(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165749
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】発電システム及び発電方法
(51)【国際特許分類】
F02D 19/00 20060101AFI20241121BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20241121BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20241121BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F02D19/00
F02D19/02 D
F02D21/08
F02M21/02 N
F02M21/02 301A
F02M21/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082229
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】武本 高明
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA17
3G092AB07
3G092AC08
3G092DC08
3G092DE04S
3G092DE15S
3G092FA15
3G092HB01X
3G092HB04X
3G092HF01Z
(57)【要約】
【課題】別途にボイラー等を設ける必要がなく、バイオガスを効率良く利用して発電できる発電システムを提供することを目的とする。
【解決手段】発電システム1は、ガスエンジン2により発電するものであり、バイオガス供給源からガスエンジン2へのバイオガスの供給を調整するための燃料バルブ5と、ガスエンジン2におけるEGR排出部6からインテークマニホールド3に亘って設けられた第一配管20と、第一配管20に配されたEGR装置10とを備える。EGR装置10は、第一配管20に配され、バイオガスとは異なる第二ガスを供給するためのEGRバルブ11と、第一配管20において、EGR排出部6及びEGRバルブ11の間に配された第一制御バルブV1とを備え、第一制御バルブV1は、バイオガスの供給量や濃度に基づいて、EGR排出部6から排出されたEGRガスの流量を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンの出力によって発電機を駆動する発電システムであって、
バイオガスの供給源から前記ガスエンジンへのバイオガスの供給を調整するための燃料バルブと、
前記ガスエンジンにおけるEGR排出部から前記ガスエンジンにおけるインテークマニホールドに亘って設けられた第一配管と、
前記第一配管に配されたEGR装置と、
を備え、
前記EGR装置は、
前記第一配管に配され、前記バイオガスとは異なる第二ガスを供給するためのEGRバルブと、
前記第一配管において、前記EGR排出部及び前記EGRバルブの間に配された第一制御バルブと、
を備え、
前記第一制御バルブは、
前記バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、前記EGR排出部から排出され、前記第一配管を介して前記インテークマニホールドに向けて流通するEGRガスの流量を制御すること、を特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記燃料バルブから供給する前記バイオガスの供給量が、所定の閾値に満たないことを条件として前記第一制御バルブを全閉状態又は一部閉塞状態にすると共に、前記第一配管における前記第一制御バルブ及び前記EGRバルブの間に分岐接続された第二配管を通じて前記第二ガスが供給されること、を特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記EGR装置が、前記第一配管及び前記第二配管の接続部に配された温度調節装置を備えており、
前記温度調節装置が、前記EGRバルブを流通する前記第二ガスを加温するものであること、を特徴とする請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記温度調節装置は、前記ガスエンジンから排出される前記EGRガスを冷却するものであること、を特徴とする請求項3に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンを用いた発電システム及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境問題(例えば、カーボンニュートラルに対する取り組み)から、バイオマス、太陽光、風力等の再生可能エネルギーを利用した発電が行われている。なかでも、バイオマスは、比較的太陽光や風力に比べて安定した供給が望めることから、安定な発電を行える再生可能エネルギーとして注目されている。
【0003】
そこで、バイオマスを由来とするバイオガスを用いた発電が行われている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の発明は、バイオガスを燃料としてガスエンジン(ガスエンジン発電機に相当)を駆動することにより発電するものとされている。一般的に、バイオガスの生成は、動物の糞尿等を発酵槽で発酵させることにより行われている。発生した バイオガスは、上述したガスエンジンに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バイオガスのみを燃料としてガスエンジン発電機を駆動する場合は、バイオガスの発酵槽に不具合が生じるとバイオガス(例えば、メタン60%)が不足し、発電機を安定して稼働できない。また、ガスエンジン発電機の駆動により生じた熱を、例えば発酵槽の加温に再利用する場合は、当該熱の回収もできなくなる懸念がある。かかる懸念に備えて、発酵槽の加温のために、灯油ボイラー等を設置する必要があり、ボイラー設置費用やボイラーのメンテナンス費用等のコスト増大の懸念があった。また、かかる場合の応急運転代替燃料として、都市ガス(メタン略100%)やプロパンガスを、バイオガスに適合させたガスバルブからガスエンジンにそのまま投入(供給)した場合は、ガスバルブ開度に対して燃焼感度が高くなり、安定した燃焼が困難となる懸念がある。また、プロパンガスを用いた場合は、空気量が不足する懸念があり、安定に燃焼させることが困難となる懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、別途にボイラー等を設ける必要がなく、バイオガスを効率良く利用して発電できる発電システム及び発電方法を提供することを目的とする。