(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165727
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】シミュレーションプログラム、シミュレーション装置、及びシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20241121BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082154
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ハデルバシュ アミル
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC03
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】解析対象の剛性行列を生成しながら物理量を計算するシミュレーションの計算精度を向上させる。
【解決手段】コンピュータは、解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す。第1解析処理は、解析対象の剛性行列を第1生成方法により生成する処理と、第1生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。コンピュータは、第1解析処理が繰り返された後に第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、誤差に関する指標に基づいて、第1生成方法を、第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更する。コンピュータは、第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す。第2解析処理は、解析対象の剛性行列を第2生成方法により生成する処理と、第2生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返し、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、
前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更し、
前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す、
処理をコンピュータに実行させ、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーションプログラム。
【請求項2】
前記誤差に関する指標を計算する処理は、
前記解析対象を表す複数の要素のうち何れかの要素を評価対象要素として用いて、前記評価対象要素の第1要素剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記評価対象要素の第2要素剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第1要素剛性行列と前記第2要素剛性行列とを用いて、前記誤差に関する指標を計算する処理と、
を含むことを特徴とする請求項1記載のシミュレーションプログラム。
【請求項3】
前記第2解析処理を繰り返す処理は、前記第2解析処理を所定回数繰り返す処理を含み、
前記第2解析処理が前記所定回数繰り返された後に、前記第2生成方法を前記第1生成方法に変更して、前記第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す処理を、前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする請求項1記載のシミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記所定回数は、前記誤差に関する指標に基づいて決定されることを特徴とする請求項3記載のシミュレーションプログラム。
【請求項5】
前記第1生成方法は、機械学習モデルを用いる生成方法であり、前記第2生成方法は、有限要素法に基づく数値計算法であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項6】
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す第1解析部と、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更する変更部と、
前記第1生成方法が前記第2生成方法に変更された後、前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す第2解析部と、
を備え、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項7】
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返し、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、
前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更し、
前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す、
処理をコンピュータが実行し、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造解析シミュレーションは、外力が加えられた物体に関する物理量の時間的変化及び空間的変化を計算するシミュレーションである。構造解析シミュレーションのためのシミュレーションプログラムは、例えば、有限要素法(Finite Element Method,FEM)により偏微分方程式を解くことで、変位、応力等の物理量を計算する。
【0003】
FEMに関して、有限要素の機械解析、熱機械解析、電気機械解析、及び/又は磁気機械解析のための計算ウィンドウ処理技法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。CAE(Computer-Aided Engineering)解析を用いて、物理領域の物理挙動の数値シミュレーションをコンピュータで実施する方法も知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0226310号明細書
