(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165802
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】逐次比較型AD変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20241121BHJP
H03M 1/46 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082300
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋上 護
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 弘治
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA01
5J022CB03
5J022CF01
5J022CF07
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】AD変換の精度向上を図る。
【解決手段】逐次比較型AD変換回路(1A)は、アナログ入力信号に応じた第1電圧(V1)又は第1電圧との対比に供される第2電圧(V2)を補正する補正回路(30)と、補正を通じて得られる2つの比較入力電圧を比較することで比較結果信号を生成するコンパレータ(40)と、比較結果信号に基づき、デジタル出力信号の最上位ビットから最下位ビットに向けてバイナリサーチによりデジタル出力信号の値をビットごとに決定する制御回路(50)と、を備える。制御回路は、逐次比較期間において、デジタル出力信号のビットごとに補正回路での補正量を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成された逐次比較型AD変換回路であって、
前記アナログ入力信号に応じた第1電圧を生成するよう構成された第1電圧生成回路と、
前記第1電圧との対比に供される第2電圧を生成するよう構成された第2電圧生成回路と、
バイナリサーチが行われる逐次比較期間において前記第1電圧又は前記第2電圧を補正するよう構成された補正回路と、
前記補正回路での補正を通じて得られる2つの比較入力電圧を受け、前記2つの比較入力電圧を比較することで比較結果信号を生成するよう構成されたコンパレータと、
前記比較結果信号に基づき、前記デジタル出力信号の最上位ビットから最下位ビットに向けてバイナリサーチにより前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定するよう構成された制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記デジタル出力信号のビットごとに前記補正回路での補正量を設定する
、逐次比較型AD変換回路。
【請求項2】
前記第1電圧生成回路は、キャパシタアレイ及び前記キャパシタアレイに接続されるスイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記アナログ入力信号が加わる配線を前記スイッチアレイを介して前記キャパシタアレイに接続することで前記アナログ入力信号に応じた電荷を前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の前記逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記スイッチアレイを介し前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第1電圧を生成し、
前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じて前記スイッチアレイの状態を制御しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項3】
前記第2電圧生成回路は、予め定められた基準電圧を前記第2電圧として生成するよう構成された基準電圧源である
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項4】
前記第2電圧生成回路は、供給されたデジタル信号をアナログ信号に変換することで前記第2電圧を生成するよう構成されたDA変換回路である
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項5】
前記アナログ入力信号は第1アナログ入力信号及び第2アナログ入力信号間の差信号であり、
前記第1電圧生成回路は、第1キャパシタアレイ及び前記第1キャパシタアレイに接続される第1スイッチアレイを有し、サンプリング期間にて前記第1アナログ入力信号が加わる配線を前記第1スイッチアレイを介して前記第1キャパシタアレイに接続することで前記第1アナログ入力信号に応じた電荷を前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の前記逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記第1スイッチアレイを介し前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第1キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第1電圧を生成し、
前記第2電圧生成回路は、第2キャパシタアレイ及び前記第2キャパシタアレイに接続される第2スイッチアレイを有し、前記サンプリング期間にて前記第2アナログ入力信号が加わる配線を前記第2スイッチアレイを介して前記第2キャパシタアレイに接続することで前記第2アナログ入力信号に応じた電荷を前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記逐次比較期間において前記電源電圧又は前記グランド電圧を前記第2スイッチアレイを介し前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第2キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第2電圧を生成し、
前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じて前記第1スイッチアレイ及び前記第2スイッチアレイの各状態を制御しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項6】
前記第1電圧生成回路は、前記アナログ入力信号をサンプリングして保持することで前記第1電圧を生成し、
前記第2電圧生成回路は、前記制御回路からのデジタルの制御信号をアナログ信号に変換することで前記第2電圧を生成し、
前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じた前記制御信号を前記第2電圧生成回路に出力しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する
、請求項1に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項7】
前記2つの比較入力電圧は、前記補正回路による補正後の前記第1電圧と、前記第2電圧生成回路にて生成された前記第2電圧である
、請求項1~6の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項8】
前記2つの比較入力電圧は、前記第1電圧生成回路にて生成された前記第1電圧と、前記補正回路による補正後の前記第2電圧である
、請求項1~6の何れかに記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項9】
前記第1電圧生成回路は比較配線に前記第1電圧を発生させ、
前記補正回路は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチを有する補正単位回路を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第1電圧を補正する
、請求項2に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項10】
前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第1電圧を補正する
、請求項9に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項11】
前記第1電圧生成回路は比較配線に前記第1電圧を発生させ、
前記補正回路は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチを有する補正単位回路を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第1電圧を補正する
、請求項5に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項12】
前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第1電圧を補正する
、請求項11に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項13】
前記第2電圧生成回路は比較配線に前記第2電圧を発生させ、
前記補正回路は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチを有する補正単位回路を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第2電圧を補正する
、請求項5に記載の逐次比較型AD変換回路。
【請求項14】
前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第2電圧を補正する
、請求項13に記載の逐次比較型AD変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逐次比較型AD変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
AD変換回路の一種として、バイナリサーチを利用してAD変換を行う逐次比較型AD変換回路がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逐次比較型AD変換回路においてAD変換の精度向上は重要である。
【0005】
本開示は、AD変換の精度向上(例えば直線性の向上)に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る逐次比較型AD変換回路は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成された逐次比較型AD変換回路であって、前記アナログ入力信号に応じた第1電圧を生成するよう構成された第1電圧生成回路と、前記第1電圧との対比に供される第2電圧を生成するよう構成された第2電圧生成回路と、バイナリサーチが行われる逐次比較期間において前記第1電圧又は前記第2電圧を補正するよう構成された補正回路と、前記補正回路での補正を通じて得られる2つの比較入力電圧を受け、前記2つの比較入力電圧を比較することで比較結果信号を生成するよう構成されたコンパレータと、前記比較結果信号に基づき、前記デジタル出力信号の最上位ビットから最下位ビットに向けてバイナリサーチにより前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定するよう構成された制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記デジタル出力信号のビットごとに前記補正回路での補正量を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、AD変換の精度向上(例えば直線性の向上)に寄与する逐次比較型AD変換回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの内部構成及び周辺回路を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係り、スイッチアレイにおける1つのスイッチの4状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係り、キャパシタアレイにおける複数のキャパシタの静電容量値の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係り、AD変換動作のフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係り、サンプリング動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係り、状態遷移動作のフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係り、状態遷移動作に関わるADコンバータの状態を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態に係り、逐次比較動作のフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に係り、制御回路内のレジスタの構成図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態に係り、逐次比較動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の第1実施形態に係り、電圧生成回路の構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1実施形態に係り、電圧生成回路の他の構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態に係り、電圧生成回路にて生成される電圧が理想電圧からずれる様子を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の第1実施形態に係り、ビットごとの補正量を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図17】
