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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165730
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01K87/00 630C
A01K87/00 630A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082194
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】谷川 尚太郎
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AB05
2B019AB13
(57)【要約】
【課題】元竿の竿尻側の端部における層間剥離や亀裂の発生を防止する。
【解決手段】軸線方向に延びる元竿3を備える釣竿であって、元竿3は、第1強化繊維を含む第1プリプレグによって形成され、竿尻側端部に第1プリプレグの積層数が異なる段状部を有する本体層部と、第1強化繊維とは異なる第2強化繊維を含む第2プリプレグによって形成され、段状部を覆う被覆部と、を有し、元竿3は、被覆部に連続し、第2プリプレグによって形成され、本体層部の層間に設けられる層間部をさらに有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる元竿を備える釣竿であって、
前記元竿は、
第1強化繊維を含む第1プリプレグによって形成され、竿尻側端部に前記第1プリプレグの積層数が異なる段状部を有する本体層部と、
前記第1強化繊維とは異なる第2強化繊維を含む第2プリプレグによって形成され、前記段状部を覆う被覆部と、
を有する、釣竿。
【請求項2】
前記元竿は、前記被覆部に連続し、前記第2プリプレグによって形成され、前記本体層部の層間に設けられる層間部をさらに有する、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記段状部は、前記軸線方向の竿先側に向けて前記積層数が大きくなるように設けられる、請求項1に記載の釣竿
【請求項4】
前記元竿は、第3強化繊維を含む第3プリプレグによって形成され、前記被覆部の径方向外側に設けられる外周補強層部をさらに有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記被覆部は、前記軸線方向に延びる被覆長さを有し、
前記外周補強層部は、前記軸線方向に延び、前記被覆長さよりも短い外周補強長さを有する、請求項4に記載の釣竿
【請求項6】
前記元竿は、第4強化繊維を含む第4プリプレグによって形成され、前記本体層部の竿尻側の径方向内側に設けられる内周補強層部をさらに有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記被覆部は、前記軸線方向に延びる被覆長さを有し、
前記内周補強層部は、前記軸線方向に延び、前記被覆長さよりも短い内周補強長さを有する、請求項6に記載の釣竿。
【請求項8】
前記元竿は、前記元竿の内周面に、尻栓用の雌ネジ部を有し、
前記被覆部は、前記軸線方向に延びる被覆長さを有し、
前記雌ネジ部は、前記軸線方向に延び、前記被覆長さよりも短いネジ長さを有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項9】
前記第1強化繊維は、前記軸線方向に沿うように引き揃えられ、
前記第3強化繊維は、前記釣竿の周方向に沿うように引き揃えられる、請求項4に記載の釣竿。
【請求項10】
前記第4強化繊維は、前記釣竿の周方向に沿うように引き揃えられる、請求項6に記載の釣竿。
【請求項11】
前記第2強化繊維は織物を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項12】
前記第1強化繊維は、第1弾性率を有し、
前記第2強化繊維は、前記第1弾性率よりも小さい第2弾性率を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項13】
前記本体層部は、第1樹脂含有率を有し、
前記被覆部は、前記第1樹脂含有率よりも大きい第2樹脂含有率を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の釣竿。
【請求項14】
前記本体層部は、第1樹脂含有率を有し、
前記外周補強層部は、前記第1樹脂含有率よりも大きい第3樹脂含有率を有する、請求項4に記載の釣竿。
【請求項15】
前記本体層部は、第1樹脂含有率を有し、
