(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001658
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20231227BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20231227BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20231227BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20231227BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20231227BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20231227BHJP
【FI】
G06F1/16 312Z
G06F1/16 312E
H05K5/02 V
H01Q1/24 Z
H01Q1/22 Z
H01Q1/40
H04B1/38
G06F1/16 312L
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100458
(22)【出願日】2022-06-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井畑 禅
(72)【発明者】
【氏名】梅島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】溝口 文武
【テーマコード(参考)】
4E360
5J046
5J047
5K011
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB16
4E360BA02
4E360BB22
4E360ED02
4E360ED04
4E360FA02
4E360FA13
4E360GA60
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC08
5J046AA02
5J046AA03
5J046AA12
5J046QA02
5J047AA02
5J047AA03
5J047AA12
5J047EF05
5K011AA06
5K011JA01
5K011KA13
(57)【要約】
【課題】アンテナ性能の低下を抑制することができる電子機器及び該電子機器の筐体に用いる筐体部材を提供する。
【解決手段】電子機器は、外壁と、前記外壁の一部を形成するアンテナ素子とを有する第1筐体部材と、前記第1筐体部材の表面を覆う第1姿勢と、前記第1筐体部材の表面を露呈させる第2姿勢との間で、前記第1筐体部材に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体部材と、を備える。第2筐体部材の外周縁部には、導電性材料で形成され、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子を上から覆うように配置されるフレームが設けられる。第1筐体部材は、さらに、前記アンテナ素子の表面全体を覆い、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子と前記フレームとの間に介在する電波透過性部材を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
外壁と、前記外壁の一部を形成するアンテナ素子とを有する第1筐体部材と、
前記第1筐体部材の表面を覆う第1姿勢と、前記第1筐体部材の表面を露呈させる第2姿勢との間で、前記第1筐体部材に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体部材と、
を備え、
前記第2筐体部材の外周縁部には、導電性材料で形成され、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子を上から覆うように配置されるフレームが設けられ、
前記第1筐体部材は、さらに、前記アンテナ素子の表面全体を覆い、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子と前記フレームとの間に介在する電波透過性部材を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第2筐体部材は、さらに、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成されたプレート部材を有し、
前記フレームは、炭素繊維を混入させた樹脂材料で形成され、前記プレート部材の外周縁部に接合されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材は、さらに、前記外壁から連続し、当該第1筐体部材の表面を形成する表面部材を有し、
前記アンテナ素子は、前記外壁から前記表面部材まで延在することで、前記表面部材の一部も形成しており、
前記表面部材の表面には、前記アンテナ素子を他の部分よりも一段低く形成した凹状部が設けられ、
前記電波透過性部材は、前記凹状部を埋めるように配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記凹状部は、前記外壁に向かって開口した開口部を有し、
