(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165771
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】胸部装着具
(51)【国際特許分類】
A41C 3/00 20060101AFI20241121BHJP
A41C 3/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A41C3/00 A
A41C3/00 B
A41C3/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082255
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】512176288
【氏名又は名称】株式会社メディカサトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 青児
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA11
3B131AB03
3B131AB06
3B131AB07
3B131BA11
3B131BA21
3B131BA41
3B131BA45
3B131BB21
3B131BB34
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、硬質板材による不快感を避けて呼吸を楽にすることができる胸部装着具を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するために、胸部装着具100は、胸郭を囲む胸周に装着される胸部装着具であって、胸のふくらみを覆うための一対のカップ部32を支持するフロント部2と、可とう性を有しフロント部2よりも伸縮性が低い布で形成され、装着時に、胸のふくらみの側縁から中腋窩線M近傍までの領域に当接する程度の伸縮性を有し、フロント部2に貼り付け固定される一対の重畳部材1と、背中側に装着される部分を含むリア部5と、重畳部材1とリア部5との間に設けられ、フロント部2およびリア部5よりも伸縮性が高い一対の伸縮調整部4と、を備える。重畳部材1は、カップ部32の側縁に沿って縦に延在する第1部分11と、第1部分11からカップ部32の下縁に張り出す第2部分12とを有する略L字状を呈する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸郭を囲む胸周に装着される胸部装着具であって、
胸のふくらみを覆うための一対のカップ部を有するフロント部と、
可とう性を有し前記フロント部よりも伸縮性が低い布で形成され、装着時に、胸のふくらみの側縁から中腋窩線近傍までの領域に当接する程度の伸縮性を有し、前記フロント部に貼り付け固定される一対の重畳部材と、
背中側に装着される部分を含むリア部と、
前記重畳部材と前記リア部との間に設けられ、前記フロント部および前記リア部よりも伸縮性が高い一対の伸縮調整部と、
を備え、
前記重畳部材は、前記カップ部の側縁に沿って縦に延在する第1部分と、前記第1部分から前記カップ部の下縁に張り出す第2部分とを有する略L字状を呈する胸部装着具。
【請求項2】
前記重畳部材は、前記フロント部よりも厚い素材で形成される、請求項1に記載の胸部装着具。
【請求項3】
前記フロント部は、外側布部と、前記外側布部の肌側に貼り合わされる内側布部とを含み、
前記内側布部の肌側に前記重畳部材が貼り合わされる、請求項1に記載の胸部装着具。
【請求項4】
前記伸縮調整部は、装着時に前後方向に延在する部分を含み、前記外側布部と一体的に形成される、請求項3に記載の胸部装着具。
【請求項5】
前記重畳部材の縦幅は、前記重畳部材の横幅よりも大きい、請求項1に記載の胸部装着具。
【請求項6】
前記重畳部材は、中腋窩線よりも前側に配置される、請求項1に記載の胸部装着具。
【請求項7】
前記重畳部材および前記伸縮調整部は、胸郭の左右長に対する胸郭の前後長の形状比率において、装着時の形状比率が装着前の形状比率よりも大きくなるように構成される、請求項1に記載の胸部装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部に装着される胸部装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