前記内周補強層部は、前記第1樹脂含有率よりも大きい第4樹脂含有率を有する、請求項6に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、特に釣竿の元竿に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、へら竿のような延べ竿においては、複数の竿体を順次連結して使用される。これらの竿体は、例えば、プリプレグをマンドレルに巻回し、加熱焼成することにより筒状に形成される。元竿は、最も竿尻側に位置する竿体である。元竿の竿尻側の端部は、釣竿において大径の部分であり、元竿の竿尻側の端部には大きな力が作用しやすい。そのため、元竿の竿尻側の端部において、プリプレグからなる層間に剥離が生じたり、層に亀裂が生じたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-13358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、元竿の竿尻側の端部における層間剥離や亀裂の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面の釣竿は、元竿を備える。元竿は、軸線方向に延びる。元竿は、本体層部と被覆部とを有する。本体層部は、第1プリプレグによって形成される。第1プリプレグは、第1強化繊維を含む。本体層部は、竿尻側端部に段状部を有する。段状部は、第1プリプレグの積層数が異なる。被覆部は、第2プリプレグによって形成される。第2プリプレグは、第2強化繊維を含む。第2強化繊維は、第1強化繊維とは異なる。被覆部は、段状部を覆う。
【0006】
この構成によれば、元竿における本体層部の竿尻側端部に段状部が設けられ、その段状部を被覆部が覆っている。そのため、本体層部の竿尻側端部における層間剥離や亀裂の発生が被覆部によって抑制される。
【0007】
第1側面に従う第2側面の釣竿においては、元竿は、層間部をさらに有する。層間部は、被覆部に連続する。層間部は、第2プリプレグによって形成される。層間部は、本体層部の層間に設けられる。この構成によれば、被覆部と連続する層間部が本体層部の層間に介在していて、その層間部が被覆部と連続しているので、本体層部における層間剥離や亀裂の発生がより一層防止される。
【0008】
第1側面又は第2側面に従う第3側面の釣竿においては、段状部は、軸線方向の竿先側に向けて積層数が大きくなるように設けられる。この構成によれば、本体層部の竿尻側端部における厚さが過度に厚くなることが防止される。
【0009】
第1側面から第3側面の何れか一つの側面に従う第4側面の釣竿においては、元竿は、外周補強層部をさらに有する。外周補強層部は、第3プリプレグによって形成される。第3プリプレグは、第3強化繊維を含む。外周補強層部は、被覆部の径方向外側に設けられる。この構成によれば、被覆部の径方向外側にさらに外周補強層部が設けられているので、被覆部と外周補強層部とによって本体層部の層間剥離や亀裂の発生をより一層防止することができる。
【0010】
第4側面に従う第5側面の釣竿においては、被覆部は、被覆長さを有する。被覆長さは、軸線方向に延びる。外周補強層部は、外周補強長さを有する。外周補強長さは、軸線方向に延びる。外周補強長さは、被覆長さよりも短い。この構成によれば、外周補強層部が被覆部の軸線方向の全長のうちの一部のみを覆うことになる。そのため、元竿の竿尻側端部における過度の質量増加を抑制することができる。
【0011】
第1側面から第5側面の何れか一つの側面に従う第6側面の釣竿においては、元竿は、内周補強層部をさらに有する。内周補強層部は、第4プリプレグによって形成される。第4プリプレグは、第4強化繊維を含む。内周補強層部は、本体層部の竿尻側の径方向内側に設けられる。この構成によれば、内周補強層部が本体層部の竿尻側端部を径方向内側から補強する。即ち、本体層部の段状部が内周補強層部によって径方向内側から支えられて補強されることになる。そのため、本体層部における層間剥離や亀裂の発生をより一層防止することができる。
【0012】
第6側面に従う第7側面の釣竿においては、被覆部は、被覆長さを有する。被覆長さは、軸線方向に延びる。内周補強層部は、内周補強長さを有する。内周補強長さは、軸線方向に延びる。内周補強長さは、被覆長さよりも短い。この構成によれば、内周補強長さが被覆長さよりも短いので、元竿の竿尻側端部における過度の質量増加を抑制することができる。
【0013】
第1側面から第7側面の何れか一つの側面に従う第8側面の釣竿においては、元竿は、内周面に、尻栓用の雌ネジ部を有する。被覆部は、被覆長さを有する。被覆長さは、軸線方向に延びる。雌ネジ部は、ネジ長さを有する。ネジ長さは、軸線方向に延びる。ネジ長さは、被覆長さよりも短い。この構成によれば、ネジ長さが被覆長さよりも短いので、ネジ切りによる強度低下を最小限に抑制することができる。
【0014】
第4側面から第8側面の何れか一つの側面に従う第9側面の釣竿においては、第1強化繊維は、軸線方向に沿うように引き揃えられる。第3強化繊維は、釣竿の周方向に沿うように引き揃えられる。この構成によれば、本体層部によって元竿の曲げ剛性を容易に確保することができ、また、外周補強層部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を径方向外側から効果的に防止することができる。
【0015】
第6側面から第9側面の何れか一つの側面に従う第10側面の釣竿においては、第4強化繊維は、釣竿の周方向に沿うように引き揃えられる。この構成によれば、内周補強層部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を径方向内側から効果的に防止することができる。
