化され、改質フライアッシュ中のガラス相が、セメントの水和により副成した水酸化カルシウムと反応し、その反応によって生成された、セメント水和物に類似した生成物が硬化体組織を緻密化するので、長期的な強度発現に有効である。
【0017】
前記ガラス化率は、フライアッシュの化学成分を蛍光X線分析で定量し、粉末X線分析-リートベルト法により結晶質組成である石英(クォーツ)とムライト、マグネタイトの定量を行い、これらを全体から差し引くことによって算出した。
【0018】
前記改質フライアッシュにおいては、塩基度((CaO+MgO+Al23)/SiO2)の値が0.2~0.8であることが望ましい。
【0019】
前記改質フライアッシュにおいては、ネットワーク比Nr=(CaO+MgO+K2O+Na2O)/(SiO2+Al23)の値が0.02~0.15であることが望ましい。
【0020】
前記改質フライアッシュにおいては、ガラス安定性比GSR=SiO2/(Na2O+K2O +CaO+MgO+Al23)の値が1.0~4.0であることが望ましい。
【0021】
前記改質フライアッシュにおいては、平均粒径を2μm~10μmとすることができる。
【0022】
このような構成とすれば、高流動コンクリート用混和材、止水材、ひび割れ注入材、シリカフューム代替材として好適な改質フライアッシュとなる。
【0023】
前記改質フライアッシュにおいては、平均粒径を10μm~40μmとすることができる。
【0024】
このような構成とすれば、コンクリート混和材、モルタル用混和材、吹付け用コンクリート混和材、ひび割れ補修材、断面補修材として好適な改質フライアッシュとなる。
【0025】
前記改質フライアッシュにおいては、平均粒径を40μm~70μmとすることができる。
【0026】
このような構成とすれば、コンクリート用細骨材の代替材、吹付け用コンクリート混和材として好適な改質フライアッシュとなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、保管中に固化し難く、コンクリート混和材として使用した場合、コンクリート混練時にアンモニア臭を感じることがなく、ポゾラン反応を活性化させることができる改質フライアッシュを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態である改質フライアッシュの組成を示す図表である。
図2】本発明の実施の形態である改質フライアッシュの製造設備を示す概略構成図である。
図3図2に示す改質フライアッシュ製造設備を構成する焼成装置を示す概略構成図である。
図4図3中のA-A線における断面図である。
図5図3中のB-B線における断面図である。
図6図3に示す焼成装置を構成するダムプレートを示す部分断面図である。
図7図3に示す焼成装置を構成する撹拌部材を示す部分断面図である。
図8図7の一部拡大図である。
図9図2に示す改質フライアッシュ製造設備を構成する粉砕分級装置の垂直断面図である。
図10図9に示す粉砕分級装置の一部省略平面図である。
図11図9に示す粉砕分級装置の粉砕羽根付近の部分拡大図である。
図12図2に示す改質フライアッシュ製造設備を構成する分級装置の一部切欠正面図である。
図13図12に示す分級装置の一部拡大図である。
図14図12中のC-C線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図14に基づいて、本発明の実施形態である改質フライアッシュ並びに改質フライアッシュ製造設備について説明する。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いるものとする。
【0030】
図1は、本実施形態に係る改質フライアッシュFA2,FC1,FC2,FC3の組成を示している。改質フライアッシュFA2,FC1,FC2,FC3は、図2図3に示すように、石炭の燃焼によって発生した未燃カーボンを含有するフライアッシュ原粉FA1を原料とし、改質フライアッシュ製造設備90を使用して製造されたものである。
【0031】
図1(a)に示すように、改質フライアッシュFA2の強熱減量(未燃カーボン含有率の代替値)は1.0%以下(0.53wt%)であり、硫黄(SO3)含有率は0.01wt%~0.60wt%であり、全窒素(N2)含有率は0.01wt%~0.03wt%以下であり、主要成分(SiО2+Al2О3)の含有率が70.0wt%~95.0wt%であり、ガラス化率が50.0wt%~90.0wt%であり、平均粒径が2.0μm~70.0μmである。なお、平均粒径(μm)は、マイクロトラック株式会社(現在マイクロトラック・ベル株式会社)の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3000」を使用して測定した値である。
【0032】
本実施形態に係る改質フライアッシュ並びに従来のフライアッシュの性質、作用効果などについて比較するため、以下に示すような実験を行ったので、実験内容並びに実験結果などについて説明する。
【0033】
