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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165761
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H05K9/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082243
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】難波 明博
(72)【発明者】
【氏名】露木 康博
(72)【発明者】
【氏名】井出 英一
(72)【発明者】
【氏名】河合 義夫
(72)【発明者】
【氏名】福沢 尭之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄亮
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321BB53
5E321CC12
5E321GG05
5E321GH10
(57)【要約】
【課題】導電性接着剤を用いた電磁シールド構造を有する電子制御装置において、回路基板を小型化して電子制御装置全体を小型化する。
【解決手段】回路基板401と、導電性筐体101と、導電性カバー102と、を備えた電子制御装置であって、前記回路基板401は、前記導電性筐体101と前記導電性カバー102との間に配置され、前記回路基板401の表面には、電子部品430及びグランド配線402が配置され、前記グランド配線402と前記導電性筐体101又は前記導電性カバー102との間には、導電部材301が配置され、前記導電部材301と前記導電性筐体101又は前記導電性カバー102との間には、導電性接着剤201が挟み込まれ、前記導電部材301と前記グランド配線402とは、複数の位置で接している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
導電性筐体と、
導電性カバーと、を備え、
前記回路基板は、前記導電性筐体と前記導電性カバーとの間に配置され、
前記回路基板の表面には、電子部品及びグランド配線が配置され、
前記グランド配線と前記導電性筐体又は前記導電性カバーとの間には、導電部材が配置され、
前記導電部材と前記導電性筐体又は前記導電性カバーとの間には、導電性接着剤が挟み込まれ、
前記導電部材と前記グランド配線とは、複数の位置で接している、電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記グランド配線は、分割して配置され、
隣り合う前記グランド配線の間には、表層信号配線が配置されている、電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記導電部材は、前記導電性接着剤よりも剛性が高い、電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記導電性接着剤は、前記導電部材により圧縮されている、電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記導電部材と前記導電性接着剤とが接する面は、少なくとも一つの前記電子部品の高さより高い、電子制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記導電性筐体は、開口部を有し、
前記電子部品と前記開口部との間には、前記グランド配線、前記導電部材及び前記導電性接着剤が配置されている、電子制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記グランド配線、前記導電部材及び前記導電性接着剤は、前記電子部品の側方の少なくとも一部を囲むように配置されている、電子制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載された電子制御装置であって、
前記グランド配線、前記導電部材及び前記導電性接着剤は、前記電子部品の側方のすべてをシールド可能に囲むように配置されている、電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられている電子制御装置では、装置の高性能化のために回路基板に実装されるCPUなどの演算回路の処理が高速化しており、これらの演算回路(電子部品)の発熱量も増加している。演算処理の高速化に伴い、回路基板に配置された演算回路では、高速伝送通信が行われている。高速伝送通信が行われる信号配線では、反射などの信号の品質低下を抑えるために、信号配線の特性インピーダンス制御がより重要になっている。
【0003】
