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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165775
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ピンタイプ保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20241121BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082265
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室 昂佑
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA38
3J701BA46
3J701DA16
3J701EA01
3J701FA15
3J701FA31
(57)【要約】
【課題】ピンタイプ保持器の耐久性を向上させる。
【解決手段】ピンタイプ保持器10は、軸方向第一側の第一リング11と、軸方向第二側の第二リング12と、前記第一リング11と前記第二リング12とを軸方向に間隔をあけて連結する複数のピン13と、を有する。前記複数のピン13は、第一ピン20及び第二ピン30を有する。前記第一ピン20は、軸方向第一側の端部20aに、前記第一リング11と固定される第一ねじ止め部21を有し、軸方向第二側の端部20bに、前記第二リング12と固定される第一溶接部22を有する。前記第二ピン30は、軸方向第一側の端部30aに、前記第一リング11に固定される第二溶接部32を有し、軸方向第二側の端部30bに、前記第二リング12に固定される第二ねじ止め部31を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向第一側の第一リングと、
軸方向第二側の第二リングと、
前記第一リングと前記第二リングとを軸方向に間隔をあけて連結する複数のピンと、
を有し、
前記複数のピンは、第一ピン及び第二ピンを有し、
前記第一ピンは、
軸方向第一側の端部に、前記第一リングと固定される第一ねじ止め部を有し、
軸方向第二側の端部に、前記第二リングと固定される第一溶接部を有し、
前記第二ピンは、
軸方向第一側の端部に、前記第一リングに固定される第二溶接部を有し、
軸方向第二側の端部に、前記第二リングに固定される第二ねじ止め部を有する、
ピンタイプ保持器。
【請求項2】
前記第一ピンは、軸方向第二側の端部に、前記第二リングが有する第二穴に入る第一軸端部と、前記第一軸端部と前記第二穴との間に嵌合する第一ブッシュと、を有し、
前記第一溶接部は、前記第一ブッシュの軸方向第二側の隣に位置し、
前記第二ピンは、軸方向第一側の端部に、前記第一リングが有する第一穴に入る第二軸端部と、前記第二軸端部と前記第一穴との間に嵌合する第二ブッシュと、を有し、
前記第二溶接部は、前記第二ブッシュの軸方向第一側の隣に位置する、
請求項1に記載のピンタイプ保持器。
【請求項3】
前記第一ピンと前記第二ピンとが周方向に沿って交互に配置されている領域を有する、
請求項1又は請求項2に記載のピンタイプ保持器。
【請求項4】
一つ又は複数の前記第一ピンが存在する第一領域と、
複数の前記第二ピンが周方向に隣り合って存在する第二領域と、
を有し、
前記第一領域は、一つの前記第一ピンが存在する領域、又は、複数の前記第一ピンが周方向に隣り合って存在する領域であり、
前記第一領域と前記第二領域とが周方向に沿って交互に配置される、請求項1又は請求項2に記載のピンタイプ保持器。
【請求項5】
前記第一軸端部は、前記第一ブッシュが嵌まる第一直線端部と、前記第一直線端部の軸方向第二側の隣に位置し軸方向第二側の先端に向かって細くなる第一傾斜端部と、を有し、
前記第二穴は、前記第一ブッシュが嵌まる第二直線穴部と、前記第二直線穴部の軸方向第二側の隣に位置し軸方向第二側に向かって拡径する第二傾斜穴部と、を有し、
前記第一傾斜端部と前記第二傾斜穴部との間に、前記第一溶接部の溶着金属が存在する、
請求項2に記載のピンタイプ保持器。
【請求項6】
前記第二軸端部は、前記第二ブッシュが嵌まる第二直線端部と、前記第二直線端部の軸方向第一側の隣に位置し軸方向第一側の先端に向かって細くなる第二傾斜端部と、を有し、
