(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165755
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】化粧仕上塗材
(51)【国際特許分類】
C04B 26/04 20060101AFI20241121BHJP
C04B 18/167 20230101ALI20241121BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20241121BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20241121BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20241121BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241121BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241121BHJP
C08L 1/26 20060101ALI20241121BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241121BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C04B26/04 B
C04B18/167
C04B24/38 D
C04B14/06 Z
C09D5/02
C09D201/00
C08L23/08
C08L1/26
C08K3/34
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082236
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】520003789
【氏名又は名称】タイハクマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 心平
(72)【発明者】
【氏名】湯村 栄治
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AB03X
4J002BB06W
4J002DE137
4J002DJ006
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD097
4J002GL00
4J038BA022
4J038CB051
4J038HA166
4J038MA10
4J038NA01
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】コテ均し作業により下地の元々の色合いを消すとともに下地の凹凸やひび割れ等を隠すことが容易で、コンクリートスラッジのほか洗い砂スラッジを再利用して、コンクリート打ちっぱなしの風合いを再現できる化粧仕上塗材を提供する。
【解決手段】コンクリートスラッジと、洗い砂スラッジと、合成樹脂エマルションペイントと、粒径0.3mm未満の砂とを含む。コンクリートスラッジ及び洗い砂スラッジは、それぞれ全質量の3%以上含まれることが好ましい。合成樹脂エマルションペイントは全質量の5%以上含まれることが好ましい。粒径が0.3mm未満の砂は、全質量の30%以上含まれることが好ましい。さらにシリカゲル粉末を含んでもよい。さらにエチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含んでもよい。さらに酸化チタン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラッジと、洗い砂スラッジと、合成樹脂エマルションペイントと、粒径0.3mm未満の砂とを含むことを特徴とする化粧仕上塗材。
【請求項2】
シリカゲル粉末を含むことを特徴とする請求項1記載の化粧仕上塗材。
【請求項3】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の化粧仕上塗材。
【請求項4】
酸化チタン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことを特徴とする請求項1または2記載の化粧仕上塗材。
【請求項5】
