(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165721
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】情報処理装置における情報処理方法、情報処理装置、および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 50/60 20190101AFI20241121BHJP
【FI】
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082139
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】松村 宗洋
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125CA18
5H125CD02
5H125CD10
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】電動移動体の電費を精度よく推定するための走行データを取得する。
【解決手段】情報処理方法は、電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置における情報処理方法であって、
電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、
前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、
前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、
前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、
前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を出力する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記測定経路は、前記電動移動体を右折させる右折路、及び、前記電動移動体を左折させる左折路を含まない、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記測定経路は、上り勾配区間、平坦区間、及び下り勾配区間を有している、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記測定経路の抽出では、前記測定経路を抽出することができない場合、前記所定距離よりも短い距離を連続航行可能な2以上の測定経路要素を前記走行可能範囲内において抽出し、
さらに、前記2以上の測定経路要素を含む第2表示情報を前記表示装置に出力し、
前記制御情報の出力では、前記電動移動体がいずれかの前記測定経路要素内に位置する場合、前記制御情報を出力する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
さらに、前記走行データに基づいて、前記測定経路と前記電動移動体が実際に走行した走行経路との経路一致率を算出し、
前記経路一致率を前記表示装置に出力する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項6】
さらに、前記地図情報に基づいて、前記電動移動体が前記測定経路に対して所定距離内に位置しているか否かを判定し、
前記電動移動体が前記所定距離内に位置している場合、さらに、前記電動移動体のユーザに電費の推定に適した運転を行わせるための運転推奨情報を含む第3表示情報を前記表示装置に出力する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記運転推奨情報は、前記電動移動体の走行速度に関する情報、前記電動移動体のハンドルの操作数に関する情報、及び前記電動移動体の加速度に関する情報、のうち少なくとも一つを含んでいる、請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
さらに、前記走行データに基づいて、前記測定経路と前記電動移動体が実際に走行した走行経路との経路一致率、及び、前記運転推奨情報の達成率を算出し、
前記経路一致率及び前記達成率に基づいて、前記第1表示情報及び前記第3表示情報に対するユーザの遵守度合いを示す運転一致率を算出し、
前記運転一致率を含む第4表示情報を前記表示装置に出力する、請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記第4表示情報の出力では、前記運転一致率の大きさに応じて前記第4表示情報の表示態様を変化させる、請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
さらに、前記電動移動体の目的地の位置情報を取得し、
前記目的地の位置情報と、前記電動移動体の現在地の位置情報とに基づいて、前記電動移動体が前記目的地に到達するまでの1以上の探索経路を抽出し、
前記測定経路の抽出では、前記1以上の探索経路内に位置する前記測定経路を抽出する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項11】
さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、気温に関する気温情報を取得し、
今回の走行における気温と、過去の走行における気温とに基づいて、気温の変化量を算出し、
前記気温の変化量が、予め設定されている基準気温変化量を超過している場合、前記測定経路を抽出する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項12】
さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、前記バッテリの残電力量の減少率を取得し、
今回の走行における残電力量の減少率と、過去の走行における残電力量の減少率とに基づいて、前記バッテリの残電力量の減少率の変化量を算出し、
前記バッテリの残電力量の減少率の変化量が、予め設定されている基準減少率変化量を超過している場合、前記測定経路を抽出する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項13】
さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、前記バッテリのSOHを取得し、
前記バッテリのSOHが基準SOHを下回った場合、前記測定経路を抽出する、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項14】
電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得する取得部と、
前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出する走行可能範囲算出部と、
前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出する抽出部と、
前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力する第1出力部と、
前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を前記電動移動体に出力する第2出力部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項15】
情報処理プログラムであって、
プロセッサに、
電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、
前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、
前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、
前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、
