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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165814
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】排気熱回収器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20241121BHJP
   F01N 13/16 20100101ALI20241121BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F01N5/02 B
F01N13/16
F28D7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082327
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
(72)【発明者】
【氏名】久永 徹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 尚治
【テーマコード(参考)】
3G004
3L103
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004DA14
3G004DA24
3G004EA01
3G004FA04
3G004GA06
3L103AA36
3L103AA37
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD10
3L103DD38
(57)【要約】
【課題】排気熱回収器における排ガスからの熱の回収性能を向上させる。
【解決手段】排気熱回収器10は、第一排気管22と、第一排気管22の外周との間に環状通路46を形成する第二排気管24と、第二排気管24を囲むように配置される第三排気管26と、第二排気管24と第三排気管26との間に配置され、第三排気管26の外周に設けられる媒体流路132との間で熱交換を行う熱回収材80と、第二排気管24を開閉するバルブ161と、第二排気管24と第三排気管26との間に設けられた軸受部材163と、を備え、排ガス20は、バルブ161が閉じた状態では、環状通路46を通過して熱回収材80に導かれ、バルブ161が開いた状態では、熱回収材80を迂回して第三排気管26に導かれ、軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26とを接続固定すると共に、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間をシールする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気熱回収器であって、
第一排気管と、
前記第一排気管の下流側端部が挿入され、前記第一排気管の外周との間に排ガスが流通可能な間隙を形成する第二排気管と、
前記第一排気管の下流側端部及び前記第二排気管を囲むように配置される第三排気管と、
前記第二排気管と前記第三排気管との間に配置されて内部を前記排ガスが通過し、前記第三排気管の外周に設けられる媒体流路との間で熱交換を行う環状の熱回収材と、
前記第二排気管において前記第一排気管が挿入された部分よりも下流側で、前記第二排気管を開閉するバルブと、
前記第二排気管と前記第三排気管との間に設けられた前記バルブの軸受部材と、
を備え、
前記バルブが閉じた状態では、前記排ガスは、前記間隙を通過して前記熱回収材に導かれ、前記バルブが開いた状態では、前記排ガスは、前記熱回収材を迂回して前記第三排気管に導かれ、
前記軸受部材は、前記第二排気管と前記第三排気管とを接続固定すると共に、前記バルブの回転軸と前記第二排気管との間をシールする、
排気熱回収器。
【請求項2】
請求項1に記載の排気熱回収器であって、
前記第二排気管と前記熱回収材との間に設けられて両者を互いに径方向に押圧する押圧部材を更に備え、
前記押圧部材は、前記第二排気管の長手方向にて前記第二排気管と前記熱回収材との相対的な熱変形を許容する、
排気熱回収器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排気熱回収器であって、
前記軸受部材は、前記回転軸の外周面が摺動する摺動部を有する筒状であり、
前記軸受部材の端面と前記第二排気管とを溶接によって固定及びシールする第一溶接部と、
前記軸受部材の外周面と前記第三排気管とを溶接によって固定及びシールする第二溶接部と、
前記軸受部材内で前記回転軸と前記摺動部の端部とをシールするシール部材と、
を更に備える、
排気熱回収器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の排気熱回収器であって、
前記第二排気管は、前記軸受部材と溶接された第一溶接部を更に備え、
前記第一溶接部は平坦に形成され、
