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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165748
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】油圧シリンダ用制御弁
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20241121BHJP
   F16K 11/07 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F15B11/08 B
F16K11/07 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082225
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】小西 勲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義隆
【テーマコード(参考)】
3H067
3H089
【Fターム(参考)】
3H067AA17
3H067CC02
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD33
3H067EA14
3H067EA17
3H067FF11
3H067GG15
3H067GG22
3H089BB16
3H089BB27
3H089CC01
3H089DA02
3H089DB46
3H089DB49
3H089DB54
3H089DB75
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】スプールを備えた油圧シリンダ用制御弁において、スプールの中立位置におけるリークにより油圧シリンダが伸長あるいは縮小してしまうことを回避する。
【解決手段】スプール13の中立位置におけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprとロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtとポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率を、油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率や想定外力Feに基づいて設定した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの両側にヘッド側油室、ロッド側油室を備えた油圧シリンダに対する油給排制御を行う油圧シリンダ用制御弁において、
該油圧シリンダ用制御弁は、バルブボディに形成されるスプール孔に軸方向移動自在に挿通されるスプールと、スプール孔に連通し、油圧ポンプ、油タンク、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室にそれぞれ接続されるポンプ流路、タンク流路、ヘッド側流路、ロッド側流路とを備え、
前記スプールは、中立位置では前記各流路間を遮断し、中立位置から軸方向一方側に移動した第一作動位置ではポンプ流路とヘッド側流路、およびロッド側流路とタンク流路とを連通し、中立位置から軸方向他方側に移動した第二作動位置ではポンプ流路とロッド側流路、およびヘッド側流路とタンク流路とを連通する構成であるとともに、
スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を、油圧シリンダのロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積の比率に基づいて設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁。
【請求項2】
ピストンの両側にヘッド側油室、ロッド側油室を備えた油圧シリンダに対する油給排制御を行う油圧シリンダ用制御弁において、
該油圧シリンダ用制御弁は、バルブボディに形成されるスプール孔に軸方向移動自在に挿通されるスプールと、スプール孔に連通し、油圧ポンプ、油タンク、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室にそれぞれ接続されるポンプ流路、タンク流路、ヘッド側流路、ロッド側流路とを備え、
前記スプールは、中立位置では前記各流路間を遮断し、中立位置から軸方向一方側に移動した第一作動位置ではポンプ流路とヘッド側流路、およびロッド側流路とタンク流路とを連通し、中立位置から軸方向他方側に移動した第二作動位置ではポンプ流路とロッド側流路、およびヘッド側流路とタンク流路とを連通する構成であるとともに、
スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を、油圧シリンダのロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積の比率、および油圧シリンダに作用する想定外力に基づいて設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁。
【請求項3】
請求項1または2において、中立位置から各流路間が連通するまでのスプールの移動範囲において、スプール外周面とスプール孔内周面との間のクリアランスを均一に設定するとともに、
スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を同等に設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧式作業機械に設けられる油圧シリンダに対する油給排制御を行う油圧シリンダ用制御弁の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば油圧ショベル等の油圧式作業機械には、油圧シリンダや油圧モータ等の各種油圧アクチュエータや、これら油圧アクチュエータの油圧供給源となる油圧ポンプ、操作具操作に基づいて油圧アクチュエータに対する油給排制御を行う制御弁等が設けられるが、この場合に、前記油圧シリンダとして、ピストンの両側にヘッド側油室、ロッド側油室を備えた複動式の油圧シリンダを用いるとともに、該油圧シリンダ用の制御弁として、スプール孔に軸方向移動自在に挿通されるスプールと、スプール孔に連通し、油圧ポンプ、油タンク、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室にそれぞれ接続されるポンプ流路、タンク流路、ヘッド側流路、ロッド側流路とを備え、スプールの中立位置では前記各流路間を遮断することで油圧シリンダに対する油給排を行わず、スプールが中立位置から軸方向一方側に移動した第一作動位置ではポンプ流路とヘッド側流路、ロッド側流路とタンク流路とをそれぞれ連通することでヘッド側油室への油供給およびロッド側油室からの油排出を行って油圧シリンダを伸長させ、スプールが中立位置から軸方向他方側に移動した第二作動位置ではポンプ流路とロッド側流路、ヘッド側流路とタンク流路とをそれぞれ連通することでロッド側油室への油供給およびヘッド側油室からの油排出を行って油圧シリンダを縮小させるように構成した制御弁が汎用的に用いられている。