図17は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図18】
図18は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図19】
図19は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、非補正状態における補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図20】
図20は、本開示の第2実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図21】
図21は、本開示の第2実施形態に係り、サンプリング動作が行われるときのADコンバータの状態を示す図である。
【
図22】
図22は、本開示の第2実施形態に属する実施例EX2_1に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図23】
図23は、本開示の第2実施形態に属する実施例EX2_2に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図24】
図24は、本開示の第2実施形態に属する実施例EX2_3に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図25】
図25は、本開示の第2実施形態に属する実施例EX2_4に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図26】
図26は、本開示の第3実施形態に係るADコンバータの全体構成図である。
【
図27】
図27は、本開示の第3実施形態に係り、逐次比較動作のフローチャートである。
【
図28】
図28は、本開示の第3実施形態に属する実施例EX3_1に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【
図29】
図29は、本開示の第3実施形態に属する実施例EX3_2に係り、補正回路と、その周辺の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“WR1”によって参照される比較配線は(
図1参照)、比較配線WR1と表記されることもあるし、配線WR1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。本明細書において、任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0010】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1に本開示の第1実施形態に係るADコンバータ1Aの全体構成を示す。ADコンバータ1Aは逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ1Aに対してアナログ入力信号Ainが入力される。ADコンバータ1Aはアナログ入力信号Ainに対するAD変換動作を行う。アナログ入力信号Ainに対するAD変換動作では、アナログ入力信号Ainをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。
【0011】
デジタル出力信号DoutはNビットのデジタル信号である。即ち、デジタル出力信号Doutは、第1番目のビットから第N番目のビットまでの計Nビットを有する。Nは2以上の任意の整数であり、例えば、8、10、12、14又は16である。ここで、第i番目のビットから見て第(i+1)番目のビットが上位側のビットであるとする。故に、第1番目~第N番目のビットの内、第1番目のビットが最下位ビットであり、第N番目のビットが最上位ビットである。iは任意の整数を表し、N以下の自然数を表すと解して良い。
【0012】
ADコンバータ1Aは、DAC10、電圧生成回路20、補正回路30、コンパレータ40、制御回路50及びスイッチSGを備える。配線WR_Ainはアナログ入力信号Ainが加わるアナログ入力配線である。配線WR_VDDは所定の電源電圧VDDが加わる電源配線である。配線WR_GNDはグランドに接続される。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。配線WR_GNDはグランド電圧が加わるグランド配線である。配線WR_GNDそのものがグランドであると解しても良い。グランド電圧はグランドの電位を有し、故に0Vである。電源電圧VDDは正の直流電圧値(例えば5V)を有する。アナログ入力信号Ainは0V以上且つ電源電圧VDD以下の電圧値を有する。
【0013】
DAC10は第1電圧生成回路の例である。DAC10はキャパシタ型DAC(キャパシタ型デジタル-アナログ変換器)である。キャパシタ型DACは一般に容量性DACとも称される。DAC10はキャパシタアレイ11及びスイッチアレイ12を備える。キャパシタアレイ11はキャパシタC[1]~C[N]を備え、スイッチアレイ12はスイッチS[1]~S[N]を備える。
【0014】
キャパシタC[1]~C[N]は各々に第1端及び第2端を備え、第1端及び第2端間に電荷を蓄積する。
図1の構成では、キャパシタC[1]~C[N]の第1端は全て比較配線WR1に接続される。キャパシタC[1]~C[N]に対応して、夫々、スイッチS[1]~S[N]が設けられる。即ちキャパシタC[i]に対応してスイッチS[i]が設けられる。また、キャパシタC[i]はデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットに対応する。キャパシタC[1]~C[N]の第2端に対し、スイッチS[1]~C[N]を介して、アナログ入力信号Ain、電源電圧VDD又はグランド電圧が印加され得る。比較配線WR1における電圧を電圧V1と称する。DAC10はアナログ入力信号Ainに応じた電圧V1を生成し、電圧V1を比較配線WR1に出力する。
【0015】
図2にキャパシタC[i]とスイッチS[i]と配線WR_Ain、WR_VDD及びWR_GNDとの接続関係を示す。スイッチS[1]~S[N]は各々に共通端子T
COM及び切替端子Ta、Tb及びTcを備える。スイッチS[1]~S[N]の共通端子T
COMは、夫々、キャパシタC[1]~C[N]の第2端に接続される。即ち例えば、スイッチS[1]の共通端子T
COMはキャパシタC[1]の第2端に接続され、スイッチS[2]の共通端子T
COMはキャパシタC[2]の第2端に接続される。スイッチS[3]等も同様である。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_Ainに接続されてアナログ入力信号Ainを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tbは配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tcは配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0016】
制御回路50の制御の下、スイッチS[1]~S[N]の夫々において、共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れか1つに選択的に接続される。但し、スイッチS[i]において共通端子TCOMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されないことがあっても良い。
【0017】
図3を参照し、以下では、任意のスイッチS[i]において、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb、Tcに接続される状態を、夫々、信号入力状態、電源接続状態、グランド接続状態と称し、共通端子T
COMが切替端子Ta、Tb及びTcの何れとも接続されない状態を開放状態と称する。スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号Ain、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる。尚、
図1では例として、スイッチS[1]~S[N]が全て信号入力状態とされる様子が示されている。
【0018】
図1を再度参照し、スイッチS
Gの第1端は比較配線WR1に接続され、スイッチS
Gの第2端には所定の基準電圧V
REFが印加される。基準電圧V
REFは固定電位を有する。基準電圧V
REFは正の直流電圧値を有していて良い。電圧生成回路20にて生成される電圧V2が基準電圧V
REFであっても良い。基準電圧V
REFは0Vであり得る。制御回路50によりスイッチS
Gはオン状態又はオフ状態に制御される。オン状態、オフ状態は、以下、夫々、単にオン、オフと表現され得る。スイッチS
Gがオンであるとき、スイッチS
Gの第1端及び第2端間が導通して比較配線WR1の電圧V1は基準電圧V
REFに固定される。スイッチS
Gがオフであるとき、スイッチS
Gの第1端及び第2端間は遮断される(非導通となる)。尚、
図1では例として、スイッチS
Gがオフとされる様子が示されている。
【0019】
スイッチS[1]~[N]及びSGの夫々をMOSFET等の任意のスイッチング素子にて構成できる。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。スイッチS[1]~[N]はマルチプレクサであって良い。尚、任意のスイッチに関し、制御回路50が当該スイッチを或る注目した状態に制御するとは、制御回路50が当該スイッチの状態を当該注目した状態に設定することと同義である。
【0020】
電圧生成回路20は第2電圧生成回路の例である。電圧生成回路20は、電圧V1との対比に供される電圧V2を生成し、生成した電圧V2を比較配線WR2に出力する。
【0021】
補正回路30は、制御回路50の制御の下、電圧補正処理を実行できる。電圧補正処理において、補正回路30はDAC10にて生成された電圧V1を補正する又は電圧生成回路20にて生成された電圧V2を補正する。以下では、説明の具体化のため、補正回路30による補正が行われていない電圧V1を原電圧V1と称し、補正回路30による補正が行われた後の電圧V1を補正電圧V1と称する。同様に、補正回路30による補正が行われていない電圧V2を原電圧V2と称し、補正回路30による補正が行われた後の電圧V2を補正電圧V2と称する。
【0022】
コンパレータ40は反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。コンパレータ40の反転入力端子に対して第1比較入力電圧である電圧Vin1が供給され、コンパレータ40の非反転入力端子に対して第2比較入力電圧である電圧Vin2が供給される。電圧Vin1は原電圧V1又は補正電圧V1である。電圧Vin2は原電圧V2又は補正電圧V2である。
【0023】
コンパレータ40は電圧Vin1及びVin2を比較し、電圧Vin1及びVin2の比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する二値化信号である。尚、コンパレータ40の非反転入力端子に電圧Vin1を供給し且つコンパレータ40の反転入力端子に電圧Vin2を供給する変形も可能である。
【0024】
コンパレータ40は、“Vin1<Vin2”の成立時において“1”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力し、“Vin1>Vin2”の成立時において“0”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力する。“Vin1=Vin2”の成立時において比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する。“Vin1>Vin2”は電圧Vin1が電圧Vin2よりも高いことを表し、“Vin1<Vin2”は電圧Vin1が電圧Vin2よりも低いことを表す。電圧等の物理量を含む他の式についても同様である。
【0025】
制御回路50は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路50はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。制御回路50にはレジスタ51が設けられ、レジスタ51にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路50はDAC10に対して制御信号CNTDAC(DAC入力信号)を供給することで、スイッチS[1]~S[N]の状態を個別に制御する。制御回路50はスイッチSGに対して制御信号CNTGを供給することで、スイッチSGの状態を制御する。制御回路50には更に補正制御部52が設けられる。補正制御部52は補正回路30による電圧補正処理の実行制御を行う(詳細は後述)。
【0026】