前記バルブは、前記第二排気管の流路断面に対応する形状である、
排気熱回収器。
【請求項5】
請求項1に記載の排気熱回収器であって、
前記軸受部材は、ステンレス材である、
排気熱回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気熱回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に嵌合される第1外筒部材と、柱状ハニカム構造体の内周壁の表面に嵌合される内筒部材と、内筒部材の径方向内側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する上流側筒状部材と、第1外筒部材の上流側端部と上流側筒状部材の上流側との間を接続する筒状接続部材と、内筒部材の径方向外側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する下流側筒状部材と、内筒部材の下流側端部に配置される開閉弁を有するバルブ機構と、を備え、排ガスの排熱を回収する熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/171670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の熱交換器では、開閉弁のシャフトは、内筒部材を貫通して下流側筒状部材の外側で支持される。そのため、開閉弁のシャフトと内筒部材との間には、シャフトの回転を許容するためのクリアランスが必要である。その結果、開閉弁が閉じられた状態であっても、クリアランスから排ガスが流出し、流出した排ガスの熱を回収できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、排気熱回収器における排ガスからの熱の回収性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、排気熱回収器は、第一排気管と、前記第一排気管の下流側端部が挿入され、前記第一排気管の外周との間に排ガスが流通可能な間隙を形成する第二排気管と、前記第一排気管の下流側端部及び前記第二排気管を囲むように配置される第三排気管と、前記第二排気管と前記第三排気管との間に配置されて内部を前記排ガスが通過し、前記第三排気管の外周に設けられる媒体流路との間で熱交換を行う環状の熱回収材と、前記第二排気管において前記第一排気管が挿入された部分よりも下流側で、前記第二排気管を開閉するバルブと、前記第二排気管と前記第三排気管との間に設けられた前記バルブの軸受部材と、を備え、前記バルブが閉じた状態では、前記排ガスは、前記間隙を通過して前記熱回収材に導かれ、前記バルブが開いた状態では、前記排ガスは、前記熱回収材を迂回して前記第三排気管に導かれ、前記軸受部材は、前記第二排気管と前記第三排気管とを接続固定すると共に、前記バルブの回転軸と前記第二排気管との間をシールする。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、第二排気管と第三排気管との間に設けられる軸受部材は、第二排気管と第三排気管とを接続固定すると共に、バルブの回転軸と第二排気管との間をシールする。そのため、バルブが閉じられた状態で、バルブの回転軸と第二排気管との間から排ガスが流出することを防止できる。したがって、排気熱回収器における排ガスからの熱の回収性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る排気熱回収器の斜視図である。
図2図2は、図1におけるII-II断面図である。
図3A図3Aは、図2におけるバルブ近傍の左側面図であり、バルブが開いた状態を示す図である。
図3B図3Bは、図2におけるバルブ近傍の右側面図であり、バルブが開いた状態を示す図である。
図4A図4Aは、図2におけるバルブ近傍の左側面図であり、バルブが閉じた状態を示す図である。
図4B図4Bは、図2におけるバルブ近傍の右側面図であり、バルブが閉じた状態を示す図である。
図5図5は、バルブが開状態である場合の排ガスの流れについて説明する排気熱回収器の断面図である。
図6図6は、バルブが閉状態である場合の排ガスの流れについて説明する排気熱回収器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る排気熱回収器10について説明する。
【0010】
まず、図1及び図2を参照して、排気熱回収器10の全体構成について説明する。図1は、排気熱回収器10の斜視図である。図2は、図1におけるII-II断面図である。
【0011】
排気熱回収器10は、例えば自動車(図示省略)におけるエンジン(図示省略)の排気経路に設けられ、エンジンから排出される排ガス20の熱を回収する。排気熱回収器10は、回収した熱を利用して、例えば暖機前のエンジンの冷却水を温める。
【0012】
図1に示すように、排気熱回収器10は、ガス流通部12と、熱回収部14と、切替機構部16と、を備える。
【0013】
