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特開2024-165810データ処理方法、情報処理装置、コンピュータプログラム、および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165810
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】データ処理方法、情報処理装置、コンピュータプログラム、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/00 20060101AFI20241121BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20241121BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B21D37/00 B
B30B15/28 A
B30B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082319
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】溜池 啓輝
(72)【発明者】
【氏名】野尻 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】濱田 秀明
【テーマコード(参考)】
4E088
4E089
【Fターム(参考)】
4E088JJ02
4E088JJ04
4E089FC05
(57)【要約】
【課題】荷重波形の正確性を向上することのできるデータ処理方法を提供する。
【解決手段】
本開示のデータ処理方法は、プレス加工装置のデータを情報処理装置によって処理するデータ処理方法であって、プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたはパンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得するステップと、プレス加工時にパンチにかかる荷重を取得するステップと、プレス加工時のダイハイトを取得するステップと、荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成するステップと、装置データに基づいて、荷重波形を補正するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工装置のデータを情報処理装置によって処理するデータ処理方法であって、
前記プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたは前記パンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得するステップと、
プレス加工時に前記パンチにかかる荷重を取得するステップと、
プレス加工時のダイハイトを取得するステップと、
前記荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成するステップと、
前記装置データに基づいて、前記荷重波形を補正するステップと、
を含む、
データ処理方法。
【請求項2】
前記荷重波形は、プレス加工時に前記パンチにかかる荷重とダイハイトとの関係を示す、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
前記装置データは、前記パンチの伸縮に関するデータを含み、
前記荷重波形を補正するステップは、
前記パンチの伸縮に関するデータに基づいて、前記パンチの伸縮を算出することと、
前記パンチの伸縮に基づいて前記荷重波形を補正するための第1係数を算出することと、
前記第1係数に基づいて、前記荷重波形の前記ダイハイトを補正することと、を含む、
請求項2に記載のデータ処理方法。
【請求項4】
前記パンチの伸縮に関するデータは、前記パンチを構成する部品のうち少なくとも1つの部品の、ヤング率と、プレス方向に垂直な断面における断面積と、前記プレス方向の寸法と、を含み、
前記パンチの伸縮を算出することは、前記ヤング率、前記断面積、および前記寸法に基づいて伸縮量を算出することを含み、
前記第1係数を算出することは、前記少なくとも1つの部品の伸縮量を加算することを含む、
請求項3に記載のデータ処理方法。
【請求項5】
前記荷重波形の前記ダイハイトを補正することは、前記荷重に前記第1係数を乗算した値を前記ダイハイトに加算すること、を含む
請求項3に記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記装置データは、前記パンチの加速に関するデータを含み、
前記荷重波形を補正するステップは、
前記パンチの加速に関するデータと、前記パンチの荷重と、に基づいて前記荷重波形を補正するための第2係数を算出することと、
前記第2係数に基づいて、前記荷重波形の前記ダイハイトを補正することと、を含む、
請求項2に記載のデータ処理方法。
【請求項7】
前記パンチの加速に関するデータは、前記パンチを構成する部品のうち少なくとも1つの部品の質量を含み、
前記第2係数を算出することは、前記質量を、前記パンチにかかる荷重で除算することを含む、
請求項6に記載のデータ処理方法。
【請求項8】
前記荷重波形の前記ダイハイトを補正することは、前記荷重波形において前記ダイハイトが所定の値変化したときの前記荷重の変化量に前記第2係数を乗算した値を前記ダイハイトに加算すること、を含む、
請求項6に記載のデータ処理方法。
【請求項9】
前記ダイハイトは、前記プレス加工装置の前記パンチとダイとの距離を示す、
請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項10】
プロセッサと、