また、本発明は、バイオガスの供給が途絶えた場合であっても、バイオガス以外の都市ガスやプロパンガス等のガスを利用して発電できる発電システム及び発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の発電システムは、ガスエンジンの出力によって発電機を駆動する発電システムであって、バイオガスの供給源から前記ガスエンジンへのバイオガスの供給を調整するための燃料バルブと、前記ガスエンジンにおけるEGR排出部から前記ガスエンジンにおけるインテークマニホールドに亘って設けられた第一配管と、前記第一配管に配されたEGR装置と、を備え、前記EGR装置は、前記第一配管に配され、前記バイオガスとは異なる第二ガスを供給するためのEGRバルブと、前記第一配管において、前記EGR排出部及び前記EGRバルブの間に配された第一制御バルブと、を備え、前記第一制御バルブは、前記バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、前記EGR排出部から排出され、前記第一配管を介して前記インテークマニホールドに向けて流通するEGRガスの流量を制御すること、を特徴とするものである。
【0008】
上述した発電システムは、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を有するガスエンジンを、バイオガスの燃焼によって駆動することにより、発電を行うものとされている。また、上述した発電システムは、上述の構成とすることにより、バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、ガスエンジン2から排出されたEGRガス(排気ガス)の流量を第一制御バルブによって制御することができる。ここで、第一配管は、ガスエンジンにおけるEGR排出部からインテークマニホールドに亘って設けられたEGR配管に相当するものとされている。したがって、上述した発電システムは、EGR配管を流通するEGRガスの流量を制御することにより、ガスエンジンにおける燃焼効率を高めることができる。これにより、上述した発電システムは、バイオガスを効率良く燃焼させて、安定な発電を行うことができる。また、上述した発電システムは、バイオガスとは異なる第二ガスを、EGRバルブを通じてガスエンジンに供給できるので、バイオガスの供給が不十分であってもガスエンジンを駆動することができる。これにより、上述した発電システムは、安定に発電を行うことができる。
【0009】
(2)上述した本発明の発電システムは、前記燃料バルブから供給する前記バイオガスの供給量が、所定の閾値に満たないことを条件として前記第一制御バルブを全閉状態又は一部閉塞状態にすると共に、前記第一配管における前記第一制御バルブ及び前記EGRバルブの間に分岐接続された第二配管を通じて前記第二ガスが供給されること、を特徴とするとよい。
【0010】
上述した発電システムは、かかる構成とすることにより、バイオガスの供給量が低下した場合に、第一配管(EGR配管)に接続された第二配管を通じてガスエンジンに第二ガスを供給することができる。すなわち、上述した発電システムは、ガスエンジンが、バイオマスによって駆動できない場合に、バイオガスとは異なる第二ガスを併用することで安定に発電を行うことができる。ここで、第二ガスは、例えば、都市ガス(メタン略100%)及びプロパンガスのいずれか一方又は双方で構成するとよい。また、上述した発電システムは、ガスエンジンを安定に駆動できるので、ガスエンジンで発生した熱の安定な回収(利用)が期待できる。
【0011】
(3)上述した本発明の発電システムは、前記EGR装置が、前記第一配管及び前記第二配管の接続部に配された温度調節装置を備えており、前記温度調節装置が、前記EGRバルブを流通する前記第二ガスを加温するものであること、を特徴とするとよい。
【0012】
上述した発電システムは、かかる構成とすることにより、EGRガスの熱を利用して第二ガスを加温できる。これにより、上述した発電システムは、ガスエンジンに加温された第二ガスを供給できるので、ガスエンジンの燃焼効率を高めることができ、リーン耐性を向上させることができる。そのため、上述した発電システムによれば、熱効率が向上するので、燃費を低減でき、窒素酸化物(NOx)等の不純物の排出量も低減できる。ここで、温度調節装置は、例えば、EGRクーラーで構成することができる。EGRクーラーの水温は、例えば、80~100度とするとよい。これにより、上述した発電システムは、温度調節装置内に乾燥した第二ガスを通気できるので、ススや油水分の持ち去りによる不純物除去効果が期待できる。そのため、上述した発電システムは、清掃が困難なEGRクーラー(温度調節装置)の内部に付着したススや油水分などの不純物を除去することができる。これにより、EGRクーラーの性能維持が期待できる。
【0013】
ここで、都市ガスやプロパンガスを、バイオガスに適合させたガスバルブからガスエンジンにそのまま投入(供給)した場合は、ガスバルブ開度に対して燃焼感度が高くなり、安定した燃焼が困難となる懸念がある。また、プロパンガスを用いた場合は、空気量が不足する懸念があり、安定に燃焼させることが困難となる懸念がある。これに対して、上述した発電システムは、上述した構成とすることにより、EGRガスの熱を利用して、これらの都市ガスやプロパンガスを加温することができるので、これらのガスを安定に燃焼させることができる。なお、都市ガスやプロパンガスを燃焼させる場合は、必要に応じてEGRガスの一部と併せて供給するようにしてもよい。
【0014】
(4)上述した本発明の発電システムは、前記温度調節装置が、前記ガスエンジンから排出される前記EGRガスを冷却するものであること、を特徴とするとよい。
【0015】
上述した発電システムは、かかる構成とすることにより、EGRガスを冷却できる。したがって、冷却された適度な温度のEGRガスをガスエンジンに供給することができるので、ガスエンジンの燃焼効率を高めることができる。これにより、上述した発電システムは、安定で効率の良い発電を行うことができる。また、上述した発電システムは、第二ガスを適切な温度に加温することができる。
【0016】
(5)上述した本発明の発電システムは、前記第二配管に第二制御バルブが設けられており、前記第二制御バルブは、前記第二配管を流通する前記第二ガスの供給量を制御すること、を特徴とするとよい。
【0017】