【0016】
第1側面から第9側面の何れか一つの側面に従う第11側面の釣竿においては、第2強化繊維は、織物を含む。この構成によれば、被覆部の第2強化繊維が交差しているので、本体層部における層間剥離や亀裂の発生を効果的に防止することができる。
【0017】
第1側面から第11側面の何れか一つの側面に従う第12側面の釣竿においては、第1強化繊維は、第1弾性率を有する。尚、本願において、弾性率とは、引張弾性率を意味する。第2強化繊維は、第2弾性率を有する。第2弾性率は、第1弾性率よりも小さい。この構成によれば、被覆部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を効果的に防止することができる。
【0018】
第1側面から第12側面の何れか一つの側面に従う第13側面の釣竿においては、本体層部は、第1樹脂含有率を有する。被覆部は、第2樹脂含有率を有する。第2樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。この構成によれば、被覆部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を効果的に防止することができる。
【0019】
第4側面から第13側面の何れか一つの側面に従う第14側面の釣竿においては、本体層部は、第1樹脂含有率を有する。外周補強層部は、第3樹脂含有率を有する。第3樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。この構成によれば、外周補強層部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を径方向外側から効果的に防止することができる。
【0020】
第6側面から第14側面の何れか一つの側面に従う第15側面の釣竿においては、本体層部は、第1樹脂含有率を有する。内周補強層部は、第4樹脂含有率を有する。第4樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。この構成によれば、内周補強層部によって本体層部における層間剥離や亀裂の発生を径方向内側から効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本体層部の竿尻側端部に段状部が設けられ、その段状部を被覆部が覆うので、本体層部の竿尻側端部における層間剥離や亀裂の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における釣竿を示す正面図。
図2】(a)は図1のA-A断面図、(b)は図1のB-B断面図。
図3】同釣竿の元竿の製法を示す概略図。
図4】(a)乃至(c)は、同元竿の製法を示す概略図。
図5】(a)乃至(c)は、同元竿の製法を示す概略図。
図6】同元竿の製法を示す概略図。
図7】同元竿の要部を示す概略図であって、(a)は被覆部が設けられていない場合を示し、(b)は被覆部が設けられている場合を示す。
図8図7(b)のC-C断面図。
図9】(a)及び(b)は、同元竿の要部の製法を示す図7(b)のC-C線に対応した断面図。
図10】同元竿の要部の製法を示す図7(b)のC-C線に対応した断面図。
図11】同元竿の要部を示す断面図であって、(a)は尻栓が取り外された状態を示し、(b)は、尻栓が装着された状態を示す。
図12】(a)乃至(c)は、本発明の他の実施形態における釣竿の元竿の製法を示す概略図。
図13】同元竿の要部を示す概略図であって、(a)は被覆部が設けられていない場合を示し、(b)は被覆部が設けられている場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿について図1から図11を参酌しつつ説明する。尚、釣竿の軸線方向は、釣竿の中心線の方向であって、それを前後方向とする。竿先側を前側(第1軸線方向)とし、竿尻側を後側(第2軸線方向)とする。竿先側端部(竿先側の端部)を単に前端部と称し、竿尻側端部(竿尻側の端部)を単に後端部と称する。釣竿の周方向を単に周方向と称する。釣竿の径方向外側を単に外側と称し、釣竿の径方向内側を単に内側と称する。
【0024】
釣竿の形態は種々であってよく、釣り用リールが装着されるもの、即ち、リールシート及び釣糸ガイドを備えたものであってもよいが、本実施形態では、図1のように、リールが装着されないものである。従って、本実施形態の釣竿は、リールシート及び釣糸ガイドを備えていないものであり、延べ竿である。釣竿は、互いに前後に連結される複数の竿体を備えている。釣竿は、並継ぎ竿であってもよいし、振り出し竿であってもよい。複数の竿体は、最も前側に位置する穂先竿1と、最も後側に位置する元竿3と、穂先竿1と元竿3の間に位置する複数の中間竿2とからなる。尚、元竿3の後端部には尻栓4が着脱可能に装着される。竿体は、中空状(筒状)であってもよいし、中実状であってもよい。以下、元竿3について詳述する。
【0025】
<元竿3>
