(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165751
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28G 13/00 20060101AFI20241121BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F28G13/00 Z
F27D17/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082232
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】磯見 宙孝
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA01
4K056AA16
4K056CA02
4K056DA26
4K056DA32
(57)【要約】
【課題】 ガスが熱交換器を通過するときに発生する水分やダストが熱交換器のケーシング内部に堆積することにより生じるケーシングの腐食を防止可能な熱交換器を提供する
【解決手段】 ガスの流路上に配置され前記ガスが通過するケーシングと、前記ケーシング内に配置され内部を伝熱媒体が流動する伝熱管と、を有する熱交換器であって、前記ケーシングの下端部に開口が設けられるとともに、該開口が水封されている、熱交換器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流路上に配置され前記ガスが通過するケーシングと、前記ケーシング内に配置され内部を伝熱媒体が流動する伝熱管と、を有する熱交換器であって、
前記ケーシングの下端部に開口が設けられるとともに、該開口が水封されている、熱交換器。
【請求項2】
前記伝熱管の下方の前記ケーシングの内面が前記開口に向かうように傾斜する傾斜面とされている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記開口に向かう傾斜角が30~70°となるように形成されている、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記ガスはボイラ設備に用いられる燃料ガスであり、前記伝熱媒体は蒸気である、請求項1~3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記ガスは燃焼装置から排出される排ガスであり、前記伝熱媒体は水である、請求項1~3のいずれかに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内で移送されるガスの加熱または冷却を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
温度の異なる流体間で熱エネルギーを交換する機器として、熱交換器が用いられている。銑鋼一貫製鉄所では、高炉やコークス炉等で生成される副生ガスを、種々の燃焼装置で燃料ガスとして利用するために、熱交換器により予熱することが行われている。また、燃焼装置から排出される燃焼後の排ガスが有する顕熱を回収して省エネルギーを達成するためにも、熱交換器が用いられている。
【0003】
図4に、従来の熱交換器8の断面を模式的に示す。
図4に示すように、ボイラ設備等の燃焼装置に用いる燃料ガスGを熱交換器8により予熱する場合には、燃料ガスGよりも高温の伝熱媒体Mを熱交換器8の伝熱管80の内部に流動させる。そして、伝熱管80の内部の伝熱媒体Mから伝熱管80の外部の燃料ガスGに熱を移動させることにより、燃料ガスGを昇温する。
【0004】
具体的には、燃料ガスGの流路である配管GP上に熱交換器8のケーシング90が配置され、このケーシング90内に伝熱管80が配置されている。伝熱管80の内部には、伝熱媒体Mとして加温用蒸気が流動している。熱交換器8のケーシング90には、ガス入口91およびガス出口92が設けられており、ガス入口91から流入する常温の燃料ガスGが、ケーシング90を通過するときに、伝熱媒体(蒸気)Mにより加熱された伝熱管80と接触して昇温され、ガス出口92から流出する。
【0005】
このとき、ケーシング90のうち燃料ガスGの流れ方向下流側のガス出口92の近傍の部分や、伝熱管80以外の配管(図示せず)等は、昇温された燃料ガスGよりも温度が低い。よって、昇温された燃料ガスGが、熱交換器8内部で昇温されていないケーシング90や配管等と接触することにより、燃料ガスGに含まれる水分が凝集して水滴となり、熱交換器8の下部に溜まることがある。また、燃料ガスGに含まれるダストが伝熱管80の表面に付着し脱落する過程で、水滴と共に熱交換器8の下部に堆積することがある。
【0006】
高炉やコークス炉等で生成される副生ガスには、硫黄や酸化鉄等を含むダストが含まれることがあるため、熱交換器8の下部に湿潤環境が形成されると、ケーシング90や配管等を腐食させるおそれがある。特に、燃料ガスGに一酸化炭素等の有毒ガスが含まれる場合には、熱交換器8の腐食により、有毒ガスが外部に漏出するリスクとなる。