上述した発電システムは、かかる構成とすることにより、適切な供給量で第二ガスを供給することができる。例えば、バイオガスの供給が十分なときは、第二制御バルブを全閉状態にすることで、バイオガスのみによる発電を行うことができ、バイオガスの供給が不安定なときやバイオガスが供給できないときは、必要量の第二ガスをガスエンジンに供給できる。
【0018】
(6)上述した本発明の発電システムは、前記バイオガスの前記供給源に設けられ、前記バイオガスを発生させる発酵槽と、前記発酵槽を加温するための熱交換媒体を流通可能であると共に、前記発酵槽から前記ガスエンジンに亘って配された循環流路と、を備え、前記循環流路は、前記熱交換媒体を流通させることにより、前記ガスエンジンを冷却すると共に、前記ガスエンジンから取得した熱により、前記発酵槽を加温するものであること、を特徴とするとよい。
【0019】
上述した発電システムは、かかる構成とすることにより、循環流路を通じてガスエンジンで発生した熱を熱交換媒体で回収することができる。また、熱交換媒体で回収された熱は、循環流路を通じてバイオガスの供給源としての発酵槽に供給されるので、発酵槽を加温することができる。これにより、バイオガスの生成効率を高めることができる。また、上述した発電システムによれば、別途に灯油ボイラー等を設ける必要がないので、ボイラーの設置費用等のコスト低減が期待できる。ここで、熱交換媒体は、例えば、水やグリコール類等、あるいは、熱交換性の良い気体等が利用できる。
【0020】
(7)上述した課題を解決すべく提供される本発明の発電方法は、上述した発電システムを用いた発電方法において、前記第二配管に第二制御バルブを設け、当該第二制御バルブにより、前記第二配管を流通する前記第二ガスの供給量を制御するように構成しておき、前記バイオガスの残量が所定の閾値以上であるか否かを判定するバイオガス残量判定ステップと、前記バイオガス残量判定ステップにおいて、前記バイオガスの残量が所定の閾値以上であることを条件として前記燃料バルブを開放状態とする燃料バルブ開放ステップと、前記バイオガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かを判定するバイオガス濃度判定ステップと、前記バイオガスの濃度が、所定の閾値以上であることを条件として、前記第一制御バルブを開放状態とする第一制御バルブ開放ステップと、前記第二制御バルブを閉塞状態とする第二制御バルブ閉塞ステップと、前記バイオガス及び前記EGRガスにより前記ガスエンジンを駆動して発電を行う第一発電ステップと、を順次実行することを特徴とするものである。
【0021】
上述した発電方法は、かかる構成とすることにより、バイオガスの残量が所定の閾値以上であり、かつ、バイオガスの濃度(メタン濃度)が所定の濃度以上であることを条件として、バイオガス及びEGRガスによりガスエンジンが駆動され、発電が行われる(第一発電パターンとも称する)。すなわち、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給され、メタン濃度が十分である場合に、バイオガスの燃焼が促進されるよう、EGRガスの再循環が行われるものである。これにより、上述した発電方法は、EGRガスの再循環を利用してバイオガスを効率良く燃焼させることができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。ここで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジンの容量やガスエンジンの駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、バイオガスの濃度の閾値は、一般的なバイオガス中のメタン濃度(例えば、55%以上)に設定することができる。
【0022】
(8)上述した課題を解決すべく提供される本発明の発電方法は、上述した発電システムを用いた発電方法において、前記第二配管に第二制御バルブを設け、当該第二制御バルブにより、前記第二配管を流通する前記第二ガスの供給量を制御するように構成しておき、前記バイオガスの残量が所定の閾値以上であるか否かを判定するバイオガス残量判定ステップと、前記バイオガス残量判定ステップにおいて、前記バイオガスの残量が所定の閾値に満たないことを条件として前記燃料バルブを閉塞状態とする燃料バルブ閉塞ステップと、前記第一制御バルブを全閉状態又は一部閉塞状態とする第一制御バルブ閉塞ステップと、前記第二制御バルブを開放状態とする第二制御バルブ開放ステップと、前記バイオガス及び前記第二ガスのうち少なくとも前記第二ガスにより前記ガスエンジンを駆動して発電を行う第二発電ステップと、を順次実行することを特徴とするものである。
【0023】
上述した発電方法は、かかる構成とすることにより、バイオガスの残量が所定の閾値に満たないことを条件として、バイオガス及び第二ガスのうち少なくとも第二ガスによりガスエンジンが駆動され、発電が行われる(第二発電パターンとも称する)。すなわち、第二ガスが、ガスエンジンに供給される。これにより、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給されない場合であっても、第二ガスを利用してガスエンジンを駆動できるので、安定に発電を行うことができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。ここで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジンの容量やガスエンジンの駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、上述した発電方法は、上述した温度調節装置を設けて第二ガスを加温するように構成することにより、第二ガスの燃焼の効率化が期待できる。
【0024】
(9)上述した課題を解決すべく提供される本発明の発電方法は、上述した発電システムを用いた発電方法において、前記第二配管に第二制御バルブを設け、当該第二制御バルブにより、前記第二配管を流通する前記第二ガスの供給量を制御するように構成しておき、前記バイオガスの残量が所定の閾値以上であるか否かを判定するバイオガス残量判定ステップと、前記バイオガス残量判定ステップにおいて、前記バイオガスの残量が所定の閾値以上であることを条件として前記燃料バルブを開放状態とする燃料バルブ開放ステップと、前記バイオガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かを判定するバイオガス濃度判定ステップと、前記バイオガスの濃度が、所定の閾値に満たないことを条件として、前記第一制御バルブを全閉状態又は一部閉塞状態とする第一制御バルブ閉塞ステップと、前記第二制御バルブを開放状態とする第二制御バルブ開放ステップと、前記バイオガス及び前記第二ガスにより前記ガスエンジンを駆動して発電を行う第三発電ステップと、を順次実行することを特徴とするものである。