図2に示すように、ガス流通部12は、第一排気管22と、第二排気管24と、第三排気管26と、を備える。ガス流通部12には、排ガス20が流通する。
【0014】
各排気管22,24,26は、例えば、略円筒状に形成された金属製のパイプによって構成される。各排気管22,24,26を構成する金属は、例えばステンレスが挙げられる。また、各排気管22,24,26は、それぞれの中心軸28が一致するように同軸に配置される。
【0015】
第一排気管22は、排ガス20が上流側から下流側へ流通するものである。第一排気管22は、上端部が図示しない排気管に接続される。第一排気管22には、エンジンからの排ガス20が送られる。第一排気管22は、上流の図示しない排気管に接続される第一大径部30と、第一大径部30から延出し、排ガス20の流通方向の下流側へ向かうに従って縮径する第一テーパ部32と、第一テーパ部32から流通方向の下流側に延出する第一小径部34と、を有する。
【0016】
第二排気管24には、第一排気管22を通過した排ガス20が供給される。第二排気管24は、第一排気管22の下流側端部が挿入され、第一排気管22の外周との間に排ガス20が流通可能な間隙としての環状通路46を形成する。第二排気管24は、第一排気管22の下流側端部である第一小径部34を囲むように配置される上流側端部である第二大径部40を有する。また、第二排気管24は、第二大径部40から延出し、流通方向の下流側へ向かうに従って縮径する第二テーパ部42と、第二テーパ部42から流通方向の下流側に延出する第二小径部44と、を有する。
【0017】
第二排気管24における第二大径部40の内径寸法は、第一排気管22における第一小径部34の外形寸法よりも大きい。これにより、第一排気管22における第一小径部34の外周と第二排気管24における第二大径部40の内周との間には、円環状の環状通路46が形成される。
【0018】
第二小径部44の後述する軸受部材163と溶接される被溶接個所44aは、平坦に形成され、第二小径部44の他の部分は円筒状に形成される。これにより、第二小径部44の内周の流路断面は、平坦な被溶接個所44aと円筒状の他の部分とによって、略D字状に形成される。第二排気管24の第二小径部44内には、当該第二排気管24を流れる排ガス20の流通を切り替える後述するバルブ161が設けられる。
【0019】
第三排気管26は、第一排気管22の下流側端部及び第二排気管24を囲むように配置される。具体的には、第三排気管26は、第一排気管22における第一大径部30の下流側の一部から第一小径部34までと第二排気管24の全体との外周を囲む。第三排気管26は、第二排気管24の外周部に配置された第三大径部60と、第三大径部60から延出し、流通方向の下流側へ向かうに従って縮径する第三テーパ部62と、第三テーパ部62から流通方向の下流側に延出する第三小径部64と、を有する。第三大径部60の流通方向の上流側の部位は、別部材である円筒部材66で構成される。
【0020】
第三排気管26における第三大径部60の内径寸法は、第二排気管24における第二大径部40の外形寸法より大きく、第二排気管24における第二大径部40と第三排気管26における第三大径部60との間には、円環状の間隙が形成される。これにより、第二排気管24における第二大径部40の外周部には、環状通路46を通過した排ガス20が流通する迂回流路68が形成される。
【0021】
第三排気管26は、第三排気管26の第三大径部60の外周から径方向外周に向かって突出するフランジ部61を有する。フランジ部61は、第三排気管26の径方向に貫通して後述する軸受部材163が挿入される孔の外周に設けられる。フランジ部61は、軸受部材163の外周面と当接する内周面を有する略円筒状に形成される。
【0022】
第三排気管26における第三大径部60の端部と第一排気管22の第一大径部30との間には、カラー70が全周にわたって配置されている。
【0023】
カラー70は、内周壁72と外周壁74とを有し、略U字状の断面形状に形成される。カラー70は、内周壁72が第一排気管22の第一大径部30に密着した状態で第一大径部30に固定される。また、カラー70は、外周壁74が第三排気管26の第三大径部60に密着した状態で第三大径部60に固定される。これにより、迂回流路68の端部は、カラー70によって閉鎖される。
【0024】
第二排気管24における第二大径部40と第三排気管26の第三大径部60との間には、内部を排ガス20が通過し、第三排気管26の外周に設けられる後述する媒体流路132を流通する媒体としての冷却水との間で熱交換を行う環状の熱回収材80が配置される。熱回収材80は、第二排気管24を包囲する円環状に形成され、迂回流路68を流通する排ガス20から熱を回収する。
【0025】
熱回収材80は、例えばセラミックスを主成分とした材料で形成される。セラミックスを主成分とする熱回収材80の熱膨張率は、金属製の各排気管22,24,26の熱膨張率と異なる。熱回収材80は、ハニカム構造体で構成される。具体的に説明すると、熱回収材80は、内周面を構成する円筒状の内筒部84と、外周面を構成する円筒状の外筒部88と、内筒部84及び外筒部88の間に配置されたハニカム部90と、を備える。