【0007】
同じ
図4を参照して、ボイラ設備等の燃焼装置から排出される燃焼後の排ガスGからの排熱の回収を行うために熱交換器8を用いる場合について説明する。この場合には、排ガスGよりも低温の伝熱媒体Mを伝熱管80の内部に流動させる。そして、伝熱管80の外部の排ガスGから伝熱管80の内部の伝熱媒体Mに熱を移動させることにより、排ガスGが有する顕熱を伝熱媒体Mで回収する。
【0008】
このとき、熱交換器8の内部では、高温の排ガスGが伝熱管80と接触して冷却されることにより、排ガスGに含まれる水分が凝集して水滴となり、熱交換器8の下部に溜まることがある。また、排ガスG中に煤塵等のダストが含まれていると、ダストが水滴とともに熱交換器8の下部に堆積し、湿潤環境を形成して、ケーシング90や配管等を腐食させるおそれがある。そして、熱交換器8の腐食により、排ガスGが外部に漏出するリスクとなる。
【0009】
また、熱交換器8では、伝熱管80での熱伝達を促進するために、伝熱管80に用いる配管の肉厚が薄いのが一般的である。このため、ケーシング90の下部で湿潤環境が形成されると、伝熱管80にも腐食が発生するおそれがあり、これにより熱交換器8の故障が発生するという問題もある。
【0010】
そこで、従来の熱交換器8では、運転を定期的に停止して作業者が内部に立ち入り、熱交換器8内部の腐食状況を点検したり、ケーシング90の下部に堆積したダストや水分を除去する清掃作業を行ったりする必要があった。このため、熱交換器8の稼働率が低下するという問題や、作業者の作業負荷が高いという問題が生じていた。
【0011】
このような問題に対して、特許文献1には、ボイラから排出される排ガス中の硫黄酸化物が熱交換面に付着して腐食等を起こすのを回避可能なガス冷却装置が開示されている。具体的には、排ガスを水分飽和温度以下に冷却する能力を有する熱交換器を備えることにより、排ガスが冷却されるときに、排ガスに含まれる水分の一部が凝縮する。そして、熱交換面上で凝縮した凝縮水により、熱交換面に付着しようとする硫黄酸化物を洗い流し、熱交換器の下部に設けられた凝縮水回収部で回収し、熱交換器の外部に排出している。
【0012】
また、特許文献2には、伝熱管が組み込まれた熱交換室の一部に衝撃波発生装置を取り付け、この衝撃波発生装置を間欠的に駆動させて伝熱管に向けて衝撃波を間欠的に発射することにより、伝熱管に付着した灰やダストを除去する装置が開示されている。吹き飛ばされた灰やダストは、熱交換器の底部に設けられた灰落し口に堆積し、灰出し器により熱交換器の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2000/48711号パンフレット
【特許文献2】特開2001-141391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記の従来技術には、次のような課題がある。
【0015】
まず、特許文献1に開示される技術では、熱交換器の内部で凝縮水を発生させ、熱交換器の下部に設けられた凝縮水回収部で回収しているが、凝縮水を熱交換器の外部にどのようにして排出するかについては記載されていない。特許文献1に記載のガス冷却装置において、熱交換器の下部に凝縮水が堆積した状態が長期間継続すると、凝縮水に含まれる酸化性物質により熱交換器の下部で腐食が進行し、凝縮水の液漏れ等のリスクが高くなる。また、熱交換器の下部に溜まった凝縮水を排出するために熱交換器の下部を開放すると、熱交換器を通過する排ガスが外部に漏出する点で問題がある。排ガスが熱交換器の外部に漏出するのを防止するには、熱交換器の下部に溜まった凝縮水を排出する前に、熱交換器の運転を停止して配管内にある排ガスを置換しておく必要が生じ、熱交換器の運転停止による稼働率の低下が問題となる。
【0016】
また、特許文献2に開示される技術では、熱交換器の下部に設けられる灰落し口に堆積した灰やダストを、灰出し器により熱交換器の外部に排出することが記載されているが、灰出し器の構造や、灰やダストを排出する方法については、記載されていない。特許文献1に記載の装置において、熱交換器の底部に設けられた灰落し口に堆積する灰やダスト等の固体物に水分が含まれると、湿潤環境が形成されて、灰やダストから酸化性物質が水に溶解し、熱交換器の下部で腐食が進行するという問題がある。また、熱交換器の下部に溜まった灰やダスト等を排出するために熱交換器の下部を開放すると、特許文献1と同様に、熱交換器を通過する排ガスが外部に漏出する点で問題がある。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスが熱交換器を通過するときに発生する水分やダストが熱交換器のケーシング内部に堆積することにより生じるケーシングの腐食を防止可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0019】