胸部に装着される装着具が知られている。例えば、特許文献1には、脇下またはその周辺に位置する布に保持されて体側部分の皮膚、肉または脂肪等を押圧し、乳房間隔を狭める方向の補正力を生じさせる硬質板材からなるバスト補正板を備えるバスト補正装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、人の胸郭の周囲に装着される装着具について検討し、以下の認識を得た。特許文献1の装置は、硬質板材の補正板により乳房間隔を狭める方向の補正力を生じさせ、乳房を基部側から全体的に膨らませる補正、および前方に突き出させる補正を行う。つまり、この装置は、胸部の美観を向上させるための体型矯正下着と見受けられる。この装置を装着すると、胸部に硬質部材が押し付けられるので、装着している間、装着者は、硬質部材の違和感と強い圧迫感とを受け続けるため時間経過とともに不快感が増大する。
【0005】
また、この類いの装身具は頻繁に洗濯するものであり、洗濯する際は硬質板材を取り外し、使用時には硬質板材を取り付けることが求められるため、手間が掛かり煩雑である。さらに、硬質板材の取り外し取り付けをすると、硬質板材の装着位置が所定の位置からずれて本来の機能を発揮できないおそれもある。特に、硬質板材の補正板により乳房間隔を狭める方向の補正力を生じさせるので、呼吸への負担が増大して呼吸が苦しくなる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、硬質板材による不快感を避けて呼吸を楽にすることができる胸部装着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の胸部装着具は、胸郭を囲む胸周に装着される胸部装着具であって、胸のふくらみを覆うための一対のカップ部を有するフロント部と、可とう性を有しフロント部よりも伸縮性が低い布で形成され、装着時に、胸のふくらみの側縁から中腋窩線近傍までの領域に当接する程度の伸縮性を有し、フロント部に貼り付け固定される一対の重畳部材と、背中側に装着される部分を含むリア部と、重畳部材とリア部との間に設けられ、フロント部およびリア部よりも伸縮性が高い一対の伸縮調整部と、を備える。重畳部材は、カップ部の側縁に沿って縦に延在する第1部分と、第1部分からカップ部の下縁に張り出す第2部分とを有する略L字状を呈する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬質板材による不快感を避けて呼吸を楽にすることができる胸部装着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の胸部装着具を内側から視た状態を示す図である。
【
図3】
図1の重畳部材および伸縮調整部を示す図である。
【
図5】
図1の胸部装着具の外側布部を示す図である。
【
図6】
図1の胸部装着具の内側布部を示す図である。
【
図7】
図1の胸部装着具の装着前と装着時の胸郭の輪郭を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者は、特許文献1に記載のバスト補正装置(以下、単に「バスト補正装置」という)を装着したとき、装着前よりも呼吸が浅くなる傾向にあることを把握した。即ち、バスト補正装置を胸周に装着すると、硬質板材の補正板により胸のふくらみ(乳房とも称される。)の間隔を狭める方向の補正力(以下、単に「補正力」という)が付与され、胸郭の膨張を妨げる。この場合、胸郭に加わる補正力は呼吸運動の負担になり、苦しいとまでは感じなくても無意識のうちに呼吸が浅くなることが判明した。
【0012】
発明者は、フロント部およびリア部で胸郭を囲む胸部装着具について、可とう性を有しフロント部よりも伸縮性が低い布で形成された重畳部材と、この重畳部材に、フロント部およびリア部よりも伸縮性が高い伸縮調整部を組み合わせることにより、硬質板材による不快感を避けて呼吸が楽になるとの知見を得た。
【0013】
図7を参照して、本発明の機能を説明する。