【0026】
ハニカム部90は、蜂の巣状の芯材で構成される。ハニカム部90を構成する縦横の各壁は、迂回流路68を流通する排ガス20の流通方向に延在する。これにより、ハニカム部90は、流通方向に貫通した複数の通路を有し、排ガス20の流通を許容しつつ、各通路を通過する排ガス20から熱を回収する。
【0027】
熱回収材80と第二排気管24の第二大径部40との間には、押圧部材としてのガスケット100が配置される。
【0028】
ガスケット100は、円筒状に形成された板状の部材によって形成される。ガスケット100を構成する板状の部材は、例えば金属板で構成される。ガスケット100は、第二排気管24の第二大径部40に外嵌可能な大きさに形成される。
【0029】
ガスケット100は、第二排気管24と熱回収材80との間に設けられ、両者を互いに径方向に押圧する。具体的には、ガスケット100は、例えば、縮径された状態で熱回収材80の内筒部84の内周面に嵌められた後、第二排気管24の第二大径部40を拡径することによって固定される。これにより、ガスケット100は、第二排気管24の第二大径部40と熱回収材80との間に挿入された状態で配置される。
【0030】
ガスケット100は、第二排気管24の第二大径部40と熱回収材80との間に配置された取付状態において、径方向への弾性変形が可能である。ガスケット100は、取付状態において、外筒部88の外周面が第三排気管26の内周面に密着するように熱回収材80を押圧する。熱回収材80が回収した熱は、第三排気管26の第三大径部60を構成する円筒部材66に伝達される。
【0031】
ガスケット100は、第二排気管24の長手方向(中心軸28に沿う方向)にて、第二排気管24に対してスライド可能に設けられる。これにより、ガスケット100は、第二排気管24の長手方向にて、第二排気管24と熱回収材80との相対的な熱変形を許容する。具体的な作用については、作用及び効果の説明で詳述する。
【0032】
熱回収部14は、排ガス20の熱を利用して冷却水を加熱する。熱回収部14は、筒状部材130と、供給配管140と、回収配管142と、を有する。
【0033】
筒状部材130は、第三排気管26の第三大径部60を構成する円筒部材66の外周部に、円筒部材66を全周にわたって囲むように設けられる。筒状部材130は、円筒部材66との間に媒体流路132を形成する外側に突出する容器状の部材本体134と、部材本体134の縁部より延出する一対の固定フランジ136と、を備える。筒状部材130は、各固定フランジ136が円筒部材66に密着した状態で固定される。部材本体134には、供給配管140と回収配管142(図1参照)とが接続される。
【0034】
供給配管140は、冷却水を媒体流路132に供給する。回収配管142は、媒体流路132内の冷却水を回収する。供給配管140と回収配管142とは、部材本体134の周方向に離間した箇所に各々配置される。
【0035】
熱回収材80が回収した排ガス20の熱は、第三排気管26の円筒部材66を介して、媒体流路132を流通する冷却水に伝達される。これにより、排ガス20の熱を利用して冷却水を温める熱回収部14が構成される。
【0036】
続いて、図3Aから図4Bをあわせて参照して、切替機構部16について説明する。図3Aは、図2におけるバルブ161近傍の左側面図であり、バルブ161が開いた状態を示す図である。図3Bは、図2におけるバルブ161近傍の右側面図であり、バルブ161が開いた状態を示す図である。図4Aは、図2におけるバルブ161近傍の左側面図であり、バルブ161が閉じた状態を示す図である。図4Bは、図2におけるバルブ161近傍の右側面図であり、バルブ161が閉じた状態を示す図である。なお、図3Aから図4Bでは、バルブ161の状態を理解しやすいように、バルブ161にハッチングを付して示している。
【0037】
図2に示すように、切替機構部16は、バルブ161と、回転軸としてのスピンドル162と、バルブ161の軸受部材163と、シール部材164と、アクチュエータ169と、固定部材170と、を有する。切替機構部16は、ガス流通部12内の排ガス20の流れを切り替える。
【0038】
図3A及び図3Bに示すように、バルブ161は、前面161aと後面161bとを有する平板状に形成される。バルブ161は、第二排気管24における第二小径部44の流路断面に対応する形状に形成される。即ち、バルブ161は、第二小径部44の略D字状の流路断面に対応して、略D字状に形成される(図4A及び図4B参照)。バルブ161は、スピンドル162によって回転可能に支持される。バルブ161は、第二排気管24において第一排気管22が挿入された部分よりも下流側で、第二排気管24から環状通路46を経由せずに第三排気管26と連通する連通路48を開閉する。
【0039】