元竿3は、全長に亘って筒状である。元竿3は、繊維強化樹脂製であって、各種のプリプレグから形成される。強化繊維は炭素繊維やガラス繊維等である。元竿3の層構造について説明する。図2(a)に示すように、元竿3は、前端部と後端部を除く大部分において、筒状の主層部10と、主層部10の外側に設けられる筒状の外層部11と、主層部10の内側に設けられる筒状の内層部12とを備えている。主層部10は、元竿3の全厚のうち主要部分を構成する。主層部10は、外層部11と内層部12によって径方向の両側から挟み込まれている。尚、主層部10と外層部11の間に他の層が介在していてもよいし、主層部10と内層部12との間に他の層が介在していてもよい。主層部10は、元竿3の全長に亘って設けられる。主層部10の厚さは、外層部11の厚さよりも厚く、内層部12の厚さよりも厚い。主層部10は、多層構造であることが好ましい。
【0026】
図8のように、主層部10は、本体層部13と被覆部14と層間部15を有する。本実施形態では、主層部10は、本体層部13と被覆部14と層間部15から構成されている。尚、図2においては、本体層部13と被覆部14と層間部15を区別して図示することを省略しており、主層部10を一括して図示している。本体層部13は、主層部10のうちの大部分を構成している。本体層部13は、元竿3の全長に亘って設けられる。本体層部13は、多層構造である。本体層部13は、第1プリプレグ21から形成される。本体層部13は、第1強化繊維31を有する。第1強化繊維31は、前後方向に沿って引き揃えられている。第1強化繊維31は、好ましくは炭素繊維である。第1強化繊維31は、いわゆる高弾性炭素繊維と呼ばれるものであって、第1弾性率を有する。第1弾性率は、好ましくは392GPa以上である。本体層部13は、第1樹脂含有率を有する。第1樹脂含有率は、元竿3において最も小さいものであって、好ましくは20パーセント以下である。尚、本願において、樹脂含有率を示すパーセントの表記は、質量パーセントである。本体層部13の積層数は任意であるが、本実施形態では3層である。本体層部13は、本体層部13のうち最も外側を周回する最外層13aと、本体層部13のうち最も内側を周回する最内層13bと、最外層13aと最内層13bの間に位置する一又は複数の中間層13cとを有する。本実施形態では、中間層13cは1層である。
【0027】
被覆部14と層間部15は、元竿3の後端部のみに設けられている。被覆部14と層間部15は、何れも元竿3の後端面まで形成されている。被覆部14と層間部15は、互いに周方向に連続していて互いに一体の構成である。被覆部14は、本体層部13の後端部を外側から覆っている。層間部15は、本体層部13の層間に介在している。層間部15は、第1層間層15aと第2層間層15bとを有する。第1層間層15aは、本体層部13の最外層13aと中間層13cとの間に設けられる。第2層間層15bは、本体層部13の最内層13bと中間層13cとの間に設けられる。
【0028】
被覆部14及び層間部15は、互いに同一のプリプレグから形成されている。即ち、被覆部14及び層間部15は、第2プリプレグ22から形成される。被覆部14及び層間部15は、第1強化繊維31とは異なる第2強化繊維32を有する。第2強化繊維32は、好ましくはガラス繊維である。第2強化繊維32は、織物であって、縦繊維と横繊維からなる。縦繊維は前後方向に沿い、横繊維は周方向に沿う。第2強化繊維32は、第2弾性率を有する。第2弾性率は、第1弾性率よりも小さい。第2弾性率は、好ましくは98GPa未満である。被覆部14及び層間部15は、第2樹脂含有率を有する。第2樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。第2樹脂含有率は、好ましくは30パーセント以上である。
【0029】
内層部12は、主層部10の内周面を覆っている。内層部12は、元竿3の全長に亘って設けられることが好ましいが、全長のうちの一部のみに設けられてもよい。本実施形態では、内層部12は、元竿3の全長に亘って設けられ、主層部10の内周面を全長に亘って覆っている。内層部12は、元竿3の全長のうちの前端部と後端部を除く大部分において元竿3の内周面を構成する。内層部12は、単層構造であっても多層構造であってもよい。尚、内層部12が省略されてもよい。
【0030】
内層部12は、第5プリプレグ25から形成される。内層部12は、第5強化繊維35を有する。第5強化繊維35は、好ましくは炭素繊維である。第5強化繊維35は、周方向に沿っている。第5強化繊維35は、いわゆる中弾性炭素繊維であって、第5弾性率を有する。第5弾性率は、第1弾性率よりも小さく、第2弾性率よりも大きい。第5弾性率は、好ましくは196GPa以上343GPa未満である。内層部12は、第5樹脂含有率を有する。第5樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。第5樹脂含有率は、好ましくは30パーセント以上である。
【0031】
外層部11は、主層部10の外周面を覆っている。外層部11は、元竿3の全長に亘って設けられることが好ましいが、全長のうちの一部のみに設けられてもよい。本実施形態では、外層部11は、元竿3の全長に亘って設けられ、主層部10の外周面を全長に亘って覆う。外層部11は、元竿3の全長のうちの前端部と後端部を除く大部分において元竿3の外周面を構成する。外層部11は、単層構造であっても多層構造であってもよい。尚、外層部11が省略されてもよい。外層部11は、本実施形態においては内層部12と同じ第5プリプレグ25から形成される。但し、外層部11は、内層部12とは異なるプリプレグから形成されてもよい。
