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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165797
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】尿素水供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241121BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241121BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F02D45/00 360A
F01N3/24 L
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082292
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚子
【テーマコード(参考)】
3G091
3G384
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB05
3G091BA02
3G091CA01
3G091CA17
3G091EA15
3G091FA04
3G384BA33
3G384CA03
3G384DA14
3G384EB08
3G384FA00Z
4D148AA06
4D148AA08
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC03
4D148CC32
4D148CC47
4D148CC54
4D148CC61
4D148CD05
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】尿素水を加熱するに際して省エネルギー化が可能な尿素水供給装置を提供する。
【解決手段】
尿素水供給装置1は、尿素水を貯留する第1タンク11及び第2タンク12と、第2タンク12に貯留された尿素水を車両の熱源によって加熱する加熱管16と、第1タンク11からの尿素水の供給と第2タンク12からの尿素水の供給とを切り替える第1バルブ15と、少なくとも第1バルブ15を制御する制御部20と、を備える。制御部20は、第2タンク12の尿素水の温度が、第1タンク11の尿素水の温度以上である場合に、第2タンク12から尿素水が供給されるように、第1バルブ15を制御する切替制御部25を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための触媒部に対して、還元剤としての尿素水を供給するための尿素水供給装置であって、
前記尿素水を貯留する第1タンク及び第2タンクと、
前記第1タンクにおける前記尿素水の温度を測定する第1温度センサと、
前記第2タンクにおける前記尿素水の温度を測定する第2温度センサと、
前記第2タンクに貯留された前記尿素水を前記車両の熱源によって加熱する加熱部と、
前記第1タンクからの前記尿素水の供給と前記第2タンクからの前記尿素水の供給とを切り替える切替部と、
少なくとも前記切替部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1温度センサの測定結果に基づいて、前記第1タンクにおける前記尿素水の温度である第1タンク温度を取得する第1取得部と、
前記第2温度センサの測定結果に基づいて、前記第2タンクにおける前記尿素水の温度である第2タンク温度を取得する第2取得部と、
前記第2タンク温度が前記第1タンク温度以上である場合に、前記第2タンクから前記尿素水が供給されるように、前記切替部を制御する切替制御部と、
を含む、
尿素水供給装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記第2タンクに貯留された前記尿素水を流通させながら前記熱源との熱交換により当該尿素水を加熱する加熱管を含み、
前記制御部は、
前記第2タンク温度及び前記熱源の温度に基づいて、前記加熱管内の前記尿素水の予測温度である予測尿素温度を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記予測尿素温度が、前記尿素水の沸騰温度未満である場合、前記加熱管を開状態とすると共に、前記予測尿素温度が、前記尿素水の沸騰温度以上である場合に前記加熱管を閉状態とする加熱制御部と、
を含む、
請求項1に記載の尿素水供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2タンク温度の上昇に応じて、前記触媒部への前記尿素水の供給を開始する温度である開始温度を低下させる供給制御部を含む、