【特許文献2】特表2022-517229号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0343899号明細書
【特許文献4】特開2014-225257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体の構造解析シミュレーションにおいて、FEMに基づく数値計算法の代わりに、機械学習により訓練されたニューラルネットワークを用いて剛性行列を生成する場合、時間ステップが進むにつれて解析精度が低下する。以下では、FEMに基づく数値計算法を、単にFEMと記載することがある。
【0006】
なお、かかる問題は、FEMの代わりにニューラルネットワークにより剛性行列を生成する場合に限らず、FEMよりも低い精度を有する様々な生成方法により剛性行列を生成する場合において生ずるものである。
【0007】
1つの側面において、本発明は、解析対象の剛性行列を生成しながら物理量を計算するシミュレーションの計算精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの案では、シミュレーションプログラムは、以下の処理をコンピュータに実行させる。
【0009】
コンピュータは、解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す。第1解析処理は、解析対象の剛性行列を第1生成方法により生成する処理と、第1生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。
【0010】
コンピュータは、第1解析処理が繰り返された後に第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、誤差に関する指標に基づいて、第1生成方法を、第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更する。
【0011】
コンピュータは、第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す。第2解析処理は、解析対象の剛性行列を第2生成方法により生成する処理と、第2生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面によれば、解析対象の剛性行列を生成しながら物理量を計算するシミュレーションの計算精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】構造解析シミュレーションにおける応力の時間変化を示す図である。
【
図2】実施形態のシミュレーション装置の機能的構成図である。
【
図3】第1のシミュレーション処理のフローチャートである。
【
図4】シミュレーション装置の具体例を示す機能的構成図である。
【
図5】実施形態の構造解析シミュレーションにおける応力の時間変化を示す図である。
【
図6】L1ノルムの第1の時間変化を示す図である。
【
図9】L1ノルムの第2の時間変化を示す図である。
【
図10A】第2のシミュレーション処理のフローチャート(その1)である。
【
図10B】第2のシミュレーション処理のフローチャート(その2)である。
【
図10C】第2のシミュレーション処理のフローチャート(その3)である。
【
図11】情報処理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0015】
物体の構造解析シミュレーションにおける非線形動態解析では、ニュートン・ラプソン法のような非線形アルゴリズムと時間進行法とを組み合わせた解析方法が用いられることがある。
【0016】
このような解析方法では、時間ステップ毎に1回又は複数回の近似計算ステップが繰り返される。各近似計算ステップでは、新たな剛性行列が生成され、生成された剛性行列を係数行列とする連立一次方程式を解くことで、物理量の近似解が計算される。近似計算ステップは、イタレーションと呼ばれることもある。
【0017】
スーパーコンピュータを用いた非線形動態解析において、各近似計算ステップにおいてFEMに基づく数値計算法により剛性行列を生成する場合、連立一次方程式の解を計算する時間よりも剛性行列を計算する時間の方がはるかに長くなることが多い。このため、剛性行列の生成にかかる時間が構造解析シミュレーションの実行時間の大部分を占めることになる。
【0018】
一方、機械学習により訓練されたニューラルネットワークにより剛性行列を生成する場合、剛性行列の生成にかかる時間はFEMの場合よりも短縮される。例えば、地震発生時における地殻の構造解析シミュレーションの例では、ニューラルネットワークによる剛性行列の計算時間は、FEMによる剛性行列の計算時間の1/3程度になる。
【0019】
しかしながら、構造解析シミュレーションのすべての時間ステップにわたって高精度な解析結果が得られるように、ニューラルネットワークを訓練することは難しい。このため、一定回数の時間ステップにわたってニューラルネットワークによる剛性行列の生成を繰り返すと、大きな誤差が蓄積される。蓄積された剛性行列の誤差は、物理量を計算する非線形アルゴリズムの収束に深刻な影響を与えるため、計算された物理量の精度が低下する。
【0020】
言い換えれば、ニューラルネットワークの方がFEMよりも高速に剛性行列を生成できるが、ニューラルネットワークにより生成された剛性行列の精度は、FEMにより生成された剛性行列の精度よりも低くなる。したがって、ニューラルネットワークを用いた構造解析シミュレーションの解析精度は、FEMを用いた構造解析シミュレーションの解析精度よりも低くなる。
【0021】
図1は、地震発生時における地殻の構造解析シミュレーションにおける応力の時間変化の例を示している。この例では、特定の領域の地殻がFEMにおける複数の要素に分割されている。各要素は、8個の節点を有する6面体で表される。
【0022】
横軸は、時間ステップを表し、縦軸は、特定の要素の特定の節点における所定方向の応力を表す。縦軸のEは、10のべき乗を表す。折れ線101は、FEMにより剛性行列を生成した場合の応力の時間変化を示している。折れ線102は、ニューラルネットワークにより剛性行列を生成した場合の応力の時間変化を示している。
【0023】
折れ線101と折れ線102を比較すると、時間ステップが進むにつれて、ニューラルネットワークを用いた場合の応力の計算精度が低下し、応力の差が徐々に増加していることが分かる。例えば、時間ステップ5における折れ線101と折れ線102の応力の差は0.00015であり、時間ステップ10における折れ線101と折れ線102の応力の差は0.0055である。