前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を前記電動移動体に出力する、処理を実行させる、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動移動体の電費を推定するための情報を取得する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動移動体の電費を推定するための技術が知られている。例えば特許文献1には、電力により走行可能な自動二輪車(電動移動体)のバッテリエネルギー使用量と、走行距離とに基づいて、自動二輪車の電費を推定する算出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の算出システムでは、電費を推定するための道路(測定経路)の選定が行われていない。そのため、この算出システムでは、電費推定の精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、電動移動体の電費を精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における情報処理方法は、情報処理装置における情報処理方法であって、電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電動移動体の電費を精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態における情報処理システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】測定経路データベースのデータ構成の一例を示す図である。
【
図3】第2判定部による処理の第1例を示すフローチャートである。
【
図4】第2判定部による処理の第2例を示すフローチャートである。
【
図5】第2判定部による処理の第3例を示すフローチャートである。
【
図6】情報処理システムの処理の全体像の一例を示すシーケンス図である。
【
図9】
図6のステップS5における処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】
図6のステップS10における処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】変形例に係る探索経路抽出部及び測定経路抽出部の処理を説明するための図である。
【
図14】変形例に係る探索経路抽出部及び測定経路抽出部の処理を説明するための図である。
【0009】
(本開示に至る経緯)
電動移動体の電費は、正式には、種々の走行環境が予め設定されている試験場において電動移動体を走行させるとともに電費を推定するための走行データを取得し、当該走行データを用いることにより測定される。これに対して、前記従来技術では、測定経路の選定が行われていないため、試験場とは走行環境が大きく異なる道路、すなわち、電費の推定には不向きな道路を走行中の走行データが取得される可能性がある。これでは、電費を精度よく推定し得る走行データを効率よく取得することができない。
【0010】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。
【0011】
(1)本開示の一態様における情報処理方法は、情報処理装置における情報処理方法であって、電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を出力する。
【0012】
この構成によれば、残電力量で走行可能な範囲内に存在する測定経路であって、電費の推定に適した測定経路がユーザに提示される。これにより、ユーザに測定経路の走行を促すことができる。さらに、本構成では、電動移動体が測定経路内に位置する場合に、電動移動体の走行データを取得するための制御情報が出力されるので、電費の測定に適した走行データを効率よく取得できる。
【0013】
(2)上記(1)に記載の情報処理方法において、前記測定経路は、前記電動移動体を右折させる右折路、及び、前記電動移動体を左折させる左折路を含まなくてよい。
【0014】
この構成によれば、試験場に類似する走行環境を有する測定経路がユーザに提示される。これにより、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載の情報処理方法において、前記測定経路は、上り勾配区間、平坦区間、及び下り勾配区間を有していてもよい。
【0016】
この構成によれば、試験場に類似する走行環境を有する測定経路がユーザに提示される。これにより、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、前記測定経路の抽出では、前記測定経路を抽出することができない場合、前記所定距離よりも短い距離を連続航行可能な2以上の測定経路要素を前記走行可能範囲内において抽出し、さらに、前記2以上の測定経路要素を含む第2表示情報を前記表示装置に出力し、前記制御情報の出力では、前記電動移動体がいずれかの前記測定経路要素内に位置する場合、前記制御情報を出力してもよい。
【0018】
この構成によれば、測定経路を抽出することができない場合は、代替的に2以上の測定経路要素が抽出される。したがって、走行可能範囲内に適当な測定経路が存在していない場合でも、電動移動体の電費を精度よく推定することができる走行データを効率よく取得できる。
【0019】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記走行データに基づいて、前記測定経路と前記電動移動体が実際に走行した走行経路との経路一致率を算出し、前記経路一致率を前記表示装置に出力してもよい。
【0020】
この構成によれば、測定経路に沿うような走行が行われたのか否かを示す経路一致率がユーザに提示される。これにより、経路一致率が向上するような運転を行うようにユーザに促すことができる。その結果、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0021】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記地図情報に基づいて、前記電動移動体が前記測定経路に対して所定距離内に位置しているか否かを判定し、前記電動移動体が前記所定距離内に位置している場合、さらに、前記電動移動体のユーザに電費の推定に適した運転を行わせるための運転推奨情報を含む第3表示情報を前記表示装置に出力してもよい。
【0022】
この構成によれば、電動移動体が測定経路に対して所定距離内に位置する場合、すなわち、まもなく電動移動体が測定経路を走行する可能性が高い場合、運転推奨情報がユーザに提示される。これにより、電費の推定に適した運転をユーザに行わせることができる。その結果、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0023】
(7)上記(6)に記載の情報処理方法において、前記運転推奨情報は、前記電動移動体の走行速度に関する情報、前記電動移動体のハンドルの操作数に関する情報、及び前記電動移動体の加速度に関する情報、のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0024】
この構成によれば、例えば試験場において電動移動体の電費を推定する際の走行速度、ハンドルの操作数、又は加速度に類似する条件で、電動移動体を走行させることができる。これにより、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0025】
(8)上記(6)又は(7)に記載の情報処理方法において、さらに、前記走行データに基づいて、前記測定経路と前記電動移動体が実際に走行した走行経路との経路一致率、及び、前記運転推奨情報の達成率を算出し、前記経路一致率及び前記達成率に基づいて、前記第1表示情報及び前記第3表示情報に対するユーザの遵守度合いを示す運転一致率を算出し、前記運転一致率を含む第4表示情報を前記表示装置に出力してもよい。
【0026】
この構成によれば、今回の走行では測定経路に沿った走行が行われたのか否か、及び、今回の走行では運転推奨情報が遵守されたのか否か、を示す運転一致率を算出することができる。つまり、今回の走行が走行データを取得するうえで好適な運転であったのか否かを示す運転一致率を算出できる。さらに、本構成によれば、この運転一致率をユーザに提示することができる。これにより、運転一致率が向上するような運転を行うようにユーザに促すことができる。その結果、電動移動体の電費をさらに精度よく推定することが可能な走行データを効率よく取得できる。
【0027】
(9)上記(8)に記載の情報処理方法において、前記第4表示情報の出力では、前記運転一致率の大きさに応じて前記第4表示情報の表示態様を変化させてもよい。
【0028】
この構成によれば、運転一致率の大きさをユーザに直感的に認識させることができる。
