(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016579
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20240131BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240131BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118814
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】村山 一郎
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】漏れ磁束の発生を可及的に抑制しつつ、トランスを介した高効率な給電を可能とする。
【解決手段】この給電システム10は、トランス11と、一次側回路12と、二次側回路13と、二次電池14と、二次側回路13と二次電池14との間に配設される第一リレー15と、二次側回路13と第一リレー15との間に配設される第二リレー16と、二次側回路13の電圧を測定する電圧測定部16と、制御部17とを備える。制御部17は、第一リレー15をオフにし、第二リレー16をオンにして、所定の電流を一次側回路12から供給した場合に電圧測定部17で測定される二次側回路13の電圧の経時変化に基づいて、一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係を評価する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側コイルと二次側コイルとを有するトランスと、
前記一次側コイルに流れる電流を制御する一次側回路と、
前記二次側コイルに流れる電流を制御する二次側回路と、
前記二次側回路に接続される二次電池と、
前記二次側回路と前記二次電池との間に配設される第一リレーと、
前記二次側回路と前記第一リレーとの間に配設される第二リレーと、
前記二次側回路の電圧を測定する電圧測定部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記第一リレーをオフにし、前記第二リレーをオンにして、所定の電流を前記一次側回路から供給した場合に前記電圧測定部で測定される前記二次側回路の電圧の経時変化に基づいて、前記一次側コイルと前記二次側コイルとの位置関係を評価する、給電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記一次側コイルと前記二次側コイルとの位置関係が許容できる状態にあると判定した場合、前記第二リレーをオフにし、前記第一リレーをオンにして、前記二次電池の充電を開始する、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記所定の電流は、前記二次電池の充電時に前記一次側回路から供給される電流よりも小さい請求項1又は2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記一次側コイルは充電ステーションに設けられ、前記二次側コイルは車両に搭載され、
前記制御部は、前記一次側コイルと前記二次側コイルとの位置関係が許容できる状態ではないと判定した場合、前記位置関係が許容できる状態となる位置まで前記二次側コイルを移動させる、請求項1~3の何れか一項に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムに関し、特にトランスを介して給電を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を非接触で充電する非接触式充電器として、トランスを介して送電側から受電側に電力を伝達するタイプの給電システムが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-205829号公報
【特許文献2】特開2016-152687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の給電システムにおいては、トランスを構成する送電側のコイルと、受電側のコイルとの位置関係が、給電効率を高める上で重要となる。また、送電側のコイルと、受電側のコイルとの位置関係によっては、漏れ磁束が発生し、周辺の電子機器に動作不良等の悪影響を及ぼすおそれがあることからも、双方のコイル間の位置関係を適切に管理する必要がある。この種の問題は、各コイルを巻き付けるコアが分割形態をなす場合により顕著となる。すなわち、特許文献1に記載のように、送電側コイルが設けられる機器(例えば充電ステーション)と受電側コイルが設けられる機器(例えば車両)とが相対移動可能な場合、双方のコイル間の位置関係がその都度変化するため、位置ずれに伴う磁束漏れを可及的に抑制することが肝要となる。
【0005】