【0024】
図2は、実施形態のシミュレーション装置の機能的構成例を示している。
図2のシミュレーション装置201は、第1解析部211-1、第2解析部211-2、及び変更部212を含む。
【0025】
図3は、
図2のシミュレーション装置201が行う第1のシミュレーション処理の例を示すフローチャートである。まず、第1解析部211-1は、解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す(ステップ301)。第1解析処理は、解析対象の剛性行列を第1生成方法により生成する処理と、第1生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。
【0026】
次に、変更部212は、第1解析処理が繰り返された後に第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算する(ステップ302)。そして、変更部212は、誤差に関する指標に基づいて、第1生成方法を、第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更する(ステップ303)。
【0027】
次に、第2解析部211-2は、第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す(ステップ304)。第2解析処理は、解析対象の剛性行列を第2生成方法により生成する処理と、第2生成方法により生成された剛性行列を用いて、解析対象に関する物理量を計算する処理とを含む。
【0028】
図2のシミュレーション装置201によれば、解析対象の剛性行列を生成しながら物理量を計算するシミュレーションの計算精度を向上させることができる。
【0029】
図4は、
図2のシミュレーション装置201の具体例を示している。
図4のシミュレーション装置401は、分割部411、生成部412-1、生成部412-2、計算部413-1、計算部413-2、生成部414-1、生成部414-2、制御部415、出力部416、及び記憶部417を含む。
【0030】
生成部412-1及び計算部413-1は、
図2の第1解析部211-1に対応し、生成部412-2及び計算部413-2は、
図2の第2解析部211-2に対応する。生成部414-1、生成部414-2、及び制御部415は、
図2の変更部212に対応する。
【0031】
シミュレーション装置401は、CAE、構造設計、工学的設計等における物体の構造解析シミュレーションを行う。構造解析シミュレーションの対象となる物体は、道路、橋梁、建物等の構造物であってもよく、地殻、流体等であってもよく、工業製品であってもよい。
【0032】
構造解析シミュレーションでは、時間ステップ毎に1回又は複数回の近似計算ステップが繰り返される。各近似計算ステップでは、新たな剛性行列が生成され、生成された剛性行列を係数行列とする連立一次方程式を解くことで、変位、応力等の物理量が計算される。変位又は応力は、物体に関する物理量に対応する。
【0033】
記憶部417は、物体の形状を表す物体情報421を記憶する。分割部411は、物体情報421が表す物体を複数の要素に分割し、複数の要素それぞれを表す要素情報422を生成して、記憶部417に格納する。各要素は、複数の節点を有し、各要素の要素情報422は、その要素の各節点の識別情報及び位置情報を含む。各要素の形状は、多面体であってもよい。分割部411により生成される複数の要素は、解析対象を表す複数の要素の一例である。
【0034】
生成部412-1は、各時間ステップの各近似計算ステップにおいて、各要素の要素情報422を用いて第1生成方法により、その要素の要素剛性行列を生成する。要素剛性行列の生成には、直前の時間ステップにおいて計算された各節点の物理量、又は同じ時間ステップの直前の近似計算ステップにおいて計算された各節点の物理量が用いられる。
【0035】
第1生成方法としては、例えば、FEMよりも低い精度を有する要素剛性行列を、FEMよりも高速に生成する生成方法が用いられる。第1生成方法は、例えば、記憶部417が記憶している学習済みの機械学習モデル423を用いて要素剛性行列を生成する生成方法である。機械学習モデル423としては、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト等が用いられる。
【0036】
機械学習モデル423は、要素の複数の節点それぞれの物理量を入力として用いて、その要素の要素剛性行列を推論し、推論された要素剛性行列を出力する。機械学習モデル423は、2つ以上の要素の要素剛性行列を同時に推論してもよい。機械学習モデル423を用いることで、要素剛性行列を高速に生成することができる。
【0037】
機械学習モデル423は、教師あり機械学習により学習前の機械学習モデルを訓練することで生成される。入力される訓練データとしては、例えば、構造解析シミュレーションの最初の時間ステップにおける複数の要素各々の各節点の物理量を用いることができる。また、正解ラベルとして用いられる各要素の要素剛性行列は、例えば、後述する第2生成方法により、同じ訓練データから生成される。
【0038】
計算部413-1は、各時間ステップの各近似計算ステップにおいて、第1生成方法により生成された各要素の要素剛性行列を用いて、物体全体の剛性行列を生成する。そして、計算部413-1は、物体全体の剛性行列を用いて、各要素の各節点の物理量を計算する。
【0039】
出力部416は、各時間ステップの最後の近似計算ステップにおいて計算された物理量を、その時間ステップにおける解析結果として出力する。
【0040】
生成部412-1及び計算部413-1が行う処理は、第1生成方法に基づく第1解析処理に対応する。
【0041】
生成部412-2は、各時間ステップの各近似計算ステップにおいて、各要素の要素情報422を用いて第2生成方法により、その要素の要素剛性行列を生成する。要素剛性行列の生成には、直前の時間ステップにおいて計算された各節点の物理量、又は同じ時間ステップの直前の近似計算ステップにおいて計算された各節点の物理量が用いられる。
【0042】
第2生成方法としては、例えば、第1生成方法よりも高い精度を有する要素剛性行列を、第1生成方法よりも長い時間をかけて生成する生成方法が用いられる。第2生成方法は、例えば、FEMである。FEMは、F-bar法等の数値計算法であってもよい。FEMを用いることで、より正確な要素剛性行列を生成することができる。
【0043】