酸化チタン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことを特徴とする請求項3記載の化粧仕上塗材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材の外観をコンクリートまたはモルタル風に見せる為の化粧仕上塗材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化粧仕上塗材として、コンクリートスラッジと合成樹脂エマルションペイントと水とを含む構成から成り、コンクリートスラッジを再利用して、コンクリート打ちっ放しの風合いを再現でき、滑りにくく、ひび割れ、浮き、剥離を発生しにくく、薄くても強度が大きく、コンクリート特有の重量感を出すことができるコンクリート化粧剤が本発明者らにより開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のコンクリート化粧剤では、仕上がり厚さが0.1mm程度の薄さのため、下地の凹凸やひび割れ等を隠すことは出来ず、また、下地の元々の色合いを完全に消すには3回以上塗る必要があり、施工時間がかかるという課題があった。
ところで、コンクリートスラッジと同様に利用されていない廃棄物として、洗い砂プラントから排出される洗い砂スラッジがある。洗い砂スラッジは現時点で有効な活用法が無く、ほぼすべてが廃棄されているのが現状である。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、コテ均し作業により下地の元々の色合いを消すとともに下地の凹凸やひび割れ等を隠すことが容易で、コンクリートスラッジのほか洗い砂スラッジを再利用して、コンクリート打ちっぱなしの風合いを再現できる化粧仕上塗材を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る化粧仕上塗材は、コンクリートスラッジと、洗い砂スラッジと、合成樹脂エマルションペイントと、粒径0.3mm未満の砂とを含むことを特徴とする。
前記コンクリートスラッジ及び洗い砂スラッジは、それぞれ全質量の3%以上含まれることが好ましい。水分は、適宜、調整して用いられる。
前記合成樹脂エマルションペイントは全質量の5%以上含まれることが好ましい。
前記粒径が0.3mm未満の砂は、全質量の30%以上含まれることが好ましい。
本発明に係る化粧仕上塗材は、シリカゲル粉末を含んでもよい。
また、本発明に係る化粧仕上塗材は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を含んでもよい。
また、本発明に係る化粧仕上塗材は、酸化チタン及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含んでもよい。
シリカゲル粉末、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、酸化チタン、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、それぞれ全質量の0.1%~5.0%含まれることが好ましい。
【0007】
コンクリートスラッジは、コンクリートスラッジ水からなる事が好ましい。コンクリートスラッジ水とは、生コンクリートを扱う工場にて清掃時に発生する回収水であり、細骨材、粗骨材を取り除いたものを意味する。コンクリートスラッジ水は、セメント水和物を多量に含み、カリウムイオンやカルシウムイオン等も豊富に含む。一般的にコンクリートやモルタルは、乾燥により体積が減少する傾向がある。主にセメントと水が水和したセメント水和物には、乾燥により収縮が起こる。コンクリートスラッジを入れる事により、コンクリートの風合いが再現される。
【0008】
洗い砂スラッジは、洗い砂スラッジ水を脱水処理したものからなる事が望ましい。洗い砂スラッジ水とは、砂の洗浄時に発生する粘土やシルト等を多く含んだ水を意味する。粘土は、陶器や土壁などに使用されるように、内部の水分が無くなるにつれて体積減少を起こし硬くなる。
火山が多い日本の洗い砂スラッジには、モンモリロナイト等のイオン交換性や吸水性が高いスメクタイトのグループに属する粘土を含むことが多いが、掘削されるまでの長い年月の間に雨の影響でモンモリロナイト等の内部はイオンが少ない状態となっている事が多い。よって、カルシウムイオンを多く含むコンクリートスラッジと混ぜ合わせる事により、洗い砂スラッジはコンクリートスラッジとイオン交換を開始し、非常に強く混ざり合う。
【0009】
粒径は洗い砂スラッジよりコンクリートスラッジの方が大きく、コンクリートスラッジに洗い砂スラッジがまとわりつくような形態になる。これにより洗い砂スラッジ内部にもカルシウムイオンが多く存在する状態となる。このスラッジにより、本発明に係る化粧仕上塗材は、乾燥前はホイップクリームのような適度な粘性を持った状態となるので、塗料のように施工が簡単である。
また、これら2種類のスラッジが乾燥することにより、体積減少が強く発生する。また、カルシウムイオンが空気中の二酸化炭素と反応する事により炭酸カルシウムが生成され、緻密化が促進される事により、漆喰と同じような付着力を発生させ、また、継続的な強度発現が可能になる。また、モルタルと同じく主材を砂とすることにより、より仕上がりの風合いはモルタルに近くなり、本発明に係る化粧仕上塗材を塗布した建築資材は防火性能の向上も期待できる。
【0010】
