(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165793
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】タイヤの成形装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B29D30/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082287
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP02
4F215VA02
4F215VD01
4F215VK02
4F215VP10
4F215VP11
4F215VQ02
4F215VR03
4F501TA02
4F501TC01
4F501TD03
4F501TL10
4F501TQ02
4F501TR02
4F501TT03
4F501TV15
4F501TV17
(57)【要約】
【課題】積層された未加硫ゴム部材をその表面形状に沿って過不足なく押圧してタイヤ品質および生産性を向上させるタイヤの成形装置および製造方法を提供する。
【解決手段】押圧ローラ9を旋回可能に支持する旋回支持部10に流体シリンダ11のロッド11aを連結して、押圧ユニット8をベース部7に設置し、流体シリンダ11を予め設定された一定のシリンダ圧力に維持して、サーボモータ6の回転駆動トルクを予め設定された範囲に制御してサーボモータ6により回転駆動される駆動軸6aによってベース部7をドラム部2の外周面に対して近接させて、回転しているドラム部2の外周面にある成形体Rmの表面を押圧ローラ9により押圧し、この押圧ローラ9を成形体Rmの表面形状に沿ってその幅方向端に向かって移動させることで、未加硫ゴム部材Rどうしを圧着接合したグリーンタイヤGを成形する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム部と、前記ドラム部の外周面に対置されてドラム幅方向に移動する押圧ローラとを備えたタイヤの成形装置において、
前記押圧ローラ、前記押圧ローラを旋回可能に支持する旋回支持部および前記旋回支持部に連結されたロッドを有する流体シリンダを備えた押圧ユニットと、前記押圧ユニットを前記ドラム部の前記外周面に対して近接離反させる前後進機構とを有して、
前記前後進機構が、サーボモータと、このサーボモータにより回転駆動される駆動軸と、この駆動軸の回転により前後進するベース部と、前記サーボモータを制御する制御部とを有し、
前記押圧ユニットが前記ベース部に設置されていて、
前記流体シリンダが予め設定された一定のシリンダ圧力に維持されて、前記押圧ローラがドラム幅方向に移動されつつ、前記制御部によって前記サーボモータの回転駆動トルクが予め設定された範囲に制御されることにより、回転している前記ドラム部の外周面に積層されている未加硫ゴム部材の表面を押圧している前記押圧ローラが、前記未加硫ゴム部材の表面形状に沿って前記未加硫ゴム部材の幅方向端に向かって移動される構成にしたタイヤの成形装置。
【請求項2】
2つの前記押圧ユニットがドラム幅方向に並置されていて、前記未加硫ゴム部材の前記表面のドラム幅方向一方側が一方の前記押圧ユニットの前記押圧ローラにより押圧され、前記未加硫ゴム部材の前記表面のドラム幅方向他方側が他方の前記押圧ユニットの前記押圧ローラにより押圧される請求項1に記載のタイヤの成形装置。
【請求項3】
前記ドラム部の前記外周面のドラム幅方向中央部に対置されたセンターローラを有し、回転している前記ドラム部の前記外周面に積層されている前記未加硫ゴム部材の表面の幅方向中央部が前記センターローラにより押圧され、その後、それぞれの前記押圧ユニットの前記押圧ローラにより前記未加硫ゴム部材の前記表面が押圧される請求項2に記載のタイヤの成形装置。
【請求項4】
前記センターローラが、幅方向中央部を膨出させた形状である請求項3に記載のタイヤの成形装置。
【請求項5】
ドラム部の外周面に積層された未加硫ゴム部材の表面を、前記ドラム部を回転させながら、ドラム幅方向に移動する押圧ローラにより押圧して、積層された前記未加硫ゴム部材どうしを圧着接合してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法において、