初めに、フライアッシュ貯蔵時の固結現象の違いを比較するため、本実施形態の改質フライアッシュ並びに従来のフライアッシュを、それぞれ容器に収容して、同じ温度、湿度の下で貯蔵した後、固結現象の有無を確認した。その結果、従来のフライアッシュでは固結現象が生じているのに対し、本実施形態に係る改質フライアッシュFA2では固結現象が殆ど発生していなかった。
【0034】
これは、本実施形態に係る改質フライアッシュFA2の硫黄(SO3)含有率が0.01wt%~0.60wt%という低い値であることによって得られた結果であると推測される。
【0035】
次に、本実施形態の改質フライアッシュ並びに従来のフライアッシュをそれぞれコンクリート混和材として使用したときの相違を確認するため、本実施形態の改質フライアッシュFA2並びに従来のフライアッシュに対し、それぞれ骨材、AE剤及び水を添加して混練しコンクリートを形成して比較した。
【0036】
先ず、水を添加した後の混練過程において、従来のフライアッシュはアンモニア臭が発生したのに対し、本実施形態の改質フライアッシュFA2はアンモニア臭が発生しなかった。これは、本実施形態の改質フライアッシュは全窒素(N2)含有量が0.01wt%~0.03wt%という低い値であることによると推測される。
【0037】
また、本実施形態の改質フライアッシュFA2は強熱減量(未燃カーボン含有率の代替値)が1.0wt%以下であるので、単位水量(kg/m3)を低減することができた。さらに、本実施形態の改質フライアッシュFA2の場合、AE剤吸着による空気連行性が良好に維持され、スランプロスが増大せず、固化後のコンクリートの圧縮強度が向上するだけでなく、乾燥収縮量も減少した。そのほか、未燃カーボン含有率が低い改質フライアッシュFA2は従来のフライアッシュに比べ白っぽい色になっているので、コンクリート混和材として使用したとき、従来よりも白い外観を呈する美観の良好なコンクリートを得ることができる。
【0038】
また、改質フライアッシュFA2においては、主要成分(SiО2+Al2О3)の含有率が70.0wt%~95.0wt%であり、ガラス化率が50wt%~90.0wt%であるため、改質フライアッシュをコンクリート混和材として使用した場合、ポゾラン反応が活性され、改質フライアッシュ中のガラス相がセメントの水和により副成した水酸化カルシウムと反応し、その反応によって生成された、セメント水和物に類似した生成物が硬化体組織を緻密化するので、強度発現に有効であった。
【0039】
また、本実施形態の改質フライアッシュFA2の平均粒径は2.0μm~70.0μmという小さい値であるため、改質フライアッシュをコンクリート混和材として使用した場合、コンクリートの流動性が良好となり、単位水量を低減することができ、コンクリートの乾燥収縮歪やひび割れが低減し、ポゾラン反応によって組織が緻密化するため耐久性が向上した。
【0040】
次に、図2図14に基づいて、本発明の実施形態である改質フライアッシュFA2,FC1,FC2,FC3の製造設備について説明する。図2に示すように、改質フライアッシュ製造設備90は、フライアッシュ原粉FA1中の未燃カーボンを燃焼除去する焼成装置1と、焼成装置1において未燃カーボンを燃焼除去された状態で送り込まれる改質フライアッシュFA2を粉砕、分級して改質フライアッシュFC1を形成する粉砕分級装置30と、粉砕分級装置30において粉砕、分級された改質フライアッシュFC1をさらに分級して改質フライアッシュFC2を形成する分級装置50と、分級装置50において分級された改質フライアッシュFC2が除去された気体から濾過捕集して改質フライアッシュFC3を形成するバグフィルタ70と、を備えている。また、粉砕分級装置30とバグフィルタ70とを連通するバイパス経路BPが設けられている。
【0041】
また、図2に示すように、温度の異なる複数種類の空気流を生成できるホットジェネレータ80が、焼成装置1の外部に配置されている。ホットジェネレータ80から焼成装置1に対して複数の給気経路81,82,83が設けられている。給気経路81は外殻炉6aおよびバーナ6bを備えた加熱部領域へ高温空気を供給する経路であり、給気経路82は外殻炉7aおよび送風機7bを備えた均熱部領域へ高温空気を供給する経路であり、給気経路83は冷却水ノズル8aおよび水受け8bを備えた冷却部領域へ室温空気を供給する経路である。
【0042】
図3に示すように、焼成装置1は、始端部2aから終端部2bに向かって軸心2cが下り勾配をなすように配置された円筒状回転炉であるロータリーキルン2を備えている。このロータリーキルン2の始端部2aには、図3に示すように、フライアッシュ原粉FA1の装入手段であるスクリューコンベア3と、補助加熱手段である助燃バーナ4と、ロータリーキルン2内への空気吹込経路である空気吹込管5が配置されている。
【0043】
空気吹込管5は、ロータリーキルン2の始端部2aからその軸心2c方向に沿って、軸心2cより上方位置に挿入され、その先端寄りの部分には、ロータリーキルン2の内周面に向かって開口した空気吹出孔5aが設けられ、空気吹込管5の先端は隔壁5bで閉塞されている。また、空気吹込管5に空気を送り込むための送風機16が、空気吹込管5の基端側に配置されている。
【0044】