図1のDAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値よりも大きい。ここでは、
図4に示す如く、DAC10内のキャパシタC[i]は“2
i-1・C
UNT”の静電容量値を有するものとする。故に、
図1のDAC10において、任意の整数iに関し、キャパシタC[i+1]の静電容量値はキャパシタC[i]の静電容量値の2倍である。C
UNTは所定の単位容量値を表す。
【0027】
図5にAD変換動作のフローチャートを示す。AD変換動作では、まずステップS1のサンプリング動作が行われ、次いで、ステップS2の状態遷移動作を経てからステップS3の逐次比較動作が行われ、最後にステップS4の結果出力動作が行われる。以下、サンプリング動作が行われる期間をサンプリング期間と称し、逐次比較動作が行われる期間を逐次比較期間と称する。電圧補正処理は逐次比較動作が行われるときに有意に機能し、故に補正制御部52は逐次比較期間において補正回路30に電圧補正処理を実行させる。ステップS1、S2及びS4において補正制御部52は補正回路30に電圧補正処理を実行させない(但し電圧補正処理を実行させることがあっても良い)。
【0028】
図6はサンプリング期間におけるADコンバータ1Aの状態を示す。サンプリング期間は所定時間長さを有する。サンプリング期間において、制御回路50は、DAC10内の全スイッチS[1]~S[N]を信号入力状態に制御し、且つ、スイッチS
Gをオンに制御する。
【0029】
サンプリング期間において、配線WR_Ainがスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続されることで、アナログ入力信号Ainに応じた電荷がキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。サンプリング期間においてスイッチSGがオンに制御されるため、キャパシタアレイ11中の各キャパシタが基準電圧VREFを基準にしてアナログ入力信号Ainにより充電される。尚、サンプリング期間において電圧生成回路20及びコンパレータ40の動作は停止していて良い。
【0030】
ステップS2における状態遷移動作の流れの一例を
図7に示す。
図7の例では、状態遷移動作において、ステップS21、S22、S23の動作が、この順番で実行される。但し、ステップS21及びS22の動作は同時に行われても良い。ステップS21では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全て信号入力状態から開放状態に切り替えられる。ステップS22では、スイッチS
Gの状態がオンからオフに切り替えられる。ステップS22の後、ステップS3の逐次比較動作が完了するまでスイッチS
Gはオフ状態に維持される。ステップS23では、DAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が電源接続状態又はグランド接続状態に切り替えられる。
【0031】
図8に、ステップS21~S23の動作を経た後のADコンバータ1Aの状態を示す。
図8の例では、ステップS23にてDAC10のスイッチS[1]~S[N]の状態が全てグランド接続状態に切り替えられることが想定されている。尚、ステップS23の動作は省略され得る。
【0032】
図9にステップS3の逐次比較動作のフローチャートを示す。
図10にレジスタ51(
図1参照)の構造を示す。レジスタ51はNビット分の記憶容量を有し、値Rg[1]~Rg[N]を格納する。値Rg[1]~Rg[N]は夫々に“0”又は“1”である。任意の整数iに関し、値Rg[i+1]は値Rg[i]の上位側ビットの値である。逐次比較動作において値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。
【0033】
逐次比較期間においてスイッチS[1]~S[N]が個別に電源接続状態又はグランド接続状態に設定される。サンプリング期間中にキャパシタアレイ11に蓄積された電荷が逐次比較期間中にキャパシタC[1]~C[N]に分配される。分配の状態は逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存し、故に逐次比較期間中のスイッチS[1]~S[N]の状態に依存して電圧V1が変化する。制御回路50は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号SCMPに基づきバイナリサーチによりスイッチアレイ12の状態を順次切り替えながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0034】
図9の逐次比較動作では、まずステップS30にて、制御回路50にて管理される変数jに対しNの値が代入される。その後、ステップS31に進む。ステップS31において補正制御部52は補正回路30に電圧補正処理を実行させる。この際、補正制御部52はデジタル出力信号Doutのビットごとに補正回路30での補正量ΔV
Cを設定する。補正量ΔV
Cは電圧量である。デジタル出力信号Doutにおける第j番目のビットの値を決定するときに電圧補正処理にて使用される補正量を特に補正量ΔV
C[j]と称する。1回目のステップS31では“j=N”であるため補正量ΔV
C[N]による電圧補正処理が実行される。
【0035】
補正量ΔVC[j]は正の電圧値を持つ場合もあるし、負の電圧値を持つ場合もある。補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]は互いに異なる場合もあるし、補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]の内、幾つかの補正量の値が一致する場合もある。但し、少なくとも、補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]の中には、互いに異なる値を持つ2以上の補正量が含まれる。
【0036】
電圧補正処理にて電圧V1の補正が行われる場合、原電圧V1に対して補正量ΔVC[j]が加算されることで補正電圧V1が生成され(即ち原電圧V1と補正量ΔVC[j]との和が補正電圧V1として生成され)、補正電圧V1が電圧Vin1としてコンパレータ40の反転入力端子に供給されると共に原電圧V2が電圧Vin2としてコンパレータ40の非反転入力端子に供給される。電圧補正処理にて電圧V2の補正が行われる場合、原電圧V2に対して補正量ΔVC[j]が加算されることで補正電圧V2が生成され(即ち原電圧V2と補正量ΔVC[j]との和が補正電圧V2として生成され)、補正電圧V2が電圧Vin2としてコンパレータ40の非反転入力端子に供給されると共に原電圧V1が電圧Vin1としてコンパレータ40の反転入力端子に供給される。
【0037】
ステップS31の後、ステップS32に進む。ステップS32において、制御回路50はスイッチS[j]を電源接続状態に制御し且つスイッチS[1]~S[j-1]を全てグランド接続状態に制御する。但し、“j=1”の状態でステップS32の処理が実行される場合にあっては、スイッチS[1]~S[j-1]は存在しないので、ステップS32にて単にスイッチS[1]が電源接続状態に制御される。例として
図11に、“j=N”であるときにおけるステップS32での各スイッチの状態を示す。
【0038】
ステップS32に続くステップS33において、制御回路50は、現時点の比較結果信号SCMPの値を取得する(即ち直近のステップS32の状態にてコンパレータ40から出力される比較結果信号SCMPの値を取得する)。取得した値が“1”であれば(ステップS33のY)ステップS34に進んで制御回路50はステップS34及びS35の処理を行う一方、取得した値が“0”であれば(ステップS33のN)ステップS36に進んで制御回路50はステップS36及びS37の処理を行う。
【0039】
ステップS34において制御回路50は値Rg[j]を“1”に決定する。続くステップS35において制御回路50はスイッチS[j]を電源接続状態で維持する。以後、
図9の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]は電源接続状態で維持される。即ち例えば“j=N”の成立状態でステップS35に至ったとき、
図9の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[N]は電源接続状態で維持される。“j=N-1”の成立状態でステップS35に至ったときなども同様である。ステップS35の後、ステップS38に進む。ステップS35では実質的に何も実行されないので、ステップS35は省略されても良い。
【0040】
ステップS36において制御回路50は値Rg[j]を“0”に決定する。続くステップS37において制御回路50はスイッチS[j]の状態を電源接続状態からグランド接続状態に切り替える。以後、
図9の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[j]はグランド接続状態で維持される。即ち例えば“j=N”の成立状態でステップS37に至ったとき、
図9の逐次比較動作が終了するまでスイッチS[N]はグランド接続状態で維持される。“j=N-1”の成立状態でステップS37に至ったときなども同様である。ステップS37の後、ステップS38に進む。
【0041】
ステップS38において制御回路50は変数jが1であるかを確認する。変数jが1でない場合には(ステップS38のN)、ステップS39に進み、変数jより1を減算してからステップS31に戻ってステップS31以降の処理を繰り返す。例えば、2回目のステップS31の処理では電圧補正処理にて使用される補正量が補正量ΔVC[N]から補正量ΔVC[N-1]に切り替えられ、3回目のステップS31の処理では電圧補正処理にて使用される補正量が補正量ΔVC[N-1]から補正量ΔVC[N-2]に切り替えられる。4回目以降のステップS31も同様である。また例えば、2回目のステップS32の処理ではスイッチS[N-1]が電源接続状態に設定され且つスイッチS[1]~S[N-1]がグランド接続状態に設定されることになる。この際、1回目のステップS33にて“SCMP=1”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]は電源接続状態とされ、1回目のステップS33にて“SCMP=0”であったならば2回目のステップS32にてスイッチS[N]はグランド接続状態とされる。3回目以降のステップS32も同様である。
【0042】
ステップS31~S37から成る処理を単位比較動作と称する。そうすると、逐次比較動作は第1~第N単位比較動作を含む。“j=N”のときに実行される単位比較動作が第N単位比較動作であり、“j=N-1”のときに実行される単位比較動作が第(N-1)単位比較動作であり、・・・、“j=1”のときに実行される単位比較動作が第1単位比較動作である。第j単位比較動作において値Rg[j]が決定される、即ちデジタル出力信号Doutの第j番目のビットの値が決定される。
【0043】
ステップS38において“j=1”である場合(ステップS38のY)、
図9の逐次比較動作を終了する。この段階では、値Rg[1]~Rg[N]が全て決定済みである。
【0044】
ステップS4(
図5参照)の結果出力動作において、制御回路50は、ステップS3の逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutを利用する任意の回路(不図示)に対してデジタル出力信号Doutが出力される。ステップS4の結果出力動作は、ステップS3の逐次比較動作の実行中に開始されても良い。即ち逐次比較動作にて値Rg[N]が決定され次第、制御回路50は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N]を出力して良い。同様に、逐次比較動作にて値Rg[N-1]が決定され次第、制御回路50は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N-1]を出力して良い。値Rg[N-2]~Rg[1]についても同様である。
【0045】
図12に示す如く、電圧生成回路20は、予め定められた基準電圧を電圧V2として生成及び出力する基準電圧源20_1であって良い。この場合、基準電圧源20_1の出力端子が比較配線WR2に接続され、基準電圧源20_1は比較配線WR2に対して電圧V2を出力する。基準電圧源20_1から出力される電圧V2は原電圧V2である。基準電圧源20_1から出力される電圧V2が上記基準電圧V
REFとして利用されて良い。
【0046】
或いは、
図13に示す如く、電圧生成回路20はDA変換回路(デジタル-アナログ変換器)であるDAC20_2であっても良い。この場合、DAC20_2に対してデジタル信号Dinが入力される。DAC20_2はデジタル信号Dinをアナログ信号に変換し、得られたアナログ信号(アナログ電圧信号)を電圧V2として比較配線WR2に出力する。DAC20_2は例えばR-2Rラダー型のDA変換回路であって良い。DAC20_2から出力される電圧V2は原電圧V2である。デジタル信号Dinは、制御回路50からDAC20_2に供給される、又は、ADコンバータ1Aの外部回路(不図示)からDAC20_2に供給される。基本的に、デジタル信号Dinは不変である。但し、デジタル信号Dinは変更され得る。DAC20_2から出力される電圧V2が上記基準電圧V
REFとして利用されて良い。
【0047】