【0032】
次に、元竿3の後端部における層構造を説明する。元竿3の後端部における断面形状を図2(b)と図8に模式的に示している。尚、図8において、外層部11と内層部12を二点鎖線で示している。元竿3は、後端部においても上述と同様に主層部10と外層部11と内層部12を有し、更に、後端部においては、外周補強層部16と内周補強層部17とを有している。外周補強層部16と内周補強層部17は、何れも元竿3の後端部のみに設けられる。
【0033】
外周補強層部16は、外層部11の外側に設けられる。外層部11は、主層部10と外周補強層部16の径方向の間に位置する。尚、主層部10の外側に外周補強層部16が直接設けられてもよい。外周補強層部16は、元竿3の後端面まで形成される。外周補強層部16は、元竿3の後端部の外周面を構成する。外周補強層部16は、主層部10よりも薄い。外周補強層部16は、第3プリプレグ23から形成される。外周補強層部16は、第3強化繊維33を有する。第3強化繊維33は、好ましくは炭素繊維である。第3強化繊維33は、周方向に沿っている。第3強化繊維33は、いわゆる中弾性炭素繊維であって、第3弾性率を有する。第3弾性率は、第1弾性率よりも小さく、第2弾性率よりも大きい。第3弾性率は、好ましくは196GPa以上343GPa未満である。外周補強層部16は、第3樹脂含有率を有する。第3樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。第3樹脂含有率は、好ましくは30パーセント以上である。
【0034】
内周補強層部17は、内層部12の内側に設けられる。内層部12は、内周補強層部17と主層部10の径方向の間に位置する。尚、主層部10の内側に内周補強層部17が直接設けられてもよい。内周補強層部17は、元竿3の後端面まで形成される。内周補強層部17は、元竿3の後端部の内周面を構成する。内周補強層部17は、主層部10よりも薄い。内周補強層部17は、内層部12よりも厚い。内周補強層部17は、第4プリプレグ24から形成される。内周補強層部17は、第4強化繊維34を有する。第4強化繊維34は、好ましくはガラス繊維である。第4強化繊維34は、周方向に沿っている。第4強化繊維34は、第4弾性率を有する。第4弾性率は、第1弾性率よりも小さい。第4弾性率は、好ましくは98GPa未満である。内周補強層部17は、第4樹脂含有率を有する。第4樹脂含有率は、第1樹脂含有率よりも大きい。第4樹脂含有率は、好ましくは30パーセント以上である。
【0035】
図3から図10に元竿3の製法の概略を示している。尚、元竿3の前端部には好ましくは口巻き補強部が設けられるが、それについては省略する。図3に示すように、各プリプレグがマンドレル100に順次巻回されて加熱焼成される。尚、図3に二点鎖線でカット線101を示している。カット線101は、プリプレグを加熱焼成した後に、筒状体の後端部を所定長さカットする位置を示すものである。同様に、前端部も所定長さカットされるが、それについては省略する。加熱焼成後の筒状体の後端部を所定のカット長さ102(図7参照)だけ切除して元竿3が形成される。
【0036】
まず、マンドレル100に第4プリプレグ24を巻回する。図4(a)に示しているように、第4プリプレグ24は、前後方向に延びる第4前後方向長さ44を有する。第4プリプレグ24は、内端24aから外端24bに向けて前後方向の長さが短くなる形状であって、具体的には、外端24bを上底とし、内端24aを下底とする台形状である。第4前後方向長さ44は、第4プリプレグ24の内端24aにおける前後方向の長さである。第4プリプレグ24の周方向長さは任意であり、第4プリプレグ24の巻き数も任意である。第4プリプレグ24の第4強化繊維34は、周方向に沿って引き揃えられている。第4プリプレグ24によって内周補強層部17が形成される。内周補強層部17は、前後方向長さである内周補強長さ54を有する。内周補強長さ54は、第4前後方向長さ44からカット長さ102を引いた長さである。
【0037】
マンドレル100に第4プリプレグ24を巻回した後、図5のように、マンドレル100にテープ状の第5プリプレグ25を巻回する。第5プリプレグ25により内層部12が形成される。尚、第5プリプレグ25は、テープ状ではなくシート状であってもよい。第5プリプレグ25は、第4プリプレグ24を覆うようにして元竿3の全長に亘って巻回される。第5プリプレグ25は、間隔をあけずに密巻状態で螺旋状に巻回される。第5プリプレグ25の第5強化繊維35は、テープ長手方向に沿って引き揃えられている。第5強化繊維35は、テープ長手方向に連続している。第5プリプレグ25のテープ幅(前後方向の長さ)は任意であるが、例えば、第4プリプレグ24の第4前後方向長さ44よりも狭い。
【0038】
