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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165724
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】防水型紫外線発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20241121BHJP
【FI】
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082147
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋元 政洋
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA42
5F142AA72
5F142AA75
5F142BA32
5F142CD02
5F142CD18
5F142DB03
5F142DB32
5F142DB42
5F142DB44
5F142EA02
5F142EA32
5F142GA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】LEDダイの水分による劣化を防止でき、かつ、熱による劣化も防止できる防水型紫外線発光モジュールを提供する。
【解決手段】実装基板20の上に紫外線LEDパッケージ10が搭載されている。レンズ40は、ドーム状のレンズ本体41と、鍔部42を備えている。カバー50と筐体30との間にレンズ40の鍔部42を挟み、締結具60でカバーを筐体に押し付けて固定している。筐体30には、凸型のリブ31が設けられている。レンズ40の鍔部42の下面がリブに押し付けられて変形することにより、レンズ40内の空間を密閉している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線光線と、実装基板と、筐体と、レンズと、カバーと、締結具とを有し、
前記紫外線光源は、紫外線を発するLEDダイがパッケージ内に封入されたLEDパッケージであり、
前記実装基板は、配線を備え、前記紫外線光源が搭載され、前記筐体の上に配置されており、
前記筐体は、前記実装基板を搭載する板状であり、
前記レンズは、紫外線を透過する材料から成り、前記紫外線光源を空間を挟んで覆うように配置されたドーム状のレンズ本体と、前記レンズ本体の周縁部に一体に設けられた鍔部を備え、
前記カバーは、前記レンズの鍔部を覆い、
前記締結具は、前記カバーと前記筐体との間に前記レンズの鍔部を挟んだ状態で、カバーを前記筐体に押し付けて固定し、
前記筐体の前記レンズの鍔部が接する部分には、前記実装基板の周縁に沿って凸型のリブが設けられ、
前記レンズの前記鍔部の下面の前記リブに接する部分が、前記カバーにより前記リブに押し付けられて変形することにより、前記レンズ内の空間を密閉していることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記レンズを構成する材料は、樹脂であることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板の周縁は、前記レンズ本体の前記空間に接する内周の縁部より外側に位置し、かつ、前記筐体の前記リブよりも内側に位置する
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記レンズの前記鍔部の下面は、前記実装基板の周縁において段差を有し、前記段差よりも内側の領域が前記実装基板の上面に接し、前記段差よりも外側の領域が、前記実装基板の上面に接していることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板の下面と前記筐体との間には、絶縁性の熱伝導シートが挟まれていることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記締結具は、ねじであることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項7】
請求項2に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記紫外線光源は、前記LEDダイを搭載する基板と、前記実装基板上のLEDダイが配置された空間を覆う紫外線に対して透明な封止部材とを含み、
前記封止部材は、ガラスである
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項8】
請求項5に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、給電線と、充填部材をさらに有し、
前記筐体および前記熱伝導シートには、それぞれを厚み方向に貫通する第1貫通孔と第2貫通孔が、対応する位置に設けられ、
