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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165811
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/18 20060101AFI20241121BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A01G9/18
A01G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082322
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 達之
(72)【発明者】
【氏名】大貫 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】若槻 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】志村 良太
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B022DA15
2B029JA02
2B029JA06
(57)【要約】
【課題】より効率的に、かつ省エネルギーのもとで大気中のCO2を捕集・施用して植物を栽培することが可能な植物栽培設備を提供する。
【解決手段】植物栽培設備は、植物を栽培する温室と、CO2吸着剤を有する吸着装置と、吸着装置に外気を通風させる通風部と、吸着装置と温室との間で気体を循環させる循環部と、通風部と循環部を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、日中に循環部を作動させるとともに通風部を停止させる施用運転部と、夜間に循環部を停止させるとともに通風部を作動させる吸着運転部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する温室と、
CO2吸着剤を有する吸着装置と、
前記吸着装置に外気を通風させる通風部と、
前記吸着装置と前記温室との間で気体を循環させる循環部と、
前記通風部と前記循環部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
日中に前記循環部を作動させるとともに前記通風部を停止させる施用運転部と、
夜間に前記循環部を停止させるとともに前記通風部を作動させる吸着運転部と、
を有する植物栽培設備。
【請求項2】
前記通風部は、
前記吸着装置の上流側に設けられた上流ライン、及び下流側に設けられた下流ラインと、
前記下流ライン上に設けられ、前記吸着装置を通過した外気のCO2濃度を計測する外気CO2濃度計測部と、
前記上流ラインの流通状態を切り替える外気バルブと、
前記下流ラインの流通状態を切り替える排気バルブと、
前記上流ライン、及び前記下流ライン上で外気を流通させるファンと、
を有し、
前記吸着運転部は、
前記外気のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を一定分だけ上回るまで前記外気バルブ、及び前記排気バルブを開状態とするとともに、前記ファンを駆動する請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項3】
前記上流ライン上に設けられ、外気の温度を計測する外気温計測部をさらに有し、前記吸着運転部は、前記外気温計測部で計測された前記外気の温度が予め定められた温度閾値を一定温度だけ下回る時に、前記外気バルブ、及び前記排気バルブを開状態とするとともに、前記ファンを駆動する請求項2に記載の植物栽培設備。
【請求項4】
前記温室内に設けられ、室内のCO2濃度を計測する室内CO2濃度計測部と、
をさらに備え、
前記循環部は、
前記下流ラインから分岐して、前記吸着装置を通過した外気を前記温室内に供給する外気供給ラインと、
前記上流ラインに接続されて、前記温室から排出される気体を前記吸着装置に還流させる還流ラインと、
前記外気供給ラインの流通状態を切り替える供給用バルブと、
前記還流ラインの流通状態を切り替える還流用バルブと、
を有し、
前記施用運転部は、
予め定められた施用時間帯内において、前記室内CO2濃度計測部で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回った時に、前記供給用バルブ、及び前記還流用バルブを開状態とし、前記ファンを運転することで施用運転を行う請求項2又は3に記載の植物栽培設備。
【請求項5】
前記温室内に設けられ、室温を計測する室温計測部をさらに有し、
前記施用運転部は、予め定められた施用時間帯内において、前記室温計測部で計測された前記室温が前記温度閾値を一定温度だけ上回り、かつ前記室内CO2濃度計測部で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回った時に、前記供給用バルブ、及び前記還流用バルブを開状態とし、前記ファンを運転することで施用運転を行う請求項2又は3に記載の植物栽培設備。
【請求項6】
前記施用運転部は、前記室温計測部で計測された前記室温が前記温度閾値を一定温度だけ上回らなくなった時に、前記供給用バルブ、及び前記還流用バルブを閉状態とし、前記ファンを停止する請求項5に記載の植物栽培設備。