請求項1又は2に記載の尿素水供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尿素水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の排気通路に尿素水を供給する尿素水供給装置が記載されている。この装置は、尿素水を貯留する尿素水タンクと、尿素水タンクに貯留された尿素水を尿素添加弁に供給する供給通路と、供給通路に尿素水を圧送するポンプと、尿素水タンクに貯留された尿素水の水位を検出する水位センサと、尿素水タンクに貯留された尿素水の温度を検出する温度センサと、尿素水タンクに貯留された尿素水を加熱するヒータと、を備えている。また、この装置は、制御装置として、E/G-ECUを備えている。この装置では、尿素水タンクに貯留された尿素水が凍結した場合、ヒータを駆動して尿素水の解凍を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-181914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているように、上記技術分野にあっては、尿素水を加熱する要求がある。尿素水を加熱する要求は、上記特許文献1に記載されているように尿素水が凍結した場合に限らず、加温された尿素水を排気通路に供給することによって、PN排出抑制、尿素デポジット抑制、及び、NOx低減効率向上等、種々の効果が望まれる場合に生じ得る。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された尿素水供給装置は、尿素水の解凍のみを目的としたものであるため、尿素水の加熱による上記他の効果を生じるものではない。特に、特許文献1に記載された尿素水供給装置では、尿素水タンク内全体の尿素水を加熱する必要があり、消費エネルギーが大きくなる。また、特許文献1に記載された尿素水供給装置では、少なくとも1つのヒータが尿素水タンク内に設けられた尿素水加熱用ものものであるため、尿素水を加熱するために別途エネルギーが必要となる。
【0006】
本開示は、尿素水を加熱するに際して省エネルギー化が可能な尿素水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る尿素水供給装置は、車両の排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための触媒部に対して、還元剤としての尿素水を供給するための尿素水供給装置であって、尿素水を貯留する第1タンク及び第2タンクと、第1タンクにおける尿素水の温度を測定する第1温度センサと、第2タンクにおける尿素水の温度を測定する第2温度センサと、第2タンクに貯留された尿素水を車両の熱源によって加熱する加熱部と、第1タンクからの尿素水の供給と第2タンクからの尿素水の供給とを切り替える切替部と、少なくとも切替部を制御する制御部と、を備え、制御部は、第1温度センサの測定結果に基づいて、第1タンクにおける尿素水の温度である第1タンク温度を取得する第1取得部と、第2温度センサの測定結果に基づいて、第2タンクにおける尿素水の温度である第2タンク温度を取得する第2取得部と、第2タンク温度が第1タンク温度以上である場合に、第2タンクから尿素水が供給されるように、切替部を制御する切替制御部と、を含む。
【0008】
この装置は、車両の排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための触媒部に対して、尿素水を供給する。この装置では、当該尿素水を貯留する第1タンク及び第2タンクが備られている。また、第2タンクには尿素水を加熱する加熱部が設けられており、第2タンクの尿素水の温度が第1タンクの尿素水の温度以上である場合に、第2タンクから尿素水が供給されるようにされる。これにより、相対的に高温の尿素水が触媒部に供給されることにより、PN排出抑制、尿素デポジット抑制、及び、NOx低減効率向上等の種々の効果を奏することが可能となる。特に、この装置では、尿素水が第1タンクと第2タンクとに分散されて貯留されており、且つ、第2タンクに加熱部が設けられている。このため、単一のタンク内全体の尿素水を加熱する場合と比較して、尿素水の加熱に係る消費エネルギーが低減される。さらに、この装置では、当該第2タンクの尿素水の加熱に際して、車両の熱源を利用する。したがって、尿素水の加熱に際して別途のエネルギーが不要となる。よって、この装置によれば、尿素水の加熱に際して省エネルギー化が図られる。
【0009】