計算部413-2は、各時間ステップの各近似計算ステップにおいて、第2生成方法により生成された各要素の要素剛性行列を用いて、物体全体の剛性行列を生成する。そして、計算部413-2は、物体全体の剛性行列を用いて、各要素の各節点の物理量を計算する。
【0044】
出力部416は、各時間ステップの最後の近似計算ステップにおいて計算された物理量を、その時間ステップにおける解析結果として出力する。
【0045】
生成部412-2及び計算部413-2が行う処理は、第2生成方法に基づく第2解析処理に対応する。
【0046】
制御部415は、生成部412-1及び計算部413-1により第1解析処理が繰り返された後の誤差評価の時間ステップにおいて、第1生成方法により次に生成される剛性行列の誤差を評価する。そして、制御部415は、評価結果に基づいて、第1生成方法を第2生成方法に変更するか否かを決定する。誤差評価の時間ステップは、一定回数の時間ステップ毎に1回の割合で設定されていてもよい。
【0047】
誤差評価の時間ステップにおいて、生成部414-1は、要素情報422が表す複数の要素のうち何れか1つ又は複数の要素を評価対象要素として用いる。そして、生成部414-1は、生成部412-1と同様にして、第1生成方法により、各評価対象要素の要素剛性行列M1を生成する。要素剛性行列M1は、第1要素剛性行列の一例である。
【0048】
また、生成部414-2は、生成部412-2と同様にして、第2生成方法により、各評価対象要素の要素剛性行列M2を生成する。要素剛性行列M2は、第2要素剛性行列の一例である。
【0049】
制御部415は、各評価対象要素の要素剛性行列M1と要素剛性行列M2とを用いて、剛性行列の誤差に関する指標ERを計算する。指標ERとしては、例えば、要素剛性行列M1と要素剛性行列M2の平均絶対誤差(Mean Absolute Error,MAE)の統計値が用いられる。制御部415は、例えば、要素剛性行列M1と要素剛性行列M2のMAEを表すE(M1,M2)を、次式により計算する。
【0050】
E(M1,M2)
=(1/N2)*ΣiΣj|M2(i,j)-M1(i,j)| (1)
【0051】
Nは、要素剛性行列M1の行及び列の数を表す。要素剛性行列M2の行及び列の数もNである。Σiは、i=1~Nに関する総和を表し、Σjは、j=1~Nに関する総和を表す。例えば、各要素が8個の節点を有し、かつ、各節点の自由度が3である場合、N=3*8=24である。
【0052】
M1(i,j)は、要素剛性行列M1のi行j列の行列要素を表し、M2(i,j)は、要素剛性行列M2のi行j列の行列要素を表す。|M2(i,j)-M1(i,j)|は、M2(i,j)-M1(i,j)の絶対値を表す。
【0053】
E(M1,M2)の統計値としては、すべての評価対象要素のE(M1,M2)の平均値、最小値、最大値等が用いられる。評価対象要素の個数は、物体を表す要素の総数の数百分の1~数十分の1程度であってもよい。式(1)のE(M1,M2)の代わりに、平均誤差、二乗平均平方根誤差等を用いてもよい。
【0054】
制御部415は、指標ERを閾値TH1と比較することで、第1生成方法により次に生成される剛性行列の誤差を評価する。閾値TH1は、ユーザにより指定されてもよく、実験結果に基づいて計算されてもよい。
【0055】
指標ERが閾値TH1よりも大きい場合、制御部415は、第1生成方法による誤差が蓄積されていると判定し、第1生成方法を、第1生成方法よりも精度の高い第2生成方法に変更する。この場合、生成部412-1及び計算部413-1による第1解析処理が終了し、生成部412-2及び計算部413-2による第2解析処理が開始される。
【0056】
第1解析処理を繰り返すことで剛性行列の誤差が蓄積された場合に、剛性行列の生成方法を第2生成方法に切り替えることで、切り替え後の各時間ステップにおいて生成される剛性行列の誤差が減少する。このため、非線形アルゴリズムの収束性が改善され、計算される物理量の精度が向上する。
【0057】
指標ERが閾値TH1以下である場合、制御部415は、第1生成方法による誤差が蓄積されていないと判定し、第1生成方法の適用を継続する。この場合、次の誤差評価の時間ステップに到達するまで、生成部412-1及び計算部413-1による第1解析処理が繰り返される。
【0058】
また、評価対象要素の要素剛性行列M1と要素剛性行列M2とを用いて指標ERを計算することで、第1生成方法による誤差が蓄積されているか否かを、少ない計算量で適切に評価することができる。
【0059】
第1生成方法が第2生成方法に変更された場合、生成部412-1及び計算部413-1は、X回の時間ステップにわたって第2解析処理を繰り返す。そして、第2解析処理がX回だけ繰り返された後、制御部415は、第2生成方法を再び第1生成方法に変更する。この場合、生成部412-2及び計算部413-2による第2解析処理が終了し、生成部412-1及び計算部413-1による第1解析処理が再開される。Xは、所定回数の一例である。
【0060】
第2解析処理がX回だけ繰り返された後に剛性行列の生成方法を第1生成方法に切り替えることで、それ以降の時間ステップにおいて、誤差が減少した剛性行列を用いて構造解析シミュレーションを高速に行うことができる。したがって、計算精度の低下を抑制しながら、構造解析シミュレーションを高速化することができる。
【0061】
Xは、ユーザにより指定されてもよく、指標ERに基づいて決定されてもよい。Xが指標ERに基づいて決定される場合、誤差評価の時間ステップにおいて、制御部415は、例えば、次式によりXを計算する。
【0062】
X=int((|ER-TH2|/TH2)+1)*10 (2)
【0063】
int()は、括弧内の値を整数化する関数であり、括弧内の値と同じか又はその値よりも小さい最大の整数を表す。閾値TH2は、ユーザにより指定されてもよく、実験結果に基づいて計算されてもよい。式(2)によれば、ERとTH2の差分の絶対値が大きいほど、Xの値も大きくなる。
【0064】
ERが大きい場合に第2解析処理の繰り返し回数Xを増加させることで、剛性行列の誤差が長期間にわたって第2生成方法により補正されるため、第1解析処理が再開された後の各時間ステップにおける計算精度が向上する。
【0065】
図5は、実施形態の構造解析シミュレーションにおける応力の時間変化の例を示している。
図5の構造解析シミュレーションの解析対象は、
図1と同様の地殻であり、地殻の分割方法も
図1と同様である。
図5のシミュレーション結果では、
図1のシミュレーション結果に対して折れ線501が追加されている。
【0066】
折れ線501は、
