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  • 特開-オンライン分析システム 図1
  • 特開-オンライン分析システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165786
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】オンライン分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/16 20060101AFI20241121BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20241121BHJP
   G01N 30/20 20060101ALI20241121BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N30/16 L
G01N30/24 E
G01N30/20 A
G01N30/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082280
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勝正
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】岩田 庸助
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気体と液体を含むサンプル流体中の液体の分析をオンラインで実行できるオンライン分析システムを提供する。
【解決手段】気体と液体を含むサンプル流体を気体と液体とを互いに分離するための分離空間24、サンプル流体中の液体を分離空間24から取り出すための液体出口28を有する気液分離部4と、気液分離部4の液体出口に流体接続された液体流路(32;42)と、液体流路(32;34)上に設けられた背圧制御部8と、液体の分析を行なうための液体クロマトグラフを構成する分析流路(38;40)と、液体流路(32;42)上における液体出口28と背圧制御部8との間で、液体流路(32;42)を流れる液体を取り出して分析流路(40)へ導入するように構成されたサンプリング部6と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種類以上の流体を反応させて気体と液体を含むサンプル流体を生成して供給するサンプル供給部と、
前記サンプル供給部の下流に設けられ、前記サンプル供給部から供給される前記サンプル流体中の気体と液体とを互いに分離するための分離空間、前記サンプル流体中の前記気体を前記分離空間から放出するための気体出口、及び、前記サンプル流体中の前記液体を前記分離空間から取り出すための液体出口を有する気液分離部と、
前記気液分離部の前記液体出口に流体接続された液体流路と、
前記液体流路上に設けられた背圧制御部と、
前記気液分離部で前記気体と分離された前記液体の分析を行なうための液体クロマトグラフを構成する分析流路と、
前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間で、前記液体流路を流れる前記液体を取り出して前記分析流路へ導入するように構成されたサンプリング部と、を備えたオンライン分析システム。
【請求項2】
前記サンプリング部は、
前記液体を一時的に保持するためのサンプルループと、
前記サンプルループを前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間に介在させる第1状態、及び、前記サンプルループを前記分析流路に組み込む第2状態のいずれか一方の状態に切り替えるように構成された切替えバルブと、
を備えている、請求項1に記載のオンライン分析システム。
【請求項3】
前記サンプリング部は、
前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間に常時介在し、内部を前記液体が流れるフローバイアルと、
前記フローバイアル内を流れる前記液体を採取して前記分析流路へ導入するサンプラと、
を備えている、請求項1に記載のオンライン分析システム。
【請求項4】
前記サンプル流体は気液二相流の状態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液二相流状態で供給されるサンプル流体から液体をオンラインで取り出して分析するためのオンライン分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機合成の分野におけるフロー合成では、有機原料と水素ガスなどの気体とを反応器で反応させて水素化するという処理がよく行なわれる。反応器で生成された反応液は未反応の水素と混合された状態で反応送液から送出される。そのため、反応器の下流に気液分離部を設けて気液分離を行ない、気液分離部から反応液だけを取り出すことが一般的である。
【0003】