さらに、演算処理の高速化に伴い、回路基板から放射される電磁ノイズの増加も懸念されている。電磁ノイズの低減には、電磁ノイズを遮蔽するための電磁シールド構造を用いることが通例である。電磁シールド構造の形成には、導電性接着剤を用いる方法がある。
【0004】
信号配線の特性インピーダンス制御としては、通常、特性インピーダンスが50Ωとなるように、信号配線の幅を調整することが行われる。信号配線を設置する基板内の配線層を変える場合には、スルーホールが用いられるが、信号がスルーホールを通過する際には、信号波形の乱れが生じる。そのため、高速伝送通信用の信号配線では、信号配線の特性インピーダンス制御だけでなく、スルーホールの数も減らすように信号配線のレイアウトを調整している。
【0005】
電磁シールド構造は、回路基板に配置した電子部品を取り囲むような配置、筐体に形成された開口を塞ぐような配置等がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、電子部品の熱対策と電磁波対策とを行うため、電子部品6の周囲及び上方は、シールドフレーム3b、導電性接着部材4及び金属の放熱部品2により、電磁波が通過できないように構成され、電子部品6の下方は、配線基板1に設けられた金属層であるグランド層により電磁波が遮断されている、実装基板構造が開示されている。
【0007】
特許文献2には、ディスペンサによりシリンジ3内の導電性接着剤4を筐体1又はプリント基板2の上に付けられたアースパターン6に沿って自動的に塗布し、その後、導電性接着剤4を介してプリント基板2を筐体1の開放側でそのリブに密着させて固定し、シールドケース状に構成する、シールド方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、導電性の筺体と、筺体内にある回路基板と、回路基板と電気的に接続され、筺体の外部の機器と接続可能な外部接続部と、筐体の内側の面と回路基板の実装面の間に配置される導電性の二重化部材と、を備え、二重化部材には、二重化部材と背の高い電子部品との接触を回避する切込み部が形成され、さらに、外部接続部を筺体と回路基板との間で仕切る仕切り部を形成する、電子制御装置が開示されている。また、特許文献3には、二重化部材は、EMIガスケット(電磁波シールド・ガスケット)を介して回路基板の基板内グラウンドパターンと接続される構造が開示されている。
【0009】
特許文献4には、回路基板2と導電部材3と金属筐体4とを備える電子制御装置1であって、導電部材3は、回路基板2に発生する電磁放射を金属筐体4に逃がすために回路基板2に搭載されている電気伝導率の高い物質であり、回路基板2の回路グランド部と電気的に接続されているものが開示されている。また、特許文献4には、導電部材3の例として、回路基板2上に半田付け等で実装できるチップ抵抗、セラミックコンデンサ等、シリコーン接着剤に導電フィラー(銀フィラー、銅フィラーまたは金属メッキ処理したグラファイトフィラー等)を含有したものが開示されている。さらに、特許文献4には、導電部材3は、外部から作用する圧縮力の大小によって接触電気抵抗が変化し得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6905016号公報
【特許文献2】特開平7-221482号公報
【特許文献3】特開2021-86985号公報
【特許文献4】特開2022-178791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
シールドのために用いる導電性部材と、回路基板の表面のグランド配線とを接続する場合、装置を組み立てる際に導電性部材の位置ずれが発生したとしても、導電性部材とグランド配線とが確実に接触するように、グランド配線の面積を、導電性部材がグランド配線と接触する面積よりも大きくする必要がある。
【0012】
また、グランド配線を配置している部分には、表層に信号配線を配置できない。そのため、導電性部材を横切って信号配線を配置する場合には、信号配線を回路基板の内層に設置せざるを得ない。この場合には、表層と内層とをスルーホールを用いて接続する。しかしながら、スルーホールは、追加のインピーダンスを生じさせるため、高速信号波形に乱れが生じ、高速信号通信の品質が低下する。
【0013】
特許文献1乃至4のいずれにも、導電性部材の位置ずれ及びスルーホールによるインピーダンスの問題を解決する手段は記載されていない。
【0014】
