(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165735
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20241121BHJP
C08K 5/523 20060101ALI20241121BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241121BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K5/523
C08K3/013
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082201
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇川 仁太
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA07
3D131BA08
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002DA037
4J002DJ017
4J002EW046
4J002FD017
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD206
4J002GL00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】ゴム組成物を高強度化する。
【解決手段】実施形態に係るゴム組成物は、合成ジエン系ホモポリマーを含むゴム成分と、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤と、を含む。合成ジエン系ホモポリマー100質量部に対する核剤の量は0.05~10質量部である。合成ジエン系ホモポリマーは、合成イソプレンゴム及び/又はポリブタジエンゴムであることが好ましい。該ゴム組成物は、さらに充填剤を、ゴム成分100質量部に対して10~200質量部含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ジエン系ホモポリマーを含むゴム成分と、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤と、を含み、前記合成ジエン系ホモポリマー100質量部に対する前記核剤の量が0.05~10質量部である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記合成ジエン系ホモポリマーが合成イソプレンゴム及び/又はポリブタジエンゴムである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらに充填剤を含み、前記ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の量が10~200質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品について、昨今サステナブルの観点などからさらなる長寿命化が求められている。タイヤの長寿命化のためには耐摩耗性の向上が求められ、そのためには強度、すなわち抗張積の高いゴム組成物が求められる。
【0003】
天然ゴムは伸長結晶化により高強度の特性を発現することが知られている。これに対し、合成イソプレンゴムやポリブタジエンゴムなどの合成ジエン系ゴムは、天然ゴムほどには伸長結晶化が発現しない。そこで、合成ジエン系ゴムの結晶化を促進して高強度化を図るために核剤を配合することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ジエン系ゴムに、結晶核剤としてパラフィン類又は高級飽和脂肪酸と、可塑剤として低分子量ジエン重合体又は脂肪酸エステルを配合することが開示されている。特許文献2には、ジエン系ゴムに、成核剤として二金属テトラカルボキシレートを配合することによりひずみ誘起結晶化を促進することが開示されている。このように伸長結晶化を促進する核剤が報告されているが、その数は少なく、優れた核剤による改善の余地は大きい。
【0005】
一方、樹脂材料において核剤を添加することが知られている。樹脂材料の場合、溶融状態で加工後、脱型する際に冷却する必要があり、核剤を添加することで脱型温度を高めて生産性を向上することができる。このように樹脂材料における核剤は、ポリマーの結晶化工程で核生成を促進することにより均一で微細な結晶の生成に役立つものであり、ゴム材料の場合とは目的が大きく異なる。例えば、特許文献3には、オレフィン系樹脂に、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤を添加し、これによりオレフィン系樹脂の結晶化速度を高めて特性を改善することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-31248号公報
【特許文献2】特表2017-537176号公報
【特許文献3】国際公開第2020/153343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、従来はオレフィン系樹脂に用いられている核剤をジエン系ゴムに適用することにより、伸長結晶化による高強度化を図れるのではないかと考えた。
【0008】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、ゴム組成物を高強度化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、核剤として芳香族リン酸エステル金属塩を合成ジエン系ホモポリマーに添加することにより、合成ジエン系ホモポリマーの伸長結晶化が促進され、高強度なゴム組成物が得られることを見出した。
【0010】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 合成ジエン系ホモポリマーを含むゴム成分と、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤と、を含み、前記合成ジエン系ホモポリマー100質量部に対する前記核剤の量が0.05~10質量部である、ゴム組成物。
[2] 前記合成ジエン系ホモポリマーが合成イソプレンゴム及び/又はポリブタジエンゴムである、[1]に記載のゴム組成物。
[3] さらに充填剤を含み、前記ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の量が10~200質量部である、[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4] [1]~[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤を添加することにより、合成ジエン系ホモポリマーを含むゴム組成物を高強度化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係るゴム組成物は、合成ジエン系ホモポリマーを含むゴム成分と、芳香族リン酸エステル金属塩を含む核剤と、を含む。
【0013】
合成ジエン系ホモポリマーは、モノマーとして共役二重結合を持つジエンモノマーを用いて化学的に合成された単独重合体のゴムである。合成ジエン系ホモポリマーとしては、例えば、合成イソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)が挙げられ、いずれか一方を用いても、併用してもよい。
【0014】
合成ジエン系ホモポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば20万~200万でもよく、30万~100万でもよい。ここで、重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められるポリスチレン換算の値である。例えば、測定装置として島津製作所製「LC-10A」を、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel-MIXED-C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出することができる。