前記押圧ローラ、前記押圧ローラを旋回可能に支持する旋回支持部および前記旋回支持部に連結されたロッドを有する流体シリンダにより押圧ユニットを構成し、前記押圧ユニットをベース部に設置して、サーボモータにより回転駆動される駆動軸の回転によって、前記ベース部を前記ドラム部の前記外周面に対して近接離反させる構成にして、
前記流体シリンダを予め設定された一定のシリンダ圧力に維持して、前記押圧ローラをドラム幅方向に移動させつつ、前記制御部によって前記サーボモータの回転駆動トルクを予め設定された範囲に制御することにより、回転している前記ドラム部の外周面に積層されている未加硫ゴム部材の表面を押圧している前記押圧ローラを、前記未加硫ゴム部材の表面形状に沿って前記未加硫ゴム部材の幅方向端に向かって移動させて前記グリーンタイヤを成形するタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの成形装置および製造方法に関し、さらに詳しくは、積層された未加硫ゴム部材の表面をその表面形状に沿って過不足なく押圧して、未加硫ゴム部材どうしを圧着接合してタイヤ品質および生産性を向上させるタイヤの成形装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造する際には、成形ドラムの外周面に積層された未加硫ゴム部材の表面をローラ体によって押圧することで、未加硫ゴム部材どうしを圧着接合している(例えば特許文献1、2参照)。未加硫ゴム部材に対する押圧力が過大であると未加硫ゴム部材に不要な変形が生じ、押圧力が過小であると未加硫ゴム部材どうしが十分に圧着接合されず、エア残りも生じ易くなる。したがって、タイヤ品質を向上させるには未加硫ゴム部材の表面を適度な押圧力で押圧する必要がある。また、この圧着接合工程に時間を要するとタイヤの生産性が低下する。
【0003】
未加硫ゴム部材どうしの間にエア残りが生じることを回避するためには、ローラ体を移動させつつ未加硫ゴム部材の表面を押圧する必要がある。しかしながら、従来提案されている方法では、積層された未加硫ゴム部材の表面の起伏が大きい領域(ショルダ部など)では、ローラ体をその起伏に沿って移動させることが難しい。また、その起伏に沿わせるためにローラ体の移動を遅くするとタイヤの生産性が低下する。それ故、積層された未加硫ゴム部材をその表面形状に沿って過不足なく押圧してタイヤ品質および生産性を向上させるには改善に余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-188866号公報
【特許文献2】特開2016-190441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、積層された未加硫ゴム部材の表面をその表面形状に沿って過不足なく押圧して、未加硫ゴム部材どうしを圧着接合してタイヤ品質および生産性を向上させるタイヤの成形装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの成形装置は、ドラム部と、前記ドラム部の外周面に対置されてドラム幅方向に移動する押圧ローラとを備えたタイヤの成形装置において、前記押圧ローラ、前記押圧ローラを旋回可能に支持する旋回支持部および前記旋回支持部に連結されたロッドを有する流体シリンダを備えた押圧ユニットと、前記押圧ユニットを前記ドラム部の前記外周面に対して近接離反させる前後進機構とを有して、前記前後進機構が、サーボモータと、このサーボモータにより回転駆動される駆動軸と、この駆動軸の回転により前後進するベース部と、前記サーボモータを制御する制御部とを有し、前記押圧ユニットが前記ベース部に設置されていて、前記流体シリンダが予め設定された一定のシリンダ圧力に維持されて、前記押圧ローラがドラム幅方向に移動されつつ、前記制御部によって前記サーボモータの回転駆動トルクが予め設定された範囲に制御されることにより、回転している前記ドラム部の外周面に積層されている未加硫ゴム部材の表面を押圧している前記押圧ローラが、前記未加硫ゴム部材の表面形状に沿って前記未加硫ゴム部材の幅方向端に向かって移動される構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤの製造方法は、ドラム部の外周面に積層された未加硫ゴム部材の表面を、前記ドラム部を回転させながら、ドラム幅方向に移動する押