このような油圧シリンダ用の制御弁において、スプールが中立位置に位置している状態であっても、スプール外周面とスプール孔内周面との間にはスプールの軸方向移動に必要なクリアランスがあるため、該クリアランスを経由して圧油が高圧側から低圧側にリークする。例えば、油圧ポンプを共用する他の油圧アクチュエータの駆動圧が高圧であると、その駆動圧が制御弁のポンプ流路に入力され、ポンプ流路からスプール外周面とスプール孔内周面との間のクリアランスを経由してヘッド側流路およびロッド側流路にリークし、該リークした圧油が油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室に漏れ込むことがある。この場合に、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室に漏れ込む圧油の圧力が同圧であると、ヘッド側、ロッド側のピストン受圧面積の関係(ヘッド側ピストン受圧面積>ロッド側ピストン受圧面積)から、油圧シリンダの伸長方向に推力が発生して、意図せずに油圧シリンダが伸長方向に作動してしまう惧れがある。また、油圧シリンダに部材重量等の外力が作用していてヘッド側油室或いはロッド側油室に保持圧が発生している状態であると、該保持圧保持側のヘッド側油室或いはロッド側油室の圧油が前記クリアランスから油タンクにリークし、これにより保持圧が低下して油圧シリンダが意図せずに縮小方向或いは伸長方向に作動してしまう惧れもある。そして、このようなスプール中立位置でのリークを起因とする油圧シリンダの作動によって、例えば、作業機械が油圧ショベルの場合、走行中にバケットシリンダが意図せずに(バケット用操作具を操作していないのに)作動したり、ワークツールの操作中にスティックシリンダやバケットシリンダが意図せずに作動してしまうという不具合が発生することがある。
このため、スプール中立位置でのリークによる油圧シリンダ作動の対策として、スプール中立位置時に制御弁と油圧シリンダとの間の圧油の流れを阻止するべくポペット弁等からなるロック弁を設けることが従来から行われている。しかしながら、このようなロック弁を設けることは、部品点数の増加やコストアップの要因となる。
そこで、スプールの中立位置において、ポンプポートとヘッド側ポート(第1の出口ポート)間のリーク量よりもヘッド側ポートとタンクポート間のリーク量が多くなるように寸法設定した制御弁が提唱されている(例えば、特記文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2635834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の制御弁は、スプールの中立位置において、他の油圧アクチュエータの駆動圧がポンプポートに入力しても、該ポンプポートからヘッド側ポートへのリーク量よりもヘッド側ポートからタンクポートへのリーク量が多くなるように設定されているから、他の油圧アクチュエータの駆動圧が油圧シリンダのヘッド側油室に流れず、これにより油圧シリンダが意図せずに伸長してしまうことを防止できるようになっている。
しかしながら、特許文献1のものは、ヘッド側のリーク量のみが検討されていて、スプールの中立位置においてポンプポートとロッド側ポート間のリークにより油圧シリンダのロッド側油室に作用する力については何ら検討されておらず、このため、油圧シリンダに縮小方向の推力が発生してしまうことも想定され、この場合には他の油圧アクチュエータの駆動中に油圧シリンダが意図せずに縮小してしまう惧れがあるという問題がある。さらに、特許文献1のものは、油圧シリンダに作用する外力を起因とするリークにより油圧シリンダが伸縮作動してしまうことについては何ら検討されておらず、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ピストンの両側にヘッド側油室、ロッド側油室を備えた油圧シリンダに対する油給排制御を行う油圧シリンダ用制御弁において、該油圧シリンダ用制御弁は、バルブボディに形成されるスプール孔に軸方向移動自在に挿通されるスプールと、スプール孔に連通し、油圧ポンプ、油タンク、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室にそれぞれ接続されるポンプ流路、タンク流路、ヘッド側流路、ロッド側流路とを備え、前記スプールは、中立位置では前記各流路間を遮断し、中立位置から軸方向一方側に移動した第一作動位置ではポンプ流路とヘッド側流路、およびロッド側流路とタンク流路とを連通し、中立位置から軸方向他方側に移動した第二作動位置ではポンプ流路とロッド側流路、およびヘッド側流路とタンク流路とを連通する構成であるとともに、スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を、油圧シリンダのロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積の比率に基づいて設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁である。
請求項2の発明は、ピストンの両側にヘッド側油室、ロッド側油室を備えた油圧シリンダに対する油給排制御を行う油圧シリンダ用制御弁において、該油圧シリンダ用制御弁は、バルブボディに形成されるスプール孔に軸方向移動自在に挿通されるスプールと、スプール孔に連通し、油圧ポンプ、油タンク、油圧シリンダのヘッド側油室、ロッド側油室にそれぞれ接続されるポンプ流路、タンク流路、ヘッド側流路、ロッド側流路とを備え、前記スプールは、中立位置では前記各流路間を遮断し、中立位置から軸方向一方側に移動した第一作動位置ではポンプ流路とヘッド側流路、およびロッド側流路とタンク流路とを連通し、中立位置から軸方向他方側に移動した第二作動位置ではポンプ流路とロッド側流路、およびヘッド側流路とタンク流路とを連通する構成であるとともに、スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を、油圧シリンダのロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積の比率、および油圧シリンダに作用する想定外力に基づいて設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、中立位置から各流路間が連通するまでのスプールの移動範囲において、スプール外周面とスプール孔内周面との間のクリアランスを均一に設定するとともに、スプール中立位置におけるポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長とロッド側流路、タンク流路間のラップ長との比率、およびヘッド側流路、タンク流路間のラップ長とポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長との比率を同等に設定したことを特徴とする油圧シリンダ用制御弁である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、スプール中立位置において制御弁のポンプ流路に高圧油が入力しても、制御弁のリークにより油圧シリンダが伸長或いは縮小してしまうことを抑制できる。
請求項2の発明とすることにより、スプール中立位置において制御弁のポンプ流路に高圧油が入力したり、油圧シリンダに部材重量等の外力が作用していても、制御弁のリークにより油圧シリンダが伸長或いは縮小してしまうことを抑制できる。
請求項3の発明とすることにより、ポンプ流路とロッド側流路或いはヘッド側流路間の連通と、タンク流路とヘッド側流路或いはロッド側流路間の連通とを同時的に行う構成にできるとともに、リークによる油圧シリンダの伸縮作動を抑制するためのスプール中立位置におけるラップ長の比率を簡単に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】作業機械の油圧回路の一部概略図である。
図2】制御弁の構造を示す図である。
図3】ロッド側油室圧力とヘッド側油室圧力との関係を示すグラフ図である。
図4】油圧ショベルの側面図である。
図5】第三の実施の形態におけるヘッド側油室の圧力、ロッド側油室の圧力、ラップ長の比率の組み合わせを示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、本発明の第一の実施の形態について説明すると、図1は、油圧式の作業機械(例えば油圧ショベル)に設けられる油圧回路の一部概略図であって、該図1において、1は油圧ポンプ、2は油タンク、3は油圧シリンダ(作業機械が油圧ショベルの場合、例えばバケットシリンダ、スティックシリンダ等)、4は油圧シリンダ3に対する油給排制御を行う制御弁であって、本実施の形態では該制御弁4に本発明が実施されている。前記油圧シリンダ3は、ピストン3aの両側にヘッド側油室3b、ロッド側油室3cを備えた複動式のものであって、前記制御弁4と油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cとは、それぞれヘッド側アクチュエータライン5、ロッド側アクチュエータライン6を介して接続されている。