前記第一穴は、前記第二ブッシュが嵌まる第一直線穴部と、前記第一直線穴部の軸方向第一側の隣に位置し軸方向第一側に向かって拡径する第一傾斜穴部と、を有し、
前記第二傾斜端部と前記第一傾斜穴部との間に、前記第二溶接部の溶着金属が存在する、
請求項2又は請求項5に記載のピンタイプ保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンタイプ保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ピンタイプ保持器を開示する。ピンタイプ保持器は、軸方向第一側の第一リングと、軸方向第二側の第二リングと、複数のピンとを有する。複数のピンは、第一リングと第二リングとを軸方向に間隔をあけて連結する。ピンタイプ保持器は、比較的大型であり、大荷重又は衝撃荷重が作用する環境で使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭53-40578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来のピンタイプ保持器の一部を示す説明図である。このピンタイプ保持器は、第一リング91と、第二リング92と、複数のピン93とを有する。ピン93の軸方向第一側の端部94は、第一リング91に、ねじにより固定される。ピン93の軸方向第二側の端部95は、第二リング92に設けられている穴96に入った状態で、溶接により固定される。
【0005】
ピンタイプ保持器が採用される転がり軸受が回転すると、図7において二点鎖線で示すころ(転動体)99に、進み遅れが生じ、ころ99はピン93に衝突する。このような衝突が継続すると、第一リング91とピン93とのねじ結合の部分97に緩みが生じる。第一リング91は、全てのピン93とねじ結合されており、第一リング91と、全てのピン93の端部94(ねじ結合の部分97)との間で、緩みが生じる可能性がある。
【0006】
この場合、ピン93それぞれは、第二リング92との溶接による結合部分98を固定端とする、片持ち梁状態となる。第二リング92の穴96とピン93との間であって溶接による結合部分98以外に、隙間eが存在する。このため、ころ99の進み遅れにより、溶接による結合部分98に繰り返し応力が生じ、やがてその結合部分98又はその近傍が、損傷したり、ピン93及び結合部分98(ピン93の付け根部分)に大きな荷重が作用し、その付け根部分が損傷するおそれがある。つまり、ピン93の結合の弱点は、第二リング92側に集中する。
【0007】
このように、従来のピンタイプ保持器の場合、継続して使用していると一部において損傷が生じる可能性がある。
そこで、本発明は、耐久性を向上させることが可能となるピンタイプ保持器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のピンタイプ保持器は、軸方向第一側の第一リングと、軸方向第二側の第二リングと、前記第一リングと前記第二リングとを軸方向に間隔をあけて連結する複数のピンと、を有し、前記複数のピンは、第一ピン及び第二ピンを有し、前記第一ピンは、軸方向第一側の端部に、前記第一リングと固定される第一ねじ止め部を有し、軸方向第二側の端部に、前記第二リングと固定される第一溶接部を有し、前記第二ピンは、軸方向第一側の端部に、前記第一リングに固定される第二溶接部を有し、軸方向第二側の端部に、前記第二リングに固定される第二ねじ止め部を有する。
【0009】
前記構成を有するピンタイプ保持器によれば、第一リングに結合されるピンとして、ねじ止めにより固定される第一ピンと、溶接により固定される第二ピンとが存在する。第二リングに結合されるピンとして、ねじ止めにより固定される第二ピンと、溶接により固定される第一ピンとが存在する。このため、ピンとの結合に弱点があるとしても、その弱点は、第一リング側(又は第二リング側)の一方に集中せず、第一リング側と第二リング側との両側に分散する。
【0010】
(2)好ましくは、前記第一ピンは、軸方向第二側の端部に、前記第二リングが有する第二穴に入る第一軸端部と、前記第一軸端部と前記第二穴との間に嵌合する第一ブッシュと、を有し、前記第一溶接部は、前記第一ブッシュの軸方向第二側の隣に位置し、前記第二ピンは、軸方向第一側の端部に、前記第一リングが有する第一穴に入る第二軸端部と、前記第二軸端部と前記第一穴との間に嵌合する第二ブッシュと、を有し、前記第二溶接部は、前記第二ブッシュの軸方向第一側の隣に位置する。