逐次比較期間では、各スイッチの切り替えに伴う電流発生及びADコンバータ1Aの駆動電流の変化など、様々な変動要因により電圧生成回路20から出力される電圧V2(原電圧V2)が理想電圧VIDEALから変動する。理想電圧VIDEALの値は電圧生成回路20から出力される電圧V2(原電圧V2)の設計値に相当する。理想電圧VIDEALからの変動はAD変換における精度の劣化要因(直線性の劣化要因)となる。当該変動の向き及び大きさは、逐次比較期間の中でも様々に変化する。具体的には、当該変動の向き及び大きさは、第1~第N単位比較動作の内、或る単位比較動作の実行期間と他の単位比較動作の実行期間との間でも相違する。例えば、第N単位比較動作の実行期間では、原電圧V2が理想電圧VIDEALより1mVだけ高くなる一方で、第(N-1)単位比較動作の実行期間では、原電圧V2が理想電圧VIDEALより2mVだけ低くなる、といったことが生じる。
【0048】
図14の実線折れ線610は、第8単位比較動作の実行期間(デジタル出力信号Doutの第8番目のビットの値を決定するための期間)と、第7単位比較動作の実行期間と、・・・、第1単位比較動作の実行期間と、の間で、理想電圧V
IDEALから見た原電圧V2の変動の向き及び大きさが様々に変化することを表している。
【0049】
一方で、理想電圧V
IDEALからの変動の向き及び大きさは、ADコンバータ1Aの回路パターン等に依存した概略一定の傾向を有している。故にそれらを実験等を介して評価し、評価結果に基づき適正な補正量を予め決定可能である。即ち例えば、第N単位比較動作の実行期間にて原電圧V2が理想電圧V
IDEALより正のオフセット電圧ΔV
OFFSETだけ高くなることが分かっている場合、
図9の逐次比較動作中の“j=N”であるときにおいて、原電圧V2からオフセット電圧ΔV
OFFSETを減じる電圧補正処理、又は、原電圧V1にオフセット電圧ΔV
OFFSETを加算する電圧補正処理を実行すれば良い。第(N-1)~第1単位比較動作も同様である。
【0050】
実際には、補正量情報を格納した不揮発性メモリ(不図示)を補正制御部52に設けておくと良い。補正量情報は補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]を特定する情報であり、補正制御部52は補正量情報に基づき補正回路30を制御することでステップS31の処理を実現する。ADコンバータ1Aの設計段階において、ビットごとのオフセット電圧ΔVOFFSETを評価して評価結果に基づき補正量情報を定めておけば良い。
【0051】
図15の実線折れ線620は、補正量情報にて特定される補正量ΔV
Cの例を表す。但し、実線折れ線620による補正量ΔV
Cは、
図14の実線折れ線610にて表される実電圧V2に加算するための補正量であるとする。つまり、
図14の実線折れ線610にて表される実電圧V2に対し
図15の実線折れ線620にて表される補正量ΔV
Cを加算することで、理想電圧V
IDEALと一致する補正電圧V2が得られる。或いは、実線折れ線620による補正量ΔV
Cの極性を反転させたものを実電圧V1に加算しても良い。何れせよ、電圧補正処理により上記オフセット電圧ΔV
OFFSETの影響が相殺される。
【0052】
第1実施形態は、以下の実施例EX1_1~EX1_3を含む。第1実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1~EX1_3に適用される。但し、各実施例において、第1実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。
【0053】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。
図16は、実施例EX1_1に係るADコンバータ1Aの一部構成図である。実施例EX1_1では補正回路30として補正回路30A_1が用いられる。補正回路30A_1は、電圧補正処理において、DAC10により生成された電圧V1を補正する。このため、実施例EX1_1では逐次比較期間において、電圧Vin1は補正電圧V1であり、電圧Vin2は原電圧V2である。
【0054】
補正回路30A_1は配線WR1とコンパレータ40の反転入力端子との間に直列に挿入された加算器であって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図9参照)、補正回路30A_1は、DAC10から出力される原電圧V1に対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧V1を生成する(即ち原電圧V1と補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧V1として生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V1は原電圧V1より高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V1は原電圧V1より低くなる。補正制御部52は第j単位比較動作の実行期間において補正回路30A_1を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0055】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。
図17は、実施例EX1_2に係るADコンバータ1Aの一部構成図である。実施例EX1_2では補正回路30として補正回路30A_2が用いられる。補正回路30A_2は、電圧補正処理において、電圧生成回路20により生成された電圧V2を補正する。このため、実施例EX1_2では逐次比較期間において、電圧Vin1は原電圧V1であり、電圧Vin2は補正電圧V2である。
【0056】
補正回路30A_2は配線WR2とコンパレータ40の非反転入力端子との間に直列に挿入された加算器であって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図9参照)、補正回路30A_2は、電圧生成回路20から出力される原電圧V2に対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧V2を生成する(即ち原電圧V2と補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧V2として生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V2は原電圧V2より高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V2は原電圧V2より低くなる。補正制御部52は第j単位比較動作の実行期間において補正回路30A_2を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0057】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。
図18は、実施例EX1_3に係るADコンバータ1Aの一部構成図である。実施例EX1_3では補正回路30として補正回路30A_3が用いられる。補正回路30A_3は、電圧補正処理において、DAC10により生成された電圧V1を補正する。このため、実施例EX1_3では逐次比較期間において、電圧Vin1は補正電圧V1であり、電圧Vin2は原電圧V2である。
【0058】
補正回路30A_3はM個の補正単位回路UCを備える。各補正単位回路UCは補正用キャパシタCC及び補正用スイッチSCを備える。Mは2以上の任意の整数を表す。通常は、Mは3以上の整数値を持つ又はMは4以上の整数値を持つ。M個の補正単位回路UCは補正単位回路UC[1]~UC[M]から成る。補正単位回路UC[i]における補正用キャパシタCC及び補正用スイッチSCを、夫々、補正用キャパシタCC[i]及び補正用スイッチSC[i]と称する。補正単位回路UC[1]~UC[M]は互いに同じ構成を有する。但し、補正用キャパシタCC[1]~CC[M]の中に、静電容量値の異なる2以上のキャパシタが含まれていて良く、補正用キャパシタCC[1]~CC[M]の静電容量値は全て互いに異なっていても良い。
【0059】
補正回路30A_3において、補正用キャパシタCC[1]~CC[M]の夫々の第1端は比較配線WR1に接続される。補正用スイッチSC[i]は、電源配線WR_VDD及びグランド配線WR_GNDに接続されると共に補正用キャパシタCC[i]の第2端に接続され、電源電圧VDD又はグランド電圧を補正用キャパシタCC[i]の第2端に供給する。補正用スイッチSC[i]の状態は、補正制御部52から補正回路30A_3に供給される制御信号CNTCに応じて、補正用キャパシタCC[i]の第2端に電源電圧VDDを与える状態(以下、ハイ側状態と称する)と、補正用キャパシタCC[i]の第2端にグランド電圧を与える状態(以下、ロー側状態と称する)と、で切り替わる。
【0060】
補正制御部52は、補正回路30A_3に制御信号CNT
Cを与えることで、補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]の状態を個別にハイ側状態又はロー側状態に設定し、これによって補正用キャパシタC
Cごとに、補正用キャパシタC
Cの第2端に対し電源電圧VDD及びグランド電圧の何れを供給するかを制御できる。
図18では、例として、補正用キャパシタC
C[1]~C
C[M]の各第2端に電源電圧VDDが供給される様子が図示されている。
【0061】
サンプリング期間において、補正制御部52は補正回路30A_3を基準状態である非補正状態に設定する。補正回路30A_3を非補正状態に設定するとは、補正回路30A_3における補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]の状態を非補正状態に設定することを意味する。
図19に示す如く、非補正状態において、補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]の内、補正用スイッチS
C[1]~S
C[M
HF]がロー側状態に設定され且つ補正用スイッチS
C[M
HF+1]~S
C[M]がハイ側状態に設定される。M
HFはMより小さな自然数を表す。Mが偶数であるとき“M
HF=M/2”であって良い。Mが奇数であるとき“M
HF=(M+1)/2”又は“M
HF=(M-1)/2”であって良い。尚、サンプリング期間ではスイッチS
Gがオンとされるため、補正用キャパシタC
C[1]~C
C[M
HF]には基準電圧V
REF及びグランド電圧間の差に応じた電荷が蓄積され、補正用キャパシタC
C[M
HF+1]~C
C[M]には基準電圧V
REF及び電源電圧VDD間の差に応じた電荷が蓄積される(それらの蓄積の様子は図示せず)。
【0062】
スイッチSGがオフであるとき、“1≦i≦MHF”を満たす整数iについて、補正用スイッチSC[i]をロー側状態からハイ側状態に切り替えれば(即ち補正用キャパシタCC[i]の第2端に供給される電圧をグランド電圧から電源電圧VDDに切り替えれば)比較配線WR1における電圧V1は上昇し、その上昇の大きさは補正用キャパシタCC[i]の静電容量値に依存する。スイッチSGがオフであるとき、“MHF+1≦i≦M”を満たす整数iについて、補正用スイッチSC[i]をハイ側状態からロー側状態に切り替えれば(即ち補正用キャパシタCC[i]の第2端に供給される電圧を電源電圧VDDからグランド電圧に切り替えれば)比較配線WR1における電圧V1は低下し、その低下の大きさは補正用キャパシタCC[i]の静電容量値に依存する。
【0063】
補正回路30A_3が非補正状態とされる状態は、補正回路30A_3による電圧補正処理が実行されていない状態に相当する。逐次比較期間において、補正制御部52は、補正回路30A_3の状態を非補正状態から変更することで、電圧V1に対する電圧補正処理を実現する。
【0064】
即ち、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正回路30A_3が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR1の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ上昇するよう、補正制御部52は補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正用スイッチS
C[1]~S
C[M
HF]の何れか1以上をロー側状態からハイ側状態に切り替える。
【0065】
逆に、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正回路30A_3が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR1の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ低下するよう、補正制御部52は補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正用スイッチS
C[M
HF+1]~S
C[M]の何れか1以上をハイ側状態からロー側状態に切り替える。
【0066】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。但し、第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3実施形態についても同様)。
【0067】
第1実施形態に示したADコンバータ1Aの構成及び動作を、差動入力構成を持つADコンバータに適用しても良い。当該適用が施されたADコンバータ1Bの全体構成を