前記給電線は、前記第1貫通孔と第2貫通孔を貫通しており、一端が前記実装基板の前記配線に接続され、他端が前記筐体の外部に引き出され、
前記筐体の前記第1貫通孔は、前記充填部材により充填し、防水している
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項9】
請求項3に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板上には、2以上の前記紫外線光源が間隔を開けて搭載され、
前記筐体の前記リブと前記レンズの前記鍔部は、前記2以上の前記紫外線光源が搭載された前記実装基板の周縁に沿って設けられている
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項10】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記筐体は、金属、または、金属フィラーを含有する樹脂からなる
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射する発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射して水や空気等の流体を殺菌する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明なチューブをらせん状に巻いて筐体内に配置して、チューブ内に水を流し、筐体内壁に配置した半導体発光素子からチューブ内を流れる水に紫外線を照射して殺菌する装置が開示されている。チューブの材質としては、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂が用いられている。
【0004】
また、特許文献2には、車両用空調装置のダクト内に、紫外線を照射する光照射ユニットを配置し、ダクト内を流れる空気に紫外線を照射することが開示されている。光照射ユニットは、ヒートシンクと放熱フィンに接続された支持板の周囲に、複数の紫外線発光素子を並べて固定した構造である。
【0005】
一方、紫外線を発光する半導体発光素子は、他の波長の光を出射する発光素子と比較して、その材質が水分により劣化しやすい性質を有することが知られている。
【0006】
特許文献3には、防水構造を備える発光モジュールとして、樹脂製の筐体に凹部を設け、凹部内に、パッケージされた発光素子を配置し、内部に空間を有するレンズで覆った構造が開示されている。発光素子としては、紫外線の波長のものを用いることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-148938号公報
【特許文献2】特開2022-113426公報
【特許文献3】特開2022-125391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2には、紫外線を発する発光素子の防水構造については記載されていない。
【0009】
一方、特許文献3の発光モジュールは、光源を樹脂製の筐体とレンズで覆うことにより防水構造にすることが開示されているが、レンズと筐体との接続部の防水構造について具体的な構造は記載されていない。
【0010】
紫外線を発する発光素子は、他の波長の発光素子よりも水分により劣化しやすい材質であるため、レンズと筐体との接続部に防水構造が重要である。しかしながら、紫外線は、樹脂を劣化させるため、Oリング等の樹脂製の防水構造を用いることはできない。
【0011】
また、紫外線を発する発光素子は、他の波長の発光素子よりも発熱量が多く、防水構造にするために、発光素子の周囲の空間を密閉すると、空気中への放熱が困難になる。
【0012】
本発明の目的は、LEDダイの水分による劣化を防止でき、かつ、熱による劣化も防止できる防水型紫外線発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の防水型紫外線発光モジュールは、紫外線光線と、実装基板と、筐体と、レンズと、カバーと、締結具とを有する。紫外線光源は、紫外線を発するLEDダイがパッケージ内に封入されたLEDパッケージである。実装基板は、配線を備え、紫外線光源が搭載され、実装基板は筐体の上に配置されている。筐体は、実装基板を搭載する板状である。レンズは、紫外線を透過する材料から成り、紫外線光源を空間を挟んで覆うように配置されたドーム状のレンズ本体と、レンズ本体の周縁部に一体に設けられた鍔部を備えている。カバーは、レンズの鍔部を覆っている。締結具は、カバーと筐体との間にレンズの鍔部を挟んだ状態で、カバーを筐体に押し付けて固定している。筐体のレンズの鍔部が接する部分には、実装基板の周縁に沿って凸型のリブが設けられている。レンズの鍔部の下面のリブに接する部分が、カバーによりリブに押し付けられて変形することにより、レンズ内の空間を密閉している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐水性及び耐熱性の高い防水型紫外線発光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の防水型紫外線発光モジュール1の斜視図。