バルブ161は、前面161a及び後面161bが流通方向に沿うように配置された開状態(図3A及び図3Bに示す状態)では、第一排気管22からの排ガス20を第二排気管24の下流側へ流す。バルブ161は、前面161aが流通方向の上流側を向き、後面161bが流通方向の下流側を向くように配置された閉状態(図4A及び図4Bに示す状態)では、第二排気管24の下流側への排ガス20の流れを抑制し、環状通路46へ向けた排ガス20の流通を促進する。
【0040】
即ち、バルブ161は、連通路48を閉じた状態では、環状通路46を通過して熱回収材80に導かれるように排ガス20を流通させ、連通路48を開いた状態では、熱回収材80を迂回するように排ガス20を流通させる。なお、排ガス20の流れの切り替えについては、作用及び効果の説明で詳述する。
【0041】
ここで、図3A及び図3Bに示すように、第二排気管24における第二小径部44の内周には、円弧状のストッパ45a,45bが各々設けられる。ストッパ45aは、第二小径部44の内周の略半周にわたって連通路48に突出するように設けられる。ストッパ45bは、第二小径部44の内周のストッパ45aが設けられない残りの略半周にわたって連通路48に突出するように設けられる。ストッパ45aとストッパ45bとは、バルブ161を挟んで各々対向している。ストッパ45bは、ストッパ45bから排ガス20の流通方向(中心軸28に沿う方向)の下流側にバルブ161の厚さ分離間した位置に設けられる。
【0042】
図4A及び図4Bに示すように、バルブ161が開いた状態から閉じた状態に切り換えられると、バルブ161の前面161aは、一方のストッパ45aにおける流通方向の下流側の面に当接し、バルブ161の後面161bは、他方のストッパ45bにおける流通方向の上流側の面に当接する。これにより、バルブ161が閉じられたときの連通路48からの排ガス20の流出量を最小限に抑えることができる。
【0043】
図2に示すように、スピンドル162は、略円柱状に形成される。スピンドル162は、第三排気管26の外部から第二排気管24の内部まで貫通して設けられる。スピンドル162の一端には、バルブ161が設けられる。スピンドル162の他端は、アクチュエータ169に取り付けられる。スピンドル162は、アクチュエータ169によって回転制御される。スピンドル162は、一端から他端に向けて縮径するように形成されるテーパ部162aを有する。スピンドル162の一端は、他端よりも大径に設けられる。
【0044】
軸受部材163は、筒状(ここでは略円筒状)に形成される。軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26との間に設けられ、第三排気管26を貫通して外部まで延設される。軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26とを接続固定する。軸受部材163は、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間をシールするシール部材164を有する。
【0045】
軸受部材163は、凹部163aと、第一溶接部163cと、第二溶接部163dと、摺動部163eと、を有する。軸受部材163は、第二排気管24及び第三排気管26と溶接可能な金属によって形成される。軸受部材163は、例えばステンレス材である。
【0046】
凹部163aは、軸受部材163における第二排気管24側の端部から中心軸方向に凹状に形成される。凹部163aは、摺動部163eよりも大径に形成される。凹部163aには、シール部材164が設けられる。
【0047】
第一溶接部163cは、軸受部材163の端面と第二排気管24とを溶接によって固定及びシールする。具体的には、第一溶接部163cは、第二排気管24の第二小径部44にて平坦に形成される被溶接個所44aと軸受部材163の端面とが溶接されて形成される。
【0048】
このとき、被溶接個所44aは平坦に形成されるので、同じく平坦に形成される軸受部材163の円環状の端面と面接触する。よって、軸受部材163と第二排気管24との溶接を容易に行うことができると共に、第一溶接部163cの品質を安定させることができる。
【0049】
第二溶接部163dは、軸受部材163の外周面と第三排気管26とを溶接によって固定及びシールする。具体的には、第二溶接部163dは、第三排気管26の第三大径部60から外周に向けて突出するフランジ部61の内周面と軸受部材163の外周面とが溶接されて形成される。
【0050】
このとき、第三排気管26にはフランジ部61が設けられるので、フランジ部61と軸受部材163の外周面との接触面積(接触長さ)を大きくできる。よって、軸受部材163と第三排気管26との溶接を容易に行うことができると共に、第二溶接部163dの品質を安定させることができる。
【0051】
摺動部163eは、スピンドル162の外周面が摺動する円形の穴である。摺動部163eは、軸受部材163の中心軸方向に沿って形成される。摺動部163eは、スピンドル162の外径と略同径に形成される。
【0052】