尚、油圧ポンプ1は、前記油圧シリンダ3を含め、作業機械に設けられる各種油圧アクチュエータ(作業機械が油圧ショベルの場合、例えば、走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、作業アタッチメント用油圧アクチュエータ等)の油圧供給源となるものであって、該油圧ポンプ1の吐出ライン8には、図示しないが、各油圧アクチュエータ用の制御弁がそれぞれ前記制御弁4とパラレルとなる状態で接続されている。
【0009】
前記制御弁4の詳細について、図1図2に基づいて説明すると、該制御弁4は、バルブボディ11、該バルブボディ11に形成されるスプール孔12に軸方向移動自在に挿通されるスプール13、該スプール13を軸方向に移動させる操作手段4a(図2には図示せず。また、図1には操作手段として一対のソレノイドを図示したが、これに限定されず、例えばパイロット操作手段等であっても良い)、スプール13を中立位置N側に付勢する復帰弾機4b(図2には図示せず)等を備えるとともに、油圧ポンプ1に接続されるポンプポート4p、油タンク2に接続されるタンクポート4t、ヘッド側アクチュエータライン5を介して油圧シリンダ3のヘッド側油室3bに接続されるヘッド側ポート4h、ロッド側アクチュエータライン6を介して油圧シリンダ3のロッド側油室3cに接続されるロッド側ポート4r(何れのポートも図2には図示せず)を備えて構成されている。さらに、図2に示す如く、制御弁4のバルブボディ11には、スプール孔12とポンプポート4pとを連通するポンプ流路14、スプール孔12とタンクポート4tとを連通するタンク流路15、スプール孔12とヘッド側ポート4hとを連通するヘッド側流路16、スプール孔12とロッド側ポート4rとを連通するロッド側流路17が形成されている。そして、制御弁4は、スプール13の中立位置N(図2に示すスプール位置)では、前記ポンプ流路14、タンク流路15、ヘッド側流路16、ロッド側流路17の各流路14~17間を遮断して、油圧シリンダ3に対する油給排制御を行わないが、スプール13が中立位置Nから軸方向一方側(図2において左方向)に移動した第一作動位置Xでは、ポンプ流路14とヘッド側流路16、およびロッド側流路17とタンク流路15とを連通してヘッド側油室3bへの油供給制御およびロッド側油室3cからの油排出制御を行って油圧シリンダ3を伸長させ、また、スプール13が中立位置Nから軸方向他方側(図2において右方向)に移動した第二作動位置Yでは、ポンプ流路14とロッド側流路17、およびヘッド側流路16とタンク流路15とを連通してロッド側油室3cへの油供給制御およびヘッド側油室3bからの油排出制御を行って油圧シリンダ3を縮小させるように構成されている。尚、本実施の形態において、各流路14~17のスプール孔12に対する連通(開口)箇所は、ポンプ流路14は、スプール孔12の軸方向中央部に設けられ、ヘッド側流路16はポンプ流路14連通箇所の軸方向一方側に設けられ、ロッド側流路17はポンプ流路14連通箇所の軸方向他方側に設けられ、タンク流路15は、ヘッド側流路16連通箇所の軸方向一方側およびロッド側流路17連通箇所の軸方向他方側に設けられている。
【0010】
前記スプール13の外周面部は、スプール孔12の内周面に摺接する複数のランド部13a(後述する第一ランド部13a1、第二ランド部13a2を含む)を有しているとともに、これらランド部13a間には、ランド部13aよりも小径となる環状溝13bが形成されている。そして、前述したスプール13の中立位置Nでは、第一ランド部13a1によってヘッド側流路16とポンプ流路14およびタンク流路15との間が遮断された状態となっており、第二ランド部13a2によってロッド側流路17とポンプ流路14およびタンク流路15との間が遮断された状態になっているとともに、前記第一、第二ランド部13a1、13a2の軸方向両側部にはノッチ13cが形成されている。そして、前記中立位置Nの状態からスプール13の移動に伴い第一、第二ランド部13a1、13a2が軸方向一方側或いは軸方向他方側に移動することで、ノッチ13cおよび環状溝13bを経由してポンプ流路14とヘッド側流路16或いはロッド側流路17、タンク流路15とロッド側流路17或いはヘッド側流路16とが連通するように構成されている。
【0011】
前述したようにスプール13の中立位置Nでは、第一、第二ランド部13a1、13a2によってヘッド側流路16、ロッド側流路17はポンプ流路14およびタンク流路15と遮断された状態になっているが、この状態であっても、スプール13外周面(ランド部13a外周面、以下同様)とスプール孔12内周面との間にはスプール13の摺動に必要なクリアランスSがあるため、該クリアランスSにより圧油は高圧側から低圧側にリークする。しかして、油圧ポンプ1を圧油供給源として共用する他の油圧アクチュエータ駆動用の高圧油が制御弁4のポンプ流路14に入力した場合、該高圧油はポンプ流路14から前記クリアランスSを経由してヘッド側流路16、ロッド側流路17にリークし、さらに、該ヘッド側流路16、ロッド側流路17から油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cに流れるとともに、ヘッド側流路16、ロッド側流路17からクリアランスSを経由してタンク流路15にリークする。尚、第一の実施の形態では、油圧シリンダ3にピストン3aをシリンダ伸長側、或いは縮小側に移動させる部材重力等の外力が作用していない場合、或いは作用していないとみなすことができる場合について説明する。
【0012】
ここで、前記スプール13外周面とスプール孔12内周面との間のクリアランスS(以下、スプールクリアランスSとも称する)は、少なくとも中立位置Nから各流路14~17間(ポンプ流路14とヘッド側流路16間、ポンプ流路14とロッド側流路17間、タンク流路15とヘッド側流路16間、タンク流路15とロッド側流路17間)が連通するまでのスプール13の移動範囲において均一になるように設計されているとともに、ポンプ流路14、ロッド側流路17間、ロッド側流路17、タンク流路15間、ヘッド側流路16、タンク流路15間、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間の各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphは、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)が同等となるように、つまり以下に示す式(1)が成立するように設定される。
Lpr:Lrt=Lht:Lph・・・(1)
(Lpr/Lrt=Lht/Lph・・・(1))
上記式(1)および以下に示す各式(後述する第二の実施の形態で示す各式を含む。以下同様)において、Lprはポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長、Lrtはロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長、Lhtはヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長、Lphはポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長である。