図7は、胸部装着具の装着前と装着時の胸郭の輪郭を模式的に示す上面視の図である。この図では、装着前の輪郭の輪郭を破線で示し、装着時の輪郭の輪郭を実線で示す。この図では、理解を容易にするため、胸部装着具と胸郭の間に隙間を描いているが、装着時の胸部装着具は胸郭に接触する。装着前、胸郭の断面はやや左右に広い楕円になっており、重畳部材により左右の拡がりを抑えつつ伸縮調整部により前後の拡がりを容易にすることによって、胸郭の周囲長が小さくなりながら前後に拡がり、胸郭が楕円から円に近くなる。この結果、胸郭が円筒状に近くなり肺の体積が大きくなり、また、気道や肺胞の抵抗が小さくなって呼吸が楽になるものと考えられる。
【0014】
以下、実施形態を参照して、重畳部材に伸縮調整部を組み合わせた本発明の胸部装着具について説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定も制限もされない。
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0018】
[実施形態]
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の実施形態に係る胸部装着具100の構成を説明する。
図1は、内側から視た胸部装着具100を示す図である。
図2は、内側から視たフロント部を示す図である。
図3は、内側から視た重畳部材および伸縮調整部を示す図である。
図4は、内側から視たリア部を示す図である。胸部装着具100は、胸郭を取り囲む胸周に装着される。実施形態の胸部装着具100は、男女を問わず胸部に装着して使用可能な装着具である。胸部装着具100は、肌着のように直接体表に装着してもよいし、ブラジャーやTシャツなどの肌着の上に重ねて使用してもよい。
【0019】
以下、直立した身体に胸部装着具100を着用した状態で、身体の身長に対応する方向を上下方向といい、身体の左右に対応する方向を左右方向といい、身体の前後に対応する方向を前後方向といい、身体を囲む周方向を胸周方向ということがある。また、胸部装着具100の身体側に面する方を内側といい、その反対側を外側ということがある。また、装着時に相対的に身体に近い側を肌側ということがある。この方向の表記は胸部装着具100の使用姿勢を制限するものではなく、胸部装着具100は、必要に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0020】
実施形態の胸部装着具100は、胸郭を囲む胸周に装着される胸部装着具であって、フロント部2と、一対の重畳部材1と、一対の伸縮調整部4と、リア部5と、一対の肩紐部34と、ホック部37とを備える。実施形態は、ホック部37がリア部5に設けられるリアホック型であるが、これに限定されない。胸部装着具100は、フロントホック型やホックレス型であってもよい。
【0021】
フロント部2は、胸のふくらみを覆うための一対のカップ部32を有する。カップ部32には軟質のパットが組み込まれてもよい。カップ部32は、内側から視て略円形で中央に近づくに連れて前側に膨らむ膨らみ形状を有してもよいし、平坦であってもよい。フロント部2は、上下長よりも左右長が長い略長方形の帯状本体24と、帯状本体24のカップ部32に対応する部分が上向き凸状に張り出す弧状張出部26を有する。肩紐部34は、弧状張出部26から上向きに延びてリア部5に接続される。フロント部2は、所定の伸縮性を有する布素材で形成できる。
【0022】
重畳部材1は、可とう性(可撓性)を有しフロント部2よりも伸縮性が低い布で形成される。布は、織布であってもよいし不織布であってもよい。伸縮性は、引っ張り荷重に対する弾性変形の比率である伸縮率の程度を相対的に示す指標であり、伸縮率が相対的に小さい場合を伸縮性が低いといい、伸縮率が相対的に大きい場合を伸縮性が高いという。本明細書において、各部材の伸縮性は、当該部材の素材の胸周り方向の伸縮性をいう。例えば、所定の引っ張り荷重を付与したときの伸縮幅を伸縮前の試料幅で除した値を伸縮率としてもよい。重畳部材1は、装着時に、胸のふくらみの側縁から中腋窩線M近傍までの領域に当接する程度の伸縮性を有する。したがって、重畳部材1は、硬質板は含まない。なお、
図1において装着時に中腋窩線Mに対応する直線を符号Mで示す。
【0023】