本開示に係る尿素水供給装置では、加熱部は、第2タンクに貯留された前記尿素水を流通させながら熱源との熱交換により当該尿素水を加熱する加熱管を含み、制御部は、第2タンク温度及び熱源の温度に基づいて、加熱管内の尿素水の予測温度である予測尿素温度を算出する算出部と、算出部が算出した予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度未満である場合、加熱管を開状態とすると共に、予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度以上である場合に加熱管を閉状態とする加熱制御部と、を含んでもよい。この場合、尿素水の沸騰が抑制される。これにより、尿素水の過剰な加熱による添加装置の故障を防ぐことが可能となる。
【0010】
本開示に係る尿素水供給装置では、制御部は、第2タンク温度の上昇に応じて、触媒部への尿素水の供給を開始する温度である開始温度を低下させる供給制御部を含んでもよい。この場合、始動後により早く窒素酸化物を還元することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、尿素水を加熱するに際して省エネルギー化が可能な尿素水供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る尿素水供給装置を示す模式図である。
図2図2は、図1に示された制御部の機能的な構成を示す図である。
図3図3は、図1,2に示された尿素水供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1,2に示された尿素水供給装置の動作の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態に係る尿素水供給装置について、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る尿素水供給装置を示す模式図である。図1に示される尿素水供給装置1は、例えば、バスやトラック等の大型車両や産業車両といった車両に搭載される。当該車両には、エンジンA1、オイルパンA2、排気通路A3、及び触媒部A4等の種々の構成が設けられている。
【0015】
エンジンA1は、発電用の動力源であってもよい。オイルパンA2は、エンジンA1の熱により加熱されたオイル(熱源)が貯留されている。排気通路A3は、エンジンA1からの排気ガスが流通させられる。
【0016】
触媒部A4は、排気通路A3内に配置されており、排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するためのものである。触媒部A4は、例えば、SCR(Selective Catalytic Reduction)装置に含まれる。触媒部A4は、例えばセラミック製の担体上に担持された選択還元触媒を含む。選択還元触媒は、排気ガスに含まれる窒素酸化物を、アンモニア等の還元剤を用いて選択的に還元する触媒である。
【0017】
排気通路A3には、触媒部A4を含むSCR装置に加えて、DPF(Diesel Particulate Filter)装置、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)装置、及び、ASC(アンモニアスリップ触媒:ammonia slip catalyst)といった、排気ガスを浄化するための種々の構成が設けられていてもよい。
【0018】
尿素水供給装置1は、触媒部A4に対して還元剤としての尿素水を供給するためのものである。より具体的には、尿素水供給装置1により供給された尿素水は、排気通路A3に設けられたインジェクタBにより排気通路A3内に噴出される。排気通路A3に噴出された尿素水は、排気ガスの熱でアンモニアに分解される。尿素水由来のアンモニアは、排気ガスと共に触媒部A4に供給されて吸着される。触媒部A4に吸着されたアンモニアは、排気ガスに含まれる窒素酸化物と反応して窒素酸化物の還元に供される。このように、尿素水供給装置1は、インジェクタBを介して触媒部A4に還元剤(還元剤の前駆体)としての尿素水を供給・添加する。
【0019】
尿素水供給装置1は、第1タンク11、第2タンク12、第1温度センサ13、第2温度センサ14、第1バルブ15(切替部)、加熱管16(加熱部)、第2バルブ17、制御部20、第1供給路L1、及び、第2供給路L2を有している。
【0020】
第1タンク11及び第2タンク12は、尿素水を貯留している。一例として、第1タンク11は、第2タンク12よりも多くの尿素水を貯留し得る。第1タンク11は、尿素水が流通する第1供給路L1によって、インジェクタBに接続されている。これにより、図示しないポンプ等を用いて、第1タンク11から第1供給路L1を介してインジェクタB(ひいては触媒部A4)に尿素水を供給可能とされている。
【0021】
第2タンク12は、エンジンA1の近傍に設けられており、例えば真空二重管といった断熱性能が高い構造を有している。第2タンク12は、第2供給路L2の中途に設けられており、第2供給路L2によって、インジェクタBに接続されている。これにより、図示しないポンプ等を用いて、第2タンク12から第2供給路L2を介してインジェクタB(ひいては触媒部A4)に尿素水を供給可能とされている。