前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶した記憶装置と、
を備え、
前記実行可能な命令は、
プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたは前記パンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得することと、
プレス加工時に前記パンチにかかる荷重を取得することと、
プレス加工時のダイハイトを取得することと、
前記荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成することと、
前記装置データに基づいて、前記荷重波形を補正することと、
を含む、
情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、
請求項1から9のいずれか1項に記載のデータ処理方法を、情報処理装置に実行させるためのコンピュータプログラムである、
コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、請求項1から9のいずれか1項に記載のデータ処理方法を実現する、
非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ処理方法、情報処理装置、コンピュータプログラム、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工装置等の同一作業を比較的短いサイクルで繰り返す装置において、工具の異常を検出する方法が検討されている。
【0003】
特許文献1には、設備の正常時と異常時の状態量から判定値を合成し、この判定値を別の状態量を重ね合わせて判定値を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-120365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、異常を判定する基準である出力波形の正確性を向上させる点で、未だ改善の余地がある。
【0006】
本開示は、荷重波形の正確性を向上することのできるデータ処理方法、情報処理装置、コンピュータプログラム、および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかるデータ処理方法は、
プレス加工装置のデータを情報処理装置によって処理するデータ処理方法であって、
前記プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたは前記パンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得するステップと、
プレス加工時に前記パンチにかかる荷重を取得するステップと、
プレス加工時のダイハイトを取得するステップと、
前記荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成するステップと、
前記装置データに基づいて、前記荷重波形を補正するステップと、
を含む。
【0008】
本開示の一態様にかかる情報処理装置は、
プロセッサと、
前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶した記憶装置と、
を備え、
前記実行可能な命令は、
プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたは前記パンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得することと、
プレス加工時に前記パンチにかかる荷重を取得することと、
プレス加工時のダイハイトを取得することと、
前記荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成することと、
前記装置データに基づいて、前記荷重波形を補正することと、
を含む。
【0009】
本開示の一態様にかかるコンピュータプログラムは、
上述のデータ処理方法を、情報処理装置に実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0010】
本開示の一態様にかかる記憶媒体は、
コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、上述のデータ処理方法を実現する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、荷重波形の正確性を向上することのできるデータ処理方法、情報処理装置、コンピュータプログラム、および記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1にかかる情報処理装置の概略を示すブロック図
図2図1の情報処理装置が接続されるプレス加工装置を概略的に示す図
図3図1の情報処理装置により実行されるデータ処理方法について説明するためのフローチャート
図4】材料とヤング率との対応関係の一例を示す表
図5】プロセッサにより生成される荷重波形の一例を示す図
図6A】プレス加工装置においてパンチがワークに接触した状態を示す図
図6B】プレス加工装置50においてパンチ73がワーク80を打ち抜いた状態を示す図
図7】荷重波形を補正するステップを説明するフローチャート
図8】弾性変形部品群のそれぞれの伸縮に関するデータ、ひずみ量、および伸縮量を示す表
図9】情報処理装置による補正前の荷重波形と補正後の荷重波形を示すグラフ
図10】実施の形態1の変形例にかかる第1係数算出の処理を説明するフローチャート
図11図10の処理を行うためのプレス加工装置の構成を示す概略図
図12】荷重とダイハイトとの関係の一例を示すグラフ
図13】実施の形態2にかかるデータ処理方法の荷重波形を補正するステップを説明するフローチャート
