(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165788
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H02M7/12 P
H02M7/12 A
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082282
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】高野 将成
(72)【発明者】
【氏名】大元 靖理
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB07
5H006CB08
5H006CC08
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スイッチング素子の損失が大きくなることによる故障のリスクを低減させる制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】交流電源の力率を改善する力率改善回路10に用いられる制御装置20であって、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオンオフ状態をパルス幅変調(PWM)のキャリア信号の周期に相当する周波数である第1周波数より低い電源周波数である第2周波数で制御するで制御する第1モードと、第1モードとは異なる方式で第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオンオフ状態を制御する第2モードと、を交流電源100から入力される交流電圧の絶対値が所定の閾値以下となる期間である所定のタイミングで切り替える。これにより、第1レグR1及び第2レグR2のどちらか一方にスイッチング損失が偏ることがなくなり、スイッチング損失が平均化され、スイッチング素子の故障のリスクを低減できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の力率を改善する力率改善回路に用いられる制御装置であって、
前記力率改善回路は、第1スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子に直列に接続される第2スイッチング素子から構成される第1レグと、第3スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子に直列に接続される第4スイッチング素子から構成され、かつ前記第1レグに並列に接続される第2レグと、を有し、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を所定の第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数より低い第2周波数で制御する第1モードと、前記交流電源から入力される交流電圧の1サイクルのうち正の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で切り替え、前記正の半サイクルに続く負の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する第2モードと、を所定のタイミングで切り替えるコントローラを備える、
制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記力率改善回路で伝送する電力が第1閾値より小さい値から前記第1閾値以上の値に変化した場合は、前記所定のタイミングで前記第2モードから前記第1モードに切り替え、前記電力が前記第1閾値以上の値から前記第1閾値より小さい値に変化した場合は、前記所定のタイミングで前記第1モードから前記第2モードに切り替える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定のタイミングは、前記交流電源から入力される交流電圧の絶対値が第2閾値以下となる期間である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、及び前記第4スイッチング素子は、いずれも同一の半導体材料によって形成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
交流電源の力率を改善する力率改善回路に用いられる制御装置の制御方法であって、
前記力率改善回路は、第1スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子に直列に接続される第2スイッチング素子から構成される第1レグと、第3スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子に直列に接続される第4スイッチング素子から構成され、かつ前記第1レグに並列に接続される第2レグと、を有し、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を所定の第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数より低い第2周波数で制御する第1モードと、前記交流電源から入力される交流電圧の1サイクルのうち正の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で切り替え、前記正の半サイクルに続く負の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する第2モードと、を所定のタイミングで切り替える、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流電源の力率を改善する力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路に用いられる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、力率を改善するため一方のレグを高速でスイッチング動作させ、他方のレグを整流動作させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、高速レグのスイッチング素子の損失が大きくなり、故障が発生するリスクが大きくなるおそれがある。