【0025】
上述した発電方法は、かかる構成とすることにより、バイオガスの残量が所定の閾値以上であり、かつ、バイオガスの濃度(メタン濃度)が所定の濃度に満たないことを条件として、バイオガス及び第二ガスによりガスエンジンが駆動され、発電が行われる(第三発電パターンとも称する)。すなわち、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給され、メタン濃度が低い場合に、第二ガスの供給量を抑制しつつ、バイオガス及び第二ガスの双方を利用して発電が行われるものである。これにより、上述した発電方法は、第二ガスの利用を最小限にしつつ、安定にバイオガス及び第二ガスを燃焼させることができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。また、上述した発電方法は、第二ガスの供給量が抑制されているので、第二ガスの利用によるコストを最小限に抑えることができる。ここで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジンの容量やガスエンジンの駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、バイオガスの濃度の閾値は、一般的なバイオガス中のメタン濃度(例えば、55%以上)に設定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、別途にボイラー等を設ける必要がなく、バイオガスを効率良く利用して発電できる発電システム及び発電方法を提供することができる。また、本発明によれば、バイオガスの供給が途絶えた場合であっても、バイオガス以外の都市ガスやプロパンガス等のガスを利用して発電できる発電システム及び発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発電システムの概念図である。
【
図2】本発明の発電システムにおける第一制御バルブ及び第二制御バルブの開閉状態を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る発電システム1の詳細を説明する。また、
図1は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。
【0029】
まず、本発明の発電システム1を構成するガスエンジン2、及び発電機7について説明する。
【0030】
ガスエンジン2は、インテークマニホールド3、電子制御スロットル4、燃料バルブ5、及びEGR排出部6(排ガス排出部6とも称する)を備えている。ガスエンジン2は、前記の他、AC/DCコンバータ8a、パワーコンディショナー8b、EGR装置10、熱交換媒体の循環流路30、及び循環流路30の一部をなすエンジン本体を冷却する冷却水の冷却水路等を備えている。ガスエンジン2は、バイオガスや後述する第二ガス(例えば、都市ガス、プロパンガス等)を燃料として、当該燃料を燃焼させることにより駆動される。ガスエンジン2は、例えば、車両に用いられるガソリンエンジン等の燃料バルブ5をバイオガスや第二ガスに対応できるようにしたものなどを用いることができる。
【0031】
インテークマニホールド3は、燃料(バイオガス、第二ガス)及び空気を混合して燃焼室(図示せず)内に供給するものとされている。インテークマニホールド3は、各種の形状や形態のものが利用できる。
【0032】
電子制御スロットル4は、空気の供給管4Aの途中に配置されている。供給管4Aは、一端側がインテークマニホールド3に接続され、他端側が外部開放されている。したがって、供給管4Aは、外部の空気を取り入れることができる。電子制御スロットル4は、供給管4Aを介して取り入れた空気の吸気量を調節するものとされている。具体的には、電子制御スロットル4は、バイオガスや第二ガス等の供給量や濃度に応じて、スロットル開度を調節することで、インテークマニホールド3に導入する空気量を調節することができる。
【0033】
燃料バルブ5は、バイオガスの供給管5Aの途中に配置されている。供給管5Aは、一端側が、インテークマニホールド3に接続され、他端側が、後述するバイオマスの供給源としての発酵槽35に接続されている。したがって、供給管5Aは、発酵槽35で発生するバイオガスを流通させることができる。なお、供給管5Aの他端側は、発酵槽35に直接接続するものだけではなく、例えば脱湿機、脱硫機、ガスバッグ等を介して接続されていてもよい。また、供給管5Aにおける発酵槽35及び燃料バルブ5の間には、バイオガスの濃度を検出するガス濃度センサ5Bが設けられている。燃料バルブ5は、供給管5Aを流通するバイオガスの供給量を調整(調節)するものとされている。具体的には、燃料バルブ5は、ガス濃度センサ5Bで検出したバイオガスの濃度に応じて、バルブ開閉量を調節することができる。
【0034】
EGR排出部6は、ガスエンジン2においてバイオガスや第二ガスを燃焼させることによって発生したEGRガス(排ガスの一部)を排出するものとされている。EGR排出部6には、後述する第一配管20の一端が接続されている。したがって、EGR排出部6から排出されたEGRガスは、第一配管20に流入するものとされている。
【0035】
発電機7は、ガスエンジン2の駆動軸(図示せず)と接続されている。したがって、発電機7は、ガスエンジン2の出力によって駆動され、発電することができる。本実施形態では、発電機7が、交流発電機として構成されており、交流電力を発電するものとされている。なお、発電機7は、ガスエンジン2の出力等に応じて、各種の容量のものが利用でき、取得する電力に応じて各種の形態のものが利用できる。また、発電機7には、AC/DCコンバータ8a、及びパワーコンディショナー8bが接続されている。
【0036】
AC/DCコンバータ8aは、発電機7で発電された交流電力を直流電力に変換するものとされている。AC/DCコンバータ8で、変換された直流電力は、パワーコンディショナー8bで、所定の交流電力に変換され、各種の電気機器(図示せず)に供される。なお、AC/DCコンバータ8aで変換された直流電力は、必要に応じて蓄電池(図示せず)に蓄電するようにしてもよい。
【0037】
以上が、本発明の発電システム1を構成するガスエンジン2、及び発電機7の構成であり、次に、本発明の発電システム1についての詳細を以下に説明する。
【0038】