【請求項7】
前記施用運転部は、前記室内CO2濃度計測部で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた前記濃度閾値を上回った時に、前記供給用バルブ、及び前記還流用バルブを閉状態とし、前記ファンを停止する請求項3に記載の植物栽培設備。
【請求項8】
前記吸着運転部は、
前記外気温計測部で計測された前記外気の温度が、前回の前記施用運転時における前記室温から一定温度だけ下回らなくなった時に、前記外気バルブ、及び前記排気バルブを閉状態とするとともに、前記ファンを停止する請求項4に記載の植物栽培設備。
【請求項9】
前記濃度閾値は、前記濃度取得部が取得した前記室内のCO2濃度が植物の光合成に好適な濃度帯の範囲内に収まるように、前記施用運転を開始したタイミングで前記濃度帯の上限値に更新され、前記施用運転を停止したタイミングで前記濃度帯の下限値に更新される請求項5に記載の植物栽培設備。
【請求項10】
前記濃度閾値は、前記施用運転を開始した時点では、大気中のCO2濃度と同等の値に設定される請求項5に記載の植物栽培設備。
【請求項11】
前記通風部における前記吸着装置の上流側に設けられ、前記温室内の空気を該吸着装置に供給するブロワーをさらに備える請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項12】
前記施用運転時における前記ファン又は前記ブロワーの動力の少なくとも一部を生成する光発電装置をさらに備える請求項4に記載の植物栽培設備。
【請求項13】
前記吸着装置に設けられ、前記施用運転時において吸着装置を加熱する太陽熱装置をさらに備える請求項4に記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
温室内で植物を栽培する場合、昼間時間帯に植物が光合成を行うことで温室内の二酸化炭素(CO2)が消費されるため、室内の二酸化炭素濃度をコントロールして光合成を妨げないようにすることが重要である。この種の設備として、灯油あるいはLPガスなどの化石燃料を燃焼させて二酸化炭素を発生させ、植物に施用する設備が商用化されており広く使用されている。しかしながら、上記の装置では、二酸化炭素の施用に際し化石燃料の消費が不可欠であることから、化石燃料の利用によって発生する高濃度のCO2の希釈や植物の生育を妨げる有害物質の除害などの操作が求められるという課題がある。
【0003】
上記の背景を踏まえ、大気中の二酸化炭素を捕集して植物に施用する設備が提案されている。この種の設備として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。下記特許文献1には、アミン担持固体吸収剤を保持したハニカムロータを有し、ハニカムロータを少なくとも処理ゾーンと再生ゾーンとに分割し、再生用空気と処理対象空気の何れかまたは両方に、エンタルピー(温・湿度)調整手段を設けて、それぞれのゾーンを通過させることで二酸化炭素吸収性能及び濃縮性能を制御する吸収式二酸化炭素除去・濃縮装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-154063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の装置では、二酸化炭素を発生させるために、処理ガス・再生ガス双方のエンタルピーを調節しており、エネルギー消費量が多い上に、ハニカムロータを処理ゾーンと再生ゾーンに分割して運転することから装置容積が大きくなるという課題がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より効率的に、かつ省エネルギーのもとで大気中のCO2を捕集・施用して植物を栽培することが可能な植物栽培設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る植物栽培設備は、植物を栽培する温室と、CO2吸着剤を有する吸着装置と、前記吸着装置に外気を通風させる通風部と、前記吸着装置と前記温室との間で気体を循環させる循環部と、前記通風部と前記循環部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、日中に前記循環部を作動させるとともに前記通風部を停止させる施用運転部と、夜間に前記循環部を停止させるとともに前記通風部を作動させる吸着運転部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より効率的に、かつ省エネルギーのもとで大気中のCO2を捕集・施用して植物を栽培することが可能な植物栽培設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る植物栽培設備の構成を示す全体図であって、CO2を施用している状態を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態に係る植物栽培設備の構成を示す全体図であって、CO2を吸着剤に吸着させている状態を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の処理フローの変形例を示すフローチャートである。
図6】本開示の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(植物栽培設備1の構成)