さらに、本実施の形態では、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphはロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtと同等(Lph=Lrt或いはLph≒Lrt)に、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprはヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと同等(Lpr=Lht或いはLpr≒Lht)になるように設定されており、これにより、スプール13が軸方向一方側(第一作動位置X側)に移動したときには、ポンプ流路14とヘッド側流路16とが連通すると同時的にロッド側流路17とタンク流路15とが連通し、また、スプール13が軸方向他方側(第二作動位置Y側)に移動したときには、ポンプ流路14とロッド側流路17とが連通すると同時的にヘッド側流路16とタンク流路15とが連通するように構成されている。尚、本実施の形態のように、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとが同等となり、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprとヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtとが同等となるように設定することで前記式(1)は成立する。
また、前記ラップ長は、スプール13を中立位置Nから軸方向一方側、他方側に移動させたときにヘッド側流路16、ロッド側流路17がポンプ流路14、タンク流路15に連通するまでのスプール移動ストロークであって、本実施の形態において、ラップ長Lphは、スプール13を中立位置Nから軸方向一方側に移動させたときにポンプ流路14とヘッド側流路16とが連通するまでのスプール移動ストローク、ラップ長Lprは、スプール13を中立位置Nから軸方向他方側に移動させたときにポンプ流路14とロッド側流路17とが連通するまでのスプール移動ストローク、ラップ長Lrtは、スプール13を中立位置Nから軸方向一方側に移動させたときにロッド側流路17とタンク流路15とが連通するまでのスプール移動ストローク、ラップ長Lhtは、スプール13を中立位置Nから軸方向他方側に移動させたときにヘッド側流路16とタンク流路15とが連通するまでのスプール移動ストロークである。
【0013】
そして、前記式(1)が成立するように設定することにより、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)を、油圧シリンダ3のロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)に基づいて求めることができるとともに、該求めた比率となるように各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの値を設定することで、スプール13の中立位置Nにおいて、スプールクリアランスSを経由してポンプ流路14の圧油がヘッド側流路16、ロッド側流路17にリークしても、該リーク油により油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを抑制できるが、これについて以下に説明する。
まず、油圧シリンダ3のピストン3aに作用するシリンダ伸長側の推力(ヘッド側推力)Fhは下記の式(2)で表され、シリンダ縮小側の推力(ロッド側推力)Frは下記の式(3)で表される。
Fh=Ph×Ah ・・・(2)
Fr=Pr×Ar ・・・(3)
上記式(2)、(3)および以下に示す各式において、Fhはシリンダ伸長側推力、Phはヘッド側油室3bの圧力、Ahはヘッド側ピストン受圧面積、Frはシリンダ縮小側推力、Prはロッド側油室3cの圧力、Arはロッド側ピストン受圧面積である。
そして、シリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとが等しい(Fh=Fr)場合、つまり以下の式(4)が成立する場合には両方の推力Fh、Frが釣り合って油圧シリンダ3は伸縮しないことになる。
Ph×Ah=Pr×Ar ・・・(4)
さらに、上記式(4)から、シリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとが釣り合う(等しくなる)ための、ヘッド側油室3bの圧力Phとロッド側油室3cの圧力Prとの関係を示す式(5)が導かれる。
Ph=(Ar/Ah)×Pr ・・・(5)
ここで、上記式(5)における「Ar/Ah」は、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率であって、油圧シリンダ3固有の値である。また、上記式(5)の関係を示すグラフを図3に実線で示すが、ヘッド側油室3bの圧力Phとロッド側油室3cの圧力Prとは、傾き(比例定数)を「Ar/Ah」とし、切片を「0」とする一次関数の関係(比例関係)となる。尚、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率「Ar/Ah」を、以下の説明および式では「a」(a=Ar/Ah)と称することもある。
【0014】
一方、前述したように、スプール13外周面とスプール孔12内周面との間のクリアランスSは、少なくとも中立位置Nから各流路14~17間が連通するまでのスプール13の移動範囲において均一になるように設計されているが、該スプールクリアランスSが均一な場合、環状隙間流れの式により、各流路14~17間の圧力損失とラップ長との関係は、ポンプ流路14、ロッド側流路17間の圧力損失ΔPprと、ロッド側流路17、タンク流路15間の圧力損失ΔPrtとの比率(ΔPpr:ΔPrt)は、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)に等しくなり、また、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間の圧力損失ΔPphと、ヘッド側流路16、タンク流路15間の圧力損失ΔPhtとの比率(ΔPph:ΔPht)は、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphと、ヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtとの比率(Lph:Lht)に等しくなる、つまり下記の式(6)、(7)が成立する関係となる。
ΔPpr:ΔPrt=Lpr:Lrt ・・・(6)
ΔPph:ΔPht=Lph:Lht ・・・(7)
上記式(6)、(7)および以下に示す各式において、ΔPprはポンプ流路14、ロッド側流路17間の圧力損失、ΔPrtはロッド側流路17、タンク流路15間の圧力損失、ΔPphはポンプ流路14、ヘッド側流路16間の圧力損失、ΔPhtはヘッド側流路16、タンク流路15間の圧力損失である。
しかして、前記式(1)が成立するようにラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphを設定した場合には、式(1)と前記式(6)、(7)とから下記の式(8)が導かれる。
ΔPpr:ΔPrt=ΔPht:ΔPph ・・・(8)
また、タンク圧を「0(ゼロ)」とみなすと、ロッド側流路17、タンク流路15間の圧力損失ΔPrtはロッド側油室3cの圧力Prと等しく(ΔPrt=Pr)、ヘッド側流路16、タンク流路15間の圧力損失ΔPhtはヘッド側油室3bの圧力Phと等しい(ΔPht=Ph)とみなすことができるから、スプール13の中立位置Nにおいて、ポンプ流路14の圧力がPpの場合、前記式(6)、(7)から下記の式(9)、(10)が導かれ、さらにこれら式(9)、(10)と前記式(8)とから下記の式(11)が導かれる。
(Pp-Pr):Pr=Lpr:Lrt ・・・(9)
(Pp-Ph):Ph=Lph:Lht ・・・(10)
(Pp-Pr)/Pr=Ph/(Pp-Ph)・・・(11)
上記式(9)、(10)、(11)および以下に示す各式において、Ppはポンプ流路14の圧力である。