前記構成によれば、たとえ第一ねじ止め部に緩みが生じても、第一ピンは第一ブッシュにより支持され、第一溶接部に負荷が作用し難く、耐久性が向上する。たとえ第二ねじ止め部に緩みが生じても、第二ピンは第二ブッシュにより支持され、第二溶接部に負荷が作用し難く、耐久性が向上する。
【0011】
(3)好ましくは、前記(1)又は(2)のピンタイプ保持器は、前記第一ピンと前記第二ピンとが周方向に沿って交互に配置されている領域を有する。
第一ピンと第二ピンとの合計が偶数である場合、全周にわたって、第一ピンと第二ピンとが周方向に沿って交互に配置されるピンタイプ保持器となる。
第一ピンと第二ピンとの合計が奇数である場合、一部において、第一ピン同士又は第二ピン同士が隣り合う領域が存在するが、その他の領域において、第一ピンと第二ピンとが周方向に沿って交互に配置されるピンタイプ保持器となる。
ピンとの結合に弱点があるとしても、その弱点は、第一リング側(又は第二リング側)の一方に集中せず、第一リング側と第二リング側との両側に分散する。
【0012】
(4)または、前記(1)又は(2)のピンタイプ保持器は、一つ又は複数の前記第一ピンが存在する第一領域と、複数の前記第二ピンが周方向に隣り合って存在する第二領域と、を有し、前記第一領域は、一つの前記第一ピンが存在する領域、又は、複数の前記第一ピンが周方向に隣り合って存在する領域であり、前記第一領域と前記第二領域とが周方向に沿って交互に配置される構成であってもよい。
第一ピンと第二ピンとが、厳密に周方向に沿って交互に配置されていなくてもよく、例えば、第一ピンが二本並び、その隣に第二ピンが二本並び、その隣に第一ピンが二本並び、このような配列が続く構成であってもよい。この場合においても、ピンとの結合に弱点があるとしても、その弱点は、第一リング側(又は第二リング側)の一方に集中せず、第一リング側と第二リング側との両側に分散する。
【0013】
(5)前記(2)のピンタイプ保持器において、好ましくは、前記第一軸端部は、前記第一ブッシュが嵌まる第一直線端部と、前記第一直線端部の軸方向第二側の隣に位置し軸方向第二側の先端に向かって細くなる第一傾斜端部と、を有し、前記第二穴は、前記第一ブッシュが嵌まる第二直線穴部と、前記第二直線穴部の軸方向第二側の隣に位置し軸方向第二側に向かって拡径する第二傾斜穴部と、を有し、前記第一傾斜端部と前記第二傾斜穴部との間に、前記第一溶接部の溶着金属が存在する。
前記構成によれば、第二リングと第一ブッシュと第一軸端部とが溶着金属によって一体化され、結合強度が高くなる。
【0014】
(6)前記(2)又は(5)のピンタイプ保持器において、好ましくは、前記第二軸端部は、前記第二ブッシュが嵌まる第二直線端部と、前記第二直線端部の軸方向第一側の隣に位置し軸方向第一側の先端に向かって細くなる第二傾斜端部と、を有し、前記第一穴は、前記第二ブッシュが嵌まる第一直線穴部と、前記第一直線穴部の軸方向第一側の隣に位置し軸方向第一側に向かって拡径する第一傾斜穴部と、を有し、前記第二傾斜端部と前記第一傾斜穴部との間に、前記第二溶接部の溶着金属が存在する。
前記構成によれば、第一リングと第二ブッシュと第二軸端部とが溶着金属によって一体化され、結合強度が高くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のピンタイプ保持器によれば、ピンとの結合に弱点があるとしても、その弱点は、第一リング側(又は第二リング側)の一方に集中せず、耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のピンタイプ保持器を有するころ軸受の一例を示す断面図である。
図2図2は、ピンタイプ保持器の一部を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示すピンタイプ保持器の一部を示す説明図である。
図4図4は、第二ピンの軸方向第一側の端部、及び、第一穴の説明図である。
図5図5は、第一ピンの軸方向第二側の端部、及び、第二穴の説明図である。
図6図6は、ピンタイプ保持器の他の形態を示す斜視図である。
図7図7は、従来のピンタイプ保持器の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔ころ軸受及びピンタイプ保持器について〕