粒径が0.3mm未満の砂は、砂を乾燥後にふるい分けを行ったものが好ましい。0.3mm以下の粒径のみを使用する事により、コテで塗る時に一定の厚さで尚且つ薄塗りが可能になる。一般的に液状化現象とはこの水分を含みやすい砂が多い地盤で起こりやすい。水分を含んだ砂は振動を与えると水が浮き出し、砂はお互いに密着するような性質を持つ。この性質を利用することにより、コテ塗り作業中に化粧仕上塗材の粘性が大きくなっても、振動を与える事により砂が持つ表面水が砂から分離する為、実質的に加水したような状態になり粘性を一時的に低下させることが可能になる。これにより、乾燥するまでの時間内ならば、何度でもコテ均しが可能になる。
コテ均し作業により下地の元々の色合いを消すとともに下地の凹凸やひび割れ等を隠すことが容易である。本発明に係る化粧仕上塗材により、コンクリート打ちっぱなしの風合いを再現できる。
【0011】
合成樹脂エマルションペイントは、白色であることが好ましい。これを混ぜる事により、製品の色合いを一定にさせることが可能になる。
シリカゲル粉末は、シリカスケールやシリカゲルを粉砕したものからなる事が好ましい。シリカゲルはコンクリートを内部から破壊するほどの膨張力を持ち、この反応を一般的にコンクリートのアルカリシリカ反応という。シリカゲル粉末は、化粧仕上塗材内部では飽水状態であり体積は膨張している。これが乾燥することにより収縮力が発生し、化粧仕上塗材を緻密化させることが可能になる。また、シリカゲルにより、コンクリートスラッジ及び洗い砂スラッジの乾燥収縮量を安定化させることが可能になる。
【0012】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、スラッジの針状結晶を包み込み、圧縮・密着させる効果を有する。すなわち、コンクリートの硬化は素材の中にて水和反応により針状結晶が成長して行われるのに対し、本発明に係る化粧仕上塗材では、最初から、スラッジに含まれる針状結晶とそれを取り巻く物質が存在し、合成樹脂エマルションペイントがそれらをつなぎ合わせ、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂が乾燥収縮して全体を圧縮させることにより、コンクリートの硬化と同様の強度と耐久性を実現する。
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、圧力がかかるコンクリート製土間の1層目や、下地がつるつるした感触のコンクリート面を化粧する場合に用いられることが好ましい。
【0013】
酸化チタンは、白色であることが好ましい。これを混ぜる事により、製品の白色の強さを変更させる事が可能になる。
カルボキシメチルセルロースナトリウムを混ぜる事により、粘性の度合いを変更させる事が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コテ均し作業により下地の元々の色合いを消すとともに下地の凹凸やひび割れ等を隠すことが容易で、コンクリートスラッジのほか洗い砂スラッジを再利用して、コンクリート打ちっぱなしの風合いを再現できる化粧仕上塗材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態の化粧仕上塗材は、コンクリートスラッジと、洗い砂スラッジと、合成樹脂エマルションペイントと、粒径が0.3mm未満の砂とを含む。コンクリートスラッジ及び洗い砂スラッジは、それぞれ全質量の3%以上含まれることが好ましい。水分は、適宜、調整して用いられる。合成樹脂エマルションペイントは全質量の5%以上含まれることが好ましい。粒径が0.3mm未満の砂は、30%以上含まれることが好ましい。化粧仕上塗材は、シリカゲル粉末と、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂と、酸化チタンと、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含んでも良い。シリカゲル粉末、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、酸化チタン、カルボキシメチルセルロースナトリウムはそれぞれ全質量の0.1%~5.0%含まれることが好ましい。
【0016】
コンクリートスラッジにはセメント水和物が大量に含まれている。コンクリートスラッジは、コンクリートスラッジ水からなる事が好ましい。生コンクリートを扱うプラントから排出されるコンクリートスラッジ水は、セメントと水が混ざってから時間が経っていないセメント水和物が主になる為、セメントの水和反応が安定するまで一定の期間、沈殿・硬化が起こらないように管理する必要がある。安定後はコンクリートスラッジ水より余分な水分を取り除いてコンクリートスラッジとして使用する。セメント水和物はコンクリートやモルタルの一番表面から内部にまで存在し、コンクリートの風合いを生み出す主原因であるため、これを使用する事によりコンクリートの風合いの再現が可能になる。
【0017】