図20に示す。ADコンバータ1Bは、ADコンバータ1Aと同様、逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ1Bに対してアナログ入力信号AinP及びAinNが入力される。ADコンバータ1Bはアナログ入力信号AinP及びAinN間の差信号ADifに対してAD変換動作を行う。差信号ADifはアナログ入力信号AinNの電位から見たアナログ入力信号AinPの電位を有するアナログ信号であるとする。
【0068】
差信号Adifに対するAD変換動作では、差信号Adifをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutは第1実施形態と同様にNビットのデジタル信号である。アナログ入力信号AinNの電圧はグランド電圧であって良く、この場合、差電圧Adifはアナログ入力信号AinPと等価である。或いは、アナログ入力信号AinNは0Vとは異なる他の固定電位を有してしても良い。
【0069】
更に或いは、アナログ入力信号AinNは、アナログ入力信号AinPの電位から見て高電位側にも低電位側にも変動する信号であって良い。この場合、“AinP=AinN”であるときにデジタル出力信号Doutは所定の中間値を持ち、“AinP>AinN”であるときに差信号Adifの大きさの増大につれてデジタル出力信号Doutの値が中間値から増大し、“AinP<AinN”であるときに差信号Adifの大きさの増大につれてデジタル出力信号Doutの値が中間値から減少する。
【0070】
ADコンバータ1Bは2つの電圧生成ブロックを備える。ADコンバータ1Bにおける各電圧生成ブロックは第1実施形態にて述べたDAC10及びスイッチSGを備える。各電圧生成ブロックにおけるDAC10及びスイッチSGの構成は、第1実施形態にて述べたDAC10及びスイッチSGの構成と同じである。故に、各電圧生成ブロックにおいて、DAC10はキャパシタC[1]~C[N]から成るキャパシタアレイ11及びスイッチS[1]~S[N]から成るスイッチアレイ12を備える。各電圧生成ブロックにおけるキャパシタC[1]~C[N]及びスイッチS[1]~S[N]間の接続関係は、第1実施形態におけるキャパシタC[1]~C[N]及びスイッチS[1]~S[N]間の接続関係と同じである。
【0071】
以下では、ADコンバータ1Bに設けられる2つの電圧生成ブロックの内、一方の電圧生成ブロックに設けられるDAC10及びスイッチSGを夫々DAC10P及びスイッチSGPと称し、他方の電圧生成ブロックに設けられるDAC10及びスイッチSGを夫々DAC10N及びスイッチSGNと称する。ADコンバータ1Bには、上記2つの電圧生成ブロックに加えて、補正回路30、コンパレータ40及び制御回路50が設けられる。
【0072】
ADコンバータ1Bにおいて、配線WR_AinPはアナログ入力信号AinPが加わるアナログ入力配線であり、配線WR_AinNはアナログ入力信号AinNが加わるアナログ入力配線である。第1実施形態と同様、配線WR_VDDは所定の電源電圧VDDが加わる電源配線であり、配線WR_GNDはグランド電圧が加わるグランド配線である。アナログ入力信号AinP、AinNは、夫々、DAC10P、10Nに対するアナログ入力信号Ainに相当する。
【0073】
図20の構成では、DAC10PのキャパシタC[1]~C[N]の第1端が全て比較配線WR1に接続され、DAC10NのキャパシタC[1]~C[N]の第1端が全て比較配線WR2に接続される。比較配線WR1における電圧が電圧V1であって且つ比較配線WR2における電圧が電圧V2である点は第1実施形態と同様である。DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[i]に対応してスイッチS[i]が設けられる。DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[i]はデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットに対応する。
【0074】
スイッチS[1]~S[N]は各々に共通端子T
COM及び切替端子Ta、Tb及びTcを備える(
図2参照)。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[i]の共通端子T
COMはキャパシタC[i]の第2端に接続される。DAC10PにおけるスイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_AinPに接続されてアナログ入力信号AinPを受ける。故にDAC10Pにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態ではアナログ入力信号AinPがキャパシタC[i]の第2端に加わる。DAC10NにおけるスイッチS[1]~S[N]の各切替端子Taは配線WR_AinNに接続されてアナログ入力信号AinNを受ける。故にDAC10Nにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態ではアナログ入力信号AinNがキャパシタC[i]の第2端に加わる。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tbは配線WR_VDDに接続されて電源電圧VDDを受ける。DAC10P及び10Nの夫々において、スイッチS[1]~S[N]の各切替端子Tcは配線WR_GNDに接続されてグランド電圧を受ける。
【0075】
DAC10Pにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号AinP、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる(
図3参照)。DAC10Nにおいて、スイッチS[i]の信号入力状態、電源接続状態、グランド状態では、夫々、アナログ入力信号AinN、電源電圧VDD、グランド電圧がキャパシタC[i]の第2端に加わる(
図3参照)。尚、
図20では、例として、DAC10P及び10NにおけるスイッチS[1]~S[N]が全て信号入力状態とされる様子が示されている。
【0076】
スイッチS
GPの第1端は比較配線WR1に接続され、スイッチS
GPの第2端には所定の基準電圧V
REFが印加される。スイッチS
GNの第1端は比較配線WR2に接続され、スイッチS
GNの第2端には所定の基準電圧V
REFが印加される。基準電圧V
REFは第1実施形態で述べた通りである。制御回路50によりスイッチS
GP及びS
GNはオン状態又はオフ状態に制御される。スイッチS
GPがオンであるとき、スイッチS
GPの第1端及び第2端間が導通して比較配線WR1の電圧V1は基準電圧V
REFに固定される。スイッチS
GPがオフであるとき、スイッチS
GPの第1端及び第2端間は遮断される(非導通となる)。スイッチS
GNがオンであるとき、スイッチS
GNの第1端及び第2端間が導通して比較配線WR2の電圧V2は基準電圧V
REFに固定される。スイッチS
GNがオフであるとき、スイッチS
GNの第1端及び第2端間は遮断される(非導通となる)。尚、
図20では例として、スイッチS
GP及びS
GNがオフとされる様子が示されている。
【0077】
第1実施形態と同様、補正回路30は、制御回路50の制御の下、電圧補正処理を実行できる。電圧補正処理において、補正回路30はDAC10Pにて生成された電圧V1を補正する又はDAC10Nにて生成された電圧V2を補正する。第1実施形態と同様に、補正回路30による補正が行われていない電圧V1を原電圧V1と称し、補正回路30による補正が行われた後の電圧V1を補正電圧V1と称する。第1実施形態と同様に、補正回路30による補正が行われていない電圧V2を原電圧V2と称し、補正回路30による補正が行われた後の電圧V2を補正電圧V2と称する。
【0078】
第1実施形態と同様、コンパレータ40の反転入力端子に対して第1比較入力電圧である電圧Vin1が供給され、コンパレータ40の非反転入力端子に対して第2比較入力電圧である電圧Vin2が供給される。電圧Vin1は原電圧V1又は補正電圧V1である。電圧Vin2は原電圧V2又は補正電圧V2である。コンパレータ40は電圧Vin1及びVin2を比較し、電圧Vin1及びVin2の比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。電圧Vin1及びVin2の高低関係に応じた比較結果信号SCMPの生成方法は第1実施形態で述べた通りである。
【0079】
制御回路50は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路50はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。第1実施形態と同様、制御回路50にはレジスタ51及び補正制御部52が設けられる。レジスタ51にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路50はDAC10P及び10Nの夫々に対して制御信号CNTDAC(DAC入力信号)を供給することで、スイッチS[1]~S[N]の状態を個別に制御する。制御回路50はスイッチSGP及びSGNの夫々に対して制御信号CNTGを供給することで、スイッチSGP及びSGNの状態を制御する。
【0080】
DAC10P及び10Nの夫々において、キャパシタC[1]~C[n]の静電容量値は第1実施形態と同様に設定される(
図4参照)。
【0081】
ADコンバータ1BにおけるAD変換動作では、第1実施形態と同様に、ステップS1~S4の動作が順次実行される(
図5参照)。
【0082】
図21はサンプリング期間におけるADコンバータ1Bの状態を示す。サンプリング期間は所定時間長さを有する。サンプリング期間において、制御回路30は、DAC10P及び10N内の全スイッチS[1]~S[N]を信号入力状態に制御し、且つ、スイッチS
GP及びS
GNをオンに制御する。
【0083】
サンプリング期間では、配線WR_AinPがDAC10P内でスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続され、これによってアナログ入力信号AinPに応じた電荷がDAC10Pのキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。この際、DAC10Pにおけるキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])は基準電圧VREFを基準にしてアナログ入力信号AinPにより充電される。同様に、サンプリング期間では、配線WR_AinNがDAC10N内でスイッチアレイ12を介してキャパシタアレイ11に接続され、これによってアナログ入力信号AinNに応じた電荷がDAC10Nのキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])に蓄積される。この際、DAC10Nにおけるキャパシタアレイ11中の各キャパシタ(C[1]~C[N])は基準電圧VREFを基準にしてアナログ入力信号AinNにより充電される。
【0084】
ステップS2における状態遷移動作では、第1実施形態に示す状態遷移動作と同様の動作が、2つの電圧生成ブロックの夫々に対して実行される。状態遷移動作において、ステップS21、S22、S23の動作が、この順番で実行されて良い(
図7参照)。尚、DAC10Pを含む電圧生成ブロックに対する状態遷移動作では、ステップS22にてスイッチS
GPの状態がオンからオフに切り替えられる。DAC10Nを含む電圧生成ブロックに対する状態遷移動作では、ステップS22にてスイッチS
GNの状態がオンからオフに切り替えられる。ステップS22の後、逐次比較動作が完了するまでスイッチS
GP及びS
GNはオフ状態に維持される。
【0085】
ステップS3の逐次比較動作においてレジスタ31の値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。制御回路30は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号SCMPに基づきバイナリサーチによりDAC10P及び10Nのスイッチアレイ12の状態を順次切り替えながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0086】
ADコンバータ1Bにおいて、ステップS3における逐次比較動作のフローチャートは
図9のそれと同じであり、第1実施形態における逐次比較動作が本実施形態にも適用される。但し、第1実施形態にてスイッチS[j]の状態が電源接続状態に制御、設定、維持、切り替えられる場合、第2実施形態ではDAC10P及びDAC10Nの夫々におけるスイッチS[j]の状態が電源接続状態に制御、設定、維持、切り替えられると解される。同様に、第1実施形態にてスイッチS[j]の状態がグランド接続状態に制御、設定、維持、切り替えられる場合、第2実施形態ではDAC10P及びDAC10Nの夫々におけるスイッチS[j]の状態がグランド接続状態に制御、設定、維持、切り替えられると解される。
【0087】
ステップS4(
図7参照)の結果出力動作において、制御回路30は、ステップS3の逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号を、デジタル出力信号Doutとして出力する。
【0088】
ADコンバータ1Bは、
図1のADコンバータ1Aにおいて電圧生成回路20をDAC10Nにより構成した回路であると考えることができる。ADコンバータ1Bにおいて、DAC10P、10Nは夫々第1、第2電圧生成回路の例である。ADコンバータ1Bでは、アナログ入力信号AinNに応じた電圧V2を用いて電圧V1及びV2が逐次比較期間にて比較される。しかしながら、この場合においても、第1実施形態と同様に、様々な変動要因により電圧V2が理想から変動し、当該変動の向き及び大きさは、第1~第N単位比較動作の内、或る単位比較動作の実行期間と他の単位比較動作の実行期間との間でも相違する。このため、第1実施形態のADコンバータ1Aと同様に、デジタル出力信号Doutのビットごとに補正量V