例えば特許文献2には、送電側コイルと受電側コイルとの相対位置に応じて変動する漏れ磁束を検知して、検知結果に基づき運転者等に報知することにより、運転者等が車両に搭載された受電側コイルの位置を好適に決定する手段が開示されている。しかしながら、この手段だと、コイル間の位置関係に問題がある場合に許容できないレベルの漏れ磁束が発生することには変わりない。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、漏れ磁束の発生を可及的に抑制しつつ、トランスを介した高効率な給電を可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係る給電システムによって達成される。すなわち、この給電システムは、一次側コイルと二次側コイルとを有するトランスと、一次側コイルに流れる電流を制御する一次側回路と、二次側コイルに流れる電流を制御する二次側回路と、二次側回路に接続される二次電池と、二次側回路と二次電池との間に配設される第一リレーと、二次側回路と第一リレーとの間に配設される第二リレーと、二次側回路の電圧を測定する電圧測定部と、制御部とを備え、制御部は、第一リレーをオフにし、第二リレーをオンにして、所定の電流を一次側回路から供給した場合に電圧測定部で測定される二次側回路の電圧の経時変化に基づいて、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係を評価する点をもって特徴付けられる。
【0008】
本発明者は、二次電池への給電を遮断した状態で二次側回路に生じる電圧の経時変化に着目し、この経時変化と、トランスの各コイルの位置関係との間に、所定の関係があることを見出した。本発明は上記知見に基づき成されたもので、二次側回路と二次電池との接続を切り替える一次リレーとは別に、二次側回路と第一リレーとの間に第二リレーを接続し、この第二リレーをオンにし、第一リレーをオフにした状態で給電した場合における二次側回路の電圧の経時変化に基づいて、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係を評価するようにした。このようにすれば、二次電池に対する給電(充電)時における給電条件よりも緩い条件(例えば短時間、低電流など)で、コイルの位置関係を評価するための給電を実施できるので、コイルの相対位置が正規の位置からずれていたとしても、その際に生じる磁束の漏れを減らすことができる。以上より、本発明によれば、漏れ磁束を抑制しつつ、トランスを介した給電を高効率に実施することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る給電システムにおいて、制御部は、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係が許容できる状態にあると判定した場合、第二リレーをオフにし、第一リレーをオンにして、二次電池の充電を開始してもよい。
【0010】
このように一次側コイルと二次側コイルとの位置関係が許容できる状態にあると判定した場合に、二次電池の充電を開始するようにすれば、常にコイル間の位置合わせが適正になされた状態で充電を開始することができるので、高効率な充電を安定的に実施することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る給電システムにおいて、所定の電流は、二次電池の充電時に一次側回路から供給される電流よりも小さくてもよい。
【0012】
本発明における所定の電流は、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係を評価するための給電時に設定される電流であるから、充電時のように大きい値に設定する必要がない。言い換えると、充電時よりも小さい電流であっても、二次側回路に付与された電圧の経時変化を把握することで、両コイルの位置関係を適正に評価することができる。電流が小さければ、コイル間の相対位置がずれていた場合に生じる磁束の漏れ量も小さくなるので好適である。
【0013】
また、本発明に係る給電システムにおいて、一次側コイルは充電ステーションに設けられ、二次側コイルは車両に搭載されてもよい。また、その場合、制御部は、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係が許容できる状態ではないと判定した場合、位置関係が許容できる状態となる位置まで二次側コイルを移動させてもよい。
【0014】
このように本発明に係る給電システムを車両の充電システムに適用することを考えた場合、制御部が、一次側コイルと二次側コイルとの位置関係が許容できる状態ではないと判定した場合、位置関係が許容できる状態となる位置まで二次側コイルを移動させるようにすることで、コイル間の位置ずれを迅速にかつ適正に解消して、高効率な充電を実施することが可能となる。この場合、二次側コイルの移動は、二次側コイルが搭載されている車両を移動させることで容易にかつ迅速に実施することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る給電システムによれば、漏れ磁束の発生を可及的に抑制しつつ、トランスを介した高効率な給電が可能となる。よって、給電対象を二次電池とする場合、高効率な充電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給電システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す給電システムを用いた二次電池の給電方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る給電システム、及びこの給電システムを用いた二次電池の給電方法の内容を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る給電システム10の全体構成を示している。