シール部材164は、軸受部材163の凹部163a内に設けられる。シール部材164は、凹部163aの底面とスピンドル162のテーパ部162aとの間で圧縮された状態で設けられる。シール部材164は、スピンドル162とスピンドル162の摺動部163eの端部とをシールする。
【0053】
アクチュエータ169は、電源装置(図示省略)から供給される電力によって駆動される。アクチュエータ169は、コントローラ(図示省略)からの電気信号によって制御される。アクチュエータ169は、スピンドル162を回転駆動する。
【0054】
固定部材170は、アクチュエータ169を支持するカップ状の金属部材である。固定部材170は、複数のブラケット171によって第三排気管26及び筒状部材130の外面の複数個所に取り付けられる(図1参照)。
【0055】
続いて、図5及び図6を参照して、排気熱回収器10の作用について説明する。図5は、バルブ161が開状態である場合の排ガス20の流れについて説明する排気熱回収器10の断面図である。図6は、バルブ161が閉状態である場合の排ガス20の流れについて説明する排気熱回収器10の断面図である。
【0056】
まず、図5を参照して、バルブ161が開状態であり、排ガス20の熱が熱回収部14を流通する冷却水に回収されない場合について説明する。
【0057】
図5に示すように、エンジンから排出された排ガス20は、上流の図示しない排気管を介して第一排気管22に流入する。第一排気管22から排気熱回収器10内に流入した排ガス20は、そのまま直進して第二排気管24内に導かれる。
【0058】
このとき、バルブ161は開状態であり連通路48は開かれているので、第二排気管24内に流入した排ガス20は、連通路48を通過して第三排気管26内に導かれ、下流の図示しない排気管に流出する。即ち、排ガス20は、熱回収材80を迂回するように排気熱回収器10内を流通する。
【0059】
よって、排ガス20は熱回収材80に導かれないので、排ガス20の熱は熱回収部14を流通する冷却水に回収されない。
【0060】
この状態から、アクチュエータ169がスピンドル162を回転駆動してバルブ161を閉じると、図6に示す状態になる。
【0061】
次に、図6を参照して、バルブ161が閉状態であり、排ガス20の熱が熱回収部14を流通する冷却水に回収される場合について説明する。
【0062】
図6に示すように、エンジンから排出された排ガス20は、上流の図示しない排気管を介して第一排気管22に流入する。第一排気管22から排気熱回収器10内に流入した排ガス20は、そのまま直進して第二排気管24内に導かれる。このとき、バルブ161が閉状態であり連通路48が閉じられているので、第二排気管24内に流入した排ガス20は、環状通路46を通過して迂回流路68に導かれる。迂回流路68に導かれた排ガス20は、熱回収材80を通過するので、熱回収部14を流通する冷却水に熱が伝達される。その後、排ガス20は、迂回流路68から第三排気管26内に導かれ、下流の図示しない排気管に流出する。
【0063】
よって、排ガス20は熱回収材80に導かれるので、排ガス20の熱は熱回収部14を流通する冷却水に回収される。
【0064】
このとき、第二排気管24と第三排気管26との間に設けられる軸受部材163は、第一溶接部163cによって第二排気管24と固定及びシールされ、第二溶接部163dによって第三排気管26と固定及びシールされている。即ち、軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26とを接続固定すると共に、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間をシールしている。そのため、バルブ161が閉じられた状態で、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間から排ガス20が流出することを防止できる。
【0065】
また、軸受部材163には、凹部163a内でスピンドル162と摺動部163eの端部との間をシールするシール部材164が設けられている。そのため、スピンドル162の外周の隙間から流出する排ガス20が迂回流路68や第三排気管26の外部に導かれることを防止できる。
【0066】
したがって、上流の図示しない排気管から流入する排ガス20の略全部が熱回収材80に導かれるので、排気熱回収器10における排ガス20からの熱の回収性能を向上させることができる。
【0067】
第二排気管24と熱回収材80との間には、両者を互いに径方向に押圧するガスケット100が設けられる。ガスケット100は、第二排気管24の長手方向にて第二排気管24と熱回収材80との相対的な熱変形を許容するものである。
【0068】