Cを設定する。
【0089】
第2実施形態は、以下の実施例EX2_1~EX2_4を含む。第2実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX2_1~EX2_4に適用される。但し、各実施例において、第2実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。
【0090】
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。
図22は、実施例EX2_1に係るADコンバータ1Bの一部構成図である。実施例EX2_1では補正回路30として補正回路30B_1が用いられる。補正回路30B_1は、電圧補正処理において、DAC10Pにより生成された電圧V1を補正する。このため、実施例EX2_1では逐次比較期間において、電圧Vin1は補正電圧V1であり、電圧Vin2は原電圧V2である。
【0091】
補正回路30B_1は配線WR1とコンパレータ40の反転入力端子との間に直列に挿入された加算器あって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図9参照)、補正回路30B_1は、DAC10Pから出力される原電圧V1に対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧V1を生成する(即ち原電圧V1と補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧V1として生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V1は原電圧V1より高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V1は原電圧V1より低くなる。補正制御部52は第j単位比較動作の実行期間において補正回路30B_1を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0092】
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。
図23は、実施例EX2_2に係るADコンバータ1Bの一部構成図である。実施例EX2_2では補正回路30として補正回路30B_2が用いられる。補正回路30B_2は、電圧補正処理において、DAC10Nにより生成された電圧V2を補正する。このため、実施例EX2_2では逐次比較期間において、電圧Vin1は原電圧V1であり、電圧Vin2は補正電圧V2である。
【0093】
補正回路30B_2は配線WR2とコンパレータ40の非反転入力端子との間に直列に挿入された加算器あって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図9参照)、補正回路30B_2は、DAC10Nから出力される原電圧V2に対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧V2を生成する(即ち原電圧V2と補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧V2として生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V2は原電圧V2より高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧V2は原電圧V2より低くなる。補正制御部52は第j単位比較動作の実行期間において補正回路30B_2を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0094】
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。
図24は、実施例EX2_3に係るADコンバータ1Bの一部構成図である。実施例EX2_3では補正回路30として補正回路30B_3が用いられる。補正回路30B_3は、電圧補正処理において、DAC10Pにより生成された電圧V1を補正する。このため、実施例EX2_3では逐次比較期間において、電圧Vin1は補正電圧V1であり、電圧Vin2は原電圧V2である。
【0095】
補正回路30B_3は実施例EX1_3に係る補正回路30A_3(
図18参照)と同様の構成を持ち、実施例EX1_3の記載が実施例EX2_3にも適用される。この適用の際、実施例EX1_3の記載における補正回路30A_3及びスイッチS
Gは、実施例EX2_3において補正回路30B_3及びスイッチS
GPに読み替えられる。
【0096】
補正回路30A_3と同様に、補正回路30B_3の各補正用キャパシタC
Cの第1端は比較配線WR1に接続される。サンプリング期間において、補正制御部52は補正回路30B_3(換言すれば補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]の状態)を基準状態である非補正状態に設定する。非補正状態の意義は上述した通りである(
図19参照)。補正回路30B_3が非補正状態とされる状態は、補正回路30B_3による電圧補正処理が実行されていない状態に相当する。尚、サンプリング期間ではスイッチS
GPがオンとされるため、補正回路30B_3において補正用キャパシタC
C[1]~C
C[M
HF]には基準電圧V
REF及びグランド電圧間の差に応じた電荷が蓄積され、補正用キャパシタC
C[M
HF+1]~C
C[M]には基準電圧V
REF及び電源電圧VDD間の差に応じた電荷が蓄積される(それらの蓄積の様子は図示せず)。
【0097】
逐次比較期間において、補正制御部52は、補正回路30B_3の状態を非補正状態から変更することで、電圧V1に対する電圧補正処理を実現する。
【0098】
即ち、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正回路30B_3が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR1の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ上昇するよう、補正制御部52は補正回路30B_3内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正回路30B_3内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M
HF]の何れか1以上をロー側状態からハイ側状態に切り替える。
【0099】
逆に、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正回路30B_3が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR1の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ低下するよう、補正制御部52は補正回路30B_3内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正回路30B_3内の補正用スイッチS
C[M
HF+1]~S
C[M]の何れか1以上をハイ側状態からロー側状態に切り替える。
【0100】
[実施例EX2_4]
実施例EX2_4を説明する。
図25は、実施例EX2_4に係るADコンバータ1Bの一部構成図である。実施例EX2_4では補正回路30として補正回路30B_4が用いられる。補正回路30B_4は、電圧補正処理において、DAC10Nにより生成された電圧V2を補正する。このため、実施例EX2_4では逐次比較期間において、電圧Vin1は原電圧V1であり、電圧Vin2は補正電圧V2である。
【0101】
補正回路30B_4は実施例EX1_3に係る補正回路30A_3(
図18参照)と同様の構成を持ち、実施例EX1_3の記載が実施例EX2_4にも適用される。この適用の際、実施例EX1_3の記載における補正回路30A_3及びスイッチS
Gは、実施例EX2_4において補正回路30B_4及びスイッチS
GNに読み替えられる。
【0102】
但し、補正回路30A_3とは異なり、補正回路30B_4の各補正用キャパシタC
Cの第1端は比較配線WR2に接続される。サンプリング期間において、補正制御部52は補正回路30B_4(換言すれば補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]の状態)を基準状態である非補正状態に設定する。非補正状態の意義は上述した通りである(
図19参照)。補正回路30B_4が非補正状態とされる状態は、補正回路30B_4による電圧補正処理が実行されていない状態に相当する。尚、サンプリング期間ではスイッチS
GNがオンとされるため、補正回路30B_4において補正用キャパシタC
C[1]~C
C[M
HF]には基準電圧V
REF及びグランド電圧間の差に応じた電荷が蓄積され、補正用キャパシタC
C[M
HF+1]~C
C[M]には基準電圧V
REF及び電源電圧VDD間の差に応じた電荷が蓄積される(それらの蓄積の様子は図示せず)。
【0103】
逐次比較期間において、補正制御部52は、補正回路30B_4の状態を非補正状態から変更することで、電圧V2に対する電圧補正処理を実現する。
【0104】
即ち、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正回路30B_4が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR2の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ上昇するよう、補正制御部52は補正回路30B_4内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]>0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正回路30B_4内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M
HF]の何れか1以上をロー側状態からハイ側状態に切り替える。
【0105】
逆に、第j単位比較動作において(
図9参照)“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正回路30B_4が非補正状態に設定されているときと比べて比較配線WR2の電位が補正量ΔV
C[j]の大きさだけ低下するよう、補正制御部52は補正回路30B_4内の補正用スイッチS
C[1]~S
C[M]を個別にロー側状態又はハイ側状態に設定する。例えば、第j単位比較動作において“ΔV
C[j]<0”であるとき、補正制御部52は、非補正状態を起点に、補正量ΔV
C[j]の大きさに応じて補正回路30B_4内の補正用スイッチS
C[M
HF+1]~S
C[M]の何れか1以上をハイ側状態からロー側状態に切り替える。
【0106】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。第1及び第2実施形態に示した電圧補正処理は、キャパシタ型DACを利用しない形態の逐次比較型A/D変換回路にも適用できる。これについて第3実施形態で説明する。
【0107】
図26に本開示の第3実施形態に係るADコンバータ1Cの全体構成を示す。ADコンバータ1Cは、キャパシタ型DACを利用しない形態の逐次比較型A/D変換回路である。ADコンバータ1Cに対してアナログ入力信号Ainが入力される。ADコンバータ1Cはアナログ入力信号Ainに対するAD変換動作を行う。アナログ入力信号Ainに対するAD変換動作では、アナログ入力信号Ainをバイナリサーチによってデジタル信号に変換し、得られたデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。
【0108】
尚、第1~第3実施形態の何れにおいても共通の記号“Ain”及び“Dout”が用いられているが、第3実施形態で述べるアナログ入力信号Ain及びデジタル出力信号Doutは、ADコンバータ1Cへのアナログ入力信号Ain及びADコンバータ1Cからのデジタル出力信号Doutを指す。デジタル出力信号Doutの構造は第1実施形態と同様である。即ち、デジタル出力信号DoutはNビットのデジタル信号である。
【0109】
ADコンバータ1Cは、S/H回路110、DAC120、補正回路130、コンパレータ140及び制御回路150を備える。アナログ入力信号Ainは所定のダイナミックレンジ内の電圧値を有する。ダイナミックレンジは所定の下限電圧VMINから所定の上限電圧VMAXまでの電圧範囲である。“VMAX>VMIN”が成立する。下限電圧VMINは0V以外でも良いが、ここでは下限電圧VMINは0Vであるとする。
【0110】
S/H回路110はサンプルホールド回路であって、第1電圧生成回路の例である。S/H回路110に対してアナログ入力信号Ainが入力される。S/H回路110はアナログ入力信号Ainをサンプリングし、ホールド指定信号を受けたタイミングにおけるアナログ入力信号Ainを保持することで電圧Vaを生成する。電圧Vaはホールド指定信号を受けたタイミングにおけるアナログ入力信号Ainの電圧値を持つ。S/H回路110は比較配線WRaに接続され、比較配線WRaに対して電圧Vaを出力する。ホールド指定信号は、制御回路150から、又は、ADコンバータ1Cの外部回路(不図示)からS/H回路110に供給される。