発電システム1は、第一配管20に配されたEGR装置10、発酵槽35、及び制御部40等を備えている。ここで、第一配管20は、ガスエンジン2におけるEGR排出部6からガスエンジン2におけるインテークマニホールド3に亘って設けられている。すなわち、第一配管20は、EGRガスを再循環させる循環路を形成している。
【0039】
EGR装置10は、EGRガスを再循環させ、燃焼効率を向上させると共に、窒素酸化物(NOx)等の不純物を低減するものとされている。EGR装置10は、EGRバルブ11、第一制御バルブV1、温度調節装置12、及び第二制御バルブV2等を備えている。
【0040】
EGRバルブ11は、第一配管20の途中に配置されている。EGRバルブ11は、第一配管20を流通するEGRガスを供給することができる。また、EGRバルブ11は、バイオガスとは異なる第二ガスを供給することができる。EGRバルブ11は、EGRガス及び第二ガスのガスエンジン2への供給量を調節することができる。
【0041】
第一制御バルブV1は、第一配管20において、EGR排出部6及びEGRバルブ11の間に配されている。本実施形態では、第一配管20におけるEGR排出部6及びEGRバルブ11の間に後述する温度調節装置12が配されており、第一制御バルブV1は、EGR排出部6及び温度調節装置12の間に配されている。詳細は後述するが、第一制御バルブV1は、バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、EGR排出部6から排出され、第一配管20を介してインテークマニホールド3に向けて流通するEGRガスの流量を制御することができる。詳細は後述するが、第一制御バルブV1は、開放状態、全閉状態、又は、一部閉塞状態(一部開放状態)とすることができる。これにより、第一制御バルブV1は、EGRガスの流量を制御するものとされている。
【0042】
温度調節装置12は、例えば、EGRクーラーとして構成されている。温度調節装置12は、EGRバルブ11及び第一制御バルブV1の間に配されている。温度調節装置12による温度調節の詳細は後述する。
【0043】
温度調節装置12には、第二ガスの供給路をなす第二配管21が接続されている。言い換えると、温度調節装置12は、第一配管20及び第二配管21の接続部(分岐部)に配されている。すなわち、第二配管21は、第一配管20における第一制御バルブV1及びEGRバルブ11の間に分岐接続されている。したがって、温度調節装置12には、第一配管20を流通するEGRガス、及び第二配管21を通じて供給される第二ガスのいずれか一方又は双方を流通させることができる。
【0044】
ここで、第二配管21は、第一配管20と接続された他端側が、第二ガス(都市ガス、プロパンガス)の供給部(図示せず)に接続されている。したがって、第二配管21は、前記供給部から供給された第二ガスを流通させ、温度調節装置12を通じて第一配管20に送り込むことができる。また、第二配管21の途中には、第二制御バルブV2が配されている。
【0045】
第二制御バルブV2は、開閉を制御することにより、第二配管21を流通する第二ガスの供給量を制御(調整)することができる。詳細は後述するが、第二制御バルブV2は、第一制御バルブV1や燃料バルブ5の開閉状態に応じて、開閉に係る制御が行われる。
【0046】
温度調節装置12は、EGRバルブ11を流通する第二ガスを加温することができる。具体的に説明すると、温度調節装置12には、ガスエンジン2のエンジン本体を冷却する冷却水循環路(図示せず)が接続されている。前記冷却水循環路は、途中に、例えば、熱交換器及び送液ポンプ(共に図示せず)が設けられており、熱交換器で冷却された水をガスエンジン2に向けて送り込むことができる。ガスエンジン2の熱を回収した温水は、冷却水循環路を通って、温度調節装置12を通過する。したがって、温度調節装置12を流通するEGRガス(例えば、500~600度)は、冷却水循環路を流通する冷却水(例えば、80~100度)によって冷却される。一方、温度調節装置12を流通する第二ガスは、冷却水循環路を流通する冷却水(例えば、80~100度)で加温される。温度調節装置12を流通した冷却水は、熱交換器で冷却された後、再びガスエンジン2に送り込まれる。なお、熱交換器には、各種の形態や方式のものが利用できる。
【0047】
発酵槽35は、動物の糞尿等で生成されたバイオマスを貯留することができる。発酵槽35は、バイオマスを加温して発酵させることで、バイオガスを発生させることができる。また、上述したように、発酵槽35は、供給管5Aを通じて燃料バルブ5に接続されており、発生したバイオガスを、燃料バルブ5を通じてインテークマニホールド3に供給することができる。また、発酵槽35には、バイオガスの残量を検出するための残量検知センサ36が設けられている。また、発酵槽35の外周には、加温のための熱交換媒体を流通させる循環流路30が配されている。本実施形態においては、発酵槽35に残量検知センサ36を設ける構成としたが、例えば、発酵槽35にガスバッグを接続し、ガスバッグを介してバイオガスを燃料バルブ5に供給する構成とすることもできる。かかる場合は、ガスバッグの膨らみ具合に基づいて、バイオガスの残量を検知するとよい。
【0048】
循環流路30は、発酵槽35からガスエンジン2に亘って配されている。循環流路30は、内部に熱交換媒体(例えば、冷却水、グリコール類)を流通させることができる。循環流路30は、途中に送液ポンプ31が設けられており、送液ポンプ31を駆動することにより、熱交換媒体を循環させることができる。循環流路30は、熱交換媒体を流通させることにより、ガスエンジン2を冷却すると共に、ガスエンジン2から取得(回収)した熱により、発酵槽35を加温することができる。なお、本実施形態では、循環流路30と、ガスエンジン2を冷却するための冷却水循環路(図示せず)と、が、同一経路として構成されている場合を例示したが、循環流路30及び冷却水循環路が別々に構成されていてもよい。
【0049】
制御部40は、各種の演算を実行可能なコンピュータ等で構成されている。制御部40は、各種の機器に直接的又は間接的に接続されている。制御部40は、ガスエンジン2の駆動制御を行うことができる。また、制御部40は、発電機7やAC/DCコンバータ8a、パワーコンディショナー8bによる発電制御を行うことができる。また、制御部40は、前記の他、電子制御スロットル4、燃料バルブ5、EGRバルブ11、第一制御バルブV1、及び第二制御バルブV2の開閉制御、並びに、ガスエンジン2や発酵槽35等の温度制御など発電システム1における全体的な制御を行うことができる。なお、制御部40は、各種の機能毎に複数に分割して設けられていてもよい。