また、ロータリーキルン2の始端部2aから終端部2bに向かって、外熱式加熱手段である外殻炉6aおよびバーナ6bと、外冷式空冷手段である外殻炉7aおよび送風機7bと、外冷式水冷手段である冷却水ノズル8aおよび水受け8bとが直列状に配置されている。そして、ロータリーキルン2の終端部2bには、処理完了後の改質フライアッシュFA2を排出するための排出口9および排気経路である排気管10が配置されている。
【0045】
未燃カーボン含有率が3.90wt%~7.70wt%であって平均粒径が18.40μm~21.80μmのフライアッシュ原粉FA1をスクリューコンベア3のホッパ3aに投入すると、フライアッシュ原粉FA1はスクリューコンベア3によってロータリーキルン2内へ導入され、外殻炉6aが配置された領域のロータリーキルン2内において、空気吹込管5から空気を供給されながら助燃バーナ4およびバーナ6bで加熱される。この場合、図5に示すように、バーナ6bから発生する高温気体流がロータリーキルン2の外周面と外殻炉6aとの間を旋回しながら加熱するので、ロータリーキルン2内のフライアッシュ原粉FA1を効率良く、均一加熱することができる。
【0046】
このような加熱工程によりフライアッシュ原粉FA1の温度が自燃開始温度である350℃に達すると、その時点でフライアッシュ原粉FA1中の未燃カーボンが燃焼を開始し、この後は自らの燃焼発熱によって未燃カーボンの燃焼を持続、拡大しながらロータリーキルン2内を、外殻炉7aおよび送風機7bの配置された領域に向かって移動していく。焼成装置1においては、空気吹込管5の空気吹出孔5aは、ロータリーキルン2内に導入されたフライアッシュ原粉FA1の温度が、微粉炭の自燃温度である350℃を超えた時点で空気を吹き込むことができる位置に設けられている。
【0047】
外殻炉7aおよび送風機7bが配置された領域に到達したフライアッシュ原粉FA1は、この領域のロータリーキルン2内において、未燃カーボンの燃焼による発熱と、送風機7bから供給される空気流による冷却作用によって制御され、600℃~900℃程度(望ましくは700℃~800℃程度)の高温状態を保持しながらロータリーキルン2内を終端部2bに向かって移動していく。この工程において未燃カーボンの燃焼がさらに進行し、その殆どが燃焼除去された改質フライアッシュFA2となる。また、この工程におけるロータリーキルン2は送風機7bから供給される空気流によって冷却されているため、過熱のおそれもない。
【0048】
冷却水ノズル8aおよび水受け8bが配置された領域においては、冷却水ノズル8aからロータリーキルン2の外周面に冷却水を吹き付けることによってロータリーキルン2が冷却されている。したがって、この領域へ到達したフライアッシュ原粉FA1は、ロータリーキルン2内を終端部に向かって移動しながら、200℃程度まで冷却された後、ロータリーキルン2の終端部2bに設けられた排出口9から排出され、ホッパ11を経由して回収された後、後述する粉砕分級装置30へ送り込まれる。
【0049】
なお、冷却水ノズル8aからロータリーキルン2の外周面に吹き付けられた冷却水は前記外周面に沿って流下しながらロータリーキルン2を冷却した後、水受け8bに落下して回収され、クーリングタワー12で所定温度まで冷却された後、再び冷却水ノズル8aに送給され、冷却水として再利用される。
【0050】
一方、空気吹込管5からロータリーキルン2内へ供給された空気および未燃カーボンの燃焼反応などによりロータリーキルン2内で発生したガスなどは、ロータリーキルン2内を始端部2aから終端部2bに向かって移動していき、終端部2b寄りの部分に配置された排気管10から排ガスとして排出された後、バグフィルタ22へ送られる。
【0051】
この場合、排気管10から排出された排ガスの温度をバグフィルタ22内の濾布の耐熱温度以下まで下げるため、給気経路APを通して導入した空気を排ガスに混合し、希釈した状態でバグフィルタ22へ送り込まれる。そして、バグフィルタ22による粉塵除去工程を経て無害化された後、大気中へ放出される。なお、バグフィルタ22で回収された微粉状の石炭灰は搬送経路Rを経て上流側へ搬送された後、焼成装置1のホッパ3aに投入され再び焼成処理されるため、残渣は発生しない。
【0052】
このように、ロータリーキルン2内へ導入されたフライアッシュ原粉FA1中の未燃カーボンは、助燃バーナ4およびバーナ6bによる加熱領域において急速に700℃まで加熱され、700℃に達した時点で吹き込まれた高温空気によって自燃を開始した後、未燃カーボンの燃焼熱と送風機7bによる冷却との相互作用で制御された高温保持領域を移動していくことによってさらに燃焼反応が進行する。
【0053】
即ち、熱の移動方向に沿ってフライアッシュ原粉FA1を移動させながら未燃カーボンの燃焼を進行させるため、フライアッシュ原粉FA1中に含まれる未燃カーボンを比較的短時間で効率良く除去することができる。また、前記高温保持領域において未燃カーボンが燃焼除去された後の改質フライアッシュFA2は、冷却水ノズル8aが配置された冷却領域を通過することによって急冷された後、排出口9から排出され、粉砕分級装置30へ送り込まれる。
【0054】