図2】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1のA-A断面図。
図3】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1の切り欠き斜視図。
図4】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1を構成する各部品の斜視図。
図5】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1の紫外線光源(LEDパッケージ)の構造を示す断面図。
図6】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1の防水性と防湿性の説明をする図。
図7】実施形態の防水型紫外線発光モジュール1の組み立て工程を示す切り欠き斜視図。
図8】(a)~(c)実施形態の変形例の防水型紫外線発光モジュール1の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明する。
【0017】
実施形態の防水型紫外線発光モジュール1について、図1図7を用いて説明する。図1図3はそれぞれ、防水型紫外線発光モジュール1の斜視図、A-A断面図および切り欠き斜視図である。図4は、防水型紫外線発光モジュール1を構成する各部品の斜視図である。図5は、防水型紫外線発光モジュール1の紫外線光源(LEDパッケージ)の構造を示す図である。図6は、防水・防湿の説明をする図であり、図7は、組み立て工程を示す図である。
【0018】
<<防水型紫外線発光モジュール1の構成>>
まず、防水型紫外線発光モジュール1の構成について説明する。
【0019】
図1図4に示すように、防水型紫外線発光モジュール1は、紫外線光源10と、実装基板20と、金属筐体30と、レンズ40と、カバー50と、締結具60とを備えて構成される。
【0020】
<紫外線光源(紫外線LEDパッケージ)10>
紫外線光源10は、図5に示すように、紫外線を発するLEDダイ11が、セラミック等のパッケージ基板12上に搭載され、パッケージ基板12上のLEDダイ11の周囲の空間を半球形等の石英ガラス製の封止部材13で封止したLEDパッケージである。以下、紫外線光源10を紫外線LEDパッケージ10と呼ぶ。
【0021】
図5では図示していないが、パッケージ基板12には、LEDダイ11に給電するためのビア等の配線が備えらており、LEDダイ11の電極と、はんだやボンディングワイヤ等により接続されている。
【0022】
石英ガラス製の封止部材13は、パッケージ基板12との接触部が、はんだ等により気密に封止されている。
【0023】
このように、紫外線LEDパッケージ10は、LEDダイ11が無機材料のみで封止されたパッケージである。
【0024】
石英ガラス製の封止部材13は、水蒸気を透過せず、接触部も気密に封止されているため、水蒸気がLEDダイ11に到達することがなく、水蒸気によるLEDダイ11の劣化を防ぐことができる。
【0025】
LEDダイ11の発光波長は、殺菌または不活性化する対象(細菌やウィルス)に応じて選択することができる。一例としては、細菌やウィルスに対して強い不活化能力を有する100-280nm領域の波長の紫外線を発するLEDダイ11を用いることができる。
【0026】
<実装基板20>
実装基板20は、ガラスコンポジット製の絶縁基板にビアや電極等を含む配線を備えた構成である。実装基板20の表面には、紫外線を反射する反射層が備えられていることが好ましい。例えば、紫外線に対する反射率の高いゾルダーレジストインキが塗布されている。
【0027】
実装基板20の上には、1つ以上の紫外線LEDパッケージ10が搭載され、はんだにより実装されている。
【0028】
図1図4の例では、2つの紫外線LEDパッケージ10が1つの実装基板20の上に、所定の間隔で搭載されている。本実施形態の実装基板20の形状は、2つの紫外線LEDパッケージ10がそれぞれ搭載されるほぼ円形の領域を、円形の領域よりも径の小さい接続領域で接続した数字の8に近い形状である。
【0029】
実装基板20の配線は、搭載されている紫外線LEDパッケージ10のパッケージ基板12の配線と接続されている。
【0030】
実装基板20は、金属筐体30の上面の凹部内に配置されている。実装基板20は、金属筐体30の上面よりも小さく、実装基板20の周囲に、実装基板20で覆われていない金属筐体30の上面領域がある。
【0031】
<筐体30>