この給電システム10は、本実施形態では車両に対する充電を行うためのもので、トランス11と、トランス11の一次側に位置する一次側回路12と、トランス11の二次側に位置する二次側回路13と、二次側回路13に接続される二次電池14と、二次側回路13と二次電池14との間に配設される第一リレー15と、二次側回路13と第一リレー15との間に接続される第二リレー16と、二次側回路13の電圧を測定する電圧測定部17と、BMU18とを備える。ここでBMU18が本発明に係る制御部に相当する。以下、各要素の詳細を説明した後、給電システム10の使用方法(すなわち給電方法)の一例について説明する。
【0019】
トランス11は、コア19に巻き付けられた一次側コイル20と、二次側コイル21とを有する。コア19は、本実施形態では、UUコアと呼ばれる一対の分割コア22,23で構成されており、一次側の分割コア(第一分割コア22)に一次側コイル20が巻き付けられ、二次側の分割コア(第二分割コア23)に二次側コイル21が巻き付けられている。一次側コイル20は一次側回路12に接続され、二次側コイル21は二次側回路13に接続されている。
【0020】
なお、
図1では、ともにU字状をなす各分割コア22,23の底部22a,23aに対応するコイル20,21が巻き付けられた形態を例示しているが、各コイル20,21の巻き付け位置は底部22a,23aに限られない。例えば図示は省略するが、底部22a,23aの両端から屈曲して同じ方向に伸びる一対の突き合わせ部22b,23bに対応するコイル20,21を巻き付けてもよい。
【0021】
もちろん、コア19の形態はUUコアには限定されない。一対の分割コアで構成される限りにおいて任意の形態の分割コアを適用可能である。
【0022】
一次側回路12は、直流電源24に接続され、直流電源24から供給された電流を所定の態様に制御可能に構成され、具体的には、直流を所定電圧の交流に変換可能に構成される。この場合、トランス11と、一次側回路12、及び二次側回路13とでDC-DC電力変換器が構成されている。
【0023】
本実施形態では、一次側回路12は、いわゆるブリッジ回路であり、4つのスイッチング素子12aと、各スイッチング素子12aに接続される逆並列のダイオード12bとを有する。この一次側回路12は、直流電源24から入力された直流電圧を高周波の方形波交流電圧に変換可能に構成されている。このインバータ動作は、コントローラ25(
図1を参照)からの指令に基づき実施される。言い換えると、一次側回路12による交流変換条件、例えば交流電圧の大きさ等は、コントローラ25により制御可能とされている。
【0024】
二次側回路13は、トランス11を介して一次側回路12から供給された電流を所定の態様に制御可能に構成され、具体的には、交流を所定電圧の直流に変換可能に構成される。
【0025】
本実施形態では、二次側回路13は、いわゆる整流回路であり、4つのダイオード13aと、各ダイオード13aに並列に接続される平滑キャパシタ13bとを有する。この二次側回路13は、トランス11を介して一次側回路12から入力された方形波交流電圧を直流電圧に変換可能に構成されている。
【0026】
一次側回路12と二次側回路13にはそれぞれコンデンサ12c,13cが並列に接続されている。
【0027】
第一リレー15は、二次側回路13と二次電池14との間に配設され、二次側回路13と二次電池14との通電状態及び遮断状態とを切替え可能に構成されている。すなわち、第一リレー15がオンの状態では、二次側回路13から二次電池14に電力が供給され、第一リレー15がオフの状態では、二次側回路13から二次電池14への電力供給が行われない状態となる。
【0028】
第二リレー16は、二次側回路13と第一リレー15との間に配設されている。言い換えると、第二リレー16は、第一リレー15よりも二次側回路13に近い側で二次側回路13と並列に接続されている。これにより、第一リレー15のオンオフ状態の如何によらず、自らのスイッチング動作により、二次側回路13との通電状態及び遮断状態とを切替え可能としている。すなわち、第二リレー16がオンの状態では、二次側回路13に並列に接続された第二リレー16を含む回路が通電状態となり、第二リレー16がオフの状態では、第二リレー16を含む回路が電気的に遮断された状態となる。
【0029】
電圧測定部17は例えば電圧計であり、本実施形態では、第二リレー16と直列に接続されている。このように接続することで、電圧測定部17は、第二リレー16がオンの状態で、第二リレー16を含む回路の電圧を測定可能としている。この場合、第二リレー16を含む回路は二次側回路13と並列に接続されているので、電圧測定部17で測定した電圧は、二次側回路13の電圧、正確には、二次側回路13と並列に接続されたコンデンサ13cの電圧として取得可能である。
【0030】