次に、第5プリプレグ25の外側にメインプリプレグ20が巻回される。メインプリプレグ20により主層部10が形成される。メインプリプレグ20の巻き数は任意であるが、本実施形態では3プライである。メインプリプレグ20は、第1プリプレグ21と第2プリプレグ22とからなる。第1プリプレグ21により本体層部13が形成され、第2プリプレグ22により被覆部14と層間部15が形成される。メインプリプレグ20は、第1プリプレグ21の後端部の外面に第2プリプレグ22が貼り合わせられたものであり、第1プリプレグ21と第2プリプレグ22がまとめてマンドレル100に巻回される。メインプリプレグ20は、第2プリプレグ22が外側となるようにしてマンドレル100に巻回される。
【0039】
図4(b)のように、第1プリプレグ21は、後側に向けて周方向寸法が拡大する形状であって、具体的には、前端21aと後端21bをそれぞれ上底と下底とする台形状である。第1プリプレグ21の内端21cは、前後方向に沿っている。第1プリプレグ21の外端21dは、前端21aから後端21bに向けて内端21cから離れるように傾斜している。第1プリプレグ21の後端21bの外周部は外端に向けて斜めにカットされている。即ち、第1プリプレグ21の後端21bは、周方向に延びる延伸部26と、延伸部26の外周側に連続し、前側且つ外端21dに向けて第1プリプレグ21の周方向長さが拡大するように傾斜して延びる斜状部27とからなる。延伸部26の周方向長さ26aは種々であってよいが、例えば2プライに相当する長さであり、また、斜状部27の周方向長さ27aは例えば1プライに相当する長さである。
【0040】
図5(a)に、後端21bの外周部がカットされる前の状態の第1プリプレグ21を、図3とは反転した状態で外面側から示している。図5(b)のように、第1プリプレグ21の後端21bの外周部を斜めにカットする。カットする形状は、三角形状である。第1プリプレグ21の後端21bの外周部がカットされることにより、第1プリプレグ21の後端21bに斜状部27が形成される。そして、斜状部27を外面側から覆うように、第1プリプレグ21の後端部の外面に第2プリプレグ22を積層する。
【0041】
図4(b)及び図5のように、第2プリプレグ22は、周方向に長い長方形状である。第2プリプレグ22は、第2前後方向長さ42を有する。第2前後方向長さ42は、長方形の短辺の長さである。第2前後方向長さ42は任意であるが、少なくとも、第1プリプレグ21の斜状部27の全体を覆うことができる程度の長さである。本実施形態では、第2前後方向長さ42は、斜状部27の前後方向長さと同じである。第2プリプレグ22の周方向長さは、長方形の長辺の長さである。第2プリプレグ22の周方向長さは任意であるが、少なくとも、第1プリプレグ21の斜状部27の全体を覆うことができる程度の長さである。本実施形態では、第2プリプレグ22の周方向長さは、第1プリプレグ21の周方向長さ(延伸部26の周方向長さ26aと斜状部27の周方向長さ27aを足した合計長さ)と略同じである。また、第2プリプレグ22の周方向長さは、3プライに対応する長さとされる。第2プリプレグ22によって被覆部14と層間部15が形成される。第2プリプレグ22の外周部から被覆部14が形成され、第2プリプレグ22の内周部から層間部15が形成される。層間部15は、第2プリプレグ22が略2巻きされることで形成され、被覆部14は、第2プリプレグ22が略1巻きされることで形成される。被覆部14は、前後方向長さである被覆長さ52を有する。尚、本実施形態では、層間部15は、被覆長さ52と同じ前後方向長さを有するが、異なる前後方向長さを有していてもよい。被覆長さ52は、第2前後方向長さ42からカット長さ102を引いた長さである。
【0042】
このように、第1プリプレグ21と第2プリプレグ22が貼り合わせられることでメインプリプレグ20が形成される。図9及び図10にメインプリプレグ20を巻回している途中の状態を示している。図9(a)は、メインプリプレグ20が1周目から2周目に入るときの状態であり、図9(b)は、メインプリプレグ20が2周目から3周目に入るときの状態である。第2プリプレグ22が第1プリプレグ21に貼り合わせられているので、メインプリプレグ20をマンドレル100に巻回すると、第2プリプレグ22が第1プリプレグ21の層間に位置すると共に、第1プリプレグ21を外側から覆う。第1プリプレグ21の層間に位置する第2プリプレグ22の部分から層間部15が形成される。本実施形態では、第1プリプレグ21の内側から数えて1層目と2層目の間と、2層目と3層目の間に、層間部15が形成される。詳細には、第1プリプレグ21の1層目と2層目の間に第2層間層15bが形成され、2層目と3層目の間に第1層間層15aが形成される。第1プリプレグ21の3層目の外側に被覆部14が形成される。
【0043】
図10に示しているように、メインプリプレグ20の3周目は最終の周回となるので、第2プリプレグ22は第1プリプレグ21によって覆われなくなって露出することになり、その露出部分が被覆部14となる。また、第2プリプレグ22は斜状部27を覆っており、第2プリプレグ22は斜状部27から周方向の外側に三角形状に延びている。その第2プリプレグ22の三角形状の延出部分は、図10及び図8のように、内側を巻回している第2プリプレグ22の外側に積層されることになる。つまり、後述の段状部60よりも後側においては、被覆部14が層間部15の第1層間層15aの外側に重なる。