洗い砂スラッジは脱水処理を行ってから廃棄処分される。脱水時に使用される薬剤は高分子凝集剤が主流となっており、水処理施設等で一般的に使用されている。脱水効果を高める為に、1次薬として消石灰、2次薬として高分子凝集剤を使用する例もあり、消石灰と洗い砂スラッジの相性性は洗い砂プラントにおいて実証されている。なお、コンクリートスラッジには消石灰の主成分である水酸化カルシウムを豊富に含む。
【0018】
洗い砂プラントにおいて、脱水処理は担当技術者の経験が非常に重要であり、水分とスラッジの割合やスラッジの性状を正確に把握した上で添加する薬剤の量を決める必要がある。この判断を誤ると脱水機の故障または脱水失敗となり洗い砂の生産は停止してしまう。よって、問題無く脱水処理された洗い砂スラッジに含まれる薬剤の量は、ある一定の範囲となり安定している。洗い砂スラッジに適した量の高分子凝集剤が含まれる洗い砂スラッジは、コンクリートスラッジと均一に混ざり合い、乾燥後は均一に体積減少が発生する為、化粧仕上塗材の乾燥収縮ひび割れを防ぐことが可能になる。
【0019】
粒径が0.3mm未満の砂は、砂を焼いて乾燥後に振るい分け選別を行ったものが好ましい。一般的に生コンクリートに使用される砂、こと細骨材は、10mmのコンクリート用ふるいを全通し、5mmの網を85%通過するものを指す。粒径を判別する網は、他には2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、0.15mmなどがあり、一般的にコンクリートに使用される細骨材で良いものとは、色々な粒径のものが混ざっているものであり、それぞれの割合はJIS A 5308レディーミクストコンクリートで決められている。その為、現在多くのお店で販売されている砂はその規格に適合するように製造されているが、あくまでそれはコンクリートを製造する場合の砂であり、モルタルに適した砂とは言えない。粒径が大きめの砂、つまり、5.0mm、2.5mm、1.2mmサイズを多く含んだ砂を使用したモルタルは、その粒の大きさゆえ薄塗り施工が難しいという問題があり、厚く塗らなければならないほど平滑に仕上げるのは難しくなる。0.3mm未満の砂が、モルタルとして使いやすい。粒径が0.3mm未満の砂のみ使用する事により、化粧仕上塗材の薄塗り施工の簡易化が可能になる。
【0020】
合成樹脂エマルションペイントは主にスラッジの着色を目的として使用する。コンクリートスラッジは灰色、洗い砂スラッジは茶色系の色をしている。特に洗い砂スラッジは天然資源の為、その色合いは産地、地層、粘土割合によりある程度の幅がある。洗い砂スラッジの状態によって合成樹脂エマルションペイントの添加量を変える事によって、化粧仕上塗材の色合いを一定にさせることが可能になる。
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、主に化粧仕上塗材の分離抵抗性を安定させる目的で使用し、化粧仕上塗材が容器内にて分離しないようにある程度気体を巻き込んだ状態を保持する為に補助的に使用する。
酸化チタンは、合成樹脂エマルションペイントにて色合いを安定させるために補助的に使用する。
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、化粧仕上塗材の粘性を安定させるために補助的に使用する。
【0021】
<塗布方法>
本発明の実施の形態の化粧仕上塗材の塗布方法としては、左官コテ、ローラー、刷毛、ゴムベラ、スポンジ、手塗り等による方法があげられる。化粧仕上塗材の水分によって下地よりアクが出てくる可能性がある場合は、事前に下地にアク止め等の処置をすることが望ましい。塗り回数は1回が基本となるが、耐久性向上を期待する場合は、塗り回数を増やしても良い。乾燥時間は、夏場は48時間、冬場は72時間以上取る事が望ましい。施工後に化粧仕上塗材の強度が安定するのは2週間以上経過してからになる為、施工面の清掃、水拭き等は施工から2週間以上経ってからが好ましい。
【0022】
<化粧仕上塗材塗布後の効果>
本発明の実施の形態の化粧仕上塗材の塗布を行った箇所は、自然なコンクリート又はモルタルの風合い、コンクリート打ちっぱなしの風合いを再現できる。これは化粧仕上塗材の主原料が砂であり、また、コンクリートスラッジが含まれていることによる。砂がコテで引っ張られた跡は、左官職人がモルタルを左官仕上げした時に出現する特徴ある模様である。これが化粧仕上塗材により再現されることにより、モルタルの質感をより正確に再現できるようになった。コテ均し作業により下地の元々の色合いを消すとともに下地の凹凸やひび割れ等を隠すことが容易である。
【0023】
現在存在しているコンクリート又はモルタル風化粧仕上塗材は多種にわたるが、モルタルの原料は、セメント、砂、水を混ぜ合わせたもの、という定義に当てはまるものは少ない。
本発明の実施の形態の化粧仕上塗材は、セメント水和物、砂、水分であり、モルタル内に含まれる物質をすべて含んでおりながら、1材タイプを可能とした化粧仕上塗材となる。化粧仕上塗材は砂が主原料となる為、木材等の燃焼する可能性があるものに塗布した場合、着火までの時間を遅らせる効果が期待できる。