【0015】
次に、前記(1)の式が成立するように設定した場合に、油圧シリンダ3に作用するシリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとが釣り合う時のロッド側油室3cの圧力Prとポンプ流路14の圧力Ppとの関係を求めるべく、前記式(11)に前記式(5)を当てはめて整理すると、下記の式(12)が導かれる。
Pr=Pp/(a+1) ・・・(12)
上記式(12)および以下に示す各式において、aはロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率「Ar/Ah」(a=Ar/Ah)である。
さらに、前記式(12)と式(9)とを用いて、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)を求めると、下記の式(13)が得られる。
Lpr:Lrt=a:1=Ar:Ah ・・・(13)
しかして、前記式(1)が成立するように、つまり、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)が等しくなるように設定するとともに、油圧シリンダ3に作用するシリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとが釣り合うよう、これら比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、前記式(13)に示されるように、つまり、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)と等しくなるように設定することによって、スプール13の中立位置Nにおいて、ポンプ流路14に入力した高圧油がスプールクリアランスSを経由してヘッド側流路16、ロッド側流路17にリークしても、該リーク油により油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを防止できることになる。
尚、第一の実施の形態は、前述したように油圧シリンダ3のピストン3aにシリンダ伸長方向およびシリンダ縮小方向の外力が作用していない場合、或いは作用していないとみなすことができる場合であるが、この場合は、前記式(13)で示されるように、ラップ長の比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)の設定にはポンプ流路14の圧力Ppは関与しない。つまり、ポンプ流路14に入力される圧力Ppに関わらず、前述したようにラップ長の比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)と等しくなるように設定することで、ポンプ流路14からのリーク油により油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを防止できることになる。
【0016】
ここで、前記ラップ長の設定について、具体的な数字を挙げて例示する。例えば、油圧シリンダ3のロッド側ピストン受圧面積Arが「7000(mm)」、ヘッド側ピストン受圧面積Ahが「14000(mm)」の場合、つまりロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率「Ar:Ah」が「1:2」の場合は、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)を「1:2」に設定する(Lpr:Lrt=Lht:Lph=Ar:Ah=1:2)。さらに、該比率に基づいて、各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの長さを具体的に、例えば、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lpr、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtを「10mm」、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrt、およびポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphを「20mm」に設定する。このものにおいて、スプール13が中立位置Nのときにポンプ流路14に例えば9MPaの圧力が入力した場合、前記式(9)、(10)によりロッド側油室3cの圧力は6MPに、ヘッド側油室3bの圧力は3MPaになるとともに、式(2)、(3)によりシリンダ縮小側推力Frは(Fr=6(MPa)×7000(mm)=42000(N))となり、シリンダ伸長側推力Fhは(Fh=3(MPa)×14000(mm)=42000(N))となるから、シリンダ縮小側推力Frとシリンダ伸長側推力Fhとが等しくなり、しかして両側の推力Fr、Fhが釣りあって油圧シリンダ3は縮小方向にも伸長方向にも作動しないことになる。
【0017】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、制御弁4は、ピストン3aの両側にヘッド側油室3b、ロッド側油室3cを備えた油圧シリンダ3に対する油給排制御を行うものであって、バルブボディ11に形成されるスプール孔12に軸方向移動自在に挿通されるスプール13と、スプール孔12に連通し、油圧ポンプ1、油タンク2、油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにそれぞれ接続されるポンプ流路14、タンク流路15、ヘッド側流路16、ロッド側流路17とを備えており、そして、スプール13の中立位置Nでは上記各流路14~17間を遮断し、中立位置Nから軸方向一方側に移動した第一作動位置Xではポンプ流路14とヘッド側流路16、およびロッド側流路17とタンク流路15とを連通し、中立位置Nから軸方向他方側に移動した第二作動位置Yではポンプ流路14とロッド側流路17、およびヘッド側流路16とタンク流路15とを連通するように構成されるが、さらにこのものは、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)が、油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率(Ar:Ah)に基づいて設定されている。そして、このように油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率に基づいて制御弁4のラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの比率を設定することによって、スプール13の中立位置Nにおいてポンプ流路14に入力した圧油がスプールクリアランスSを経由してヘッド側流路16、ロッド側流路17から油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークしても、ヘッド側油室3b、ロッド側油室3cの圧力を、油圧シリンダ3のピストン3aに作用するシリンダ伸長側、縮小側の推力が同等となるように制御できることになる。これにより、スプール13の中立位置Nにおいて、ポンプ流路14に入力した高圧油がスプールクリアランスSを経由して油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークしても、該リーク油により油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを抑制できる。
【0018】