制御部としてのBMU18は、二次電池14の状態(電圧等の各パラメータ)を監視すると共に、二次側回路13から二次電池14への電力供給を制御する。また、BMU18は、電圧測定部17で得た電圧値に関する情報を取得し、当該電圧値に関する情報に基づいて分割コア22,23の接合状態の良否、具体的には一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係について評価する処理を実施可能としている。
【0031】
また、本実施形態では、BMU18は、第一リレー15と第二リレー16のスイッチング動作を制御すると共に、コントローラ25にBMU18が取得した情報(例えば二次電池14の電圧測定値に関する情報)を送信可能としている。
【0032】
この場合、トランス11の第一分割コア22と、一次側コイル20と、一次側回路12と、直流電源24と、コントローラ25とが充電ステーション26側に設けられる。また、トランス11の第二分割コア23と、二次側コイル21と、二次側回路13と、二次電池14と、第一リレー15と、第二リレー16と、電圧測定部17と、BMU18とが車両27側に設けられる。
【0033】
次に、上記構成をなす給電システム10を用いた二次電池14への給電方法(充電方法)の一例を、
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
ここで、本実施形態に係る給電方法は、評価用リレー切替えステップS1と、一次側回路12の電圧調整ステップS3と、送電ステップS4と、二次側回路13の電圧測定ステップS5と、コア結合状態評価ステップS6と、充電用リレー切替えステップS9、及び、充電開始ステップS10とを備える。なお、前提として、トランス11の第一分割コア22と第二分割コア23とは所定の位置関係で互いに突き合わされた状態であるとする。以下、各ステップS1~S10を時系列順に説明する。
【0035】
(S1)評価用リレー切替えステップ
このステップS1では、トランス11のコア結合状態を評価するために各リレー15,16を切り替える。具体的には、第一リレー15をオフにし、第二リレー16をオンにすることで、二次側回路13と二次電池14とが電気的遮断状態となり、かつ二次側回路13と電圧測定部17とが通電状態となる。なお、第一リレー15及び第二リレー16のオン-オフ動作はBMU18により実施(制御)される。
【0036】
(S2)電圧情報送信ステップ
(S3)電圧調整ステップ
本実施形態では、まずBMU18が取得した二次電池14の電圧に関する情報を一次側回路12のコントローラ25に送信する。コントローラ25は、受信した上記電圧に関する情報に基づいて、直流電源24から入力される直流を所定電圧、具体的には二次電池14の電圧に等しい大きさの電圧の交流に変換するよう、一次側回路12に指令を送る。これにより、一次側回路12で上記所定電圧の交流が生成される。
【0037】
また、この際、一次側回路12で生成される交流の電流値は、二次電池14の充電時に一次側回路12で生成される交流の電流値よりも小さくなるように設定するのがよい。一例として、コア結合状態チェック用に一次側回路12で生成される交流の電流値(コア結合チェック用電流の大きさ)は、充電時電流よりも101~2オーダー小さい電流値(例えば0.1~0.5A)に設定することが可能である。
【0038】
(S4)送電ステップ
このステップS4では、ステップS3で生成した所定電圧及び所定電流の交流を、トランス11を介して二次側回路13に送電する。一次側回路12で上述した交流が生成された時点で、トランス11の第一分割コア22と第二分割コア23とは所定の位置関係で互いに突き合わされた状態にある(
図1を参照)。よって、一次側回路12で上述の交流を生成することで、所定の位置関係にある第一分割コア22と第二分割コア23、及び、一次側コイル20と二次側コイル21による電磁誘導作用及び相互誘導作用が生じ、一次側回路12で生成した所定電圧及び所定電流の交流(ここでは方形波交流)が、二次側回路13に供給される。二次側回路13は供給された交流をその整流作用により所定の直流に変換する。変換した直流の電力は二次側回路13と並列に接続されるコンデンサ13cに蓄えられる。
【0039】
(S5)電圧測定ステップ
このステップS5では、二次側回路13の電圧を電圧測定部17で測定する。すなわち、先のステップS1で第二リレー16をオンにすることにより、第二リレー16と電圧測定部17とを含む回路は、二次側回路13と電気的に接続された状態となる。また、この回路は、二次側回路13と並列に接続されている。よって、二次側回路13(のコンデンサ13c)に生じた電圧と同じ大きさの電圧が電圧測定部17に付与される。よって、この電圧測定部17で電圧を測定することにより、二次側回路13の電圧が測定される。なお、この電圧測定は、一次側回路12からの送電が開始された後、所定の期間にわたって行う。
【0040】
(S6)コア結合状態評価ステップ