筐体30は、実装基板20を搭載する板状の基板であり、上面に実装基板20を収容する浅い凹部を有する。凹部の形状は、実装基板20の周縁の外形に沿っている。筐体30は、熱伝導性が高く、剛性を有することが望ましい。例えば、筐体30は、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)により形成することが好適である。ここでは、アルミダイキャスト成形された筐体30を用いる。以下、筐体30を、金属筐体30と呼ぶ。
【0032】
なお、筐体30を、アルミやカーボン等の金属製のフィラーを含有する樹脂(エンジニアリングプラスチック)により、形成することも可能である。フィラーを混合する樹脂としては、ポリカーボネートやポリアミド等を用いることができる。
【0033】
金属筐体30の上面には、実装基板20を収容する凹部の周縁の外側に沿って凸型のリブ31が設けられている。リブ31の断面形状は、ほぼ半円である。
【0034】
なお、金属筐体30には、締結具60を締結するために、実装基板の穴(例えばネジ穴)33が備えられている。
【0035】
<レンズ40>
レンズ40は、紫外線を透過する材料から成り、ドーム状のレンズ本体41と、レンズ本体41の周縁部に一体に設けられた鍔部42を備えている。レンズ本体41は、紫外線LEDパッケージ10を覆うように、実装基板20上配置されている。レンズ本体41は、ドーム状であるため、紫外線LEDパッケージ10との間には空間が設けられている。
【0036】
レンズ40の鍔部42は、実装基板20の周縁部と、実装基板20の周囲の金属筐体30の上面を覆っている。
【0037】
ここでは、ドーム状のレンズ本体41は2つであり、2つの紫外線LEDパッケージ10をそれぞれ覆っており、2つのドーム状のレンズ本体41を鍔部42により連結した形状としている。ただし、レンズ40の形状は、この形状に限定されるものではなく、1つのドーム状のレンズ本体41により、2つの紫外線LEDパッケージ10を覆い、その周囲に鍔部42を設けた形状であってもよい。
【0038】
レンズ40は、例えば、シリコーン樹脂等の紫外線を透過する樹脂によって形成されていることが、レンズ40が弾性を有するため好ましい。好適な弾性は、ショアA 50程度である。
【0039】
ただし、レンズ40をガラス等の熱伝導率の高い材料により形成してもよい。これについては変形例1において説明する。
【0040】
なお、鍔部42は、金属筐体30の締結具60用の穴(例えばネジ穴)33が設けられている位置は覆わないように設計されている。
【0041】
<カバー50>
カバー50は、レンズ本体41の対応する位置に開口を有し、レンズ40の鍔部42の上面を覆う形状である。
【0042】
カバー50には、締結具60を通すための貫通孔(例えば、ネジ穴)51が設けられている。
【0043】
カバー50の材料は、剛性が高く、紫外線に対する反射率が高いものが好ましい。例えば、ダイキャスト成形されたアルミ製のカバー50を使用することができる。また、アルミまたはカーボン等の金属フィラーを含有する樹脂(エンジニアリングプラスチック)のように剛性の高い樹脂により形成されたカバー50を用いることもできる。
【0044】
<締結具60>
締結具60は、カバー50と金属筐体30との間にレンズ40の鍔部42を挟んだ状態で、カバー50を金属筐体30に押し付けて固定している。締結具60は、例えば、ねじを用いることができる。
【0045】
<リブ31>
金属筐体30の上面のレンズ40の鍔部42が接する領域には、実装基板20の周縁に沿って凸型のリブ31が設けられている。レンズ40の鍔部42の下面のリブ31に接する部分は、カバー50によりリブ31に押し付けられて変形することにより、レンズ40内の空間を物理的に封止し、密閉している。レンズ40は、弾性を有するため、リブ31の形状に沿って変形して固定される。これにより、レンズ40のリブ31によって押圧されている部分が高いシール機能を得て密閉することができ、防水型紫外線発光モジュール1内部への水の侵入を防ぐことができる。
【0046】
このとき、実装基板20の周縁21は、レンズ本体41の紫外線LEDパッケージ側の内周の縁部43より外側に位置し、かつ、金属筐体30のリブ31よりも内側に位置するように設計されている。このような配置にすることによりレンズ本体41の内周の縁部43から、鍔部42のリブ31との接触部までの間の、レンズ本体41の底面および鍔部42の下面が、実装基板20の周縁部に接触し、カバー50が鍔部42を締結する力を、実装基板20の周縁部を金属筐体30に向かって押し付ける力として加えることができる。
【0047】
これにより、実装基板20を、ねじ等を用いずに、筐体30に押し付けて固定することができる。
【0048】
<段差44>
ここで、レンズ40の鍔部42の下面には、実装基板20の周縁において段差44が形成されていることが好ましい。段差44よりも内側の領域(段差44から縁部43までの領域)は、実装基板20の上面に接する。段差44よりも外側の領域(段差44から鍔部42の外周までの領域)が、金属基板の上面に接する。