実施形態では、重畳部材1は、フロント部2に無縫製で貼り付け固定される。重畳部材1は、フロント部2に貼り付けした状態で一部が縫製されてもよい。この構成により、フロント部2の重畳部材1が貼り付けされた領域の伸縮性は、重畳部材1が無い状態よりも低く、重畳部材1単品よりも低い。実施形態の重畳部材1は、フロント部2よりも厚い素材で形成される。重畳部材1の厚みのフロント部2の厚みに対する倍率は、2倍~10倍が好ましく、2倍~4倍がより好ましい。
【0024】
重畳部材1は、カップ部32の側縁に沿って縦に延在する第1部分11と、第1部分11からカップ部32の下縁に張り出す第2部分12とを有する略L字状を呈する。重畳部材1のカップ部32側の内縁14は、カップ部32の外周形状に沿って円弧状を呈する。第1部分11は、フロント部2のうち胸のふくらみのすぐ横の部分の伸縮性を低くし、第2部分12は、フロント部2のうち胸のふくらみのすぐ下の部分の伸縮性を低くする。
【0025】
実施形態では、重畳部材1の縦幅L1は、重畳部材1の横幅L2よりも大きい。縦幅L1の横幅L2に対する倍率は、1.1倍~5倍が好ましく、1.5倍~3倍がより好ましい。重畳部材1の後端は、装着時に中腋窩線Mを越えてもよいが、施形態の重畳部材1は、中腋窩線Mを越えずに中腋窩線Mよりも前側に配置される。
【0026】
リア部5は、背中側に装着される部分を含む帯状の部材である。実施形態のリア部5には、ホック部37が設けられる。リア部5は、ホック部37により左右に連結された状態と、左右に分かれた状態とを有する。リア部5は、所定の伸縮性を有する布素材で形成できる。実施形態のリア部5は、フロント部2と同じ伸縮性を有する素材で形成されている。肩紐部34は、リア部5から上向きに延びてフロント部2に接続される。
【0027】
伸縮調整部4は、重畳部材1とリア部5との間に設けられる帯状の部材である。実施形態では、伸縮調整部4は、フロント部2の後側の端部と、リア部5の前側の端部との間を接続する。伸縮調整部4は、フロント部2およびリア部5よりも伸縮性が高い(伸縮率が相対的に高い)布素材で形成される。実施形態では、伸縮調整部4の縦幅L3は、伸縮調整部4の横幅L4よりも大きく、当該横幅の2倍~4倍が好ましく、この例では2.6倍である。
【0028】
図5、
図6を参照して、実施形態の胸部装着具100の層構造を説明する。実施形態の胸部装着具100は、外層部6と内層部7と重畳部材1とが貼り合わされた層構造を有する。
図5は、胸部装着具100の外層部6を示す図である。
図6は、胸部装着具100の内層部7を示す図である。外層部6は、フロント部2の外側布部21と、伸縮調整部4と、リア部5の外側布部51と、肩紐部34の外側布部35とを含む。内層部7は、フロント部2の内側布部22と、リア部5の内側布部52と、肩紐部34の外側布部36とを含む。換言すると、フロント部2は、外側布部21と、外側布部21の肌側に貼り合わされる内側布部22とを含み、内側布部22の肌側に重畳部材1が貼り合わされる。また、リア部5は、外側布部51と内側布部52とを含む。
【0029】
実施形態の胸部装着具100の特徴を説明する。胸部装着具100は、胸郭を囲む胸周に装着される胸部装着具であって、胸のふくらみを覆うための一対のカップ部32を有するフロント部2と、可とう性を有しフロント部2よりも伸縮性が低い布で形成され、装着時に、胸のふくらみの側縁から中腋窩線M近傍までの領域に当接する程度の伸縮性を有し、フロント部2に貼り付け固定される一対の重畳部材1と、背中側に装着される部分を含むリア部5と、重畳部材1とリア部5との間に設けられ、フロント部2およびリア部5よりも伸縮性が高い一対の伸縮調整部4と、を備える。重畳部材1は、カップ部32の側縁に沿って縦に延在する第1部分11と、第1部分11からカップ部32の下縁に張り出す第2部分12とを有する略L字状を呈する。
【0030】
この構成によれば、伸縮性が低い重畳部材1によって胸のふくらみの周囲を確りサポートして左右の拡がりを抑えつつ、伸縮性が高い伸縮調整部4によって前後への拡がりを容易にすることによって、胸郭が円筒状に近くなる。この結果、肺の体積が大きくなり、気道や肺胞の抵抗が小さくなって呼吸が楽になる。
【0031】
また、胸部装着具100によれば、装着時に硬質部材が胸部に押し付けられないため、硬質部材による違和感や圧迫感を解消できる。また、洗濯時に硬質部材を脱着する手間が不要で取扱が楽になる。さらに、重畳部材1や伸縮調整部4の位置関係が安定しているので、本来の機能を十分に発揮できる。
【0032】