図14】実施の形態2における補正前の荷重波形と補正後の荷重波形の一例を示すグラフ
図15】補正前の荷重波形と、第1係数を用いて補正した荷重波形と、さらに第2係数を用いて補正した荷重波形と、の一例を示すグラフ
図16】実施の形態3のデータ処理方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示に至った経緯)
プレス加工装置等の同一作業を比較的短いサイクルで繰り返す装置では、例えば劣化等に起因する工具の異常により、不良品となる製品を多量に製造してしまうことがある。このため、工具の異常を検出する方法が検討されている。
【0014】
例えば、特許文献1には、作業状態の特徴を表す状態量の初期データを測定し、次に作業状態の特徴を表す状態量の異常データを測定し、初期データと合成して判定データを作成する製造装置診断の判定データ作成方法が開示されている。
【0015】
特許文献1の判定データ作成方法では、作成した判定データに基づいて、工具の状態を推定する。しかし、例えば、プレス加工装置においては、加工に伴い工具に大きな荷重が加わる場合に、工具の伸縮または工具の加速によって判定データが影響を受けるため、判定データの正確性が低下してしまう、という課題がある。
【0016】
そこで、本発明者らは、プレス加工装置におけるパンチの荷重波形を補正して正確性を向上することを検討し、以下の発明に至った。
【0017】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる情報処理装置100の概略を示すブロック図である。
【0018】
情報処理装置100は、図1に示すように、プロセッサ1と、記憶装置2と、を備える。
【0019】
プロセッサ1は、記憶装置2に記憶された命令を実行可能な処理装置であり、情報処理のための演算を行う演算回路を含む、CPU、MPU、FPGA等により構成される。
【0020】
記憶装置2は、後述するデータ処理方法を実行するための命令、および後述するプレス加工装置50に関する装置データを記憶する記憶媒体である。記憶装置2は、例えば、例えば、フラッシュメモリ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の半導体記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶装置、またはSRAMまたはDRAM等の揮発性メモリにより構成される。
【0021】
情報処理装置100は、後述するプレス加工装置50に接続され、プレス加工装置のデータを処理する。情報処理装置100は、プレス加工装置50との間でデータの入出力を行う入出力インタフェースが含まれていてもよい。
【0022】
図2は、図1の情報処理装置が接続されるプレス加工装置50を概略的に示す図である。なお、図に示すX-Y-Z座標系は、実施の形態の理解を容易にするためのものであって、実施の形態を限定するものではない。各図において、X方向はプレス加工装置50の幅方向であり、Y方向はプレス加工装置50の奥行き方向であり、Z方向はプレス加工装置50の高さ方向である
【0023】
プレス加工装置50は、同様の加工処理を繰り返すサイクル加工を行う加工機械の一種である。本実施の形態では、プレス加工装置50は、パンチ73とダイ63とにより板状のワーク80を打ち抜いて加工する装置である。
【0024】
プレス加工装置50は、ダイ63をボルスタ51とスライド52とを備える。ボルスタ51に対してスライド52に対してプレス方向(Z方向)に往復運動をすることにより、パンチ73がダイ63に載置されたワーク80を打ち抜くことにより、ワーク80が加工される。
【0025】
図2に示すように、ボルスタ51には、ダイバッキングプレート61が取り付けられている。ダイバッキングプレート61には、ダイ63を把持するダイプレート62が取り付けられている。
【0026】
図2に示すように、スライド52には、パンチバッキングプレート71が取り付けられている。パンチバッキングプレート71には、固定用ボルト76a、76bによりパンチホルダ75が固定されたパンチプレート72が取り付けられている。パンチホルダ75は、パンチ73を保持する。
【0027】
プレス加工装置50は、さらに、ストリッパプレート74を備える。ストリッパプレート74は、例えばボルト等の締結具を用いてパンチプレート72またはパンチバッキングプレート71に取り付けられる。ストリッパプレート74は、例えば圧縮ばねにより下方(-Z方向)に付勢され、スライド52が下降したときにワーク80を押さえてワーク80に対するパンチ73の位置ずれを低減するようガイドすることができる。ストリッパプレート74は、さらに、パンチ73によりワーク80が打ち抜かれた後に、ワーク80を押さえることによりパンチ73に付着したワーク80を抜き取ることができる。
【0028】
プレス加工装置50には、プレス加工時にパンチ73にかかる荷重を検出することのできる荷重センサ11が配置されている。本実施の形態では、荷重センサ11は、パンチ73とパンチバッキングプレート71との間に配置されている。荷重センサ11としては、例えば、圧電式力センサ、またはひずみゲージ式等の電気式力センサなどを採用することができる。
【0029】
また、プレス加工装置50には、ダイハイトを検出することのできる距離センサ12が配置されている。本実施の形態では、距離センサ12はダイバッキングプレート61に配置されている。本実施の形態では、ダイハイトとは、パンチ73とダイ63との間の距離を示す。本実施の形態では、ダイバッキングプレート61に配置された距離センサ12とパンチプレート72との間の距離を測定する。ダイバッキングプレート61とパンチプレート72との間の距離はダイハイトに比例するため、距離センサ12により測定された値に基づいてダイハイトを算出することができる。距離センサ12は、例えば、渦電流式ギャップセンサ、またはレーザー変位計などを採用することができる。