【0022】
第1温度センサ13は、第1タンク11に設けられている。第1温度センサ13は、第1タンク11における尿素水の温度を測定する。第1温度センサ13は、測定結果を示す情報を制御部20に出力する。第2温度センサ14は、第2タンク12に設けられている。第2温度センサ14は、第2タンク12における尿素水の温度を測定する。第2温度センサ14は、測定結果を示す情報を制御部20に出力する。
【0023】
第1バルブ15は、第1供給路L1に設けられている。第2供給路L2の上流側の端部は、第1バルブ15を介して第1供給路L1に接続されている。換言すれば、第2供給路L2は、第1バルブ15において第1供給路L1から分岐している。第2タンク12は、第2供給路L2における第1供給路L1からの分岐点(第1バルブ15)よりも下流側に設けられている。第1バルブ15が開状態とされることにより、第1タンク11からインジェクタBに向かう第1供給路L1が開通され、第1タンク11からの尿素水の供給が可能とされる。
【0024】
なお、第2供給路L2は、第2タンク12よりも下流側において、第1供給路L1の第1バルブ15よりも下流側の位置に合流している。すなわち、第2供給路L2は、第1バルブ15において第1供給路L1から一旦分岐した後に、第2タンク12の下流側において第1供給路L1に再度合流している。これにより、第1供給路L1の第1バルブ15よりも下流側の部分が、第2タンク12をバイパスするバイパス路とされている。
【0025】
加熱管16は、両端部が第2タンク12に接続されると共に、両端部以外の少なくとも一部がオイルパンA2内を通るように設けられており、第2タンク12に貯留された尿素水を車両のオイルパンA2内のオイル(熱源)によって加熱する加熱部である。加熱管16は、第2タンク12に貯留された尿素水を流通させながらオイルパンA2内のオイルとの熱交換により当該尿素水を加熱する。
【0026】
第2バルブ17は、加熱管16に設けられている。第2バルブ17が開状態とされることにより、加熱管16開通され、第2タンク12に貯留された尿素水が加熱管16を介して加熱されながら循環させられる。
【0027】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路等を有する電子制御ユニット(ECU)である。制御部20では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより後述する各部の機能を実現し得る。制御部20は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0028】
図2は、図1に示された制御部の機能的な構成を示す図である。図2に示されるように、制御部20は、機能的には、第1取得部21、第2取得部22、第3取得部23、第4取得部24、切替制御部25、算出部26、加熱制御部27、及び、供給制御部28を有している。
【0029】
第1取得部21は、第1温度センサ13から測定結果を示す情報を入力すると共に、当該第1温度センサ13の測定結果に基づいて、第1タンク11における尿素水の温度である第1タンク温度を取得する。第2取得部22は、第2温度センサ14から測定結果を示す情報を入力すると共に、当該第2温度センサ14の測定結果に基づいて、第2タンク12における尿素水の温度である第2タンク温度を取得する。
【0030】
第3取得部23は、排気通路A3に設けられた第3温度センサCから、触媒部A4の温度の測定結果を示す情報を入力し、当該第3温度センサCの測定結果に基づいて、触媒部A4の温度を取得する。第4取得部24は、図示しない油温センサから情報の入力を受け、オイルパンA2におけるオイルの温度(熱源の温度、油温)を取得する。
【0031】
切替制御部25は、第1バルブ15及びポンプ等(以下、「第1バルブ15等」という)を制御することにより、第1タンク11からの尿素水の供給と、第2タンク12からの尿素水の供給と、を切り替える。より具体的には、切替制御部25は、第2取得部22が取得した第2タンク温度が、第1取得部21が取得した第1タンク温度以上である場合に、第2タンク12から尿素水が供給されるように、第1バルブ15等を制御する。
【0032】
算出部26は、第2取得部22が取得した第2タンク温度と、第4取得部24が取得した油温とに基づいて、加熱管16内の尿素水の予測温度である予測尿素温度を算出する。
【0033】