一例として、胸部装着具100では、重畳部材1は、フロント部2よりも厚い素材で形成される。この場合、重畳部材1の伸縮性を低くし易く、所望の伸縮性を容易に実現できる。
【0033】
一例として、胸部装着具100では、フロント部2は、外側布部21と、外側布部21の肌側に貼り合わされる内側布部22とを含み、内側布部22の肌側に重畳部材1が貼り合わされる。この場合、各層を貼り合わせすることにより、胸部装着具100を形成できるので、縫製で連結する場合よりも各部の位置精度を容易に向上でき、連結強度も向上できる。重畳部材1が肌側に積層されるので胸のふくらみへのサポート感を向上できる。
【0034】
一例として、胸部装着具100では、伸縮調整部4は、装着時に前後方向に延在する部分を含み、外側布部21と一体的に形成される。この場合、伸縮調整部4と外側布部21とをシームレスに一体的に形成できるので、連結する手間が少なくなり強度も十分に確保できる。また、伸縮調整部4が前後方向に延在するので、前後方向への伸縮が容易になる。
【0035】
一例として、胸部装着具100では、重畳部材1の縦幅L1は、重畳部材1の横幅L2よりも大きい。この場合、縦幅L1を大きくすることにより、拡がり抑制範囲を縦方向に拡げることができる。
【0036】
一例として、胸部装着具100では、重畳部材1は、中腋窩線Mよりも前側に配置される。この場合、伸縮調整部4が中腋窩線Mを跨ぐように構成できるので、伸縮調整部4の前後方向への伸縮が容易になる。
【0037】
一例として、胸部装着具100では、重畳部材1および伸縮調整部4は、胸郭の左右長に対する胸郭の前後長の形状比率(=前後長/左右長)において、装着時の形状比率が装着前の形状比率よりも大きくなるように構成される。この場合、胸郭が円筒状に近くなるので、気道や肺胞の抵抗が小さくなって呼吸が楽になる。
【0038】
以上、本発明のいくつかの実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0039】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0040】
実施形態の説明では、胸部装着具100の各部材が織布で形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、胸部装着具の各部材は、不織布で形成されてもよいし、エラストマなどの非繊維質の樹脂素材からシート状に形成された布で形成されてもよい。布は、平面に沿って延在する布のピースを、その一端を保持して持ち上げたときに自重で折れ曲がる程度の可撓性を有する。
【0041】
実施形態の説明では、胸部装着具100が独立した装着体である例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、胸部装着具100は身体に装着される衣類やサポータの一部であってもよい。また、胸部装着具100は、Tシャツ、スポーツブラジャー、ハーフトップ、タンクトップ、キャミソールなどの肌着やその他の衣類に組み込まれてもよい。
【0042】
実施形態の説明では、胸部装着具100がいわゆるリアホックタイプである例を示したが、本発明はこれに限られない。胸部装着具100はいわゆるフロントホックタイプであってもよいし、いわゆるホックレスタイプであってもよい。
【0043】
実施形態の説明では、胸部装着具100が肩紐部34を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。肩紐部を有することは必須ではない。
【0044】
実施形態の説明では、左右の重畳部材1が、互いに対称な形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。左右の重畳部材1は、互いに非対称な形状を有していてもよい。
【0045】
これらの変形例は、実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0046】
前述の各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0047】
1 重畳部材、 2 フロント部、 4 伸縮調整部、 5 リア部、 11 第1部分、 12 第2部分、 21 外側布部、 22 内側布部、 32 カップ部、 100 胸部装着具。