【0015】
ゴム成分は、上記合成ジエン系ホモポリマーを含むものであり、合成ジエン系ホモポリマー単独でもよく、合成ジエン系ホモポリマーとともに他のジエン系ゴムを含んでもよい。ゴム成分中の合成ジエン系ホモポリマーの含有割合は、50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~100質量%であり、更に好ましくは80~100質量%であり、100質量%でもよい。
【0016】
合成ジエン系ホモポリマーと併用してもよい他のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。これらの他のジエン系ゴムは、いずれか1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0017】
合成ジエン系ホモポリマーに添加する核剤として、本実施形態では芳香族リン酸エステル金属塩が用いられる。芳香族リン酸エステル金属塩は、上記のように、オレフィン系樹脂の結晶化速度を向上させる核剤として知られているが、本実施形態では合成ジエン系ホモポリマーの伸長結晶化を促進するために用いられる。本実施形態において、核剤は、合成ジエン系ホモポリマーの伸長結晶化を促進する薬剤であり、結晶核剤とも称される。伸長結晶化とは、伸長変形されたとき非晶質材料が相変化して結晶状態に近づくことをいう。
【0018】
芳香族リン酸エステル金属塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】
式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1又は2を表し、nが1の場合、Mは、アルカリ金属原子又はジヒドロキシアルミニウムを表し、nが2の場合、Mは、アルカリ土類金属原子又はヒドロキシアルミニウムを表す。
【0019】
R1~R4で表される炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、tert-アミル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシルが挙げられる。R1~R4は、tert-ブチル又はイソプロピルが好ましい。
【0020】
R5で表される炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられる。R5は、水素原子又はメチルが好ましい。
【0021】
Mで表されるアルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。Mとしては、アルカリ金属原子又はヒドロキシアルミニウムが好ましく、より好ましくはリチウム、ナトリウム、ヒドロキシアルミニウムである。
【0022】
一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル金属塩の具体例としては、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジイソプロピルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジイソプロピルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシアルミニウムビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキシアルミニウムビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジイソプロピルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキシアルミニウムビス[2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]が挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
核剤は、芳香族リン酸エステル金属塩単独でもよく、芳香族リン酸エステル金属塩とともに、例えば脂肪酸アルカリ金属塩などの他の化合物を含んでもよい。核剤における芳香族リン酸エステル金属塩の含有割合は特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0024】
ゴム組成物における核剤の量は、合成ジエン系ホモポリマー100質量部に対して0.05~10質量部であることが好ましい。核剤の量が0.05質量部以上であることにより、合成ジエン系ホモポリマーの伸長結晶化を促進し、ゴム組成物の高強度化が可能となる。核剤の量は、0.1~8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、更に好ましくは1~5質量部である。
【0025】
本実施形態に係るゴム組成物は、充填剤を含んでもよい。充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカが好ましい。
【0026】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。具体的には、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)、GPF級(N600番台)(ともにASTMグレード)などが挙げられる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
シリカとしては、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられる。好ましくは、湿式沈降法シリカ、湿式ゲル化法シリカなどの湿式シリカを用いることである。
【0028】
充填剤の量は、ゴム成分100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、用途等に応じて適宜設定することができる。ゴム成分100質量部に対する充填剤の量は、より好ましくは40~150質量部である。
【0029】
一実施形態において充填剤はカーボンブラックを主成分としてもよい。すなわち、充填剤の全質量に対するカーボンブラックの量が50質量%超でもよく、70質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
【0030】
一実施形態において充填剤はシリカを主成分としてもよい。すなわち、充填剤の全質量に対するシリカの量が50質量%超でもよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
【0031】
充填剤としてシリカを配合する場合、ゴム組成物は更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシランカップリング剤等が挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の量は、シリカ100質量部に対して5~20質量部であることが好ましく、より好ましくは5~15質量部である。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤が配合されてもよい。
【0033】
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよく、1~4質量部でもよい。
【0034】
ステアリン酸の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよく、1~4質量部でもよい。
【0035】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよく、1~3質量部でもよい。