図3に示すように、外殻炉6a,7aの境界部分および外殻炉7aと冷却水ノズル8aとの境界部分におけるロータリーキルン2内周面にその軸心2c方向に突出したダムプレート17を設けている。図6に示すように、ダムプレート17はドーナツ形状であり、このダムプレート17には、ロータリーキルン2の内周面2dに接する複数の貫通孔17a(ラットホール)が周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0055】
このような貫通孔17a付きのダムプレート17をロータリーキルン2の内周面2dに設けることにより、ロータリーキルン2内を終端部に向かって移動するフライアッシュ原粉FA1の移動速度が抑制され、滞留時間を長くすることができるため、未燃カーボンの完全燃焼を図ることができ、ロータリーキルン2の軸心方向の小型化も可能となる。また、ダムプレート17の貫通孔17aはロータリーキルン2の内周面2dに接しているため、内周面2dに沿って移動していくフライアッシュ原粉FA1がダムプレート17部分に残留したり、蓄積したりすることもない。
【0056】
これらのダムプレート17は、外殻炉6a,7aの境界部分および外殻炉7aと冷却水ノズル8aとの境界部分におけるロータリーキルン2の内周面2dに配置しているため、外殻炉6aが配置された領域における燃焼開始反応、外殻炉7aが配置された領域における燃焼反応が完了するまでフライアッシュ原粉FA1を滞留させることが可能である。このため、軸心方向の長さが比較的短いロータリーキルン2であっても、未燃カーボンの完全燃焼を図ることができる。
【0057】
さらに、図7に示すように、外殻炉7aが配置された領域におけるロータリーキルン2の内周面2dには、棚状をした複数の撹拌部材18が周方向に沿って等間隔に配置されている。図8に示すように、これらの撹拌部材18はベンチの着座面に似た形状であり、丸棒材(または管状材)をフ字形状に折曲して形成された固定部材19によってロータリーキルン2の内周面2dに取り付けられている。
【0058】
ロータリーキルン2の回転によりこれらの撹拌部材18も回転し、フライアッシュ原粉FA1を掻き上げて、落下させるようにしてフライアッシュ原粉FA1を撹拌するので、フライアッシュ原粉FA1中へ十分な酸素が供給される。従って、フライアッシュ原粉FA1中への酸素拡散で律速される未燃カーボンの燃焼反応を急速に進行させることが可能となり、フライアッシュ原粉FA1中の未燃カーボンの完全燃焼を図ることができる。
【0059】
また、図8に示すように、それぞれの撹拌部材18とロータリーキルン2の内周面2dとの間には、フライアッシュ原粉FA1が通過可能な隙間20を設けているため、撹拌部材8で掻き上げられたフライアッシュ原粉FA1は隙間20を通過して落下可能である。従って、フライアッシュ原粉FA1がロータリーキルン2の内周面2dに直に接触する機会(回数)が増加することとなって、内周面2dとの間の伝導効率が高まるため、加熱効率や冷却効率が向上する。また、隙間20を設けたことにより、ロータリーキルン2の内周面2dに沿って移動していくフライアッシュ原粉FA1が、内周面2dと撹拌部材18との境界付近に残留したり、蓄積したりするのを防止することもできる。
【0060】
さらに、外殻炉6aから発生する高温気体に外気を混入させて熱交換機21へ送給し、大気中から熱交換機21に導入された空気との間で熱交換することで昇温した高温空気HA1をバーナ6bに供給している。また、外殻炉7a内において昇温した高温空気HA2の一部を、送風機16から空気吹込管5を経由して、ロータリーキルン2内へ供給している。このようにすることにより、外気より高温状態にある空気を、空気吹込管5、バーナ6bに供給することができるため、加熱用エネルギーの消費量を低減することができる。
【0061】
このように、焼成装置1においては、ロータリーキルン2内への空気吹込経路として、ロータリーキルン2の始端部2aからその軸心2c方向に挿入され、外熱式加熱手段であるバーナ6bおよび外殻炉6aが配置された領域のロータリーキルン2内に空気吹出孔5aを有する空気吹込管5を設けている。
【0062】
従って、バーナ6bなどが配置された領域に導入されたフライアッシュ原粉FA1が自燃開始温度700℃に達した時点で空気吹出孔5aから空気を供給することができる。このため、助燃バーナ4およびバーナ6bによる加熱量の全てがフライアッシュ原粉FA1の昇温に供される結果、急速な昇温が可能であり、その後の工程である未燃カーボンの燃焼領域を長くとることができ、未燃カーボンの燃焼を効率的に進行させることができる。また、未燃カーボンの燃焼開始後は、外部から加熱する必要がないので、消費エネルギーは少なくてすむ。
【0063】
このような工程の加熱方式は、加熱ガスとフライアッシュ原粉FA1が併行に流れるパラレルフローであって、ロータリーキルン2内を進行する未燃カーボンを含むフライアッシュ原粉FA1の温度は上昇していく一方、加熱ガスの温度は次第に下降していく。そして、最も加熱ガス温度の高いロータリーキルン2の始端部2aではフライアッシュ原粉FA1の温度が最も低いため、ロータリーキルン2本体の温度は、加熱ガス温度とフライアッシュ原粉FA1の温度との略平均値(600℃~900℃程度)にあって、高温にならない。このため、ロータリーキルン2の構成材料として一般のステンレス鋼材(SUS310Sなど)を使用することが可能であり、実用性に優れている。