水素化処理における反応効率を向上させるために、反応器内に高圧をかけることがよく行なわれる。その場合は、反応器の下流に設けられる気液分離部として耐圧容器が使用される。耐圧容器は、反応器からの流体を耐圧容器内へ流入させるための入口と、耐圧容器内で互いに分離された気体と液体をそれぞれ耐圧容器から流出させるための2つの出口と、を備えたものである。反応器内に高圧をかけるために背圧制御弁(以下、BPR:Buck Pressure Regulator)がよく利用されるが、BPRは液体用の出口の下流に設けられる。BPRは、例えば、耐圧容器内の液面が一定に保たれるように制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフロー合成において反応器での合成状況を確認する方法としては、BPRの下流にフラクションコレクタを設けて耐圧容器から流出した反応液を容器に捕集し、反応液を捕集した容器を液体クロマトグラフなどの分析装置へ移動させて分析を行なうという方法が一般的である。合成状況を定期的に確認するためには、反応器で生成された反応液の分析を定期的に自動的に実行されるようになっていることが望ましいが、上記の方法では反応液を捕集した容器を分析装置へ移動させる作業が必要であるため、反応液の分析の自動化が困難である。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、気体と液体を含むサンプル流体中の液体の分析をオンラインで実行できるオンライン分析システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオンライン分析システムは、二種類以上の流体を反応させて気体と液体を含むサンプル流体を生成して供給するサンプル供給部と、前記サンプル供給部の下流に設けられ、前記サンプル供給部から供給される前記サンプル流体中の気体と液体とを互いに分離するための分離空間、前記サンプル流体中の前記気体を前記分離空間から放出するための気体出口、及び、前記サンプル流体中の前記液体を前記分離空間から取り出すための液体出口を有する気液分離部と、前記気液分離部の前記液体出口に流体接続された液体流路と、前記液体流路上に設けられた背圧制御部と、前記気液分離部で前記気体と分離された前記液体の分析を行なうための液体クロマトグラフを構成する分析流路と、前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間で、前記液体流路を流れる前記液体を取り出して前記分析流路へ導入するように構成されたサンプリング部と、を備えている。
【0007】
気液分離部から流出した液体を分析装置へオンラインで移送できるようにする場合、気液分離部の液体出口の下流に背圧制御部が設けられている構成では、その背圧制御部の下流に、サンプルループ又はフローセルを利用したサンプリング部を追加的に設置することが一般的に考えられる対応である。しかし、背圧制御部の下流では、背圧制御部の上流に比べて液体の圧力が急激に低下するために高圧下では液体中に溶存していた気体が気泡となって液体中に出現し、それによってサンプルループ内又はフローセル内が液体と気体の入り混じった状態となることがある。そのような状態で液体を分析部へ導入すると、分析部に供される液体の量が一定にならず、分析結果の再現性が低下する。これに対し、本発明のオンライン分析システムにおけるサンプリング部は、気液分離部の液体出口と背圧制御部との間の位置で、液体出口から流出した液体を取り出して分析部へ導入するように構成されているので、分析に供される液体の量が安定し、再現性の高い分析結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るオンライン分析システムでは、気液分離部の液体出口から流出した液体を分析部へ導入するサンプリング部を備えているので、気液二相流の流体中の液体の分析をオンラインで実行することができる。さらに、サンプリング部は、気液分離部の液体出口と背圧制御部との間の位置で、液体出口から流出した液体を取り出して分析部へ導入するように構成されているので、分析に供される液体の量が安定し、再現性の高い分析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】オンライン分析システムの一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例においてサンプルループを分析流路の組み込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係るオンライン分析システムの一実施例について説明する。
【0011】
図1に示されているように、オンライン分析システム1は、主として、サンプル供給部2、気液分離部4、サンプリング部6、背圧制御部(BPR)8、送液ポンプ10、分離カラム12、及び検出器14を備えている。
【0012】
サンプル供給部2は、ポンプ16及び18によって液体及び気体を反応器20へ送り込み、液体と気体を反応させて合成するフロー合成装置である。液体は、例えば、有機原料であり。気体は、例えば、水素である。反応器20の出口は流体供給流路22を介して気液分離部4に流体接続されている。反応器20では気体と合成された液体が未反応の気体と混合されて気液二相流の状態となって、流体供給流路22を通じてサンプル流体として気液分離部4へ供給される。
【0013】
気液分離部4は耐圧容器であり、サンプル流路中の液体と液体を互いに分離するための分離空間24を内部に有するとともに、流体供給流路22を通じて供給されるサンプル流体を分離空間24へ導入するための流体入口26、分離空間24で気体と分離された液体を分離空間24から流出させるための液体出口28、及び、分離空間24で液体と分離された気体を外部へ流出させるための気体出口30を備えている。
【0014】
気液分離部4の液体出口28に液体流路32が流体接続されており、気液分離部4の気体出口30に流路抵抗をもつ気体流路34が流体接続されている。液体流路32の下流には、後述するマルチポートバルブ34を介して液体流路42が流体接続されている。液体流路42上にBPR8が設けられている。BPR8は、反応器20内の圧力を高圧にするために設けられている。
【0015】