【0030】
[データ処理方法]
図3は、図1の情報処理装置100により実行されるデータ処理方法について説明するためのフローチャートである。
【0031】
データ処理が開始されると、ステップS1において、プロセッサ1は、プレス加工装置50の装置データを取得する。装置データとは、パンチ73の伸縮に関するデータまたはパンチ73の加速に関するデータのうち少なくとも一方を含むデータである。
【0032】
プレス加工時にパンチ73に荷重が加わると、パンチ73を構成するパンチプレート72に収容されている部品に弾性変形が発生する。弾性変形が発生する部品のうち、その弾性変形の大きさが後述する荷重波形に影響を与える程度である部品群を弾性変形部品群と称する。本実施の形態では、弾性変形部品群は、パンチ73を構成する部品群であり、パンチ73、荷重センサ11、固定用ボルト76a、76bを含む。
【0033】
パンチ73の伸縮に関するデータは、パンチ73を構成する部品のうち少なくとも1つのヤング率、プレス方向(Z方向)に垂直な断面における断面積、および高さ方向(Z方向)の寸法を含む。
【0034】
パンチ73の加速に関するデータは、パンチ73を構成する部品のうち少なくとも1つの部品の質量を含む。
【0035】
ステップS1では、プロセッサ1は、例えば、ユーザによる入力により、または情報処理装置100の内部の記憶装置2あるいは情報処理装置100の外部の記憶装置から伸縮に関するデータまたは加速に関するデータのうち少なくとも一方を取得する。
【0036】
なお、本実施の形態では、パンチ73、荷重センサ11、およびボルト76a、76bのそれぞれの材料は、VF12(超硬金属)、NAK55(プリハードン鋼)、S45C(炭素鋼)の金属材料である。例えば、記憶装置2には、それぞれの材料とヤング率との対応関係をあらかじめ記憶しておいてもよく、プロセッサ1は、それぞれの部品を構成する材料に関するデータを取得して、記憶装置2に記憶された対応関係に基づいて、それぞれの部品のヤング率を取得してもよい。図4は、材料とヤング率との対応関係の一例を示す表である。図4に示すように、それぞれの材料とヤング率との対応関係を、記憶装置2にあらかじめ記憶しておいてもよい。パンチ73、荷重センサ11、およびボルト76a、76bの材料については例示であり、それぞれの部品の材料はこれらに限定されるものではない。本実施の形態では、装置データとして伸縮に関するデータを取得する場合について説明する。
【0037】
さらに、記憶装置2には、それぞれの材料と密度との対応関係をあらかじめ記憶しておいてもよい。それぞれの材料と密度との対応関係の一例を、図4に示す。プロセッサ1は、それぞれの部品を構成する材料に関するデータを取得して、記憶装置2に記憶された対応関係に基づいて、それぞれの部品の密度を取得し、それぞれの部品の密度、断面積、および寸法に基づいて、それぞれの部品の質量を取得してもよい。
【0038】
ステップS2において、プロセッサ1は、プレス加工時にパンチ73にかかる荷重を取得する。本実施の形態では、上述したように、プレス加工装置50に荷重センサ11が配置されている。プロセッサ1は、荷重センサ11による荷重の検出値を取得する。
【0039】
ステップS3において、プロセッサ1は、ダイハイトを取得する。本実施の形態では、上述したように、プレス加工装置50に距離センサ12が配置されている。プロセッサ1は、距離センサ12による距離の測定値に基づいて、パンチ73とダイ63との距離であるダイハイトを算出する。
【0040】
ステップS4において、プロセッサ1は、荷重とダイハイトとに基づいて荷重波形を生成する。図5は、プロセッサ1により生成される荷重波形の一例を示す図である。荷重波形は、図5に示すように、プレス加工時にパンチ73に係る荷重とダイハイトとの関係を示す波形である。荷重波形は、ダイハイトの変化に伴いパンチ73にかかる荷重がどのように変化するかを示すグラフであり、縦軸に荷重を示し、横軸にダイハイトを示す。
【0041】
プレス加工が開始されてパンチ73がプレス方向に下降してワーク80に接触すると、パンチ73に荷重がかかる。図6Aは、プレス加工装置50においてパンチ73がワーク80に接触した状態を示す図である。図6Aに示すように、プレス加工装置50がワーク80に接触すると、ワーク80の反発力によりパンチ73に荷重がかかり始める。このとき、図5の荷重波形において、パンチ73にかかる荷重の値が上昇を始める。この時点が、図5の荷重波形に示すダイハイトd1である。その後、パンチ73がワーク80を打ち抜く直前に、パンチ73にかかる荷重はピーク値P1を示す。この時点が、図5の荷重波形に示すダイハイトd2である。パンチ73がワーク80を打ち抜くと、パンチ73にかかる荷重は急激に低下する。図6Bは、プレス加工装置50においてパンチ73がワーク80を打ち抜いた状態を示す図である。図6に示すように、パンチ73がワーク80を打ち抜くと、ワーク80の反発力が解放されるため、パンチ73にかかる荷重が急激に低下し、0に近づく。この時点が、図5の荷重波形に示すダイハイトd3である。
【0042】
荷重波形に基づいて、パンチ73がワーク80に接触してワーク80を切断するまでの打ち抜き期間を測定することができる。例えば、パンチ73にかかる荷重が増加し始めて、立ち上がり閾値T1を超えたダイハイトd4の時点から、パンチ73にかかる荷重がピーク値P1に達した後に低下して立下り閾値T2を下回ったダイハイトd5の時点までを、パンチ73の打ち抜き期間と測定することができる。閾値T1、T2は、絶対値としてあらかじめ定められてもよいし、またはパンチ73にかかる荷重のピーク値P1に対する割合として定められてもよい。
【0043】
荷重波形を生成すると、ステップS5において、プロセッサ1は、装置データに基づいて荷重波形を補正する。
【0044】