[1] ガスの流路上に配置され前記ガスが通過するケーシングと、前記ケーシング内に配置され内部を伝熱媒体が流動する伝熱管と、を有する熱交換器であって、前記ケーシングの下端部に開口が設けられるとともに、該開口が水封されている、熱交換器。
【0020】
[2] 前記伝熱管の下方の前記ケーシングの内面が前記開口に向かうように傾斜する傾斜面とされている、[1]に記載の熱交換器。
【0021】
[3] 前記傾斜面は、前記開口に向かう傾斜角が30~70°となるように形成されている、[2]に記載の熱交換器。
【0022】
[4] 前記ガスはボイラ設備に用いられる燃料ガスであり、前記伝熱媒体は蒸気である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱交換器。
【0023】
[5] 前記ガスは燃焼装置から排出される排ガスであり、前記伝熱媒体は水である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る熱交換器によれば、ガスが通過するケーシングの下端部に開口が設けられ、この開口が水封されているので、ガスが熱交換器を通過するときに発生する水分やダストが開口から封水内に排出される。よって、熱交換器のケーシング内部に水分やダストが堆積せず、水分やダストにより生じるケーシングの腐食を防止できる。また、ガスが通過するケーシングの下端部に設けられた開口が水封されているので、ケーシングの内部を通過するガスが、開口から熱交換器の外に漏洩することがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)はそれぞれ、本発明の熱交換器を正面側、側面側からみた断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の熱交換器におけるケーシングの開口の水封構造を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の熱交換器におけるケーシングの開口の水封構造の他の例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、従来の熱交換器を正面側からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の熱交換器の実施形態について、詳細に説明する。
【0027】
図1(a)および
図1(b)に、本発明の一実施形態に係る熱交換器1を正面側からみた断面、側面側からみた断面を、それぞれ模式的に示す。
【0028】
図1(a)および
図1(b)に示すように、本実施形態の熱交換器1は、ガスGの流路であるガス配管GP上に配置されたケーシング20と、ケーシング20内に配置された伝熱管10とを有している。ケーシング20は、ガスGの流路の上流側でガス配管GPに接続されるガス入口21と、ガスGの流路の下流側でガス配管GPに接続されるガス出口22とを備えている。そして、ケーシング20内をガス入口21からガス出口22に向かうようにガスGが通過するとともに、ケーシング20内に配置された伝熱管10の内部を伝熱媒体Mが流動することにより、伝熱管10の内部の伝熱媒体Mと伝熱管10の外部のガスGとの間で、熱交換が行われる。
【0029】
また、
図1(a)および
図1(b)に示すように、本実施形態の熱交換器1では、ケーシング20の下端部に開口が設けられている。そして、伝熱管10の下方のケーシング20の内面が開口に向かうように傾斜する傾斜面23とされ、開口が水封されている。
【0030】
図2に、本実施形態の熱交換器1における、ケーシング20の開口の水封構造を模式的に示す。
図2に示すように、本実施形態の熱交換器1では、ドレンポット型の水封構造により、ケーシング20の開口が水封されている。すなわち、ケーシング20の下端部には、円管や角管等からなる排出管24が接続され、この排出管24が水封容器30内に延出している。そして、水封容器30に封水Wが貯留され、排出管24の出口が封水Wにより水封されている。
【0031】
本実施形態の熱交換器1は、例えば、ガス焚きボイラ設備等の種々の燃焼装置に供給される燃料ガスを予熱するために使用できる。この場合には、ガス配管GP上に配置されたケーシング20を通過するガスGは、石炭ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、シェールガス等である。石炭ガスとは、石炭から得られるガスをいう。石炭ガスとしては、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、電気炉ガスが挙げられる。これらは、製鉄所の製造工程で生成する副生ガスであり、ボイラ等の種々の燃焼装置に供給される燃料ガスとして再利用されるものである。高炉ガスは、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する際の副生ガスである。コークス炉ガスは、コークスを製造するために石炭を高温乾留して生成される副生ガスである。転炉ガスは、転炉における製鋼工程で生じる副生ガスである。電気炉ガスとは、電気炉において使用する補助燃料(加炭材)の不完全燃焼によって生じる副生ガスである。また、ケーシング20を通過するガスGとして、高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガス、電気炉ガスを適宜混合したガス(Mガスと呼ばれることがある)を用い、これを予熱してもよい。このように、発熱量が異なる石炭ガスを混合したガスを用いることにより、ボイラ設備等の熱量を調整できる。