以下、本開示の実施形態に係る植物栽培設備1について、図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、植物栽培設備1は、温室10と、室温計測部11と、室内CO2濃度計測部12と、吸着装置20と、通風部30と、循環部40と、制御装置50と、を備える。
【0011】
温室10は、太陽光を取り込むことが可能な透明又は半透明の樹脂等で形成されており、その内部には植物を栽培可能な培地や培土が敷設されている。温室10内には、室温を計測する室温計測部11、及び室内のCO2濃度を計測する室内CO2濃度計測部12が設けられている。吸着装置20は、流入する気体からCO2(二酸化炭素)を吸着可能な吸着剤を有する。吸着剤としてはアミンが好適に用いられる。
【0012】
通風部30は、上流ライン31と、下流ライン32と、外気温計測部33と、外気CO2濃度計測部34と、外気バルブ35と、排気バルブ36と、ファン37と、を有する。上流ライン31は、吸着装置20の上流側に接続された配管であり、当該吸着装置20に向けて外気を導入することが可能である。下流ライン32は吸着装置20の下流側に接続されている。つまり、上流ライン31を通じて吸着装置20に導入された外気は、吸着装置20を通過する際にCO2の少なくとも一部の成分を除去された状態で下流ライン32に流れ込む。
【0013】
外気温計測部33は、上流ライン31上に設けられて、当該上流ライン31を流れる外気の温度を計測する。計測された温度情報は電気信号として制御装置50(後述)に送られる。外気CO2濃度計測部34は、下流ライン32上に設けられて、当該下流ライン32を流れる外気中のCO2濃度を計測する。計測された濃度情報は電気信号として制御装置50(後述)に送られる。外気バルブ35は、上流ライン31の流通状態を切り替える開閉弁である。外気バルブ35は、外気温計測部33の上流側に設けられている。排気バルブ36は、下流ライン32の流通状態を切り替える開閉弁である。下流ライン32における外気CO2濃度計測部34の上流側にはファン37が設けられている。ファン37は、上流ライン31側から下流ライン32側に向けて外気を圧送する。ファン37としては羽根車を有する軸流式の他、遠心式の装置も好適に用いられる。
【0014】
循環部40は、外気供給ライン41と、還流ライン42と、供給用バルブ43と、還流用バルブ44と、を有する。外気供給ライン41は、下流ライン32におけるファン37と排気バルブ36の間から分岐して温室10内に接続されている。外気供給ライン41を通じて、吸着装置20を通過した外気が温室10内に供給される。還流ライン42は、上流ライン31における外気バルブ35と外気温計測部33との間から分岐して温室10内に接続されている。還流ライン42を通じて、温室10から排出される気体を吸着装置20に還流させることが可能とされている。供給用バルブ43は、外気供給ライン41の流通状態を切り替える開閉弁である。還流用バルブ44は、還流ライン42の流通状態を切り替える開閉弁である。
【0015】
(制御装置50の構成)
図2に示すように、制御装置50は、温度取得部51と、濃度取得部52と、施用運転部53と、吸着運転部54と、記憶部55と、を有する。温度取得部51は、上述した室温計測部11、及び外気温計測部33から電気信号として各所の温度の情報を取得する。濃度取得部52は、上述した室内CO2濃度計測部12、及び外気CO2濃度計測部34から電気信号として各所のCO2濃度の情報を取得する。
【0016】
施用運転部53、及び吸着運転部54は、通風部30、及び循環部40の動作をコントロールする。具体的には、施用運転部53は、日中における施用時間帯に、循環部40を作動させるとともに、通風部30を停止させる。つまり、図1に示すように、吸着装置20に吸着されているCO2を、循環部40を作動させることで温室10内に供給する。温室10内では植物がCO2を吸収して光合成を行うことで生育する。他方で、このとき通風部30は停止していることから、吸着装置20への外気の導入は行われない。この運転状態を以下では、「施用運転」と呼ぶ。なお、上記の施用時間帯は、任意に設定された時間帯であり、季節や栽培地の気候、高度、日照時間等に応じて適宜設定されてよい。
【0017】
吸着運転部54は、夜間における吸着時間帯に、循環部40を停止させるとともに、通風部30を作動させる。つまり、図4に示すように、循環部40による温室10へのCO2供給を停止した状態で、通風部30によって外気を吸着装置20に送り込む。これにより、吸着装置20では、吸着剤がCO2を順次吸着していく。この運転状態を以下では「吸着運転」と呼ぶ。詳しくは後述するが、この吸着運転は、原則として吸着剤が破過(飽和)するまで続けられる。なお、吸着時間帯も、任意に設定された時間帯であり、季節や栽培地の気候、高度、日照時間等に応じて適宜設定されてよい。記憶部55は、上述した施用時間帯や吸着時間帯等の情報を格納している。施用運転部53や吸着運転部54は適宜記憶部55を参照して各種の情報を取得する。また、記憶部55には、現在時刻を取得する時計機能、又はタイマー機能が実装されている。
【0018】
(制御装置50の制御フロー)
次に、制御装置50の制御フローについて、図3を参照して説明する。まず、ステップS1で、施用運転部53、又は吸着運転部54が、施用時間帯に該当するか、吸着時間帯に該当するかを判定する。