【0044】
第1プリプレグ21の後端21bに斜状部27が形成されているので、メインプリプレグ20をマンドレル100に巻回すると、斜状部27は螺旋状に延びることになる。斜状部27が螺旋状に巻回されることにより、本体層部13の後端部には螺旋状の段状部60が形成されることになる。図7(a)に、メインプリプレグ20に第2プリプレグ22が設けられず、メインプリプレグ20が第1プリプレグ21のみの場合において、メインプリプレグ20のみを巻回した状態を示している。段状部60は、カット前の筒状体の後端面から前側に1周分だけ螺旋状に延びる。図7(b)に、メインプリプレグ20に第2プリプレグ22が設けられた場合を示している。螺旋状に延びる段状部60を被覆部14が外側から覆う。従って、段状部60は主層部10の外周面には露出しない。段状部60の螺旋のピッチは、外周補強長さ53よりも大きいことが好ましく、また、内周補強長さ54よりも大きいことが好ましい。
【0045】
このように、段状部60は、第1プリプレグ21の斜状部27により形成される。段状部60において、第1プリプレグ21の積層数が変化する。段状部60において、第1プリプレグ21の積層数は前側に向けて大きくなる。具体的には、段状部60において、第1プリプレグ21の積層数は前側に向けて1層分だけ増加しており、段状部60の後側においては2層であり、段状部60の前側においては3層である。斜状部27の周方向長さが1プライに相当するので、段状部60は1周分形成されるが、カット線101で後端部が切除されるので、カット後の元竿3においては、段状部60は1周分未満となる。段状部60は、元竿3の後端面から前側に向けて1周分未満の周回で螺旋状に延びることになる。段状部60は、外周補強層部16よりも前側に延びており、また、内周補強層部17よりも前側に延びている。
【0046】
メインプリプレグ20を巻回した後、再び図6のようにテープ状の第5プリプレグ25を全長に亘って巻回する。外層部11は、第5プリプレグ25から形成される。尚、外層部11を第5プリプレグ25から形成するのではなく第5プリプレグ25とは異なるプリプレグから形成してもよい。
【0047】
第5プリプレグ25を巻回した後、図3のように、第3プリプレグ23を巻回する。第3プリプレグ23は、第3前後方向長さ43を有する。第3プリプレグ23は、第4プリプレグ24と同一形状であってよい。第3プリプレグ23は、内端23aから外端23bに向けて前後方向の長さが短くなる形状であって、具体的には、外端23bを上底とし、内端23aを下底とする台形状である。第3前後方向長さ43は第4前後方向長さ44と同じであってよい。第3前後方向長さ43は、第3プリプレグ23の内端23aにおける前後方向の長さである。第3プリプレグ23の第3強化繊維33は、周方向に沿って引き揃えられている。第3プリプレグ23によって外周補強層部16が形成される。外周補強層部16は、前後方向長さである外周補強長さ53を有する。外周補強長さ53は、第3前後方向長さ43からカット長さ102を引いた長さである。外周補強長さ53は、内周補強長さ54と同一としてよい。尚、外周補強層部16の外周面は、加熱焼成後に、研磨工程により研磨され、それにより元竿3の後端部における外径の調整が行われる。
【0048】
上述のように、元竿3の後端部には尻栓4が着脱自在に装着される。図11に詳細を示している。尻栓4は、元竿3への装着時に元竿3の後端部の内側に入り込む挿入部4bと、元竿3への装着時に元竿3から後側に突出する突出部4aとを有する。挿入部4bの外周面に雄ネジ部4cが形成されている。元竿3の後端部の内周面には雌ネジ部61が形成されている。雌ネジ部61に尻栓3の雄ネジ部4cが螺合する。雌ネジ部61は、前後方向長さであるネジ長さ61aを有している。雌ネジ部61は、内周補強層部17に形成されている。内周補強層部17の内周面をネジ切り加工することにより雌ネジ部61が形成される。雌ネジ部61は、元竿3の後端面から前側に向けて所定長さに亘って形成されている。ネジ長さ61aは、内周補強長さ54よりも短く、また、被覆長さ52よりも短い。
【0049】
以上のように構成された釣竿においては、本体層部13の後端部に螺旋状に延びる段状部60が形成されているので、本体層部13の後端部の外周面に作用する応力が分散される。そして、段状部60を被覆部14が覆っているので、本体層部13の後端部における層間剥離や亀裂の発生が抑制される。本体層部13を形成する第1プリプレグ21の第1強化繊維31が高弾性炭素繊維であって、しかも、第1樹脂含有率が極めて低い場合に効果的である。特に、被覆部14及び層間部15を形成する第2プリプレグ22の第2強化繊維32がガラス繊維であって且つ織物であると、本体層部13の後端部における層間剥離や亀裂の発生が効果的に抑制される。
【0050】
また、本体層部13の後端部に段状部60が形成されているので、元竿3の後端部における過度の大径化を抑制することができる。特に、段状部60が前側に向けて積層数が大きくなる態様であるため、元竿3の後端部における肥大化を容易に抑制することができる。
【0051】