このものにおいて、中立位置Nから各流路14~17間が連通するまでのスプール13の移動範囲において、スプール13外周面とスプール孔12内周面との間のクリアランスSは均一に設定されるとともに、スプール13中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)は同等に設定されており、これにより、ポンプ流路14とロッド側流路17或いはヘッド側流路16間の連通と、タンク流路15とヘッド側流路16或いはロッド側流路17間の連通とを同時的に行う構成にできるとともに、油圧シリンダ3の縮小側推力Frと伸長側推力Fhとが釣り合うための、スプール中立位置Nにおける前記ラップ長の比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)に基づいて簡単に求めることができる。そして、本実施の形態のように、油圧シリンダ3に伸長方向或いは縮小方向の外力が作用していない(或いは作用していないとみなすことができる)場合には、前述したように、前記ラップ長の比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、油圧シリンダ3のロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)と同等に設定することで、ポンプ流路14に入力される圧力Ppに関わらず、油圧シリンダ3の縮小側推力Frと伸長側推力Fhとを釣り合うように制御できることになって、油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを確実に抑制できる。
【0019】
次いで、本発明の第二の実施の形態について説明する。尚、第二の実施の形態において、前述した第一の実施の形態と共通するもの(同様のもの)については同一の符号を付すとともに説明を省略する。また、図1図3は、第一の実施の形態のものを共用する。
第二の実施の形態の制御弁4は、第一の実施の形態と同様に油圧シリンダ3に対する油給排制御を行うものであって、後述するラップ長の設定を除くと第一の実施の形態の制御弁4と同様の構造をしており、軸方向移動自在なスプール13、ポンプ流路14、タンク流路15、ヘッド側流路16、ロッド側流路17等を備えて構成されている。一方、油圧シリンダ3は、第一の実施の形態と同様にピストン3aの両側にヘッド側油室3b、ロッド側油室3cを備えた複動式のものであるが、第二の実施の形態の油圧シリンダ3には、制御弁4のスプール13が中立位置Nに位置している状態で、ピストン3aを伸長方向、或いは縮小方向に移動させる部材重力等の外力が作用している。例えば、図4に作業機械の一例としての油圧ショベル19を示すが、該油圧ショベル19において、バケット20を地面から持ち上げた状態で走行する場合、バケット20を揺動させるためのバケットシリンダ21(第二の実施の形態の油圧シリンダ3に相当する)には、バケット20の重量(バケット20に土砂等の積載物が積載されている場合には該積載物の重量を含む)による重力Gによってバケットシリンダ21を縮小させる方向の外力が作用する。また、バケットシリンダ21は、走行モータ(図示せず)と油圧供給源(油圧ポンプ)を共用しており、これにより、バケット20を地面から持ち上げた状態で走行する場合には、バケットシリンダ21用の制御弁4のポンプ流路14に走行に必要なポンプ圧が入力されるが、該入力圧力が制御弁4のスプールクリアランスSを経由してバケットシリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークし、バケットシリンダ21を伸縮させる力として作用する。このように、油圧シリンダ3(バケットシリンダ21)に部材重量等の外力が作用しており、さらに制御弁4のポンプ流路14に高圧油が入力されても、油圧シリンダ3が意図せずに(油圧シリンダ3用操作具を操作していない状態で)伸縮してしまうことを防止できるように、第二の実施の形態では、制御弁4のラップ長が以下のように設定されている。尚、図4において、22は油圧ショベル19の下部走行体、23は下部走行体22に旋回自在に指示される上部旋回体、24は基端側が上部旋回体23に揺動自在に支持されるブーム、25は基端部がブーム24の先端部に揺動自在に支持され、先端部に前記バケット20が揺動自在に取り付けられるスティックである。
【0020】
まず、第二の実施の形態においても、前記第一の実施の形態と同様に、スプール13外周面とスプール孔12内周面との間のクリアランスSは、少なくとも中立位置Nから各流路14~17間(ポンプ流路14とヘッド側流路16間、ポンプ流路14とロッド側流路17間、タンク流路15とヘッド側流路16間、タンク流路15とロッド側流路17間)が連通するまでのスプール13の移動範囲において均一になるように設計されているとともに、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)が同等となるように、つまり第一の実施の形態で説明した前述の式(1)が成立するように設定する。
さらに、第二の実施の形態においても、第一の実施の形態と同様に、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphはロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtと同等(Lph=Lrt或いはLph≒Lrt)に、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprはヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと同等(Lpr=Lht或いはLpr≒Lht)になるように設定されており、これにより、スプール13が軸方向一方側(第一作動位置X側)に移動したときには、ポンプ流路14とヘッド側流路16とが連通すると同時的にロッド側流路17とタンク流路15とが連通し、また、スプール13が軸方向他方側(第二作動位置Y側)に移動したときには、ポンプ流路14とロッド側流路17とが連通すると同時的にヘッド側流路16とタンク流路15とが連通するように構成されている。
【0021】
一方、第二の実施の形態において、油圧シリンダ3のピストン3aに作用するシリンダ伸長側推力(ヘッド側推力)Fh、シリンダ縮小側推力(ロッド側推力)Frは、第一の実施の形態と同様に前記式(2)、(3)で表されるが、第二の実施の形態では、油圧シリンダ3にピストン3aを移動させる部材重力等の外力が作用しているため、油圧シリンダ3が伸縮しないためには、シリンダ伸長側推力Fh、シリンダ縮小側推力Frの差Fc(Fc=Fh-Fr)と外力とが釣り合う、つまり、下記の式(15)が成立する必要がある。尚、前記シリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frの差Fcを、以下、シリンダ推力Fcと称する場合もある。該シリンダ推力Fcは、シリンダ縮小方向に「正」の値の外力Feが作用している場合には「正」の値となり、シリンダ伸長方向に「正」の値の外力Feが作用している場合には「負」の値となるが、ここでは、シリンダ縮小方向に「正」の値の外力Feが作用している場合を例にとって説明する。
Fc=Fh-Fr=Ph×Ah-Pr×Ar=Fe・・・(15)
上記式(15)および以下に示す各式において、Fcはシリンダ推力、Feはピストン3aに作用するシリンダ縮小方向の想定外力である。尚、想定外力Feは、部材(例えば前述したバケット20)の重量や積載物の重量、或いは油圧シリンダ3の軸方向と重力方向とのなす角度等に基づいて予め設定される。
さらに、上記式(15)から、シリンダ推力Fcと想定外力Feとが釣り合う(等しくなる)ための、ヘッド側油室3bの圧力Phとロッド側油室3cの圧力Prとの関係を示す式(16)が導かれる。
Ph=(Ar/Ah)×Pr+(Fe/Ah) ・・・(16)