【0019】
(施用運転時の制御フロー)
施用時間帯に該当する場合、ステップS12で、温度取得部51、及び濃度取得部52が、温室10の室温、及びCO2濃度を取得する。続いて、ステップS13では、室温と、予め定められた温度閾値との比較、及び室内のCO2濃度と、予め定められた濃度閾値との比較が行われる。ステップS13で、室温が予め定められた温度閾値を一定温度(ΔT)だけ上回り、かつ室内CO2濃度計測部12で計測された室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回ったと判定された場合、施用運転部53は、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を開状態とし、ファン37を運転することで施用運転を行う(ステップS14)。なお、この時、後述する吸着運転時に吸着運転部54が参照するために、施用運転時の最終時刻における室温が、「施用温度」として記憶部55に格納される。
【0020】
ステップS13でいずれかの条件が満たされない場合、つまりNoと判定された場合は、施用運転を休止する(ステップS15)。その後、ステップS16で、施用運転部53は、外気CO2濃度計測部34で計測された外気(つまり、吸着装置20を通過した後の外気)のCO2濃度(破過濃度)が、大気中のCO2濃度として設定した濃度閾値(一例として400ppm)を上回っているか否かを判定する。ステップS16でNoと判定された場合、CO2吸着剤が十分にCO2を脱着し、これ以上のCO2施用が見込めないと判断できることから、続くステップS17で施用運転を終了する。ステップS16でYesと判定された場合には、ステップS12に戻る。
【0021】
(吸着運転時の制御フロー)
ステップS1で吸着時間帯に該当すると判断された場合、ステップS22で、温度取得部51が外気の温度を取得する。ステップS23では、吸着運転部54によって、外気の温度が、上述した施用温度よりも一定温度だけ低いか否かが判定される。ステップS23でYesと判定された場合、効率的なCO2吸着が可能であると判断できることから、吸着運転を開始する(ステップS24)。ステップS23でNoと判定された場合には、効率的なCO2吸着が困難であると判断できることから、吸着運転を停止する(ステップS25)。ステップS24で吸着運転を継続した後、ステップS26で、外気CO2濃度計測部34で計測された外気(つまり、吸着装置20を通過した後の外気)のCO2濃度(破過濃度)が、大気中のCO2濃度として設定した濃度閾値(一例として400ppm)よりも一定の分だけ下回っているか否かを判定する。ステップS26でNoと判定された場合、吸着装置20のCO2吸着量が飽和したと判断できることから、続くステップS27で吸着運転を終了する。ステップS26でYesと判定された場合には、ステップS22に戻る。以上により、施用運転時、及び吸着運転時における制御装置50の制御フローが完了する。
【0022】
(作用効果)
温室10内で植物を栽培する場合、植物が光合成を行う時間帯に合わせて、室内の二酸化炭素濃度をコントロールすることが重要である。しかしながら、従来は、二酸化炭素を発生させるために、化石燃料等を燃焼させて排ガスから二酸化炭素を得るなど、必要とされる以上の量と濃度の二酸化炭素を発生させてしまう上に、エネルギー消費量が多くなるという課題がある。また、植物の光合成に求められるCO2濃度は1000ppm程度であることから、CO2源としては排ガス(CO2濃度10%)やガスボンベ(同100%)ではなく、空気(同400ppm)が好適であるという事情もある。そこで、本実施形態では上述の各構成を採用している。
【0023】
上記構成によれば、日中には施用運転部53によって循環部40を作動させることで温室10内にCO2が供給される。これにより、植物は光合成を行うことができる。他方で、夜間には循環部40を停止させて通風部30を作動させることで、外気に含まれる二酸化炭素を吸着装置20に吸着させることができる。このように、日中と夜間における外気の流通経路を切り替えることのみによって、温室10へのCO2供給と、吸着装置20でのCO2吸着とを容易に切り替えることができる。これにより、装置構成が簡素化され、製造コストやメンテナンスコストを大きく削減することが可能となる。さらに、上記構成では、CO2の吸脱着のための圧力・温度変化が限定的であることから、各装置・計器・配管には常温・常圧サービスに適用できる市販品を適用でき、装置コストならびに装置重量を抑えることができる。また、外気中の二酸化炭素を有効利用することから、化石燃料等を燃焼させる等のエネルギー消費が回避できる。これにより、ランニングコストを抑えることができるとともに、環境への負荷も小さく抑えることが可能となる。また、CO2施用のためにボイラーなどの高温熱源が必須でないだけでなく、CO2吸脱着に要する駆動力の一部又は全部を、循環部40に基づく温室内空気と外気の温度差で賄うことから、より効率的に、かつ省エネルギーのもとで大気中のCO2を捕集・施用して植物を栽培することが可能な植物栽培設備を提供することができる。
【0024】
さらに、植物に施用するCO2は、光合成の進行する昼間時間帯にのみ施用すればいいことから、施用設備と再生設備を共通化することが可能である。そこで、本開示では、施用時間帯と再生時間帯をずらすことで、施用設備と再生設備を共通化し、装置容積や機器点数を最小化した植物栽培設備を提供することができる。