図7は、荷重波形を補正するステップを説明するフローチャートである。荷重波形を補正するステップは、図7に示すように、パンチの伸縮を算出することと、荷重波形を補正するための第1係数を算出することと、第1係数に基づいてダイハイトを補正することと、を含む。
【0045】
ステップS11において、プロセッサ1は、パンチ73の伸縮に関するデータに基づいて、パンチ73の伸縮を算出する。具体的には、プロセッサ1は、弾性変形部品群のヤング率、断面積、および寸法に基づいて、伸縮量を算出する。
【0046】
上述したように、パンチ73に対する荷重は、パンチ73がワーク80に接触し始めたときから増加し始めて、パンチ73によるワーク80の打ち抜きが完了すると急激に低下する。パンチ73がワーク80を打ち抜いている間、パンチ73にかかる荷重により、パンチ73を構成する弾性変形部品群は伸縮することがある。弾性変形部品群の伸縮量は、例えば、部品の材料や断面積、または寸法等により異なり、本実施の形態では、パンチ73、荷重センサ11、およびボルト76a、76bの伸縮量は、ワーク80の厚さの1/100よりも大きい。弾性変形部品群が伸縮していない場合、距離センサ12により測定されるダイハイトとダイ63とパンチ73との距離は比例する。しかし、弾性変形部品群が伸縮すると、ダイハイトとダイ63とパンチ73との距離が比例しなくなり、距離センサ12の測定値により算出されたダイハイトに誤差が生じてしまうことがある。本実施の形態では、ダイハイトが実際の値よりも過大に算出される傾向にある。例えば、図5の荷重波形では、ダイハイトd2で荷重の値がピーク値P1を示しているが、弾性変形部品群の伸縮により、実際には荷重のピーク値P1は、ダイハイトd2とはずれた位置で発生している可能性がある。このため、プロセッサ1は、弾性変形部品群の伸縮量を算出し、算出した伸縮量に基づいて荷重波形を補正する。
【0047】
伸縮量の算出は、例えば、パンチ73の伸縮に関するデータ、具体的には、ヤング率、断面積、および寸法に基づいて算出する。具体的には、プロセッサ1は、それぞれの弾性変形部品のヤング率E、断面積A、および高さ方向(Z方向)の寸法Lに基づいて、それぞれの弾性変形部品のひずみ量を算出する。ひずみ量εは、例えば、パンチ73および荷重センサ11についてはε=(1/2)/(EA)の式、ボルト76a、76bについてはε=1/(EA)の式により算出することができる。
【0048】
図8は、弾性変形部品群、すなわち、パンチ73、荷重センサ11、およびボルト76a、76bのそれぞれの伸縮に関するデータ、ひずみ量、および伸縮量を示す表である。図8に示すように、プロセッサ1は、ヤング率、断面積、および寸法を含む伸縮に関するデータから、ひずみ量εを算出する。図8の例では、パンチ73、荷重センサ11、およびボルト76a、76bのそれぞれのひずみ量はそれぞれ、1.33×10-7、4.15×10-8、および、6.66×10-8と算出される。
【0049】
プロセッサ1は、ひずみ量εと寸法Lに基づいて、弾性変形部品群の伸縮量ΔLを算出する。本実施の形態では、伸縮量とは、弾性変形部品群のプレス方向における伸び量または縮み量を示す。伸縮量ΔLは、ΔL=Lεの式により算出することができる。図8の例では、パンチ73の縮み量が0.004μm、荷重センサ11の縮み量が0.00104μm、およびボルト76a、76bの伸び量が0.00167μmと算出される。
【0050】
次に、ステップS12で、プロセッサ1は、パンチ73の伸縮に基づいて、荷重波形を補正するための第1係数kを算出する。
【0051】
第1係数kは、ステップS11で算出したそれぞれの部品の伸縮量、すなわち伸び量および縮み量を加算することにより算出することができる。図8の例では、第1係数kは、k=0.0067と算出される。
【0052】
ステップS13で、プロセッサ1は、図5に示す荷重波形のダイハイトに第1係数を乗算することにより、荷重波形を補正する。
【0053】
図9は、情報処理装置100による補正前の荷重波形と補正後の荷重波形を示すグラフである。プロセッサ1は、図9に一点鎖線で示す補正前の荷重波形のダイハイトにおいて、荷重にステップS13で算出した第1係数kを乗算した値をダイハイトに加算する。第1係数kに基づいてダイハイトを補正することにより、補正前の荷重波形は、図9に破線で示す補正後の荷重波形に補正される。本実施の形態では、上述したように、ダイハイトが過大に算出される傾向にある。このため、補正後の荷重曲線では、例えば、荷重のピーク値P1を示すダイハイトは、補正前にはダイハイトd2であるが、補正後にはダイハイトd2aへと小さくなっている。
【0054】
プロセッサ1が荷重波形を補正すると、データ処理が終了する。
【0055】
[効果]
上述した実施の形態によると、以下の効果を奏することができる。
【0056】
データ処理方法は、プレス加工装置50のデータを情報処理装置100によって処理する方法である。データ処理方法は、装置データを取得するステップと、プレス加工時にパンチ73にかかる荷重を取得するステップと、プレス加工時のダイハイトを取得するステップと、荷重波形を生成するステップと、荷重波形を補正するステップと、を含む。装置データは、プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたはパンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む。荷重波形の生成は、荷重とダイハイトとに基づいて行われる。荷重波形の補正は、装置データに基づいて行われる。
【0057】
このような構成により、荷重波形の正確性を向上することのできるデータ処理方法を提供することができる。プレス加工時に、パンチ73を構成する部品が伸縮することがある。部品の伸縮により、距離センサ12の測定値から算出されるダイハイトに誤差が生じてしまう。上述した実施の形態では、部品の伸縮量を算出して、部品の産出量に基づいて荷重波形のダイハイトの値を補正することにより、より正確な荷重波形に補正することができる。