図1は、本発明のピンタイプ保持器を有するころ軸受の一例を示す断面図である。図1に示すころ軸受5は、内輪6、外輪7、複数のころ8、及び、ピンタイプ保持器10を有する。ころ8は円筒ころであり、図1に示すころ軸受5は、円筒ころ軸受である。図1は、ころ軸受5の中心軸と、ピンタイプ保持器10の中心軸Cとが一致した状態を示す。
なお、本発明のピンタイプ保持器は、内輪6と外輪7との間に設けられる複数のころ8を保持する保持器ではなく、図示しないが、軸とハウジングとの間に設けられる複数のころ8を保持する保持器であってもよい。
【0018】
ピンタイプ保持器10の各方向を定義する。ピンタイプ保持器10の中心軸Cに沿った方向、及び、中心軸Cに平行な方向は「軸方向」と定義される。中心軸Cに直交する方向は「径方向」と定義される。中心軸Cを中心とする円に沿った方向は「周方向」と定義される。各図において、左側は「軸方向第一側」と定義され、右側は「軸方向第二側」と定義される。
【0019】
図2は、ピンタイプ保持器10の一部を示す斜視図である。図3は、図2に示すピンタイプ保持器10の一部を示す説明図である。図3は、環状であるピンタイプ保持器10を平面に展開した場合の図であり、更に、第一リング11、第二リング12、及び、その他の一部を、断面として示す。
ピンタイプ保持器10は、軸方向第一側(左側)の第一リング11と、軸方向第二側(右側)の第二リング12と、複数のピン13とを有する。複数のピン13は、第一リング11と第二リング12とを軸方向に間隔をあけて連結する。
【0020】
図3において、ピンタイプ保持器10によって保持されるころ8は、二点鎖線で示される。複数のピン13は、周方向に沿って等間隔で配置される。ころ8は、ころ8の中心軸に沿って貫通する穴9を有する。ピン13は、穴9を貫通する。これにより、ころ8は、ピンタイプ保持器10によって保持され、ころ8の中心軸回りに回転自在となる。
【0021】
複数のピン13は、第一ピン20及び第二ピン30を有する。本実施形態の場合、第一ピン20の構成と第二ピン30の構成とは同じであるが、取り付け方向が、第一ピン20と第二ピン30とで反対である。
ピンタイプ保持器10は、一つの第一ピン20と一つの第二ピン30とが周方向に沿って交互に配置されている領域を有する。
【0022】
ピン13の合計、つまり、第一ピン20と第二ピン30との合計が、偶数である場合、前記領域は、ピンタイプ保持器10の全周領域である。つまり、全周にわたって、第一ピン20と第二ピン30とが周方向に沿って交互に配置されるピンタイプ保持器10となる。
ピン13の合計が偶数である場合、第一リング11と第二リング12とは同じ構成となる。これにより、部品種類の削減が可能となる。
【0023】
ピン13の合計、つまり、第一ピン20と第二ピン30との合計が、奇数である場合、一部(1箇所)において、2本の第一ピン20同士又は2本の第二ピン30同士が隣り合う領域が存在する。しかし、その他の領域において、第一ピン20と第二ピン30とが周方向に沿って交互に配置されるピンタイプ保持器10となる。
【0024】
〔第一リング11及び第二リング12〕
第一リング11及び第二リング12は、環状の部材である。第一リング11及び第二リング12は、金属製(例えば、炭素鋼)であり、溶接が可能である。
【0025】
図3において、第一リング11は、複数の第一穴16と複数の第一ねじ穴18とを有する。第一穴16と第一ねじ穴18との合計は、ピン13の合計と同数である。
ピン13の合計が偶数である場合、第一リング11において、第一穴16と第一ねじ穴18とは、周方向に沿って交互に設けられる。
ピン13の合計が奇数である場合、1箇所において、2つの第一穴16が連続して並ぶ、又は、2つの第一ねじ穴18が連続して並ぶが、それ以外では、第一穴16と第一ねじ穴18とは、周方向に沿って交互に設けられる。
【0026】
第一穴16及び第一ねじ穴18それぞれは、第一リング11を軸方向に貫通する穴である。第一ねじ穴18は、第一リング11の軸方向の全幅において、雌ねじが形成されている穴である。
【0027】
図4は、第一リング11に固定される第二ピン30の軸方向第一側の端部30a、及び、第一穴16の説明図である。第一穴16は、第一直線穴部38と、第一傾斜穴部39とを有する。第一直線穴部38は、軸方向に沿って直線状の穴であり、後述する第二ブッシュ34が嵌まる。第一傾斜穴部39は、第一直線穴部38の軸方向第一側の隣に位置し、軸方向第一側に向かって拡径する穴である。