サンプリング部6は、マルチポートバルブ34及びサンプルループ36を備えている。マルチポートバルブ34は6つのポートを備えている。マルチポートバルブ34の各ポートには、液体流路32、液体流路42、サンプルループ36の一端、サンプルループ36の他端、上流側分析流路38、及び下流側分析流路40がそれぞれ接続されている。マルチポートバルブ34は、サンプルループ36を液体流路32と液体流路42との間に介在させる第1状態(図1の状態)、及び、サンプルループ36を上流側分析流路38と下流側分析流路40との間に介在させる第2状態(図2の状態)のいずれか一方の状態に切り替えることができる。上流側分析流路38上に移動相を送液する送液ポンプ10が設けられており、下流側分析流路40上に分離カラム12及び検出器14が設けられている。上流側分析流路38と下流側分析流路40は、気液分離部4でサンプル流体から取り出された液体の分析を行なうための液体クロマトグラフを構成する。
【0016】
マルチポートバルブ34が第1状態にあるときは、気液分離部4から流出した液体が液体流路32-サンプルループ36-液体流路42の経路を流れる。マルチポートバルブ34が第2状態に切り替えられると、図2に示されているように、上流側分析流路38と下流側分析流路40との間にサンプルループ36が組み込まれ、サンプルループ36内の液体が送液ポンプ10からの移動相によって分離カラム12へ導かれる。液体が分離カラム12及び検出器14を通過することにより、液体中の成分の分析が行われる。
【0017】
上記のように、この実施例のオンライン分析システムでは、マルチポートバルブ34を切り替えるだけで、気液分離部4から流出した液体を分析流路38及び42を流れる移動相中に導入することができる。さらに、サンプリング部6は、気液分離部4の液体出口28とBPR8との間の位置に設けられており、気液分離部4から流出した液体を高圧状態のまま下流側分析流路40へ導入するようになっているので、液体中に溶存している気体を気泡として発生させることなくサンプリングすることができ、分析に供する液体の定量性が保たれる。これにより、分析結果の高い再現性が得られる。
【0018】
なお、この実施例のサンプル供給部2は、気体と液体を反応させて気体と液体を含むサンプル流体を生成するフロー合成装置であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体と液体を反応させて液体と気体を含むサンプル流体を生成するフロー合成装置をサンプル供給部としてもよい。
【0019】
なお、上記実施例では、マルチポートバルブ34及びサンプルループ36によってサンプリング部6を実現しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、液体流路32の下流端をフローバイアルの入口に流体接続し、液体流路42の上流端をフローバイアルの出口に流体接続して、気液分離部4の液体出口28から流出する液体がフローバイアル内を常時流れるように構成してもよい。その場合、サンプリング部6は、フローバイアル内を流れる液体を、ニードルを介してシリンジポンプにより採取し、採取した液体を注入ポートを通じて分析流路40へ注入するサンプラを備える。
【0020】
以上において説明した実施例は、本発明に係るオンライン分析システムの実施形態の例示に過ぎない。本発明に係るオンライン分析システムの実施形態は以下のとおりである。
【0021】
本発明に係るオンライン分析システムの一実施形態では、二種類以上の流体を反応させて気体と液体を含むサンプル流体を生成して供給するサンプル供給部と、前記サンプル供給部の下流に設けられ、前記サンプル供給部から供給される前記サンプル流体中の気体と液体とを互いに分離するための分離空間、前記サンプル流体中の前記気体を前記分離空間から放出するための気体出口、及び、前記サンプル流体中の前記液体を前記分離空間から取り出すための液体出口を有する気液分離部と、前記気液分離部の前記液体出口に流体接続された液体流路と、前記液体流路上に設けられた背圧制御部と、前記気液分離部で前記気体と分離された前記液体の分析を行なうための液体クロマトグラフを構成する分析流路と、前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間で、前記液体流路を流れる前記液体を取り出して前記分析流路へ導入するように構成されたサンプリング部と、を備えている。
【0022】
上記一実施形態の第1態様では、前記サンプリング部は、前記液体を一時的に保持するためのサンプルループと、前記サンプルループを前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間に介在させる第1状態、及び、前記サンプルループを前記分析流路に組み込む第2状態のいずれか一方の状態に切り替えるように構成された切替えバルブと、を備えている。
【0023】
上記一実施形態の第2態様では、前記サンプリング部は、前記液体流路上における前記液体出口と前記背圧制御部との間に常時介在し、内部を前記液体が流れるフローバイアルと、前記フローバイアル内を流れる前記液体を採取して前記分析流路へ導入するサンプラと、を備えている。
【0024】
上記一実施形態の第3態様では、前記サンプル流体は気液二相流の状態である。
【符号の説明】
【0025】
1 オンライン分析システム
2 サンプル供給部
4 気液分離部
6 サンプリング部
8 背圧制御部
10,16,18 ポンプ
12 分離カラム
14 検出器
20 反応器
22 流体供給流路
24 分離空間
26 流体入口
28 液体出口
30 気体出口
32,42 液体流路
34 気体流路
36 サンプルループ
38 上流側分析流路
40 下流側分析流路
図1
図2