【0050】
以上が、本発明の一実施形態に係る発電システム1の構成であり、次に、本発明の発電システム1の作用効果について以下に説明する。
【0051】
(1)上述した発電システム1は、ガスエンジン2の出力によって発電機7を駆動するものであって、バイオガスの供給源(発酵槽35)からガスエンジン2へのバイオガスの供給を調整するための燃料バルブ5と、ガスエンジン2におけるEGR排出部6からガスエンジン2におけるインテークマニホールド3に亘って設けられた第一配管20と、第一配管20に配されたEGR装置10と、を備え、EGR装置10は、第一配管20に配され、バイオガスとは異なる第二ガスを供給するためのEGRバルブ11と、第一配管20において、EGR排出部6及びEGRバルブ11の間に配された第一制御バルブV1と、を備え、第一制御バルブV1は、バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、EGR排出部6から排出され、第一配管20を介してインテークマニホールド3に向けて流通するEGRガスの流量を制御すること、を特徴としている。
【0052】
したがって、上述した発電システム1は、上記(1)の構成とすることにより、バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて、EGRガス(排気ガスの一部)の流量を第一制御バルブV1によって制御することができる。ここで、第一配管20は、ガスエンジン2におけるEGR排出部6からインテークマニホールド3に亘って設けられたEGR配管に相当するものとされている。したがって、上述した発電システム1は、EGR配管を流通するEGRガスの流量を制御することにより、ガスエンジン2における燃焼効率を高めることができる。これにより、上述した発電システム1は、バイオガスを効率良く燃焼させて、安定な発電を行うことができる。また、上述した発電システム1は、バイオガスとは異なる第二ガスを、EGRバルブ11を通じてガスエンジン2に供給できるので、バイオガスの供給が不十分であってもガスエンジン2を駆動することができる。これにより、上述した発電システム1は、安定に発電を行うことができる。
【0053】
(2)上述した発電システム1は、燃料バルブ5から供給するバイオガスの供給量が、所定の閾値に満たないことを条件として第一制御バルブV1を全閉状態又は一部閉塞状態にすると共に、第一配管20における第一制御バルブV1及びEGRバルブ11の間に分岐接続された第二配管21を通じて第二ガスが供給されること、を特徴とするとよい。
【0054】
上述した発電システム1は、上記(2)の構成とすることにより、バイオガスの供給量が低下した場合に、第一配管20(EGR配管)に接続された第二配管21を通じてガスエンジン2に第二ガスを供給することができる。すなわち、上述した発電システム1は、ガスエンジン2が、バイオマスによって駆動できない場合に、バイオガスとは異なる第二ガスを併用することで安定に発電を行うことができる。また、上述した発電システム1は、ガスエンジン2を安定に駆動できるので、ガスエンジン2で発生した熱の安定な回収(利用)が期待できる。
【0055】
(3)上述した発電システム1は、EGR装置10が、第一配管20及び第二配管21の接続部に配された温度調節装置12を備えており、温度調節装置12が、EGRバルブ11を流通する前記第二ガスを加温するものであること、を特徴とするとよい。
【0056】
上述した発電システム1は、上記(3)の構成とすることにより、EGRガスの熱を利用して第二ガスを加温できる。これにより、上述した発電システム1は、ガスエンジン2に加温された第二ガスを供給できるので、ガスエンジン2の燃焼効率を高めることができ、リーン耐性を向上させることができる。そのため、上述した発電システム1によれば、熱効率が向上するので、燃費を低減でき、窒素酸化物(NOx)等の不純物の排出量も低減できる。ここで、温度調節装置12は、例えば、EGRクーラーで構成することができる。EGRクーラーの水温は、例えば、80~100度とするとよい。これにより、上述した発電システム1は、温度調節装置12内に乾燥した第二ガスを通気できるので、ススや油水分の持ち去りによる不純物除去効果が期待できる。そのため、上述した発電システム1は、清掃が困難なEGRクーラー(温度調節装置12)の内部に付着したススや油水分などの不純物を除去することができる。これにより、EGRクーラーの性能維持が期待できる。また、上述した発電システム1は、上述した構成とすることにより、EGRガスの熱を利用して、第二ガス(都市ガス。プロパンガス等)を加温することができるので、これらのガスを安定に燃焼させることができる。なお、第二ガスを燃焼させる場合は、必要に応じてEGRガスの一部と併せて供給するようにしてもよい。
【0057】
(4)上述した発電システム1は、温度調節装置12が、ガスエンジン2から排出されるEGRガスを冷却するものであること、を特徴とするとよい。
【0058】
上述した発電システム1は、上記(4)の構成とすることにより、EGRガスを冷却できる。したがって、冷却された適度な温度のEGRガスをガスエンジン2に供給することができるので、ガスエンジン2の燃焼効率を高めることができる。これにより、上述した発電システム1は、安定で効率の良い発電を行うことができる。また、上述した発電システム1は、第二ガスを適切な温度に加温することができる。
【0059】
(5)上述した発電システム1は、第二配管21に第二制御バルブV2が設けられており、第二制御バルブV2は、第二配管21を流通する第二ガスの供給量を制御すること、を特徴とするとよい。
【0060】
上述した発電システム1は、上記(5)の構成とすることにより、適切な供給量で第二ガスを供給することができる。例えば、バイオガスの供給が十分なときは、第二制御バルブV2を全閉状態にすることで、バイオガスのみによる発電を行うことができ、バイオガスの供給が不安定なときやバイオガスが供給できないときは、必要量の第二ガスをガスエンジン2に供給できる。
【0061】
(6)上述した発電システム1は、バイオガスの供給源に設けられ、前記バイオガスを発生させる発酵槽35と、発酵槽35を加温するための熱交換媒体を流通可能であると共に、発酵槽35からガスエンジン2に亘って配された循環流路30と、を備え、循環流路30は、前記熱交換媒体を流通させることにより、ガスエンジン2を冷却すると共に、ガスエンジン2から取得した熱により、発酵槽35を加温するものであること、を特徴とするとよい。
【0062】