【0028】
図3において、第二リング12は、複数の第二穴17と複数の第二ねじ穴19とを有する。第二穴17と第二ねじ穴19との合計は、ピン13の合計と同数である。
ピン13の合計が偶数である場合、第二リング12において、第二穴17と第二ねじ穴19とは、周方向に沿って交互に設けられる。
ピン13の合計が奇数である場合、1箇所において、2つの第二穴17が連続して並ぶ、又は、2つの第二ねじ穴19が連続して並ぶが、それ以外では、第二穴17と第二ねじ穴19とは、周方向に沿って交互に設けられる。
【0029】
第二穴17及び第二ねじ穴19それぞれは、第二リング12を軸方向に貫通する穴である。第二ねじ穴19は、第二リング12の軸方向の全幅において、雌ねじが形成されている穴である。
【0030】
図5は、第二リング12に固定される第一ピン20の軸方向第二側の端部20b、及び、第二穴17の説明図である。第二穴17は、第二直線穴部28と、第二傾斜穴部29とを有する。第二直線穴部28は、軸方向に沿って直線状の穴であり、後述する第一ブッシュ24が嵌まる。第二傾斜穴部29は、第二直線穴部28の軸方向第二側の隣に位置し、軸方向第二側に向かって拡径する穴である。
【0031】
〔ピン13〕
ピン13は、断面が円形である直線部材である。ピン13は、金属製(例えば、浸炭鋼)であり、溶接が可能である。図3に示すように、複数のピン13は、第一ピン20及び第二ピン30を有する。
第一ピン20は、軸方向第一側の端部20aに、第一ねじ穴18と結合する第一ねじ止め部21を有する。第一ピン20は、第一ねじ止め部21により、第一リング11と固定される。
第二ピン30は、軸方向第二側の端部30bに、第二ねじ穴19と結合する第二ねじ止め部31を有する。第二ピン30は、第二ねじ止め部31により、第二リング12と固定される。
【0032】
図5に示すように、第一ピン20は、軸方向第二側の端部20bに、第二穴17に入る第一軸端部23を有する。第一ピン20は、第一軸端部23と第二穴17の第二直線穴部28との間に嵌合する第一ブッシュ24を有する。
第一軸端部23は、第一ブッシュ24が嵌まる第一直線端部25と、第一直線端部25の軸方向第二側の隣に位置する第一傾斜端部26とを有する。第一傾斜端部26は、軸方向第二側の先端に向かって細くなる。
【0033】
第一軸端部23(第一傾斜端部26)の軸方向第二側の先端に、凹溝42が設けられている。ピンタイプ保持器10の組み立ての際、凹溝42に、図示しないが工具を嵌めて、その工具を回転させることで、第一ねじ穴18(図3参照)に第一ねじ止め部21を締め付けることが可能となる。
【0034】
第一ピン20は、軸方向第二側の端部20bに、第二リング12と固定される第一溶接部22を有する。第一溶接部22は、第一ブッシュ24の軸方向第二側の隣に位置する。第一溶接部22は、第一ピン20の軸方向第二側の端部20bと、第二リング12とを溶接する部分である。第一溶接部22の溶着金属22a(図5参照)は、第一傾斜端部26と第二傾斜穴部29との間に存在する。
【0035】
第一ブッシュ24は、円筒形状を有する。第一ブッシュ24は、圧入によって取り付けられる。このため、第一ブッシュ24は、第二穴17及び第一軸端部23に対して締め代を有した状態となる。第二穴17(第二直線穴部28)と第一ブッシュ24との間に隙間は存在せず、第一軸端部23(第一直線端部25)と第一ブッシュ24との間に隙間は存在しない。
【0036】
図4に示すように、第二ピン30は、軸方向第一側の端部30aに、第一穴16に入る第二軸端部33を有する。第二ピン30は、第二軸端部33と第一穴16の第一直線穴部38との間に嵌合する第二ブッシュ34を有する。
第二軸端部33は、第二ブッシュ34が嵌まる第二直線端部35と、第二直線端部35の軸方向第一側の隣に位置する第二傾斜端部36とを有する。第二傾斜端部36は、軸方向第一側の先端に向かって細くなる。
【0037】
第二軸端部33(第二傾斜端部36)の軸方向第一側の先端に、凹溝47が設けられている。ピンタイプ保持器10の組み立ての際、凹溝47に、図示しないが工具を嵌めて、その工具を回転させることで、第二ねじ穴19(図3参照)に第二ねじ止め部31を締め付けることが可能となる。
【0038】