【0032】
高炉ガスや転炉ガスを熱交換器1により予熱する場合には、例えば、流量が20000~30000m3N/h、圧力が10kPa程度、常温(20℃程度)のガスGが、ガス入口21からケーシング20に導入される。この場合、ガス配管GPとして、例えば、断面積が3~5m2程度の円管または角管形状のダクトを使用できる。
【0033】
伝熱管10の内部を流動する伝熱媒体Mは、液体または気体からなる流体であって、伝熱媒体配管MPから伝熱管10に供給され、熱交換を終えた伝熱媒体Mは伝熱管10から伝熱媒体配管MPから排出される。
【0034】
熱交換器1により、ガス焚きボイラ設備等の燃焼装置に供給される燃料ガスを予熱する場合には、ガス入口21からケーシング20に導入されるガスGよりも高温の流体を伝熱媒体Mとして用い、これを伝熱媒体配管MPから供給する。この場合、伝熱媒体Mとして、例えば昇温された蒸気を使用できる。そして、ケーシング20をガスGが通過するとともに、ケーシング20内に配置された伝熱管10の内部を伝熱媒体Mが流動することにより、伝熱管10の内部の伝熱媒体Mと、伝熱管10の外部のガスGとの間で、熱交換が行われる。熱交換により加熱されたガスGは、ガス出口22から排出され、下流側のガス配管GPに送られる。
【0035】
あるいは、本実施形態の熱交換器1は、燃焼装置から排出される燃焼後の排ガスが有する顕熱を回収するためにも使用できる。例えば、ガス配管GP上に配置されたケーシング20を通過するガスGは、上記のボイラ等の燃焼装置により燃焼することにより生成した排ガスである。この場合には、ガスGよりも低温の伝熱媒体Mを伝熱管10の内部に流動させる。そして、伝熱管10の外部のガスGから伝熱管10の内部の伝熱媒体Mに熱を移動させることにより、ガスGが有する顕熱を伝熱媒体Mにより回収する。
【0036】
熱交換器1により、燃焼装置から排出される燃焼後の排ガスが有する顕熱を回収する場合には、ガス入口21からケーシング20に導入されるガスGよりも低温の流体を伝熱媒体Mとして用い、これを伝熱媒体配管MPから供給する。この場合、伝熱媒体Mとして、例えば水等の液体を使用できる。そして、ケーシング20をガスGが通過するとともに、ケーシング20内に配置された伝熱管10の内部を伝熱媒体Mが流動することにより、伝熱管10の内部の伝熱媒体Mと、伝熱管10の外部のガスGとの間で、熱交換が行われる。熱交換により顕熱を回収されたガスGは、ガス出口22から排出され、下流側のガス配管GPに送られる。
【0037】
伝熱管10としては、例えば、チューブ式の伝熱管を使用でき、その内部を伝熱媒体Mが流動することにより、伝熱管10の内部の伝熱媒体Mと、伝熱管10の外部のガスGとの間で、熱交換が行われる。チューブ式の伝熱管としては、例えば、多管式熱交換器であるシェル&チューブ式の伝熱管を使用できる。具体的には、シェル&チューブ式の伝熱管として、固定管板式、U字管式、遊動管式(フローティングヘッド式)等を使用できる。あるいは、伝熱管10として、チューブに金属等により羽(フィン)を形成したフィンチューブ式の伝熱管を使用してもよい。
【0038】
伝熱管10に用いられるチューブの素材には、炭素鋼を用いて成形された鋼管、耐食性に優れたステンレスやチタン、熱伝導性の高いアルミニウムや銅等を使用することが好ましい。伝熱管10に用いられるチューブの形状は、例えば、直径19mm、肉厚が1.2~2.0mm程度とすることができる。
【0039】
上述のとおり、本実施形態の熱交換器1では、ケーシング20の下端部に開口が設けられ、伝熱管10の下方のケーシング20の内面が開口に向かうように傾斜する傾斜面23とされている。傾斜面23は、伝熱管10の下方のケーシング20の内面を、例えば、逆四角錐形または逆円錐形(ろうと状)にすることにより設けられる。これにより、伝熱管10の内部の伝熱媒体Mと熱交換を行うガスGに含まれる水分が凝集して水滴が生成すると、ケーシング20内で落下し、傾斜面23上を流れ下り、ケーシング20の下端部に接続された排出管24の出口からケーシング20の外に排出される。また、ガスGに含まれるダストが伝熱管10の表面やケーシング20の内面に付着すると、ガスGに含まれる水分が凝集して生成した水滴により洗い流され、水滴とともに傾斜面23上を流れ下り、排出管24の出口からケーシング20の外に排出される。このようにして、熱交換器1のケーシング20内部に水分やダストが堆積して湿潤環境を形成することがなく、水分やダストにより生じるケーシング20の腐食を防止できる。
【0040】