【0025】
さらに、上記構成によれば、外気の温度が温度閾値を一定温度だけ下回った時に、外気バルブ35、及び排気バルブ36を開状態としてファン37を駆動する。これにより、光合成の進行しない夜間の時間帯に、外気温のみを指標として吸着装置20によるCO2の吸着を自律的にコントロールすることができる。特に、外気の温度に基づいて吸着剤の吸着状態を判断できることから、ランニングコストや製造コストをさらに削減することも可能となる。
【0026】
ここで、予め定められた施用時間帯において、温室10の室温が温度閾値を一定温度だけ上回ったときに温室内暖気による吸着装置からのCO2脱着が可能であると判断し、かつ温室10のCO2濃度が濃度閾値を下回った時に、植物の光合成が進行していると判断できる。そこで、上記構成では、施用時間帯には、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を開状態とし、ファン37を運転することで施用運転を行い、吸着装置20から温室10に向けてCO2を供給する。これにより、植物の光合成をさらに促すことが可能となる。最終的には、植物の生育がさらに促進され、収穫量の増加等、生産性の向上を実現することが可能となる。本構成では、外気温とCO2濃度のみを指標として吸着装置20によるCO2の施用を自律的にコントロールすることができる。つまり、照度計や光センサー等の装置が不要となる。したがって、装置の構成が簡素となり、製造コストやメンテナンスコストをさらに削減することができる。
【0027】
また、上記構成によれば、温室10のCO2濃度が濃度閾値を上回った時に、植物の光合成が緩慢になっている判断できることから、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を閉状態としてファン37を停止する。これにより、温室10内へのCO2の供給が停止される。このように、温室10内のCO2濃度に基づいて、植物の光合成に対する要求をモニターでき、当該要求に合わせてリアルタイムにCO2供給を停止・再開することができるため、季節や植物の品種を問わず、栽培の生産性を向上させることが可能となる。
【0028】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0029】
例えば、上記実施形態では、吸着運転、及び施用運転を行うに当たって、外気のCO2濃度、室内のCO2濃度に加えて、外気温、及び室内の温度を指標として各種制御を行う例について説明した。しかしながら、変形例として、外気のCO2濃度、及び室内のCO2濃度のみに基づいて吸着運転、及び施用運転を行うことも可能である。この場合の制御フローは、図5に示すものとなる。具体的には、施用運転では、ステップS12、及びステップS13でCO2濃度閾値のみによる処理判定が行われる。また、吸着運転では、外気温計測に関するステップS22と、外気温に基づく処理判定であるステップS23と、吸着停止のステップS25が省略される。その他の処理は、上記実施形態と同様である。このような処理フローによっても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
また、例えば、施用運転部53は、室温計測部11で計測された温室10の室温が、上述した温度閾値を一定温度だけ上回らなくなった時に、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を閉状態とし、ファン37を停止してもよい。この判定を、上述した室内のCO2濃度に基づく判定ロジックと組み合わせて用いることも可能である。
【0031】
この構成によれば、温室10の室温が温度閾値を一定温度だけ上回らなくなった時に、温室内暖気によるCO2脱着が不可能であると判断できることから、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を閉状態としてファン37を停止する。これにより、温室10内へのCO2の供給が停止される。このように、温室10内の温度に基づいて、CO2脱着駆動力の多寡をモニターでき、当該状況に合わせてCO2の供給と停止をコントロールすることができる。
【0032】
また、上記に示した制御方法において、ステップS13におけるCO2濃度閾値は、濃度取得部52で取得した温室内CO2濃度が植物の光合成に好適な濃度帯の範囲内に収まるように更新されることが望ましい。この濃度閾値変更は、ステップS14にて施用運転を開始したタイミングで濃度閾値を濃度帯の上限値に更新し、ステップS15あるいはステップS17にて施用運転を停止したタイミングで濃度閾値を濃度帯の下限値に更新することで、容易に実現できる。
【0033】
また、CO2濃度閾値について、ステップS1にて施用運転を開始したときに限って大気中のCO2濃度と同等の値(一例400ppm)に設定することが考えられる。この制御方法では、続行するステップS13で比較するCO2濃度閾値が大気中のCO2濃度と等しくなることから、天候や作物の生育状況などの影響で光合成が進行しておらず、温室中のCO2濃度が大気中のCO2濃度を下回っていない状態における施用開始を回避することができ、さらなる運転の省エネルギー化につながる。
【0034】