【0111】
DAC120は第2電圧生成回路の例である。DAC120は、電圧Vaとの対比に供される電圧Vbを生成し、生成した電圧Vbを比較配線WRbに出力する。DAC120はDA変換回路(デジタル-アナログ変換器)である。例えば、DAC120はR-2Rラダー型のDA変換回路であって良い。DAC120は制御回路150から供給されるデジタルの制御信号DACINをDA変換によってアナログ信号に変換し、得られたアナログ信号(アナログ電圧信号)を電圧Vbとして比較配線WRbに出力する。DAC120に対して上述の上限電圧VMAX及び下限電圧VMIN(ここでは0V)が電源電圧として入力され、DAC120は下限電圧VMINから上限電圧VMAXまでの電圧を電圧Vbとして生成及び出力できる。
【0112】
補正回路130は、制御回路150の制御の下、電圧補正処理を実行できる。電圧補正処理において、補正回路130はS/H回路110にて生成された電圧Vaを補正する又はDAC120にて生成された電圧Vbを補正する。以下では、説明の具体化のため、補正回路130による補正が行われていない電圧Vaを原電圧Vaと称し、補正回路130による補正が行われた後の電圧Vaを補正電圧Vaと称する。同様に、補正回路130による補正が行われていない電圧Vbを原電圧Vbと称し、補正回路130による補正が行われた後の電圧Vbを補正電圧Vbと称する。
【0113】
コンパレータ140は反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。コンパレータ140の反転入力端子に対して第1比較入力電圧である電圧Vinaが供給され、コンパレータ140の非反転入力端子に対して第2比較入力電圧である電圧Vinbが供給される。電圧Vinaは原電圧Va又は補正電圧Vaである。電圧Vinbは原電圧Vb又は補正電圧Vbである。
【0114】
コンパレータ140は電圧Vina及びVinbを比較し、電圧Vina及びVinbの比較結果(高低関係)を示す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する二値化信号である。尚、コンパレータ140の非反転入力端子に電圧Vinaを供給し且つコンパレータ140の反転入力端子に電圧Vinbを供給する変形も可能である。第3実施形態で述べる比較結果信号SCMPは、コンパレータ140から出力される信号であるとする。
【0115】
コンパレータ140は、“Vina<Vinb”の成立時において“1”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力し、“Vina>Vinb”の成立時において“0”の値を有する比較結果信号SCMPを自身の出力端子から出力する。“Vina=Vinb”の成立時において比較結果信号SCMPは“0”又は“1”の値を有する。
【0116】
制御回路150は比較結果信号SCMPを受ける。制御回路150はAD変換動作を全体的に制御し、AD変換動作によって得られたデジタル出力信号Doutを出力する。制御回路150にはレジスタ151が設けられ、レジスタ151にデジタル出力信号Doutの値を格納することができる。制御回路150はS/H回路110に対してデジタルの制御信号DACIN(DAC入力信号)を供給することで、制御信号DACINに応じた電圧VbをDAC120から出力させる。制御回路150には更に補正制御部152が設けられる。補正制御部152は補正回路130による電圧補正処理の実行制御を行う(詳細は後述)。
【0117】
ADコンバータ1CにおけるAD変換動作では、まず、S/H回路110に対するホールド指定信号の入力に応答してS/H回路110により電圧Vaが生成及び出力される。その後、比較配線WRaにおける電圧が電圧Vaに維持された状態で逐次比較動作が行われる。
【0118】
図27にADコンバータ1Cにおける逐次比較動作のフローチャートを示す。尚、レジスタ151は
図10に示すレジスタ51と同じものであるとする。第3実施形態における値Rg[1]~Rg[N]はレジスタ151にて記憶されるNビットの値であるとする。ADコンバータ1A又は1Bと同様に、ADコンバータ1Cにおいて、逐次比較動作により値Rg[1]~Rg[N]が上位ビット側から1ビットずつ決定され、決定された値Rg[i]がデジタル出力信号Doutにおける第i番目のビットの値となる。逐次比較動作が実行される期間は逐次比較期間と称される。制御回路150は、逐次比較動作において(換言すれば逐次比較期間において)、比較結果信号S
CMPに基づきバイナリサーチにより制御信号DAC
INの変更を通じて電圧Vbを順次変化させながら値Rg[1]~Rg[N](即ちデジタル出力信号Doutの値)をビットごとに決定する。
【0119】
図27の逐次比較動作では、まずステップS130にて、制御回路150にて管理される変数jに対しNの値が代入される。その後、ステップS131に進む。ステップS131において、制御回路150は、第j番目のビット用の制御信号DAC
INをDAC120に与え、第j番目のビット用の制御信号DAC
INをDA変換するようDAC120を制御する。これにより、デジタル出力信号Doutにおける第j番目のビットの値(即ち値R[j])を決定するための電圧VbがDAC120にて生成され且つ比較配線WRbに出力される。
【0120】
ここで生成される電圧Vbは、バイナリサーチの方法に基づく適正な電圧である。“j=N”であるときの制御信号DACINのデジタル値は一定であるが、“j<N”であるときの制御信号DACINのデジタル値は、バイナリサーチの方法に基づき、過去に得られた比較結果信号SCMPに依存して決定される。ステップS131の後、ステップS132に進む。
【0121】
ステップS132において補正制御部152は補正回路130に電圧補正処理を実行させる。この際、補正制御部152はデジタル出力信号Doutのビットごとに補正回路130での補正量ΔVCを設定する。補正量ΔVCは電圧量である。第1及び第2実施形態と同様に、デジタル出力信号Doutにおける第j番目のビットの値を決定するときに電圧補正処理にて使用される補正量を特に補正量ΔVC[j]と称する。1回目のステップS132では“j=N”であるため補正量ΔVC[N]による電圧補正処理が実行される。補正量ΔVC[j]は正の電圧値を持つ場合もあるし、負の電圧値を持つ場合もある。補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]は互いに異なる場合もあるし、補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]の内、幾つかの補正量の値が一致する場合もある。但し、少なくとも、補正量ΔVC[N]~ΔVC[1]の中には、互いに異なる値を持つ2以上の補正量が含まれる。
【0122】
電圧補正処理にて電圧Vaの補正が行われる場合、原電圧Vaに対して補正量ΔVC[j]が加算されることで補正電圧Vaが生成され(即ち原電圧Vaと補正量ΔVC[j]との和が補正電圧Vaとして生成され)、補正電圧Vaが電圧Vinaとしてコンパレータ140の反転入力端子に供給されると共に原電圧Vbが電圧Vinbとしてコンパレータ140の非反転入力端子に供給される。電圧補正処理にて電圧Vbの補正が行われる場合、原電圧Vbに対して補正量ΔVC[j]が加算されることで補正電圧Vbが生成され(即ち原電圧Vbと補正量ΔVC[j]との和が補正電圧Vbとして生成され)、補正電圧Vbが電圧Vinbとしてコンパレータ140の非反転入力端子に供給されると共に原電圧Vaが電圧Vinaとしてコンパレータ140の反転入力端子に供給される。
【0123】
ステップS132に続くステップS133において、制御回路150は、現時点の比較結果信号SCMPの値を取得する(即ち直近のステップS132の状態にてコンパレータ140から出力される比較結果信号SCMPの値を取得する)。取得した値が“1”であれば(ステップS133のY)ステップS134に進む一方、取得した値が“0”であれば(ステップS133のN)ステップS135に進む。
【0124】
ステップS134において制御回路150は値Rg[j]を“0”に決定する。ステップS135において制御回路150は値Rg[j]を“1”に決定する。ステップS134又はS135の後、ステップS136に進む。
【0125】
ステップS136において制御回路150は変数jが1であるかを確認する。変数jが1でない場合には(ステップS136のN)、ステップS137に進み、変数jより1を減算してからステップS131に戻ってステップS131以降の処理を繰り返す。例えば、1回目のステップS131の処理において、制御回路150は“Vb=VMAX/2”となるように制御信号DACINをDAC120に与える(但し、実際の電圧Vbには誤差が含まれ得る)。その後、値R[N]が“0”に決定された場合には、バイナリサーチの方法に基づき、2回目のステップS131の処理において、制御回路150は“Vb=VMAX/4”となるように制御信号DACINをDAC120に与える(但し、実際の電圧Vbには誤差が含まれ得る)。逆に、値R[N]が“1”に決定された場合には、バイナリサーチの方法に基づき、2回目のステップS131の処理において、制御回路150は“Vb=3・VMAX/4”となるように制御信号DACINをDAC120に与える(但し、実際の電圧Vbには誤差が含まれ得る)。3回目以降のステップS131も同様にバイナリサーチの方法に基づき電圧Vbが調整される。
【0126】
また、2回目のステップS132の処理では電圧補正処理にて使用される補正量が補正量ΔVC[N]から補正量ΔVC[N-1]に切り替えられ、3回目のステップS132の処理では電圧補正処理にて使用される補正量が補正量ΔVC[N-1]から補正量ΔVC[N-2]に切り替えられる。4回目以降のステップS132も同様である。
【0127】
第3実施形態では、ステップS131~S135から成る処理が単位比較動作と称される。そうすると、逐次比較動作は第1~第N単位比較動作を含む。“j=N”のときに実行される単位比較動作が第N単位比較動作であり、“j=N-1”のときに実行される単位比較動作が第(N-1)単位比較動作であり、・・・、“j=1”のときに実行される単位比較動作が第1単位比較動作である。第j単位比較動作において値Rg[j]が決定される、即ちデジタル出力信号Doutの第j番目のビットの値が決定される。
【0128】
ステップS136において“j=1”である場合(ステップS136のY)、
図27の逐次比較動作を終了する。この段階では、値Rg[1]~Rg[N]が全て決定済みである。
【0129】
逐次比較動作が終了すると、制御回路150は結果出力動作を行う。結果出力動作において、制御回路150は逐次比較動作にて決定された値Rg[1]~Rg[N]を有するデジタル信号をデジタル出力信号Doutとして出力する。デジタル出力信号Doutを利用する任意の回路(不図示)に対してデジタル出力信号Doutが出力される。結果出力動作は逐次比較動作の実行中に開始されても良い。即ち逐次比較動作にて値Rg[N]が決定され次第、制御回路150は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N]を出力して良い。同様に、逐次比較動作にて値Rg[N-1]が決定され次第、制御回路150は、デジタル出力信号Dout中の値Rg[N-1]を出力して良い。値Rg[N-2]~Rg[1]についても同様である。
【0130】
ADコンバータ1Cにおいても、第1実施形態と同様に、様々な変動要因により電圧Vbが理想から変動し、当該変動の向き及び大きさは、第1~第N単位比較動作の内、或る単位比較動作の実行期間と他の単位比較動作の実行期間との間でも相違する。このため、第1実施形態と同様にデジタル出力信号Doutのビットごとに補正量VCを設定する。
【0131】
第3実施形態は、以下の実施例EX3_1及びEX3_2を含む。第3実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX3_1及びEX3_2に適用される。但し、各実施例において、第3実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。
【0132】
[実施例EX3_1]
実施例EX3_1を説明する。
図28は、実施例EX3_1に係るADコンバータ1Cの一部構成図である。実施例EX3_1では補正回路130として補正回路130_1が用いられる。補正回路130_1は、電圧補正処理において、S/H回路110により生成された電圧Vaを補正する。このため、実施例EX3_1では逐次比較期間において、電圧Vinaは補正電圧Vaであり、電圧Vinbは原電圧Vbである。
【0133】
補正回路130_1は配線WRaとコンパレータ140の反転入力端子との間に直列に挿入された加算器であって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図27参照)、補正回路130_1は、S/H回路110から出力される原電圧Vaに対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧Vaを生成する(即ち原電圧Vaと補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧Vaとして生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧Vaは原電圧Vaより高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧Vaは原電圧Vaより低くなる。補正制御部152は第j単位比較動作の実行期間において補正回路130_1を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0134】