以上のようにしてトランス11を介した送電時における二次側回路13の電圧を測定した場合、当該測定した電圧に関する情報に基づき、トランス11を構成する分割コア22,23の結合状態、言い換えると、各分割コア22,23の所定位置に取付けられている一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係を評価する。本実施形態では、電圧測定部17で得た二次側回路13の電圧の経時変化に基づいて、一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係を評価する。この際、予め、所定電圧及び所定電流の交流を一次側回路12からトランス11を介して二次側回路13に送電した場合における、二次側回路13の電圧変化量(例えば所定時間にどれだけ電圧が上昇したか)と、一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係、例えば分割コア22,23の突き合わせ方向に直交する向きの位置ずれ量との関係についてデータを取得しておく。また、この際、許容できる範囲の位置ずれ量の上限値に対応する電圧変化量の閾値(例えば所定時間後の電圧測定値の下限値)を設定しておく。そして、ステップS5で取得したデータを利用して、二次側回路13の電圧変化量に基づいて、一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係を評価する。この場合、例えば測定開始時から所定時間(例えば2秒)の経過後における電圧測定値が、予め設定した電圧測定値の閾値(例えば80V)以上であった場合、所定の効率以上でトランス11を介した送電がなされているとみなせるので、コイル20,21間の位置ずれ量ひいては分割コア22,23間の位置ずれ量は許容できる程度に小さいものと判定し、ステップS7に進む。なお、以上の判定処理は、BMU18により行われる。
【0041】
(S8)二次側コイル移動ステップ
あるいは、測定開始時から所定時間の経過後における電圧測定値が、予め設定した電圧測定値の閾値未満であった場合、所要の効率よりも低い効率でトランス11を介した送電がなされているとみなせるので、コイル20,21間の位置ずれ量ひいては分割コア22,23間の位置ずれ量が許容できない程度に大きいものと判定し、ステップS8に進む。ここでステップS8について先に説明する。ステップS8では、上記位置ずれが解消する向き及び大きさ分だけ二次側コイル21を移動させる。本実施形態では二次側コイル21は車両27側に設けられているので、所定の向き及び量だけ車両27を移動させることにより、上記位置ずれを解消させる。然る後、ステップS4に戻り、ステップS4~S6の処理を実施し、位置ずれ量が許容できる程度に小さくなるまで、ステップS4~S6,S8を繰り返す。
【0042】
なお、位置ずれの方向については、実際にセンサ等で検知することも可能であるが、例えば車両27の移動による分割コア22,23の結合動作の際、位置ずれの向きが制限されるような構造を一次側(充電ステーション26側)と二次側(車両27側)の少なくとも一方に設けてもよい。
【0043】
(S7)電圧評価ステップ
コイル20,21間の位置ずれ量ひいては分割コア22,23間の位置ずれ量は許容できる程度に小さいものと判定した場合、本ステップS7に係る処理を実施する。すなわち、本ステップS7では、送電ステップS4で二次側回路13に送電したことにより二次側回路13の電圧が、二次電池14の電圧に等しい大きさに到達しているか否かを判定する。この判定処理は、BMU18により実施される。なお、ここでいう二次電池14の電圧は、ステップS2でコントローラ25に送信した情報に係る電圧の値でよい。そして、二次側回路13の電圧が二次電池14の電圧に到達していると判定した場合、例えばBMU18がコントローラ25に送電を停止する旨の指令を送信し、ステップS9に進む。当該処理についてもBMU18により実施される。
【0044】
あるいは、二次側回路13の電圧が二次電池14の電圧に達していないと判定された場合、一次側回路12からの送電を継続すると共に、所定時間の経過ごとに、ステップS5~S7を再び実施する。この一連のステップS5~S7に係る処理は、二次側回路13の電圧が二次電池14の電圧に到達するまで繰り返し実施される。
【0045】
(S9)充電用リレー切替えステップ
本ステップS9では、二次電池14の充電を開始可能とするために各リレー15,16の切替えを行う。具体的には、具体的には、第一リレー15をオンにし、第二リレー16をオフにすることで、二次側回路13と二次電池14とが電気的遮断状態となり、かつ二次側回路13と電圧測定部17とが通電状態となる。なお、上述した各リレー15,16のオン-オフ切替え動作は、BMU18により実施される。
【0046】
(S10)充電開始ステップ
本ステップS10では、トランス11を介して一次側回路12から二次側回路13に所定電圧及び所定電流の交流を供給し、二次側回路13で整流された所定電圧の直流を二次電池14に供給する。これにより二次電池14の充電が実施される。二次電池14の充電はBMU18により制御される。
【0047】
以上述べたように、本実施形態に係る給電システム10では、トランス11の二次側回路13と二次電池14との接続を切り替える第一リレー15とは別に、二次側回路13と第一リレー15との間に第二リレー16を接続し、この第二リレー16をオンにし、第一リレー15をオフにした状態で給電した場合における二次側回路13の電圧の経時変化に基づいて、一次側コイル20と二次側コイル21との位置関係を評価するようにした。このようにすれば、二次電池14に対する給電(充電)時における給電条件よりも緩い条件(例えば短時間、低電流など)で、コイル20,21の位置関係ひいては分割コア22,23の位置関係を評価するための給電を実施できるので、コイル20,21の相対位置が正規の位置からずれていたとしても、その際に生じる磁束の漏れを減らすことができる。以上より、本実施形態に係る給電システム10によれば、漏れ磁束を抑制しつつ、トランス11を介した外部電源(ここでは直流電源24)による二次電池14の充電を高効率に実施することが可能となる。