その他の構成として、通風部30において吸着装置20の前流に送風ブロワーを設置して、温室10内の空気を送り込む構成も可能である。この構成では、上述の送り込み空気がブロワーの機械的仕事により昇温されていることから、吸着装置20におけるCO2脱着をさらに促進することができる。
【0035】
さらなる構成として、施用運転時のファン37又は前記送風ブロワー動力の少なくとも一部を太陽電池などの光電デバイスで賄う構成が考えられる。この構成において、外部エネルギーの供給量を減らすことができるだけでなく、通風動力が日照強度に追随した運転ができるため、光合成需要にマッチしたタイムリーな運転が可能となる。
【0036】
同様の構成として、施用運転時に吸着装置20を加熱する太陽熱デバイスを設置する構成が考えられる。この構成において、CO2施用をさらに効率よく促進することができるだけでなく、日照強度に追随したCO2施用促進ができるため、光合成需要にマッチしたタイムリーな運転が可能となる。
【0037】
また、温室10としては、通常の農業用ハウスをそのまま用いることが望ましいが、日光を取り入れることができる限りにおいて、断熱性を向上させるために断熱材を壁面に取り付けたり、ボイラー等による室温調節を行ったりしてもよい。さらに、温室の温度操作を既設あるいは新設のボイラーで行う場合、ボイラー排ガスをCO2源に用いてもよい。
【0038】
吸脱着を効率よく進行させるため、吸着装置20中の吸着剤の温度を操作してもよい。この構成において、吸着剤加熱源に太陽熱デバイスを用いた場合、外部エネルギーの供給をせずとも日照強度や外気温に追随したCO2吸着剤の脱着促進ができるため、光合成需要にマッチしたタイムリーな運転を実現できる。
【0039】
なお、本開示の実施形態における制御装置50の処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0040】
本開示の実施形態における記憶部55、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部55、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0041】
上述した制御装置50による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ200が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ200が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ200の具体例を以下に示す。
【0042】
図6に示すように、コンピュータ200は、CPU101と、メインメモリ102と、ストレージ103と、インターフェース104と、を備える。
例えば、上述の制御装置50はコンピュータ200に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ103に記憶されている。CPU101は、プログラムをストレージ103から読み出してメインメモリ102に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU101は、プログラムに従って、上述した記憶部55に対応する記憶領域をメインメモリ102に確保する。
【0043】
ストレージ103の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ103は、コンピュータ200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース104または通信回線を介してコンピュータ200に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ200に配信される場合、配信を受けたコンピュータ200が当該プログラムをメインメモリ102に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ103は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0044】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ200にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0045】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0046】
<付記>
各実施形態に記載の植物栽培設備1は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る植物栽培設備1は、植物を栽培する温室10と、CO2吸着剤を有する吸着装置20と、前記吸着装置20に外気を通風させる通風部30と、前記吸着装置20と前記温室10との間で気体を循環させる循環部40と、前記通風部30と前記循環部40を制御する制御装置50と、を備え、前記制御装置50は、日中に前記循環部40を作動させるとともに前記通風部30を停止させる施用運転部53と、夜間に前記循環部40を停止させるとともに前記通風部30を作動させる吸着運転部54と、
を有する。
【0048】
上記構成によれば、日中には施用運転部53によって循環部40を作動させることで温室10内にCO2が供給される。これにより、植物は光合成を行うことができる。他方で、夜間には循環部40を停止させて通風部30を作動させることで、外気に含まれる二酸化炭素を吸着装置20に吸着させることができる。