【0036】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系、チウラム系、及びチアゾール系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、1~3質量部でもよい。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、核剤及び充填剤とともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤が添加混合される。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤が添加混合される。これにより、未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0038】
本実施形態に係るゴム組成物は、タイヤ、防振ゴム、コンベアベルトなどの各種ゴム部材に用いることができる。好ましくは、タイヤ用であり、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど各種用途、各種サイズの空気入りタイヤのトレッド、サイドウォール、ビード部などタイヤの各部位に適用することができる。
【0039】
一実施形態において、上記ゴム組成物からなるゴム部分(例えば、トレッドゴム、サイドウォールゴム等)を含むタイヤは次のようにして製造される。ゴム組成物は、常法に従い、例えば押出加工によって所定の形状に成形される。得られた成形物を他の部品と組み合わせることでグリーンタイヤが作製される。グリーンタイヤを例えば140~180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【0040】
本実施形態に係るゴム組成物は、伸長結晶化により強度(抗張積)を向上することができるため、耐摩耗性を向上することができる。そのため、一実施形態において、タイヤのトレッドを構成するゴム組成物として用いることが好ましい。すなわち、一実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製されたトレッドを有するタイヤである。
【実施例0041】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、(株)ENEOSマテリアル製「HPR350」
・NR:天然ゴム、RSS#3
・BR:ポリブタジエンゴム、UBEエラストマー(株)製「UBEPOL BR 150B」
・IR:合成イソプレンゴム、(株)ENEOSマテリアル製「IR2200」
【0043】
・核剤A:(株)ADEKA製「アデカスタブNA-21」(主成分:ヒドロキシアルミニウムビス[2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート](R1~R4=t-Bu、R5=H、M=Al-OH、n=2)の複合物)
【0044】
・核剤B:(株)ADEKA製「アデカスタブNA-11」(ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート(R1~R4=t-Bu、R5=H、M=Na、n=1))
【0045】
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストKH(N339)」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS-P」
【0046】
下記実験例における抗張積及び結晶化度の測定方法は以下のとおりである。
[抗張積]
加硫サンプルからダンベル状3号形の試験片を作製した。試験片について、(株)島津製作所製オートグラフを用いて、JIS K6251:2017に従い引張試験を実施して引張強さを測定した。切断時引張強さTb(MPa)と切断時伸びEb(%)を算出し、抗張積(Tb×Eb÷100)を求めた。結果は、第1実験例では比較例1の抗張積、第2実験例では比較例3の抗張積、第3実験例では比較例4の抗張積、第4実験例では比較例6の抗張積、第5実験例では比較例7の抗張積を、それぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど強度が高く、耐摩耗性に優れることを示す。
【0047】
[結晶化度]
加硫サンプルを100%延伸させた状態で、BRUKER社製のX線回折装置「D8 DISCOVER」により回折像を取得し、2θ=25度の強度値[I25]と2θ=19度の強度値[I19]との比[I25/I19]から結晶化指数を求めた。結果は、第1実験例では比較例1の結晶化指数、第2実験例では比較例3の結晶化指数、第3実験例では比較例4の結晶化指数、第4実験例では比較例6の結晶化指数、第5実験例では比較例7の結晶化指数を、それぞれ100とした指数で表示した。指数が大きいほど伸長結晶化度が高いことを示す。
【0048】
[第1実験例]
ダイハン製ラボミキサー(300cc)を用いて、下記表1に示す配合(質量部)に従って、ゴム成分を30秒間、素練りした後、硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を投入し、150秒間混練し、その後排出した。さらに、排出されたゴム組成物と硫黄と加硫促進剤をラボミキサーに投入し、60秒間混練し排出した。2本ロールを用いて、得られた未加硫ゴム組成物の厚さが2mmになるようにシーティングを行った後、160℃で20分間加硫プレスを行い、比較例1~2の加硫サンプル(厚さ2mm)を得た。得られた加硫サンプルについて、抗張積及び結晶化度を測定した。結果は表1に示すとおりである。
【0049】
【0050】
[第2実験例]
下記表2に示す配合(質量部)に従い、その他は第1実験例と同様にして、比較例3及び実施例1の加硫サンプルを得た。得られた加硫サンプルについて、抗張積及び結晶化度を測定した。結果は表2に示すとおりである。
【0051】
【0052】
[第3実験例]
下記表3に示す配合(質量部)に従い、その他は第1実験例と同様にして、比較例4~5の加硫サンプルを得た。得られた加硫サンプルについて、抗張積及び結晶化度を測定した。結果は表3に示すとおりである。
【0053】
【0054】
[第4実験例]
下記表4に示す配合(質量部)に従い、その他は第1実験例と同様にして、比較例6及び実施例2~6の加硫サンプルを得た。得られた加硫サンプルについて、抗張積及び結晶化度を測定した。結果は表4に示すとおりである。
【0055】
【0056】
[第5実験例]
下記表5に示す配合(質量部)に従い、その他は第1実験例と同様にして、比較例7及び実施例7の加硫サンプルを得た。得られた加硫サンプルについて、抗張積及び結晶化度を測定した。結果は表5に示すとおりである。
【0057】
【0058】
表2に示すように、BRを含むゴム組成物に核剤として芳香族リン酸エステル金属塩を配合した実施例1のゴム組成物であると、未添加の比較例3のゴム組成物に対して、抗張積が向上した。表4に示すように、IRを含むゴム組成物でも芳香族リン酸エステル金属塩を配合した実施例2~6であると、未添加の比較例6のゴム組成物に対して、抗張積が向上した。また、これらのゴム組成物は伸張時に結晶化が促進されており、核剤の配合量が多いほど、伸長結晶化度が高く、抗張積の向上効果が大きかった。このことから芳香族リン酸エステル金属塩の配合により、BR及びIRの伸長結晶化が促進されて強度が向上したものと考えられる。
【0059】
表5に示すように、充填剤としてカーボンブラックを配合した場合でも、IRに核剤として芳香族リン酸エステル金属塩を配合することにより、伸長結晶化が促進され、抗張積が向上した。
【0060】
これに対し、表1に示すように、ゴム成分としてSBRを用いた場合、芳香族リン酸エステル金属塩を配合しても、伸長結晶化は発現せず、高強度化しなかった。また、ゴム成分としてNRを用いた場合、核剤としての芳香族リン酸エステル金属塩を配合しなくても伸長結晶化が発現するため、表3に示すように核剤の添加効果は得られなかった。
【0061】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0062】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。