【0029】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記電動移動体の目的地の位置情報を取得し、前記目的地の位置情報と、前記電動移動体の現在地の位置情報とに基づいて、前記電動移動体が前記目的地に到達するまでの1以上の探索経路を抽出し、前記測定経路の抽出では、前記1以上の探索経路内に位置する前記測定経路を抽出してもよい。
【0030】
この構成によれば、電動移動体の走行に目的地が設定されている場合に、目的地から遠ざかるような運転を行わせる測定経路が抽出されることを抑制できる。
【0031】
(11)上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、気温に関する気温情報を取得し、今回の走行における気温と、過去の走行における気温とに基づいて、気温の変化量を算出し、前記気温の変化量が、予め設定されている基準気温変化量を超過している場合、前記測定経路を抽出してもよい。
【0032】
この構成によれば、気温の変化量が基準気温変化量を超過しているタイミング、すなわち、バッテリが気温変化の影響を受けて、電動移動体の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに走行データが取得される。そのため、電動移動体の電費を適切に把握することができる。
【0033】
(12)上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、前記バッテリの残電力量の減少率を取得し、今回の走行における残電力量の減少率と、過去の走行における残電力量の減少率とに基づいて、前記バッテリの残電力量の減少率の変化量を算出し、前記バッテリの残電力量の減少率の変化量が、予め設定されている基準減少率変化量を超過している場合、前記測定経路を抽出してもよい。
【0034】
この構成によれば、バッテリの残電力量の減少率の変化量が基準減少率変化量を超過しているタイミング、すなわち、バッテリの性能が劣化している可能性が高く、電動移動体の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに走行データが取得される。そのため、電動移動体の電費を適切に把握することができる。
【0035】
(13)上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の情報処理方法において、さらに、前記電動移動体の走行が行われるごとに、前記バッテリのSOHを取得し、前記バッテリのSOHが基準SOHを下回った場合、前記測定経路を抽出してもよい。
【0036】
この構成によれば、電動移動体のSOH(State Of Health)が所定の閾値を下回ったタイミング、すなわち、バッテリの健康状態が低下しており、電動移動体の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに走行データが取得される。そのため、電動移動体の電費を適切に把握することができる。
【0037】
(14)本開示の別の一態様における情報処理装置は、電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得する取得部と、前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出する走行可能範囲算出部と、前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出する抽出部と、前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力する第1出力部と、前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を前記電動移動体に出力する第2出力部と、を備える。
【0038】
この構成によれば、上記情報処理方法を実行する情報処理装置を提供できる。
【0039】
(15)本開示の別の一態様における情報処理プログラムは、情報処理プログラムであって、プロセッサに、電動移動体の現在地の位置情報を含む地図情報と、前記電動移動体のバッテリの残電力量と、を取得し、前記地図情報及び前記残電力量に基づいて前記電動移動体の走行可能範囲を示す走行可能範囲情報を算出し、前記地図情報と前記走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路を走行可能範囲内において抽出し、前記測定経路を含む第1表示情報を表示装置に出力し、前記電動移動体が前記測定経路内に位置する場合、前記電動移動体の走行データを取得する制御情報を前記電動移動体に出力する、処理を実行させる。
【0040】
この構成によれば、上記情報処理方法を実行する情報処理プログラムを提供できる。
【0041】
本開示は、このような情報処理プログラムによって動作する情報処理システムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0042】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態における情報処理システム1の一例を示すブロック図である。情報処理システム1は、主に、電動車両10と、情報端末20と、情報処理装置30と、を有する。
【0044】
電動車両10は、搭載されたバッテリ10aを用いて移動する電動移動体の一例である。バッテリ10aは、充放電可能な二次電池である。電動車両10は、例えば、電動自動車、電動トラック、電動バス又は電動バイクであり、バッテリ10aに充電された電力を電気モータへ供給することで移動する。電動車両10は、ネットワークNWを介して情報処理装置30と互いに通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えばインターネット及び携帯電話通信網を含む広域通信網である。電動車両10は、電動車両10の現在位置を示す位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)受信機を備えている。
【0045】
情報端末20は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又は車載端末などであり、電動車両10を利用するユーザにより操作される。情報端末20は、ネットワークNWを介して情報処理装置30と互いに通信可能に接続されている。情報端末20は、各種の情報をユーザに提示するための表示装置20aを有している。表示装置20aは、例えば液晶ディスプレイである。
【0046】
情報処理装置30は、例えば、1以上のコンピュータにより構成されているサーバである。情報処理装置30は、
図1に示すように、通信部31、メモリ32及びプロセッサ33を備える。
【0047】
通信部31は、情報処理装置30が電動車両10とネットワークNWを介して通信するための無線通信インターフェイス回路及び/又は有線通信インターフェイス回路である。
【0048】
メモリ32は、例えば、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の各種情報を記憶可能な記憶装置である。メモリ32により、地図情報データベースDB1、及び、測定経路データベースDB2が実現される。
【0049】
地図情報データベースDB1は、世界中の地図、地名、緯度、経度、高度、道路情報、行政区画、交通標識、公共交通路線、水路、地形、ランドマーク、緑地・公園情報などの各種の地理的な情報が記録されているデータベースである。
【0050】
測定経路データベースDB2は、後述する直進道路条件、勾配条件、距離条件及び非カーブ路条件に関する情報が記憶されているデータベースである。
【0051】
プロセッサ33は、例えば、中央演算処理装置である。プロセッサ33により、取得部331、走行可能範囲算出部332、探索経路抽出部333、測定経路抽出部334(抽出部の一例)、第1判定部335、第1出力部336、第2出力部337、運転一致率算出部338、第2判定部339、及び電費推定部340が実現される。具体的に、取得部331~電費推定部340は、プロセッサ33が所定の情報処理プログラムを実行することにより実現される。ただし、これは一例であり、取得部331~電費推定部340は、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)等の専用の電気回路で実現されてもよい。なお、
図1に示すプロセッサ33の各機能部は例示であって、一部の機能部が省略されたり、一部の機能部が他の機能部に統合されたりしてもよい。また、プロセッサ33が実行する処理の一部は、情報処理装置30と情報通信可能に接続されている図示しない外部装置等により実現されてもよい。
【0052】