前記電波透過性部材は、前記アンテナ素子の表面上で前記外壁の一部を形成している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記表面部材は、導電性材料で形成されたベース部材を有し、
前記電波透過性部材は、前記アンテナ素子と前記ベース部材との間を分断している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器用の筐体部材であって、
外壁と、
前記外壁から連続し、当該筐体部材の表面を形成する表面部材と、
前記外壁から前記表面部材まで延在し、前記外壁の一部及び前記表面部材の一部をそれぞれ形成するアンテナ素子と、
を備え、
前記表面部材の表面には、前記アンテナ素子を他の部分よりも一段低く形成した凹状部が設けられ、
さらに、前記凹状部を埋めるように配置され、前記アンテナ素子の表面全体を覆う電波透過性部材を備える
ことを特徴とする筐体部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び該電子機器用の筐体部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、通常、キーボード装置を搭載した第1筐体部材と、ディスプレイを搭載した第2筐体部材とを備える。本出願人は、特許文献1において、第1筐体部材の外壁に導電部を設け、これをアンテナ素子として用いた構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器では、第2筐体部材が第1筐体部材の表面を閉じる蓋体として機能する。このような第2筐体部材は、軽量化、薄型化及び高強度化の観点から、炭素繊維強化樹脂や薄い金属等の導電性材料が用いられる場合がある。このように導電性材料で形成された第2筐体部材は、第1筐体部材の表面に閉じられた際、アンテナ素子を上から覆う可能性がある。この場合、アンテナ素子は、導電性材料との距離が近づき過ぎ、さらに導電性材料で覆われることで、アンテナ性能が低下する要因となることが確認された。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、アンテナ性能の低下を抑制することができる電子機器及び該電子機器の筐体に用いる筐体部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、外壁と、前記外壁の一部を形成するアンテナ素子とを有する第1筐体部材と、前記第1筐体部材の表面を覆う第1姿勢と、前記第1筐体部材の表面を露呈させる第2姿勢との間で、前記第1筐体部材に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体部材と、を備え、前記第2筐体部材の外周縁部には、導電性材料で形成され、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子を上から覆うように配置されるフレームが設けられ、前記第1筐体部材は、さらに、前記アンテナ素子の表面全体を覆い、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子と前記フレームとの間に介在する電波透過性部材を有する。
【0007】
本発明の第2態様に係る筐体部材は、電子機器用の筐体部材であって、外壁と、前記外壁から連続し、当該筐体部材の表面を形成する表面部材と、前記外壁から前記表面部材まで延在し、前記外壁の一部及び前記表面部材の一部をそれぞれ形成するアンテナ素子と、を備え、前記表面部材の表面には、前記アンテナ素子を他の部分よりも一段低く形成した凹状部が設けられ、さらに、前記凹状部を埋めるように配置され、前記アンテナ素子の表面全体を覆う電波透過性部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アンテナ性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器の筐体部材間を開いて上から見下ろした平面図である。
【
図2】
図2は、第2筐体部材を背面側から見た図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、電子機器を第1姿勢とした状態での各筐体部材の前縁部及びその周辺部の模式的な側面断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1筐体部材の右側の前角部お及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び筐体部材について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の筐体部材11,12間を開いて上から見下ろした平面図である。本実施形態では、クラムシェル型のノート型PCに係る電子機器10を例示するが、電子機器10は、2つの筐体部材が開閉可能に連結された構成であれば、タブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
図1に示すように、電子機器10は、第1筐体部材11と、第2筐体部材12と、筐体部材11,12間を相対的に回動可能に連結するヒンジ14とを備える。筐体部材11,12は、互いに積層される第1姿勢(
図4参照)と、互いの面方向が所定角度を成す第2姿勢(