【0048】
特に、本実施形態では、コア結合状態評価ステップS6の際に一次側回路12から送電される所定の電流は、二次電池14の充電開始ステップS10の際に一次側回路12から供給される電流よりも小さく(ここでは101オーダーA程度)したので、コイル20,21間の相対位置がずれていた場合に生じる時速の漏れ量を小さく抑えることができる。もちろん、充電時よりも小さい電流であっても、二次側回路13に付与された電圧の経時変化(ここでは所定時間の経過後における電圧測定値)に基づき、コイル20,21間の位置関係を適正に評価することができるので、コア結合状態評価ステップS6の実施に際しては何ら支障ない。
【0049】
また、充電を行わないときは、二次側回路13の電圧は零又は零に近い状態であることが望まれるところ、本実施形態に係る給電システム10であれば、二次電池14と接続される第一リレー15をオフにし、二次側回路13と並列に接続される第二リレー16をオンにすることによって、二次側回路13のコンデンサ13cに蓄えられた電荷を放電することができるので、別に放電用のリレーを設ける必要もない。
【0050】
また、本実施形態のように、なお、先のステップS4~S7で、二次側回路13のコンデンサ13cの電圧は、二次電池14の測定電圧に等しい大きさにまで高まっているので、ステップS9で各リレー15,16を切り替えるだけで、所望条件下での充電が可能となる。そのため、従来、二次電池14を保護するために、充電用のメインリレー(本実施形態でいえば第一リレー15)と並列に接続する必要があったプレチャージリレーも不要となり、回路の簡素化を図ることが可能となる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る給電システム及び給電方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0052】
例えばコア結合状態評価ステップS6における二次側回路13の電圧の経時変化について、本実施形態では、測定開始時から所定時間の経過後までに上昇した電圧量(例えば測定開始後2秒後で100V)を判定基準とした場合を例示したが、もちろんこれ以外のパラメータを判定基準としてもよい。例えば測定開始時から所定の電圧に達するまでに要する時間を判定基準としてもよいし、単位時間当たりの電圧上昇量(上昇速度)を判定基準としてもよい。要は、コイル20,21間の位置関係との相関に関するデータが有効に取得される限りにおいて、経時変化の具体的な判定基準は任意である。
【0053】
また、本実施形態では、コア結合状態評価ステップS6の前に、BMU18が取得した二次電池14の電圧に関する情報を一次側回路12のコントローラ25に送信し(電圧情報送信ステップS2)、コントローラ25は、受信した上記電圧に関する情報に基づいて、直流電源24から入力される直流を、二次電池14の電圧に等しい大きさの電圧の交流に変換するよう、一次側回路12に指令を送るようにしたが(電圧調整ステップS3)、これらのステップS2,S3は省略してもよい。すなわち、コア結合状態評価ステップS6において分割コア22,23の結合状態(コイル20,21間の位置関係)が適正に評価可能な限りにおいて、コア結合状態評価時の送電電圧は任意に設定してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、第二リレー16と直列に接続した電圧測定部17で二次側回路13の電圧を測定可能とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えばBMU18で二次側回路13の電圧を測定してもよい。BMU18は二次電池14の電圧を監視する機能を有する関係上、電圧測定用の構成を有しているためである。
【0055】
また、以上の説明では、電気自動車などモータで駆動する車両27のモータ駆動用バッテリに本発明を適用した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば駆動用モータ以外の電力負荷先に電力を供給する車載用バッテリに本発明を適用してもよい。あるいは、車載用に限らずバッテリの継続的かつ安定的な駆動が必要とされるバッテリ用途全般に本発明に係る給電システム又は給電方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 給電システム
11 トランス
12 一次側回路
13 二次側回路
13c コンデンサ
14 二次電池
15 第一リレー
16 第二リレー
17 電圧測定部
19 コア
20 一次側コイル
21 二次側コイル
22,23 分割コア
24 直流電源
25 コントローラ
26 充電ステーション
27 車両
S1 評価用リレー切替えステップ
S5 電圧測定ステップ
S6 コア結合状態評価ステップ
S9 充電用リレー切替えステップ
S10 充電開始ステップ