【0049】
これにより、レンズ40の段差44よりも内側の領域(段差44から縁部43までの領域)の下面を、実装基板20の上面に密着させることができるため、レンズ40が実装基板20の周縁を金属筐体30に押し付ける力を、実装基板20に均等に加えることができ、実装基板20をより強く固定することができる。
【0050】
すなわち、弾性のあるレンズ40の鍔部42に、リブ31と接触して封止面を形成する面(段差44から縁部43までの領域)とは別に、実装基板20を押え込む面((段差44から縁部43までの領域)を設け、実装基板20を押え込み実装基板20が金属筐体30に対して位置ズレするのを抑制している。
【0051】
このように実装基板20を金属筐体30に強く押し付ける力を、レンズ40から加えることにより、実装基板20の下面全体を金属筐体30に密着させることができる。よって、紫外線LEDパッケージ10が発した熱を、実装基板20に伝導させ、実装基板20の全体に広げ、実装基板20の下面全体から金属筐体30に伝導させて、金属筐体30の下面から外部に放熱することができる。
【0052】
<熱伝導性シート70>
実装基板20の下面と金属筐体30との間には、絶縁性の熱伝導性シート70が挟まれている。これにより、実装基板20の下面と金属筐体30とを電気的に絶縁できるとともに、実装基板20の裏面から金属筐体30の上面への熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0053】
例えば、熱伝導性シート70として、シリコーンゴム製のシートを用いることができる。
【0054】
<給電線90>
なお、図4に示すように、金属筐体30および熱伝導性シート70には、それぞれを厚み方向に貫通する第1貫通孔32と第2貫通孔71が、対応する位置(重なる位置)に設けられている。第1貫通孔32と第2貫通孔71を貫通するように、給電線90が配置されている。給電線90の一端は、実装基板20の下面の配線に接続され、他端は、金属筐体30の下面から外部に引き出されている。これにより、給電線90を介して、紫外線LEDパッケージ10に給電して発光させることができる。
【0055】
金属筐体30の第1貫通孔32は、充填部材80により塞ぎ、内部に水滴が入らないように防水する。
【0056】
<<紫外線発光時の各部の作用>>
防水型紫外線発光モジュール1から紫外線を発光させた場合の各部の機能について説明する。
【0057】
給電線90から紫外線LEDパッケージ10に給電すると、内部のLEDダイ11が紫外線を発光する。発せられた紫外線は、石英ガラス製の封止部材13を透過し、レンズ40のレンズ本体41を通過して、外部に出射される。
【0058】
レンズ40の鍔部42は、段差44を含み、カバー50を締結具60により締結する力により、鍔部42が実装基板20を押さえている。これにより、実装基板20の位置ズレを防ぐことができるため、実装基板20上の紫外線LEDパッケージ10の封止部材13と、レンズ本体41とが位置決めされ、配光不良を防ぐことができる。また、鍔部42を有さず、実装基板20の上面の領域のみでレンズを接合する場合、レンズの固定状態が悪く好ましくない。従って、鍔部42は、金属筐体30のリブ31より広い領域まで形成していることで、配光不良を防ぎつつ、耐水性も上がる。
【0059】
LEDダイ11が発する熱は、パッケージ基板12に伝導し、実装基板20にさらに伝導し、実装基板20全体に広がる。熱は、実装基板20の下面全体から、熱伝導性シート70を伝導して、金属筐体30の上面に伝導する。金属筐体30は、熱伝導性のよい金属により構成されているため、熱は金属筐体30から外部に放出される。
【0060】
これにより、LEDダイ11から発生した熱を金属筐体30を介して効率的に放熱することができ、LEDダイ11の寿命が向上し、紫外線LEDパッケージ10の劣化を抑制することができる。
【0061】
この防水型紫外線発光モジュール1が配置されている装置が、水滴がかかったり、湿度の高い環境に配置されている場合であっても、レンズ40の鍔部42と金属筐体30との接触部は、鍔部42がカバー50により金属筐体30の上面とリブ31に押し付けられているため、水滴はレンズ40の内側には進入しない。また、第1貫通孔32は、充填部材80により充填されているため、内部に水滴は進入しない。
【0062】
レンズ40が、樹脂製の場合であっても、水滴はレンズ40を通過することはできないため、水滴はレンズ40内の空間に侵入しない(図6)。
【0063】
レンズ40が、樹脂製の場合、水蒸気は、レンズ40を通過し、レンズ本体41と紫外線LEDパッケージ10との間の空間に進入するが、紫外線LEDパッケージ10の封止部材13は、石英ガラス製であるため、水蒸気は、封止部材13の内部には進入できない。
【0064】