[実施例EX3_2]
実施例EX3_2を説明する。
図29は、実施例EX3_2に係るADコンバータ1Cの一部構成図である。実施例EX3_2では補正回路130として補正回路130_2が用いられる。補正回路130_2は、電圧補正処理において、DAC120により生成された電圧Vbを補正する。このため、実施例EX3_2では逐次比較期間において、電圧Vinaは原電圧Vaであり、電圧Vinbは補正電圧Vbである。
【0135】
補正回路130_2は配線WRbとコンパレータ140の非反転入力端子との間に直列に挿入された加算器であって良い。この場合、第j単位比較動作の実行期間において(
図27参照)、補正回路130_2は、DAC120から出力される原電圧Vbに対し補正量ΔV
C[j]を加算することで補正電圧Vbを生成する(即ち原電圧Vbと補正量ΔV
C[j]との和を補正電圧Vbとして生成する)。第j単位比較動作の実行期間において、“ΔV
C[j]>0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧Vbは原電圧Vbより高くなり、“ΔV
C[j]<0”であれば補正量ΔV
C[j]の大きさだけ、補正電圧Vbは原電圧Vbより低くなる。補正制御部152は第j単位比較動作の実行期間において補正回路130_2を制御することで補正量ΔV
C[j]を所望に設定する。
【0136】
<<付記1>
図1に示したDAC10の構成及び
図20に示したDAC10P及び10Nの構成は例に過ぎない。キャパシタ型DACの形態は様々であり、DAC10、10P及び10Nがキャパシタ型DACである限り、それらの内部構成は様々に変形可能である。従って例えば、DAC10に1以上のスケーリングキャパシタ(直列容量とも称され得る)が設けられていても良い。DAC10P及び10Nについても同様である。
【0137】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0138】
<<付記2>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0139】
本開示の一側面に係る逐次比較型AD変換回路は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するよう構成された逐次比較型AD変換回路(1A、1B、1C)であって、前記アナログ入力信号に応じた第1電圧(V1、Va)を生成するよう構成された第1電圧生成回路(10、10P、110)と、前記第1電圧との対比に供される第2電圧(V2、Vb)を生成するよう構成された第2電圧生成回路(20、10N、120)と、バイナリサーチが行われる逐次比較期間において前記第1電圧又は前記第2電圧を補正するよう構成された補正回路(30、130)と、前記補正回路での補正を通じて得られる2つの比較入力電圧(Vin1及びVin2、Vina及びVinb)を受け、前記2つの比較入力電圧を比較することで比較結果信号(SCMP)を生成するよう構成されたコンパレータ(40、140)と、前記比較結果信号に基づき、前記デジタル出力信号の最上位ビットから最下位ビットに向けてバイナリサーチにより前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定するよう構成された制御回路(50、150)と、を備え、前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記デジタル出力信号のビットごとに前記補正回路での補正量(ΔVC)を設定する構成(第1の構成)である。
【0140】
これにより、AD変換の精度向上(直線性の向上等)が見込める。
【0141】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図1参照)、前記第1電圧生成回路(10)は、キャパシタアレイ(11)及び前記キャパシタアレイに接続されるスイッチアレイ(12)を有し、サンプリング期間にて前記アナログ入力信号が加わる配線(WR_Ain)を前記スイッチアレイを介して前記キャパシタアレイに接続することで前記アナログ入力信号に応じた電荷を前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の前記逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記スイッチアレイを介し前記キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第1電圧を生成し、前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じて前記スイッチアレイの状態を制御しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第2の構成)であっても良い。
【0142】
上記第2の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図12参照)、前記第2電圧生成回路(20)は、予め定められた基準電圧を前記第2電圧として生成するよう構成された基準電圧源(20_1)である構成(第3の構成)であっても良い。
【0143】
上記第2の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図13参照)、前記第2電圧生成回路(20)は、供給されたデジタル信号をアナログ信号に変換することで前記第2電圧を生成するよう構成されたDA変換回路(20_2)である構成(第4の構成)であっても良い。
【0144】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図20参照)、前記アナログ入力信号は第1アナログ入力信号(AinP)及び第2アナログ入力信号(AinN)間の差信号(Adif)であり、前記第1電圧生成回路(10P)は、第1キャパシタアレイ(11)及び前記第1キャパシタアレイに接続される第1スイッチアレイ(12)を有し、サンプリング期間にて前記第1アナログ入力信号が加わる配線(WR_AinP)を前記第1スイッチアレイを介して前記第1キャパシタアレイに接続することで前記第1アナログ入力信号に応じた電荷を前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記サンプリング期間後の前記逐次比較期間において所定の電源電圧又はグランド電圧を前記第1スイッチアレイを介し前記第1キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第1キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第1電圧を生成し、前記第2電圧生成回路(10N)は、第2キャパシタアレイ(11)及び前記第2キャパシタアレイに接続される第2スイッチアレイ(12)を有し、前記サンプリング期間にて前記第2アナログ入力信号が加わる配線(WR_AinN)を前記第2スイッチアレイを介して前記第2キャパシタアレイに接続することで前記第2アナログ入力信号に応じた電荷を前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに蓄積させ、前記逐次比較期間において前記電源電圧又は前記グランド電圧を前記第2スイッチアレイを介し前記第2キャパシタアレイ中の各キャパシタに供給した状態で前記第2キャパシタアレイの蓄積電荷に基づき前記第2電圧を生成し、前記制御回路は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じて前記第1スイッチアレイ及び前記第2スイッチアレイの各状態を制御しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0145】
上記第1の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図26参照)、前記第1電圧生成回路(110)は、前記アナログ入力信号をサンプリングして保持することで前記第1電圧を生成し、前記第2電圧生成回路(120)は、前記制御回路からのデジタルの制御信号をアナログ信号に変換することで前記第2電圧を生成し、前記制御回路(150)は、前記逐次比較期間において、前記比較結果信号に応じた前記制御信号を前記第2電圧生成回路に出力しつつ前記比較結果信号に基づき前記デジタル出力信号の値をビットごとに決定する構成(第6の構成)であっても良い。
【0146】
上記第1~第6の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において(例えば
図16参照)、前記2つの比較入力電圧は、前記補正回路による補正後の前記第1電圧と、前記第2電圧生成回路にて生成された前記第2電圧である構成(第7の構成)であっても良い。
【0147】
上記第1~第6の構成の何れかに係る逐次比較型AD変換回路において(例えば
図17参照)、前記2つの比較入力電圧は、前記第1電圧生成回路にて生成された前記第1電圧と、前記補正回路による補正後の前記第2電圧である構成(第8の構成)であっても良い。
【0148】
上記第2の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図18参照)、前記第1電圧生成回路は比較配線(WR1)に前記第1電圧を発生させ、前記補正回路(30A_3)は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ(C
C)及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチ(S
C)を有する補正単位回路(U
C)を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第1電圧を補正する構成(第9の構成)であっても良い。
【0149】
これにより、第1電圧生成回路の構成に適応して、第1電圧に対する補正回路を簡素な回路で実現できる。
【0150】
上記第9の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態(
図19参照)に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第1電圧を補正する構成(第10の構成)であっても良い。
【0151】
上記第5の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図24参照)、前記第1電圧生成回路は比較配線(WR1)に前記第1電圧を発生させ、前記補正回路(30B_3)は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ(C
C)及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチ(S
C)を有する補正単位回路(U
C)を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第1電圧を補正する構成(第11の構成)であっても良い。
【0152】
これにより、第1電圧生成回路の構成に適応して、第1電圧に対する補正回路を簡素な回路で実現できる。
【0153】
上記第11の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第1電圧を補正する構成(第12の構成)であっても良い。
【0154】
上記第5の構成に係る逐次比較型AD変換回路において(
図25参照)、前記第2電圧生成回路は比較配線(WR2)に前記第2電圧を発生させ、前記補正回路(30B_4)は、前記比較配線に接続された第1端を有する補正用キャパシタ(C
C)及び前記補正用キャパシタの第2端に対し前記電源電圧又は前記グランド電圧を与える補正用スイッチ(S
C)を有する補正単位回路(U
C)を複数備え、前記逐次比較期間において複数の補正単位回路を用い前記デジタル出力信号のビットごとに前記第2電圧を補正する構成(第13の構成)であっても良い。
【0155】
これにより、第2電圧生成回路の構成に適応して、第2電圧に対する補正回路を簡素な回路で実現できる。
【0156】
上記第13の構成に係る逐次比較型AD変換回路において、前記補正回路は、前記サンプリング期間にて複数の補正用スイッチの状態を基準状態に設定し、その後、前記逐次比較期間において前記複数の補正用スイッチの状態を前記基準状態から変更することで前記第2電圧を補正する構成(第14の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0157】
1A、1B ADコンバータ
10、10P、10N DAC
11 キャパシタアレイ
12 スイッチアレイ
S[1]~S[N] スイッチ
C[1]~C[N] キャパシタ
20 電圧生成回路
20_1 基準電圧源
20_2 DAC
30、30A_1~30A_3、30B_1~30B_4 補正回路
40 コンパレータ
50 制御回路
51 レジスタ
52 補正制御部
SG、SGP、SGN スイッチ
WR1、WR2 比較配線
VDD 電源電圧
VREF 基準電圧
V1、V2、Vin1、Vin2 電圧
Ain、AinP、AinN アナログ入力信号
Dout デジタル出力信号
SCMP 比較結果信号
Adif 差信号
WR_Ain、WR_AinP、WR_AinN、WR_VDD、WR_GND 配線
Ta、Tb、Tc 切替端子
TCOM 共通端子
1C ADコンバータ
110 S/H回路
120 DAC
130、130_1、130_2 補正回路
140 コンパレータ
150 制御回路
151 レジスタ
152 補正制御部
Va、Vb、Vina、Vinb 電圧
WRa、WRb 比較配線