【0064】
一方、焼成装置1では、排気経路として、ロータリーキルン2の終端部2bからその軸心2c方向に沿って挿入され、冷却水ノズル8aなどが配置された領域の始端付近のロータリーキルン2内に開口した排気管10を設けている。したがって、冷却水ノズル8aから吹き付けられる冷却水による冷却作用が排ガスへ及ぶことが回避され、排ガスは排気管10を通過して高温状態のまま排出可能である。このため、排ガス中に残留するCOの燃焼効率が向上するほか、排ガスに同伴される微粉状の未燃カーボンの燃焼除去も図られる。
【0065】
次に、図9図11に基づいて、図2に示す改質フライアッシュ製造設備90を構成する粉砕分級装置30について説明する。
【0066】
図9図10に示すように、粉砕分級装置30は、軸心が垂直状態に保持された円筒部32と、この円筒部32の下端に同軸上に連設された円錐部33と、円筒部32の上方の周壁にその接線方向に連結された流入経路34と、円筒部32の上端付近に連結された流出経路35と、円錐部33の下端に連通された回収ボックス45と、円錐部33の内周面33aから軸心方向へ突設された棚状部39と、棚状部39の上面に近接して配置された回転式の粉砕羽根36と、粉砕羽根36を棚状部39に沿って回転させるための駆動モータMと、回収ボックス45内へ気体を供給する気体供給経路38と、を備えている。
【0067】
流入経路34の上流には、ヒータ49を内蔵したガス導入管23と、導入経路24とが連結され、導入経路24の上流には、焼成装置1から送り込まれる改質フライアッシュFA2を受けるためのホッパ25と、投入された改質フライアッシュFA2を分散させるための空気噴出ノズル26とが配置されている。焼成装置1のホッパ11(図2図3参照)から排出され、ホッパ25に投入された改質フライアッシュFA2は、空気噴出ノズル26から噴出する高圧空気によって分散され、ガス導入管23から流入する高温ガスと合流し、流入経路34を経由して円筒部32内へ流入する。
【0068】
平板形状の粉砕羽根36は、円錐部33の軸心に配置された回転軸37の上端付近に取り付けられ、回転軸37は、その上端寄りの部分に配置された軸受40aおよび保持部材41と、その下端部分に配置された軸受40bとによって垂直状態に保持されている。回転軸37はベルト44を介して駆動モータMによって回転駆動されている。
【0069】
保持部材41は回転軸37の回りに放射状に張設され、円錐部33の周壁に設けられた係止部材42を通って、外部に配置された保持架台43に係止されている。係止部材42は、回転中の粉砕羽根36の振動が円錐部33などに伝わるのを阻止する防振機能と、円錐部33内の気体が外部へ漏出するのを防ぐシール機能とを備えている。
【0070】
また、粉砕羽根36の回転方向および回転数を変更するため、駆動モータMへの電源供給配線に回転方向変更機能および回転数変更機能を有する制御装置27を設け、回収ボックス45内への気体供給量を変更するための流量調節バルブ28を気体供給経路38の途中に設けている。気体供給経路38から供給される気体は、回収ボックス45を経由して、円錐部33の下端から上方へ流入する。円錐部33の下端に連通された回収ボックス45は、下方に向かって徐々に縮径した略漏斗形状であり、その下端部分に設けられた排出口に、ゲート弁47およびロータリー弁48が配置されている。
【0071】
図10図11に示すように、粉砕手段である粉砕羽根36は円錐部33の軸心に配置された回転軸37を中心に回転する平板形状であり、粉砕羽根36の先端には、円錐部33の内周面33aと対向する起立部36aが設けられている。棚状部39にはドーナツ状の耐摩耗板材46が取り付けられ、起立部36aと対向する円錐部33の内周面33aにも耐摩耗板材29が取り付けられている。耐摩耗板材46,29はいずれも着脱可能であるため、必要に応じて、取り替えることができる。
【0072】
駆動モータMによって粉砕羽根36を回転させた状態にある粉砕分級装置30において、図2に示す焼成装置1において未燃カーボンを燃焼除去された改質フライアッシュFA2を含む気体を流入経路34から円筒部32内へ流入させると、円筒部32内に、軸心を中心に旋回する旋回流が発生し、気体中に含まれる改質フライアッシュFA2は旋回流で生じる遠心力の作用によって円筒部32の内周面32aに向かって移動していき、内周面32aに当接した後、円筒部32の内周面32aおよび円錐部33の内周面33aに沿って螺旋流を描きながら下降していく。
【0073】
そして、図11に示すように、円錐部33の内周面33aに沿って落下してきた改質フライアッシュFA2が棚状部39付近に取り付けられた耐摩耗板材29,46に達すると、主として、高速で回転する、起立部36aを有する粉砕羽根36による槌打作用で衝撃破砕が行われるとともに、改質フライアッシュFA2の粒子自身の慣性力に基づく衝撃作用や摩擦作用によって細かく粉砕された後、耐摩耗板材46の内周縁から落下する。
【0074】