図4のシミュレーション装置401により計算された応力の時間変化を示している。第1生成方法としては、ニューラルネットワークを用いて剛性行列を生成する方法が用いられ、第2生成方法としては、FEMが用いられている。時間ステップ1~時間ステップ5では、ニューラルネットワークを用いて剛性行列が生成され、時間ステップ6~時間ステップ10では、FEMにより剛性行列が生成されている。
【0067】
折れ線501の場合、時間ステップ6において剛性行列の生成方法をFEMに切り替えることで、時間ステップ6~時間ステップ10において誤差が動的に補正され、計算される応力が徐々に折れ線101に近づいている。したがって、剛性行列の生成方法を切り替えていない折れ線102の場合よりも正確な解析結果が得られる。
【0068】
次に、
図6~
図9を参照しながら、
図5の構造解析シミュレーションにおける変位の誤差の時間変化の例について説明する。
【0069】
以下の説明において、シミュレーションS0は、すべての時間ステップにおいてFEMにより剛性行列を生成する構造解析シミュレーションを表す。シミュレーションS1は、すべての時間ステップにおいてニューラルネットワークを用いて剛性行列を生成する構造解析シミュレーションを表す。シミュレーションS2は、
図4のシミュレーション装置401によりニューラルネットワークとFEMを切り替えながら剛性行列を生成する構造解析シミュレーションを表す。
【0070】
シミュレーションS1における変位の誤差は、シミュレーションS1において計算された変位と、シミュレーションS0において計算された変位との差異を表す。この誤差は、シミュレーションS1において計算された複数の節点それぞれの変位と、シミュレーションS0において計算された複数の節点それぞれの変位とを用いて計算される。
【0071】
シミュレーションS2における変位の誤差は、シミュレーションS2において計算された変位と、シミュレーションS0において計算された変位との差異を表す。この誤差は、シミュレーションS2において計算された複数の節点それぞれの変位と、シミュレーションS0において計算された複数の節点それぞれの変位とを用いて計算される。
【0072】
図6~
図9の例では、シミュレーションS1又はシミュレーションS2における変位の誤差として、L1ノルム、L2ノルム、又は最大値ノルムが用いられている。
【0073】
図6は、L1ノルムの第1の時間変化の例を示している。横軸は、時間ステップを表し、縦軸は、L1ノルムを表す。折れ線601は、シミュレーションS1におけるL1ノルムの時間変化を示している。折れ線602は、シミュレーションS2におけるL1ノルムの時間変化を示している。
【0074】
シミュレーションS2においては、5回の時間ステップが経過する度に剛性行列の生成方法が切り替えられており、時間ステップ1~時間ステップ5及び時間ステップ11~時間ステップ15では、ニューラルネットワークを用いて剛性行列が生成されている。これに対して、時間ステップ6~時間ステップ10及び時間ステップ16~時間ステップ20では、FEMにより剛性行列が生成されている。期間611及び期間612は、剛性行列の生成方法としてFEMが用いられた期間を表す。
【0075】
折れ線601が示すL1ノルムは、時間ステップ1~時間ステップ14において単調に増加し、時間ステップ15以降において発散している。
【0076】
折れ線602が示すL1ノルムは、ニューラルネットワークが用いられた時間ステップ1~時間ステップ5において、折れ線601と同様に増加している。次に、FEMが用いられた時間ステップ6~時間ステップ10においてL1ノルムは単調に減少しており、FEMにより誤差が補正されていることが分かる。
【0077】
次に、ニューラルネットワークが用いられた時間ステップ11~時間ステップ15において、L1ノルムは再び単調に増加している。次に、FEMが用いられた時間ステップ16~時間ステップ20においてもL1ノルムは増加し続けており、5回の時間ステップでは、誤差を補正するための時間が不足していることが分かる。
【0078】
図7は、L2ノルムの時間変化の例を示している。横軸は、時間ステップを表し、縦軸は、L2ノルムを表す。折れ線701は、シミュレーションS1におけるL2ノルムの時間変化を示している。折れ線702は、シミュレーションS2におけるL2ノルムの時間変化を示している。期間711及び期間712は、シミュレーションS2における剛性行列の生成方法として、FEMが用いられた期間を表す。
【0079】
図6の折れ線602が示すL1ノルムと同様に、折れ線702が示すL2ノルムは、FEMが用いられた時間ステップ6~時間ステップ10において単調に減少しており、FEMにより誤差が補正されていることが分かる。一方、FEMが用いられた時間ステップ16~時間ステップ20においてL2ノルムは増加し続けており、5回の時間ステップでは、誤差を補正するための時間が不足していることが分かる。
【0080】
図8は、最大値ノルムの時間変化の例を示している。横軸は、時間ステップを表し、縦軸は、最大値ノルムを表す。折れ線801は、シミュレーションS1における最大値ノルムの時間変化を示している。折れ線802は、シミュレーションS2における最大値ノルムの時間変化を示している。期間811及び期間812は、シミュレーションS2における剛性行列の生成方法として、FEMが用いられた期間を表す。
【0081】
折れ線801が示す最大値ノルムは、時間ステップ1~時間ステップ14において単調に増加し、時間ステップ15以降において発散している。
【0082】
折れ線802が示す最大値ノルムは、ニューラルネットワークが用いられた時間ステップ1~時間ステップ5において、折れ線801と同様に増加している。次に、FEMが用いられた時間ステップ6~時間ステップ10において最大値ノルムは単調に減少しており、FEMにより誤差が補正されていることが分かる。
【0083】
次に、ニューラルネットワークが用いられた時間ステップ11~時間ステップ15において、最大値ノルムは再び単調に増加している。次に、FEMが用いられた時間ステップ16~時間ステップ20において、最大値ノルムは一旦減少した後、一定値を維持している。
【0084】
図9は、L1ノルムの第2の時間変化の例を示している。横軸は、時間ステップを表し、縦軸は、L1ノルムを表す。折れ線601は、
図6と同様に、シミュレーションS1におけるL1ノルムの時間変化を示している。折れ線901は、シミュレーションS2におけるL1ノルムの時間変化を示している。
【0085】
図9の例では、時間ステップ16においてシミュレーションS2の剛性行列の生成方法がFEMに変更された後、25回の時間ステップにわたってFEMが継続して用いられている。期間911及び期間913は、剛性行列の生成方法としてニューラルネットワークが用いられた期間を表す。期間912及び期間914は、剛性行列の生成方法としてFEMが用いられた期間を表す。