【実施例0024】
以下の配合で化粧仕上塗材を製造した。
(配合)
コンクリートスラッジ 0.05 kg
洗い砂スラッジ 0.05 kg
粒径が0.3mm未満の砂 0.60kg
白色系合成樹脂エマルションペイント 0.20kg
希釈水 0.10kg
(製造方法)
コンクリートスラッジには、生コン工場から排出され、コンクリートスラッジ水槽に沈殿したコンクリートスラッジ水を使用した。洗い砂スラッジには、洗い砂工場より排出され、脱水処理が行われたものを使用した。合成樹脂エマルションペイントは、市販の水性白色タイプを使用した。粒径が0.3mm未満の砂は、焼き砂工場にて生コンクリート用細骨材を焼いて乾燥後に0.3mm網にて振るい分け選別を行い、網を通過したものすべてを使用した。希釈水は、コンクリートスラッジ水の上澄水を使用した。
上記材料をすべて混合し、化粧仕上塗材1kgを製造した。製造した化粧仕上塗材をコンクリート型枠用合板(コンパネ)に塗布した。その結果、モルタル左官塗りの風合いが再現された。
【0025】
<試験1>
実施例1の効果を確認するため、他の化粧仕上塗材との比較試験を行った。
以下の配合で比較例の化粧仕上塗材(比較例1)を製造した。
(配合)
コンクリートスラッジ 0.05kg
水性ペンキ 0.25kg
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂 0.20kg
シリカゲル 0.002kg
希釈水 0.50kg
実施例1の化粧仕上塗材と比較例1の化粧仕上塗材をコンクリート型枠用合板(コンパネ)に塗布し、仕上りを比較した。
【0026】
その結果、実施例1の化粧仕上塗材は、0.3mm未満の砂を含有している為、仕上がり厚さは最低でも0.3mmは確保できた。それにより、下地の比較的小さめの凹凸は1回の施工で平らに仕上げる事が可能であった。また、仕上がり厚さが増えたため、下地の元々の色合いを1回で消すことが可能になった。
これに対し、比較例1の化粧仕上塗材は、粘性が低い液体であり、コテ施工は不可能であったため、主に施工はローラー、刷毛に限られていた。また、仕上がり厚さは0.1mm程度の薄さのため、下地の凹凸やひび割れ等を隠すことは出来ず、コンクリート風の色合いを出す事しかできなかった。下地の元々の色合いを完全に消すには3回程度以上塗る必要があり、施工に時間がかかった。
【0027】
<試験2>
実施例1の効果を確認するため、一般的なモルタルとの比較試験を行った。
以下の配合で比較例の1:3モルタル(比較例2)を製造した。
(配合)
ポルトランドセメント 1.0kg
砂 3.0kg
水 0.5kg
実施例1の化粧仕上塗材と比較例2のモルタルをコンクリート型枠用合板(コンパネ)に塗布し、仕上りを比較した。
【0028】
その結果、実施例1の化粧仕上塗材は、洗い砂スラッジを含むことによりホイップクリーム状になる為、乾燥するまで適度な粘性を持ち続け、薄く伸ばして塗る事が可能なので、単位面積に対する使用量を減少させることができた。また、適度な粘着性を持つスラッジの影響で、モルタルのように塗っている最中に剥がれ落ちることはなかった。また、粘性が低下した場合でも、再度混ぜ合わせる事により粘性は復活可能であった。モルタルは水和反応により硬化するが、この化粧仕上塗材は水分蒸発により硬化が開始するので、密閉した容器内で保存する事が可能であり、モルタルのような時間的制約を無くすことができた。
【0029】
これに対し、比較例2のモルタルは、砂に生コンクリートを製造する時に使用される細骨材を使用している為、最大粒径が5mmほどの砂を含んでおり、1回あたりの塗り厚さは5mmより小さくすることは出来ず、5mmより薄く伸ばして塗る事は不可能な為、施工に必要なモルタル量が多かった。また、厚く塗るほど、塗っている最中に剥がれ落ちやすくなった。
【0030】
また、モルタルは粘性を高くして下地にくっつきやすいような配合で作ると、伸ばして塗る事が不可能であった。逆に粘性を低くすると、表面を平らに仕上げるのが非常に難しくなった。粘性が高くなりすぎた場合に水を加えると、水セメント比が変わる為、強度が低下する心配があり、ひび割れも発生しやすくなった。適度な粘性があり、ひび割れが起こらないモルタルを作るには、砂とセメントと水量の関係を熟知する必要がある。また、セメントは水と混ぜると水和反応が進行し続ける為、1時間程度で全作業を終わらせる必要があり、一度作ったモルタルは保存する事が出来なかった。
【0031】
(結果)
(1)厚さ:実施例1 0.3mm程度(薄塗りが可能。)
比較例2 5mm以上
(2)使用量:実施例1 少ない
比較例2 多い
(3)粘性:実施例1 安定
比較例2 不安定(モルタルの粘性は砂の性状と水量に依存する。)
(4)粘性回復: 実施例1 混ぜるだけ
比較例2 加水が必要(モルタルに水を余分に足すと、ひび割れ確率が上がる。)
(5)保存性:実施例1 可能
比較例2 不可(モルタルの硬化は不可逆的。時間内に使い切る必要がある。)