第二ピン30は、軸方向第一側の端部30aに、第一リング11に固定される第二溶接部32を有する。第二溶接部32は、第二ブッシュ34の軸方向第一側の隣に位置する。第二溶接部32は、第二ピン30の軸方向第一側の端部30aと、第一リング11とを溶接する部分である。第二溶接部32の溶着金属32a(図4参照)は、第二傾斜端部36と第一傾斜穴部39との間に存在する。
【0039】
第二ブッシュ34は、円筒形状を有する。第二ブッシュ34は、圧入によって取り付けられる。このため、第二ブッシュ34は、第一穴16及び第二軸端部33に対して締め代を有した状態となる。第一穴16(第一直線穴部38)と第二ブッシュ34との間に隙間は存在せず、第二軸端部33(第二特選端部35)と第二ブッシュ34との間に隙間は存在しない。
【0040】
〔第一ピン20及び第二ピン30の配置の他の例〕
図6は、ピンタイプ保持器10の他の形態を示す斜視図である。図6に示すピンタイプ保持器10は、軸方向第一側(左側)の第一リング11と、軸方向第二側(右側)の第二リング12と、複数のピン13とを有する。複数のピン13は、第一リング11と第二リング12とを軸方向に間隔をあけて連結する。複数のピン13は、第一ピン20及び第二ピン30を有する。第一ピン20の構成と第二ピン30の構成とは同じであるが、取り付け方向が、第一ピン20と第二ピン30とで反対となる。
以上の点は、図2に示すピンタイプ保持器10と同じである。
【0041】
図6に示すピンタイプ保持器10は、二本の第一ピン20が周方向に隣り合って存在する第一領域K1と、二本の第二ピン30が周方向に隣り合って存在する第二領域K2とを有する。第一領域K1と第二領域K2とが周方向に沿って交互に配置される。つまり、図6に示すピンタイプ保持器10は、第一ピン20が二本並び、その隣に第二ピン30が二本並び、その隣に第一ピン20が二本並び、このような配列が続く構成である。
【0042】
第一領域K1に存在する第一ピン20は、2本以外であってもよく、1本であってもよい。つまり、第一領域K1に、一つ又は複数の第一ピン20が存在する。第一領域K1に第一ピン20が複数存在する場合、その数は2本以外であってもよい。第一領域K1で周方向に沿って連続する第一ピン20は、3本までであってもよいが、2本までが好ましい。このように、第一領域K1は、一つの第一ピン20が存在する領域、又は、複数の第一ピン20が周方向に隣り合って存在する領域である。
【0043】
第二領域K2に第二ピン30が複数存在する場合、その数は2本以外であってもよい。つまり、第二領域K2は、複数の第二ピン30が周方向に隣り合って存在する領域である。第二領域K2で周方向に沿って連続する第二ピン30は、3本までであってもよいが、2本までが好ましい。
【0044】
〔前記各形態のピンタイプ保持器10について〕
前記各形態(図2及び図6)のピンタイプ保持器10は、第一リング11と、第二リング12と、複数のピン13とを有する。複数のピン13は、第一ピン20及び第二ピン30とを有する。
図3に示すように、第一ピン20は、軸方向第一側の端部20aに、第一リング11と固定される第一ねじ止め部21を有し、軸方向第二側の端部20bに、第二リング12と固定される第一溶接部22を有する。第二ピン30は、軸方向第一側の端部30aに、第一リング11に固定される第二溶接部32を有し、軸方向第二側の端部30bに、第二リング12に固定される第二ねじ止め部31を有する。
【0045】
前記構成を有するピンタイプ保持器10によれば、第一リング11に結合されるピン13として、ねじ止めにより固定される第一ピン20と、溶接により固定される第二ピン30とが存在する。第二リング12に結合されるピン13として、ねじ止めにより固定される第二ピン30と、溶接により固定される第一ピン20とが存在する。仮に溶接部(22、32)が弱点であるとしても、その弱点は、第一リング11側(又は第二リング12側)の一方に集中せず、第一リング11側と第二リング12側との両側に分散する。その結果、ピンタイプ保持器10の耐久性を向上させることが可能となる。
【0046】
なお、後述するが、第一ブッシュ24及び第二ブッシュ34により、第一溶接部22及び第二溶接部32が弱点となることを抑えることが可能となる。
【0047】