【0086】
折れ線901が示すL1ノルムは、時間ステップ1~時間ステップ15において、
図6の折れ線602と同様に変化している。次に、FEMが用いられた期間914の時間ステップ16~時間ステップ40において、L1ノルムは一旦増加した後、単調に減少しており、FEMにより誤差が補正されていることが分かる。25回の時間ステップを含む期間914は、誤差を補正するために十分な時間であると言える。
【0087】
シミュレーション装置401は、物体の構造解析シミュレーションだけでなく、電場、磁場等の他の解析対象に対するシミュレーションを行うこともできる。
【0088】
図10A~
図10Cは、
図4のシミュレーション装置401が行う第2のシミュレーション処理の例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、制御部415は、時間ステップを示す制御変数tに、最初の時間ステップを示す1を設定し(ステップ1001)、剛性行列の生成方法を示す制御変数Cに、第1生成方法を示すG1を設定する(ステップ1002)。
【0090】
次に、制御部415は、Cの値をチェックする(ステップ1003)。C=G1である場合(ステップ1003,YES)、制御部415は、剛性行列の生成方法として第1生成方法を選択する(ステップ1004)。
【0091】
次に、生成部412-1は、各要素の要素情報422を用いて第1生成方法により、その要素の要素剛性行列を生成する(ステップ1005)。
【0092】
次に、計算部413-1は、第1生成方法により生成された各要素の要素剛性行列を用いて、物体全体の剛性行列を生成する(ステップ1006)。そして、計算部413-1は、物体全体の剛性行列を用いて、各要素の各節点の物理量を計算する(ステップ1007)。
【0093】
次に、計算部413-1は、物理量を計算する近似計算が収束したか否かをチェックする(ステップ1008)。近似計算が収束していない場合(ステップ1008,NO)、シミュレーション装置401は、次の近似計算ステップとして、ステップ1005以降の処理を繰り返す。
【0094】
近似計算が収束した場合(ステップ1008,YES)、出力部416は、計算された物理量を、現在の時間ステップにおける解析結果として出力する(ステップ1009)。ステップ1004~ステップ1009の処理は、第1生成方法に基づく第1解析処理に対応する。
【0095】
次に、制御部415は、tが構造解析シミュレーションの最後の時間ステップを示しているか否かをチェックする(ステップ1010)。tが最後の時間ステップを示していない場合(ステップ1010,NO)、制御部415は、tを1だけインクリメントする(ステップ1011)。そして、制御部415は、tが誤差評価の時間ステップを示しているか否かをチェックする(ステップ1012)。
【0096】
tが誤差評価の時間ステップを示している場合(ステップ1012,YES)、生成部414-1は、各評価対象要素の要素情報422を用いて第1生成方法により、その評価対象要素の要素剛性行列M1を生成する(ステップ1013)。
【0097】
次に、生成部414-2は、各評価対象要素の要素情報422を用いて第2生成方法により、その評価対象要素の要素剛性行列M2を生成する(ステップ1014)。
【0098】
次に、制御部415は、各評価対象要素の要素剛性行列M1と要素剛性行列M2とを用いて、指標ERを計算し(ステップ1015)、指標ERを閾値TH1と比較する(ステップ1016)。
【0099】
指標ERが閾値TH1よりも大きい場合(ステップ1016,YES)、制御部415は、第2生成方法を示すG2をCに設定する(ステップ1017)。そして、シミュレーション装置401は、ステップ1003以降の処理を繰り返す。
【0100】
tが誤差評価の時間ステップを示していない場合(ステップ1012,NO)、又は指標ERが閾値TH1以下である場合(ステップ1016,NO)、シミュレーション装置401は、ステップ1003以降の処理を繰り返す。
【0101】
tが最後の時間ステップを示している場合(ステップ1010,YES)、シミュレーション装置401は、処理を終了する。
【0102】
C=G2である場合(ステップ1003,NO)、制御部415は、剛性行列の生成方法として第2生成方法を選択する(ステップ1018)。
【0103】
次に、生成部412-2は、各要素の要素情報422を用いて第2生成方法により、その要素の要素剛性行列を生成する(ステップ1019)。
【0104】
次に、計算部413-2は、第2生成方法により生成された各要素の要素剛性行列を用いて、物体全体の剛性行列を生成する(ステップ1020)。そして、計算部413-2は、物体全体の剛性行列を用いて、各要素の各節点の物理量を計算する(ステップ1021)。
【0105】
次に、計算部413-2は、物理量を計算する近似計算が収束したか否かをチェックする(ステップ1022)。近似計算が収束していない場合(ステップ1022,NO)、シミュレーション装置401は、次の近似計算ステップとして、ステップ1019以降の処理を繰り返す。
【0106】
近似計算が収束した場合(ステップ1022,YES)、出力部416は、計算された物理量を、現在の時間ステップにおける解析結果として出力する(ステップ1023)。ステップ1018~ステップ1023の処理は、第2生成方法に基づく第2解析処理に対応する。
【0107】
次に、制御部415は、tが最後の時間ステップを示しているか否かをチェックする(ステップ1024)。tが最後の時間ステップを示していない場合(ステップ1024,NO)、制御部415は、tを1だけインクリメントする(ステップ1025)。そして、制御部415は、X回の時間ステップにわたって第2生成方法に基づく第2解析処理が繰り返されたか否かをチェックする(ステップ1026)。
【0108】
第2解析処理がX回繰り返された場合(ステップ1026,YES)、制御部415は、CにG1を設定する(ステップ1027)。そして、シミュレーション装置401は、ステップ1003以降の処理を繰り返す。
【0109】
第2解析処理がX回繰り返されていない場合(ステップ1026,NO)、シミュレーション装置401は、ステップ1003以降の処理を繰り返す。
【0110】
tが最後の時間ステップを示している場合(ステップ1024,YES)、シミュレーション装置401は、処理を終了する。
【0111】
図2のシミュレーション装置201及び