【0058】
荷重波形は、プレス加工時にパンチ73にかかる荷重とダイハイトとの関係を示す。
【0059】
このような構成により、荷重波形を容易に生成することができる。
【0060】
装置データは、パンチ73の伸縮に関するデータを含む。荷重波形を補正するステップは、パンチ73の伸縮を算出することと、荷重波形を補正するための第1係数kを算出することと、第1係数kに基づいて荷重波形のダイハイトを補正することと、を含む。パンチ73の伸縮は、パンチ73の伸縮に関するデータに基づいて算出される。第1係数は、パンチの伸縮に基づいて算出される。
【0061】
パンチ73の伸縮に関するデータは、パンチ73を構成する部品のうち少なくとも1つの部品の、ヤング率と、プレス方向に垂直な断面における断面積と、プレス方向の寸法と、を含む。パンチの伸縮を算出することは、ヤング率、断面積、および寸法に基づいて伸縮量を算出することを含む。第1係数を算出することは、少なくとも1つの部品の伸縮量を加算することを含む。
【0062】
荷重波形のダイハイトを補正することは、荷重に第1係数を乗算した値をダイハイトに加算することを含む。
【0063】
このような構成により、荷重波形から、パンチ73の伸縮による影響を除去して、より正確な荷重波形を生成することができる。荷重波形の正確性を向上させることで、荷重波形を用いて、プレス加工装置50におけるパンチ73に異常が発生しているか否かをより精度よく判定することができる。
【0064】
本開示の情報処理装置は、プロセッサ1と、プロセッサ1により実行可能な命令を記憶した記憶装置2と、を備える。プロセッサ1により実行可能な命令は、装置データを取得することと、荷重を取得することと、ダイハイトを取得することと、荷重波形を生成することと、荷重波形を補正することと、を含む。
【0065】
本開示は、情報処理装置100を制御するためのコンピュータプログラムおよび記憶媒体を提供することができる。
【0066】
上述したデータ処理方法を、情報処理装置100に実行させるためのコンピュータプログラムが提供される。
【0067】
コンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されている。コンピュータプログラムが情報処理装置100のプロセッサ1によって読み出されて実行されるときに、上述のデータ処理方法が実現される。
【0068】
非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、情報処理装置100の記憶装置2であってもよいし、情報処理装置100の外部の記憶装置であってもよい。
【0069】
[変形例]
上述した実施の形態では、荷重波形を補正するための第1係数を、荷重波形を補正するステップで算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1係数をあらかじめ算出しておいてもよい。
【0070】
図10図12を参照して、第1係数をあらかじめ算出する処理について説明する。図10は、実施の形態1の変形例にかかる第1係数算出の処理を説明するフローチャートである。図11は、図10の処理を行うためのプレス加工装置50の構成を示す概略図である。図12は、荷重とダイハイトとの関係の一例を示すグラフである。
【0071】
ステップS21において、プロセッサ1は、荷重と距離センサ12の測定値との関係を算出する。具体的には、パンチ73に所定の荷重を付加し、そのときの荷重と距離センサ12の測定値との関係を算出する。
【0072】
パンチ73に所定の荷重を付加するには、図11に示すように、ダイプレート62に金属板81を配置して、スライド52を下降させる。金属板81としては、弾性変形しない金属材料を用いることができる。金属板81が弾性変形しないため、パンチ73に荷重が付加されたときのパンチ73とダイ63との間の距離、すなわちダイハイトは一定である。一方で、パンチ73を構成する部品には伸縮が発生するため、距離センサ12の検出値により算出されたダイハイトは、一定になるとは限らない。
【0073】
スライド52を下降させてパンチ73に荷重を付加する。このとき、荷重センサ11によりパンチ73にかかる荷重を取得し、距離センサ12によりパンチプレート72とダイバッキングプレート61との間の距離を測定する。パンチ73に付加する荷重を変化させて、異なる複数の荷重値に対する、パンチプレート72とダイバッキングプレート61との距離を取得する。このようにして、距離センサ12の測定値から、パンチ73を構成する部品の伸縮量を算出することができる。
【0074】
パンチ73にかかる荷重と、距離センサ12の測定値との関係は、例えば、図12に示すグラフで表すことができる。例えば、パンチ73に100N、300N、および500Nの荷重を付加したときの距離センサ12の測定値をプロットし、それぞれの測定値を線形補完することによりパンチ73にかかる荷重と距離センサ12の測定値との関係を直線で示すことができる。
【0075】
ステップS22において、プロセッサ1は、図12に示す直線の傾きを、第1係数として算出する。
【0076】
このような構成により、あらかじめ算出した第1係数を用いて荷重波形を補正することができる。
【0077】
(実施の形態2)
図13図14を参照して、実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0078】
実施の形態2では、装置データとしてパンチの加速に関するデータを含む点で、実施の形態1と異なる。このため、本実施の形態では、図3のステップS1~S4の処理を実行した後、ステップS5の荷重波形を補正するステップを実行するが、荷重波形を補正するステップの処理内容が、実施の形態1と異なる。情報処理装置100およびプレス加工装置50の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