【0005】
本開示の一態様は、スイッチング素子の故障のリスクを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る制御装置は、交流電源の力率を改善する力率改善回路に用いられる制御装置であって、前記力率改善回路は、第1スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子に直列に接続される第2スイッチング素子から構成される第1レグと、第3スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子に直列に接続される第4スイッチング素子から構成され、かつ前記第1レグに並列に接続される第2レグと、を有し、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を所定の第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数より低い第2周波数で制御する第1モードと、前記交流電源から入力される交流電圧の1サイクルのうち正の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で切り替え、前記正の半サイクルに続く負の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する第2モードと、を所定のタイミングで切り替えるコントローラを備える。
【0007】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る制御方法は、交流電源の力率を改善する力率改善回路に用いられる制御装置の制御方法であって、前記力率改善回路は、第1スイッチング素子及び前記第1スイッチング素子に直列に接続される第2スイッチング素子から構成される第1レグと、第3スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子に直列に接続される第4スイッチング素子から構成され、かつ前記第1レグに並列に接続される第2レグと、を有し、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を所定の第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数より低い第2周波数で制御する第1モードと、前記交流電源から入力される交流電圧の1サイクルのうち正の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で切り替え、前記正の半サイクルに続く負の半サイクルでは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ状態を前記第2周波数で制御する一方で、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のオンオフ状態を前記第1周波数で制御する第2モードと、を所定のタイミングで切り替える。
【0008】
本開示の態様に係る制御装置の機能は、コンピュータによって実行してもよく、この場合には、前記制御装置をコンピュータにて実行させる制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、スイッチング素子の故障のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る力率改善回路の一例を示す概略構成図である。
【
図2】スイッチング制御モードの切替方法の一例を示すタイミングチャートである。
【
図3】力率改善回路に流れる電流の経路を示す図である。
【
図4】力率改善回路に流れる電流の経路を示す図である。
【
図5】力率改善回路に流れる電流の経路を示す図である。
【
図6】力率改善回路に流れる電流の経路を示す図である。
【
図7】力率改善回路に流れる電流の経路を示す図である。
【
図8】力率改善回路で伝送する電力を用いた切替方法の一例を示すグラフである。
【
図9】力率改善回路の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る力率改善回路10の一例を示す概略構成図である。力率改善回路10は、トーテムポール接続されたブリッジレス力率改善回路として構成される。力率改善回路10は、2個ずつ直列に接続された4つの第1~第4スイッチング素子Q1~Q4と、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれに逆方向に並列に接続された4つのダイオードと、リアクトル11と、平滑コンデンサ13と、を備える。
【0013】
力率改善回路10の用途は特に限定されないが、本実施形態では一例として力率改善回路10は電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車などに搭載され、オンボードチャージャーに適用される場合について説明する。オンボードチャージャーとは、一般住宅又は公共施設などから提供される交流電圧を直流電圧に変換し、電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車などに搭載される駆動用の高圧バッテリを充電するためのシステムである。力率改善回路10は車外の交流電源100に接続されたときに交流電源100の力率を改善するために用いられる。交流電源100の一例は、電源周波数が50Hz又は60Hzである家庭用電源、商用電源などである。
【0014】
力率改善回路10は、交流電源100に第1電力線L1及び第2電力線L2を介して接続される。交流電源100と力率改善回路10との間には、フィルタ101及びフィルタコンデンサ102が接続される。フィルタ101は、特に限定されないが、例えば交流電源100の電源周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタ(BPF)、又は電源周波数よりも高いカットオフ周波数を持つローパスフィルタ(LPF)などである。フィルタ101は、第1電力線L1及び第2電力線L2に接続される。フィルタコンデンサ102の一端は第1電力線L1に接続され、フィルタコンデンサ102の他端は第2電力線L2に接続される。