本開示の目的は、導電性接着剤を用いた電磁シールド構造を有する電子制御装置において、回路基板を小型化して電子制御装置全体を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の電子制御装置は、回路基板と、導電性筐体と、導電性カバーと、を備え、回路基板は、導電性筐体と導電性カバーとの間に配置され、回路基板の表面には、電子部品及びグランド配線が配置され、グランド配線と導電性筐体又は導電性カバーとの間には、導電部材が配置され、導電部材と導電性筐体又は導電性カバーとの間には、導電性接着剤が挟み込まれ、導電部材とグランド配線とは、複数の位置で接している。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、導電性接着剤を用いた電磁シールド構造を有する電子制御装置において、回路基板を小型化して電子制御装置全体を小型化することができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の電子制御装置の内部を示す平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】従来の電子制御装置を示す部分断面図である。
図4】実施例1の電子制御装置を示す部分断面図である。
図5】実施例1の電子制御装置において導電性接着剤の位置がずれた場合について説明するための部分断面図である。
図6】実施例2の電子制御装置を示す上面図である。
図7】従来の電子制御装置を示す上面図である。
図8】実施例2の応用例を示す上面図である。
図9図8のB-B断面図である。
図10】変形例の電子制御装置を示す上面図である。
図11図10のC-C断面図である。
図12】変形例2の電子制御装置を示す上面図である。
図13図12のD-D断面図である。
図14】変形例3の電子制御装置を示す断面図である。
図15】変形例4の電子制御装置を示す断面図である。
図16】変形例5の電子制御装置を示す断面図である。
図17】変形例6の電子制御装置を示す断面図である。
図18】変形例7の電子制御装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)に関する。
【0020】
まず、従来の電子制御装置について、図1~3を用いて説明する。
【0021】
図1は、従来の電子制御装置の内部を示す平面図である。
【0022】
本図において、電子制御装置は、導電性筐体101あるいは導電性カバー102と、回路基板401と、回路基板401の表面に設置したグランド配線402と、を備えている。回路基板401には、複数の電子部品430が配置されている。電子部品430には、複数の表層信号配線403及び複数の部品パッド405が接続されている。表層信号配線403は、スルーホール406を介して内層信号配線404に接続されている。グランド配線402には、導電性接着剤201が付設されている。
【0023】
図2は、図1のA-A断面図である。
【0024】
図2に示すように、導電性接着剤201は、導電性筐体101あるいは導電性カバー102とグランド配線402との間に挟み込まれている。これにより、導電性筐体101あるいは導電性カバー102とグランド配線402とは、電気的に接続されている。表層信号配線403及び部品パッド405は、回路基板401と電子部品430との間に挟み込まれている。内層信号配線404は、グランド配線402の下方に配置されている。スルーホール406は、鉛直方向に設けられ、表層信号配線403と内層信号配線404とを接続している。
【0025】
複数の電子部品430の間に導電性接着剤201が設けられたグランド配線402が配置されている場合、回路基板401の内部に内層信号配線404を設けて、信号線を迂回させる必要がある。このため、上述のとおり、表層信号配線403と内層信号配線404とを接続するためにスルーホール406を設けている。スルーホール406は、追加のインピーダンスを発生させるため、この部分で信号波形の反射が発生し、信号品質が低下する。
【0026】
図3は、従来の電子制御装置を示す部分断面図である。
【0027】
本図においては、導電性カバー102と回路基板401との間にグランド配線402及び部品パッド405が配置されている。グランド配線402と導電性カバー102との間には、導電性接着剤201が挟み込まれている。また、部品パッド405の上面には、電子部品430が配置されている。グランド配線402と部品パッド405との隙間の寸法は、d1である。導電性接着剤201の幅は、w1である。
【0028】
導電性接着剤201について破線で表したものは、実線で表した導電性接着剤201の設計図面上の所定の位置から位置ずれm1が生じた状態である。
【0029】
導電性接着剤201の塗布量のばらつきによる導電性接着剤201の幅w1のばらつきに対応できるように、グランド配線402の幅は十分広くする必要がある。さらに、導電性接着剤201と電子部品430とが接触しないように、部品パッド405とグランド配線402との間の距離d1も十分に大きくする必要がある。
【0030】
以下、本開示に係る電子制御装置の実施例について、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通の部材には、同一の符号を付している。