ここで、軸受部材163は、第一溶接部163cと第二溶接部163dとによって第二排気管24と第三排気管26とに接続固定されている。即ち、第二排気管24は、軸受部材163を介して第三排気管26に支持され、その位置が拘束されている。一方、熱回収材80は、第三排気管26(円筒部材66)に嵌め込まれており、その位置が拘束されている。そして、熱回収材80は、セラミックスを主成分としており、金属製の各排気管22,24,26とは熱膨張率が異なっているから、両者が熱を受けると熱膨張差が生じる。そうした構造において、第二排気管24と熱回収材80との間は、排ガス20がバイパスしないように封止する必要があるが、封止構造によって両者を拘束してしまうと、熱膨張差によって応力が生じる。即ち、仮に、第二排気管24が一端で軸受部材163に拘束され、他端で熱回収材80に拘束されると、第二排気管24に応力が発生してしまう。
【0069】
これに対して、排気熱回収器10では、ガスケット100は、第二排気管24の長手方向(中心軸28に沿う方向)にて第二排気管24に対してスライド可能に設けられる。即ち、ガスケット100が設けられることで、第二排気管24の長手方向にて第二排気管24と熱回収材80との相対的な熱変形が許容される。よって、第二排気管24が排ガス20によって加熱されて、軸受部材163と溶接される位置を起点として第二排気管24が熱変形したとしても、ガスケット100が第二排気管24に対してスライドするので、熱変形に起因する力は熱回収材80には伝達されない。したがって、例えば熱回収材80が第二排気管24及び第三排気管26にろう付け等によって固定される場合と比較して、熱疲労に対する耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、排ガス20の熱によって第二排気管24の外形寸法が大きくなった場合には、ガスケット100が弾性変形することで、第二排気管24の熱膨張に起因した熱回収材80の位置ずれを抑制することが可能である。特に、エンジン駆動とモータ駆動とが切り替えられて、排気熱回収器10の温度変化が大きくなるハイブリッド車両に適用した場合にも、熱回収材80の位置ずれを抑制することが可能である。
【0071】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0072】
排気熱回収器10は、第一排気管22と、第一排気管22の下流側端部が挿入され、第一排気管22の外周との間に排ガス20が流通可能な環状通路46を形成する第二排気管24と、第一排気管22の下流側端部及び第二排気管24を囲むように配置される第三排気管26と、第二排気管24と第三排気管26との間に配置されて内部を排ガス20が通過し、第三排気管26の外周に設けられる媒体流路132との間で熱交換を行う環状の熱回収材80と、第二排気管24において第一排気管22が挿入された部分よりも下流側で、第二排気管24を開閉するバルブ161と、第二排気管24と第三排気管26との間に設けられたバルブ161の軸受部材163と、を備え、バルブ161が閉じた状態では、排ガス20は、環状通路46を通過して熱回収材80に導かれ、バルブ161が開いた状態では、排ガス20は、熱回収材80を迂回して第三排気管26に導かれ、軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26とを接続固定すると共に、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間をシールする。
【0073】
この構成では、第二排気管24と第三排気管26との間に設けられる軸受部材163は、第二排気管24と第三排気管26とを接続固定すると共に、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間をシールする。そのため、バルブ161が閉じられた状態で、バルブ161のスピンドル162と第二排気管24との間から排ガス20が流出することを防止できる。したがって、排気熱回収器10における排ガス20からの熱の回収性能を向上させることができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0075】
例えば、上記実施形態に係る排気熱回収器10は、回収した熱で冷却水を温める場合について説明したが、各実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、排気熱回収器10は、回収した熱でギヤオイル等を温めてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、排気熱回収器10を自動車に適用する場合について説明したが、上記実施形態は、これに限定されるものではなく、排気熱回収器10を車両以外に適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 排気熱回収器
20 排ガス
22 第一排気管
24 第二排気管
26 第三排気管
44a 被溶接個所
46 環状通路(間隙)
80 熱回収材
100 ガスケット(押圧部材)
161 バルブ
162 スピンドル(回転軸)
163 軸受部材
163c 第一溶接部
163d 第二溶接部
163e 摺動部
164 シール部材
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6