被覆部14から周方向に連続して層間部15が延びているので、本体層部13の層間剥離や亀裂の発生が効果的に抑制できる。特に、層間部15が第1プリプレグ21の巻回始点部まで形成されているので、本体層部13において応力が周方向に変化しやすい箇所である巻回始点部における層間剥離や亀裂の発生が効果的に抑制されることになる。尚、被覆部14が層間部15と連続しているので、第1プリプレグ21の巻回終了部でもある段状部60において層間剥離や亀裂の発生が被覆部14及び層間部15によって効果的に防止される。
【0052】
また、被覆部14の外側に、テープ状の第5プリプレグ25から形成された外層部11が設けられているので、被覆部14を外層部11が補強する。また、被覆部14を段状部60に強く押し付けることができる。特に、被覆部14が織物の第2プリプレグ22から形成されている場合には、段状部60に被覆部14が沿って変形しやすい。また、外層部11の第5強化繊維35が、被覆部14の第2強化繊維32よりも高弾性であるので、被覆部14の型崩れを容易に防止することができる。しかも、外層部11を構成する第5プリプレグ25がテープ状であって被覆部14の外周面から本体層部13の外周面にかけて連続して巻回されているので、被覆部14の前端の位置ずれも抑制される。
【0053】
被覆部14の外側に外層部11を介して更に外周補強層部16が設けられている。即ち、本体層部13の外側には、被覆部14と外層部11と外周補強層部16という三つの異なる層構造体が設けられている。そのため、本体層部13の層間剥離や亀裂がより一層抑制されることになる。外周補強長さ53が被覆長さ52よりも短いと、元竿3の後端部における質量増加を抑制することができる。
【0054】
また更に、被覆部14の内側には内層部12が設けられている。つまり、本体層部13を含む主層部10が内層部12と外層部11とによって径方向の両側から挟み込まれている。そのため、本体層部13における層間剥離や亀裂がより一層抑制される。そして更に、内層部12の内側には内周補強層部17が設けられている。即ち、主層部10の内側には、内層部12と内周補強層部17という二つの異なる層構造体が設けられている。そのため、本体層部13における層間剥離や亀裂がより一層抑制される。内周補強長さ54が被覆長さ52よりも短いと、元竿3の後端部における質量増加を抑制することができる。
【0055】
尻栓4を装着するための雌ネジ部61は内周補強層部17に形成されている。そのため、ネジ加工の影響が内層部12や主層部10に及ばず、ネジ加工時における本体層部13の後端部における層間剥離等の損傷を回避することができる。また、ネジ長さ61aが被覆長さ52よりも短いので、本体層部13の後端部へのダメージをより一層抑制できる。
【0056】
尚、図12に示すように、斜状部27の周方向長さ27aを2プライに相当する長さとしてもよい。即ち、第1プリプレグ21の後端21bの延伸部26の周方向長さ26aを1プライに相当する長さとしてもよい。その場合、第2プリプレグ22を設けない場合に第1プリプレグ21のみを巻回すると図13(a)のようになる。即ち、斜状部27によって形成される段状部60は、カット前の筒状体の後端面から螺旋状に2回転分に相当する長さに亘って形成されることになる。逆に、段状部60は1回転未満であってもよい。尚、延伸部26の周方向長さ26aは少なくとも1プライに相当する長さであることが好ましく、第1プリプレグ21をその後端21bにおいてマンドレル100に正確に巻回することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、第1プリプレグ21に第2プリプレグ22を貼り合わせてメインプリプレグ20を形成し、そのメインプリプレグ20をマンドレル100に巻回するようにしたが、第1プリプレグ21をマンドレル100に巻回した後に、別途、段状部60を覆うようにして第2プリプレグ22をマンドレル100に巻回するようにしてもよい。その場合には、層間部15が設けられない。
【符号の説明】
【0058】
1 穂先竿
2 中間竿
3 元竿
4 尻栓
4a 突出部
4b 挿入部
4c 雄ネジ部
10 主層部
11 外層部
12 内層部
13 本体層部
13a 最外層
13b 最内層
13c 中間層
14 被覆部
15 層間部
15a 第1層間層
15b 第2層間層
16 外周補強層部
17 内周補強層部
20 メインプリプレグ
21 第1プリプレグ
21a 前端
21b 後端
21c 内端
21d 外端
22 第2プリプレグ
23 第3プリプレグ
23a 内端
23b 外端
24 第4プリプレグ
24a 内端
24b 外端
25 第5プリプレグ
26 延伸部
26a 周方向長さ
27 斜状部
27a 周方向長さ
31 第1強化繊維
32 第2強化繊維
33 第3強化繊維
34 第4強化繊維
35 第5強化繊維
42 第2前後方向長さ
43 第3前後方向長さ
44 第4前後方向長さ
52 被覆長さ
53 外周補強長さ
54 内周補強長さ
60 段状部
61 雌ネジ部
61a ネジ長さ
100 マンドレル
101 カット線
102 カット長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13