【実施例0031】
図4は、実施例1の電子制御装置を示す部分断面図である。
【0032】
本図においては、回路基板401の表層(上面)には、分割されたグランド配線402が複数配置されている。それぞれのグランド配線402の上面には、導電部材301が配置されている。導電部材301と導電性筐体101あるいは導電性カバー102との間には、導電性接着剤201が挟み込まれている。分割して配置されたグランド配線402の間に設けられた隙間には、表層信号配線403が配置されている。換言すると、導電部材301とグランド配線402とは、複数の位置で接している。
【0033】
このような構成により、表層信号配線403が露出していても表層信号配線403の上方に導電性接着剤201を配置することができ、信号配線を回路基板401の内層に配置する必要がなくなる。これにより、信号配線を接続する際にスルーホールを用いる必要がなくなり、回路基板401の寸法を小さくすることができ、かつ、伝送される信号の品質低下を防ぐことが可能となる。
【0034】
導電部材301は、導電性接着剤201よりも剛性が高い材料(ヤング率が高い材料)で構成されている。例えば、装置を組み立てる際に、導電性筐体101あるいは導電性カバー102に導電性接着剤201を塗布し、グランド配線402及び導電部材301を取り付けた回路基板401を合わせて組み付けると、導電部材301が導電性接着剤201に押し付けられ、導電性接着剤201の圧縮部202が生じる。これにより、導電性接着剤201の厚さのばらつき、回路基板401の傾き、導電部材301の厚さのばらつきや傾き等を吸収することが可能である。
【0035】
図5は、本実施例の電子制御装置において導電性接着剤201の位置がずれた場合について説明するための部分断面図である。
【0036】
本図においては、回路基板401の上面にグランド配線402及び部品パッド405を設け、グランド配線402の上面に導電部材301を設け、部品パッド405の上面に電子部品430を設けている。そして、導電性カバー102と導電部材301との間には、導電性接着剤201が挟み込まれている。導電部材301の上面部は、電子部品430の上面部よりも高くしている。言い換えると、電子部品430の高さは、導電部材301と導電性接着剤201とが接する面より低い。
【0037】
グランド配線402と部品パッド405との間に設けた隙間の寸法は、d1である。
【0038】
このような構成により、破線で示すように導電性接着剤201の位置ずれm1が生じた場合であっても、導電性接着剤201が電子部品430の上面部よりも高い位置にあるため、導電性接着剤201と電子部品430との接触を防止することができる。
【0039】
また、導電部材301は、導電性接着剤201よりも剛性が高いため、導電性接着剤201が導電部材301から力を受けて変形し、導電性接着剤201の幅が大きくなる場合がある。この場合であっても、導電性接着剤201が電子部品430の上面部よりも高い位置にあるため、導電性接着剤201と電子部品430との接触を防止することができる。
【0040】
上記の構成により、電子部品430を導電部材301の近くに配置することができる。
【0041】
導電部材301は、例えば、銅やアルミニウムなどの高い導電性を有する金属で構成することが望ましい。また、導電性を有する電子部品(例えば、チップ抵抗やチップセラミックコンデンサなど)で構成してもよい。導電部材301は、グランド配線402にはんだ付けしてもよい。この際、他の電子部品と一括してリフローはんだ付けをすると、工程を増やすことなく回路基板401上に導電部材301を接続することが可能となる。
【0042】
導電性接着剤201は、シリコーン接着剤に、銀や銅のフィラー又は金属被覆層を設けたグラファイトフィラーなどの導電フィラーを分散した材料を適用することができる。ここで、フィラーの粒径は、50μm~数百μm程度、導電性接着剤201に占めるフィラーの含有率は、50~80質量%程度であることが望ましい。
【0043】
導電性接着剤201は、CIPG(Cured In Place Gasket)で作製してもよい。また、導電性接着剤201を導電性筐体101あるいは導電性カバー102の表面に塗布し、硬化後に導電部材301の上に重ねてもよい。また、シート状や短冊状に成型した導電性接着剤201を、導電部材301と導電性筐体101あるいは導電性カバー102との間に配置することも可能である。
【0044】
なお、グランド配線402及び導電部材301の組を設置する間隔は、電磁ノイズを抑制したい周波数において、電磁ノイズ(電磁波)の波長よりも十分小さくする必要がある。当該間隔は、例えば、電磁ノイズの波長の1/4以下とすることが望ましい。また、導電性接着剤201は、圧縮することでインピーダンスが低下する材料で構成してもよい。導電性接着剤201として、上記のシリコーン接着剤に導電フィラーを分散した材料を用いれば、圧縮された部分では、導電フィラーの密度が高まり、電気抵抗及び容量が小さくなるため、好適であると考えられる。