よって、紫外線LEDパッケージ10のLEDダイ11には、水分(水滴および水蒸気)は到達しないため、LEDダイ11の劣化を防止できる。
【0065】
このように、LEDダイ11を、無機材料のみで封止する紫外線LEDパッケージ10と、金属筐体30およびレンズ40とにより2段階で封止することにより、防水型紫外線発光モジュール1は、防水機能を実現している。
【0066】
なお、本実施形態の防水型紫外線発光モジュール1は、配光部(レンズ40のレンズ本体41)から離間した位置にカバー50を配置し、カバー50によりレンズ40の鍔部42を金属筐体30に締結する構成である。これにより、配光部(レンズ本体41)のレンズ形状の設計の自由度が高い。
【0067】
また、レンズ本体41内を導光してきて鍔部42に到達した紫外線を、鍔部42に接触しているカバー50の内壁面で反射して、直接外部に向かって出射することが可能である。カバー50の内壁面で反射した光のうち、実装基板20表面に向かった光は、実装基板20上面に配置されている光反射層により反射され、外部に向かって出射することができるため、光を再度利用することができる。
【0068】
さらに、レンズ40の鍔部42全体を剛性のある額縁形状のカバー50で押え込むことにより、鍔部42全体に力がかかり、レンズ40が外れにくい。
【0069】
同時に、レンズ40の弾性により生じる反発力により、スプリングワッシャーと同じ効果で締結具60であるねじの緩み防止になる。
【0070】
<<紫外線発光時の各部の組み立て手順>>
防水型紫外線発光モジュール1の組み立て手順について図4および図7を用いて説明する。
【0071】
図4のように、実装基板20の上に紫外線LEDパッケージ10を実装しておく。
【0072】
金属筐体30の上に熱伝導性シート70を配置し、実装基板20を搭載する。レンズ40を被せ、さらに、カバー50を被せ、図7のように、締結具(ねじ)60を、カバー50の貫通孔51を通して、金属筐体30のネジ穴33に螺合させる。
【0073】
以上により、防水型紫外線発光モジュール1を製造することができる。
【0074】
<<変形例1>>
変形例1の防水型紫外線発光モジュールについて説明する。
【0075】
上述の実施形態では、紫外線を透過する樹脂によりレンズ40を形成し、レンズ40の鍔部42を、カバー50と金属筐体30で挟み込むことにより、レンズ40を封止する構造であったが、レンズ40をガラス等の弾性のない材料により構成してもよい。
【0076】
レンズ40をガラス等で構成した場合、弾性のあるシール部材を用意し、鍔部42が金属筐体30および実装基板20の上面に接する部分に配置することにより、実施形態と同様のレンズ40の封止を実現することができる。
【0077】
シール部材は、紫外線により劣化しにくい樹脂、例えばシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0078】
<<変形例2>>
変形例2の防水型紫外線発光モジュールについて図8(a)を用いて説明する。
【0079】
図8(a)の変形例は、防水型紫外線発光モジュールの締結具60として、フック61を用いた例である。締結具60は、カバー50を金属筐体30に対して押しつけることができる構造であれば、フック61等の他の構造を用いることが可能である。
【0080】
<<変形例3>>
変形例3の防水型紫外線発光モジュールについて図8(b)、(c)を用いて説明する。
【0081】
図8(b)の変形例は、防水型紫外線発光モジュールの紫外線LEDパッケージ10が実装基板20上に1つのみ搭載された構造である。
【0082】
図8(c)の変形例は、防水型紫外線発光モジュールの紫外線LEDパッケージ10が実装基板20上に3つ搭載された構造である。
【0083】
なお、実装基板20上に4つ以上の紫外線LEDパッケージ10を搭載することも可能である。
【0084】
また、レンズ40のレンズ本体41は、1つの紫外線LEDパッケージ10に対して一つ配置された構造に限定されるものではなく、複数の紫外線LEDパッケージ10を覆うようにレンズ本体41を配置してもよい。
【0085】
<<変形例4>>
変形例4の防水型紫外線発光モジュールについて説明する。
【0086】
上述の実施形態ではレンズ40のレンズ本体41の形状として半球状のものを図示しているが、レンズ本体の形状は半球状に限定されるものではなく、所望の紫外線の配光パターンが得られるように所望の形状に設計することができる。例えば、レンズ40形状を凸凹にして狭角、広角の配光を実現することができる。
【0087】
<<利用分野>>
本実施形態および変形例の防水型紫外線発光モジュールは、カビ、細菌、ウイルスなどが付着した部分に紫外線を照射して除菌する紫外線除菌装置に用いることができる。例えば、カーエアコン、加湿器、炊飯器、電子レンジ、食洗機、電気ポット、冷蔵冷凍庫、除菌庫、美顔機、屋内外用紫外線照射器などに、防水型紫外線発光モジュールを搭載することができる。
【0088】