上述した発電システム1は、上記(6)の構成とすることにより、循環流路30を通じてガスエンジン2で発生した熱を熱交換媒体で回収することができる。また、熱交換媒体で回収された熱は、循環流路30を通じてバイオガスの供給源としての発酵槽35に供給されるので、発酵槽35を加温することができる。これにより、バイオガスの生成効率を高めることができる。また、上述した発電システム1によれば、別途に灯油ボイラー等を設ける必要がないので、ボイラーの設置費用等のコスト低減が期待できる。
【0063】
以上が、本発明の一実施形態に係る発電システム1の構成及び作用効果であり、次に、本発明の発電システム1を用いた本発明の一実施形態に係る発電方法について、
図3のフロー図を参照しつつ、適宜、
図2も参照しながら以下に説明する。
【0064】
図2及び
図3に示すように、本発明の発電方法は、第一発電パターン、第二発電パターン、及び第三発電パターンに大別される。以下、それぞれの発電パターンの詳細について説明する。
【0065】
図3に示すように、発電システム1の電源がONされると、第一発電パターン、第二発電パターン、及び第三発電パターンにおいて共通であるバイオガスの残量が所定の閾値以上であるか否かの判定が行われる(ステップS10:バイオガス残量判定ステップ)。
【0066】
≪第一発電パターン≫
ステップS10において、バイオガスの残量が所定の閾値以上であることを条件として、バイオガスの燃料バルブ5が開放状態とされる(ステップS11:燃料バルブ開放ステップ)。続いて、バイオガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かの判定が行われる(ステップS12:バイオガス濃度判定ステップ)。
【0067】
ステップS12において、バイオガスの濃度が、所定の閾値以上であることを条件として、第一制御バルブV1が開放状態とされる(ステップS13:第一制御バルブ開放ステップ)。続いて、第二制御バルブV2が、閉塞状態とされる(ステップS14:第二制御バルブ閉塞ステップ)。ステップS14の処理が実行されると、バイオガス及びEGRガスによりガスエンジン2が駆動され、第一発電パターンによる発電が行われる(ステップS15:第一発電ステップ)。ステップS15の処理が完了すると、ステップS10に処理が戻される。
【0068】
すなわち、第一発電パターンは、
図2に示すように、残量検知センサ36(
図1参照)で検出したバイオガスの残量が所定の閾値以上であることを条件として(バイオガスが十分に供給できることを条件として)、バイオガスを燃料に、発電(自家用発電)を行うものである(通常運転とも称する)。第一発電パターンでは、第一制御バルブV1が開放され、第二制御バルブV2が閉塞される。すなわち、第一制御バルブV1が開放されることにより、EGRガスがガスエンジン2に再循環されながら、バイオガスが燃焼される。これに伴い、ガスエンジン2で発生した熱が回収されると共に、発酵槽35の加温に供される。そのため、バイオガスが、効率良く燃焼されて燃費が向上すると共に、安定にバイオガスを発生させることができるので、安定に発電することができる。
【0069】
上述したように、本発明の発電方法は、第一発電パターンによる発電を実行することにより、次のような作用効果を奏するものとされている。
【0070】
上述した第一発電パターンによる発電方法は、バイオガスの残量が所定の閾値以上であり、かつ、バイオガスの濃度(メタン濃度)が所定の濃度以上であることを条件として、バイオガス及びEGRガスによりガスエンジン2が駆動され、発電が行われる。すなわち、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給され、メタン濃度が十分である場合に、バイオガスの燃焼が促進されるよう、EGRガスの再循環が行われるものである。これにより、上述した発電方法は、EGRガスの再循環を利用してバイオガスを効率良く燃焼させることができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。ここで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジン2の容量やガスエンジン2の駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、バイオガスの濃度の閾値は、一般的なバイオガス中のメタン濃度(例えば、55%以上、本実施形態では60%)に設定することができる。
【0071】
≪第二発電パターン≫
図3に示すように、ステップS10(バイオガス残量判定ステップ)において、バイオガスの残量が所定の閾値に満たないことを条件として、燃料バルブ5が閉塞状態とされる(ステップS20:燃料バルブ閉塞ステップ)。続いて、第一制御バルブV1が全閉状態又は一部閉塞状態とされる(ステップS21:第一制御バルブ閉塞ステップ)。また、第二制御バルブV2が開放状態とされる(ステップS22:第二制御バルブ開放ステップ)。ステップS22の処理が実行されると、バイオガス及び第二ガスのうち少なくとも第二ガスによりガスエンジン2が駆動され、第二発電パターンによる発電が行われる(ステップS23:第二発電ステップ)。ステップS23の処理が完了すると、ステップS10に処理が戻される。
【0072】
すなわち、第二発電パターンは、
図2に示すように、残量検知センサ36で検出したバイオガスの残量が所定の閾値を満たさないことを条件として、第二ガスを燃料に、発電(自家用発電)を行うものである(量的応急運転とも称する)。第二発電パターンでは、第一制御バルブV1が全閉状態又は一部閉塞状態とされ、第二制御バルブV2が開放される。すなわち、EGRガスの供給が遮断又は一部供給とされ、第二ガスが燃焼される。これに伴い、ガスエンジン2で発生した熱が回収されると共に、発酵槽35の加温に供され、バイオガスの生成が促進される。
【0073】
上述したように、本発明の発電方法は、第二発電パターンによる発電を実行することにより、次のような作用効果を奏するものとされている。
【0074】
上述した第二パターンによる発電方法は、バイオガスの残量が所定の閾値に満たないことを条件として、バイオガス及び第二ガスのうち少なくとも第二ガスによりガスエンジン2が駆動され、発電が行われる。すなわち、第二ガスが、ガスエンジン2に供給される。これにより、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給されない場合であっても、第二ガスを利用してガスエンジン2を駆動できるので、安定に発電を行うことができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。こで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジン2の容量やガスエンジン2の駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、上述した発電方法は、上述した温度調節装置12を設けて第二ガスを加温するように構成することにより、第二ガスの燃焼の効率化が期待できる。