ここで、上記式(16)における「Ar/Ah」は、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率であって、油圧シリンダ3固有の値であり、「Fe/Ah」は想定外力Feをヘッド側ピストン受圧面積Ahで除した値である。また、上記式(16)の関係を示すグラフを図3に鎖線で示すが、ヘッド側油室3bの圧力Phとロッド側油室3cの圧力Prとは、傾きを「Ar/Ah」とし、切片を「Fe/Ah」とする一次関数の関係となる。尚、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率「Ar/Ah」を、以下の説明および式では「a」(a=Ar/Ah)と称し、想定外力Feをヘッド側ピストン受圧面積Ahで除した値「Fe/Ah」を、以下の説明および式では「b」(b=Fe/Ah)と称する場合もある。また、ヘッド側ピストン受圧面積Ahは、ロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率「a」とロッド側ピストン受圧面積Arとで表すことができるから、「b」を「a」とロッド側受圧面積Arと想定外力Feとを用いて表すこともできる(b=a×Fe/Ar)。
【0022】
そして、前記式(1)が成立するように設定することにより、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)を、油圧シリンダ3のロッド側ピストン受圧面積Arとヘッド側ピストン受圧面積Ahとの比率(Ar:Ah)、および想定外力Feに基づいて求めることができるとともに、該求めた比率となるように各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの値を設定することで、スプール13の中立位置Nにおいて、スプールクリアランスSを経由してポンプ流路14から油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークするリーク油や、油圧シリンダ3に作用するシリンダ伸長方向或いは縮小方向の外力によって、油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを抑制できるが、これについて以下に説明する。
【0023】
まず、第一の実施の形態において説明したように、環状隙間流れの式により、各流路14~17間の圧力損失とラップ長とは、前記式(6)、(7)が成立する関係となるとともに、これら式(6)、(7)と式(1)とから式(8)が導かれ、さらに、タンク圧を「0(ゼロ)」とみなすと、式(6)、(7)から式(9)、(10)が導かれ、さらにこれら式(9)、(10)と式(8)とから式(11)が導かれる。
さらに、第二の実施の形態において、油圧シリンダ3に作用するシリンダ推力Fc(シリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとの差)と想定外力Feとが釣り合うときのロッド側油室3cの圧力Prとポンプ流路14の圧力Ppとの関係を求めるべく、前記式(11)に前記式(16)を当てはめて整理すると、下記の式(17)が導かれる。
Pr=(Pp-b)/(a+1) ・・・(17)
上記式(17)および以下に示す各式において、bは想定外力Feをヘッド側ピストン受圧面積Ahで除した値「Fe/Ah」(b=Fe/Ah)である。また、Ppはポンプ流路14の圧力であるが、第二の実施の形態では、油圧シリンダ3と油圧供給源を共用する油圧アクチュエータの駆動圧等に基づいて、ポンプ流路14に入力されるポンプ圧をあらかじめ設定し、該設定したポンプ圧をポンプ流路14の圧力Ppとして用いる。
さらに、前記式(17)と式(9)とを用いて、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)を求めると、下記の式(18)が得られる。
Lpr:Lrt=(a×Pp+b):(Pp-b) ・・・(18)
しかして、前記式(1)が成立するように、つまり、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)が等しくなるように設定するとともに、油圧シリンダ3に作用するシリンダ推力Fcと想定外力Feとが釣り合うよう、これら比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、前記式(18)に示されるように、ロッド側ピストン受圧面積Arと、ヘッド側ピストン受圧面積Ahと、想定外力Feと、ポンプ流路14への入力圧力(ポンプ圧)Ppとに基づいて設定することによって、スプール13の中立位置Nにおいて、ポンプ流路14からスプールクリアランスSを経由して油圧シリンダ3にリークしたリーク油や、油圧シリンダ3に作用する外力に起因して、油圧シリンダ3が伸長或いは縮小してしまうことを抑制できることになる。
【0024】
ここで、第二の実施の形態におけるラップ長の設定について、具体的な数字を挙げて例示する。例えば、油圧シリンダ3のロッド側ピストン受圧面積Arが「7000(mm)」、ヘッド側ピストン受圧面積Ahが「14000(mm)」、想定外力Feが「14000(N)」、ポンプ流路14の圧力(ポンプ圧)Ppが「16(MPa)」の場合には、これらの数値を前記式(18)に代入することで、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)の値「3:5」が得られる。そこで、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)を、「3:5」に設定する(Lpr:Lrt=Lht:Lph=3:5)。さらに、該比率「3:5」となるように、各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの長さを具体的に、例えば、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lpr、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtを「15mm」、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrt、およびポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphを「25mm」に設定する。このように各ラップ長を設定すると、前記式(9)、(10)によりロッド側油室3cの圧力は10MPに、ヘッド側油室3bの圧力は6MPaになるとともに、式(2)、(3)によりシリンダ伸長側推力Fhは(Fh=6(MPa)×14000(mm)=84000(N))、シリンダ縮小側推力Frは(Fr=10(MPa)×7000(mm)=70000(N))となるから、シリンダ推力Fcは「14000(N)」となって想定外力Feと等しくなり、しかしてシリンダ推力Fc推定外力Feとが釣りあって油圧シリンダ3は縮小方向にも伸長方向にも作動しないことになる。
【0025】
このように構成された第二の実施の形態において、制御弁4は、スプール13の中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路17間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)の比率が、油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率(Ar:Ah)、および油圧シリンダ3に作用する想定外力Feに基づいて設定されている。そして、このように油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率、および想定外力Feに基づいて制御弁4のラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの比率を設定することによって、油圧シリンダ3にシリンダ縮小方向或いは伸長方向の外力が作用しており、さらに、スプール13の中立位置Nにおいてポンプ流路14に入力した高圧油がスプールクリアランスSを経由して油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークしても、ヘッド側油室3b、ロッド側油室3cの圧力を、油圧シリンダ3に作用するシリンダ推力Fcと想定外力と釣り合うように制御できることになる。しかして、スプール13の中立位置Nにおいて、油圧シリンダ3に作用するシリンダ伸長方向あるいは縮小方向の外力や、ポンプ流路14からスプールクリアランスSを経由して油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークしたリーク油によって、油圧シリンダ3が意図せずに(油圧シリンダ用操作具を操作していないのに)伸長或いは縮小してしまうことを抑制できる。