耐摩耗板材46の内周縁から落下した改質フライアッシュFC1は、再び旋回流とともに螺旋流を描きながら円錐部33の内周面33aに沿って下降していくが、気体流は回収ボックス45内で反転して上昇していくため、気体流から分離された改質フライアッシュFC1が回収ボックス45内へ回収され、改質フライアッシュFC1が除去された後の気体は流出経路35から排出される。
【0075】
一方、回収ボックス45内に回収された改質フライアッシュFC1は、ゲート弁47およびロータリー弁48を通過して排出され所定の容器内に改質フライアッシュFC1として回収される。改質フライアッシュFC1は、図1(b)に示すように、平均粒径が40.0μm~70.0μmであり、その他の項目については図1(a)に示す改質フライアッシュFA2と同等であり、JIS規格に定められているフライアッシュIV種灰の規定を満たしている。
【0076】
このように、粉砕分級装置30を構成する円筒部32、円錐部33および回収ボックス45内に発生する旋回流によりサイクロン機能を発揮するため、被粉砕物である改質フライアッシュFA2の分級機能も得ることができる。本実施形態では、図11に示すように、ドーナツ形状の耐摩耗板材46の内径dを棚状部39の内径Dより小さく設定しているが、d/Dは100%~70%とすることが望ましい。なお、内径dを小さくすると、耐摩耗板材46上における改質フライアッシュFA2の滞留領域が増加するため、粉砕作用が増大する傾向があるが、内径dが小さくなり過ぎると、下向きの旋回流が抑制されて分級点が上がり、分級性能が悪化する傾向が生じる。
【0077】
粉砕分級装置30においては、制御装置27を操作して、駆動モータMの回転方向、回転数を変化させることによって粉砕羽根36の回転方向、回転数を変化させることが可能であり、これによって、粉砕作用および分級点を調節することができる。
【0078】
例えば、円筒部32および円錐部33内に発生している旋回流と逆方向に粉砕羽根36を回転(逆転)させれば、改質フライアッシュFA2と粉砕羽根36との相対速度は大きくなり、粉砕作用は大となるが、気体の旋回力が抑制されるため、分級点は上がる。また、旋回流と同方向に粉砕羽根36を回転(正転)させれば、改質フライアッシュFA2と粉砕羽根36との相対速度は小さくなるため、粉砕作用は小さくなるが、気体の旋回力は抑制されないので、分級点は下がる。
【0079】
このように、粉砕羽根36の逆転、正転により粉砕作用を増減させると、分級点も上下するが、回収ボックス45内への気体供給量を増減させることによって分級点を調整することができる。すなわち、粉砕羽根36を逆転させると、粉砕作用は高まり、旋回力が減少し、分級点は上がるが、回収ボックス45内への気体供給量を減らすことによって分級点を下げることができる。また、粉砕羽根36を正転させると、粉砕作用は低下し、旋回力は増大し、分級点は下がるが、回収ボックス45内への気体供給量を増やすことによって分級点を上げることができる。
【0080】
以上のように、制御装置27を操作して駆動モータMの回転方向を変化させ、粉砕羽根36の回転方向を変化させれば、被粉砕物である改質フライアッシュFA2の種類、性状などに応じた作業条件(粉砕作用の強弱、分級点の大小)を設定することができる。また、駆動モータMの回転数を変化させて粉砕羽根36の回転数を変化させれば、粉砕作用および旋回力への影響を増減させることができるため、さらに細かな条件設定を行うことができる。
【0081】
次に、図2に示す改質フライアッシュ製造設備90を構成する分級装置50について図12図14を参照しながら説明する。
【0082】
図2図12に示すように、分級装置50は、軸心が垂直状態に保持された円筒部52と、円筒部52の下端に同軸上に連設された円錐部53と、円筒部52の周壁にその接線方向に連結された流入経路57と、円筒部52の上端に連結された流出経路58と、円錐部53の下端61に連設された回収ボックス54とを備えている。また、図12に示すように、円錐部53の内周面53aには、その軸心方向に突出した旋回流制御用のベーン59を複数設け、これらのベーン59の勾配変更手段として、先端がベーン59に固着され円錐部53の周壁および軸受63を回動可能に貫通する支軸64と、支軸64の基端に固着された操作ハンドル60と、を設けている。
【0083】
図13図14に示すように、ベーン59はいずれも平板形状であり、外部に露出した操作ハンドル60を支軸64中心に回転させることによって、それぞれのベーン59の勾配(傾斜角度)を変更することができる。図12に示したように、回収ボックス54の上面には、複数の気体導入経路56が連結され、これらの気体導入経路56を経由して回収ボックス54内へ導入される気体の導入量を変更するため、それぞれ流量調節バルブ56aが設けられている。また、回収ボックス54の下方には複数のフラップ弁55a,55bが順番に配置されている。
【0084】