図4のシミュレーション装置401の構成は一例に過ぎず、シミュレーション装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0112】
図3及び
図10A~
図10Cのフローチャートは一例に過ぎず、シミュレーション装置の構成又は条件に応じて、一部の処理を省略又は変更してもよい。
【0113】
図1及び
図5に示した応力の時間変化は一例に過ぎず、応力の時間変化は、解析対象に応じて変化する。
図6~
図9に示した変位の誤差の時間変化は一例に過ぎず、変位の誤差の時間変化は、解析対象に応じて変化する。
【0114】
式(1)及び式(2)は一例に過ぎず、シミュレーション装置401は、別の計算式を用いて指標ER及びXを計算してもよい。
【0115】
図11は、
図2のシミュレーション装置201及び
図4のシミュレーション装置401として用いられる情報処理装置(コンピュータ)のハードウェア構成例を示している。
【0116】
図11の情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)1101、メモリ1102、入力装置1103、及び出力装置1104を含む。情報処理装置は、補助記憶装置1105、媒体駆動装置1106、ネットワーク接続装置1107、及びGPU(Graphics Processing Unit)1108をさらに含む。これらの構成要素はハードウェアであり、バス1109により互いに接続されている。
【0117】
メモリ1102は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリであり、処理に用いられるプログラム及びデータを記憶する。メモリ1102は、
図4の記憶部417として動作してもよい。
【0118】
CPU1101(プロセッサ)は、例えば、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、
図2の第2解析部211-2及び変更部212として動作する。CPU1101は、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、第1解析部211-1の物理量を計算する処理も行う。
【0119】
CPU1101は、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、
図4の分割部411、生成部412-2、計算部413-1、計算部413-2、生成部414-2、及び制御部415としても動作する。CPU1101は、メモリ1102を利用してプログラムを実行することにより、生成部412-1及び生成部414-1として動作してもよい。
【0120】
入力装置1103は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、ユーザ又はオペレータからの指示又は情報の入力に用いられる。出力装置1104は、例えば、表示装置、プリンタ等であり、ユーザ又はオペレータへの問い合わせ又は指示、及び処理結果の出力に用いられる。出力装置1104は、
図4の出力部416として動作してもよく、処理結果は、解析結果であってもよい。
【0121】
補助記憶装置1105は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、テープ装置等である。補助記憶装置1105は、ハードディスクドライブ又はSSD(Solid State Drive)であってもよい。情報処理装置は、補助記憶装置1105にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。補助記憶装置1105は、
図4の記憶部417として動作してもよい。
【0122】
媒体駆動装置1106は、可搬型記録媒体1110を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬型記録媒体1110は、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。可搬型記録媒体1110は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。ユーザ又はオペレータは、可搬型記録媒体1110にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。
【0123】
このように、処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、メモリ1102、補助記憶装置1105、又は可搬型記録媒体1110のような、物理的な(非一時的な)記録媒体である。
【0124】
ネットワーク接続装置1107は、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークに接続され、通信に伴うデータ変換を行う通信インタフェース回路である。情報処理装置は、プログラム及びデータを外部の装置からネットワーク接続装置1107を介して受信し、それらをメモリ1102にロードして使用することができる。ネットワーク接続装置1107は、
図4の出力部416として動作してもよい。
【0125】
GPU1108は、情報処理を行う演算処理回路である。GPU1108は、
図4の生成部412-1及び生成部414-1として動作してもよい。
【0126】
なお、情報処理装置が
図11のすべての構成要素を含む必要はなく、情報処理装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、ユーザ又はオペレータとのインタフェースが不要である場合は、入力装置1103及び出力装置1104を省略することができる。可搬型記録媒体1110又は通信ネットワークを使用しない場合は、媒体駆動装置1106又はネットワーク接続装置1107を省略することができる。
【0127】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【0128】
図1乃至
図11を参照しながら説明した実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返し、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、
前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更し、
前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す、