圧ローラにより押圧して、積層された前記未加硫ゴム部材どうしを圧着接合してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法において、前記押圧ローラ、前記押圧ローラを旋回可能に支持する旋回支持部および前記旋回支持部に連結されたロッドを有する流体シリンダにより押圧ユニットを構成し、前記押圧ユニットをベース部に設置して、サーボモータにより回転駆動される駆動軸の回転によって、前記ベース部を前記ドラム部の前記外周面に対して近接離反させる構成にして、前記流体シリンダを予め設定された一定のシリンダ圧力に維持して、前記押圧ローラをドラム幅方向に移動させつつ、前記制御部によって前記サーボモータの回転駆動トルクを予め設定された範囲に制御することにより、回転している前記ドラム部の外周面に積層されている未加硫ゴム部材の表面を押圧している前記押圧ローラを、前記未加硫ゴム部材の表面形状に沿って前記未加硫ゴム部材の幅方向端に向かって移動させて前記グリーンタイヤを成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め設定された一定のシリンダ圧力に維持された前記流体シリンダのロッドに連結された前記旋回支持部によって前記押圧ローラが旋回可能に支持されている。そのため、前記未加硫ゴム部材の表面を押圧している前記押圧ローラをドラム幅方向に移動させると、前記押圧ローラは前記未加硫ゴム部材の表面の起伏に応じて円滑に旋回する。その結果、前記押圧ローラを前記未加硫ゴム部材の表面形状に沿って前記未加硫ゴム部材の幅方向端に向かって移動させることで、積層された前記未加硫ゴム部材どうしをエア残りを回避しつつ確実に圧着接合するには有利になる。さらに、前記未加硫ゴム部材の表面に対する前記押圧ローラによる押圧力は、前記サーボモータの回転駆動トルクを制御することで適切に設定できるので、前記未加硫ゴム部材の表面をその表面形状に沿って過不足なく押圧するには有利になる。それ故、このように圧着接合された未加硫ゴム部材用いることで、タイヤの品質および生産性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタイヤの成形装置を平面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1のタイヤの成形装置を側面視で例示する説明図である。
【
図5】
図1のベース部を前進させた状態を例示する説明図である。
【
図6】センターローラにより未加硫ゴム部材の表面を押圧する工程を平面視で例示する説明図である。
【
図7】押圧ローラにより未加硫ゴム部材の表面を押圧する状態を平面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7の押圧ローラが幅方向移動している状態を例示する説明図である。
【
図9】
図8の押圧ローラが幅方向移動および旋回している状態を例示する説明図である。
【
図10】成形されたグリーンタイヤの上半分を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤの成形装置および製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図4に例示するタイヤの成形装置1の実施形態は、ドラム部2と、押圧ユニット8と、押圧ユニット8をドラム部2の外周面に対して近接離反させる前後進機構5と、前後進機構5の動きを制御する制御部13とを有している。この成形装置1を用いて、ドラム部2の外周面の成形体Rmを構成している未加硫ゴム部材Rどうしが圧着接合されて、
図10に例示するグリーンタイヤGが成形される。図中の矢印Wはドラム幅方向を示し、矢印Lはドラム幅方向に直交するドラム前後方向を示している。
【0012】
ドラム部2は円筒体であり、ドラム幅方向に延在するドラム軸2aにより支持されている。ドラム部2は、駆動モータなどのドラム駆動部3によってドラム軸2aを中心にして回転する。ドラム部2には、例えば公知の種々の成形ドラム、剛性コアなどが用いられる。
【0013】
ドラム部2の近傍に設置されたフレーム4には、前後進機構5、ベース部7、押圧ユニット8などが設置されている。押圧ユニット8は、押圧ローラ9、押圧ローラ9を旋回可能に支持する旋回支持部10および旋回支持部10に連結されたロッド11aを有する流体シリンダ11を備えている。この実施形態では、2つの押圧ユニット8がドラム幅方向に並置されてベース部7に設置されている。それぞれの押圧ユニット8は同じ構成である。さらにセンターローラ12がベース部7に設置されている。