【0015】
第1レグR1は、第1スイッチング素子Q1と、第1スイッチング素子Q1に直列に接続される第2スイッチング素子Q2とを含む。第2レグR2は、第3スイッチング素子Q3と、第3スイッチング素子Q3に直列に接続される第4スイッチング素子Q4とを含む。第1レグR1と第2レグR2は、並列に接続される。
【0016】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4としては、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)が用いられるが、これに限定されず、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられてもよい。また、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4は、いずれも同一の半導体材料によって形成されてもよい。半導体材料として、Si、SiC、及びGaNなどが挙げられるが、これらに限定されず、酸化ガリウム(Ga2O3)、窒化アルミニウム(AlN)などが用いられてもよい。
【0017】
第1スイッチング素子Q1は、第3電力線L3と第1ノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第1ノードN1を第3電力線L3に接続する。第1スイッチング素子Q1のドレインは第3電力線L3に接続され、ソースは第1ノードN1に接続される。また、第1スイッチング素子Q1のゲートには制御装置20からゲート信号が供給される。
【0018】
第2スイッチング素子Q2は、第4電力線L4と第1ノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第1ノードN1を第4電力線L4に接続する。第2スイッチング素子Q2のドレインは第1ノードN1に接続され、ソースは第4電力線L4に接続される。また、第2スイッチング素子Q2のゲートには制御装置20からゲート信号が供給される。
【0019】
第3スイッチング素子Q3は、第3電力線L3と第2ノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第2ノードN2を第3電力線L3に接続する。第3スイッチング素子Q3のドレインは第3電力線L3に接続され、ソースは第2ノードN2に接続される。また、第3スイッチング素子Q3のゲートには制御装置20からゲート信号が供給される。
【0020】
第4スイッチング素子Q4は、第4電力線L4と第2ノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることにより第2ノードN2を第4電力線L4に接続する。第4スイッチング素子Q4のドレインは第2ノードN2に接続され、ソースは第4電力線L4に接続される。また、第4スイッチング素子Q4のゲートには制御装置20からゲート信号が供給される。
【0021】
第1スイッチング素子Q1のソースと第2スイッチング素子Q2のドレインとの接続点である第1ノードN1は、リアクトル11の一方の端子に接続される。リアクトル11の他方の端子は、第1電力線L1に接続される。
【0022】
第3スイッチング素子Q3のソースと第4スイッチング素子Q4のドレインとの接続点である第2ノードN2は、第2電力線L2に接続される。
【0023】
平滑コンデンサ13の一端は第3電力線L3に接続され、他端は第4電力線L4に接続される。平滑コンデンサ13によって平滑化された電圧は、正極出力端30及び負極出力端31に接続される図示しない高圧バッテリに印加される。
【0024】
制御装置20は、例えばマイクロコンピュータなどで構成できる。一例として、制御装置20は、図示しないメモリ及び中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)から構成されるコントローラを内蔵し、メモリに予め格納されたプログラムをCPUが実行することによるソフトウェア処理によって、後述する制御動作を実行できる。あるいは、後述する制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、制御装置20に内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実行できる。
【0025】
制御装置20は、予め設定された目標力率値に従って、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のスイッチング動作を制御する。具体的には、制御装置20は、リアクトル11に流れる電流の位相が目標力率値に対応する位相に近づくように目標電流を設定し、リアクトル11に流れる電流がこの目標電流に近づくように第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のスイッチング動作を制御する。
【0026】
一般的なトーテムポールブリッジレス動作では、一方のレグに含まれる2つのスイッチング素子は高周波数でスイッチング制御され、他方のレグに含まれる2つのスイッチング素子は電源周波数でスイッチング制御される。以下では、高周波数を用いたスイッチング制御を「高速スイッチング制御」と称し、電源周波数を用いたスイッチング制御を「低速スイッチング制御」と称する。また、以下では、高速スイッチング制御される2つのスイッチング素子を含むレグを「高速レグ」と称し、低速スイッチング制御される2つのスイッチング素子を含むレグを「低速レグ」と称する。なお、高速スイッチング制御におけるスイッチング動作の周期は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)のキャリア信号の周期に相当し、電源周波数に対して十分に短い時間に設定される。
【0027】
本実施形態においても、一般的なトーテムポールブリッジレス動作と同じ動作が行われる。ただし、所定のタイミングでトーテムポールブリッジレス動作とブリッジレスPFC動作を切り替える点が、一般的なトーテムポールブリッジレス動作と異なる。
【0028】
次に、