加熱制御部27は、算出部26が算出した予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度未満(例えば90℃未満)である場合、第2バルブ17によって加熱管16を開状態とする。一方、加熱制御部27は、算出部26が算出した予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度以上(例えば90℃以上)である場合に、第2バルブ17によって加熱管16を閉状態とする。
【0034】
供給制御部28は、第2取得部22が取得した第2タンク温度の上昇に応じて、触媒部A4への尿素水の供給を開始する温度である開始温度を低下させる。一例として、制御部20は、開始温度が第1基準値(例えば180℃)である場合、第3取得部23が取得した触媒部A4の温度が当該第1基準値に達したときに、触媒部A4への尿素水の供給(添加)を開始する。
【0035】
一方、供給制御部28は、例えば、第2タンク温度が一定値(例えば80℃)まで上昇したとき、開始温度を第1基準値よりも低い第2基準値(例えば120℃)に設定する。この結果、制御部20は、第3取得部23が取得した触媒部A4の温度が当該第2基準値に達した時点で、触媒部A4への尿素水の供給(添加)を開始することとなる。
【0036】
引き続いて、尿素水供給装置1の動作の一例について説明する。図3は、図1,2に示された尿素水供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。図3に示されるように、ここでは、まず、制御部20が、例えば第1取得部21が取得した第1温度に基づいて、第1タンク11内の尿素水が凍結しているか否かの判定を行う(工程S11)。
【0037】
工程S11の判定の結果、第1タンク11内の尿素水が凍結している場合(工程S11:YES)、切替制御部25が、第1バルブ15を開状態とすることにより、第1供給路L1が開通された状態とする(すなわち、尿素水の流路を第1供給路L1に切り替える)(工程S12)。続いて、制御部20が、図示しない第1タンク11内のヒータを駆動することにより、第1タンク11内の尿素水を加熱して解凍する(工程S13)。
【0038】
続いて、制御部20が、第2取得部22が取得した第2タンク温度(第2タンク12における尿素水の温度)が、第1取得部21が取得した第1タンク温度(第1タンク11における尿素水の温度)以上であるか否かの判定を行う(工程S14)。
【0039】
工程S14の判定の結果、第2タンク温度が第1タンク温度以上である場合(工程S14:YES)、切替制御部25が、第1バルブ15を閉状態として第1供給路L1を閉塞すると共に、第2供給路L2が開通された状態とする(すなわち、尿素水の流路を第2供給路L2に切り替える)(工程S15)。
【0040】
そして、制御部20が、第2タンク12及び第2供給路L2に接続されたポンプ(不図示)等を駆動することにより、第2タンク12から第2供給路L2を介した尿素水の供給を開始し(工程S16)、処理を終了する。
【0041】
一方、工程S11の判定の結果、第1タンク11内の尿素水が凍結していない場合(工程S11:NO)、制御部20は、工程S12,13を省略して工程S14の判定に移行する。
【0042】
他方、工程S14の判定の結果、第2タンク温度が第1タンク温度以上でない場合(工程S14:YES)、すなわち、第2タンク温度よりも第1タンク温度が高い場合、切替制御部25が、(第1バルブ15が閉状態である場合)第1バルブ15を開状態として第1供給路L1が開通された状態とする(すなわち、尿素水の流路が第2供給路L2であった場合には第1供給路L1に切り替える)(工程S17)。そして、制御部20が、第1タンク11及び第1供給路L1に接続されたポンプ等を駆動することにより、第1タンク11から第1供給路L1を介した尿素水の供給を開始し(工程S18)、処理を終了する。
【0043】
図4は、図1,2に示された尿素水供給装置の動作の別の一例を示すフローチャートである。図4に示されるように、ここでは、まず、制御部20が、第2取得部22が取得した第2タンク温度(第2タンク12における尿素水の温度)が、第1閾値(例えば60℃)未満であるか否かの判定を行う(工程S21)。
【0044】
工程S21の判定の結果、第2タンク温度が第1閾値未満である場合(工程S21:YES)、算出部26が加熱管16内の尿素水の予測温度である予測尿素温度を算出すると共に、制御部20が、算出された予測尿素温度が、第1閾値よりも高い第2閾値(例えば、尿素の沸騰温度に関連付けられた値であり、一例として90℃)未満であるか否かの判定を行う(工程S22)。
【0045】
工程S22の判定の結果、予測尿素温度が第2閾値未満である場合、加熱制御部27が、加熱管(加熱流路)16を開状態とし、第2タンク12における尿素水を、加熱管16を介して循環させながら加熱を開始する(工程S23)。
【0046】