【0014】
押圧ローラ9は、ローラ中心軸9aにより支持された円筒体(円盤体)であり、ローラ中心軸9aを中心にして回転する。旋回支持部10は、旋回体10aと支持体10bとを有している。旋回体10aにはローラ中心軸9aが取付けられている。支持体10bはベース部7の前方に突出してドラム前後方向に延在していて、支持体10bの先端部に設置された旋回軸10cに旋回体10aが旋回可能に軸支されている。したがって、旋回体10aとともに押圧ローラ9は、旋回軸10cを中心にして旋回する。
【0015】
流体シリンダ11は、ベース部7の前方に突出してドラム前後方向に延在していて、ロッド11aはドラム前後方向に進退する。ロッド11aの先端部は、旋回体10aに回転可能に連結されてしている。流体シリンダ11としては例えば、公知の種々のエアシリンダを用いることができる。流体シリンダ11は作動時に予め設定された一定のシリンダ圧力に維持される。それぞれの押圧ユニット8では、流体シリンダ11はドラム幅方向に対してある程度移動可能に支持体10bの基端部に取付けられている。
【0016】
ベース部7にはドラム幅方向に延在する幅方向移動ガイド7aが設置されていて、それぞれの押圧ユニット8は、幅方向移動ガイド7aに係合している。それぞれの押圧ユニット8はサーボモータなどの駆動手段によって、幅方向移動ガイド7aに沿ってドラム幅方向に移動する。それぞれの押圧ユニット8のドラム幅方向の移動も制御部13により制御される。
【0017】
センターローラ12はそれぞれの押圧ユニット8の間に配置されている。このセンターローラ12の軸方向はドラム軸2aと平行であり、センターローラ12は幅方向の中央部を膨出させた円筒体(或いは円柱体)である。センターローラ12は、外径が一定の単純な円筒体(或いは円柱体)にしてもよい。センターローラ12は回転可能に軸支されていて、独自の駆動手段によってそれぞれの押圧ローラ9とは独立してドラム前後方向に移動可能になっている。
【0018】
前後進機構5は、サーボモータ6と、サーボモータ6により回転駆動される駆動軸6aと、駆動軸6aの回転によりドラム前後方向に移動するベース部7とを有している。サーボモータ6および駆動軸6aは、フレーム4に設置されていて、駆動軸6aはドラム前後方向に延在している。フレーム4にはドラム前後方向に延在する前後進ガイド5aが設けられていて、ベース部7は前後進ガイド5aに係合している。
【0019】
ベース部7には例えばスクリューナットが設置されていて、このスクリューナットが駆動軸6aのネジ山に螺合している。そのため、駆動軸6aが一方向に回転駆動されるとベース部7が前後進ガイド5aに沿ってドラム部2の外周面に対して近接移動し(ドラム前後方向前方に移動し)、駆動軸6aが他方向に回転駆動されるとベース部7が前後進ガイド5aに沿ってドラム部2外周面に対して離反移動する(ドラム前後方向後方に移動する)。ベース部7には、それぞれの押圧ユニット8およびセンターローラ12が設置されているので、それぞれの押圧ユニット8およびセンターローラ12は、ベース部7とともにドラム部2の外周面に対して離反移動する。
【0020】
制御部13は、サーボモータ6の回転駆動トルクを予め設定された範囲に制御する。制御部13としては、公知の種々のコンピュータを用いることができる。この実施形態では、制御部13によってドラム駆動部3の動作が制御されて、ドラム部2の回転速度が制御される。ドラム駆動部3とサーボモータ6とは別々の制御部13によって制御される仕様でもよい。
【0021】
次に、この成形装置1を用いてグリーンタイヤGを成形する手順の一例を説明する。
【0022】
図1に例示するように、ドラム部2の外周面に、未加硫ゴムが用いられている種々の未加硫ゴム部材Rが積層された成形体Rmを配置する。即ち、
図10に例示するようにインナーライナR1、カーカス層R2、ベルト層R3、サイドゴムR4、トレッドゴムR5など内周側から順に積層され、幅方向両端部にビードBを備えた未加硫の成形体Rmをドラム部2に外嵌めした状態にする。成形体Rmを成形する手順は特に限定されず公知の種々の手順にて成形してドラム部2に外嵌めした状態にすればよい。その後、