図2を参照して、本実施形態におけるトーテムポールブリッジレス動作及びブリッジレスPFC動作の詳細、及び、トーテムポールブリッジレス動作とブリッジレスPFC動作の切替方法について説明する。なお、以下ではトーテムポールブリッジレス動作で制御されるモードを「第1モード」と称する場合がある。また、ブリッジレスPFC動作で制御されるモードを「第2モード」と称する場合がある。
【0029】
タイミングT1~T2の期間は、交流電源100から入力される交流電圧Vacの正の半サイクルを示す。タイミングT2~T3の期間は、交流電圧Vacの負の半サイクルを示す。すなわち、タイミングT1~T3の期間は、交流電圧Vacの1サイクルを示す。同様に、タイミングT3~T4の期間は、交流電圧Vacの正の半サイクルを示す。タイミングT4~T5の期間は、交流電圧Vacの負の半サイクルを示す。すなわち、タイミングT3~T5の期間は、交流電圧Vacの1サイクルを示す。
【0030】
また、タイミングT1,T3,及びT5は、交流電圧Vacの極性が負から正に切り替わるゼロクロス点を示す。タイミングT2及びT4は、交流電圧Vacの極性が正から負に切り替わるゼロクロス点を示す。
【0031】
タイミングT1~T3の期間はトーテムポールブリッジレス動作が行われる期間を示し、タイミングT3~T5の期間はブリッジレスPFC動作が行われる期間を示す。
【0032】
タイミングT1~T2の期間において、制御装置20は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態とし、第4スイッチング素子Q4をオン状態とする。制御装置20は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を高速スイッチング制御して、互いのオンオフ状態を切り替える。
【0033】
タイミングT2において、制御装置20は、第3スイッチング素子Q3のオンオフ状態をオフ状態からオン状態に切り替え、タイミングT3までオン状態で固定する。また、タイミングT2において、制御装置20は、第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態をオン状態からオフ状態に切り替え、タイミングT3までオフ状態で固定する。
【0034】
タイミングT2~T3の期間において、制御装置20は、タイミングT1~T2の期間に引き続き、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を高速スイッチング制御して、互いのオンオフ状態を切り替える。
【0035】
このように、本実施形態に係るトーテムポールブリッジレス動作では、第1レグR1が高速スイッチング制御され、第2レグR2が低速スイッチング制御される。すなわち、タイミングT1~T3の期間では、第1レグR1が高速レグであり、第2レグR2が低速レグである。
【0036】
制御装置20は、交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間に第1モードから第2モードに切り替える。「交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間」の一例としては、交流電圧Vacの絶対値が50%以下となる期間、交流電圧Vacの絶対値が10%以下となる期間などを挙げることができる。なお、交流電圧Vacの取得方法については、例えば力率改善回路10に電圧センサを設け、制御装置20が電圧センサから交流電圧Vacを取得するようにすればよい。
【0037】
図2では、ゼロクロス点であるタイミングT3で第1モードから第2モードに切り替える例を示すが、交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間であればゼロクロス点でなくてもよい。
【0038】
タイミングT3において、制御装置20は、第1モードから第2モードに切り替える。以下、第2モード、すなわち、ブリッジレスPFC動作の具体例について説明する。
【0039】
タイミングT3において、制御装置20は、第3スイッチング素子Q3のオンオフ状態をオン状態からオフ状態に切り替え、タイミングT4までオフ状態で固定する。また、タイミングT3において、制御装置20は、第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態をオフ状態からオン状態に切り替え、タイミングT4までオン状態で固定する。また、制御装置20は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を高速スイッチング制御して、互いのオンオフ状態を切り替える。
【0040】
タイミングT4において、制御装置20は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態とし、タイミングT5までオフ状態で固定する。また、タイミングT4において、制御装置20は、第2スイッチング素子Q2をオン状態とし、タイミングT5までオン状態で固定する。
【0041】
タイミングT4~T5の期間において、制御装置20は、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4を高速スイッチング制御して、互いのオンオフ状態を切り替える。
【0042】
このように本実施形態に係るブリッジレスPFC動作では、交流電圧Vacの1サイクルのうち、正の半サイクルと負の半サイクルにおいて高速レグと低速レグが切り替わる。正の半サイクルでは第1レグR1が高速レグであり、第2レグR2が低速レグである。負の半サイクルでは第1レグR1が低速レグであり、第2レグR2が高速レグである。
【0043】
タイミングT5において、制御装置20は、第2モードから第1モードに切り替える。
図2では、ゼロクロス点であるタイミングT5で第2モードから第1モードに切り替える例を示すが、交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間であればゼロクロス点でなくてもよい。タイミングT5以降の制御として、例えば、高圧バッテリの充電が完了するまで、制御装置20は交流電圧Vacの1サイクルごとに、第1モードと第2モードを切り替えることができる。
【0044】