前記のとおり、溶接部は、第一リング11側(又は第二リング12側)の一方に集中せず、第一リング11側と第二リング12側との両側に分散する。このため、溶接による熱影響が、第一リング11側(又は第二リング12側)の一方に集中せず、ピンタイプ保持器10の寸法精度の低下が抑制される。
【0048】
ピン13の軸方向第一側及び軸方向第二側の双方が、溶接によって固定されるのではなく、軸方向第一側及び軸方向第二側の一方が、ねじ止めである。このため、ピンタイプ保持器10の組み立ての際、第一リング11と第二リング12との軸方向についての位置合わせが容易となる。
【0049】
図2示す形態の場合、ピンタイプ保持器10は、第一ピン20と第二ピン30とが周方向に沿って交互に配置されている領域を有する。仮に溶接部(22、32)が弱点であるとしても、その弱点は、第一リング11側(又は第二リング12側)の一方に集中せず、第一リング11側と第二リング12側との両側に分散する。
【0050】
図6に示す形態の場合、ピンタイプ保持器10は、複数の第一ピン20が周方向に隣り合って存在する第一領域K1と、複数の第二ピン30が周方向に隣り合って存在する第二領域K2とを有する。第一領域K1と第二領域K2とが周方向に沿って交互に配置される。この場合においても、仮に溶接部(22、32)が弱点であるとしても、その弱点は、第一リング11側(又は第二リング12側)の一方に集中せず、第一リング11側と第二リング12側との両側に分散する。
【0051】
更に、前記各形態の場合、第一ピン20は、軸方向第二側の端部20bに、第二リング12が有する第二穴17に入る第一軸端部23と、第一軸端部23と第二穴17との間に嵌合する第一ブッシュ24とを有する。第一溶接部22は、第一ブッシュ24の軸方向第二側の隣に位置する。第二ピン30は、軸方向第一側の端部30aに、第一リング11が有する第一穴16に入る第二軸端部33と、第二軸端部33と第一穴16との間に嵌合する第二ブッシュ34とを有する。第二溶接部32は、第二ブッシュ34の軸方向第一側の隣に位置する。
【0052】
第一ブッシュ24及び第二ブッシュ34により、第一溶接部22及び第二溶接部32が弱点となることを抑えることが可能となる。つまり、たとえ第一ねじ止め部21に緩みが生じても、第一ピン20は第一ブッシュ24により支持され、第一溶接部22に負荷が作用し難く、耐久性が向上する。たとえ第二ねじ止め部31に緩みが生じても、第二ピン30は第二ブッシュ34により支持され、第二溶接部32に負荷が作用し難く、耐久性が向上する。
【0053】
前記各形態において、図5に示すように、第一軸端部23は、第一ブッシュ24が嵌まる第一直線端部25と、第一傾斜端部26とを有する。第二穴17は、第一ブッシュ24が嵌まる第二直線穴部28と、第二傾斜穴部29とを有する。第一傾斜端部26と第二傾斜穴部29との間に、第一溶接部22の溶着金属22aが存在する。第二リング12と第一ブッシュ24と第一軸端部23とが、溶着金属22aによって一体化され、結合強度が高くなる。
【0054】
前記各形態において、図4に示すように、第二軸端部33は、第二ブッシュ34が嵌まる第二直線端部35と、第二傾斜端部36とを有する。第一穴16は、第二ブッシュ34が嵌まる第一直線穴部38と、第一傾斜穴部39とを有する。第二傾斜端部36と第一傾斜穴部39との間に、第二溶接部32の溶着金属32aが存在する。第一リング11と第二ブッシュ34と第二軸端部33とが、溶着金属32aによって一体化され、結合強度が高くなる。
【0055】
〔その他〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 ピンタイプ保持器
11 第一リング
12 第二リング
13 ピン
16 第一穴
17 第二穴
20 第一ピン
20a 第一ピンの軸方向第一側の端部
20b 第一ピンの軸方向第二側の端部
21 第一ねじ止め部
22 第一溶接部
22a 溶着金属
23 第一軸端部
24 第一ブッシュ
25 第一直線端部
26 第一傾斜端部
28 第二直線穴部
29 第二傾斜穴部
30 第二ピン
30a 第二ピンの軸方向第一側の端部
30b 第二ピンの軸方向第二側の端部
31 第二ねじ止め部
32 第二溶接部
32a 溶着金属
33 第二軸端部
34 第二ブッシュ
35 第二直線端部
36 第二傾斜端部
38 第一直線穴部
39 第一傾斜穴部
K1 第一領域
K2 第二領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7