【0049】
(2)第2の態様に係る植物栽培設備1は、(1)の植物栽培設備1であって、前記通風部30は、前記吸着装置20の上流側に設けられた上流ライン31、及び下流側に設けられた下流ライン32と、前記下流ライン32上に設けられ、前記吸着装置20を通過した外気のCO2濃度を計測する外気CO2濃度計測部34と、前記上流ライン31の流通状態を切り替える外気バルブ35と、前記下流ライン32の流通状態を切り替える排気バルブ36と、前記上流ライン31、及び前記下流ライン32上で外気を流通させるファン37と、を有し、前記吸着運転部54は、前記外気のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を一定分だけ上回るまで前記外気バルブ35、及び前記排気バルブ36を開状態とするとともに、前記ファン37を駆動する。
【0050】
上記構成によれば、外気のCO2濃度が濃度閾値を一定分だけ下回った時に、外気バルブ35、及び排気バルブ36を開状態としてファン37を駆動する。これにより、外気温が下がってCO2吸着の進行しやすい夜間の時間帯に、CO2濃度のみを指標として吸着装置20によるCO2の吸着を開始することができる。したがって、装置の構成が簡素となり、製造コストやメンテナンスコストを削減することができる。
【0051】
(3)第3の態様に係る植物栽培設備1は、(2)の植物栽培設備1であって、前記上流ライン31上に設けられ、外気の温度を計測する外気温計測部33をさらに有し、前記吸着運転部54は、前記外気温計測部33で計測された前記外気の温度が予め定められた温度閾値を一定温度だけ下回る時に、前記外気バルブ35、及び前記排気バルブ36を開状態とするとともに、前記ファン37を駆動する。
【0052】
上記構成によれば、外気の温度が温度閾値を一定温度だけ下回った時に、外気バルブ35、及び排気バルブ36を開状態としてファン37を駆動する。これにより、外気温が下がってCO2吸着の進行しやすい夜間の時間帯に、外気温のみを指標として吸着装置20によるCO2の吸着を開始することができる。したがって、装置の構成が簡素となり、製造コストやメンテナンスコストを削減することができる。
【0053】
(4)第4の態様に係る植物栽培設備1は、(2)の植物栽培設備1であって、前記温室10内に設けられ、室内のCO2濃度を計測する室内CO2濃度計測部12と、をさらに備え、前記循環部40は、前記下流ライン32から分岐して、前記吸着装置20を通過した外気を前記温室10内に供給する外気供給ライン41と、前記上流ライン31に接続されて、前記温室10から排出される気体を前記吸着装置20に還流させる還流ライン42と、前記外気供給ライン41の流通状態を切り替える供給用バルブ43と、前記還流ライン42の流通状態を切り替える還流用バルブ44と、を有し、前記施用運転部53は、予め定められた施用時間帯内において、前記室内CO2濃度計測部12で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回った時に、前記供給用バルブ43、及び前記還流用バルブ44を開状態とし、前記ファン37を運転することで施用運転を行う。
【0054】
予め定められた施用時間帯において、温室10のCO2濃度が濃度閾値を下回った時に、CO2の施用と植物の光合成が進行しやすい環境下にあると判断できる。そこで、上記構成では、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を開状態とし、ファン37を運転することで施用運転を行い、吸着装置20から温室10に向けてCO2を供給する。これにより、植物の光合成をさらに促すことが可能となる。
【0055】
(5)第5の態様に係る植物栽培設備1は、(2)又は(3)の植物栽培設備1であって、前記温室10内に設けられ、室温を計測する室温計測部11をさらに有し、前記施用運転部53は、予め定められた施用時間帯内において、前記室温計測部11で計測された前記室温が前記温度閾値を一定温度だけ上回り、かつ前記室内CO2濃度計測部12で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回った時に、前記供給用バルブ43、及び前記還流用バルブ44を開状態とし、前記ファン37を運転することで施用運転を行う。
【0056】
上記構成によれば、温室10の室温が温度閾値を一定温度だけ上回り、室内CO2濃度計測部12で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた濃度閾値を下回った時に、温室10の暖気によるCO2の脱着が可能であると判断できることから、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を開状態としてファン37を運転する。これにより、温室10内へのCO2の供給が開始される。このように、温室10内の温度とCO2濃度に基づいて、自律的にCO2の供給と停止をコントロールすることができる。
【0057】
(6)第6の態様に係る植物栽培設備1は、(5)の植物栽培設備1であって、前記施用運転部53は、前記室温計測部11で計測された前記室温が前記温度閾値を一定温度だけ上回らなくなった時に、前記供給用バルブ43、及び前記還流用バルブ44を閉状態とし、前記ファン37を停止する。