取得部331は、バッテリ10aの残電力量と、地図情報と、を取得する。バッテリ10aの残電力量は、通信部31を介して電動車両10と通信を行うことにより取得することができる。地図情報は、電動車両10の現在地の位置情報と、現在地の周囲の領域を示す背景地図と、道路情報と、を含む情報である。電動車両10の現在地の位置情報は、例えば電動車両10の現在地の緯度及び経度に関する情報であり、通信部31を介して電動車両10と通信を行うことにより取得される。背景地図は、電動車両10の現在地の周囲の領域に存在する道路や地点の名称などが記載されている地図であり、地図情報データベースDB1から取得される。道路情報は、前記背景地図内に存在する道路の長さ、形状、勾配、制限速度、曲率半径などに関する情報であり、地図情報データベースDB1から取得される。取得部331が取得した各種の情報は、メモリ32等に適宜記憶される。
【0053】
また、取得部331は、電動車両10から走行データを取得する。走行データは、電動車両10の電費を推定するために用いられる情報である。例えば、走行データは、電動車両10の走行履歴、走行距離、走行速度、加速度、及びハンドルの操作数に関する情報、バッテリ10aの電流値、電圧値などの情報を含んでいる。なお、ハンドルの操作数は、ハンドルの回転角度を検知することにより検出される。
【0054】
さらに、取得部331は、電動車両10の走行が行われるごとに、気温に関する気温情報、バッテリ10aの残電力量の減少率、及びバッテリ10aのSOHを取得する。本明細書において、「気温」とは、電動車両10の走行時におけるバッテリ10aの周囲の空気の温度のことを指している。また、本明細書において、「バッテリ10aの残電力量の減少率」とは、バッテリ10aの電池残量の単位距離あたりの減少量のことを指している。
【0055】
このほか、取得部331は、付加情報を取得してもよい。付加情報は、電動車両10のユーザに関するユーザ識別情報、電動車両10に関する車両情報、電動車両10に搭載されているバッテリ10aに関する電池情報、及び日時情報の少なくとも1つを含む。ユーザ識別情報は、例えば、ユーザの識別子(ユーザID)、体重、性別、年齢、及び身長等のユーザの特徴を示す情報である。車両情報は、例えば、車種、電動車両10の識別子(移動体ID)、及び電動車両10の重量等の車両の特徴を示す情報である。電池情報は、例えば、電池の識別子(電池ID)、電池の種類、及び電池の容量等の電池の特徴を示す情報である。日時情報は、電動車両10が使用された年、月、日、曜日、及び時間帯を含む情報である。また、電動車両10に目的地が設定されている場合、取得部331は、当該目的地の位置情報を地図情報データベースDB1から取得する。
【0056】
走行可能範囲算出部332は、取得部331が取得した地図情報と、バッテリ10aの残電力量とに基づいて、電動車両10の走行可能範囲A(
図7参照)を示す走行可能範囲情報を算出する。
【0057】
探索経路抽出部333は、取得部331が取得した目的地の位置情報と、電動車両10の現在地の位置情報とに基づいて、現在地から目的地までの1以上の探索経路s(
図7参照)を抽出する。なお、電動車両10の走行に目的地が設定されていない場合、探索経路sの抽出処理は行われない。
【0058】
測定経路抽出部334は、地図情報と走行可能範囲情報とに基づいて、所定距離を連続航行可能な1以上の測定経路R1(
図7参照)を走行可能範囲A内において抽出する。
【0059】
測定経路R1は、電動車両10の電費を測定するための試験場に設置されている道路に設定されている走行環境と同様の走行環境を有する道路である。つまり、測定経路R1は、試験場に設置されている道路と類似する道路である。なお、以下では、「試験場に設置されている道路」のことを試験道路と呼ぶ。
【0060】
具体的に、測定経路R1は、直進道路条件を満たす道路である。直進道路条件を満たす道路とは、電動車両10を右折させる右折路、及び、電動車両10を左折させる左折路を含まない道路である。
【0061】
また、測定経路R1は、上り勾配区間、平坦区間、及び下り勾配区間を有する道路である。上り勾配区間は、基準上り勾配条件を満たし、かつ、基準上り距離条件を満たす区間である。平坦区間は、基準平坦勾配条件を満たし、かつ、基準平坦距離条件を満たす区間である。下り勾配区間は、基準下り勾配条件を満たし、かつ、基準下り距離条件を満たす区間である。基準上り勾配条件、基準平坦勾配条件、基準下り勾配条件、基準上り距離条件、基準平坦距離条件、及び基準下り距離条件のそれぞれは、測定経路データベースDB2に予め記憶されている。以下、基準上り勾配条件、基準平坦勾配条件、及び基準下り勾配条件を総称して勾配条件と呼ぶ。基準上り距離条件、基準平坦距離条件、及び基準下り距離条件を総称して距離条件と呼ぶ。
図2は、測定経路データベースDB2のデータ構成の一例を示す図である。
図2に示すように、基準上り勾配条件は、例えば4°±α°であり、基準平坦勾配条件は、例えば0°+α°であり、基準下り勾配条件は、例えば4°±α°である。基準上り距離条件は、例えば1kmであり、基準平坦距離条件は、例えば2kmであり、基準下り距離条件は、例えば1kmである。なお、これらの数値はあくまでも例示であり、適宜変更可能である。
【0062】
また、測定経路R1は、非カーブ路条件を満たす道路である。非カーブ路条件を満たす道路とは、カーブ路を含まない道路である。道路がカーブ路を含むか否かは、例えば道路の曲率半径に基づいて判定されればよい。具体的には、測定経路抽出部334は、道路の曲率半径が所定の閾値以上の大きさである場合、当該道路はカーブ路を含まないと判定すればよい。
【0063】
測定経路抽出部334は、これらの直進道路条件、勾配条件、距離条件、及び非カーブ路条件を満たしている測定経路R1を、走行可能範囲Aの中から抽出する。これにより、試験道路と同様の走行環境を有する測定経路R1が抽出される。このような測定経路R1を電動車両10に走行させることにより、試験道路を走行させた場合と実質的に同様の走行データを取得することができる。つまり、電動車両10の電費を精度よく推定することが可能な走行データを取得することができる。なお、測定経路R1は、必ずしも上記の条件の全てを満たしている道路である必要はない。ただし、上記の条件を多く満たしている測定経路R1は、試験道路との類似性が高い道路であるといえる。そして、電費推定部340による後述する電費推定処理の精度を向上させる観点からは、試験道路との類似性が高い測定経路R1を抽出することが好ましい。
【0064】
また、本実施の形態に係る測定経路抽出部334は、探索経路抽出部333によって探索経路sが抽出されている場合、探索経路s内に存在する測定経路R1を抽出する。この構成によれば、電動車両10の走行に目的地が設定されている場合に、目的地から遠ざかるような運転を行わせる測定経路R1が抽出されることを抑制できる。具体的には、目的地に対して電動車両10を逆走させるような測定経路R1が抽出されることを抑制できる。
【0065】
さらに、測定経路抽出部334は、測定経路R1を抽出することができない場合、前記所定距離よりも短い距離を連続航行可能な2以上の測定経路要素R2を走行可能範囲A内において抽出する。つまり、測定経路抽出部334は、測定経路R1に設定されている距離条件を緩和し、緩和後の距離条件を満たし、かつ、勾配条件、直進道路条件、及び非カーブ路条件を満たす測定経路要素R2を走行可能範囲Aから複数抽出する。緩和される距離条件の一例は、緩和前の距離条件の例えば1/2である。すなわち、基準上り距離条件が500m、基準平坦距離条件が1km、基準下り距離条件が500mである。また、探索経路抽出部333によって探索経路sが抽出されている場合、測定経路抽出部334は、探索経路s内に存在する2以上の測定経路要素R2を抽出する。
【0066】
ただし、測定経路抽出部334が無数の測定経路要素R2を抽出する場合、電動車両10に全ての測定経路要素R2をもれなく走行させることは困難である。そのため、測定経路抽出部334が抽出する測定経路要素R2の数には上限が設けられていてもよい。例えば、本実施の形態に係る測定経路抽出部334は、2以上10以下の測定経路要素R2を抽出する。ただし、上限の10は一例であり、適宜の値が採用できる。
【0067】
第1判定部335は、電動車両10の現在地の位置情報に基づいて、電動車両10が測定経路R1に対して所定距離内に位置しているか否かを判定する。電動車両10が測定経路R1に対して所定距離内に位置している場合、後述する運転推奨情報を含む第3表示情報がユーザに提示される。
【0068】
さらに、第1判定部335は、電動車両10の現在地の位置情報に基づいて、電動車両10が測定経路R1内に位置しているか否かを判定する。つまり、電動車両10が測定経路R1の走行を開始しているか否かを判定する。電動車両10が測定経路R1の走行を開始している場合、第2出力部337が後述する制御信号を電動車両10に出力して、走行データが電動車両10に取得される。