このように、本実施形態では、制御装置20は、交流電圧Vacの1サイクルごとに、第1モードと第2モードを切り替える。これにより、高速スイッチング制御される高速レグと低速スイッチング制御される低速レグを切り替えることができる。上述した従来技術のようにどちらか一方のレグを高速スイッチング制御し、他方のレグを低速スイッチング制御する場合、一方のレグにスイッチング損失が偏ることになり、スイッチング素子の故障のリスクが高まるおそれがある。
【0045】
これに対し、本実施形態のように、高速レグと低速レグを切り替えることにより、どちらか一方のレグにスイッチング損失が偏ることがなくなり、スイッチング損失が平均化される。これにより、スイッチング素子の故障のリスクを低減させることができる。
【0046】
なお、第1モードと第2モードを切り替えるタイミングは、交流電圧Vacの1サイクルごとに限定されない。第1モードと第2モードを切り替えるタイミングは、交流電圧Vacの2サイクルごとでもよいし、所定の整数倍のサイクルごとでも構わない。
【0047】
次に、
図3~7を参照して、
図2のタイミングT1~T5における各スイッチング素子のオンオフ状態に応じた電流経路について説明する。
【0048】
最初に、
図3~6を参照して
図2のタイミングT1~T3、すなわち第1モードにおける各スイッチング素子のオンオフ状態に応じた電流経路について説明する。
【0049】
図3は、
図2のタイミングT1~T2において、第1スイッチング素子Q1がオフ状態、第2スイッチング素子Q2がオン状態、第3スイッチング素子Q3がオフ状態、及び第4スイッチング素子Q4がオン状態であるときの電流経路を示す。交流電源100から出力された電流は、リアクトル11、第1ノードN1、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、及び第2ノードN2を通って流れる。このとき、リアクトル11は励磁され正極性に電流が蓄積される。
【0050】
図3に示すオンオフ状態から、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のオンオフ状態が切り替えられると、
図4に示すように、リアクトル11に蓄積された電流が第1スイッチング素子Q1を通って平滑コンデンサ13へ流れ、リアクトル11の電流は減少する。
【0051】
図5は、
図2のタイミングT2~T3において、第1スイッチング素子Q1がオン状態、第2スイッチング素子Q2がオフ状態、第3スイッチング素子Q3がオン状態、及び第4スイッチング素子Q4がオフ状態であるときの電流経路を示す。交流電源100から出力された電流は、第2ノードN2、第3スイッチング素子Q3、第1スイッチング素子Q1、第1ノードN1、及びリアクトル11を通って流れる。このとき、リアクトル11は励磁され負極性に電流が蓄積される。
【0052】
図5に示すオンオフ状態から、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のオンオフ状態が切り替えられると、
図6に示すように、リアクトル11に蓄積された電流が第2スイッチング素子Q2を通って平滑コンデンサ13へ流れ、リアクトル11の電流は減少する。
【0053】
次に、
図7を参照して、
図2のタイミングT3~T5、すなわち第2モードにおける各スイッチング素子のオンオフ状態に応じた電流経路について説明する。
【0054】
図7は、タイミングT4~T5において、第1スイッチング素子Q1がオフ状態、第2スイッチング素子Q2がオン状態、第3スイッチング素子Q3がオフ状態、及び第4スイッチング素子Q4がオン状態であるときの電流経路を示す。交流電源100から出力された電流は、第2ノードN2、第4スイッチング素子Q4、第2スイッチング素子Q2、第1ノードN1、及びリアクトル11を通って流れる。リアクトル11は励磁され負極性に電流が蓄積される。
【0055】
図7に示すオンオフ状態から、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態が切り替えられると、リアクトル11に蓄積された電流が第3スイッチング素子Q3を通って平滑コンデンサ13へ流れ、リアクトル11の電流は減少する。このときの電流経路は、
図6と同じとなる。
【0056】
なお、タイミングT3~T4における電流経路は、
図3~4を用いて説明した電流経路と同じである。
【0057】
第1モードと第2モードを切り替える際に、交流電圧Vacの絶対値の他に、力率改善回路10で伝送する電力を切り替えの条件に加えてもよい。力率改善回路10で伝送する電力を用いた切替方法の一例について
図8を参照して説明する。
【0058】
図8の横軸は時間を示し、縦軸は力率改善回路10で伝送する電力を示す。タイミングT11は、力率改善回路10で伝送する電力が予め設定された閾値TH以上の値に変化したタイミングを示す。タイミングT12は、力率改善回路10で伝送する電力が閾値THより小さい値に変化したタイミングを示す。
【0059】
制御装置20は、タイミングT11までの期間は第2モードで制御し、タイミングT11以降で交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間において、第2モードから第1モードに切り替えてもよい。また、制御装置20は、タイミングT12以降で交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間において、第1モードから第2モードに切り替えてもよい。
【0060】
なお、力率改善回路10で伝送する電力の取得方法については、例えば力率改善回路10に電圧センサ及び電流センサを設け、電圧センサ及び電流センサの値から電力を算出して取得すればよい。
【0061】
以上説明したように、実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0062】
制御装置20は、交流電源100の力率を改善する力率改善回路10に用いられる。力率改善回路10は、第1スイッチング素子Q1及び第1スイッチング素子Q1に直列に接続される第2スイッチング素子Q2から構成される第1レグR1と、第3スイッチング素子及び第3スイッチング素子に直列に接続される第4スイッチング素子から構成され、かつ第1レグR1に並列に接続される第2レグR2と、を有する。