また、水や気体などの流体の殺菌装置に搭載される、紫外線光源モジュールに用いられる。例えば、製氷機の貯水タンクの貯水、送水管や給湯器における送水、ウォータサーバの飲料水、循環装置(チラー)の冷却水、及びドリンクサーバにおける飲料液等に対して、紫外線を照射して殺菌する紫外線光源モジュールとして用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 紫外線発光モジュール
10 紫外線光源(紫外線LEDパッケージ)
11 ダイ
12 パッケージ基板
13 封止部材
20 実装基板
21 周縁
30 金属筐体
31 リブ
33 ネジ穴
40 レンズ
41 レンズ本体
42 鍔部
43 縁部
44 段差
50 カバー
51 貫通孔
60 締結具
61 フック
70 熱伝導性シート
80 充填部材
90 給電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線光源と、実装基板と、筐体と、レンズと、カバーと、締結具とを有し、
前記紫外線光源は、紫外線を発するLEDダイがパッケージ内に封入されたLEDパッケージであり、
前記実装基板は、配線を備え、前記紫外線光源が搭載され、前記筐体の上に配置されており、
前記筐体は、前記実装基板を搭載する板状であり、
前記レンズは、紫外線を透過する材料から成り、前記紫外線光源を空間を挟んで覆うように配置されたドーム状のレンズ本体と、前記レンズ本体の周縁部に一体に設けられた鍔部を備え、
前記カバーは、前記レンズの鍔部を覆い、
前記締結具は、前記カバーと前記筐体との間に前記レンズの鍔部を挟んだ状態で、カバーを前記筐体に押し付けて固定し、
前記筐体の前記レンズの鍔部が接する部分には、前記実装基板の周縁に沿って凸型のリブが設けられ、
前記レンズの前記鍔部の下面の前記リブに接する部分が、前記カバーにより前記リブに押し付けられて変形することにより、前記レンズ内の空間を密閉していることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記レンズを構成する材料は、樹脂であることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板の周縁は、前記レンズ本体の前記空間に接する内周の縁部より外側に位置し、かつ、前記筐体の前記リブよりも内側に位置する
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記レンズの前記鍔部の下面は、前記実装基板の周縁において段差を有し、前記段差よりも内側の領域が前記実装基板の上面に接し、前記段差よりも外側の領域が、前記実装基板の上面に接していることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板の下面と前記筐体との間には、絶縁性の熱伝導シートが挟まれていることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記締結具は、ねじであることを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項7】
請求項2に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記紫外線光源は、前記LEDダイを搭載する基板と、前記実装基板上のLEDダイが配置された空間を覆う紫外線に対して透明な封止部材とを含み、
前記封止部材は、ガラスである
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項8】
請求項5に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、給電線と、充填部材をさらに有し、
前記筐体および前記熱伝導シートには、それぞれを厚み方向に貫通する第1貫通孔と第2貫通孔が、対応する位置に設けられ、
前記給電線は、前記第1貫通孔と第2貫通孔を貫通しており、一端が前記実装基板の前記配線に接続され、他端が前記筐体の外部に引き出され、
前記筐体の前記第1貫通孔は、前記充填部材により充填し、防水している
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項9】
請求項3に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記実装基板上には、2以上の前記紫外線光源が間隔を開けて搭載され、
前記筐体の前記リブと前記レンズの前記鍔部は、前記2以上の前記紫外線光源が搭載された前記実装基板の周縁に沿って設けられている
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。
【請求項10】
請求項1に記載の防水型紫外線発光モジュールであって、前記筐体は、金属、または、金属フィラーを含有する樹脂からなる
ことを特徴とする防水型紫外線発光モジュール。