【0069】
なお、測定経路抽出部334が測定経路R1に代えて2以上の測定経路要素R2を抽出している場合、第1判定部335は、電動車両10の現在地の位置情報に基づいて、電動車両10がいずれかの測定経路要素R2に対して所定距離内に位置しているか否かを判定する。また、測定経路抽出部334が測定経路R1に代えて2以上の測定経路要素R2を抽出している場合、第1判定部335は、電動車両10の現在地の位置情報に基づいて、電動車両10が測定経路要素R2内に位置しているか否かについて判定する。
【0070】
第1出力部336は、測定経路R1を含む第1表示情報IF1(
図7参照)を表示装置20aに表示させる信号を出力する。また、測定経路抽出部334が2以上の測定経路要素R2を抽出している場合、第1出力部336は、2以上の測定経路要素R2を含む第2表示情報IF2(
図10参照)を表示装置20aに表示させる信号を出力する。
【0071】
さらに、電動車両10が測定経路R1又はいずれかの測定経路要素R2に対して所定距離内に位置していると第1判定部335に判定された場合、第1出力部336は、運転推奨情報を含む第3表示情報を表示装置20aに表示させる信号を出力する。言い換えると、電動車両10がまもなく測定経路R1又は測定経路要素R2の走行を開始するタイミングで、第1出力部336は、運転推奨情報を表示装置20aに表示させる。
【0072】
運転推奨情報は、電動車両10のユーザに、電費の推定に適した運転を行わせるための情報である。具体的には、試験場において電動車両10の電費を測定する際に行われる運転と同様の運転をユーザに行わせるための情報である。本実施の形態に係る運転推奨情報は、電動車両10の走行速度に関する情報、電動車両10のハンドルの操作数に関する情報、電動車両10の加速度に関する情報、を含んでいる。これらの情報は、文字、図又は音声などの態様によりユーザに表示される。
【0073】
電動車両10の走行速度に関する情報は、例えば、「上り勾配区間では時速10km前後の走行速度で運転し、平坦区間では時速15km前後の走行速度で運転し、下り勾配区間では時速20km前後の走行速度で運転してください」といったメッセージである。
【0074】
電動車両10のハンドルの操作数に関する情報は、例えば、「測定経路の走行中は、ハンドルの操作数を5回以内にしてください」といったメッセージである。
【0075】
電動車両10の加速度に関する情報は、例えば「測定経路の走行中は、0.5m/s2前後の加速度で運転してください」といったメッセージである。
【0076】
さらに、第1出力部336は、第4表示情報IF4(
図9参照)を表示装置20aに表示させる信号を出力する。第4表示情報IF4は、後述する運転一致率を含む情報である。さらに、第1出力部336は、運転一致率の大きさに応じて、第4表示情報の表示態様を変化させる。
【0077】
第2出力部337は、電動車両10が測定経路R1内又は測定経路要素R2内に位置していると第1判定部335に判定された場合に、走行データを取得する制御情報を電動車両10に出力する。つまり、第2出力部337は、電動車両10が測定経路R1又は測定経路要素R2の走行を開始している場合、電動車両10に走行データを取得させる。電動車両10によって取得された走行データは情報処理装置30に送信されて、取得部331に取得される。
【0078】
運転一致率算出部338は、第1表示情報及び第3表示情報に対するユーザの遵守度合いを示す運転一致率を算出する。つまり、運転一致率算出部338は、測定経路R1に沿うような走行が行われたのか、及び、運転推奨情報に従った運転が行われたのか、を示す運転一致率を算出する。運転一致率を算出するために、運転一致率算出部338は、電動車両10が実際に走行した走行経路AR(
図8参照)と測定経路R1との経路一致率、及び、運転推奨情報の達成率を算出する。
【0079】
第2判定部339は、走行データを取得するための処理を開始すべきであるか否かについて判定する。すなわち、第2判定部339は、測定経路R1の抽出処理を測定経路抽出部334に開始させるべきであるか否かについて判定する。以下、
図3~
図5を参照しながら、第2判定部339の処理について説明する。
【0080】
図3は、第2判定部339による処理の第1例を示すフローチャートである。第1例において、第2判定部339は、電動車両10の走行が行われるごとに
図3に示す処理を実行する。
【0081】
ステップS111において、第2判定部339は、気温情報を参照する。気温情報は、取得部331が予め取得している。具体的に、第2判定部339は、今回の走行時における気温の範囲と、前回の走行時における気温の範囲とを参照する。
【0082】
ステップS112において、第2判定部339は、今回の走行における気温範囲の中央値と、過去の走行における気温範囲の中央値とを算出する。例えば、今回の走行では、気温が10℃~15℃の範囲で推移しており、前回の走行では、気温が15℃~20℃の範囲で推移している場合を想定する。この場合、第2判定部339は、今回の走行における気温範囲の中央値を12.5℃と計算し、前回の走行における気温範囲の中央値を17.5℃と計算する。
【0083】
ステップS113において、第2判定部339は、今回の走行における気温範囲の中央値と前回の走行における気温範囲の中央値との変化量を算出する。この例では、第2判定部339は、気温の変化量が5であると計算する。
【0084】
ステップS114において、第2判定部339は、ステップS113で算出した気温の変化量が、メモリ32等に予め記憶されている基準気温変化量を超過しているか否かを判定する。基準気温変化量を超過している場合(ステップS114でYesの場合)、第2判定部339の処理はステップS115に進む。基準気温変化量を超過していない場合(ステップS114でNoの場合)、第2判定部339の処理は終了する。
【0085】
ステップS115において、第2判定部339は、所定の信号を測定経路抽出部334に出力して、測定経路R1の抽出処理を開始させる。これにより、走行データを取得するための処理が開始される。
【0086】
このように、第2判定部339による処理の第1例では、気温の変化量が基準気温変化量を超過しているタイミングに走行データを取得するための処理が開始される。つまり、バッテリ10aが気温変化の影響を受けて、電動車両10の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに走行データを取得するための処理が開始される。この構成によれば、電動車両10の電費を適切に把握することができる。
【0087】
なお、電動車両10の走行中に走行データを取得するための処理が開始される場合、情報処理装置30の処理負荷が増大する可能性がある。そのため、走行データを取得するための処理の開始タイミングは、適切な時点に調整されることが好ましい。例えば、走行データを取得するための処理は、次回の走行の開始直後のタイミングなどに開始されてもよい。具体的には、次回、電動車両10の電源がオンになり、電動車両10が停車状態で目的地が入力された直後のタイミングなどに開始されてもよい。
【0088】
図4は、第2判定部339による処理の第2例を示すフローチャートである。第2例において、第2判定部339は、電動車両10の走行が行われるごとに、
図4に示す処理を実行する。
【0089】
ステップS121において、第2判定部339は、バッテリ10aの残電力量の減少率を参照する。バッテリ10aの残電力量の減少率は、取得部331が予め取得している。具体的に、第2判定部339は、今回の走行におけるバッテリ10aの残電力量の減少率と、前回の走行におけるバッテリ10aの残電力量の減少率とを参照する。
【0090】
ステップS122において、第2判定部339は、今回の走行におけるバッテリ10aの残電力量の減少率と、前回の走行におけるバッテリ10aの残電力量の減少率とを比較して、その減少率の変化量を計算する。
【0091】
ステップS123において、第2判定部339は、ステップS122で算出した減少率の変化量が、メモリ32等に予め記憶されている基準減少率変化量を超過しているか否かを判定する。基準気温変化量を超過している場合(ステップS123でYesの場合)、第2判定部339の処理はステップS124に進む。基準気温変化量を超過していない場合(ステップS123でNoの場合)、第2判定部339の処理は終了する。
【0092】
ステップS124において、第2判定部339は、所定の信号を測定経路抽出部334に出力して、測定経路R1の抽出処理を開始させる。これにより、走行データを取得するための処理が開始される。