図13は、実施の形態2にかかるデータ処理方法の荷重波形を補正するステップを説明するフローチャートである。図14は、実施の形態2における補正前の荷重波形と補正後の荷重波形の一例を示すグラフである。
【0080】
実施の形態1では、装置データとして伸縮に関するデータを取得する場合について説明したが、本実施の形態では、装置データとしてパンチ73の加速に関するデータを取得する場合について説明する。
【0081】
実施の形態1で説明したように、パンチ73の加速に関するデータは、パンチ73を構成する部品のうち少なくとも1つの部品の質量を含む。
【0082】
図13のステップS31において、プロセッサ1は、パンチ73の質量を取得する。パンチ73の質量は、実施の形態1で説明したように、部品を構成する材料の密度と、部品の断面積および寸法に基づいて算出することで取得することができる。本実施の形態では、パンチ73の質量mが0.1kgであると算出されたとして説明する。
【0083】
ステップS32において、プロセッサ1は、パンチ73の加速に関するデータと、パンチ73の荷重と、に基づいて荷重波形を補正するための第2係数を算出する。
【0084】
図6Aに示すように、パンチ73がワーク80に接触すると、パンチ73はワーク80からの反発力を受けて縮む。このとき、ワーク80の反発力により、パンチ73の下降速度が低下する。その後、図6Bに示すように、ワーク80が破断に至り、パンチ73への反発力が解放されると、パンチ73は加速しつつ下降する。本実施の形態では、パンチ73はパンチプレート72と同じ速度で下降するものとして、距離センサ12の測定値からダイハイトが算出される。しかし、このパンチ73の下降速度の低下と加速により、距離センサ12の測定値により算出されるダイハイトに誤差が生じることがある。このため、プロセッサ1は、荷重波形からパンチ73の加速による影響を除去するために、第2係数を算出する。
【0085】
第2係数は、パンチ73を構成する部品の質量を、パンチ73にかかる荷重で除算することにより算出することができる。この場合、パンチ73にかかる荷重とは、図5の荷重波形に示す荷重のピーク値P1、または荷重のピーク値P1から所定の範囲の荷重値を示す。
【0086】
荷重センサ11により検出されたプレス加工時の荷重のピーク値P1が500Nであったとすると、第2係数kは、k=m/P1の式で算出することができる。本実施の形態では、質量mが0.1kg、および荷重のピーク値P1が500Nであるため、第2係数kは、0.0002であると算出される。
【0087】
ステップS33において、プロセッサ1は、第2係数kに基づいて、ダイハイトを補正する。具体的には、プロセッサ1は、荷重波形における荷重の変化量に第2係数kを乗算した値を、荷重波形のダイハイトに加算することにより、荷重波形を補正する。本実施の形態では、荷重波形の変化量は、図5の荷重波形において、ダイハイトが所定の値変化したときの荷重の変化量を示す。荷重波形の変化量は、例えば、ダイハイトが5mm増加したときの荷重の増加量または減少量を示す。
【0088】
荷重波形の変化量に第2係数kを乗算した値をダイハイトに加算することにより、破線で示す補正前の荷重波形は、図14に一点鎖線で示す補正後の荷重波形に補正される。補正後の荷重波形では、例えば、荷重のピーク値P1を示すダイハイトは、補正前にはダイハイトd2であるが、補正後にはダイハイトd2bへと大きくなっている。
【0089】
[効果]
上述した実施の形態によると、以下の効果を奏することができる。
【0090】
装置データは、パンチ73の加速に関するデータを含む。荷重波形を補正するステップは、パンチ73の加速に関するデータと、パンチ73の荷重と、に基づいて荷重波形を補正するための第2係数kを算出すること、を含む。
【0091】
パンチ73の加速に関するデータは、パンチ73を構成する部品のうち少なくとも1つの部品の質量を含む。第2係数kを算出することは、質量をパンチ73に係る荷重で除算すること含む。
【0092】
荷重波形を補正するステップは、荷重波形においてダイハイトが所定の値変化したときの荷重の変化量に第2係数kを乗算した値をダイハイトに加算することを含む。
【0093】
このような構成により、パンチ73の加速の影響を除去して、より正確な荷重波形を生成することができる。荷重波形の正確性を向上させることで、荷重波形を用いて、プレス加工装置50におけるパンチ73に異常が発生しているか否かをより精度よく判定することができる。
【0094】
(実施の形態3)
図15および図16を参照して、実施の形態3について説明する。なお、実施の形態3においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0095】
実施の形態3では、荷重波形を補正するステップで、第1係数kに加えて第2係数kを算出する点で、実施の形態1と異なる。また、実施の形態3では、第1係数kを用いて補正前の荷重波形を補正し、さらに、第2係数kaを用いて第1係数kを用いて補正した荷重波形を補正する点で、実施の形態1と異なる
【0096】
図15は、補正前の荷重波形と、第1係数kを用いて補正した荷重波形と、さらに第2係数kを用いて補正した荷重波形と、の一例を示すグラフである。図16は、実施の形態3のデータ処理方法を説明するためのフローチャートである。なお、図16のステップS41~S43は、図7で説明したステップS11~S13と同様の処理であり、ステップS44~S46は、図13で説明したステップS31~S33と同様の処理である。
【0097】
ステップS41において、プロセッサ1は、パンチ73の伸縮を算出する。ステップS42において、プロセッサ1は、パンチ73の伸縮に基づいて、第1係数kを算出する。
【0098】
ステップS43において、プロセッサ1は、補正前の破線で示す荷重波形において、荷重に第1係数kを乗算した値をダイハイトに加算することで、一点鎖線で示す荷重波形を得ることができる。