図1参照)との間で相対的に回動可能である。仮に、第1姿勢を0度姿勢と呼ぶと、本実施形態の第2姿勢は180度姿勢となる。第2姿勢は、180度以下でも180度以上でもよい。
【0013】
以下、筐体部材11,12について、互いに積層された第1姿勢(
図4参照)の状態を基準として、筐体部材11,12の奥行方向を前後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。これらの各方向は、説明の便宜上のものであり、電子機器10の姿勢や筐体部材11,12間の角度によって実際の方向は適宜変化する。
【0014】
第1筐体部材11は、キーボード16及びタッチパッド17が表面(上面)11aを臨んで搭載されている。第1筐体部材11の左右の前角部には、それぞれアンテナ素子18が設けられている。各アンテナ素子18は、例えばWWAN(Wireless Wide Area Network)に対応した電波を送受信可能である。第1筐体部材11の内部には、CPU等を実装したマザーボード、記憶装置、通信モジュール、及びバッテリ装置等の各種電子部品が収納されている。
【0015】
第2筐体部材12は、ディスプレイ20を支持している。ディスプレイ20は、表示面20aが第2筐体部材12の正面(下面)12aを臨んでいる。ディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。筐体部材11,12は、互いの後縁部同士がヒンジ14で連結され、これにより相対的に回動する。
【0016】
次に、第2筐体部材12の具体的な構成例を説明する。
【0017】
図2は、第2筐体部材12を背面(上面)12b側から見た図である。
図3は、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
【0018】
図2及び
図3に示すように、第2筐体部材12は、プレート部材22と、フレーム24とを有する。
【0019】
プレート部材22は、ディスプレイ20の裏面を支持する背面12bの大部分を形成するプレートである(
図4も参照)。本実施形態のプレート部材22は、炭素樹脂にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂板(プリプレグ)を複数層積層したものである。プレート部材22は、例えばマグネシウム合金等の金属プレートで形成されてもよい。
【0020】
フレーム24は、プレート部材22の外周縁部に接合され、ディスプレイ20の外周端面を囲む立壁24aを形成する。立壁24aの端面と表示面20aの外周縁部との間はベゼル部材で塞がれる。フレーム24は、炭素繊維を混入させた樹脂材料の射出成形によって形成される。本実施形態のフレーム24は、炭素繊維をポリカーボネートに混入させた炭素繊維強化ポリカーボネート(PCCF)で形成されている。フレーム24は、マグネシウム合金やアルミニウム合金等の金属材料で形成されてもよい。
【0021】
ところで、電子機器10のようなノート型PCの第2筐体部材12として、従来は、プリプレグの積層板で形成したプレート部材22の外周縁部にガラス繊維強化樹脂を射出成形したフレームを接合した構成がある。
【0022】
このような構成では、ガラス繊維強化樹脂の一回の射出でフレームを完全に成形しようとすると、第2筐体部材全体が大きく反り変形を生じる場合があった。ガラス繊維強化樹脂は、収縮して反り変形を生じるが、炭素繊維強化樹脂板の積層板であるプレート部材22はほとんど反り変形を生じないため、その収縮率の違いによって第2筐体部材が全体として大きな反りを生じるのである。
【0023】
そこで、先ず、ガラス繊維強化樹脂を1次射出してフレームの形状成形のみを行い、次に、ガラス繊維強化樹脂を2次射出し、これにより1次射出で成形したフレームをプレート部材22に接合する方法も提案されている。この二回射出は、一回射出に比べて第2筐体部材全体の反り変形を低減できる。ところが、この方法では、ガラス繊維強化樹脂を二回射出するため、フレームが大型化し、一方、軽量且つ高強度なプリプレグの積層板であるプレート部材22の使用範囲が縮小する。その結果、この方法で製造した第2筐体部材は、重量が増加し、強度が低下する懸念があった。
【0024】
これに対して、本実施形態の第2筐体部材12は、プレート部材22の外周縁部に射出成形によって接合されるフレーム24が炭素繊維強化樹脂で形成されている。ここで、フレーム24を構成する炭素繊維強化樹脂は、従来のガラス繊維強化樹脂に比べて比重が小さく成形時の収縮も小さい。このため、当該第2筐体部材12は、製造時の反り変形量を低減しつつ、二次射出を省略できる。その結果、当該第2筐体部材12では、フレーム24を狭小化でき、軽量且つ高強度なプリプレグの積層板であるプレート部材22の使用範囲を拡大できる。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の第2筐体部材12は、例えばフレーム24の幅寸法Wを1.5mm程度まで狭小化でき、その分、プレート部材22が大型化している。このため、当該第2筐体部材12は、全体の反り量が小さく、さらに軽量且つ高強度に構成できる。
【0026】