図5~
図9に例示するように、ドラム軸2aを中心にしてドラム部2を回転させながら、センターローラ12およびそれぞれの押圧ローラ9を用いて成形体Rmの表面を押圧する。尚、
図7~
図9ではセンターローラ12の図示を省略している。
【0023】
まず、
図5に例示するように、サーボモータ6を回転駆動して、ベース部7を所定量だけ前方に移動させて固定する。その後、
図6に例示するように、センターローラ12を待機位置から前方に移動させて、ドラム部2の外周面に積層されている未加硫ゴム部材R(成形体Rm)の表面の幅方向中央部を押圧する。センターローラ12は、回転する成形体Rmの表面上を転動しつつその表面を押圧する。センターローラ12の幅方向中心と成形体Rmの幅方向中心とは概ね一致させて押圧を行う。成形体Rmの幅方向中央部とは例えば、成形体Rmの幅方向中心を中心したトレッドゴムR5の全幅の30%~80%の範囲である。
【0024】
センタ―ローラ12により成形体Rmの表面が所望の押圧力で押圧されるように、センタ―ローラ12の前方移動量が設定されている。センターローラ12により成形体Rmの表面を所定時間、押圧するとセンターローラ12を待機位置まで後退させて、センターローラ12による押圧を終了する。この実施形態では、センターローラ12が幅方向中央部を膨出させた形状なので、センターローラ12により成形体Rmの幅方向中央部を押圧すると、成形体Rmの表面は幅方向中央から幅方向端部に向かって順次押圧される。そのため、積層されている未加硫ゴム部材Rどうしの間に残留しているエアを、幅方向中央から幅方向端部に向かって押出す(移動させる)ことができる。
【0025】
次いで、
図7に例示するように、それぞれの流体シリンダ11を作動させることでそれぞれのロッド11aを所定のシリンダ圧力で若干前進させ、そのシリンダ圧力を維持する。これにより、旋回軸10cを中心にしてそれぞれの押圧ローラ9を旋回させて、それぞれの押圧ローラ9の外周面を成形体Rmの表面に対向させる。この状態で、サーボモータ6を回転駆動してベース部7を前方に移動させてそれぞれの押圧ローラ9の外周面を成形体Rmの表面に押圧する。サーボモータ6の回転駆動トルクを予め設定された範囲に制御部13によって制御することで、ドラム部2の外周面に設置されている成形体Rmの表面をそれぞれの押圧ローラ9によって所望の押圧力で押圧する。それぞれの押圧ローラ9は、回転する成形体Rmの表面上を転動しつつその表面を押圧する。
【0026】
成形体Rmの表面に対してそれぞれの押圧ローラ9によって押圧を開始する位置は、センターローラ12により押圧された領域と若干オーバーラップする位置にする。そして、この実施形態では、ドラム幅方向に並置されている一方(図では左側)の押圧ユニット8の押圧ローラ9によって成形体Rmの表面のドラム幅方向一方側(図では左側)が押圧され、他方(図では右側)の押圧ユニット8の押圧ローラ9によって成形体Rmの表面のドラム幅方向他方側(図では右側)が押圧される。
【0027】
次いで、
図8に例示するように、それぞれに押圧ユニット8をドラム幅方向に移動させる。即ち、一方の押圧ユニット8をドラム幅方向一方端に向かって移動させて、成形体Rmの表面を押圧している一方の押圧ローラ9をドラム幅方向中央部側からドラム幅方向一方端に向かって移動させる。同様に、他方の押圧ユニット8をドラム幅方向他方端に向かって移動させて、成形体Rmの表面を押圧している他方の押圧ローラ9をドラム幅方向中央部側からドラム幅方向他方端に向かって移動させる。これにより、積層されている未加硫ゴム部材Rどうしの間に残留しているエアを、さらに幅方向端部に向かって押出す(移動させる)ことができる。
【0028】
それぞれの押圧ローラ9が成形体Rmのショルダ部(起伏が大きい領域)まで移動すると、
図9に例示するように、それぞれの押圧ローラ9はドラム幅方向に移動しつつ旋回軸10cを中心して大きく旋回して、それぞれの押圧ローラ9の外周面を、成形体Rmの表面に対向させた状態を維持する。即ち、それぞれの押圧ローラ9は成形体Rmの表面に直交するように旋回して向きを変え、この旋回によってロッド11aは前進(延伸)する。流体シリンダ11は一定のシリンダ圧力に維持されているのでロッド11aの前進は規制されて前進し過ぎることがない。そのため、それぞれの押圧ローラ9は、成形体Rmの表面形状に沿うように円滑に旋回する。押圧工程では、流体シリンダ11のシリンダ圧力を能動的に変化させてロッド11aを進退させることはなく、ロッド11aは受動的に進退するだけである。そして、流体シリンダ11は、押圧ローラ9の旋回移動に応じて適度にドラム幅方向に移動する。それぞれの押圧ローラ9を成形体Rmの表面形状に沿うように旋回させるために、それぞれの押圧ローラ9のドラム幅方向の移動速度を特別に遅くする必要がないので、タイヤの生産性が低下することもない。