【0045】
図4においては、隣り合うグランド配線402の間に表層信号配線403を配置しているが、必ずしも表層信号配線403を配置しなくてもよい。表層信号配線403を配置しない場合には、上述した表層に信号配線を配置する利点を享受できないが、図5に示すように、導電性接着剤201に近接して電子部品430を配置しても、導電部材301をグランド配線402と導電性接着剤201との間に配置する構造により、電子部品430が導電性接着剤201と接触することを防止でき、回路基板401を小型化できる。
【実施例0046】
図6は、実施例2の電子制御装置を示す上面図である。
【0047】
本図においては、回路基板401の中央部にCPUなどの半導体部品410が配置されている。半導体部品410の周囲には、複数のグランド配線402が回路基板401の上面に分割して配置されている。それぞれのグランド配線402の上面には、導電部材301が付設されている。隣り合うグランド配線402との間には、隙間が設けられている。その隙間には、表層信号配線403が配置されている。複数の導電部材301の上面には、破線で示す一続きの導電性接着剤201が接触するように配置されている。導電性接着剤201の上面には、図示していない導電性筐体または導電性カバーが接触するように配置されている。
【0048】
ここで、半導体部品410は、電子部品の一種である。
【0049】
半導体部品410は、上方及び下方を図示していない導電性筐体及び導電性カバーで覆い、かつ、側方を導電性接着剤201及び導電部材301で囲むことで、半導体部品410から発生する電磁ノイズをシールドすることができる。また、回路基板401と導電性接着剤201との間には、上記の隙間が設けられているため、半導体部品410は、表層信号配線403を介して外部との電気的な接続が可能である。すなわち、回路基板401の内部を介して電気的な接続をする必要がない。
【0050】
なお、本図に示す構造で必要となる実装幅、すなわち、グランド配線402を含む領域の幅は、Waで表している。
【0051】
本図においては、それぞれのグランド配線402の上面にそれぞれ導電部材301が付設されているが、複数個のグランド配線402の上面に一個の導電部材301を付設してもよい。この場合、隣り合うグランド配線402との間には、隙間が設けられているため、その隙間に表層信号配線403を配置してもよい。
【0052】
図7は、従来の電子制御装置を示す上面図である。
【0053】
本図においても、導電性接着剤201を用いて半導体部品410のシールドを構成している。
【0054】
本図においては、グランド配線402は、回路基板401の上面において半導体部品410を隙間なく囲むように配置されている。グランド配線402の上面には、破線で示す導電性接着剤201が接触している。導電性接着剤201の上面には、図示していない導電性筐体または導電性カバーが接触している。半導体部品410は、表層信号配線403と回路基板401の内部に設けられた内層信号配線404とにより、回路基板401の内部に設けられた半導体部品(図示していない)などに接続されている。
【0055】
グランド配線402に隙間がないため、半導体部品410に接続している表層信号配線403は、グランド配線402の下方に設けられた内層信号配線404及びスルーホール406を介して、グランド配線402の外部に配置された表層信号配線403に接続されている。
【0056】
スルーホール406の端部には、通常、信号配線よりも広い面積を要する配線パッドを必要とする。その結果、複数のスルーホール406を回路基板401の上面に配置する場合には、スルーホール406を設置する位置を互い違いになるように配置せざるを得ず、本図に示すような従来構造では、回路基板401に広いスペースを確保することが必要となる。さらに、スルーホール406のインピーダンスにより信号に反射が生じ、信号品質の低下につながる。
【0057】
なお、本図に示す構造で必要となる実装幅、すなわち、グランド配線402を含む領域の幅は、Wbで表している。
【0058】
まとめると、図6に示す本実施例においては、スルーホールを配置する必要がない等の利点があり、実装幅Waは、図7に示す従来の実装幅Wbに比べて小さくすることができる。すなわち、Wa<Wbである。
【0059】
図8は、本実施例の応用例を示す上面図である。
【0060】