続いて、制御部20が、第2取得部22が取得した第2タンク温度(第2タンク12における尿素水の温度)が、第1閾値と第2閾値との間の第3閾値(例えば80℃)未満であるか否かの判定を行う(工程S24)。工程S24の判定の結果、第2タンク温度が第3閾値未満である場合(工程S24:YES)、処理を終了する。
【0047】
一方、工程S21の判定の結果、加熱前の第2タンク温度が第1閾値未満でない場合(工程S21:NO)、工程S22の判定の結果、予測尿素温度が第2閾値未満出ない場合、すなわち、予測尿素温度が尿素水の沸騰温度以上である場合(工程S22:NO)、及び、工程S24の判定の結果、加熱後の第2タンク温度が第3閾値未満でない場合(工程S24:NO)、加熱制御部27が、加熱管(加熱流路)16を閉状態とし、第2タンク12における尿素水の加熱を停止し、処理を終了する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る尿素水供給装置1は、車両の排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための触媒部A4に対して、尿素水を供給する。尿素水供給装置1では、当該尿素水を貯留する第1タンク11及び第2タンク12が備られている。また、第2タンク12には尿素水を加熱する加熱部(加熱管16)が設けられており、第2タンク12の尿素水の温度が第1タンク11の尿素水の温度以上である場合に、第2タンク12から尿素水が供給されるようにされる。
【0049】
これにより、相対的に高温の尿素水が触媒部A4に供給されることにより、PN排出抑制、尿素デポジット抑制、及び、NOx低減効率向上等の種々の効果を奏することが可能となる。特に、尿素水供給装置1では、尿素水が第1タンク11と第2タンク12とに分散されて貯留されており、且つ、第2タンク12に加熱管16が設けられている。このため、単一のタンク内全体の尿素水を加熱する場合と比較して、尿素水の加熱に係る消費エネルギーが低減される。さらに、尿素水供給装置1では、当該第2タンク12の尿素水の加熱に際して、車両の熱源(オイルパンA2のオイル、すなわち、エンジンA1の廃熱)を利用する。したがって、尿素水の加熱に際して別途の電気エネルギー等の外部供給が不要となる。よって、尿素水供給装置1によれば、尿素水の加熱に際して省エネルギー化が図られる。
【0050】
また、本実施形態に係る尿素水供給装置1では、制御部20は、第2タンク温度及び油温に基づいて、加熱管16内の尿素水の予測温度である予測尿素温度を算出する算出部26と、算出部26が算出した予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度未満である場合、加熱管16を開状態とすると共に、予測尿素温度が、尿素水の沸騰温度以上である場合に加熱管16を閉状態とする加熱制御部27と、を含む。このため、尿素水の沸騰が抑制される。これにより、尿素水の過剰な加熱による添加装置の故障を防ぐことが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る尿素水供給装置1では、制御部20は、第2タンク温度の上昇に応じて、触媒部A4への尿素水の供給を開始する温度である開始温度を低下させる供給制御部28を含む。このため、始動後により早く窒素酸化物を還元することが可能となる。
【0052】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明に係る尿素水供給装置は、上記実施形態に限定されず、任意に変形され得る。
【0053】
例えば、上記実施形態では、第2タンク12に貯留された尿素水を加熱する加熱部として、当該尿素水を流通させながらオイルパンA2内のオイルとの熱交換を行う加熱管16を例示した。しかし、加熱部は、車両の任意の熱源により第2タンク12の尿素水を加熱可能な任意の構成とされ得る。すなわち、加熱部の熱源はオイルパンA2内のオイルに限定されず、また、加熱部の構造は尿素水を流通させる管状でなくてもよい。
【0054】
また、尿素水供給装置1において、制御部20は、少なくとも第1取得部21、第2取得部22、切替制御部25、及び加熱制御部27を有していればよく、他の機能的な要素が省略されてもよい。
【0055】
さらに、尿素水供給装置1では、切替制御部25が、第2タンク12からの尿素水の供給と第1タンク11からの尿素水の供給とを切り替え可能に構成されていればよく、第2供給路L2と第1供給路L1とが接続されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…尿素水供給装置、11…第1タンク、12…第2タンク、13…第1温度センサ、14…第2温度センサ、15…第1バルブ(切替部)、16…加熱管(加熱部)、20…制御部、21…第1取得部、22…第2取得部、25…切替制御部、26…算出部、27…加熱制御部、28…供給制御部、A4…触媒部。
図1
図2
図3
図4