【0058】
上記構成によれば、温室10の室温が温度閾値を一定温度だけ上回らなくなった時に、温室10の暖気によるCO2の脱着が難しいと判断できることから、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を閉状態としてファン37を停止する。これにより、温室10内へのCO2の供給が停止される。このように、温室10内の温度に基づいて、自律的にCO2の供給と停止をコントロールすることができる。
【0059】
(7)第7の態様に係る植物栽培設備1は、(3)の植物栽培設備1であって、前記施用運転部53は、前記室内CO2濃度計測部12で計測された前記室内のCO2濃度が予め定められた前記濃度閾値を上回った時に、前記供給用バルブ43、及び前記還流用バルブ44を閉状態とし、前記ファン37を停止する。
【0060】
上記構成によれば、温室10のCO2濃度が濃度閾値を上回った時に、植物の光合成が緩慢になっていると判断できることから、供給用バルブ43、及び還流用バルブ44を閉状態としてファン37を停止する。これにより、温室10内へのCO2の供給が停止される。このように、温室10内の温度に基づいて、植物の光合成に対する要求をモニターでき、当該要求に合わせてCO2の供給と停止をコントロールすることができる。
【0061】
(8)第8の態様に係る植物栽培設備1は、(4)に係る植物栽培設備1であって、前記吸着運転部54は、前記外気温計測部33で計測された前記外気の温度が、前回の前記施用運転時における前記室温から一定温度だけ下回らなくなった時に、前記外気バルブ35、及び前記排気バルブ36を閉状態とするとともに、前記ファン37を停止する。
【0062】
上記構成によれば、外気の温度が、前回の施用運転時における最新の室温を一定温度だけ下回らなくなった時には、効率的なCO2吸着が困難であると判断できることから、外気バルブ35、及び排気バルブ36を閉状態としてファン37を停止する。これにより、吸着装置20によるCO2の吸着と停止を自律的にコントロールすることができる。
【0063】
(9)第9の態様に係る植物栽培設備1は、(5)の植物栽培設備1であって、前記濃度閾値は、前記濃度取得部52が取得した前記室内のCO2濃度が植物の光合成に好適な濃度帯の範囲内に収まるように、前記施用運転を開始したタイミングで前記濃度帯の上限値に更新され、前記施用運転を停止したタイミングで前記濃度帯の下限値に更新される。
【0064】
上記構成によれば、植物の光合成に好適なCO2の濃度帯に合わせて、最適な濃度閾値を都度設定することができる。これにより、施用運転時における植物の光合成を自律的に促すことができる。
【0065】
(10)第10の態様に係る植物栽培設備1は、(5)の植物栽培設備1であって、前記濃度閾値は、前記施用運転を開始した時点では、大気中のCO2濃度と同等の値に設定される。
【0066】
上記構成によれば、濃度閾値が大気中のCO2濃度と等しくなることから、天候や作物の生育状況などの影響で光合成が進行しておらず、温室中のCO2濃度が大気中のCO2濃度を下回っていない状態における施用開始を回避することができ、さらなる運転の省エネルギー化につなげることができる。
【0067】
(11)第11の態様に係る植物栽培設備1は、(1)から(10)の植物栽培設備1であって、前記通風部における前記吸着装置20の上流側に設けられ、前記温室10内の空気を該吸着装置20に供給するブロワーをさらに備える。
【0068】
上記構成によれば、吸着装置20に供給される空気がブロワーの機械的仕事により昇温されていることから、吸着装置20におけるCO2脱着をさらに促進することができる。
【0069】
(12)第12の態様に係る植物栽培設備1は、(4)から(7)の植物栽培設備1であって、前記施用運転時における前記ファン37又は前記ブロワーの動力の少なくとも一部を生成する光発電装置をさらに備える。
【0070】
上記構成によれば、外部エネルギーの供給量を減らすことができるだけでなく、ファン37の動力が日照強度に追随した運転ができるため、光合成需要にマッチしたタイムリーな運転が可能となる。
【0071】
(13)第13の態様に係る植物栽培設備1は、(4)から(7)の植物栽培設備1であって、前記施用運転時において前記吸着装置20を加熱できる太陽熱装置をさらに備える。
【0072】
上記構成によれば、CO2施用をさらに促進できるだけでなく、施用駆動力が日照強度に追随した運転ができるため、光合成需要にマッチしたタイムリーな運転が可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…植物栽培設備 10…温室 11…室温計測部 12…室内CO2濃度計測部 20…吸着装置 30…通風部 40…循環部 50…制御装置 31…上流ライン 32…下流ライン 33…外気温計測部 34…外気CO2濃度計測部 35…外気バルブ 36…排気バルブ 37…ファン 41…外気供給ライン 42…還流ライン 43…供給用バルブ 44…還流用バルブ 51…温度取得部 52…濃度取得部 53…施用運転部 54…吸着運転部 55…記憶部 200…コンピュータ 101…CPU 102…メインメモリ 103…ストレージ 104…インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6