【0099】
次に、ステップS44において、プロセッサ1は、パンチ73の質量を算出する。ステップS45において、パンチ73の質量に基づいて、第2係数kを算出する。
【0100】
ステップS46において、プロセッサ1は、一点鎖線で示す荷重波形において、荷重の変化量に第2係数kを乗算した値をダイハイトに加算することで、実線で示す荷重波形を得ることができる。
【0101】
このような構成により、パンチ73の伸縮の影響と、パンチ73の加速の影響との両方を除去した荷重波形を生成することができる。このため、荷重波形の正確性をより向上させることができる。
【0102】
(実施の形態の概要)
(1)本開示のデータ処理方法は、プレス加工装置のデータを情報処理装置によって処理するデータ処理方法であって、プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたはパンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得するステップと、プレス加工時にパンチにかかる荷重を取得するステップと、プレス加工時のダイハイトを取得するステップと、荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成するステップと、装置データに基づいて記荷重波形を補正するステップと、を含む。
【0103】
(2)(1)のデータ処理方法において、荷重波形は、プレス加工時にパンチにかかる荷重とダイハイトとの関係を示してもよい。
【0104】
(3)(1)または(2)のデータ処理方法において、装置データは、パンチの伸縮に関するデータを含み、荷重波形を補正するステップは、パンチの伸縮に関するデータに基づいて、パンチの伸縮を算出することと、パンチの伸縮に基づいて荷重波形を補正するための第1係数を算出することと、第1係数に基づいて、荷重波形のダイハイトを補正することと、を含んでもよい。
【0105】
(4)(3)のデータ処理方法において、パンチの伸縮に関するデータは、パンチを構成する部品のうち少なくとも1つの部品の、ヤング率と、プレス方向に垂直な断面における断面積と、プレス方向の寸法と、を含み、パンチの伸縮を算出することは、ヤング率、断面積、および寸法に基づいて伸縮量を算出することを含み、第1係数を算出することは、少なくとも1つの部品の伸縮量を加算することを含んでもよい。
【0106】
(5)(3)または(4)のデータ処理方法において、荷重波形のダイハイトを補正することは、荷重に第1係数を乗算した値をダイハイトに加算すること、を含んでもよい。
【0107】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのデータ処理方法において、装置データは、パンチの加速に関するデータを含み、荷重波形を補正するステップは、パンチの加速に関するデータと、パンチの荷重と、に基づいて荷重波形を補正するための第2係数を算出することと、第2係数に基づいて、荷重波形のダイハイトを補正することと、を含んでもよい。
【0108】
(7)(6)のデータ処理方法において、パンチの加速に関するデータは、パンチを構成する部品のうち少なくとも1つの部品の質量を含み、第2係数を算出することは、質量を、パンチにかかる荷重で除算することを含んでもよい。
【0109】
(8)(6)または(7)のデータ処理方法において、荷重波形のダイハイトを補正することは、荷重波形においてダイハイトが所定の値変化したときの荷重の変化量に第2係数を乗算した値をダイハイトに加算すること、を含んでもよい。
【0110】
(9)(1)から(8)のいずれか1つのデータ処理方法において、ダイハイトは、プレス加工装置のパンチとダイとの距離を示してもよい。
【0111】
(10)本開示の情報処理装置は、プロセッサと、プロセッサにより実行可能な命令を記憶した記憶装置と、を備え、実行可能な命令は、プレス加工装置のパンチの伸縮に関するデータまたはパンチの加速に関するデータのうち少なくとも一方を含む装置データを取得することと、プレス加工時にパンチにかかる荷重を取得することと、プレス加工時のダイハイトを取得することと、荷重と前記ダイハイトとに基づいて荷重波形を生成することと、装置データに基づいて、荷重波形を補正することと、を含む。
【0112】
(11)本開示のコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムであって、(1)から(9)のいずれか1つのデータ処理方法を、情報処理装置に実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0113】
(12)本開示の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータプログラムが記憶されている非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されるときに、(1)から(9)のいずれか1つのデータ処理方法を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示は、プレス加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 プロセッサ
2 記憶装置
11 荷重センサ
12 距離センサ
50 プレス加工装置
51 ボルスタ
52 スライド
61 ダイバッキングプレート
62 ダイプレート
63 ダイ
71 パンチバッキングプレート
72 パンチプレート
73 パンチ
74 ストリッパプレート
75 パンチホルダ
76a 固定用ボルト
76b 固定用ボルト
80 ワーク
81 金属板
100 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16