【0029】
そして、サーボモータ6の回転トルクの大きさと、成形体Rmの表面に対するそれぞれの押圧ローラ9による押圧力(押圧力の反力)の大きさとは概ね比例関係にあるので、サーボモータ6の回転トルクを予め設定された範囲(適切範囲)に制御することで、それぞれの押圧ローラ9によって過不足ない適度な押圧力で成形体Rmの表面を押圧することができる。その結果、成形体Rmの表面に起伏が有る無しに拘わらず、過度に押圧されて成形体Rmに不要な変形が生じる不具合や、押圧力が過小であることで未加硫ゴム部材Rどうしが十分に圧着接合されない、或いは、エア残りが生じるという不具合が発生し難くなる。即ち、成形体Rmの表面の起伏に拘わらず、その表面を均一に適切な押圧力で押圧することができる。
【0030】
サーボモータ6の回転トルクの大きさと、それぞれの押圧ローラ9による押圧力の大きさとの相関関係データを、試験などを行って予め把握しておくとよい。それぞれの押圧ローラ9によって成形体Rmの表面を押圧する際には、把握した相関関係データに基づいて、過不足ない適度な押圧力になるサーボモータ6の回転トルクの大きさの範囲を決定し、この決定した範囲を、サーボモータ6の回転トルクの予め設定された範囲(適切範囲)として制御部13により制御すればよい。
【0031】
それぞれの押圧ローラ9を成形体Rmの幅方向端部(サイドゴムR4の幅方向外側端近傍)まで移動させると、それぞれの押圧ローラ9による押圧工程は終了する。積層されている未加硫ゴム部材Rどうしの間に残留しているエアは、未加硫ゴム部材Rの幅方向端から外部に押出される。押圧工程の終了後は、サーボモータ6を回転駆動して、ベース部7をドラム前後方向後方に移動させて、
図1の待機状態に戻す。
【0032】
図5~
図9に例示する押圧工程によって、積層された未加硫ゴム部材Rどうしが圧着接合されて
図10に例示するグリーンタイヤGが成形される。成形されたグリーンタイヤGを、公知の方法で加硫モールドの中で加硫することでタイヤを製造する。
【0033】
図5~
図9の押圧工程では、予め設定された一定のシリンダ圧力に維持された流体シリンダ11のロッド11aに連結された旋回支持部10によってそれぞれの押圧ローラ9が旋回可能に支持されている。そのため、それぞれの押圧ローラ9を成形体Rmの表面形状に沿って成形体Rmの幅方向端に向かって移動させることで、成形体Rmの表面の起伏に応じて円滑に旋回し、積層された未加硫ゴム部材Rどうしを、エア残りを回避しつつ確実に圧着接合するには有利になる。
【0034】
さらには、ベース部7を前後進させるサーボモータ6の回転駆動トルクを制御すること、成形体Rmをその表面形状に沿って過不足なく押圧ローラ9によって押圧することが可能である。したがって、このように未加硫ゴム部材Rが圧着接合された成形体RmであるグリーンタイヤGを用いることで、製造されたタイヤの品質を向上させるには有利になる。また、未加硫ゴム部材Rどうしの間に残留するエアが抑制されて、グリーンタイヤGの成形不良を回避できるのでタイヤの生産性を向上にも有利になる。
【0035】
センターローラ12は、成形するグリーンタイヤGの仕様に応じて使用すればよい。また、成形体Rmの幅方向一方側領域のみを押圧すればよい場合は、1つの押圧ユニット8を用いればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 成形装置
2 ドラム部
2a ドラム軸
3 ドラム駆動部
4 フレーム
5 前後進機構
5a 前後進ガイド
6 サーボモータ
6a 駆動軸
7 ベース部
7a 幅方向移動ガイド
8 押圧ユニット
9 押圧ローラ
9a ローラ中心軸
10 旋回支持部
10a 旋回体
10b 支持体
10c 旋回軸
11 流体シリンダ
11a ロッド
12 センターローラ
13 制御部
R(R1、R2、R3、R4、R5) 未加硫ゴム部材
B ビード
Rm 成形体
G グリーンタイヤ