【0063】
制御装置20は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のオンオフ状態を所定の第1周波数で制御する一方で、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態を第1周波数より低い第2周波数で制御する第1モードと、交流電源100から入力される交流電圧Vacの1サイクルのうち正の半サイクルでは、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のオンオフ状態を第1周波数で制御する一方で、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態を第2周波数で切り替え、正の半サイクルに続く負の半サイクルでは、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のオンオフ状態を第2周波数で制御する一方で、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4のオンオフ状態を第1周波数で制御する第2モードと、を所定のタイミングで切り替える。
【0064】
第1周波数の一例は、PWMのキャリア信号の周期に相当する周波数である。第2周波数の一例は、電源周波数である。
【0065】
上記構成によれば、第1モードと第2モードとを所定のタイミングで切り替えることにより、高速スイッチング制御される高速レグと低速スイッチング制御される低速レグを切り替えることができる。これにより、どちらか一方のレグにスイッチング損失が偏ることがなくなり、スイッチング損失が平均化される。これにより、スイッチング素子の故障のリスクを低減できる。
【0066】
また、従来技術では、高速レグのスイッチング損失が大きいため、高速レグには性能が高い高コストのスイッチング素子を使わざるを得ないおそれがある。これに対し、上記構成によれば、高速レグと低速レグを切り替えることにより、どちらか一方のレグにスイッチング損失が偏ることがなくなるため、どちらか一方のレグのスイッチング素子について必ずしも高コストのスイッチング素子を採用する必要がなくなる。性能を低くしたとしても所望の力率改善効果が得られるのであれば、低コストのスイッチング素子を採用しても足りることになるから、コスト削減に寄与する。
【0067】
また、従来技術では、高速レグのスイッチング損失が大きいため、高速レグに用いる放熱装置を大型化せざるを得ず電力変換装置全体の体格も大きくなってしまう。これに対し、上記構成によれば、スイッチング損失が低減されるため、小型の放熱装置を採用でき、電力変換装置の小型化に寄与する。
【0068】
制御装置20は、力率改善回路10で伝送する電力が閾値THより小さい値から閾値TH以上の値に変化した場合は、所定のタイミングで第2モードから第1モードに切り替え、電力が閾値TH以上の値から閾値THより小さい値に変化した場合は、所定のタイミングで第1モードから第2モードに切り替えてもよい。ここでいう閾値THは「第1閾値」に対応する。
【0069】
力率改善回路10で伝送する電力が閾値THより小さい場合、すなわち軽負荷時においては、第2モードのほうがゼロクロス点までスイッチングできる。そこで、軽負荷時は、第1モードから第2モードに切り替えることにより、力率を改善できる。
【0070】
また、第2モードのほうが第1モードよりデッドタイムを短くすることができる。第1モードでは軽負荷時において、第2モードと比較して同期整流の精度が低くなる場合がある。そこで、軽負荷時は、第1モードから第2モードに切り替えることにより、同期整流の精度を向上させることができる。
【0071】
所定のタイミングは、交流電源100から入力される交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間である。ここでいう所定の閾値は「第2閾値」に対応する。交流電圧Vacの絶対値が所定の閾値以下となる期間には、交流電圧Vacのゼロクロス点が含まれる。ゼロクロス点で第1モードから第2モードに切り替えることにより、第1モードにおける特有のゼロクロスサージを抑制できる。
【0072】
第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4は、いずれも同一の半導体材料によって形成されてもよい。同一の半導体材料によって形成されたスイッチング素子を用いることにより、コスト削減に寄与する。
【0073】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0074】
例えば、
図9に示すように、第2電力線L2と第2ノードN2との間に、リアクトル11とは別のリアクトル12が設けられてもよい。2つのリアクトル11,12が設けられても上述の効果と同様の効果が得られる。なお、2つのリアクトル11,12が設けられた場合の電流経路は、上述の電流経路と同じである。
【0075】
制御装置20としての機能は、コンピュータとコンピュータを機能させるためのプログラムにより実行することができる。
【0076】
この場合、制御装置20は、プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの演算処理装置と少なくとも1つの記憶装置を有するコンピュータを備えている。コンピュータがプログラムを実行することにより、上述した実施形態で説明した各機能が実行される。
【0077】
プログラムは、一時的ではなく、コンピュータが読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、制御装置20が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して制御装置20に供給されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 力率改善回路
20 制御装置
100 交流電源
Q1 第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
Q3 第3スイッチング素子
Q4 第4スイッチング素子
R1 第1レグ
R2 第2レグ