図3中の幅寸法W1は、フレーム24の角部に形成されるR形状部の幅寸法を示し、幅寸法W2は、プレート部材22から面一に連続するフレーム24のフラット形状部の幅寸法を示している。上記した従来方法に係る二回射出で成形したフレームは、例えば1次射出で成形されるフレーム自体の幅寸法W1,W2がそれぞれ1.8mm、0.7mmであり、さらに、2次射出でフレームとプレート部材22を接合した部分の幅寸法が0.5mm必要であった。この接合した部分の幅寸法は、幅寸法W2とプレート部材22との間に挟まれるように配置される。一方、本実施形態のフレーム24は、幅寸法W1,W2がそれぞれ1.1mm、0.4mmとなり、従来構造のフレームに比べて大幅な狭小化が可能となった。
【0027】
次に、第1筐体部材11の具体的な構成例を説明する。
【0028】
図4は、電子機器を第1姿勢とした状態での筐体部材11,12の前縁部及びその周辺部の模式的な側面断面図である。
図5Aは、第1筐体部材11の右側の前角部お及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5Bは、
図5Aに示す凹状部40に電波透過性部材42を配置した状態を示す斜視図である。
【0029】
図4に示すように、第1筐体部材11は、外壁26と、表面部材28と、カバー部材30とを備える。
【0030】
外壁26は、第1筐体部材11の四周側面を形成する部材であり、上下方向に起立した立壁である。外壁26は、その大部分が外壁本体26aで形成され、一部が左右のアンテナ素子18で形成されている。外壁本体26aは、例えばマグネシウム合金である。各アンテナ素子18は、外壁本体26aと一体に形成されている。つまりアンテナ素子18は、第1筐体部材11を利用し、その最外面に配置された筐体アンテナである。第1筐体部材11は、外壁本体26aが導電性材料製であるため、外壁本体26aとアンテナ素子18との間には電波を透過する樹脂材31を設けている。
【0031】
第1筐体部材11内には、アンテナモジュール32が収容されている。アンテナモジュール32は、左右のアンテナ素子18に対応して一対設けられ、それぞれ対応するアンテナ素子18と接続される。アンテナモジュール32は、第1筐体部材11内で左右の前角部の内側にそれぞれ配置される。
図4では、左右のアンテナ素子18及びアンテナモジュール32のうちの右側のものを代表的に図示しているが、左側のものも
図4と同一又は同様な構成でよい。
【0032】
アンテナモジュール32は、平面視で略L字形状に形成され、例えばプリント基板及びこれを支持したブラケットで形成されている。アンテナモジュール32は、第1筐体部材11内でマザーボードに接続されている。アンテナモジュール32は、側方に突出した取付片32aを有し、この取付片32aがねじ32bで表面部材28と固定される。アンテナモジュール32には、立壁部32cが設けられている。立壁部32cは、第1筐体部材11の内側を向いた側面と、上下面とがそれぞれ導電性材料で形成されたシールド材34,35,36で囲まれている。これらのシールド材34~36は、表面部材28又はカバー部材30と適宜接続され、フレームグランドされている。
図4中の参照符号32dは、アンテナモジュール32とアンテナ素子18とを接続するスプリング端子である。
【0033】
次に、表面部材28は、外壁26の上端部から連続し、第1筐体部材11の表面11aを形成する。表面部材28は、表面11aの大部分を形成するベース部材28aを有する。ベース部材28aは、例えばマグネシウム合金で形成されている。キーボード16は、ベース部材28aに形成された開口を通して表面11aに臨む。左右のアンテナ素子18は、外壁26から表面部材28まで、第1筐体部材11の上角部を回り込むように延在し、表面部材28の一部も形成している。
【0034】
図4及び
図5Aに示すように、表面部材28の表面11aには、各アンテナ素子18を他の部分よりも一段低く形成した凹状部40が設けられている。凹状部40は、アンテナ素子18の表面18aを表面11aから1mm程度下げたものである。凹状部40は、一側部に外壁26に向かって開口した開口部40aを有する。
【0035】
図4A及び
図5Bに示すように、凹状部40は、樹脂等の電波透過性材料で形成された電波透過性部材42で埋められている。電波透過性部材42は、凹状部40を埋めることで、アンテナ素子18の表面18aを覆っている。これにより表面部材28は、凹状部40が設けられたアンテナ素子18の上方部分では、電波透過性部材42の表面42aが表面11aを形成する。表面42aは、表面11aと面一に形成される。電波透過性部材42は、凹状部40の開口部40aを塞ぐ部分42bを有する。この部分42bは、アンテナ素子18の上部で外壁26の一部を形成する。また、電波透過性部材42は、表面部材28を板厚方向に貫通した分断部42cを有する。分断部42cは、アンテナ素子18とベース部材28aとの間を分断するように設けられ、アンテナ素子18と導電性材料で形成されたベース部材28aとの間に所定の距離を形成する。
【0036】
なお、第1筐体部材11の最表面は、所定の塗装が施されるため、電波透過性部材42とベース部材28aとの境界は外観上隠され、樹脂材31及び部分42bとアンテナ素子18及び外壁本体26aとの境界等も同様に隠される。
【0037】
次に、カバー部材30は、第1筐体部材11の底面の大部分を形成するカバー本体30aと、カバー本体30aの外周縁部に接合された樹脂カバー部30bとを有する。樹脂カバー部30bは、樹脂等の電波透過性材料で形成される。樹脂カバー部30bは、アンテナ素子18と導電性材料で形成されたカバー本体30aとの間に所定の距離を形成する。
【0038】