図2に示す改質フライアッシュ製造設備90において、粉砕分級装置30の流出経路35から気体とともに排出された改質フライアッシュFC1が除去された気体は分級装置50の流入経路57を経由して円筒部52内へ流入し、これにより円筒部52内には軸心を中心とする旋回流が発生する。この旋回流で生じる遠心力の作用によって改質フライアッシュFC1が除去された気体は円筒部52の内周面52aに向かって拡散移動して内周面52aに当接し、その後、旋回流とともに内周面52aに沿って下向きの螺旋流を描きながら下降していく。そして、回収ボックス54内において反転して上昇する旋回流から分離された改質フライアッシュFC2が回収ボックス54に回収される一方、改質フライアッシュFC2が除去された気体は流出経路58から排出される。
【0085】
回収ボックス54に回収された改質フライアッシュFC2はフラップ弁55a,55bを開放することにより排出される。改質フライアッシュFC2は、図1(c)に示すように、平均粒径が10.0μm~40.0μmであり、その他の項目については図1(a)に示す改質フライアッシュFA2と同等であり、JIS規格に定められているフライアッシュII種灰の規定を満たしている。
【0086】
ここで、分級装置50の円錐部53の周壁から外へ突出した操作ハンドル60を回転させて、ベーン59の勾配を急にすれば(垂直に近づければ)、円錐部53内に発生している旋回流の外周部分(円錐部53の内周面53a寄りの部分)の渦流速が抑制され、遠心分離力が減少するため、分級点が下がる。逆に、操作ハンドル60を回転させて、ベーン59の勾配を緩やかにすれば(水平に近づければ)、円錐部53内に発生している旋回流の外周部分(円錐部53の内周面53a寄りの部分)の渦流速の抑制が解除されるため、遠心分離力が増大して、分級点が上がる。
【0087】
即ち、操作ハンドル60を回転させてベーン59の勾配を変更することにより、旋回流の外周部の渦流速が変化し、遠心分離力が変化するため、旋回流とともに円錐部53の内周面53aに沿って下向きの螺旋流を描きながら落下する改質フライアッシュFC2の分級点を容易に変更することができる。このように、操作ハンドル60を操作して、ベーン59の勾配を変更することにより、分級点を下げたり、上げたりすることができる。このため、改質フライアッシュFC2などのように、乾燥状態にある粉粒体の分級作業において、分級点を比較的容易に変更することができる。
【0088】
また、分級装置50においては、回収ボックス54に、気体供給量を変更するための流量調節バルブ56aを有する気体導入経路56を設けている。従って、流量調節バルブ56aを操作して、回収ボックス54に供給する気体を増加、減少させれば、それに応じて、回収ボックス54内の旋回流が減少、増大し、これによって分級点を変更することができる。
【0089】
即ち、流量調節バルブ56aを開いて、回収ボックス54に供給する気体を増加させれば、回収ボックス54内の旋回流が減少して遠心分離力も減少するため、粒径の大きな改質フライアッシュFC2の落下量が増加して分級点が上がる。逆に、流量調節バルブ56aを閉じて、回収ボックス54に供給する気体を減少させれば、回収ボックス54内の旋回流が増大して遠心分離力も増大するため、粒径の小さな改質フライアッシュFC2の落下量が増加して分級点が下がる。
【0090】
また、分級装置50においては、図13に示すように、円錐部53の内周面53aとベーン59との間に隙間62を設けている。従って、旋回流とともに円錐部53の内周面53aに沿って落下する改質フライアッシュFC2は、円錐部53の内周面53aとベーン59との隙間62を通過して移動可能であり、これによって、改質フライアッシュFC2の円滑な落下を確保することができる。
【0091】
さらに、図14に示すように、4枚のベーン59を円錐部53の周方向に沿って等間隔に配置しているため、旋回流の局部的な乱れが生じることなく、円錐部53の周方向に沿って均等に旋回流を抑制することができる。これによって、滑らかな分級点制御を行うことができ、円錐部53の内周面53aに沿って降下する改質フライアッシュFC2の再飛散も減少する。なお、ベーン59の枚数は4枚に限定するものではないので、2枚~10枚程度の範囲内で適切な枚数を設定することができる。
【0092】
一方、分級装置50の流出経路58から気体とともに排出された改質フライアッシュFC2が除去された気体は、図2に示す流入経路71を経由してバグフィルタ70内へ送り込まれる。バグフィルタ70内へ流入した石炭灰は、この中で濾過捕集された後、下端部に設けられたホッパ72から改質フライアッシュFC3として排出される。改質フライアッシュFC3は、図1(d)に示すように、平均粒径が2.0μm~10.0μmであり、その他の項目については図1(a)に示す改質フライアッシュFA2と同等であり、JIS規格に定められているフライアッシュI種灰の規定を満たしている。
【0093】
以上のように、未燃カーボンを含有するフライアッシュ原粉FA1を図2に示す改質フライアッシュ製造設備90において処理することにより、4種類の改質フライアッシュFA2およびFC1,FC2,FC3を得ることができ、これらの改質フライアッシュFA2およびFC1,FC2,FC3の未燃カーボン含有量は、それぞれJIS規格のIV種灰,II種灰,I種灰に規定されている値より極めて少ない。即ち、改質フライアッシュ製造備90により、フライアッシュ原粉FA1を原料として、未燃カーボン含有量が極めて少なく、要求に応じて適切に粒度調整された改質フライアッシュFA2およびFC1,FC2,FC3を製造することができる。