処理をコンピュータに実行させ、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーションプログラム。
(付記2)
前記誤差に関する指標を計算する処理は、
前記解析対象を表す複数の要素のうち何れかの要素を評価対象要素として用いて、前記評価対象要素の第1要素剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記評価対象要素の第2要素剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第1要素剛性行列と前記第2要素剛性行列とを用いて、前記誤差に関する指標を計算する処理と、
を含むことを特徴とする付記1記載のシミュレーションプログラム。
(付記3)
前記第2解析処理を繰り返す処理は、前記第2解析処理を所定回数繰り返す処理を含み、
前記第2解析処理が前記所定回数繰り返された後に、前記第2生成方法を前記第1生成方法に変更して、前記第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す処理を、前記コンピュータにさらに実行させることを特徴とする付記1記載のシミュレーションプログラム。
(付記4)
前記所定回数は、前記誤差に関する指標に基づいて決定されることを特徴とする付記3記載のシミュレーションプログラム。
(付記5)
前記第1生成方法は、機械学習モデルを用いる生成方法であり、前記第2生成方法は、有限要素法に基づく数値計算法であることを特徴とする付記1乃至4の何れか1項に記載のシミュレーションプログラム。
(付記6)
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す第1解析部と、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更する変更部と、
前記第1生成方法が前記第2生成方法に変更された後、前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す第2解析部と、
を備え、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーション装置。
(付記7)
前記変更部は、前記解析対象を表す複数の要素のうち何れかの要素を評価対象要素として用いて、前記評価対象要素の第1要素剛性行列を前記第1生成方法により生成し、前記評価対象要素の第2要素剛性行列を前記第2生成方法により生成し、前記第1要素剛性行列と前記第2要素剛性行列とを用いて、前記誤差に関する指標を計算することを特徴とする付記6記載のシミュレーション装置。
(付記8)
前記第2解析部は、前記第2解析処理を所定回数繰り返し、
前記変更部は、前記第2解析処理が前記所定回数繰り返された後に、前記第2生成方法を前記第1生成方法に変更し、
前記第1解析部は、前記第2生成方法が前記第1生成方法に変更された後に、前記第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返すことを特徴とする付記6記載のシミュレーション装置。
(付記9)
前記所定回数は、前記誤差に関する指標に基づいて決定されることを特徴とする付記8記載のシミュレーション装置。
(付記10)
前記第1生成方法は、機械学習モデルを用いる生成方法であり、前記第2生成方法は、有限要素法に基づく数値計算法であることを特徴とする付記6乃至9の何れか1項に記載のシミュレーション装置。
(付記11)
解析対象の剛性行列を生成する第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返し、
前記第1解析処理が繰り返された後に前記第1生成方法により生成される剛性行列の誤差に関する指標を計算し、
前記誤差に関する指標に基づいて、前記第1生成方法を、前記第1生成方法よりも高い精度を有する第2生成方法に変更し、
前記第2生成方法に基づく第2解析処理を繰り返す、
処理をコンピュータが実行し、
前記第1解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記第1生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含み、
前記第2解析処理は、
前記解析対象の剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第2生成方法により生成された前記剛性行列を用いて、前記解析対象に関する物理量を計算する処理と、
を含むことを特徴とするシミュレーション方法。
(付記12)
前記誤差に関する指標を計算する処理は、
前記解析対象を表す複数の要素のうち何れかの要素を評価対象要素として用いて、前記評価対象要素の第1要素剛性行列を前記第1生成方法により生成する処理と、
前記評価対象要素の第2要素剛性行列を前記第2生成方法により生成する処理と、
前記第1要素剛性行列と前記第2要素剛性行列とを用いて、前記誤差に関する指標を計算する処理と、
を含むことを特徴とする付記11記載のシミュレーション方法。
(付記13)
前記第2解析処理を繰り返す処理は、前記第2解析処理を所定回数繰り返す処理を含み、
前記第2解析処理が前記所定回数繰り返された後に、前記第2生成方法を前記第1生成方法に変更して、前記第1生成方法に基づく第1解析処理を繰り返す処理を、前記コンピュータがさらに実行することを特徴とする付記11記載のシミュレーション方法。
(付記14)
前記所定回数は、前記誤差に関する指標に基づいて決定されることを特徴とする付記13記載のシミュレーション方法。
(付記15)
前記第1生成方法は、機械学習モデルを用いる生成方法であり、前記第2生成方法は、有限要素法に基づく数値計算法であることを特徴とする付記11乃至14の何れか1項に記載のシミュレーション方法。
【符号の説明】
【0129】
101、102、501、601、602、701、702、801、802、901 折れ線
201、401 シミュレーション装置
211-1 第1解析部
211-2 第2解析部
212 変更部
411 分割部
412-1、412-2、414-1、414-2 生成部
413-1、413-2 計算部
415 制御部
416 出力部
417 記憶部
421 物体情報
422 要素情報
423 機械学習モデル
611、612、711、712、811、812、911~914 期間
1101 CPU
1102 メモリ
1103 入力装置
1104 出力装置
1105 補助記憶装置
1106 媒体駆動装置
1107 ネットワーク接続装置
1108 GPU
1109 バス
1110 可搬型記録媒体