【0093】
このように、第2判定部339の処理の第2例では、バッテリ10aの残電力量の減少率の変化量が基準減少率変化量を超過しているタイミングに電費の推定処理が開始される。すなわち、バッテリ10aの性能が劣化している可能性が高く、電動車両10の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに、走行データを取得するための処理が開始される。この構成によれば、電動車両10の電費を適切に把握することができる。
【0094】
図5は、第2判定部339による処理の第3例を示すフローチャートである。第3例において、第2判定部339は、電動車両10の走行が行われるごとに、
図5に示す処理を実行する。
【0095】
ステップS131において、第2判定部339は、バッテリ10aのSOHを参照する。バッテリ10aのSOHは、取得部331が予め取得している。
【0096】
ステップS132において、第2判定部339は、バッテリ10aのSOHがメモリ32等に予め記憶されている基準SOHを下回っているか否かを判定する。基準SOHは、例えば80%である。基準SOHを下回っている場合(ステップS132でYesの場合)、第2判定部339の処理はステップS133に進む。基準SOHを下回っていない場合(ステップS132でNoの場合)、第2判定部339の処理は終了する。
【0097】
ステップS133において、第2判定部339は、バッテリ10aのSOHが基準SOHを下回ったのは今回の走行が初めてであるのか否かを判定する。今回が初めてである場合(ステップS133でYesの場合)、第2判定部339の処理はステップS134に進む。今回が初めてではない場合(ステップS133でNoの場合)、第2判定部339の処理は終了する。
【0098】
ステップS134において、第2判定部339は、所定の信号を測定経路抽出部334に出力して、測定経路R1の抽出処理を開始させる。これにより、走行データを取得するための処理が開始される。
【0099】
このように、第2判定部339の処理の第3例では、バッテリ10aのSOHが所定の基準SOHを下回ったタイミングに走行データを取得するための処理が開始される。すなわち、バッテリ10aの健康状態が低下しており、電動車両10の電費性能が変化している可能性が高いタイミングに、走行データを取得するための処理が開始される。この構成によれば、電動車両10の電費を適切に把握することができる。なお、基準SOHは、複数設定されていてもよい。例えば、90%、85%、及び80%といった態様で、基準SOHが設定されていてもよい。そして、バッテリ10aのSOHが90%を初めて下回ったタイミング、85%を初めて下回ったタイミング、及び80%を初めて下回ったタイミングのそれぞれにおいて、走行データを取得するための処理を開始してもよい。
【0100】
電費推定部340は、走行データに基づいて、電動車両10の電費を推定する。つまり、電費推定部340は、測定経路R1又は2以上の測定経路要素R2を走行することにより収集されたデータに基づいて、電動車両10の電費を推定する。
【0101】
また、電費推定部340は、運転一致率の大きさに応じて所定の補正係数を算出してもよい。そして、当該補正係数を用いて推定した電費を修正してもよい。この構成によれば、より適切な電費を推定することができる。
【0102】
以上説明したように構成されている情報処理システム1の処理について、
図6のシーケンス図を参照して説明する。
図6は、情報処理システム1の処理の全体像の一例を示すシーケンス図である。なお、このシーケンスが開始される前に、走行データを取得するための処理を開始すべきであると第2判定部339に判定されているものとする。
【0103】
まず、ステップS1において、電動車両10は、バッテリ10aの残電力量と、現在地の位置情報と、を含む情報を情報処理装置30に送信する。また、ここでは、電動車両10の走行に目的地が設定されており、当該目的地の地名等に関する情報が情報処理装置30に送信されている場合を想定する。
【0104】
次に、ステップS2において、情報処理装置30の取得部331は、バッテリ10aの残電力量と、地図情報と、目的地の位置情報と、を含む各種の情報を取得する。
【0105】
ステップS3において、走行可能範囲算出部332は、バッテリ10aの残電力量と地図情報とに基づいて、走行可能範囲情報を算出する。例えば、走行可能範囲算出部332は、バッテリ10aの残容量において現在地から到達可能な道路上の複数の地点を地図情報から特定し、特定した複数の地点により取り囲まれる領域を走行可能範囲Aとして算出する。
【0106】
ステップS4において、探索経路抽出部333は、目的地の位置情報と、電動車両10の現在地の位置情報とに基づいて、探索経路sを抽出する。探索経路抽出部333は、例えばダイクストラ法を用いて探索経路sを抽出する。
【0107】
ステップS5において、測定経路抽出部334は、走行可能範囲A内に存在し、かつ、探索経路s内に存在する測定経路R1又は測定経路要素R2を抽出する。ここでは、測定経路R1が抽出された場合を想定する。測定経路抽出部334の処理の詳細については、
図9を用いて後述する。
【0108】
ステップS6において、第1出力部336は、測定経路R1を含む第1表示情報を表示装置20aに表示させるための信号を出力する。
【0109】
次に、ステップS7において、前記信号を受信した情報端末20は、第1表示情報IF1を表示装置20aに表示させる。具体的に、情報端末20は、
図7に示すような第1表示情報IF1を表示装置20aに表示させる。
図7は、背景地図上に探索経路s及び測定経路R1が走行可能範囲Aに重畳して表示されている第1表示情報IF1を示す図である。
図7において、探索経路sは破線で示されており、測定経路R1は2点間を結ぶ太線で示されており、走行可能範囲Aは網点で示されている。また、
図7において、その他の主要な道路は細い実線で示されている。この第1表示情報に従って、ユーザは電動車両10を測定経路R1に向けて移動させる。
【0110】
次に、ステップS8において、電動車両10は、現在地の位置情報を情報処理装置30に送信する。
【0111】
次に、ステップS9において、情報処理装置30の取得部331は、情報処理装置30の位置情報を取得する。
【0112】
ステップS10において、第1判定部335は、電動車両10が測定経路R1内に位置しているか否かについて判定する。第1判定部335の処理の詳細については
図11を用いて後述する。
【0113】
ステップS11において、第2出力部337は、制御情報を電動車両10に出力する。
【0114】
次に、ステップS12において、制御情報を受信した電動車両10は、走行データを取得して、情報処理装置30に送信する。
【0115】
次に、ステップS13において、情報処理装置30の取得部331は、走行データを取得する。
【0116】
ステップS14において、運転一致率算出部338は、走行データに基づいて経路一致率及び達成率を算出し、これらに基づいて運転一致率を算出する。
【0117】
経路一致率は、例えば、測定経路R1の全長に対する、電動車両10が測定経路R1を走行した距離の比率によって算出される。電動車両10が測定経路R1を走行した距離は、走行データに含まれている走行履歴から把握される。ここでは、測定経路R1の全長が4kmであり、電動車両10がそのうちの3kmを走行している場合を想定する。この場合、運転一致率算出部338は、経路一致率を75%と計算する。
【0118】
達成率は、ユーザに推奨していた運転がどの程度達成されているのかを評価することにより算出される。すなわち、本実施の形態において、達成率は、運転推奨情報を表示装置20aに表示することによりユーザに推奨していた走行速度、ハンドルの操作数、及び加速度が遵守されているか否かに基づいて算出される。ユーザに推奨していた走行速度、ハンドルの操作数、及び加速度が遵守されているか否かは、走行データに含まれている走行速度、ハンドルの操作数、及び加速度から把握される。例えば、運転一致率算出部338は、推奨していた走行速度を上回る速度で走行している距離が長いほど、走行速度に関する評価を低くする。また、運転一致率算出部338は、例えば、推奨していたハンドルの操作数よりも多くユーザがハンドルの操作を行っている場合、その超過分に応じてハンドルの操作数に関する評価を低くする。また、運転一致率算出部338は、例えば、推奨していた加速度を超えて加速している回数が多いほど、加速度に関する評価を低くする。
【0119】