【0026】
さらにこのものでは、中立位置Nから各流路14~17間が連通するまでのスプール13の移動範囲において、スプール13外周面とスプール孔12内周面との間のクリアランスSは均一に設定されるとともに、スプール13中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr:Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht:Lph)とが同等に設定されている。
これにより、ポンプ流路14とロッド側流路17或いはヘッド側流路16間の連通と、タンク流路15とヘッド側流路16或いはロッド側流路17間の連通とを同時的に行う構成にできるとともに、油圧シリンダ3に作用するシリンダ推力Fcと想定外力Feとが釣り合うための、スプール中立位置Nにおける前記ラップ長の比率(Lpr:Lrt)、(Lht:Lph)を、油圧シリンダ3のロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積Ar、Ahの比率(Ar:Ah)、および油圧シリンダ3に作用する想定外力Feに基づいて簡単に求めることができることになる。
【0027】
次いで、本発明の第三の実施の形態について説明する。尚、第三の実施の形態において、前述した第一、第二の実施の形態と共通するもの(同様のもの)については同一の符号を付すとともに説明を省略する。また、図1図4は、第一、第二の実施の形態のものを共用する。
第三の実施の形態の制御弁4は、前記第一、第二の実施の形態の制御弁4と同様の構造のものである。また、油圧シリンダ3は、第二の実施の形態と同様に、ピストン3aを伸長方向、或いは縮小方向に移動させる部材重力等の外力が作用する状態となっていて、第二の実施の形態において説明したように、シリンダ推力Fcと想定外力Feとが釣り合っているときのヘッド側油室3bの圧力Phとロッド側油室3cの圧力Prとは、前記式(16)で示す一次関数の関係になる。さらに、第一、第二の実施の形態において説明したように、環状隙間流れの式により、各流路14~17間の圧力損失とラップ長とは、前記式(6)、(7)が成立する関係となるとともに、タンク圧を「0(ゼロ)」とみなすと、式(6)、(7)から式(9)、(10)が導かれる。
そして、第三の実施の形態では、図5の表図に示す具体例のように、前記式(16)に、ロッド側ピストン受圧面積Ar(図5では、7000(mm))、ヘッド側ピストン受圧面積Ah(図5では、14000(mm))、想定外力Fe(図5では、14000(N))、ポンプ流路14の圧力(ポンプ圧)Pp(図5では、16(MPa))の具体的な数字を代入して、シリンダ推力Fc(シリンダ伸長側推力Fhとシリンダ縮小側推力Frとの差)と想定外力Feとが釣り合う(Fc=Fe)ためのロッド側油室3bの圧力Prとヘッド側油室3cの圧力Phとの種々の組み合わせを求めるとともに、各組み合わせにおける、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr/Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht/Lph)を、前記式(9)、(10)を用いて求める。さらに、これら比率(Lpr/Lrt)、(Lht/Lph)の差D(D=(Lpr/Lrt)-(Lht/Lph))を求め、そして、差Dが「0」或いは「0」に最も近いときの比率(Lpr/Lrt)、(Lht/Lph)を、制御弁4のポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr/Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht/Lph)として設定する。図5に示した具体例では、ロッド側油室3bの圧力Prが「10(MPa)」、ヘッド側油室3cの圧力Phが「6(MPa)」の組み合わせのときに、前記比率(Lpr/Lrt)、(Lht/Lph)が共に「0.6」となって、これら比率(Lpr/Lrt)、(Lht/Lph)の差Dは「0」となる。そこで、制御弁4のスプール中立位置Nにおけるポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr/Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率(Lht/Lph)を「0.6」に設定するとともに、該比率に基づいて、各ラップ長Lpr、Lrt、Lht、Lphの長さを具体的に、例えば、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lpr、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtを「15mm」、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrt、およびポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphを「25mm」に設定する。
尚、第三の実施の形態と前述した第二の実施の形態とはアプローチが異なるだけで、ロッド側ピストン受圧面積Ar、ヘッド側ピストン受圧面積Ah、想定外力Fe、ポンプ流路14の圧力(ポンプ圧)Ppの数値が同じならば、ポンプ流路14、ロッド側流路17間のラップ長Lprと、ロッド側流路17、タンク流路15間のラップ長Lrtとの比率(Lpr/Lrt)、およびヘッド側流路16、タンク流路15間のラップ長Lhtと、ポンプ流路14、ヘッド側流路16間のラップ長Lphとの比率の値は等しくなる。
【0028】
そして、このように構成された第三の実施の形態においても、前記第二の実施の形態と同様に、スプール13の中立位置Nにおいて、油圧シリンダ3に作用するシリンダ伸長方向あるいは縮小方向の外力や、ポンプ流路14からスプールクリアランスSを経由して油圧シリンダ3のヘッド側油室3b、ロッド側油室3cにリークしたリーク油によって、油圧シリンダ3が意図せず(油圧シリンダ用操作具を操作していないのに)に伸長或いは縮小してしまうことを抑制できることになる。
【0029】
尚、本発明は前記第一~第三の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、本実施の形態では、中立位置から各流路間が連通するまでのスプールの移動範囲において、スプール外周面とスプール孔内周面との間のクリアランスが均一に設定されているが、クリアランスの値が均一でなくても精度良く寸法設定されていれば、クリアランスの値をパラメータとして組み入れたうえで、制御弁のラップ長の比率を油圧シリンダのロッド側、ヘッド側のピストン受圧面積の比率や、想定外力に基づいて設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、油圧ショベル等の油圧式作業機械に設けられる油圧シリンダの油給排制御を行う制御弁に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 油圧ポンプ
2 油タンク
3 油圧シリンダ
3a ピストン
3b ヘッド側油室
3c ロッド側油室
4 制御弁
11 バルブボディ
12 スプール孔
13 スプール
14 ポンプ流路
15 タンク流路
16 ヘッド側流路
17 ロッド側流路
Lpr ポンプ流路、ロッド側流路間のラップ長
Lrt ロッド側流路、タンク流路間のラップ長
Lph ポンプ流路、ヘッド側流路間のラップ長
Lht ヘッド側流路、タンク流路間のラップ長
Ar ロッド側ピストン受圧面積
Ah ヘッド側ピストン受圧面積
Fe 想定外力
図1
図2
図3
図4
図5