【0075】
≪第三発電パターン≫
図3に示すように、ステップS10(バイオガス残量判定ステップ)において、バイオガスの残量が所定の閾値以上であることを条件として、バイオガスの燃料バルブ5が開放状態とされる(ステップS11:燃料バルブ開放ステップ)。続いて、バイオガスの濃度が所定の閾値以上であるか否かの判定が行われる(ステップS12:バイオガス濃度判定ステップ)。
【0076】
ステップS12において、バイオガスの濃度が、所定の閾値に満たないことを条件として、第一制御バルブV1が全閉状態又は一部閉塞状態とされる(ステップS30:第一制御バルブ閉塞ステップ)。続いて、第二制御バルブV2が、開放状態とされる(ステップS31:第二制御バルブ開放ステップ)。ステップS31の処理が実行されると、バイオガス及び第二ガスによりガスエンジン2が駆動され、第三発電パターンによる発電が行われる(ステップS32:第三発電ステップ)。ステップS32の処理が完了すると、ステップS10に処理が戻される。
【0077】
すなわち、第三発電パターンは、
図2示すように、残量検知センサ36で検出したバイオガスの残量が所定の閾値を満たさないことを条件として、第二ガスを燃料に、発電(自家用発電)を行うものである(量的応急運転とも称する)。第二発電パターンでは、第一制御バルブV1が全閉状態又は一部閉塞状態とされ、第二制御バルブV2が開放される。すなわち、EGRガスの供給が遮断又は一部供給とされ、第二ガスが燃焼される。これに伴い、ガスエンジン2で発生した熱が回収されると共に、発酵槽35の加温に供され、バイオガスの生成が促進される。
【0078】
上述したように、本発明の発電方法は、第三発電パターンによる発電を実行することにより、次のような作用効果を奏するものとされている。
【0079】
上述した第三発電パターンによる発電方法は、バイオガスの残量が所定の閾値以上であり、かつ、バイオガスの濃度(メタン濃度)が所定の濃度に満たないことを条件として、バイオガス及び第二ガスによりガスエンジン2が駆動され、発電が行われる。すなわち、上述した発電方法は、バイオガスが十分に供給され、メタン濃度が低い場合に、第二ガスの供給量を抑制しつつ、バイオガス及び第二ガスの双方を利用して発電が行われるものである。これにより、上述した発電方法は、第二ガスの利用を最小限にしつつ、安定にバイオガス及び第二ガスを燃焼させることができる。そのため、上述した発電方法は、安定に発電を行うことができ、熱回収も安定に行うことができる。また、上述した発電方法は、第二ガスの供給量が抑制されているので、第二ガスの利用によるコストを最小限に抑えることができる。ここで、バイオガスの残量の閾値は、ガスエンジン2の容量やガスエンジン2の駆動に必要とされる燃料供給量に応じて、各種の残量に設定することができる。また、バイオガスの濃度の閾値は、一般的なバイオガス中のメタン濃度(例えば、55%以上、本実施形態では60%)に設定することができる。
【0080】
以上が、本発明の発電システム1及び発電方法の一実施形態であるが、本発明の発電システム1及び発電方法は、上述した実施形態に係るものに限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0081】
本実施形態におけるガスエンジン2や発電機7には、各種の形態や方式のものが利用できる。また、バイオガスの残量や濃度の閾値は、上述した実施形態のものに限定されず、バイオガスの発生態様等に応じて、各種の数値に設定できる。また、第一制御バルブV1によって制御されるEGRガスの流量は、バイオガスの供給量及び濃度のいずれか一方又は双方に基づいて各種の流量に制御することができる。また、第二制御バルブV2及び燃料バルブ5の開閉状態は、全閉状態又は開放状態によるものだけではなく、第二ガスの形態等に応じて、一部閉塞状態(一部開放状態)とすることもできる。また、第一制御バルブV1及び第二制御バルブV2の開閉状態の組み合わせは、
図2及び
図3に示す実施形態に限定されるものではなく、ガスエンジン2の燃焼効率に応じて、適宜、組み合わせを変更できる。
【0082】
また、本実施形態では、EGR装置10が、第一配管20及び第二配管21の接続部に配された温度調節装置12を備えるものしたが、温度調節装置12は、必要に応じて設ければよい。また温度調節装置12は、EGRバルブ11を流通する第二ガスを加温するものとすることが望ましいが、第二ガスを加温するものだけではなく、第二ガスを加温しないものとすることも可能である。また、温度調節装置12は、EGRガスを冷却することが望ましいが、EGRガスを冷却するものだけではなく、EGRガスを冷却しないものとすることもできる。
【0083】
また、本実施形態では、発酵槽35を用いてバイオガスを発生させているが、バイオガスの供給源は、発酵槽35によるものだけではなく、各種のバイオガス発生手段を利用できる。かかる場合において、バイオガス発生手段は、ガスエンジン2の排熱を利用できるものが望ましい。また、本実施形態では、ガスエンジン2及び温度調節装置12(EGRクーラー)の冷却手段としての冷却水循環路と、発酵槽35を加温する循環流路30とが、それぞれ共通のものとして配されているが、ガスエンジン2及び温度調節装置12を適切に冷却できるものであれば、冷却水循環路及び循環流路30が別々のものとして構成されていてもよい。また、冷却水循環路を流通する冷却水や循環流路30を流通する熱交換媒体は、水やグリコール等の液体だけではなく、熱交換性の良い気体等で形成されていてもよい。
【0084】
以上が、本発明に係る発電システム及び発電方法の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の発電システム及び発電方法は、バイオガスを利用したガスエンジンによる発電に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:発電システム
2:ガスエンジン
3:インテークマニホールド
5:燃料バルブ
7:発電機
10:EGR装置
11:EGRバルブ
12:温度調節装置(EGRクーラー)
20:第一配管
21:第二配管
30:循環流路
35:発酵槽
V1:第一制御バルブ
V2:第二制御バルブ