本図においては、一個の回路基板401の上面に二個の半導体部品410が配置されている。二個の半導体部品410の周囲には、複数のグランド配線402が回路基板401の上面に分割して配置されている。それぞれのグランド配線402の上面には、導電部材301が付設されている。隣り合うグランド配線402との間には、隙間が設けられている。その隙間には、図示していない表層信号配線の配置が可能であり、外部と電気的に接続することができる。複数の導電部材301の上面には、破線で示す一続きの導電性接着剤201が接触するように配置されている。導電性接着剤201の上面には、図示していない導電性筐体または導電性カバーが接触するように配置されている。二個の半導体部品410は、表層信号配線403により接続されている。
【0061】
このほか、半導体部品410の周囲には、他の電子部品等が配置されていてもよい。
【0062】
このような構成により、二個の半導体部品410を含む高速回路ブロック全体をシールドすることができる。なお、本明細書においては、高速回路ブロックも「電子部品」と呼ぶことにする。
【0063】
なお、本図においては、回路基板401の上面に二個の半導体部品410を配置した場合を示しているが、本開示の電子制御装置は、回路基板401の上面に三個以上の半導体部品410を配置したものであってもよい。また、回路基板401の上面だけでなく、下面にも複数個の半導体部品410を配置してもよい。
【0064】
図9は、図8のB-B断面図である。
【0065】
図9においては、回路基板401の上面には二個の半導体部品410、回路基板401の下面には一個の半導体部品410’が配置されている。半導体部品410には、表層信号配線403、及び電源配線などの部品パッド405が接続されている。グランド配線402と導電性カバー102との間には、導電性接着剤201及び導電部材301が重ねて挟み込まれている。
【0066】
回路基板401の下面には、半導体部品410’及び電子部品430’が配置されている。半導体部品410’及び電子部品430’には、表層信号配線403’、及び電源配線などの部品パッド405’が接続されている。グランド配線402’と導電性筐体101との間には、導電性接着剤201’及び導電部材301’が重ねて挟み込まれている。
【0067】
上記の構成により、内部空間601、601’は、コンパクトにシールドされている。
【0068】
本図においては、回路基板401の両面に半導体部品410、410’や電子部品430’などを配置しているが、これらの部品の配置は、片面だけでもよく、配置する電子部品の種類も問わない。さらに、上面に配置した半導体部品410と、下面に配置した半導体部品410’とを、スルーホール等を介して接続してもよい。また、導電性接着剤、導電部材、グランド配線、導電性筐体及び導電性カバーで構成される電磁シールドも、回路基板の片面のみに構成してもよい。
【0069】
なお、本実施例においては、導電性接着剤201などを四角形状に配置した例を示しているが、導電性接着剤201などの配置形状は、三角形や多角形など、四角形状以外でもよい。
【0070】
(変形例1)
図10は、変形例1の電子制御装置を示す上面図である。
【0071】
本図においては、回路基板401に設けられた二個の半導体部品410が導電性筐体101の隅部に配置されている。グランド配線402及び導電部材301の複数の組並びに導電性接着剤201が二辺を構成するとともに、導電性筐体101の側壁110が別の二辺を構成するようにして、内部空間602が形成されている。導電性接着剤201は、導電性筐体101の側壁110に接している。
【0072】
これにより、内部空間602の半導体部品410がシールドされている。
【0073】
図11は、図10のC-C断面図である。
【0074】
図11に示すように、二個の半導体部品410は、回路基板401の上面に配置されている。グランド配線402、導電部材301及び導電性接着剤201は、積層され、導電性カバー102に接続されている。一方、回路基板401の下面には、グランド配線402’、導電部材301’及び導電性接着剤201’が重ねて配置されている。導電性接着剤201’は、導電性筐体101‘に接している。これにより、回路基板401の上方及び下方に内部空間602が形成されている。内部空間602は、グランド配線402、402’、導電部材301、301’、導電性接着剤201、201’、導電性筐体101及び導電性カバー102により囲まれてシールドされている。
【0075】
(変形例2)
図12は、変形例2の電子制御装置を示す上面図である。
【0076】
本図においては、グランド配線402及び導電部材301の複数の組並びに導電性接着剤201が直線状に配置され一辺を構成するとともに、導電性筐体101の側壁110が別の三辺を構成している。導電性筐体101の側壁110の一辺には、開口部610が形成され、電子制御装置の外部と信号接続するためのコネクタ420が配置されている。
【0077】
図13は、図12のD-D断面図である。
【0078】