ところで、本実施形態の電子機器10では、アンテナ素子18が第1筐体部材11の外壁26の一部を形成している。このため、電子機器10が
図4に示す第1姿勢とされた場合、アンテナ素子18は、第2筐体部材12のフレーム24で上から覆われた状態となる。
【0039】
この点に関し、上記特許文献1の構成においても外壁の一部をアンテナ素子が形成しており、第1姿勢時にアンテナ素子が第2筐体部材で覆われる。ところが、この従来構成では、第2筐体部材のフレームが非導電性材料で形成されているため、アンテナ素子が第2筐体部材で覆われてもアンテナ性能への影響はほとんどなかった。
【0040】
一方、本実施形態の電子機器10は、第2筐体部材12の軽量化や強度向上のためにフレーム24を導電性材料で形成している。このため、電子機器10が
図4に示す第1姿勢とされた場合、アンテナ素子18は、導電性材料で上から覆われた状態となる。その結果、当該電子機器10は、第1姿勢においてアンテナ素子18と導電性材料(フレーム24)との距離が近接してアンテナ性能が低下する懸念がある。
【0041】
そこで、本実施形態の電子機器10は、上記したように、アンテナ素子18の表面18aを覆うように設けられ、第1姿勢時にアンテナ素子18とフレーム24との間に介在する電波透過性部材42を有する。
【0042】
従って、
図4に示すように、当該電子機器10は、アンテナ素子18の表面18aと導電性材料製のフレーム24との間の直線距離Lが一定以上確保される。距離Lは、例えば1mm以上に設定される。その結果、等が電子機器10は、第2筐体部材12の回動角度に限らず、常にアンテナ素子18での良好な通信品質を確保できる。
図4中に1点鎖線で示す矢印は、アンテナ素子18によって送受信される電波を模式的に示したものである。
【0043】
特に、本実施形態の電子機器10は、表面部材28の表面11aにおいて、アンテナ素子18を他の部分(ベース部材28a)よりも一段低く形成した凹状部40を備える。そして、電波透過性部材42は、この凹状部40を埋めるように配置されている。このため、本実施形態では、外壁26の一部を形成するアンテナ素子18の表面18aの全体を電波透過性部材42で覆った構成でありながらも、第1筐体部材11の板厚が増加することを抑制できる。つまり凹状部40を設けたことで、電波透過性部材42が第1筐体部材11の薄型化を阻害せず、第1筐体部材11の表面11aの外観も良好となる。
【0044】
また、このような凹状部40は、外壁26に向かって開口した開口部40aを有する。これにより電波透過性部材42は、部分42bがアンテナ素子18の表面18a上で外壁26の一部を形成する。このため、当該電子機器10は、外壁26を形成するアンテナ素子18の表面18aを電波透過性部材42でより確実に覆い隠すことができ、上記した距離Lの確保が一層容易となる。
【0045】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 電子機器
11 第1筐体部材
12 第2筐体部材
14 ヒンジ
18 アンテナ素子
22 プレート部材
24 フレーム
26 外壁
28 表面部材
28a ベース部材
32 アンテナモジュール
40 凹状部
42 電波透過性部材
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
外壁と、前記外壁の一部を形成するアンテナ素子とを有する第1筐体部材と、
前記第1筐体部材の表面を覆う第1姿勢と、前記第1筐体部材の表面を露呈させる第2姿勢との間で、前記第1筐体部材に対して相対的に回動可能に連結された第2筐体部材と、
を備え、
前記第2筐体部材の外周縁部には、導電性材料で形成され、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子を上から覆うように配置されるフレームが設けられ、
前記第1筐体部材は、さらに、前記アンテナ素子の表面全体を覆い、前記第1姿勢時に前記アンテナ素子と前記フレームとの間に介在する電波透過性部材を有し、
前記第1筐体部材は、さらに、前記外壁から連続し、当該第1筐体部材の表面を形成する表面部材を有し、
前記アンテナ素子は、前記外壁から前記表面部材まで延在することで、前記表面部材の一部も形成しており、
前記表面部材の表面には、前記アンテナ素子を他の部分よりも一段低く形成した凹状部が設けられ、
前記電波透過性部材は、前記凹状部を埋めるように配置されており、
前記凹状部は、前記外壁に向かって開口した開口部を有し、
前記電波透過性部材は、前記アンテナ素子の表面上で前記外壁の一部を形成しており、
前記表面部材は、導電性材料で形成されたベース部材を有し、
前記電波透過性部材は、前記アンテナ素子と前記ベース部材との間を分断している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第2筐体部材は、さらに、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成されたプレート部材を有し、
前記フレームは、炭素繊維を混入させた樹脂材料で形成され、前記プレート部材の外周縁部に接合されている
ことを特徴とする電子機器。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、アンテナ性能の低下を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。