【0094】
これらの改質フライアッシュFA2およびFC1,FC2,FC3は、コンクリート用混和材、建設材料、船舶の艤装材料あるいはフィラーなどとして広く利用することができる。例えば、コンクリート用材料として改質フライアッシュFA2やFC2をセメント代用として使用した場合、混入量が60kg/m3~100kg/m3程度、若しくはフライアッシュ置換率が15%~25%程度であれば、改質フライアッシュFA2やFC2を使用していないコンクリート(基準コンクリート)と同一配合であっても、その流動性、空気連行性、強度発現性能が基準コンクリートとほぼ同一のコンクリートを製造することができる。
【0095】
また、改質フライアッシュFC1を、コンクリート用材料の細骨材代替として使用した場合、混入量が細骨材容積の20%程度であれば、改質フライアッシュFC1を使用していないコンクリート(基準コンクリート)と同一の配合であっても、その流動性、空気連行性、強度発現性能が基準コンクリートとほぼ同一のコンクリートを製造することができる。なお、改質フライアッシュFA2およびFC2,FC3についても、同様に、コンクリート用材料の細骨材代替として使用することができる。
【0096】
さらに、改質フライアッシュFC3は、粒子径が非常に細かく、また球形粒子であるため、充填材などとして好適に使用することができる。
【0097】
また、図2に示すように、改質フライアッシュ製造設備90においては、粉砕分級装置30の流出経路35から流出する改質フライアッシュFA2から改質フライアッシュFC1が取り除かれたものを、分級装置50を経由することなく、バグフィルタ70へ流入させるためのバイパス経路BPと、バイパス経路BPへ向かう流路を開閉するための開閉器73を設けている。
【0098】
従って、開閉器73が閉じているときは、石炭灰は粉砕分級装置30から分級装置50を経てバグフィルタ70の順に流れていくが、開閉器73を開くことにより、粉砕分級装置30の流出経路35から流出する石炭灰を直接バグフィルタ70へ流入させることができる。
【0099】
従って、改質フライアッシュFC1,FC2,FC3の何れかを選択的に製造したい場合、例えば、改質フライアッシュFC1,FC3は製造したいが、分級装置50で形成される改質フライアッシュFC2は製造不要である場合、改質フライアッシュFC1,FC3のみを集中的に効率良く製造することができる。
【0100】
なお、図1図14に基づいて説明した改質フライアッシュは本発明に係るフライアッシュの一例を示すものであり、本発明に係る改質フライアッシュは前述した改質フライアッシュに限定されない。また、本発明に係る改質フライアッシュを製造するための設備は図2図14に基づいて説明した改質フライアッシュ製造設備に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る改質フライアッシュは、コンクリート用混和材、コンクリート用補修材、コンクリート用充填材などとして、土木建築業や土木建設業などの各種産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 焼成装置
2 ロータリーキルン
2a 始端部
2b 終端部
2c 軸心
2d 内周面
3 スクリューコンベア
3a,11 ホッパ
4 助燃バーナ
5 空気吹込管
5a 空気吹出孔
5b 隔壁
6a,7a 外殻炉
6b バーナ
7b,16 送風機
8 撹拌部材
8a 冷却水ノズル
8b 水受け
9 排出口
10 排気管
12 クーリングタワー
17 ダムプレート
17a 貫通孔
18 撹拌部材
19 固定部材
20 隙間
21 熱交換機
22 バグフィルタ
30 粉砕分級装置
32 円筒部
32a,33a 内周面
33 円錐部
34 流入経路
35 流出経路
36 粉砕羽根
36a 起立部
37 回転軸
38 気体供給経路
39 棚状部
40a,40b 軸受
41 保持部材
42 係止部材
43 保持架台
44 ベルト
45 回収ボックス
29,46 耐摩耗板材
47 ゲート弁
48 ロータリー弁
49 ヒータ
25 ホッパ
26 空気噴出ノズル
24 導入経路
23 ガス導入管
27 制御装置
28 流量調節バルブ
50 分級装置
52 円筒部
52a,53a 内周面
53 円錐部
54 回収ボックス
55a,55b フラップ弁
56 気体導入経路
56a 流量調節バルブ
57 流入経路
58 流出経路
59 ベーン
60 操作ハンドル
61 下端
62 隙間
63 軸受
64 支軸
70 バグフィルタ
71 流入経路
72 ホッパ
73 開閉器
80 ホットジェネレータ
81,82,83 給気経路
90 フライアッシュ製造設備
AP 給気経路
BP バイパス経路
D,d 内径
FA1 フライアッシュ原粉
FA2,FC1,FC2,FC3 改質フライアッシュ
HA1,HA2 高温空気
M 駆動モータ
R 搬送経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14