図13に示すように、回路基板401の上面に直線状に配置されたグランド配線402及び導電部材301の複数の組並びに導電性接着剤201は、導電性筐体101の内部を塞ぐように配置されている。グランド配線402及び導電部材301の複数の組並びに導電性接着剤201の奥側には、図示していない半導体部品を配置してもよい。
【0079】
これにより、開口部610から漏洩する電磁ノイズを抑制することができる。
【0080】
(変形例3)
図14は、変形例3の電子制御装置を示す断面図である。
【0081】
本図においては、回路基板401と導電性筐体101との間には、グランド配線402’が配置されている。そして、回路基板401を固定ねじ460で締め付けることにより、グランド配線402’と導電性筐体101との電気的な接続を確保している。
【0082】
(変形例4)
図15は、変形例4の電子制御装置を示す断面図である。
【0083】
本図においては、導電性接着剤201を分割して配置した構造を示している。このように、導電性接着剤201は、必ずしも一体とする必要はなく、複数に分割することが可能である。
【0084】
(変形例5)
図16は、変形例5の電子制御装置を示す断面図である。
【0085】
本図においては、導電性筐体101に形成した突起120と導電性接着剤201’とが接続され、導電性カバー102に形成した突起130と導電性接着剤201とが接続されている。このように、導電性筐体101及び導電性カバー102は、必ずしも内面を平坦にする必要はなく、導電性接着剤201の配置部分を突起させて、導電性接着剤201と導電性筐体101あるいは導電性カバー102とを接触させることも可能である。
【0086】
(変形例6)
図17は、変形例6の電子制御装置を示す断面図である。
【0087】
本図においては、グランド配線402に比べて寸法が大きいグランド配線402’と、導電部材301と比べて寸法が大きい導電部材301’とを組み合わせて用いている。導電部材301’は、グランド配線402’の中央部には接しない構造を有する。
【0088】
このように、寸法が異なる導電部材及びグランド配線を適宜用いてもよい。
【0089】
(変形例7)
図18は、変形例7の電子制御装置を示す断面図である。
【0090】
本図においては、半導体部品410と導電性筐体101との間に放熱部材501(Thermal Interface Material:TIM)を設置している。
【0091】
導電性接着剤201に放熱性を持たせている。
【0092】
回路基板401に設置された半導体部品410から発生する熱は、放熱部材501を経由して放熱経路510のように導電性筐体101に放熱されるとともに、回路基板401に設置されているグランド配線402、導電部材301及び導電性接着剤201を経由して放熱経路520のように導電性筐体101及び導電性カバー102に放熱される。
【0093】
導電性接着剤201として、シリコーン接着剤に、銀や銅のフィラー又は金属被覆層を設けたグラファイトフィラーなどの導電フィラーを分散した材料等を用いた場合には、導電性接着剤201は、導電性だけでなく、伝熱性も高くなっているため、好適である。導電部材301として用いる銅やアルミニウムなどの金属も、高い伝熱性を有するため、好適である。
【0094】
このように、半導体部品410と導電性筐体101との間に放熱部材501を設けることにより、放熱を促進することができる。
【0095】
なお、本開示の内容は、上記した実施例及び変形例に限定されるものではない。例えば、上記した実施例及び変形例の構成の一部を他の構成に置き換えることは可能であり、また、上記した実施例及び変形例の構成を組み合わせた構成であってもよい。また、上記した実施例及び変形例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0096】
また、本開示の電子制御装置に用いる導電性接着剤や導電部材は、必ずしも導電率の高い材料で構成しなくてもよい。例えばコンデンサのように、抑制したい電磁ノイズの周波数において十分にインピーダンスの小さい容量性を有する材料で構成することもできるし、インダクタのような誘導性を有する材料で構成してもよい。もちろん、これらの複合的な特性を有する材料を用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
101:導電性筐体、102:導電性カバー、110:側壁、120、130:突起、201:導電性接着剤、202:圧縮部、210:位置ずれ、301:導電部材、401:回路基板、402:グランド配線、403:表層信号配線、404:内層信号配線、405:部品パッド、406:スルーホール、410:半導体部品、420:コネクタ、430:電子部品、460:固定ねじ、501:放熱部材、510、520:放熱経路、601、602:内部空間、610:開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18