また、ケーシング20の下端部に接続される排出管24は、ケーシング20の下方に向かうように開放されていることが好ましい。このようにすると、傾斜面23を流下する水滴やダストを、排出管24からケーシング20の外に円滑に排出できる。
【0041】
また、
図1(a)および
図1(b)に示すように、熱交換器1を正面側からみた断面における傾斜面23の傾斜角αと、熱交換器1を側面側からみた断面における傾斜面23の傾斜角βとは、互いに異なっていてもよい。例えば、ケーシング20の平面形状等に応じて、伝熱管10の下方のケーシング20に設けられる傾斜面23を長方錐形や楕円錐形等に形成してもよい。
【0042】
傾斜面23は、ケーシング20の下端部の開口に向かう傾斜角α、βが、30~70°となるように形成されていることが好ましい。傾斜角を30°以上とすることにより、熱交換器1のケーシング20内部に水分やダストが堆積して湿潤環境を形成することを、一層確実に防止できる。また、傾斜角を70°以下とすることにより、傾斜面23の高さが大きくなりすぎることがなく、熱交換器1が大型化して伝熱管10による熱交換効率が低下するのを抑制できる。
【0043】
上述のとおり、本実施形態の熱交換器1では、ドレンポット型の水封構造により、ケーシング20の下端部に設けられた開口が水封されている。ドレンポット型の水封構造は、ケーシング20の下部に設けられた排出管24の出口を封水W中に浸漬することにより構成できる。すなわち、
図2に示すように、ケーシング20の下端部に円管や角管等からなる排出管24が接続され、この排出管24が水封容器30内に延出している。そして、水封容器30に貯留された封水Wにより、排出管24の出口が水封されている。これにより、ケーシング20内部のガスGが、ケーシング20外部の雰囲気から遮断され、ケーシング20の下端部に設けられた排出管24の出口から外部に漏洩することを防止できる。ケーシング20の開口を水封するために水封容器30に貯留される封水Wとしては、例えば水を使用できる。
【0044】
ケーシング20の下端部に接続される排出管24の内部では、水封容器30に貯留された封水Wの水位に応じて封水Wに加わる圧力と、ケーシング20内のガスGの圧力とがバランスするように、排出管24内の封水Wの水位が変化する。例えば、水封容器30に貯留された封水Wの水面が大気圧に開放され、ケーシング20内のガスGの圧力が一定であれば、排出管24内の封水Wの水位も一定に保たれる。よって、ケーシング20内でガスGに含まれる水分が凝集して水滴が生成し、ダストとともに排出管24内に流入すると、封水Wの水位が上昇しないように、排出管24内の封水Wの一部が、排出管24の出口から排出される。この結果、熱交換器1の運転中にケーシング20内で生成する水分は、ダストとともに、ケーシング20の下端部に接続される排出管24から封水W内へと、常時排出され続ける。このようにして、熱交換器1のケーシング20およびその下端部に設けられる排出管24内に水分およびダストが滞留して湿潤環境を形成することがなく、水分やダストにより生じるケーシング20および排出管24の腐食を防止できる。
【0045】
図2に示すように、水封容器30にはドレン管31を設けて、水封容器30内の封水Wの水位を一定に保ち、水位が上昇しすぎないようにすることが好ましい。
【0046】
また、ケーシング20の開口の水封構造を構成する水封容器30および排出管24の素材には、耐食性に優れたステンレスやチタン等を使用することが好ましい。このようにすると、ケーシング20を通過するガスGおよびケーシング20から排出されるダストに含まれる腐食性物質による水封容器30および排出管24の腐食を確実に防止できる。
【0047】
図3に、本発明に係る熱交換器1における、ケーシング20の開口の水封構造の他の例を模式的に示す。ケーシング20の下端部に設けられる開口の水封構造は、必ずしも
図2に示すようなドレンポット型でなくてもよく、例えば、
図3に示すような、Uシール型の水封構造としてもよい。
図3に示すように、Uシール型の水封構造は、ケーシング20の下端部に設けられる排出管25をU字状に形成して排水トラップを設け、この排水トラップ内に滞留する排水を封水Wとして用いることにより構成できる。このようなUシール型の水封構造でも、ドレンポット型の水封構造と同様の効果が得られる。すなわち、熱交換器1のケーシング20およびその下端部に設けられる排出管25内に水分およびダストが滞留して湿潤環境を形成することがなく、水分やダストにより生じるケーシング20および排出管25の腐食を防止できる。また、ケーシング20内部のガスGが、ケーシング20外部の雰囲気から遮断され、ケーシング20の下端部の開口から外部に漏洩することを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1、8 熱交換器
10、80 伝熱管
20、90 ケーシング
21、91 ガス入口
22、92 ガス出口
23 傾斜面
24、25 排出管
30 水封容器
31 ドレン管
G ガス
GP ガス配管
M 伝熱媒体
MP 伝熱媒体配管
W 封水