運転一致率算出部338は、これらの経路一致率及び達成率を総合的に考慮して、運転一致率を算出する。運転一致率算出部338は、例えば、経路一致率と達成率との単純平均を計算することによって運転一致率を算出する。ただし、運転一致率の算出方法はこれに限定されるものではなく、運転一致率算出部338は、経路一致率と達成率との加重平均を計算することによって運転一致率を算出してもよい。この場合、経路一致率及び達成率のそれぞれの重みは予め適宜設定されていればよい。ここでは、運転一致率が80%であると運転一致率算出部338に計算されたものとする。
【0120】
ステップS15において、第1出力部336は、運転一致率を含む第4表示情報を表示装置20aに表示させるための信号を出力する。この際、第1出力部336は、運転一致率の大きさに応じて第4表示情報の表示装置20aにおける表示態様が変化するように信号を出力する。例えば、第1出力部336は、運転一致率の大きさに応じて、電動車両10が実際に走行した走行経路ARの表示態様が第4表示情報において変化するように信号を出力する。具体的に、第1出力部336は、運転一致率が0%~50%の範囲内にあるときは赤色に、51%~90%の範囲内にあるときは水色に、91%~100%の範囲内にあるときは青色に、走行経路ARが着色された状態で第4表示情報が表示されるように、信号を出力する。
【0121】
次に、ステップS16において、情報端末20は、第4表示情報を表示装置20aに表示させる。例えば、情報端末20は、
図8に示すような第4表示情報を表示装置20aに表示させる。
図8は、背景地図上に、走行経路ARと探索経路sと測定経路R1とが走行可能範囲Aに重畳して表示されている第4表示情報を示す図である。また、この例において、運転一致率は80%であるため、
図8において、走行経路ARは水色に着色されている。このように、本実施の形態では、運転一致率の大きさがユーザにとって直感的に認識しやすい態様により第4表示情報が提示される。これにより、運転一致率が向上するような運転を行うようユーザに促すことができる。また、
図8に示すように、第4表示情報には、経路一致率が含まれていても良い。この構成によれば、経路一致率が向上するような運転を行うようにユーザに促すことができる。
【0122】
そして、ステップS17において、電費推定部340は、走行データに基づいて電動車両10の電費を推定する。電費推定部340は、例えば、電動車両10が測定経路R1を走行した距離と、測定経路R1の走行時におけるバッテリ10aの残電力量の減少率と、に基づいて電動車両10の電費を推定する。
【0123】
続いて、
図9を参照して、測定経路R1又は測定経路要素R2の抽出処理の詳細について説明する。
図9は、
図6のステップS5における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0124】
まず、ステップS51において、第1判定部335は、走行可能範囲A内に測定経路R1が存在するか否かについて判定する。走行可能範囲A内に測定経路R1が存在する場合(ステップS51においてYesの場合)、処理はステップS53に進む。走行可能範囲A内に測定経路R1が存在しない場合(ステップS51においてNoの場合)、処理はステップS52に進む。
【0125】
ステップS52において、第1判定部335は、2以上10以下の測定経路要素R2によって測定経路R1を代替できるか否かについて判定する。すなわち、走行可能範囲A内に2以上の測定経路要素R2が存在するか否かについて判定する。走行可能範囲A内に2以上の測定経路要素R2が存在する場合(ステップS52においてYesの場合)、処理はステップS54に進む。走行可能範囲A内に2以上の測定経路要素R2が存在していない場合(ステップS52においてNoの場合)、情報処理システム1の処理は終了する。
【0126】
ステップS53において、測定経路抽出部334は、直進道路条件、勾配条件、距離条件、及び非カーブ路条件を満たしている測定経路R1を、探索経路sの中から抽出する。
【0127】
ステップS54において、測定経路抽出部334は、測定経路R1に設定されている距離条件を緩和して、2以上10以下の測定経路要素R2を探索経路sの中から抽出する。例えば、測定経路抽出部334は、長さが500m以上の上り勾配区間と、長さが1km以上の平坦区間と、長さが500m以上の下り勾配区間と、を有している測定経路要素R2を抽出する。
【0128】
なお、緩和後の距離条件を満たす測定経路要素R2が探索経路s内に存在しない場合、測定経路抽出部334は、距離条件をさらに緩和してもよい。例えば、測定経路抽出部334は、距離が300m以上の上り勾配区間と、距離が500m以上の平坦区間と、距離が300m以上の下り勾配区間と、を有する測定経路要素R2を探索経路sの中から抽出する。
【0129】
測定経路抽出部334は、各測定経路要素R2の各区間の合計距離が、測定経路R1の各区間に設定されている基準距離以上の距離になるまで上記処理を継続する。すなわち、測定経路抽出部334は、各測定経路要素R2の上り勾配区間の合計距離が1km以上となり、平坦区間の合計距離が2km以上となり、下り勾配区間の合計距離が1km以上となるまで、上記の抽出処理を継続する。
【0130】
ここでは、測定経路抽出部334の上記処理によって、
図10に示すような第1測定経路要素R21、第2測定経路要素R22、及び第3測定経路要素R23が抽出されている場合を想定する。
図10は、背景地図上に探索経路s及び2以上の測定経路要素R2が走行可能範囲Aに重畳して表示されている第2表示情報IF2を示す図である。
図10において、第1測定経路要素R21~第3測定経路要素R23のそれぞれは2点間を結ぶ太線で示されている。第1測定経路要素R21は、距離が400mの上り勾配区間と、距離が700mの平坦区間と、距離が400mの下り勾配区間とを含む道路である。第2測定経路要素R22は、距離が100mの上り勾配区間と、距離が300mの平坦区間と、距離が100mの下り勾配区間と含む道路である。第3測定経路要素R23は、距離が500mの上り勾配区間と、距離が1kmの平坦区間と、距離が500mの下り勾配区間とを含む道路である。第1測定経路要素R21~第3測定経路要素R23の上り勾配区間の合計距離は1kmであり、平坦区間の合計距離は2kmであり、下り勾配区間の合計距離は1kmである。このように、本実施の形態では、走行可能範囲A内に測定経路R1が存在していない場合、2以上の測定経路要素R2が抽出される。これらの測定経路要素R2を電動車両10に順番に走行させることにより、試験道路を走行させた場合と実質的に同様の走行データを取得することができる。
【0131】
なお、2以上の測定経路要素R2の構成は上記の例に限定されず、適宜変更可能である。例えば、測定経路抽出部334は、距離条件のいずれかを満たしており、かつ、勾配条件のいずれかを満たしている道路を測定経路要素R2として抽出してもよい。例えば、測定経路抽出部334は、上り測定経路要素と、平坦測定経路要素と、下り測定経路要素と、を測定経路要素R2として抽出してもよい。上り測定経路要素は、基準上り距離条件を満たし、かつ、基準上り勾配条件を満たす道路である。平坦測定経路要素は、基準平坦距離条件を満たし、かつ、基準平坦勾配条件を満たす道路である。下り測定経路要素は、基準下り距離条件を満たし、かつ、基準下り勾配条件を満たす道路である。要するに、測定経路抽出部334は、測定経路R1の上り勾配区間、平坦区間、及び下り勾配区間のそれぞれに相当する3つの測定経路要素R2を抽出してもよい。
【0132】
続いて、
図11を参照して、第1判定部335の処理について説明する。
図11は、
図6のステップS10における処理の詳細を示すフローチャートである。
【0133】
ステップS101において、第1判定部335は、電動車両10が測定経路R1に対して所定距離内に位置しているか否かについて判定する。電動車両10が測定経路R1に対して所定距離内に位置している場合(ステップS101においてYesの場合)、処理はステップS102に進む。電動車両10が測定経路R1に対して所定距離内に位置していない場合(ステップS101においてNoの場合)、処理は
図6のステップS9に戻る。
図11では、説明の便宜上、
図6のステップS9を図示している。なお、測定経路抽出部334が2以上の測定経路要素R2を抽出している場合、第1判定部335は、電動車両10が測定経路要素R2のうちのいずれかに対して所定距離内に位置しているか否かについて判定する。
【0134】
上記の処理に代えて、ステップS101において、第1判定部335は、電動車両10の進行方向、及び、電動車両10の現在地と測定経路R1との位置関係に基づいて、電動車両10が測定経路R1を走行する可能性が高いか否かを判定してもよい。そして、電動車両10が測定経路R1を走行する可能性が高いと判定する場合にのみ、処理をステップS102に進めてもよい。測定経路抽出部334が測定経路R1に代えて複数の測定経路要素R2を抽出している場合も同様である。なお、電動車両10の進行方向は、電動車両10の現在地の位置情報を定期的に取得することにより把握できる。
【0135】
ステップS102において、第1出力部336は、運転推奨情報を表示装置20aに表示させる。
【0136】
ステップS103において、取得部331は、電動車両10の現在地の位置情報を取得する。
【0137】
ステップS104において、第1判定部335は、電動車両10が測定経路R1の走行を開始しているか否かを判定する。電動車両10が測定経路R1の走行を開始している場合(ステップS104においてYesの場合)、処理は
図6のステップS11に進む。電動車両10が測定経路R1の走行を開始していない場合(ステップS104においてNoの場合)、処理はステップS103に戻る。
【0138】
以上説明したように、本実施の形態に係る情報処理システム1によれば、残電力量で走行可能な範囲内に存在する測定経路R1であって、電費の推定に適した測定経路R1がユーザに提示される。これにより、ユーザに測定経路R1の走行を促すことができる。さらに、本実施の形態では、電動車両10が測定経路R1内に位置する場合に、電動車両10の走行データを取得するための制御情報が出力されるので、電費の測定に適した走行データを効率よく取得できる。
【0139】
(変形例)
(1)運転一致率算出部338は、上り勾配区間、平坦区間及び下り勾配区間ごとの運転一致率及び運転不一致率を算出してもよい。この場合、第1出力部336は、各運転一致率及び各運転不一致率を表示装置20aに表示させてもよい。具体的には、
図12に示すように各運転一致率及び各運転不一致率を表示させてもよい。
図12は、区画ごとの運転一致率及び運転不一致率が表示されている第5表示情報IF5を示す図である。
図12には、上り勾配区間における運転一致率が70%であり、平坦区間における運転一致率が80%であり、下り勾配区間における運転一致率が50%である例を示している。すなわち、上り勾配区間における運転不一致率が30%であり、平坦区間における運転不一致率が20%であり、下り勾配区間における運転不一致率が50%である例を示している。
【0140】
さらに、測定経路抽出部334は、各区間における運転不一致率を参照して、運転不一致率を充足するための充足測定経路を新たに抽出してもよい。例えば、上り勾配区間において、所定の走行速度を超過している状態で300m走行したことが上り勾配区間における運転一致率を低下させている原因である場合を想定する。この場合、測定経路抽出部334は、基準上り勾配を満たしており、かつ、300m以上の長さを有する道路を充足測定経路として新たに抽出してもよい。ここで、当該充足測定経路を電動車両10が問題なく走行した場合、運転一致率算出部338は、上り勾配区間における運転一致率を100%に更新してもよい。また、第2出力部337は、充足測定経路の走行時における走行データを取得する制御情報を電動車両10に出力してもよい。同様の手法により、平坦区間及び下り勾配区間に関する充足測定経路を抽出し、運転一致率を更新し、走行データを取得してもよい。そして、電費推定部340は、測定経路R1を走行させることにより得られた走行データと、各充足測定経路を走行させることにより得られた走行データとに基づいて、電費を推定してもよい。本変形例に係る構成によれば、電費推定の精度がより一層向上する。
【0141】
(2)電動車両10の走行に目的地が設定されていない場合、測定経路抽出部334は、走行可能範囲A内に存在する測定経路R1を抽出する。ここで、2以上の測定経路R1が走行可能範囲A内に存在する場合、測定経路抽出部334は、電動車両10との距離が最も近い測定経路R1を抽出してもよい。あるいは、測定経路抽出部334は、任意の測定経路R1をユーザに選択させるボタンなどを表示装置20aに表示させてもよい。
【0142】
また、電動車両10の走行に目的地が設定されておらず、かつ、走行可能範囲A内に測定経路R1が存在していない場合、測定経路抽出部334は、走行可能範囲A内に存在する2以上の測定経路要素R2を抽出する。この場合、測定経路抽出部334は、2以上の測定経路要素R2を漏れなく走行するための最適な経路を抽出し、当該最適な経路を表示装置20aに表示させてもよい。
【0143】
(3)第2判定部339は、気温が所定の基準値を下回っている場合又は上回っている場合に、走行データを取得するための処理を開始すべきと判定してもよい。例えば、第2判定部339は、気温が15℃を下回っている場合、又は、気温が35℃を上回っている場合に、走行データを取得するための処理を開始すべきと判定してもよい。このほか、湿度が基準湿度を上回った場合などに、走行データを取得するための処理を開始すべきと判定してもよい。
【0144】
(4)探索経路抽出部333が抽出した探索経路s内に測定経路R1が存在していない場合、探索経路抽出部333は別の探索経路sを抽出してもよい。この場合、測定経路抽出部334は、当該別の探索経路sから測定経路R1を抽出してもよい。以下、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13及び
図14は、本変形例に係る探索経路抽出部333及び測定経路抽出部334の処理を説明するための図である。
図13には、最短ルートs1を示している。最短ルートs1は、探索経路抽出部333がダイクストラ法を用いて探索経路sを抽出した結果、最もコストが少ないことが判明したルートである。本変形例に係る測定経路抽出部334は、最短ルートs1内に測定経路R1が存在していない場合、所定の信号を探索経路抽出部333に送信する。そして、当該信号を受信した探索経路抽出部333は、別の探索経路sを抽出する。例えば、探索経路抽出部333は、
図13に示すような次善ルートs2を抽出する。次善ルートs2は、ダイクストラ法において最短ルートs1の次にコストが少ないルートである。測定経路抽出部334は、当該次善ルートs2の中から測定経路R1を抽出してもよい。なお、仮に次善ルートs2にも測定経路R1が存在していない場合、探索経路抽出部333は、次善ルートs2の次にコストが少ないルートを抽出してもよい。以上の処理によって測定経路R1を抽出することができない場合、測定経路抽出部334は、最短ルートs1の中から2以上の測定経路要素R2の抽出処理を開始してもよい。また、測定経路抽出部334は、最短ルートs1内に2以上の測定経路要素R2が存在していない場合、
図14に示すように、次善ルートs2の中から2以上の測定経路要素R2を抽出してもよい。さらに、次善ルートs2内にも2以上の測定経路要素R2が存在していない場合、測定経路抽出部334は、次善ルートs2の次にコストが少ないルートの中から測定経路要素R2を抽出してもよい。
【0145】
(5)運転一致率算出部338は、運転一致率を算出することなく、経路一致率のみを算出してもよい。この場合、第1出力部336は、第4表示情報IF4に代えて、経路一致率が含まれている別表示情報を表示装置20aに表示させてもよい。
【0146】
(6)取得部331が取得する道路情報には、信号の数に関する情報、渋滞情報、又は交通量に関する情報が含まれていてもよい。この場合、測定経路抽出部334は、信号の数が多い道路、渋滞している道路、交通量が多い道路に関しては、測定経路抽出部334として抽出しなくてもよい。この構成によれば、電費の推定に適切ではない運転をユーザに行わせる可能性が高い道路が測定経路R1として抽出されることを抑制できる。なお、信号の数が多いか否かに関しては、信号の数が所定の基準信号量を上回るか否かによって判定すればよい。同様に、交通量が多いか否かについては、交通量が所定の基準交通量を上回るか否かによって判定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示によれば、電動移動体の電費を推定するための走行データを取得するうえで有用である。
【符号の説明】
【0148】
1 :情報処理システム
10 :電動車両(電動移動体の一例)
10a :バッテリ
20 :情報端末
20a :表示装置
30 :情報処理装置
331 :取得部
332 :走行可能範囲算出部
333 :探索経路抽出部
334 :測定経路抽出部(抽出部の一例)
335 :第1判定部
336 :第1出力部
337 :第2出力部
338 :運転一致率算出部
339 :第2判定部
340 :電費推定部
A :走行可能範囲
AR :走行経路
NW :ネットワーク
R1 :測定経路
R2 :測定経路要素
s :探索経路
IF1 :第1表示情報
IF2 :第2表示情報
IF4 :第4表示情報
IF5 :第5表示情報